【実施例】
【0020】
以下、本発明を実施するための形態を、
図1〜
図4を用いて詳細に説明する。
図1は本発明の塔状体の外壁膜施工方法の概略を説明する図である。
【0021】
1は構造物である例えば煙突の排ガス通風用鋼管2の外側に構築された、例えば高さが60mの鉄骨構造の塔(以下、鉄骨構造体という。)であり、高さ方向の例えば2.5mごとにメンテナンスのためのステージ1aが設けられている。
【0022】
以下、このような鉄骨構造体1の外周に、例えば幅が8m、長さが60m(重量は580kg)の3枚の膜部材3〜5からなる外壁膜を、本発明方法によって施工する方法について説明する。なお、説明上、膜部材3を第1の膜部材3、膜部材4を第2の膜部材4、膜部材5を第3の膜部材5ともいう。
【0023】
(準備作業)
先ず、膜部材3〜5の吊り上げ位置における鉄骨構造体1の上端1bと高さが30mの位置1cに、例えば吊り上げ能力が200kg、揚程が40mのウインチ(図示せず)を各4台ずつ、合計8台×3=24台設置する。これらウインチの巻胴に巻き付けられたワイヤロープ6の先端には、吊り上げ部材7を設置しておく。なお、設置するウインチの揚程が鉄骨構造体1の高さよりも大きい場合は、鉄骨構造体1の上端1bにのみウインチを設置すれば良いことは言うまでもない。
【0024】
次に、膜部材3〜5の吊り上げ位置における各膜部材3〜5の両側部近傍に、鉄骨構造体1の上端1bから基礎部1dに亘って案内用ワイヤー8を敷設する。また、各膜部材3〜5の吊り上げ位置における鉄骨構造体1の基礎部1dの近傍に配置したそれぞれのロール展開装置9a〜9cにロール状に巻いた膜部材3〜5をセットする。
【0025】
(膜部材の吊り上げ作業)
鉄骨構造体1の、高さが30mの位置1cに設置したウインチに設置した吊り上げ部材7に、ロール展開装置9aにセットした第1の膜部材3の上端部を取付ける。
【0026】
その後、ロール展開装置9aを駆動しロールを回転させて第1の膜部材3を巻き出しながら、鉄骨構造体1の前記位置1cに設置したウインチを巻き上げ、前記巻き出した第1の膜部材3を前記案内用ワイヤー8に沿わせて鉄骨構造体1の上端1bに向けて吊り上げる。
【0027】
そして、鉄骨構造体1の前記位置1cに設置したウインチで29mの高さまで第1の膜部材3を吊り上げた後は、第1の膜部材3を鉄骨構造体1の上端1bに設置したウインチに盛り替えて鉄骨構造体1の上端1bまで吊り上げる。
【0028】
この吊り上げの際、吊り上げと並行して、ロール展開装置9aからの第1の膜部材3の巻き出し部分にて、巻き出した第1の膜部材3の両側部にこの第1の膜部材3を第2、第3の膜部材4,5と定着するための定着金物10を所定間隔で取付ける。そして、これら定着金物10と前記案内用ワイヤー8を、例えばカラビナ11を使用して移動自在に連結する(
図2参照)。
【0029】
前記第1の膜部材3の両側部に取り付けた定着金物10が、第1の膜部材3の両側端面から外れないように、
図2に示す例では、第1の膜部材3の両側端部にロープやゴム等の長尺部材12を取り付けたものを示している。
【0030】
また、例えば1つ飛ばしのステージ1aに作業員を配置しておき、吊り上げた第1の膜部材3の仮止めの盛り替えを行う。その際、必要に応じて、第1の膜部材3の吊り上げ位置における例えば10m高さ毎に押さえベルト13を仮固定しておき、吊り上げてきた第1の膜部材3はこの押さえベルト13と鉄骨構造体1の間を通すようにする。その後、押さえベルト13を鉄骨構造体1に本固定して、前記通した膜部材3を鉄骨構造体1に押さえ付け、張力が導入されるまでの不安定な状態の第1の膜材3が風によってばたつくのを防止する。
【0031】
この押さえベルト13は、第1の膜部材3を鉄骨構造体1に押さえ付けることができるものであれば、その構成は特に限定されないが、
図3では、例えばナイロン製或いはポリエステル製の平ベルトの両端に環状部13aを形成したものを示している。この
図3に示した押さえベルト13を使用する場合、両端の環状部13aを使用して鉄骨構造体1に固定する。
【0032】
