特許第6099885号(P6099885)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6099885
(24)【登録日】2017年3月3日
(45)【発行日】2017年3月22日
(54)【発明の名称】河川敷用防水マット
(51)【国際特許分類】
   E02B 3/12 20060101AFI20170313BHJP
【FI】
   E02B3/12
【請求項の数】2
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-126302(P2012-126302)
(22)【出願日】2012年6月1日
(65)【公開番号】特開2013-249674(P2013-249674A)
(43)【公開日】2013年12月12日
【審査請求日】2015年5月26日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000106726
【氏名又は名称】シーアイ化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067323
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 教光
(74)【代理人】
【識別番号】100124268
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 典行
(72)【発明者】
【氏名】宮野 真人
(72)【発明者】
【氏名】渡部 直人
(72)【発明者】
【氏名】日向 雄紀
【審査官】 竹村 真一郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−002074(JP,A)
【文献】 特開2012−021315(JP,A)
【文献】 特開2006−204986(JP,A)
【文献】 特開平11−148124(JP,A)
【文献】 特開平06−341124(JP,A)
【文献】 特開平09−078555(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02B 3/12−3/14
E02D 1/00−3/115
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下面側が凹凸面となる遮水性を備えた合成樹脂シートよりなる止水シートと、
前記止水シートよりも重ね代の分だけ小さく形成されて前記止水シートの上面に積層される通水により繊維が膨張する高吸収性ポリマーの繊維からなる吸水不織布と、
前記吸水不織布に外形状が一致して形成され前記吸水不織布の上面に積層されるクッション性を備えた合成樹脂シートよりなる不織布と、の接合構造になり、
前記不織布は、平布を挟んだ上下の不織布の接合により形成されていることを特徴とする河川敷用防水マット。
【請求項2】
前記止水シートと前記吸水不織布とは直接固定され、前記吸水不織布と平布を挟んだ上下の不織布とは、ニードルパンチ加工によって接合されて一体に積層されていることを特徴とする請求項に記載の河川敷用防水マット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、河川敷や河川堤防護岸に敷設して、水が浸透するのを防ぐ遮水工法に使用する河川敷用防水マット及び河川敷用防水マットの敷設方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、堤防護岸の遮水工法においては、河川護岸に遮水マットを敷設し、その上にブロックマット等のシート状材料を設置し、それをアンカーピンにより固定する場合がある。この場合、アンカーピンにより止水シートに孔があけられるため、漏水が問題になる。そこで、特許文献1に開示されるアンカーピン打設可能マットは、高分子樹脂製の止水シートと合成繊維製の補強マットと、その間に部分的に配した防水性樹脂シートとを一体化して構成し、防水性樹脂シートを配した箇所をアンカーピン打設箇所としている。このアンカーピン打設可能マットによれば、防水性樹脂シートを部分的に配し、防水性樹脂シートを配した箇所をアンカーピン打設箇所とするので、アンカーピンを打設しないほとんどの部分において防水性樹脂シートが配されていない。これにより、材料コストが安くなり、マット重量も軽くなるので作業性が向上する利点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−2074号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記したアンカーピン打設可能マットは、吸水性樹脂シートが補強マットにて覆われて点在または帯状で位置しているため、アンカーピンを打つ箇所がわからない、若しくはわかりにくい。補強マット上にアンカーピン打設箇所を印字などで表示したり、着色することにより、アンカーピンを打設する箇所を明示することも考慮されているが、打設箇所が限定されてしまい、所定間隔毎に吸水性樹脂シートが位置していても地面の状態によっては対応不可能となる場合があり、移動不能や穿孔不能な石がある場合等もある。
