(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の実施形態に係るタイヤ製造装置及びタイヤ製造方法について説明する。
図1は、本発明のタイヤ製造装置に係るゴム部材のサーバを模式的に示す正面図であり、
図2は、
図1に示すサーバの平面図である。
なお、本実施形態においては、同時に2条のゴム部材Wを2個の成型ドラム60(60(1)、60(2))に巻き付けてタイヤを製造する方法及び装置を例に採って説明する。しかし、当然のことながらそれに限定されるものではない。
また、以下の説明において、2条のゴム部材Wに対応した部材を区別するときはそれぞれの符合(番号)に付加記号(1)、(2)を付し、区別しないときは、付加記号は省略する。
本実施形態に係るサーバ1は、
図1、2に記載されているように、ゴム部材Wの送り方向に沿って、ゴム部材Wの巻出し部10と、巻出し部10から巻き出されたゴム部材Wを、次工程に位置決めして案内する予備ガイド部20と、予備ガイド部20で位置決めされたゴム部材Wをカッター35aまで搬送する第1の搬送部30と、カッター35aを備えた才断部35と、第1の搬送部30で搬送されてきたゴム部材Wを受け取り、ゴム部材を所定の才断長さになるまで搬送して一旦停止し、才断後のゴム部材Wを次工程に搬送し、その搬送中にゴム部材Wの幅の測定を行う第2の搬送部40と、第2の搬送部40から搬送されてきたゴム部材Wを成型ドラム60まで搬送すると共に、成型ドラム60との間でゴム部材を規定長に向けて引き伸ばし、かつその幅方向の位置決めを行って貼り付ける調整部50と、から成っている。
【0010】
次に、本サーバを構成する各部の構成について説明する。
巻出し部10は、
図1に示すように、例えば、台車又は基礎上に設置された基台12と、基台12に回転可能に取り付けられたリール14とから成る。リール14にはゴム部材が巻回されている。
リール14から巻き出されたゴム部材Wは、案内ローラ16を通過した後、その搬送及び搬送停止がスムーズに行えるよう、一旦自重で垂れ下げた余剰部分を形成した後、次の予備ガイド部20に引き継がれる。
【0011】
図3は、予備ガイド部20及び第1の搬送部30の平面図である。
予備ガイド部20には、円筒ローラ状のスライド型ガイド部材22(22(1)、22(2))と、ゴム部材Wの幅方向の位置を検知する第1の幅方向位置検知手段24が配置されている。
スライド型ガイド部材22は、巻き出されたゴム部材Wを案内すると共に、任意の変位機構によりゴム部材Wの幅方向に移動可能に構成されている。スライド型ガイド部材22を幅方向に移動することで、ゴム部材Wを案内しつつ幅方向に変位させることができる。
図示の例では、スライド型ガイド部材22(22(1)、20(2))は、円板22a(22a(1)、22a(2))の周囲に直立して等間隔に取り付けた複数のロッド状部材22b(22b(1)、22b(2))を、互いに互い違いに組み合わせて対向配置したコンパクトな構造であり、図示しない移動機構により互いに対向方向に移動可能に配置されている。なお、スライド型ガイド部材22はこの構成に限定されず、他の構成であってもよい。
【0012】
第1の幅方向位置検知手段24は、ゴム部材Wの幅方向に直線状に配置された複数の発光素子(ここではLED)24bと、電子カメラ24aから成る。電子カメラ24aは、複数の発光素子24b上を通過するゴム部材Wを撮影して、そのA/D変換後の画像データを後述するコントローラ70に転送し、画像データはコントローラ70で解析してゴム部材Wの幅方向の正規位置からのずれを検知する。
また、検知したずれ量に応じて、スライド型ガイド部材22を幅方向に移動させて、搬送するゴム部材の位置決めを行う。
【0013】
位置決めされたゴム部材Wは、次工程である第1の搬送部30の第1コンベア32上に載置される。
第1の搬送部30は、予備ガイド部20から送られて来るゴム部材Wをカッター35aまで搬送する、それぞれ2条のゴム部材Wに対応して対をなす第1コンベア32(32(1)、32(2))と第2コンベア34(34(1)、34(2))から成っており、第2コンベア34は、第1コンベア32から受け取ったゴム部材Wを次工程のカッターコンベア42(42(1)、42(2))に引き渡す。なお、第1の搬送部30におけるコンベアは、第1及び第2コンベアに限定されない。1台でもよく或いは3台以上であってもよい。
