【文献】
George Ting-Kuo FEY, et.al.,MgAl2O4 spinel-coated LiCoO2 as long-cycling cathode materials,Journal of Power Sources,2005年,Volume 146,Pages 245-249
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記活物質のX線回折スペクトルで、(111)結晶面のピーク強度と、(311)結晶面のピーク強度との比であるI(111)/I(311)が、0.3以上であることを特徴とする請求項1に記載のリチウム二次電池用電極活物質。
前記活物質のX線回折スペクトルで、(111)結晶面のピーク強度と、(400)結晶面のピーク強度との比であるI(111)/I(400)が、0.6以上であることを特徴とする請求項1に記載のリチウム二次電池用電極活物質。
前記元素がSn、Mg、Mo、Cu、Zn、Ti、Ni、Ca、Al、V、Mn、Ga、Fe、Cr、Rh、In、Pb、Co、Ge、Cd、Hg、Sr、W及びBeからなる群から選択されることを特徴とする請求項7に記載のリチウム二次電池用電極活物質。
前記表面処理層で、酸素と、原子量9以上の金属及び半金属からなる群から選択された2以上の元素との組成比が、4:2.1〜3.9であることを特徴とする請求項1に記載のリチウム二次電池用電極活物質。
前記コアが、リチウム金属、リチウムと合金可能な金属、遷移金属酸化物、非遷移金属酸化物、炭素系材料からなる群から選択された一つ以上を含むことを特徴とする請求項1に記載のリチウム二次電池用電極活物質。
前記表面処理層が、スピネル構造を有するリチウム非含有酸化物またはその前駆体を前記コアと接触させ、且つ選択的に焼成させることによって形成されることを特徴とする請求項1に記載のリチウム二次電池用電極活物質。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、例示的な具現例による電極活物質、その製造方法及びそれを含む電極、並びにリチウム電池についてさらに詳細に説明する。
【0017】
本発明の一具現例による電極活物質は、リチウムの吸蔵放出の可能なコアと、前記コア上の少なくとも一部に形成された表面処理層と、を含み、前記表面処理層が、スピネル構造を有するリチウム非含有酸化物(lithium-free oxide)を含む。すなわち、前記リチウムの吸蔵放出の可能なコア表面の少なくとも一部が、スピネル構造を有するリチウム非含有酸化物で処理されることによって、前記コア表面の一部または全部に表面処理層が形成される。
【0018】
前記スピネル構造を有するリチウム非含有酸化物は、リチウムを吸蔵放出しないことによって、電池容量に関与しないので、前記酸化物を含む表面処理層は、例えば、前記コアの保護膜(protective layer)の役割を行うことができる。すなわち、前記表面処理層が、コアと電解質との副反応を抑制する役割を行うことができる。また、前記表面処理層が、前記リチウムを吸蔵放出するコアからの遷移金属溶出を防止する役割も行うことができる。
【0019】
前記スピネル構造を有するリチウム非含有酸化物は、2以上のリチウム以外の金属または半金属元素を含む酸化物であって、スピネル結晶構造を有するものであるならば、いずれも使用可能である。
【0020】
前記スピネル構造を有するリチウム非含有酸化物は、従来の一般的なハライト結晶構造を有する酸化物、例えば、NaCl、CaO、FeO;コランダム(corundum)結晶構造を有する酸化物、例えば、Al
2O
3、Fe
2O
3、F
eTiO
3、MgOなどに比べて金属−酸素結合が強く、高温及び高電圧の条件でも、安定した表面処理層を形成することができる。
【0021】
例えば、前記リチウム非含有酸化物は、下記化学式aで表示される酸化物のうちから選択された一つ以上であってもよい:
[化学式a]
AB
2O
4
前記化学式aで、Aが、Sn、Mg、Mo、Cu、Zn、Ti、Ni、Ca、Fe、V、Pb、Co、Ge、Cd、Hg、Sr、Mn、Al、W及びBeからなる群から選択された一つ以上であり、Bが、Mg、Zn、Al、V、Mn、Ga、Cr、Fe、Rh、Ni、In、Co及びMnからなる群から選択された一つ以上であり、AとBとが互いに異なる。
【0022】
例えば、前記リチウム非含有酸化物は、SnMg
2O
4、SnZn
2O
4、MgAl
2O
4、MoAl
2O
4、CuAl
2O
4、ZnAl
2O
4、ZnV
2O
4、TiMn
2O
4、ZnMn
2O
4、NiAl
2O
4、MgGa
2O
4、ZnGa
2O
4、CaGa
2O
4、TiMg
2O
4、VMg
2O
4、MgV
2O
4、FeV
2O
4、ZnV
2O
4、MgCr
2O
4、MnCr
2O
4、FeCr
2O
4、CoCr
2O
4、NiCr
2O
4、CuCr
2O
4、ZnCr
2O
4、CdCr
2O
4、TiMn
2O
4、ZnMn
2O
4、MgFe
2O
4、TiFe
2O
4、MnFe
2O
4、CoFe
2O
4、NiFe
2O
4、CuFe
2O
4、ZnFe
2O
4、CdFe
2O
4、AlFe
2O
4、PbFe
2O
4、MgCo
2O
4、TiCo
2O
4、ZnCo
2O
4、SnCo
2O
4、FeNi
2O
4、GeNi
2O
4、MgRh
2O
4、ZnRh
2O
4、TiZn
2O
4、SrAl
2O
4、CrAl
2O
4、MoAl
2O
4、FeAl
2O
4、CoAl
2O
4、MgGa
2O
4、ZnGa
2O
4、MgIn
2O
4、CaIn
2O
4、FeIn
2O
4、CoIn
2O
4、NiIn
2O
4、CdIn
2O
4及びHgIn
2O
4からなる群から選択された一つ以上であってもよい。
【0023】
前記リチウム非含有酸化物は、X線回折(XRD)スペクトルで、(111)結晶面のピーク強度と、(311)結晶面のピーク強度との比であるI(111)/I(311)が、0.3以上であってもよい。例えば、前記I(111)/I(311)が、0.3ないし0.9である。
【0024】