【0005】
本発明は上記状況に鑑みてなされたもので、その目的は、アンカーピンの打設位置が限定されず、どの位置にでもアンカーピンを打設できる河川敷用防水マット及び河川敷用防水マットの敷設方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
次に、上記の課題を解決するための手段を、実施の形態に対応する図面を参照して説明する。
請求項1に記載の本発明に係る河川敷用防水マット39は、下面側が凹凸面となる遮水性を備えた合成樹脂シートよりなる止水シート13と、
前記止水シート13よりも重ね代の分だけ小さく形成されて前記止水シート13の上面に積層される通水により繊維が膨張する高吸収性ポリマーの繊維からなる吸水不織布19と、
前記吸水不織布19に外形状が一致して形成され前記吸水不織布19の上面に積層されるクッション性を備えた合成樹脂シートよりなる不織布21と、の接合構造になり、
前記不織布21は、平布35を挟んだ上下の不織布21,21の接合により形成されていることを特徴とする。
請求項2に記載の本発明に係る河川敷用防水マット39は、上記請求項1に記載の河川敷用防水マットにおいて、
前記止水シート13と前記吸水不織布19とは直接固定され、前記吸水不織布19と平布35を挟んだ上下の不織布21,21とは、ニードルパンチ加工によって接合されて一体に積層されていることを特徴とする。
本発明の河川敷用防水マット11は、下面側が凹凸面13となる止水シート15と、
前記止水シート15よりも重ね代17の分だけ小さく形成されて前記止水シート15の上面に積層される吸水不織布19と、
前記吸水不織布19に外形状が一致して形成され前記吸水不織布19の上面に積層されるクッション性を備えた不織布21と、
を具備することを特徴とする。
【0007】
この河川敷用防水マット11では、吸水不織布19が、重ね代17を除く止水シート15の全面に設けられる。任意の位置でアンカーピン27が貫通すると、吸水不織布19が止水シート15にあけられたアンカーピン27の貫通孔29の周囲に不織布21を介して押圧される。通水により吸水不織布19の繊維が膨張すると、貫通孔周囲の押圧部分が高密度となり、貫通孔29が更に高い水密性で塞がれる。
上下の不織布21,21が、中間の平布35を介して固定されることで、平布35と一体の積層体となって剛性が高められる。
【0008】
本発明の河川敷用防水マット31は、下面側が凹凸面13となる止水シート15と、
前記止水シート15よりも重ね代17の分だけ小さく形成されて前記止水シート15の上面に積層されるクッション性を備える第1の不織布21と、
前記第1の不織布21に外形状が一致して形成され前記第1の不織布21の上面に積層される吸水不織布19と、
前記吸水不織布19に外形状が一致して形成され前記吸水不織布19の上面に積層されるクッション性を備えた第2の不織布21と、
を具備することを特徴とする。
【0009】
この河川敷用防水マット31では、吸水不織布19が、重ね代17を除く止水シート15の全面に設けられる。任意の位置でアンカーピン27が貫通すると、第1の不織布21が止水シート15にあけられたアンカーピン27の貫通孔29の周囲に第2の不織布21と吸水不織布19とを介して押圧される。通水により吸水不織布19の繊維が膨張すると、貫通孔周囲の押圧部分が高密度となり、貫通孔29が更に高い水密性で塞がれる。また、吸水不織布19と止水シート15との間に不織布21が介在する分、外力が吸収され易くなる。
【0010】
本発明の河川敷用防水マット33は、上記の河川敷用防水マット11であって、
前記不織布21が、ニードルパンチ加工によって平布35に一体に積層されていることを特徴とする。
【0011】
この河川敷用防水マット33では、不織布21が、剛性の高い平布35とニードルパンチ加工によって固定されることで、平布35と一体の積層体となって剛性が高められる。
【0012】