そして、第1の膜部材3を鉄骨構造体1の上端1b迄吊り上げた後は、当該第1の膜部材3の上下部を固定する。その際、第1の膜部材1の幅方向の各位置で張力が均等になるよう固定することが望ましい。この上下部の固定手段は、第1の膜部材3の上下部を鉄骨構造体1の上端1及び基礎部1dに固定できるものであれば、どのような手段で固定しても良い。
【0033】
次に、上下部を固定した第1の膜部材3の一方側面と隣接する位置に、ウインチ及びロール展開装置9bを用いて第1の膜部材3と同じ要領で第2の膜部材4を吊り上げて、その上下部を固定する。その後、第1の膜部材3と第2の膜部材4の隣接する側面部に位置する定着金物10と案内用ワイヤー8との連結を解除して前記隣接する第1と第2の膜部材3,4を接合する。
【0034】
隣接する第1と第2の膜部材3,4を接合した後は、第2の膜部材4と第1の膜部材3の間に、ウインチ及びロール展開装置9cを用いて第2の膜部材4と同じ要領で第3の膜部材5を吊り上げて、その上下部を固定し、前記と同様に前記隣接する第1と第2の膜部材3,4と第3の膜部材5を接合する。
【0035】
以下、隣り合う膜部材3と4、4と5、5と3のうち、膜部材3と4の隣接する側端部を接合する方法を、
図4を用いて説明する。
膜部材3,4の両側端部には、例えば先に説明したように、ロープやゴム等の長尺部材12が取り付けられている(
図4(a)参照)。
【0036】
そして、膜部材3,4を巻き出しながら、巻き出した膜部材3,4を案内用ワイヤー8に沿わせて鉄骨構造体1の上端1bに向けて吊り上げる際、巻き出した膜部材3,4の両側端部に定着金物10を所定間隔で取付けている(
図4(b)参照)。
【0037】
この定着金物10は、例えば、対をなす所定長さのアルミニウム等の金属製の平板10a,10bを適数の皿ボルト10cとナット10dで、皿ボルト10cが鉄骨構造体1の外側に位置するようにして締め付けるものである。そして、皿ボルト10cとナット10dによる締付け位置と異なる位置に、長尺のねじ棒14aの貫通孔10eを適数設けている。
【0038】
このように、定着金物10を取付けた隣り合う膜部材3,4の、隣接する側端部の外周側同士をくっつけるように、隣接する側端部に取付けられた定着金物10の前記貫通孔10eに隣り合う膜部材3,4の内側からねじ棒14aを貫通させ、ナット14bを取付ける(
図4(c)参照)。
【0039】
図4(c)の状態からナット14bを締付け、隣り合う膜部材3,4の、隣接する側端部の外周側同士をくっつける(
図4(d)参照)。その後、ねじ棒14aを順次ボルト15aとナット15bに付け替える(
図4(e))。
【0040】
そして、前記ねじ棒14aをボルト15aとナット15bに付け替える際、適宜の位置ではU字金物16を取付けて鉄骨構造体1に取り付けられた張設用ケーブルに固定する(
図4(f))。なお、吊り上げ時に利用した案内用ワイヤー8を張設用ケーブルとして利用しても良い。
【0041】
上記本発明方法によれば、鉄骨構造体1の外側に仮設足場を設けなくても、鉄骨構造体1に、外壁膜を施工することが可能になる。
【0042】
本発明は、前記の例に限るものではなく、各請求項に記載の技術的思想の範疇であれば、適宜実施の形態を変更しても良いことは言うまでもない。
【0043】
例えば、上記の例では、排ガス連通用鋼管2の外側に構築した鉄骨構造体1に外壁膜を施工する方法について説明したが、橋脚や照明用支柱、アンテナ塔等の外側に設けた鉄骨構造体1に外壁膜を施工する場合にも適用できる。
【0044】
また、上記の例では、外壁膜の施工を3枚の壁部材3〜5を用いて行うものを示したが、使用する膜部材は3枚に限らない。
【0045】
また、上記の例では、吊り上げる膜部材3〜5の数だけウインチとロール展開装置9a〜9cを設置しているが、ウインチ及びロール展開装置は1枚の膜部材を吊り上げる数だけとし、吊り上げる膜部材3〜5に合わせて、その設置位置を移動させても良い。
【0046】
また、上記の例では、必要な数の案内用ワイヤー8を最初に全て敷設する例を示したが、膜部材を吊り上げる際に、当該吊り上げる膜部材毎に対応する案内ワイヤーを敷設しても良い。