また、前記リチウム非含有酸化物は、X線回折スペクトルで、(111)結晶面のピーク強度と、(400)結晶面のピーク強度との比であるI(111)/I(400)が、0.6以上であってもよい。例えば、前記I(111)/I(400)が、0.6ないし1.5である。
【0025】
前記リチウム非含有酸化物の含有量は、電極活物質総重量の10重量%以下であって、例えば、5重量%以下である。例えば、前記リチウム非含有酸化物の含有量は、0重量%を超えて10重量%以下でありうる。例えば、前記リチウム非含有酸化物の含有量は、0重量%を超えて5重量%以下である。
【0026】
前記電極活物質で前記表面処理層は、原子量9以上の金属及び半金属からなる群から選択された2以上の元素を含み、前記元素はSn、Mg、Mo、Cu、Zn、Ti、Ni、Ca、Al、V、Mn、Ga、Fe、Cr、Rh、In、Pb、Co、Ge、Cd、Hg、Sr、W及びBeからなる群から選択されてもよい。
【0027】
前記表面処理層に含まれる原子量9以上の金属及び半金属からなる群から選択された2以上の元素の含有量は、電極活物質総重量の10重量%以下であって、例えば、0ないし6重量%でありうる。
【0028】
前記表面処理層で、酸素と、原子量9以上の金属及び半金属からなる群から選択された2以上の元素との組成比が4:2.1〜3.9であってもよい。例えば、前記組成比は、4:2.5〜3.5である。例えば、前記組成比は、4:2.9〜3.1である。例えば、前記組成比は、4:3である。前記組成比は、表面処理層に含まれたAB
2O
4の組成式を有するリチウム非含有酸化物における酸素:A+Bの組成比に該当する。
【0029】
前記電極活物質で、前記表面処理層の厚みは、1Åないし1μmであってもよい。例えば、前記表面処理層の厚みは、1nmないし1μmである。例えば、前記表面処理層の厚みは、1nmないし100nmである。例えば、前記表面処理層の厚みは、1nmないし30nmである。
【0030】
前記電極活物質で前記コアは、平均粒径が、10nmないし50μmの粒子であってもよい。例えば、前記コアの平均粒径が、10nmないし30μmである。例えば、前記コアの平均粒径が、1μmないし30μmである。
【0031】
前記電極活物質で前記リチウムを吸蔵放出することができるコアは、正極活物質を含んでもよい。前記正極活物質は、リチウム遷移金属酸化物であってもよい。前記リチウム遷移金属酸化物は、リチウム電池の正極に使用できるものであり、当技術分野で使用することができるものであるならば、いずれも使用可能である。例えば、前記リチウム遷移金属酸化物は、スピネル構造または層状構造を有することができる。
【0032】
前記リチウム遷移金属酸化物は、単一組成物であってもよく、また2以上の組成を有する化合物の複合体であってもよい。例えば、2以上の層状構造を有する化合物の複合体であってもよい。また、層状構造を有する化合物と、スピネル構造を有する化合物との複合体であってもよい。
【0033】
例えば、前記リチウム遷移金属酸化物は、過量のリチウム酸化物(OLO:overlithiated oxide)、または平均作動電位が4.3V以上であるリチウム遷移金属酸化物を含んでもよい。例えば、リチウム遷移金属酸化物の平均作動電位は、4.3ないし5.0Vであってもよい。
【0034】
前記平均作動電位とは、電池の推奨作動電圧範囲で、充放電電位の上限と下限とで充放電させた場合の充放電電力量を充放電電気量で割った値を意味する。
【0035】
前記コアは、例えば、下記化学式1及び2で表示される化合物のうち少なくとも一つを含んでもよい。
[化学式1]
Li[Li
aMe
1−a]O
2+d
[化学式2]
Li[Li
bMe
cM’
e]O
2+d
前記化学式1及び2で、0<a<1,b+c+e=1,0<b<1,0<e<0.1,0≦d≦0.1であり、前記Meが、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Al、Mg、Zr及びBからなる群から選択された一つ以上の金属であり、前記M’が、Mo、W、Ir、Ni及びMgからなる群から選択された一つ以上の金属である。
【0036】
また、前記コアは、下記化学式3ないし7で表示される化合物のうち少なくとも一つを含んでもよい:
[化学式3]
Li
xCo
1−yMyO
2−αX
α
[化学式4]
Li
xCo
1−y−zNi
yMzO
2−αX
α
[化学式5]
Li
xMn
2−yM
yO
4−αX
α
[化学式6]
Li
xCo
2−yMyO
4−αX
α
[化学式7]
Li
xMe
yM
zPO
4−αX
α
前記化学式3ないし7で、0.90≦x≦1.1,0≦y≦0.9,0≦z≦0.5,1−y−z>0,0≦α≦2であり、前記Meが、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Al、Mg、Zr及びBからなる群から選択された一つ以上の金属であり、Mが、Mg、Ca、Sr、Ba、Ti、Zr、Nb、Mo、W、Zn、Al、Si、Ni、Mn、Cr、Fe、Mg、Sr、Vまたは希土類元素からなる群から選択される少なくとも一つの元素であり、Xが、O、F、S及びPからなる群から選択される元素である。
【0037】
また、前記コアは、下記化学式8及び9で表示される化合物のうち少なくとも一つを含んでもよい。
[化学式8]
pLi
2MO3・(1−p)LiMeO
2
[化学式9]
xLi
2MO
3・yLiMeO
2・zLi
1+dM’
2−dO
4
前記化学式8及び9で、0<p<1,x+y+z=1,0<x<1,0<y<1,0<z<1,0≦d≦0.33であり、前記Mが、Mg、Ca、Sr、Ba、Ti、Zr、Nb、Mo、W、Zn、Al、Si、Ni、Mn、Cr、Fe、Mg、Sr、V及び希土類元素からなる群から選択される一つ以上の金属であり、前記Meが、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Al、Mg、Zr及びBからなる群から選択される一つ以上の金属であり、前記M’が、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Al、Mg、Zr及びBからなる群から選択される一つ以上の金属である。
【0038】
前記化学式8の化合物は、層状構造を有し、前記化学式9の化合物で、Li