本発明の河川敷用防水マット33は、上記の河川敷用防水マット11であって、
前記吸水不織布19が、ニードルパンチ加工によって基布37に一体に積層されていることを特徴とする。
【0013】
この河川敷用防水マット33では、吸水不織布19と基布37とが重ね合わされた状態で、ニードルパンチ加工が施されることで双方の繊維が絡まり合って、接着剤等の他の接合材料を不要にして、吸水不織布19と基布37のみでの固定が可能となる。
【0014】
本発明の河川敷用防水マット11は、上記の河川敷用防水マット11であって、
前記止水シート15と、前記止水シート15に接する直近上層の前記吸水不織布19、前記不織布21、または前記基布37のいずれか一つとが、接着剤による複数の点状接着部によって接合されていることを特徴とする。
【0015】
この河川敷用防水マット11では、止水シート15の止水性が低下せずに、吸水不織布19、不織布21、または基布37が止水シート15に固定される。接着剤が点状接着部に使用されるので、使用量が少なくて済む。
【0016】
本発明の河川敷用防水マット11は、上記の河川敷用防水マットであって、
前記不織布21と前記吸水不織布19とが、ニードルパンチ加工によって一体に積層されていることを特徴とする。
【0017】
この河川敷用防水マット11では、不織布21と吸水不織布19とが重ね合わされた状態で、ニードルパンチ加工が施されることで双方の繊維が絡まり合って、接着剤等の他の接合材料を不要にして、不織布21と吸水不織布19とが一体構造となり、不織布21と吸水不織布19のみでの固定が可能となる。
【0018】
本発明の河川敷用防水マット11の敷設方法は、上記の河川敷用防水マット11を用いた河川敷用防水マット11の敷設方法であって、
前記河川敷用防水マット11と隣接する他の前記河川敷用防水マット11とが、前記河川敷用防水マット11の前記重ね代17の上に、隣接する他の前記河川敷用防水マット11が重ねられて地面23に敷かれ、
それぞれの前記河川敷用防水マット11が、異形鉄筋よりなるアンカーピン27によって貫通されて前記地面23に固定されることを特徴とする。
【0019】
この河川敷用防水マット11の敷設方法では、止水シート15の上層の少なくとも一層が吸水不織布19による吸水層となり、地面23へのマット敷設後、アンカーピン27が貫通されると、異形鉄筋よりなるアンカーピン27に繊維が絡められて、止水シート15の貫通孔29の周囲に押圧され、貫通孔29が塞がれる。通水によって吸水不織布19が膨張すると、貫通孔周囲の押圧部分が高密度となり、貫通孔29がより確実に塞がれる。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係る請求項1又は2記載の河川敷用防水マットによれば、全面にわたって吸水不織布が積層配置されているので、アンカーピンの打設位置が限定されず、どの位置にでもアンカーピンを打設でき、施工性が向上する。また、吸水不織布により、打設されたアンカーピンの貫通穿孔があっても、アンカーピンの外周に吸水不織布の繊維が絡みつくようにして吸水膨張し、その穿孔部分からの漏水が極微小、若しくは漏水することがないものとなる。
本願では、上下の不織布が、中間の平布を介して固定されることで、平布と一体の積層体となって剛性が高められ、下層の吸収性不織布の損傷が防止される。また、不織布の素材として薄手の不織布シートを用いることができ、経済性の点でも向上する。
【0021】
本発明に係る河川敷用防水マットによれば、全面にわたって吸水不織布が積層配置されているので、アンカーピンの打設位置が限定されず、どの位置にでもアンカーピンを打設できる。また、吸水不織布が一対の不織布によって挟まれる構成とすることにより、緩衝作用が高まる。
【0022】
本発明に係る河川敷用防水マットによれば、ニードルパンチ加工によって不織布を基布に固定させることにより、不織布の拡がりを抑止できる。また、強度が増し、こしのある層を形成できる。
【0023】
本発明に係る河川敷用防水マットによれば、接着工程を不要にすることが可能であり、吸水不織布と基布とを安価に固定できる。吸水不織布の拡がりを抑止できる。また、強度が増し、こしのある層を形成できる。
【0024】
本発明に係る河川敷用防水マットによれば、不織布自体の通水性を低下させることなく、止水シートの止水性を低下させずに、緩衝層や吸水層を止水シートに固定できる。
【0025】
本発明に係る河川敷用防水マットによれば、接着工程を不要にして、不織布と吸水不織布とを安価に固定でき、一体化させることが可能となる。
【0026】
