(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6099994
(24)【登録日】2017年3月3日
(45)【発行日】2017年3月22日
(54)【発明の名称】膜材の接合方法
(51)【国際特許分類】
E04H 15/64 20060101AFI20170313BHJP
E04H 15/54 20060101ALI20170313BHJP
【FI】
E04H15/64
E04H15/54
【請求項の数】3
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2013-10432(P2013-10432)
(22)【出願日】2013年1月23日
(65)【公開番号】特開2014-141814(P2014-141814A)
(43)【公開日】2014年8月7日
【審査請求日】2016年1月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005119
【氏名又は名称】日立造船株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000204192
【氏名又は名称】太陽工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089462
【弁理士】
【氏名又は名称】溝上 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100116344
【弁理士】
【氏名又は名称】岩原 義則
(74)【代理人】
【識別番号】100129827
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 進
(72)【発明者】
【氏名】増田 智成
(72)【発明者】
【氏名】▲徳▼永 ▲吉▼昭
(72)【発明者】
【氏名】小林 修治
(72)【発明者】
【氏名】野口 明裕
【審査官】
金高 敏康
(56)【参考文献】
【文献】
特表2002−520527(JP,A)
【文献】
特開平10−2132(JP,A)
【文献】
特公昭49−38527(JP,B1)
【文献】
特開平5−214846(JP,A)
【文献】
特開昭63−130877(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04H 15/00 − 15/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造体に張設する複数の膜材の、隣接する側端部同士を接合する方法であって、
先ず、前記隣接する両膜材の各側端部を表裏面側から平板で挟み込み、これら平板を締め付けることによって一対の膜材固定部を形成し、
次に、前記両膜材の側端部が前記構造体の内面方向に向くようにして、前記締め付け位置と異なる位置で、前記両膜材とこれら膜材を挟み込んだ前記平板にねじ棒を貫通させた後、これらねじ棒に嵌合するナットを締め込んで前記一対の膜材固定部の前記平板同士を密着させることによって前記両膜材に張力を導入し、
その後、前記ねじ棒を本接合用ボルトに付け替えて前記一対の膜材固定部同士を接合することを特徴とする膜材の接合方法。
【請求項2】
前記隣接する両膜材の各側端部の厚さが他の部分の厚さよりも厚くなるようにしたことを特徴とする請求項1に記載の膜材の接合方法。
【請求項3】
前記ねじ棒を本接合用ボルトに付け替える際、適宜の本接合用ボルトにU字金物を取り付けて両膜材の張設用ケーブルに係合することを特徴とする請求項1又は2に記載の膜材の接合方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構造体の例えば屋根部や側壁部にテント等の膜材を張設する際に、膜材の隣り合う側端部同士を構造体の内側から接合する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えばトラス構造からなる構造体の屋根部や側壁部にテントを張設する際、屋根部の面積が広い場合は1枚のテントで屋根部を覆うことができないので、複数枚の膜材を用いてテントを張設することになる。
【0003】
このように複数枚の膜材を用いてテントを張設する場合、膜材の隣り合う側端部同士を接合する必要がある。この隣り合う側端部同士の接合は、例えば
図2に示すように、膜材1の隣り合う側端部に鳩目2を千鳥状に設け、これら鳩目2に紐3を通して結んだ後(レイシング法)、膜材1の隣り合う側端部から二股状に分岐させた継手膜1aの先端同士を融着することで行っていた(特許文献1の従来技術参照)。
【0004】
しかしながら、上記接合方法では、鳩目に通して結んだ紐を外部環境に曝すことを避けるために継手膜を構造体及び膜材の隣り合う側端部同士の外側に配置することになるので、構造体の内側から接合することができない。つまり、膜材の外側からの作業が必要となるため、屋根部の場合には屋根上からの作業が発生する。また、側壁部の場合には、膜材の外側に仮設足場を設置して作業する必要があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平06−26245号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする問題点は、膜材の隣り合う側端部同士の接合を
図2に示した方法で行う場合は、鳩目に通して結んだ紐を外部環境に曝すことを避けるため、継手膜を骨組構造体及び膜材の隣り合う側端部同士の外側に配置することになるので、構造体の内側から接合することができないという点である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、膜材の隣り合う側端部同士を、構造体の内側から接合できる方法を提供することを目的としてなされたものである。
【0008】
本発明の膜材の接合方法は、
構造体に張設する複数の膜材の、隣接する側端部同士を接合する方法であって、
先ず、前記隣接する両膜材の各側端部を表裏面側から平板で挟み込み、これら平板を締め付けることによって一対の膜材固定部を形成し、