2MO
3・LiMeO
2は、層状構造を有し、Li
1+dM’
2−dO
4は、スピネル構造を有することができる。
【0039】
前記電極活物質で、リチウムを充放電することができるコアは、負極活物質を含んでもよい。前記負極活物質は、リチウム金属、リチウムと合金可能な金属、遷移金属酸化物、非遷移金属酸化物及び炭素系材料からなる群から選択された一つ以上を含んでもよい。前記負極活物質は、当技術分野でリチウム電池の負極活物質として使われるものであるならば、いずれも可能である。
【0040】
例えば、前記リチウムと合金可能な金属は、Si、Sn、Al、Ge、Pb、Bi、SbSi−Y合金(前記Yは、アルカリ金属、アルカリ土類金属、13族元素、14族元素、遷移金属、希土類元素、またはそれらの組み合わせ元素であり、Siではない)、Sn−Y合金(前記Yは、アルカリ金属、アルカリ土類金属、13族元素、14族元素、遷移金属、希土類元素、またはそれらの組み合わせ元素であり、Snではない)などであってもよい。前記元素Yとしては、Mg、Ca、Sr、Ba、Ra、Sc、Y、Ti、Zr、Hf、Rf、V、Nb、Ta、Db、Cr、Mo、W、Sg、Tc、Re、Bh、Fe、Pb、Ru、Os、Hs、Rh、Ir、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、B、Al、Ga、Sn、In、Ti、Ge、P、As、Sb、Bi、S、Se、Te、Po、またはそれらの組み合わせであってもよい。
【0041】
例えば、前記遷移金属酸化物は、リチウムチタン酸化物、バナジウム酸化物、リチウムバナジウム酸化物などである。
【0042】
例えば、前記非遷移金属酸化物は、SnO
2、SiO
x(0<x<2)などである。
【0043】
前記炭素系材料としては、結晶質炭素、非晶質炭素、またはそれらの混合物であってもよい。前記結晶質炭素は、無定形、板状、鱗片状(flake)、球形またはファイバ型の天然黒鉛または人造黒鉛のような黒鉛であって、前記非晶質炭素は、ソフトカーボン(soft carbon:低温焼成炭素)またはハードカーボン(hard carbon)、メゾフェーズピッチ(mesophase pitch)炭化物、焼成されたコークスなどであってもよい。
【0044】
前記電極活物質で表面処理層は、スピネル構造を有するリチウム非含有酸化物またはその前駆体を前記コアと接触させ、且つ選択的に焼成させることによって形成される。すなわち、前記リチウムを吸蔵放出することができるコアに、スピネル構造を有するリチウム非含有酸化物またはその前駆体を接触させ、これを選択的に焼成させて、表面処理された電極活物質が製造される。前記リチウム非含有酸化物の前駆体を使用する場合、焼成段階が要求され、前記焼成段階で、焼成時間が3時間未満であるならば、前記前駆体からスピネル構造を有するリチウム非含有酸化物が得られない。
【0045】
他の一具現例による電極は、前記電極活物質を含んでもよい。前記電極は、正極または負極であってもよい。
【0046】
前記正極は、次の通り製造されてもよい。
【0047】
表面の少なくとも一部に、スピネル構造を有するリチウム非含有酸化物を含む表面処理層が形成された正極活物質、導電剤、結合剤及び溶媒を混合し、正極活物質組成物を準備する。前記正極活物質組成物を、アルミニウム集電体上に直接コーティング及び乾燥させ、正極活物質層の形成された正極極板を製造する。代案としては、前記正極活物質組成物を、別途の支持体上にキャスティングした後、この支持体から剥離して得たフィルムを前記アルミニウム集電体上にラミネーションして、正極活物質層の形成された正極極板を製造することができる。
【0048】
前記導電剤としては、カーボンブラック、黒鉛微粒子天然黒鉛、人造黒鉛、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、炭素ファイバ;炭素ナノチューブ、銅、ニッケル、アルミニウム、銀などの金属粉末、金属ファイバまたは金属チューブ;ポリフェニレン誘導体のような伝導性高分子などが使われるが、それらに限定されるものではなく、当技術分野で導電剤として使われるものであるならば、いずれも可能である。
【0049】
結合剤としては、フッ化ビニリデン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ポリフッ化ビニリデン、ポリアクリロニトリル、ポリメチルメタクリレート、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、前述の高分子などの混合物、スチレンブタジエンゴム系ポリマーなどが使われ、溶媒としては、N−メチルピロリドン(NMP)、アセトン、水などが使われるが、必ずしもそれらに限定されるものではなく、当該技術分野で使われるものであるならば、いずれも可能である。前記正極活物質、導電剤、結合剤及び溶媒の含有量は、リチウム電池で一般的に使用するレベルである。
【0050】
前記負極は、正極活物質の代わりに、負極活物質が使われることを除いては、正極と同一の方法で製造することができる。
【0051】
例えば、前記負極は、次の通り製造される。
【0052】
前述の正極製造時と同様に、表面の少なくとも一部にスピネル構造を有するリチウム非含有酸化物を含む表面処理層が形成された負極活物質、導電剤、結合剤及び溶媒を混合して負極活物質組成物を製造し、これを銅集電体に直接コーティングし、負極極板を製造することができる。代案としては、前記負極活物質組成物を、別途の支持体上にキャスティングし、この支持体から剥離させた負極活物質フィルムを銅集電体にラミネーションし、負極極板を製造することができる。
【0053】
負極活物質組成物で、導電剤、結合剤及び溶媒は、正極の場合と同一のものを使用することができる。場合によっては、前記正極活物質組成物及び負極活物質組成物に、可塑剤をさらに付加し、電極板内部に気孔を形成することも可能である。
【0054】
前記負極活物質、導電剤、結合剤及び溶媒の含有量は、リチウム電池で一般的に使用するレベルである。リチウム電池の用途及び構成によって、前記導電剤、結合剤及び溶媒のうち一つ以上が省略されてもよい。
【0055】
