特許第6099894号(P6099894)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6099894
(24)【登録日】2017年3月3日
(45)【発行日】2017年3月22日
(54)【発明の名称】携帯電子機器の充電システム
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/02 20160101AFI20170313BHJP
   H04M 1/02 20060101ALI20170313BHJP
   H04M 1/00 20060101ALI20170313BHJP
   H01M 10/44 20060101ALI20170313BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20170313BHJP
   G06F 1/26 20060101ALI20170313BHJP
【FI】
   H02J7/02 B
   H04M1/02 C
   H04M1/00 R
   H01M10/44 Q
   H01M10/48 P
   G06F1/26 F
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-155358(P2012-155358)
(22)【出願日】2012年7月11日
(65)【公開番号】特開2014-18023(P2014-18023A)
(43)【公開日】2014年1月30日
【審査請求日】2015年6月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】300057230
【氏名又は名称】セミコンダクター・コンポーネンツ・インダストリーズ・リミテッド・ライアビリティ・カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100156041
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康秀
(72)【発明者】
【氏名】近藤 英雄
【審査官】 赤穂 嘉紀
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2009/0033363(US,A1)
【文献】 特開2011−234355(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0201308(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 7/02
G06F 1/26
H01M 10/44
H01M 10/48
H04M 1/00
H04M 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
USB充電器に接続することにより、携帯電子機器の充電を行う携帯電子機器の充電システムにおいて、
電源端子と、
第1及び第2のデータ端子を備えたUSBコネクタと、
前記USB充電器から出力される充電電流を池に供給する第1のスイッチング素子と、
源端子とグランドの間に接続された第2のスイッチング素子と、
前記第1及び第2のスイッチング素子のスイッチングを制御する制御回路と、を備え、
前記制御回路は、前記第1のスイッチング素子をオンさせて前記電池の充電電流の供給を開始し、前記電源端子の電圧が第1の所定電圧より低いことに応答して、前記第1のスイッチング素子をオフさせ、前記電源端子の電圧前記第1の所定電圧より低い第2の所定電圧より低い電圧に引き下げられるよう、前記第2のスイッチング素子を所定時間オンさせ、
前記USB充電器は前記電源端子の前記第2の所定電圧に応答して、前記電池への前記充電電流の供給を再開するように構成されることを特徴とする携帯電子機器の充電システム。
【請求項2】
前記USB充電器は前記電源端子の電圧が前記所定時間、前記第2の所定電圧より低くなったことを受けて、前記電池への前記充電電流の供給を再開するように構成されたことを特徴とする請求項1に記載の携帯電子機器の充電システム。
【請求項3】
前記第1及び第2のデータ端子の電圧を検出する電圧検出回路更に備え、前記制御回路は前記電圧検出回路により検出された前記第1及び第2のデータ端子の電圧に基づいて、前記USB充電器の充電電流供給能力を判別することを特徴とする請求項に記載の携帯電子機器の充電システム。
