(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
車両の燃料タンク内で発生した蒸発燃料を吸着する吸着材を備えるキャニスタと、前記キャニスタと前記燃料タンクとをつなぐベーパ通路に設けられている封鎖弁とを備える蒸発燃料処理装置であって、
前記封鎖弁は、弁座に対する弁可動部の軸方向距離であるストローク量が零から所定範囲内にあるときが閉弁状態で前記燃料タンクを密閉状態に保持可能であり、前記ストローク量を開弁方向に変化させて前記燃料タンクの内圧が所定値以上低下したときの前記ストローク量に基づいて開弁開始位置を学習できるように構成されており、
前記封鎖弁の開弁開始位置の学習では、前回に学習した開弁開始位置よりも所定ストロークだけ小さい値から前記弁可動部のストローク量を開弁方向に変化させて学習を行なうことを特徴とする蒸発燃料処理装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
封鎖弁の開弁開始位置を高精度で学習するためには、封鎖弁の開度をゆっくり開方向に変化させる必要がある。しかし、上記した蒸発燃料処理装置では、封鎖弁の開度を所定速度で閉弁位置から開方向に変化させる方法のため、封鎖弁の開弁開始位置を高精度で学習しようとすると、学習制御に時間が掛かる。
【0005】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、本発明が解決しようとする課題は、封鎖弁の開弁開始位置を学習する学習制御を短時間で高精度に行なえるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記した課題は、各請求項の発明によって解決される。
請求項1の発明は、車両の燃料タンク内で発生した蒸発燃料を吸着する吸着材を備えるキャニスタと、前記キャニスタと前記燃料タンクとをつなぐベーパ通路に設けられている封鎖弁とを備える蒸発燃料処理装置であって、前記封鎖弁は、弁座に対する弁可動部の軸方向距離であるストローク量が零から所定範囲内にあるときが閉弁状態で前記燃料タンクを密閉状態に保持可能であり、前記ストローク量を開弁方向に変化させて前記燃料タンクの内圧が所定値以上低下したときの前記ストローク量に基づいて開弁開始位置を学習できるように構成されており、前記封鎖弁の開弁開始位置の学習では、前回に学習した開弁開始位置よりも所定ストロークだけ小さい値から前記弁可動部のストローク量を開弁方向に変化させて学習を行なうことを特徴とする。
【0007】
本発明によると、封鎖弁の開弁開始位置の学習では、前回に学習した開弁開始位置よりも所定量だけ小さい値から弁可動部のストローク量を開弁方向に変化させて学習を行なう。即ち、前回に学習した開弁開始位置よりも所定量だけ小さい値(ストローク量)までは、弁可動部を速やかに開弁方向に変化させ、その後、ゆっくりと弁可動部のストローク量を開弁方向に変化させて学習を行なうことができる。このように、開弁開始位置の近傍のみで弁可動部をゆっくりと開弁方向に変化させる方法のため、短時間で高精度の学習を行なえるようになる。
【0008】
請求項2の発明によると、燃料タンク内の液面の揺れが車両の通常走行時と比較して大きくなると判断される動作時にタンク不安定状態と判定され、封鎖弁の開弁開始位置の学習が禁止されることを特徴とする。
ここで、燃料タンク内の液面の揺れが車両の通常走行時と比較して大きくなると判断される動作には、例えば、急加速・急減速動作(スロットル開度、加速度センサ、ブレーキ踏力等で検出)、旋回動作(ステアリング角度で検出)、悪路走行(ショックアブソーバの内圧で検出)、坂道走行(車体の傾きで検出)、突風受け時(ナビ強調で検出)等がある。
このように、燃料タンク内の液面の揺れが車両の通常走行時と比較して大きくなると判断される場合には、一般的に燃料タンク内で蒸発燃料が発生し、燃料タンクの内圧が上昇する。このため、封鎖弁の開弁開始位置の学習時に封鎖弁の開弁が開始されても、燃料タンクの内圧が低下しない場合がある。したがって、燃料タンク内の液面の揺れが車両の通常走行時と比較して大きくなると判断される場合には、特に燃料タンクの内圧を検出するまでもなく、封鎖弁の開弁開始位置の学習を禁止する。これにより、誤学習を防止できる。
【0009】
請求項3の発明によると、燃料タンクの内圧を検出し、基準時間内の内圧変化量が所定値以上となった場合にタンク不安定状態と判定され、前記封鎖弁の開弁開始位置の学習が禁止されることを特徴とする。
即ち、基準時間内の燃料タンクの内圧変化量が所定値以上の場合には、学習時に封鎖弁の開弁が開始されても、燃料タンクの内圧が低下しない場合がある。したがって、このような場合に封鎖弁の開弁開始位置の学習が禁止することで、誤学習を防止できる。