さらに他の一具現例による電極は、集電体と、電極活物質層及び前記電極活物質層上に形成された表面処理層と、を含み、前記表面処理層がスピネル構造を有するリチウム非含有酸化物を含んでもよい。前記電極活物質層は、電極活物質、導電剤及びバインダを含んでもよい。前記表面処理層は、電極表面に形成されることによって、電極の副反応を抑制し、電極から遷移金属の溶出を抑制することができる。
【0056】
すなわち、前記電極は、電極活物質層が成形された後、前記活物質層上に表面処理層が別途に形成される。
【0057】
前記電極では、前記リチウム非含有酸化物が下記化学式aで表示されもする:
[化学式a]
AB
2O
4
前記化学式aで、Aが、Sn、Mg、Mo、Cu、Zn、Ti、Ni、Ca、Fe、V、Pb、Co、Ge、Cd、Hg、Sr、Mn、Al、W及びBeからなる群から選択された一つ以上であり、Bが、Mg、Zn、Al、V、Mn、Ga、Cr、Fe、Rh、Ni、In、Co及びMnからなる群から選択された一つ以上であり、AとBとが互いに異なる。
【0058】
例えば、前記リチウム非含有酸化物は、SnMg
2O
4、SnZn
2O
4、MgAl
2O
4、MoAl
2O
4、CuAl
2O
4、ZnAl
2O
4、ZnV
2O
4、TiMn
2O
4、ZnMn
2O
4、NiAl
2O
4、MgGa
2O
4、ZnGa
2O
4、CaGa
2O
4、TiMg
2O
4、VMg
2O
4、MgV
2O
4、FeV
2O
4、ZnV
2O
4、MgCr
2O
4、MnCr
2O
4、FeCr
2O
4、CoCr
2O
4、NiCr
2O
4、CuCr
2O
4、ZnCr
2O
4、CdCr
2O
4、TiMn
2O
4、ZnMn
2O
4、MgFe
2O
4、TiFe
2O
4、MnFe
2O
4、CoFe
2O
4、NiFe
2O
4、CuFe
2O
4、ZnFe
2O
4、CdFe
2O
4、AlFe
2O
4、PbFe
2O
4、MgCo
2O
4、TiCo
2O
4、ZnCo
2O
4、SnCo
2O
4、FeNi
2O
4、GeNi
2O
4、MgRh
2O
4、ZnRh
2O
4、TiZn
2O
4、SrAl
2O
4、CrAl
2O
4、MoAl
2O
4、FeAl
2O
4、CoAl
2O
4、MgGa
2O
4、ZnGa
2O
4、MgIn
2O
4、CaIn
2O
4、FeIn
2O
4、CoIn
2O
4、NiIn
2O
4、CdIn
2O
4及びHgIn
2O
4からなる群から選択された一つ以上であってもよい。
【0059】
前記電極の表面処理層は、前記活物質層表面にスピネル構造を有するリチウム非含有酸化物またはその前駆体を前記コアと接触させ、且つ選択的に焼成させることによって製造される。
【0060】
さらに他の一具現例によるリチウム電池は、前記電極を採用する。前記リチウム電池は、例えば、次の通り製造されてもよい。
【0061】
まず、前述のように、一具現例による正極及び負極を製造する。
【0062】
次に、前記正極と負極との間に挿入されるセパレータが準備される。前記セパレータは、リチウム電池で一般的に使われるものであるならば、いずれも使用可能である。電解質のイオン移動に対して低抵抗であり、かつ電解液含湿能にすぐれたものが使われる。例えば、ガラスファイバ、ポリエステル、テフロン(登録商標)、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、またはそれらの化合物のうちから選択されたものであって、不織布または織布の形態でも差し支えない。例えば、リチウムイオン電池には、ポリエチレン、ポリプロピレンのような巻き取り可能なセパレータが使われ、リチウムイオンポリマー電池には、有機電解液含浸能にすぐれたセパレータが使われる。例えば、前記セパレータは、下記方法によって製造されてもよい。
【0063】
高分子樹脂、充填剤及び溶媒を混合して、セパレータ組成物が準備される。前記セパレータ組成物が、電極上部に直接コーティング及び乾燥させられてセパレータが形成される。または、前記セパレータ組成物が、支持体上にキャスティング及び乾燥させられた後、前記支持体から剥離させたセパレータフィルムが、電極上部にラミネーションされてセパレータが形成される。
【0064】
前記セパレータ製造に使われる高分子樹脂は、特別に限定されるものではなく、電極板の結合材に使われる物質がいずれも使われる。例えば、フッ化ビニリデン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリアクリロニトリル、ポリメチルメタクリレート、またはそれらの混合物などが使われる。
【0066】
例えば、前記電解質は、有機電解液であってもよい。また、前記電解質は、固体であってもよい。例えば、ボロン酸化物、リチウムオキシナイトライドなどであるが、それらに限定されるものではなく、当技術分野で固体電解質として使われるものであるならば、いずれも使用可能である。前記固体電解質は、スパッタリングなどの方法で、前記負極上に形成される。
【0067】
例えば、有機電解液が準備される。有機電解液は、有機溶媒にリチウム塩が溶解されて製造されてもよい。
【0068】
前記有機溶媒は、当技術分野で有機溶媒として使われるものであるならば、いずれも使われる。例えば、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、メチルプロピルカーボネート、エチルプロピルカーボネート、メチルイソプロピルカーボネート、ジプロピルカーボネート、ジブチルカーボネート、ベンゾニトリル、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、γ−ブチロラクトン、ジオキソラン、4−メチルジオキソラン、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン、スルホラン、ジクロロエタン、クロロベンゼン、ニトロベンゼン、ジエチレングリコール、ジメチルエーテル、またはそれらの混合物などである。
【0069】
前記リチウム塩も、当技術分野でリチウム塩として使われるものであるならば、いずれも使用可能である。例えば、LiPF
6、LiBF
4、LiSbF
6、LiAsF
6、LiClO
4、LiCF