【0014】
第2コンベア34とカッターコンベア42の間には、才断部35の才断手段であるカッター35aが配置されている。ここで、カッター35aは、任意のものが使用できるが、例えば、ゴム部材Wの水平面に対して鉛直方向から移動させて切断する、いわゆるギロチンカッターや、切断刃を備えた挟み式のもの、或いは回転式のものでもよい。
【0015】
図4は、カッターコンベア42の平面図である。
カッターコンベア42は、ゴム部材Wを、カッター35aで才断する前は、所定の才断長さ(成型ドラム60(60(1)、60(2)))に貼りつける際の規定長よりは、後工程における延び代相当程度だけ短い)に相当する距離だけ搬送し、カッター35aで才断した後には、次工程である調整部50の調整コンベア52(52(1)、52(2))に搬送する。
図中左右のカッターコンベア42は並んで配置されており、各カッターコンベア42のカッター側には、各カッターコンベア42の搬送速度を計測する定長測定補助エンコーダ(以下、単にエンコーダという)44(44(1)、44(2))が配置されている。
【0016】
エンコーダ44は、図示しない先端検知手段でゴム部材の先端を検知したとき始動し、カッターコンベア42の搬送面の移動に追従して回転する回転板の回転速度に比例したパルス信号をカウントする。
コントローラ70は、エンコーダ44のカウント数が所定の値になったとき、カッターコンベア42、第1、第2コンベア31、32のそれぞれの図示しない駆動機構を停止させる。また、カッター35aは、コントローラ70の指示に基づきゴム部材Wを才断する。
コントローラ70は、ゴム部材Wの才断後に、カッターコンベア42(1)、42(2)を始動してゴム部材Wの搬送を開始し、才断されたゴム部材を次工程である調整部50へ搬送する。
【0017】
カッターコンベア42の搬送方向終端と調整コンベア52の始端との境界領域には、幅測定手段46が配置されている。
幅測定手段46は、カッターコンベア42の長手方向に対して直角方向に配置された発光素子(例えばLED)列46bと、その上部に、左右のカッターコンベア42に対応して配置された左右のカメラ(電子カメラ)46a(46a(1)、46a(2))から成っている。
幅測定手段46は、カッターコンベア42上を搬送されてくる図中左右のゴム部材Wを左右のカメラで撮影して、撮影した画像データをコントローラ70に転送してその幅の測定を行う。
なお、コントローラ70は、測定した幅と位置に基づき、次段でなされるゴム部材Wの引き伸ばし位置と引き伸ばし量を決定する。
【0018】
図5は、所定長さに才断され幅が検知された後のゴム部材Wと、その搬送コンベアである調整コンベア52の平面図である。また、
図6は、ゴム部材Wの成型ドラム60の貼り付け面上への貼り付け状態を示す、調整部50と成型ドラム60の側面図である。
【0019】
調整部50は、調整コンベア52を備え、図示のように、ゴム部材Wの長さの調整とその幅方向の位置決めとを行う。
ゴム部材Wの長さの調整は、
図6に示すように、調整コンベア52上に配置された押圧ローラ54b(54b(1)、54b(2))と、成型ドラム60上に配置された押圧ローラ54a(54a(1)、54a(2))によって行う。即ち、押圧ローラ54bは、調整コンベア52上にゴム部材Wを押し付けると共に、回転する成型ドラム60上では、押圧ローラ54aがゴム部材Wを成型ドラム60の貼り付け面に押し付ける。その際、成型ドラム60の周速度と調整コンベア52におけるゴム部材Wの搬送速度の速度差を利用して、ゴム部材Wを基準長さ(成型ドラム60に張り付けるときの基準長さ)に向けて引き伸ばす。
【0020】
なお、成型ドラム60上に配置された押圧ローラ54aと調整コンベア側の押圧ローラ54bのうち、少なくとも調整コンベア側の押圧ローラ54bは、ゴム部材Wの幅方向に同軸上に複数個配置されており、かつ互いに幅方向に切離可能なように軸方向に移動可能に構成されている。