本発明に係る河川敷用防水マットによれば、アンカーピンの異形鉄筋に、吸水不織布の繊維が絡み、止水シートの貫通孔を塞いだ繊維が膨張して止水性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明に係る第1実施形態の河川敷用防水マットの断面図である。
図2】第2実施形態の河川敷用防水マットの断面図である。
図3】第3実施形態の河川敷用防水マットの断面図である。
図4】第4実施形態の河川敷用防水マットの断面図である。
図5】本発明に係る河川敷用防水マットの敷設方法の手順を示す概略斜視図である。
図6】同敷設方法によって敷設された河川敷用防水マットの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明に係る実施形態を図面を参照して説明する。
図1は本発明に係る第1実施形態の河川敷用防水マットの断面図である。図1は本願請求項1に係る発明の実施態様である。
本実施形態に係る河川敷用防水マット11は、下面側が凹凸面13となる止水シート15と、止水シート15よりも重ね代17の分だけ小さく形成されて止水シート15の上面に積層される吸水不織布19と、吸水不織布19に外形状が一致して形成され吸水不織布19の上面に積層されるクッション性を備えた不織布21と、を備えて成る。
【0029】
止水シート15は、厚さ約1.0mmとされ、地面23(図6参照)に対向する一方の面が凹凸面13で構成される遮水性を備えるシート材で、例えば比重が0.15g/cm3 以上とされ、素材としては、エチレン−酢酸ビニル共重合体や、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアミド、エチレン−(メタ)アクリル酸メチル共重合体などが挙げられる。これらは1種のみを単独で使用しても良く、2種以上を併用することもできる。なお、凹凸面13の形状としては、平滑な面に対して突起状の凸部が所定間隔ごと或いはランダムに縦横に配列した構造や、畦状の凸部を所定間隔で枡目状,格子状に形成する構造など摩擦抵抗となる形状が好ましい。
【0030】
吸水不織布19は、高吸水性ポリマーの繊維からなる。高吸水性ポリマーは、特に限定されない。水に不溶で、かつ水分や湿気を速やかに吸収し、自重の数十倍から数百倍近い水分を吸収して膨潤する従来公知の素材(デンプン系、セルロース系、その他の多糖類系、及びタンパク質系の天然高分子類並びに、ポリビニルアルコール系、アクリル系、その他の付加重合体、ポリエーテル系、縮合系ポリマー及びその他合成高分子系の合成高分子類)が挙げられる。
【0031】
より具体的には、例えば、カルボン酸基又はそのアルカリ金属塩基などの親水性基含有モノマーとカルボン酸基と反応してエステル架橋結合を形成できるヒドロキシル基含有モノマーなどが共重合され、かつエステル架橋結合が導入されてなる繊維、ポリアクリロニトリル系繊維の外層のみが加水分解され、カルボン酸基又はそのアルカリ金属塩基が導入されてなる繊維などであり、膨潤度が10倍以下のものである。これらの繊維の中で、内層がアクリル系繊維で外層に高吸水性部を配した2層構造繊維が好ましく、さらには、高吸水性部がヒドラジン化合物などで架橋されていることが耐久性及び寸法安定性の点でより好ましく、例えば、東洋紡績株式会社製の超吸水性繊維ランシールF(商品名)などを用いることができる。
【0032】
不織布21は、例えば密度0.13g/cm2 程度としたものが好適とされる。河川敷用防水マット11は、不織布21に代えて、織布、編み物、グリッドなどが使用できる。これらを構成する繊維としては、非生分解性、若しくは難生分解性の繊維であれば特に限定はなく、例えばポリエステル繊維、アクリル樹脂繊維、ポリオレフィン繊維、ポリアミド繊維などが挙げられる。
【0033】
止水シート15に積層される吸水不織布19と不織布21とは、保護マット25を構成する。つまり、河川敷用防水マット11は、止水シート15に保護マット25が積層されて成る。保護マット25は、厚さ約10mm程度となり、クッション性を備える。不織布21と吸水不織布19とは、ニードルパンチ加工によって一体に積層構成とすることができる。
【0034】
河川敷用防水マット11は、例えば幅約200cmの略帯状に形成される。河川敷用防水マット11は、止水シート15が、保護マット25の幅長よりも幅方向の一側縁が延出しており、例えば保護マット25の幅長を200cmとした場合に約15cm延出するよう構成される。この止水シート15の延出した部分は、隣り合う他の河川敷用防水マット11とともに敷設された場合の重ね代17となる。