3SO
3、Li(CF
3SO
2)
2N、LiC
4F
9SO
3、LiAlO
2、LiAlCl
4、LiN(C
xF
2x+1SO
2)(C
yF
2y+1SO
2)(ただし、x,yは自然数)、LiCl、LiI、またはそれらの混合物などである。
【0070】
図5から分かるように、前記リチウム電池1は、正極3、負極2及びセパレータ4を含む。前述の正極3、負極2及びセパレータ4が巻き取られ、または折り畳まれ、電池ケース5に収容される。次に、前記電池ケース5に有機電解液が注入され、キャップ(cap)アセンブリ6で密封され、リチウム電池1が完成される。前記電池ケースは、円筒形、角形、薄膜型などであってもよい。例えば、前記リチウム電池は、大型薄膜型電池である。前記リチウム電池は、リチウムイオン電池であってもよい。
【0071】
前記正極及び負極間にセパレータが配置され、電池構造体が形成される。前記電池構造体がバイセル構造に積層された後、有機電解液に含浸され、得られた結果物がポーチに収容されて密封されれば、リチウムイオンポリマー電池が完成される。
【0072】
また、前記電池構造体は、複数個積層されて電池パックを形成し、このような電池パックが、高容量及び高出力が要求されるあらゆる機器に使われる。例えば、ノート型パソコン、スマートフォン、電気車両などに使われる。
【0073】
また、前記リチウム電池は、高温で、保存安定性、寿命特性及び高率特性にすぐれるので、電気車両(EV:electric vehicle)に使われる。例えば、プラグイン・ハイブリッド車両(PEDV:plug-in hybrid electric vehicle)などのハイブリッド車両に使われる。
【0074】
さらに他の一具現例による電極活物質の製造方法は、リチウムの吸蔵放出の可能なコアと、スピネル構造を有するリチウム非含有酸化物またはその前駆体と、を接触させて結果物を準備する段階と、選択的に前記結果物を焼成させる段階と、を含む。前記結果物は、沈殿物、混合物などを含んでもよい。前記焼成段階は、リチウム非含有酸化物の前駆体を使用する場合に要求され、リチウム非含有酸化物を使用する場合には、省略されてもよい。
【0075】
前記前駆体は、原子量9以上の金属及び半金属からなる群から選択される2以上の元素の塩(salt)を含んでもよい。例えば、前記塩は、酢酸塩(acetate salt)、塩化物塩(chloride salt)、硝酸塩(nitrate salt)、シュウ酸塩(oxalate salt)及びイソプロポキシド(isopropoxide)からなる群から選択された一つ以上であってもよい。
【0076】
前記製造方法で、前記リチウム非含有酸化物またはその前駆体の含有量が、コア及びリチウム非含有酸化物またはその前駆体の総重量の10重量%以下であってもよい。例えば、前記リチウム非含有酸化物またはその前駆体の含有量は、コア及びリチウム非含有酸化物またはその前駆体の総重量の5重量%以下である。例えば、前記含有量は、0重量%を超えて10重量%以下であってもよい。例えば、前記含有量は、0重量%を超えて5重量%以下である。
【0077】
前記製造方法で、前記接触が空気中または溶液内で行われる。すなわち、前記接触は、乾式コーティングまたは湿式コーティングであってもよい。前記湿式コーティングは、スプレー、共浸(coprecipitation)、浸漬(dipping)など、当技術分野で公知の方法が可能である。前記乾式コーティングは、ミーリング(milling)、造粒(granulation)など、当技術分野で公知のあらゆる方法が可能である。
【0078】
本明細書で前記空気は、必ずしも空気に限定されるものではなく、酸素、窒素、アルゴンなどあらゆる種類のガスを意味する。
【0079】
例えば、前記電極活物質は、コアと、リチウム非含有酸化物またはその前駆体と、を粉末状態で、空気中または窒素雰囲気でボールミル(ball mill)などによって混合し、次に、選択的に焼成させることによって製造可能である。「選択的に(selectively)」ということは、焼成段階を省略することができるという意味である。
【0080】
例えば、前記電極活物質は、コアと、リチウム非含有酸化物またはその前駆体とを溶液内で混合し、乾燥させた後、選択的に焼成させることによって製造される。前記溶液の溶媒は、有機溶媒または水であるが、特別に限定されるものではない。
【0081】
例えば、前記電極活物質は、前記コアを酸化物の前駆体が含まれた溶液に浸漬させた後、取り出して焼成させることによって製造可能である。
【0082】
例えば、前記電極活物質は、前記コアと、酸化物の前駆体とを含む溶液で、コアと前駆体とを共浸(coprecipitation)させた後、取り出して焼成させることによって製造可能である。
【0083】
例えば、前記電極活物質は、前記コアと酸化物の前駆体とを含むスラリ状態に混合した後、乾燥及び焼成させることによって製造可能である。
【0084】
前記製造方法で前記焼成は、500℃ないし1,000℃で遂行可能である。例えば、前記焼成は、700ないし950℃で遂行可能である。
【0085】
前記製造方法で前記焼成は、3ないし24時間遂行可能である。例えば、前記焼成は、6ないし24時間遂行可能である。例えば、前記焼成は、6ないし12時間遂行可能である。前記焼成時間が3時間未満であるならば、前記表面処理層に含まれたリチウム非含有酸化物がスピネル構造を有することができない。
【0086】
前記製造方法で前記焼成は、酸素、空気及び窒素雰囲気で遂行可能である。例えば、前記焼成は、空気雰囲気で形成される。
【0087】
以下の実施例及び比較例を介して、本発明についてさらに詳細に説明する。ただし、実施例は、本発明を例示するためのものであり、それらのみで本発明の範囲が限定されるものではない。
【0088】
(表面処理されたOLO(overlithiated oxide)正極活物質の製造)
[実施例1]
SnCl
2(塩化スズ)及びMg(NO
3)
2(
硝酸マグネシウム)を1:2の組成比で混合した後、水を添加してリチウム非含有酸化物前駆体スラリを製造した。前記リチウム非含有酸化物前駆体スラリに、平均粒径15μmのLi
1.1Ni
0.35Mn
0.41Co
0.14O