【請求項4】
前記電池に供給される充電電流を前記充電電流供給能力に応じた電流以下に制限する電流制限回路を更に備えることを特徴とする請求項3に記載の携帯電子機器の充電システム。
【請求項5】
前記制御回路は、前記第1のスイッチング素子をオンさせる前に前記充電電流供給能力を判別することを特徴とする請求項4に記載の携帯電子機器の充電システム。
【請求項6】
前記制御回路は、前記第2のスイッチング素子を前記所定時間オンさせた後に、前記充電電流供給能力を再び判別することを特徴とする請求項5に記載の携帯電子機器の充電システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯電子機器の充電システムに関し、特にUSBインターフェースを介して携帯電子機器に内蔵された充電可能な電池(二次電池)を充電する充電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
USB(Universal Serial Bus)は、ホストに様々な周辺デバイスを接続するための汎用シリアルバスの規格である。近年、携帯電話のような携帯電子機器の充電のために、USBを用いたUSB充電器が用いられるようになっている。携帯電子機器がUSBケーブルを介してUSB充電器に接続されると、USBコネクタのVBUS端子(電源端子)を介して携帯電子機器に内蔵された電池が充電される。
【0003】
最近では、従来のUSBハブに加えて、専用充電器(室内壁立て型、カー用など)、アクセサリ・チャージャー・アダプタ、アップル社のiPad、iPod用のUSB充電器などが出現している。
【0004】
ところで、USB充電器には充電電流供給能力(例えば、0.1A、0.5A、2.1A)が異なる各種のタイプがある。そのため、携帯電子機器は、USBコネクタのデータ端子D+、D−の電圧をモニタすることでそのタイプを判別し、充電電流供給能力に応じて、電流制限回路により充電電流の取り込み量を制限していた。これは、携帯電子機器がUSB充電器の充電電流供給能力を超えて充電電流を取り込もうとすると、携帯電子機器側の入力インピーダンスの低下によりVBUS端子の電圧が低下する。すると、USB充電器は、USB規格上、デバイスの破壊等を防止するために充電電流の供給が停止してしまうからである。
【0005】
USB充電器の充電システムについては、特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011−223669号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、携帯電子機器をUSB充電器に接続する際のチャタリング・ノイズの影響により、データ端子D+、D−の電圧のモニタが正しく行われないことがある。そのため、USB充電器のタイプの誤判別が生じ、充電電流の取り込み量が充電電流供給能力を超えるおそれがあった。また、他のノイズの影響によっても電流制限回路の誤動作が生じて、同様に充電電流の取り込み量が充電電流供給能力を超えるおそれがあった。充電電流の取り込み量が適切に制限されなければ、USB充電器は充電電流の供給を停止するので、電池の充電が途中で停止してしまい、携帯電子機器のユーザーにとっては非常に不便である。
【0008】
そこで、本発明は、USB充電器からの充電電流の供給が停止された場合でも、充電電流の供給を自動的に再開させることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、USB充電器に接続することにより、携帯電子機器の充電を行う携帯電子機器の充電システムにおいて、電源端子と、第1及び第2のデータ端子を備えたUSBコネクタと、前記USB充電器から出力される充電電流を前記電池に供給する第1のスイッチング素子と、前記電源端子とグランドの間に接続された第2のスイッチング素子と、前記第1及び第2のスイッチング素子のスイッチングを制御する制御手段と、を備え、前記制御手段は、前記第1のスイッチング素子をオンさせて前記電池の充電を開始し、前記電源端子の電圧が第1の所定電圧より低くなった時に前記第1のスイッチング素子をオフさせ、前記第2のスイッチング素子をオンさせることにより前記電源端子の電圧を前記第1の所定電圧より低い第2の所定電圧より低くすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の携帯電子機器の充電システムによれば、充電電流の取り込み量が充電電流供給能力を超えることにより、USB充電器からの充電電流の供給が停止された場合でも、充電電流の供給を自動的に再開させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施形態における携帯電子機器の充電システムの構成を示す図である。