請求項4の発明によると、タンク不安定状態と判定された後、基準時間内の内圧変化量が所定値よりも低下した場合にタンク安定状態と判定され、前記封鎖弁の開弁開始位置の学習が可能になることを特徴とする。
請求項5の発明によると、一定時間毎に燃料タンクの内圧を検出して差圧を求め、前記差圧が所定値以上の状態が第1所定時間継続した場合はタンク不安定状態と判定され、前記差圧が所定値よりも小さい状態が第2所定時間継続した場合はタンク安定状態と判定されることを特徴とする。
請求項6の発明によると、車両の停止中、あるいはハイブリット車のモータ走行時はタンク安定状態と判定されることを特徴とする。
これにより、封鎖弁の開弁開始位置の学習を精度良く行なえるようになる。
【0010】
請求項7の発明によると、封鎖弁の開弁開始位置の学習値が誤っていると判定された場合には、その学習値がリセットされ、ストローク量零位置から前記封鎖弁の開弁開始位置の学習が行なわれることを特徴とする。
このため、誤った学習値に基づいて封鎖弁が使用されることがなくなり、燃料タンクの内圧制御やエンジンの空燃比制御が不安定にならない。
請求項8の発明によると、封鎖弁が開弁されているときの燃料タンクの内圧に基づいて、学習値が誤っているか否かの判定が行なわれることを特徴とする。
即ち、封鎖弁の開弁開始位置の学習値が誤っていると、燃料タンクの内圧制御が不安定になるため、封鎖弁が開弁されているときの燃料タンクの内圧に基づいて、学習値が誤っているか否かの判定を行なうことができる。
請求項9の発明によると、封鎖弁が開弁されているときのエンジンの空燃比信号に基づいて、学習値が誤っているか否かの判定が行なわれることを特徴とする。
即ち、封鎖弁の開弁開始位置の学習値が誤っていると、車両エンジンの空燃比制御が不安定になるため、空燃比信号に基づいて学習値が誤っているか否かの判定を行なうことができる。
【0011】
請求項10の発明によると、封鎖弁を所定回数開弁させる毎に、ストローク量零位置から前記封鎖弁の開弁開始位置の学習を行ない前回の学習値がリセットされることを特徴とする。
このように、封鎖弁の開弁開始位置の学習を定期的に行なうことで、封鎖弁を正常な状態で使用できるようになる。
請求項11の発明によると、封鎖弁は、ネジの螺合作用を利用して弁座に対する弁可動部の軸方向距離であるストローク量を制御することを特徴とする。
このため、ネジの回転角度から弁可動部のストローク量を正確に把握できるようになる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によると、封鎖弁の開弁開始位置を学習する学習制御が短時間で高精度に行なえるようになる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[実施形態1]
以下、
図1から
図10に基づいて本発明の実施形態1に係る蒸発燃料処理装置20の説明を行なう。本実施形態の蒸発燃料処理装置20は、
図1に示すように、車両のエンジンシステム10に備えられており、車両の燃料タンク15で発生した蒸発燃料が外部に漏れ出ないようにするための装置である。
【0015】
<蒸発燃料処理装置20の構造概要について>
蒸発燃料処理装置20は、
図1に示すように、キャニスタ22と、そのキャニスタ22に接続されたベーパ通路24、パージ通路26、及び大気通路28とを備えている。
キャニスタ22内には、吸着材としての活性炭(図示省略)が装填されており、燃料タンク15内の蒸発燃料を前記吸着材により吸着できるように構成されている。
ベーパ通路24の一端部(上流側端部)は、燃料タンク15内の気層部と連通されており、ベーパ通路24の他端部(下流側端部)がキャニスタ22内と連通されている。そして、ベーパ通路24の途中にはベーパ通路24を連通・遮断する封鎖弁40(後記する)が介装されている。
また、パージ通路26の一端部(上流側端部)は、キャニスタ22内と連通されており、パージ通路26の他端部(下流側端部)がエンジン14の吸気通路16におけるスロットルバルブ17よりも下流側通路部と連通されている。そして、パージ通路26の途中にはパージ通路26を連通・遮断するパージ弁26vが介装されている。
さらに、キャニスタ22は故障検出に使用されるOBD用部品28vを介して大気通路28が連通されている。大気通路28の途中にはエアフィルタ28aが介装されており、大気通路28の他端部は大気に開放されている。
前記封鎖弁40、パージ弁26v及びOBD用部品28vは、ECU19からの信号に基づいて制御される。
さらに、ECU19には、燃料タンク15内の圧力を検出するタンク内圧センサ15p等の信号が入力される。
【0016】
<蒸発燃料処理装置20の動作概要について>
次に、蒸発燃料処理装置20の基本的動作について説明する。