2を添加した後に混合した。前記混合物を、酸素雰囲気、850℃で12時間焼成させ、表面にSnMg
2O
4が含まれた表面処理層の形成されたLi
1.1Ni
0.35Mn
0.41Co
0.14O
2コアを含む正極活物質を製造した。
【0089】
使われたリチウム非含有酸化物前駆体の含有量は、前記リチウム非含有酸化物前駆体及びLi
1.1Ni
0.35Mn
0.41Co
0.14O
2の総重量の3重量%であった。
【0090】
[実施例2]
SnCl
2(塩化スズ)及びZn(O
2CCH
3)
2(酢酸亜鉛)を、リチウム非含有酸化物前駆体として使用し、表面にSnZn
2O
4の含まれた表面処理層が形成されたことを除いては、実施例1と同一の方法で正極活物質を製造した。
【0091】
[実施例3]
Mg(NO
3)
2(
硝酸マグネシウム)及びAl(NO
3)
3(
硝酸アルミニウム)を、リチウム非含有酸化物前駆体として使用し、表面にMgAl
2O
4の含まれた表面処理層が形成されたことを除いては、実施例1と同一の方法で正極活物質を製造した。
【0092】
[実施例4]
CuCl(塩化銅)及びAl(NO
3)
3(
硝酸アルミニウム)を、リチウム非含有酸化物前駆体として使用し、表面にCuAl
2O
4の含まれた表面処理層が形成されたことを除いては、実施例1と同一の方法で正極活物質を製造した。
【0093】
[実施例5]
Zn(O
2CCH
3)
2(酢酸亜鉛)及びAl(NO
3)
3(
硝酸アルミニウム)を、リチウム非含有酸化物前駆体として使用し、表面にZnAl
2O
4の含まれた表面処理層が形成されたことを除いては、実施例1と同一の方法で正極活物質を製造した。
【0094】
[実施例6]
Ni(O
2CCH
3)
2(酢酸ニッケル)及びAl(NO
3)
3(
硝酸アルミニウム)を、リチウム非含有酸化物前駆体として使用し、表面にNiAl
2O
4の含まれた表面処理層が形成されたことを除いては、実施例1と同一の方法で正極活物質を製造した。
【0095】
[実施例7〜12]
使われたリチウム非含有酸化物前駆体の含有量を、1重量%に変更したことを除いては、実施例1〜6と同一の方法で、表面処理層の形成された正極活物質をそれぞれ製造した。
【0096】
[実施例13〜18]
使われたリチウム非含有酸化物前駆体の含有量を、5重量%に変更したことを除いては、実施例1〜6と同一の方法で、表面処理層の形成された正極活物質をそれぞれ製造した。
【0097】
[実施例19〜24]
使われたリチウム非含有酸化物前駆体の含有量を、10重量%に変更したことを除いては、実施例1と同一の方法で、表面処理層の形成された正極活物質をそれぞれ製造した。
【0098】
[実施例25(共浸法)]
SnCl
4(塩化スズ)及びMg(NO
3)
2(
硝酸マグネシウム)を1:2の組成比で水に添加し、第1水溶液を準備した。平均粒径15μmであるLi
1.1Ni
0.35Mn
0.41Co
0.14O
2及びLiOHを水に添加し、第2水溶液を準備した。前記第1水溶液と第2水溶液とを混合し、Li
1.1Ni
0.35Mn
0.41Co
0.14O
2と、リチウム非含有酸化物の前駆体とを共浸させて沈殿物を収得した。前記沈殿物を、酸素雰囲気、850℃で12時間焼成させ、表面にSnMg
2O
4の含まれた表面処理層が形成されたLi
1.1Ni
0.35Mn
0.41Co
0.14O
2コアを含む正極活物質を製造した。
【0099】
使われたリチウム非含有酸化物前駆体の含有量は、前記リチウム非含有酸化物前駆体及びLi
1.1Ni
0.35Mn
0.41Co
0.14O
2の総重量の3重量%であった。
【0100】
[比較例1]
表面処理層の製造過程なしに、平均粒径15μmのLi
1.1Ni
0.35Mn
0.41Co
0.14O
2をそのまま正極活物質として使用した。
【0101】
[比較例2]
Al(NO
3)
3(
硝酸アルミニウム)だけを使用し、表面にAl
2O
3の含まれた表面処理層が形成されたことを除いては、実施例1と同一の方法で正極活物質を製造した。
【0102】
使われたリチウム非含有酸化物前駆体の含有量は、前記リチウム非含有酸化物前駆体及びLi
1.1Ni
0.35Mn
0.41Co
0.14O
2の総重量の3重量%であった。
【0103】
[比較例3]
Mg(NO
3)
2(
硝酸マグネシウム)だけを使用し、表面にMgOの含まれた表面処理層が形成されたことを除いては、実施例1と同一の方法で正極活物質を製造した。
【0104】
使われたリチウム非含有酸化物前駆体の含有量は、前記リチウム非含有酸化物前駆体及びLi
1.1Ni
0.35Mn
0.41Co
0.14O
2の総重量の3重量%であった。
【0105】
[比較例4]
焼成時間を15分に短縮したことを除いては、実施例3と同一の方法で正極活物質を製造した。
【0106】
(表面処理された5V正極活物質の製造)
[実施例26]
SnCl
2(塩化スズ)及びMg(NO
3)
2(
硝酸マグネシウム)を1:2の組成比で混合した後、水を添加してリチウム非含有酸化物前駆体スラリを製造した。前記リチウム非含有酸化物前駆体スラリに、平均粒径15μmのLiNi
0.5Mn
1.5O
4を添加した後に混合した。前記混合物を、酸素雰囲気、850℃で12時間焼成させ、表面にSnMg
2O
4の含まれた表面処理層が形成されたLiNi
0.5Mn
1.5O
4コアを含む正極活物質を製造した。
【0107】
使われたリチウム非含有酸化物前駆体の含有量は、前記リチウム非含有酸化物前駆体及びLiNi
0.5Mn
1.5O
4の総重量の3重量%であった。
【0108】
[実施例27]
SnCl
2(塩化スズ)及びZn(O
2CCH
3)
2(酢酸亜鉛)を、リチウム非含有酸化物前駆体として使用し、表面にSnZn
2O
4の含まれた表面処理層が形成されたことを除いては、実施例26と同一の方法で正極活物質を製造した。
【0109】
[実施例28]
Mg(NO
3)
2(
硝酸マグネシウム)及びAl(NO
3)
3(
硝酸アルミニウム)を、リチウム非含有酸化物前駆体として使用し、表面にMgAl
2O
4の含まれた表面処理層が形成されたことを除いては、実施例26と同一の方法で正極活物質を製造した。
【0110】
[実施例29]