図2】電流制限回路の回路図である。
図3】本発明の実施形態における携帯電子機器の充電システムの動作を説明するフロー図である。
図4】USB充電器のタイプを示す図である。
図5】USB充電器の他のタイプを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態における携帯電子機器の充電システムを図1乃至6に基づいて説明する。
【0013】
[携帯電子機器の充電システムの全体構成]
図1は、本発明の実施形態における携帯電子機器の充電システムの構成を示す図である。図示のように、携帯電話等の携帯電子機器100はUSBコネクタ10、パワーオンリセット回路11、A/D変換器12、差動アンプ13、電流制限回路14、充電可能な電池15(例えば、リチウムイオン電池)、レジスタ16、タイマー回路17、CPU18、ROM19、第1乃至第6のスイッチング素子SW1〜SW6を含んで構成される。
【0014】
CPU18は、ROM19から読み出されるプログラムに従って、携帯電子機器100の各部に制御信号を出力することで各部の動作(例えば、電流制限回路14の動作、第1乃至第6のスイッチング素子SW1〜SW6のスイッチング)を制御する。携帯電子機器100のUSBコネクタ10は、VBUS端子(電源端子)、第1のデータ端子D+、第2のデータ端子D−及びグランド端子GNDを持っている。携帯電子機器100のUSBコネクタ10の各端子は、USBケーブル20を介して、ホストであるUSB充電器200のUSBコネクタ21の対応する各端子に接続される。
【0015】
[携帯電子機器100の各部の構成]
以下、携帯電子機器100の各部の構成を図1図2図4図5に基づいて説明する。パワーオンリセット回路11は、携帯電子機器100のUSBコネクタ10がUSB充電器200に接続され、USB充電器200からVBUS端子に直流電源(例えば、5V)が供給されると、電源オンを確認し、リセット信号を出力する。携帯電子機器100はこのリセット信号によりリセットされ、起動するようになっている。
【0016】
第1のスイッチング素子SW1は、VBUS端子から電池15に至る充電電流Iの電流経路を形成する電源ラインVBUSLに挿入されている。電源ラインVBUSLの一端はVBUS端子に接続され、他端は、第1のスイッチング素子SW1、電流検出用の第1の抵抗R1、及び電流制限回路14を介して電池15のプラス端子+に接続される。
【0017】
携帯電子機器100のUSBコネクタ10がUSB充電器200に接続され、第1のスイッチング素子SW1がオンすると、VBUS端子から電源ラインVBUSLに充電電流Iが流れることにより電池15が充電される。この場合、充電電流Iにより、電流検出用の第1の抵抗R1の両端の電位差が生じる。差動アンプ13は、この電位差を増幅して出力する。そして、差動アンプ13の出力はA/D変換器12によりデジタルデータに変換され、後述する電流制限回路14の制御のために用いられる。
【0018】
第2のスイッチング素子SW2と第2の抵抗R2は、VBUS端子とグランド(0V)の間に直列に接続される。CPU18は、VBUS端子の電圧が第1の所定電圧(例えば、4V)より低くなった時に、USB充電器200が充電電流Iの供給を停止したと判断して、第1のスイッチング素子SW1をオフさせると共に、第2のスイッチング素子SW2をオンさせる。
【0019】
第2のスイッチング素子SW2がオンすると、VBUS端子の電圧は、第1の所定電圧より低い第2の所定電圧(例えば、0.7V)より低くなる。USB充電器20は、USB規格上、VBUS端子の電圧がタイマー17により設定された所定時間(300msec〜900msec)、第2の所定電圧(0.7V)より低くなったことを受けて、充電電流Iの供給を再開するように構成されている。なお、第1及び第2のスイッチング素子SW1,SW2は、MOSトランジスタ、バイポーラトランジスタにより構成することができる。