押圧ローラ54bを、それぞれ一本の円筒状のローラとせずに、このような分割型の押圧ローラとしたことにより、ゴム部材Wの厚みがその幅方向においてバラつく場合でも、ゴム部材Wに対して押圧ローラ54bによる押圧力をより均一に作用させることができる。
【0021】
ゴム部材Wの幅方向の位置決めは、コンベア移動機構56(56(1)、56(2))で行う。コンベア移動機構56は、第2の幅方向位置検知手段58の幅方向位置検知結果に基づき、調整コンベア52の幅方向位置を調整することで、ゴム部材Wの幅方向位置を調節する。
第2の幅方向位置検知手段58は、ゴム部材Wの幅方向に直線状に配置された複数の発光素子(ここではLED)58bと、電子カメラ58aから成り、成型ドラム60への巻き付け直前におけるゴム部材Wの幅方向のずれを検知する。具体的には、電子カメラ58aで複数の発光素子58b上を通過するゴム部材Wを撮影して、その画像データを後述するコントローラ70に転送する。コントローラ70では画像データを解析して、ゴム部材Wの幅方向の正規位置からのずれ量を算出する。
また、算出したずれ量に応じて、コンベア移動機構56により調整コンベア52を幅方向に移動させて、搬送するゴム部材Wの位置決めを行う。
【0022】
次に、コントローラ70について説明する。
コントローラ70は、例えばマイクロコンピュータからなり、本サーバ1の全体の制御を行う。
即ち、コントローラ70は、電子カメラ24a、46a、58aから転送される画像データ、エンコーダ44から転送される計数データに基づき、それぞれゴム部材Wの幅方向の位置、幅、才断長さを算出し、それぞれの算出値に基づき、ゴム部材Wの幅方向の位置調整、カッター35aの作動、第1、第2コンベア32、34、カッターコンベア42、調整コンベア52の速度調整、調整コンベア52の変位などの制御を行う。
【0023】
即ち、コントローラ70は、ゴム部材Wの第1の幅方向位置検知手段24のカメラ24aの画像データ(A/D変換後の画像データ)から、予備ガイド部20におけるゴム部材Wの幅方向の位置を検出し、例えば、その記憶装置(図示せず)に記憶された正規の位置と比較して、そのずれ量を算出する。また、算出したずれ量に基づきスライド型ガイド部材22の駆動機構(図示せず)の駆動量を例えば記憶装置のテーブルから読み出して、駆動機構を制御してゴム部材Wを正規の位置に位置決めする。
【0024】
また、コントローラ70は、カッターコンベア42の始端位置に設けたエンコーダ44からのパルス出力のカウント値に基づき、搬送されるゴム部材Wの長さを算出する。その算出値が予め定めた値(ゴム部材の所定の切断長さ)に一致したとき、カッターコンベア42、第1の搬送部30のコンベア32、34を停止する。次に、エンコーダ44の計数値をリセットして、適宜の手段でゴム部材Wをカッターコンベア42上で位置固定して、カッター35aを作動してゴム部材Wを才断する。
即ち、コントローラ70は、図示しないゴム部材Wの先端検知センサでゴム部材Wの先端部を検知するとエンコーダ44を作動する。エンコーダ44はゴム部材Wの搬送長さに相当する回転体の回転数を計数し、コントローラ70へ送信する。コントローラ70は、エンコーダ44からの計数値信号に基づき、ゴム部材Wの先端からカッター35aまでの距離が所定の才断長さに相当する計数値を判断し、その計数値に到達した時点でゴム部材Wの搬送を停止する。また、カッター35aを作動すると共に、エンコーダ44の計数値をリセットする。
【0025】
ゴム部材Wを才断した後、コントローラ70は、カッターコンベア42を作動して、才断したゴム部材Wを次の調整コンベア52に引き渡す。
同時に、幅測定手段46により、2条のゴム部材Wのそれぞれの幅を測定する。この幅の測定は、ゴム部材Wの長手方向(周方向ともいう)に沿った複数個所(本実施形態では12か所)で行う。
【0026】
コントローラ70は、幅測定手段46の測定結果に基づき、ゴム部材Wを成型ドラム60に貼りつける際に、ゴム部材Wを規定長(ドラム貼り付け面周長であるが、ある程度のオーバーラップ量を加味した長さとしてもよい)に向けて延伸するのに必要な延伸量を算出し、それに基づき調整コンベア52の搬送速度を算出する。