次に、前記両膜材の側端部が前記構造体の内面方向に向くようにして、前記締め付け位置と異なる位置で、前記両膜材とこれら膜材を挟み込んだ前記平板にねじ棒を貫通させた後、これらねじ棒に嵌合するナットを締め込んで前記一対の膜材固定部の前記平板同士を密着させることによって前記両膜材に張力を導入し、
その後、前記ねじ棒を本接合用ボルトに付け替えて前記一対の膜材固定部同士を接合することを最も主要な特徴としている。
【0009】
本発明では、隣接する両膜材の各側端部の表裏面を平板で挟み込んだ後、両膜材の側端部を構造体の内面方向に向かせてねじ棒とナットで両膜材の平板同士を密着させて前記両膜材に張力を導入し、その後、ねじ棒を本接合用ボルトに付け替えるので、構造体の内側から膜材の接合が可能になる。
【発明の効果】
【0010】
本発明では、構造体の内側から膜材の接合が可能になり、屋根上での作業や、構造体の外側に仮設足場を設ける必要がなくなるので、短期間及び低コストで容易に膜体の隣り合う側端部同士を接合することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】(a)〜(f)は本発明の膜材の隣接する側端部同士を接合する方法を、順を追って説明する図である。
【
図2】従来の膜材の隣接する側端部同士を接合する方法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、隣接する両膜材の各側端部同士を構造体の内側から接合するという目的を、前記各側端部を表裏面側から平板で挟み込んだ後、側端部が構造体の内面方向に向くようにしてねじ棒とナットで両膜材の平板同士を密着させて前記両膜材に張力を導入し、その後、ねじ棒を本接合用ボルトに付け替えることで実現した。
【実施例】
【0013】
本発明は、構造体の例えば屋根部に張設する膜材11,12の、隣接する各側端部11a,12a同士を接合する方法であり、以下、
図1を用いて順を追って説明する。
【0014】
(事前作業)
前記両膜材11,12の隣接する各側端部11a,12aの厚さt1a,t2aが他の部分11b,12bの厚さt1b,t2bよりも厚くなるようにしておく。
【0015】
図1に示す例では、両膜材11,12の隣接する各側端部11a,12bを中央部側に折り返して形成した筒状の内部にロープやゴム等の長尺部材13を挿入することで、各側端部11a,12aの厚さt1a,t2aを他の部分11b,12bの厚さt1b,t2bよりも厚くしている(
図1(a)参照)。
【0016】
このように両膜材11,12の隣接する各側端部11a,12aの厚さt1a,t2aを他の部分11b,12bの厚さt1b,t2bよりも厚くした場合は、これら側端部11a,12aよりも中央側に寄った側に取付ける膜材固定金物14が、側端部11a,12aから外れ難くなる。
【0017】
従って、膜材固定金物14が膜材11,12の側端部11a,12bから外れ難いものであれば、
図1のように側端部11a,12bに前記長尺部材13を取付けるものに限らず、側端部11a,12bを複数回折り返したもの等でも良い。
【0018】
また、取付けた膜材固定金物14が膜材11,12の側端部11a,12bから外れ難いのであれば、必ずしも両膜材11,12の隣接する各側端部11a,12aの厚さt1a,t2aを他の部分11b,12bの厚さt1b,t2bよりも厚くする必要はない。
【0019】
(接合作業)
先ず、前記各側端部11a,12bに挿入した前記長尺部材13よりも中央側に膜材固定金物14を取付けて一対の膜材固定部を形成する(
図1(b)参照)。
【0020】
この膜材固定金物14は、例えば、対をなす所定長さのアルミニウム等の金属製の平板14a,14bで膜材11,12を表裏面側から挟み込んで2個の皿ボルト14c及びナット14dで締付けるものである。そして、平板14a,14bの、皿ボルト14cとナット14dによる締付け位置の間、及び締付け位置の両側の3箇所に、長尺のねじ棒15aの貫通孔14eを設けている。
【0021】
前記平板14a,14bで膜材11,12を挟み込んで締付ける際、構造体の外側から皿ボルト14cを挿入し、外側に位置する平板14aの表面から皿ボルト14cの頭部が突出しないようにしておく。
【0022】
次に、前記両膜材11,12の側端部11a,12aが前記構造体の内面方向に向くようにして両膜材11,12の側端部11a,12aに取付けた平板14a同士を相対させる。この状態で、相対させた膜材固定金物14に設けた前記貫通孔14eにねじ棒15aを貫通し、貫通させたねじ棒15aの両側にナット15bを取付ける(
図1(c)参照)。
【0023】
前記3本のねじ棒15aの両側から嵌合するナット15bを順次締め込んで前記一対の膜材固定部の前記平板14a,14a同士を密着させ、前記両膜材11,12に張力を導入する(
図1(d)参照)。
【0024】
その後、ナット15bを締め込んだ前記3本のねじ棒15aを、順次、本接合用ボルト16aに付け替えて、前記一対の膜材固定部同士を接合する(
図1(e)参照)。その際、適宜の位置の本接合用ボルト16aにはU字金物17を取付けて張設用ケーブル18に係合し、構造物に取付ける(
図1(f))。なお、16bは本接合用ボルト16aに嵌合するナットである。
【0025】
本発明は、前記の例に限るものではなく、各請求項に記載の技術的思想の範疇であれば、適宜実施の形態を変更しても良いことは言うまでもない。
【0026】
例えば、上記の例では、構造体の屋根部に張設するテントを構成する膜材の隣り合う側端部同士を接合する場合について説明したが、本発明方法は、屋根部に限らず、側壁部にテント等を構成する膜材を張設する際の接合にも適用できることは言うまでもない。
【0027】
また、上記の例では、適宜の位置の本接合用ボルト16aにU字金物17を取付けて張設用ケーブル18に係合しているが、張設用ケーブル18に係合できるものであれば、U字金物17でなくても良い。
【符号の説明】
【0028】
11 膜材
11a 側端部
11b 他の部分
12 膜材
12a 側端部
12b 他の部分
14 膜材固定金物
14a,14b 平板
14c 皿ボルト
14d ナット
14e 貫通孔
15a ねじ棒
15b ナット
16a 本接合用ボルト
16b ナット
17 U字金物
18 張設用ケーブル