【0020】
A/D変換器12は、VBUS端子、第1のデータ端子D+、第2のデータ端子D−及び差動アンプ13の出力の各電圧を対応するデジタルデータに変換する。そして、各デジタルデータはレジスタ16に記憶される。
【0021】
CPU18は、レジスタ16に記憶された第1のデータ端子D+と第2のデータ端子D−の電圧に基づいて、接続されたUSB充電器200の充電電流供給能力(例えば、0.1A、0.5A、2.1A)を判別する。あるタイプのUSB充電器200においては、図4に示すように、USB充電器200側の第1のデータ端子D+は、VBUS端子とグランド端子の間に直列に接続された抵抗R11,R12の接続ノードに接続される。第2のデータ端子D−は、VBUS端子とグランド端子の間に直列に接続された抵抗R13,R14の接続ノードに接続されている。
【0022】
これらの抵抗R11〜R14の抵抗値は充電電流供給能力に対応して設定されており、それに対応して第1のデータ端子D+と第2のデータ端子D−の電圧が発生される。そして、携帯電子機器100がUSB充電器200に接続された状態で、第1及び第2のデータ端子D+,D−の電圧を検出することで、USB充電器200の充電電流供給能力が判別可能になる。
【0023】
また、別のタイプのUSB充電器200においては、図5に示すように、VBUS端子とグランド端子の間に抵抗R15,R16,R17が直列に接続されている。USB充電器200側の第1のデータ端子D+は、抵抗R15,R16の接続ノードに接続され、第2のデータ端子D−は、抵抗R16,R17の接続ノードに接続されている。つまり、第1のデータ端子D+と第2のデータ端子D−とは抵抗R16を介してショートされている。抵抗R16は抵抗R15,R17に比して非常に小さく設定されている。
【0024】
この場合、第1のデータ端子D+とA/D変換器12の間には第1のデータラインD+Lが設けられており、第2のデータ端子D−とA/D変換器12の間には第2のデータラインD−が設けられている。そして、第1のデータ端子D+と第2のデータ端子D−とがショートされているか否かを検出するために、第3乃至第6のスイッチング素子SW3〜SW6と、第3乃至第6の抵抗R3〜R6が設けられている。第1乃至第6のスイッチング素子SW1〜SW6は、MOSトランジスタ、あるいはバイポーラトランジスタにより構成することができる。
【0025】
すなわち、第1のデータラインD+Lとグランドの間には、第5のスイッチング素子SW5と第5の抵抗R5が直列に接続されている。第1のデータラインD+Lと内部電源電圧Vccの間には、第6のスイッチング素子SW6と第6の抵抗R6が直列に接続されている。内部電源電圧Vccは、電池15又はVBUS端子から生成し、例えばVBUS端子の電圧と同じにすることができる。
【0026】
同様に、第2のデータラインD−Lとグランドの間には、第3のスイッチング素子SW3と第3の抵抗R3が直列に接続されている。第2のデータラインD−Lと内部電源電圧Vccの間には、第4のスイッチング素子SW4と第4の抵抗R4が直列に接続されている。第3乃至第6の抵抗R3〜R6は、抵抗R15,R17に比して非常に小さく設定されているとする。
【0027】
第5のスイッチング素子SW5をオンさせると、第1のデータラインD+Lは、ほぼ0V(グランド電圧)にプルダウンされる。図5に示すように、第1のデータ端子D+と第2のデータ端子D−とがショートされていれば、携帯電子機器100がUSB充電器200に接続された状態では、第2のデータ端子D−の電圧もほぼ0Vになる。したがって、第1及び第2のデータ端子D+,D−の電圧を検出することで、第1のデータ端子D+と第2のデータ端子D−とがショートされていることが確認でき、図5のタイプのUSB充電器200の判別が可能になる。
【0028】
このような判別は、第3、第4、第6のスイッチング素子SW3,SW4,SW6を用いて行うこともできる。例えば、第4のスイッチング素子SW4をオンさせると、第2のデータラインD−LはほぼVcc(例えば、5V)にプルアップされる。第1のデータ端子D+と第2のデータ端子D−とがショートされていれば、携帯電子機器100がUSB充電器200に接続された状態では、第1のデータ端子D+の電圧もほぼVccになる。