CuCl(塩化銅)及びAl(NO
3)
3(
硝酸アルミニウム)を、リチウム非含有酸化物前駆体として使用し、表面にCuAl
2O
4の含まれた表面処理層が形成されたことを除いては、実施例26と同一の方法で正極活物質を製造した。
【0111】
[実施例30]
Zn(O
2CCH
3)
2(酢酸亜鉛)及びAl(NO
3)
3(
硝酸アルミニウム)を、リチウム非含有酸化物前駆体として使用し、表面にZnAl
2O
4の含まれた表面処理層が形成されたことを除いては、実施例26と同一の方法で正極活物質を製造した。
【0112】
[実施例31]
Ni(O
2CCH
3)
2(酢酸ニッケル)及びAl(NO
3)
3(
硝酸アルミニウム)を、リチウム非含有酸化物前駆体として使用し、表面にNiAl
2O
4の含まれた表面処理層が形成されたことを除いては、実施例26と同一の方法で正極活物質を製造した。
【0113】
[実施例32〜37]
使われた酸化物前駆体の含有量を1重量%に変更したことを除いては、実施例26〜31と同一の方法で、表面処理層の形成された正極活物質をそれぞれ製造した。
【0114】
[実施例38〜43]
使われた酸化物前駆体の含有量を5重量%に変更したことを除いては、実施例26〜31と同一の方法で、表面処理層の形成された正極活物質をそれぞれ製造した。
【0115】
[実施例44〜49]
使われた酸化物前駆体の含有量を10重量%に変更したことを除いては、実施例26〜31と同一の方法で、表面処理層の形成された正極活物質をそれぞれ製造した。
【0116】
[実施例50(共浸法)]
SnCl
4(塩化スズ)及びMg(NO
3)
2(
硝酸マグネシウム)を1:2の組成比で水に添加し、第1水溶液を準備した。平均粒径15μmのLiNi
0.5Mn
1.5O
4及びLiOHを水に添加し、第2水溶液を準備した。前記第1水溶液と第2水溶液とを混合し、LiNi
0.5Mn
1.5O
4と前駆体とを共浸させて沈殿物を収得した。前記沈殿物を、酸素雰囲気、850℃で12時間焼成させ、表面にSnMg
2O
4の含まれた表面処理層が形成されたLiNi
0.5Mn
1.5O
4を製造した。
【0117】
使われたリチウム非含有酸化物前駆体の含有量は、前記リチウム非含有酸化物前駆体及びLiNi
0.5Mn
1.5O
4の総重量の3重量%であった。
【0118】
[比較例5]
表面処理層の製造過程なしに、平均粒径15μmのLiNi
0.5Mn
1.5O
4をそのまま正極活物質として使用した。
【0119】
[比較例6]
Al(NO
3)
3(
硝酸アルミニウム)だけを使用し、表面にAl
2O
3の含まれた表面処理層が形成されたことを除いては、実施例26と同一の方法で正極活物質を製造した。
【0120】
使われたリチウム非含有酸化物前駆体の含有量は、前記リチウム非含有酸化物前駆体及びLiNi
0.5Mn
1.5O
4の総重量の3重量%であった。
【0121】
[比較例7]
Mg(NO
3)
2(
硝酸マグネシウム)だけを使用し、表面にMgOの含まれた表面処理層が形成されたことを除いては、実施例26と同一の方法で正極活物質を製造した。
【0122】
使われたリチウム非含有酸化物前駆体の含有量は、前記リチウム非含有酸化物前駆体及びLiNi
0.5Mn
1.5O
4の総重量の3重量%であった。
【0123】
(正極の製造)
[実施例51]
実施例1で製造された正極活物質、炭素導電剤(Super P)及びポリフッ化ビニリデン(PVDF)を、90:4:6の重量比で混合した混合物を、N−メチルピロリドン(NMP)と共にメノウ乳鉢で混合してスラリを製造した。前記スラリを、ドクターブレードを使用して、アルミニウム集電体上に、約20μm厚に塗布して常温で乾燥させた後、真空、120℃の条件でもう一度乾燥及び圧延し、正極活物質層の形成された正極板を製造した。
【0124】
[実施例52〜100]
実施例2ないし50の正極活物質をそれぞれ使用したことを除いては、実施例51と同一の方法で正極板を製造した。
【0125】
[実施例51−1(電極表面に表面処理層を形成)]
15μmのLi
1.1Ni
0.35Mn
0.41Co
0.14O
2、炭素導電剤(SuperP)及びポリフッ化ビニリデン(PVDF)を、90:4:6の重量比で混合した混合物を、N−メチルピロリドン(NMP)と共にメノウ乳鉢で混合してスラリを製造した。前記スラリを、ドクターブレードを使用して、アルミニウム集電体上に約20μm厚に塗布し、常温で乾燥させた後、真空、120℃の条件でもう一度乾燥及び圧延し、正極活物質層の形成された正極板を製造した。
【0126】
SnCl
4(塩化スズ)及びMg(NO
3)
2(
硝酸マグネシウム)を1:2の組成比で混合した後、水を添加して製造したリチウム非含有酸化物前駆体スラリに、前記正極板を6時間浸漬させた後で取り出し、酸素雰囲気、850℃で12時間焼成させ、表面にSnMg
2O
4の含まれた表面処理層が形成された電極を製造した。
【0127】
[比較例8〜14]
比較例1ないし7の正極活物質をそれぞれ使用したことを除いては、実施例51と同一の方法で正極板を製造した。
【0128】
(リチウム電池の製造)
[実施例101]
実施例51で製造された正極板を使用し、リチウム金属を相対電極として、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)隔離膜(セパレータ)と、1.0M LiPF
6とがエチレンカーボネート(EC)+ジメチレンカーボネート(DMC)(1:1体積比)に溶けている溶液を電解質として使用して、コインセルを製造した。
【0129】
[実施例102〜150]
実施例52〜100で製造された正極をそれぞれ使用したことを除いては、実施例101と同一の方法で製造した。
【0130】
[比較例15〜21]
比較例8〜14で製造された正極をそれぞれ使用したことを除いては、実施例101と同一の方法で製造した。
【0131】
[評価例1:XRD(x-ray diffraction)実験1]
実施例19及び比較例1で製造された正極活物質、及び別途に合成したSnMg
2O
4それぞれの表面に対して、XRD(X−ray diffraction)実験を行い、その結果を
図1に示した。
【0132】