【0035】
次に、上記構成を有する河川敷用防水マット11の作用を説明する。
河川敷用防水マット11では、吸水不織布19が、重ね代17を除く止水シート15の全面に設けられる。任意の位置でアンカーピン27(図6参照)が貫通すると、吸水不織布19が止水シート15にあけられたアンカーピン27の貫通孔29(図6参照)の周囲に不織布21を介して押圧される。通水により吸水不織布19の繊維が膨張すると、貫通孔周囲の押圧部分が高密度となり、貫通孔29が更に高い水密性で塞がれることとなる。すなわち、吸水不織布19により、打設されたアンカーピン27の貫通穿孔があっても、その穿孔部分からの漏水が極微小、若しくは漏水することがないものとなる。
【0036】
また、河川敷用防水マット11は、不織布21と吸水不織布19とが重ね合わされた状態で、ニードルパンチ加工が施されることで双方の繊維が絡まり合って、接着剤等の他の接合材料を不要にして、不織布21と吸水不織布19のみでの固定が可能となる。これにより、接着工程を不要にして、不織布21と吸水不織布19とが安価に一体化固定される。不織布21と吸水不織布19とが固定される保護マット25は、後述するように、止水シート15と接着剤によって固定される。
【0037】
次に、第2実施形態に係る河川敷用防水マット31を説明する。
図2は第2実施形態の河川敷用防水マット31の断面図である。なお、以下の各実施形態において、図1に示した部材と同一の部材には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
この河川敷用防水マット31は、下面側が凹凸面13となる止水シート15と、止水シート15よりも重ね代17の分だけ小さく形成されて止水シート15の上面に積層されるクッション性を備える第1の不織布21と、第1の不織布21に外形状が一致して形成され第1の不織布21の上面に積層される吸水不織布19と、吸水不織布19に外形状が一致して形成され吸水不織布19の上面に積層されるクッション性を備えた第2の不織布21とで構成される。
【0038】
この河川敷用防水マット31では、吸水不織布19が、重ね代17を除く止水シート15の全面に設けられる。任意の位置でアンカーピン27が貫通すると、第1の不織布21が止水シート15にあけられたアンカーピン27の貫通孔29の周囲に第2の不織布21と吸水不織布19とを介して押圧される。通水により吸水不織布19の繊維が膨張すると、貫通孔周囲の押圧部分が高密度となり、貫通孔29が更に高い水密性で塞がれる。また、吸水不織布19と止水シート15との間に不織布21が介在する分、外力が吸収され易くなる。つまり、高いクッション性が得られる。
【0039】
この河川敷用防水マット31によれば、アンカーピン27の打設位置が限定されず、どの位置にでもアンカーピン27を打設できる。また、吸水不織布19が一対の不織布21によって挟まれ、緩衝作用が高まる。
【0040】
次に、第3実施形態に係る河川敷用防水マット33を説明する。
図3は第3実施形態の河川敷用防水マット33の断面図である。
この河川敷用防水マット33は、一対の不織布21が、ニードルパンチ加工によって平布35を挟んで一体に積層されている。この平布35は、例えば800〜1200デニールのモノヒラメント糸を12〜16本/インチに織り込んだ布材で、繊維の方向が直角に交差するよう織り上げて構成される。不織布21が、剛性の高い平布35とニードルパンチ加工によって固定されることで、平布35と一体の積層体となって剛性が高められる。
また、吸水不織布19が、ニードルパンチ加工によって基布37に一体に積層されている。この基布37も上記平布35と同様の織り布より構成される。吸水不織布19と基布37とが重ね合わされた状態で、ニードルパンチ加工が施されることで双方の繊維が絡まり合って、接着剤等の他の接合材料を不要にして、吸水不織布19と基布37のみでの固定が可能となる。平布35を挟んで積層される不織布21と、基布37に積層される吸水不織布19とは、ニードルパンチ加工によって一度に固定されてもよい。
【0041】
この河川敷用防水マット33によれば、ニードルパンチ加工によって不織布21が基布37に固定されることで、不織布21の拡がりを抑止できる。また、接着工程を不要にして、吸水不織布19と基布37とを安価に固定でき、吸水不織布19の拡がりも抑止できる。
【0042】
次に、第4実施形態に係る河川敷用防水マット39を説明する。
図4は第4実施形態の河川敷用防水マット39の断面図である。図4は、本願請求項3に係る発明の実施態様である。