【0029】
このように、第1のデータラインD+Lと第2のデータラインD−Lの一方をプルアップ又はプルダウンし、他方の電圧を検出することで、第1のデータ端子D+と第2のデータ端子D−とがショートされているかどうかを検知することができる。また、判別を確実に行うために、第3乃至第6のスイッチング素子SW3〜SW6をすべて用いることもできる。なお、第3乃至第6のスイッチング素子SW3〜SW6は、MOSトランジスタ、あるいはバイポーラトランジスタにより構成することができる。
【0030】
電流制限回路14は、電池15に供給される充電電流Iを、判別されたUSB充電器200の充電電流供給能力の範囲内になるように制限する回路である。例えば、USB充電器200の充電電流供給能力が0.5Aであれば、充電電流Iの取り込み量を0.5A以下に制限する。
【0031】
図2に電流制限回路14の具体的な回路例を示す。電流制限回路14は、Pチャネル型MOSトランジスタM1、Nチャネル型MOSトランジスタM2、第7の抵抗R7、第8の抵抗R8及び制御電圧発生回路22を含んで構成される。
【0032】
Pチャネル型MOSトランジスタM1は、電源ラインVBUSLに挿入され、ドレインとゲートの間に第7の抵抗R7が接続されている。Pチャネル型MOSトランジスタM1のゲートとグランドの間には、第8の抵抗R8とNチャネル型MOSトランジスタM2が直列に接続されている。Nチャネル型MOSトランジスタM2のソースはグランドに接続されている。
【0033】
CPU18からは、前述のようにして判別されたUSB充電器200の充電電流供給能力に対応した充電電流供給能力データが出力される。また、差動アンプ13からは充電電流Iにより電流検出用の第1の抵抗R1の両端に生じた電位差が増幅して出力される。差動アンプ13の出力はA/D変換器12によりデジタルデータに変換される。このデジタルデータは実際に流れる充電電流Iに対応した充電電流データに対応する。
【0034】
制御電圧発生回路22は、CPU18からの充電電流供給能力データと充電電流データに基づいて、充電電流IがUSB充電器200の充電電流供給能力以下の所定値になるような制御電圧を発生し、Nチャネル型MOSトランジスタM2のゲートに印加する。Nチャネル型MOSトランジスタM2のインピーダンスは制御電圧に応じて制御される。これにより、Pチャネル型MOSトランジスタM1のゲート電圧が制御され、Pチャネル型MOSトランジスタM1に流れる充電電流Iは充電電流供給能力の範囲内の一定値になるように制御される。
【0035】
[充電システムの動作]
次に、上述のように構成された充電システムの動作を図3のフロー図に基づいて説明する。なお、以下の動作は、CPU18がROM19から読み出されるプログラムを実行することにより行われる。
【0036】
先ず、ステップS1において、携帯電子機器100がUSB充電器200に接続されると、携帯電子機器100のVBUS端子に電源が供給される。これにより、パワーオンリセット回路11が働いてリセット信号が出力される。これに基づいてCPU18を含めて携帯電子機器100が起動する。
【0037】
ステップS2では、第1のデータ端子D+及び第2のデータ端子D−の電圧が検出される。ステップS3では、第1のデータ端子D+と第2のデータ端子D−とのショート検出が行われる。
【0038】
ステップS4では、CPU18はステップS2,S3の検出結果に基づいて、USB充電器200のタイプを判別する。すなわち、ステップS2における第1のデータ端子D+及び第2のデータ端子D−の電圧は、A/D変換器12によりデジタルデータに変換された後、レジスタ16に転送される。
【0039】
すると、CPU18は、レジスタ16に記憶された第1のデータ端子D+及び第2のデータ端子D−の電圧データに基づき、USB充電器200のタイプ(充電電流供給能力)を判別する。この場合、CPU18は、データ端子D+及び第2のデータ端子D−の電圧、USB充電器200のタイプとの関係を示すテーブルデータを参照してUSB充電器200のタイプを判別するようにしてもよい。テーブルデータは、携帯電子機器100に内蔵されたEEPROMのような電気的に書き込み及び消去可能な不揮発性メモリに予め記憶し、新たなタイプが出現した時にはテーブルデータを更新することが好ましい。