なお、調整コンベア52の搬送速度の算出は、例えば予め行う実験データなどにより延伸量と、成型ドラムの貼り付け面における周速度と、調整コンベアの速度との速度差データを収集しておき、これを例えばテーブルとして記憶装置(図示せず)に備えることで、このテーブルを参照することで行う。
その際、広幅部分でのゴム部材の引き伸ばし量が狭幅部分より大きくなるようにする。つまり、コントローラ70は、ゴム部材の測定された位置と幅に応じて、成型ドラムの貼り付け面における周速度と、調整コンベアの速度との速度差を変更するように、調整コンベアの駆動機構を制御する。
具体的には、広幅部分での引き伸ばし量を狭幅部分より大きくするように、その測定された位置と幅に応じて引き伸ばし量を変更し、ゴム部材の定長へ向けての引き伸ばしと同時に幅方向のバラツキをなくす調整を行う。
【0027】
コントローラ70は、ゴム部材Wの成型ドラム60への貼り付けに際して、調整コンベア52を算出した搬送速度で駆動するよう調整コンベア搬送制御部を制御する。
また、コントローラ70は、電子カメラ58aからの撮影画像データに基づき、調整コンベア上における才断されたゴム部材の成型ドラム60への貼り付け直前の幅方向の位置ずれを検出し、その検出結果に基づき、コンベア移動機構56を駆動して、ゴム部材Wの幅方向における位置決めを行う。
【0028】
図7Aは、引き延ばし前のゴム部材を、
図7Bは、引き伸ばした後、つまり成型ドラム貼り付け時におけるゴム部材を示す図である。
図7A、Bから明らかなように、才断後のゴム部材Wの幅は、カッター35aの切断面、つまり周方向(長手方向)両端部の幅が広くなり、厚みも変化する傾向が認められる。
そこで、既に述べたように、ゴム部材Wを成型ドラム60に貼り付ける際に、長手方向に伸張することにより、その幅のバラツキを無くすことができる。
【0029】
図8は、2条のゴム部材Wのそれぞれの長さの測定(長手方向矢印)と、幅の測定点を示す図である。
カッターコンベア42(1)及び42(2)上における才断したゴム部材Wは、図示のように、それぞれの全長を、例えば図中矢印の位置(ここでは12ポイント)で測定する。その測定値は、いずれもその両端の幅広部では大きいが、成型ドラム60上における幅は、
図7Bに示すように、ゴム部材Wの全長に亘り一定値に調整される。
【0030】
なお、ゴム部材Wを引き伸ばす際に、本実施形態では、調整コンベア側の押圧ローラ54bは、既に述べたように幅方向に並んだ同軸の複数のサブローラ(図示せず)から成っている。サブローラは、例えば、軸上に等間隔に配置され、隣接するサブローラ間にコイルばねなどの弾性体を介在させるなどして、それぞれが軸方向、つまり隣接するサブローラ方向へ移動可能に配置されている。そのため、ゴム部材Wの押し付け力が分散され、均一な押し付け力で均一に引き伸ばすことができる。これによりゴム部材Wの幅も均一になる。
【0031】
なお、調整コンベア側の押圧ローラ54bをゴム部材Wに対応して1本の押圧ローラで押圧する場合、ゴム部材Wの厚みが幅方向で変化していると、引き伸ばす際に、厚い部分だけに押圧力が集中して加わるため、ゴム部材Wは厚さ方向で変形して、押圧力がゴム部材Wに均一に作用しなくなり、成型不良となる。本実施形態では、このような問題の発生を回避することができる。
【0032】
以上説明したように、本実施形態によれば、才断したゴム部材Wは、その幅が測定される。次に、測定された幅に基づき、当該測定位置における引き延ばし量が決定され、成型ドラムによる搬送速度と、調整コンベアの搬送速度差に基づきゴム部材Wの伸張が行われる。
【0033】
ゴム部材Wは、引き伸ばされて成型ドラムに貼り付ける直前で再びその幅方向の位置ずれが検出され、位置ずれが検出されたときは、そのずれを解消させるために調整コンベアごと幅方向に移動させる。
本実施形態では、以上のようにしてゴム部材Wの、カッターでの才断時におけるゴム部材Wの幅の変更(幅が広がる)傾向を、ゴム部材Wの長手方向に引き伸ばすことにより修正し、成型ドラムに巻き付ける際には、ゴム部材Wの幅は全長に亘り一定になるように修正する。ゴム部材Wの伸張量の調整は才断されたゴム部材毎に行うため、ゴム部材Wの長さと幅を調整することができる。これにより、製造不良を低減し、突き合わせジョイントを部材長のずれなく、正確に行うことができる。