この河川敷用防水マット39は、平布35を挟んだ一対の不織布21と、吸水不織布19とが、ニードルパンチ加工によって一体に積層されている。この積層体は、吸水不織布側が止水シート15に接着固定される。
この河川敷用防水マット39によれば、吸水不織布19が止水シート15に直接固定され、基布37を使用しない分、安価となる。
【0043】
上記した各実施形態の河川敷用防水マット11,31,33,39は、止水シート15と、止水シート15に接する直近上層の吸水不織布19、不織布21、または基布37のいずれか一つとが、接着剤による複数の点状接着部によって接合される。接着剤が用いられることで、止水シート15に穿孔の必要がなく、止水性が低下せずに、吸水不織布19、不織布21、または基布37が止水シート15に固定される。また、接着剤が点状接着部に使用されるので、使用量が少なくて済む。これにより、止水シート15の止水性を低下させずに、緩衝層や吸水層を止水シート15に固定できる。
【0044】
なお、接着剤としては、例えば、ニトリルゴム系、クロロプレーンゴム系、スチレンブタジエンゴム系が用いられる。
【0045】
次に、本発明に係る河川敷用防水マットの敷設方法を説明する。
図5は本発明に係る河川敷用防水マットの敷設方法の手順を示す概略斜視図、図6は同敷設方法によって敷設された河川敷用防水マット11の断面図である。
この河川敷用防水マットの敷設方法では、第1実施形態に係る河川敷用防水マット11を用いた場合を例に説明するが、他の実施形態に係るものを用いても、その敷設方法は同様となる。
河川敷用防水マット11は、図5に示すように河川堤防護岸における地面としての斜面41(法面)に下流側から順に敷設される。河川敷用防水マット11は、止水シート15を下面とし、図6に示すように、この止水シート15の凹凸面13を斜面41に対向させて敷設される。
【0046】
敷設時には、重ね代17が上流側に向くように斜面41の上方から下方に向けて、巻回状態の河川敷用防水マット11を展張し、止水シート15の一側縁に延設された重ね代17に、隣接する他の河川敷用防水マット11が重なるように敷設する。重ねられる河川敷用防水マット同士は、互いを接着或いは溶着することなく重ねるのみでアンカーピン27によって固定される。なお、互いの接合状態を保つよう構成する場合には、重ね代17の所定の位置で熱溶着や接着剤による接着、粘着テープによる接着などを行うこととしてもよく、この場合、接着箇所を点状に断続的に設けてもよく、或いは重ね代17の長手方向に沿って線状に連続して設けてもよい。
【0047】
アンカーピン27は、表面に凹凸の突起が形成された異形鉄筋よりなり、約40〜50cmの真直な挿入部45と、この挿入部45の一端に屈曲形成された保持部43とを具備している。挿入部45の先端は、切削や研削などの加工を施して尖鋭な形状としている。アンカーピン27は、河川敷用防水マット11の不織布21の保護マット側から打設されて貫通し、斜面41に挿着され、アンカーピン27の頭部となる保持部43にて河川敷用防水マット11が固定される。
【0048】
このようにして固定された河川敷用防水マット11は、止水シート15の凹凸面13によって、斜面41に対しての滑落が防止され、この斜面41が覆われた状態を維持できる。さらにアンカーピン27を打設することで、河川敷用防水マット11は、その敷設位置からのズレが防止されることとなる。
【0049】
この河川敷用防水マット11の敷設方法では、止水シート15の上層の少なくとも一層が吸水不織布19による吸水層となる。地面23へのマット敷設後、アンカーピン27が貫通されると、異形鉄筋よりなるアンカーピン27に繊維が絡められて、止水シート15の貫通孔29の周囲に押圧され、貫通孔29が塞がれる。通水によって吸水不織布19が膨張すると、貫通孔周囲の押圧部分が高密度となり、貫通孔29がより確実に塞がれる。
【0050】
従って、本実施形態に係る河川敷用防水マット11,31,33,39によれば、アンカーピン27の打設位置が限定されず、どの位置にでもアンカーピン27を打設することができる。
【0051】
また、本実施形態に係る河川敷用防水マット11,31,33,39の敷設方法によれば、アンカーピン27の異形鉄筋に、吸水不織布19の繊維が絡み、止水シート15の貫通孔29を塞いだ繊維が膨張して、止水性を向上させることができる。
【符号の説明】
【0052】
11…河川敷用防水マット
13…凹凸面
15…止水シート
17…重ね代
19…吸水不織布
21…不織布
23…地面
27…アンカーピン
35…平布
37…基布
図1
図2
図3
図4
図5
図6