【0040】
また、ステップS3において、第1のデータ端子D+と第2のデータ端子D−とがショートされていることが確認されると、CPU18は接続されたUSB充電器200が図5のタイプのものであると判断する。
【0041】
ステップS5において、CPU18は第1のスイッチング素子SW1をオンさせる。これにより、VBUS端子から第1のスイッチング素子SW1を介して電池15への充電電流Iの供給が開始される。
【0042】
ステップS6において、差動アンプ13を介して充電電流Iが検出される。そして、
電流制限回路14により、充電電流Iの電流値をステップS4で判別されたUSB充電器200の充電電流供給能力に応じた電流値以下に制限する。
【0043】
ステップS7において、VBUS端子の電圧が一定時間(例えば、10秒)毎に検出される。VBUS端子の電圧はA/D変換器によりデジタルデータに変化され、レジスタ16に記憶される。
【0044】
ステップS8において、CPU18は、レジスタ16に記憶されたデジタルデータに基づいて、VBUS端子の電圧が第1の所定電圧(例えば、4V)より低いか否かを判断する。
【0045】
そして、(a)VBUS端子の電圧が第1の所定電圧(例えば、4V)より低いと判断された場合、次のステップS9に進み、CPU18はUSB充電器200が充電電流Iの供給を停止したと判断して、第1のスイッチング素子SW1をオフさせる。
【0046】
一方、ステップS8において、(b)VBUS端子の電圧が第1の所定電圧(例えば、4V)以上であって、第3の所定電圧(例えば、4.75V)より低いと判断された場合、CPU18は、USB充電器200が充電電流Iの供給を停止したかどうかを確定できない(グレーゾーン)と判断し、ステップS7に戻る。
【0047】
また、ステップS8において、(c)VBUS端子の電圧が第3の所定電圧(例えば、4.75V)以上と判断された場合、CPU18は、電池15は正常に充電中であると判断して第1のスイッチング素子SW1による充電を継続する。この場合、VBUS端子の電圧のモニタも継続し、該電圧が満充電の電圧に到達したら、第1のスイッチング素子SW1をオフさせ、充電を終了させることができる。
【0048】
ステップ9からステップS10に進むと、CPU18は第2のスイッチング素子SW2を設定された所定時間(300msec〜900msec)だけオンさせる。これにより、VBUS端子の電圧は所定時間中、0.7V以下になる。このVBUS端子の電圧変化を受けて、USB充電器20はVBUS端子への充電電流Iの供給を再開する。
【0049】
そして、所定時間経過後、ステップS11において、CPU18は第2のスイッチング素子SW2をオフさせ、BVUS端子を開放する。その後は、ステップS2に戻る。これにより、第1のデータ端子D−、第2のデータ端子D+の電圧、ショート検出が再び行われ、レジスタ16のデジタルデータは更新される。
【0050】
そして、ステップS4において、CPU18はUSB充電器200のタイプ(充電電流供給能力)の再確認を行い、ステップS6において、更新されたUSB充電器200のタイプ(充電電流供給能力)の情報に基づき、電流制限回路14により前述の充電電流Iの制御が行われる。
【0051】
したがって、第1及び第2のデータ端子D+、D−の電圧のモニタが正しく行われず、あるいは他のノイズの影響により電流制限回路14の誤動作が生じるなどして、充電電流Iの取り込み量が充電電流供給能力を超える事態が生じ、USB充電器200が充電電流Iの供給を停止したとしても、充電電流Iの供給を再開し、電池15の充電を継続することができる。
【0052】
その後、USB充電器200のタイプの再確認が行われ、更新されたUSB充電器200のタイプの情報に基づき、電流制限回路14により充電電流Iの制御が行われるので、充電電流Iの取り込み量が充電電流供給能力を超える事態を防止することができる。
【符号の説明】
【0053】
10 USBコネクタ
11 パワーオンリセット回路
12 A/D変換器
13 差動アンプ
14 電流制限回路
15 電池
16 レジスタ
17 タイマー回路
18 CPU
19 ROM
20 USBケーブル
21 USB充電器200のUSBコネクタ
22 制御電圧発生回路
SW1〜SW6 第1乃至第6のスイッチング素子
図1
図2
図3
図4
図5