図1(a)は、比較例1で製造された正極活物質に係わるXRD結果である。
【0133】
図1(b)は、実施例19で製造された正極活物質に係わるXRD結果である。
【0134】
図1(c)は、SnCl
4(塩化スズ)及びMg(NO
3)
2(
硝酸マグネシウム)を1:2の組成比で、水と混合して製造したリチウム非含有酸化物前駆体スラリを、酸素雰囲気、850℃で12時間焼成させて単独で合成したSnMg
2O
4に係わるXRD実験結果である。これは基準物質である。
【0135】
図1(b)から分かるように、実施例19の正極活物質では、表面に形成されたSnMg
2O
4スピネル結晶構造に該当する特性ピークが現れたが、
図1(a)から分かるように、比較例1には、かようなピークが現れていない。
【0136】
[評価例2:XRD実験2]
実施例3及び比較例4で製造された正極活物質それぞれの表面に形成されると予想されるリチウム非含有スピネル酸化物をそれぞれ別途に合成し、これに対してXRD(X−ray diffraction)実験を行い、その結果を
図2に示した。
【0137】
図2(a)は、Mg(NO
3)
2(
硝酸マグネシウム)及びAl(NO
3)
3(
硝酸アルミニウム)を1:2の組成比で水と混合して製造したリチウム非含有酸化物前駆体スラリを、酸素雰囲気、800℃で15分間焼成させて単独で合成したMgAl
2O
4に係わるXRD実験結果である。
【0138】
図2(b)は、Mg(NO
3)
2(
硝酸マグネシウム)及びAl(NO
3)
3(
硝酸アルミニウム)を1:2の組成比で水と混合して製造したリチウム非含有酸化物前駆体スラリを、酸素雰囲気で800℃、12時間焼成させて単独で合成したMgAl
2O
4に係わるXRD実験結果である。
【0139】
図2(b)では、MgAl
2O
4スピネル結晶構造に該当する特性ピークが現れたが、
図2(a)では、MgAl
2O
4スピネル結晶構造に該当する特性ピークが現れていない。
【0140】
すなわち、800℃で3時間以上焼成してこそ、MgAl
2O
4スピネル構造の結晶が合成されるということを確認した。従って、比較例4では、MgAl
2O
4結晶を含む表面処理層が形成されていないと判断される。
【0141】
[評価例3:ICP(ion coupled plasma)実験]
実施例1で製造された正極活物質表面に対して、ICP(ion coupled plasma)実験を行った。
【0142】
ICP実験に使われた機器は、株式会社島津製作所モデルICPS−8100であった。前記正極活物質の表面で、Sn:Mg:Oの組成比は、0.97:2.02:3.97であった。
【0143】
[評価例4:透過電子顕微鏡(TEM)実験]
実施例1で製造された正極活物質の表面に対して、透過電子顕微鏡(TEM)写真測定を行った。測定結果を
図3に示した。
図3から分かるように、活物質コア表面に、表面処理層が形成された。表面処理層の厚みは、8〜12nmであった。
【0144】
[評価例5:90℃高温安定性実験]
実施例101〜106及び比較例15〜17で製造されたコインセルに対して、1stサイクルで、0.05Cの速度で4.45Vまで定電流充電し、0.05Cの速度で3.0Vまで定電流放電した。2ndサイクルは、0.1Cの速度で4.45Vまで定電流充電し、次に、4.45Vに維持しつつ、電流が0.05Cになるまで定電圧充電し、0.1Cの速度で3.0Vまで定電流放電した。3rdサイクルは、0.5Cの速度で4.45Vまで定電流充電し、次に、4.45Vに維持しつつ、電流が0.05Cになるまで定電圧充電し、0.2Cの速度で3.0Vまで定電流放電した。前記3rdサイクルでの放電容量を、標準容量と見なした。
【0145】
4thサイクルで、0.5Cの速度で4.45Vまで充電し、次に、4.45Vに維持しつつ、電流が0.05Cになるまで定電圧充電した後、前記充電された電池を90℃オーブンに4時間保管した後、前記電池を取り出し、0.2Cの速度で3.0Vまで4thサイクルの放電を進めた。充放電結果を下記表1に示した。高温保管後の容量維持率は、下記数式1で定義される。
[数式1]
高温保管後の容量維持率[%]=4thサイクルでの高温保管後の放電容量/標準容量×100
【0146】
前記標準容量は、3rdサイクルでの放電容量である。
【0147】
[評価例6:60℃高温安定性実験]
実施例101〜106及び比較例15〜17で製造されたコインセルに対して、前記充電された電池を60℃オーブンに7日間保管したことを除いては、評価例5と同一に実験した。充放電結果を下記表1に示した。高温保管後の容量維持率は、前記数式1で定義される。
【0149】
前記表1から分かるように、実施例101ないし106のリチウム電池は、比較例15ないし17のリチウム電池に比べて、高温保管後の容量維持率がほぼ向上している。
【0150】
[評価例7:高温充放電実験]
実施例101及び103ないし106及び比較例15で製造された前記コインセルを、45℃の高温で、リチウム金属対比3.0〜4.45Vの電圧範囲で、1Cレートの定電流で、50回充放電させた。50回目サイクルでの寿命特性を下記表2に示した。50回目サイクルでの容量維持率は、下記数式2から計算される。
[数式2]
50回目サイクルでの容量維持率[%]=50回目サイクルでの放電容量/最初のサイクルでの放電容量×100
【0152】
前記表2から分かるように、実施例101及び103ないし106のリチウム電池は、比較例15のリチウム電池に比べて、向上した高温寿命特性を示した。
【0153】
[評価例8:高率特性実験]
実施例126ないし131及び比較例19〜20で製造された前記コインセルに対して、常温でリチウム金属対比3.5〜4.9Vの電圧範囲で、0.1Cレートの定電流で充電させつつ、電流密度が増大することによる放電容量の容量維持率を
図4に示した。放電時の電流密度は、それぞれ0.1C,0.2C,0.5C,1C,2C,5C及び10Cレートであった。
図4で容量維持率は、下記数式3から計算される。
[数式3]
率別容量維持率[%]=率別放電容量/0.1Cでの放電容量×100
【0154】
図4から分かるように、実施例125ないし130のリチウム電池は、比較例19,20のリチウム電池に比べて、高率特性が向上している。