車両の駐車中は、封鎖弁40が閉弁状態に維持される。このため、燃料タンク15の蒸発燃料がキャニスタ22内に流入することはない。そして、駐車中に車両のイグニッションスイッチがオンされると、封鎖弁40の開弁開始位置を学習する学習制御が行なわれる(後記する)。
また、車両の駐車中は、パージ弁26vは閉弁状態に維持されてパージ通路26は遮断状態となり、大気通路28は連通状態に維持される。
車両の走行中は、所定のパージ条件が成立する場合に、ECU19がキャニスタ22に吸着されている蒸発燃料をパージさせる制御を実行する。この制御では、キャニスタ22を大気通路28により大気に連通させたまま、パージ弁26vが開閉制御される。パージ弁26vが開弁されると、エンジン14の吸気負圧がパージ通路26を介してキャニスタ22内に作用する。これにより、キャニスタ22内に大気通路28から空気が流入するようになる。さらに、パージ弁26vが開弁されると、封鎖弁40が開弁方向に動作して燃料タンク15の圧抜き制御が行なわれる。これにより、キャニスタ22内にベーパ通路24から燃料タンク15内の気体が流入するようになる。この結果、キャニスタ22内の吸着材がキャニスタ22に流入する空気等によりパージされ、前記吸着材から離脱した蒸発燃料が空気と共にエンジン14の吸気通路16に導かれて、エンジン14内で燃焼される。
【0017】
<封鎖弁40の基本構造について>
封鎖弁40は、閉弁状態でベーパ通路24を封鎖し、開弁状態でベーパ通路24を流れる気体の流量を制御する流量制御弁であり、
図2に示すように、バルブケーシング42とステッピングモータ50とバルブガイド60とバルブ体70とを備えている。
バルブケーシング42には、弁室44、流入路45及び流出路46により、一連状をなす逆L字状の流体通路47が構成されている。また、弁室44の下面すなわち流入路45の上端開口部の口縁部には、弁座48が同心状に形成されている。
前記ステッピングモータ50は、前記バルブケーシング42の上部に設置されている。前記ステッピングモータ50は、モータ本体52と、そのモータ本体52の下面から突出し、正逆回転可能に構成された出力軸54を有している。出力軸54は、バルブケーシング42の弁室44内に同心状に配置されており、その出力軸54の外周面に雄ネジ部54nが形成されている。
【0018】
バルブガイド60は、円筒状の筒壁部62と筒壁部62の上端開口部を閉鎖する上壁部64とから有天円筒状に形成されている。上壁部64の中央部には筒軸部66が同心状に形成されており、その筒軸部66の内周面に雌ネジ部66wが形成されている。前記バルブガイド60は、前記バルブケーシング42に対して、回り止め手段(図示省略)により軸回り方向に回り止めされた状態で軸方向(上下方向)に移動可能に配置されている。
バルブガイド60の筒軸部66の雌ネジ部66wには、前記ステッピングモータ50の出力軸54の雄ネジ部54nが螺合されており、ステッピングモータ50の出力軸54の正逆回転に基いて、バルブガイド60が上下方向(軸方向)に昇降移動可能に構成されている。
前記バルブガイド60の周囲には、そのバルブガイド60を上方へ付勢する補助スプリング68が介装されている。
【0019】
前記バルブ体70は、円筒状の筒壁部72と筒壁部72の下端開口部を閉鎖する下壁部74とから有底円筒状に形成されている。下壁部74の下面には、例えば、円板状のゴム状弾性材からなるシール部材76が装着されている。
前記バルブ体70は、前記バルブガイド60内に同心状に配置されており、そのバルブ体70のシール部材76がバルブケーシング42の弁座48の上面に対して当接可能に配置されている。バルブ体70の筒壁部72の上端外周面には、円周方向に複数個の連結凸部72tが形成されている。そして、バルブ体70の連結凸部72tがバルブガイド60の筒壁部62の内周面に形成された縦溝状の連結凹部62mと一定寸法だけ上下方向に相対移動可能な状態で嵌合している。そして、バルブガイド60の連結凹部62mの底壁部62bがバルブ体70の連結凸部72tに対して下方から当接した状態で、バルブガイド60とバルブ体70とが一体で上方(開弁方向)に移動可能となる。
また、前記バルブガイド60の上壁部64と前記バルブ体70の下壁部74との間には、バルブガイド60に対してバルブ体70を常に下方、即ち、閉弁方向へ付勢するバルブスプリング77が同心状に介装されている。
【0020】
<封鎖弁40の基本動作について>
次に、封鎖弁40の基本動作について説明する。
封鎖弁40は、ECU19からの出力信号に基づいてステッピングモータ50を開弁方向、あるいは閉弁方向に予め決められたステップ数だけ回転させる。そして、ステッピングモータ50が予め決められたステップ数だけ回転することで、ステッピングモータ50の出力軸54の雄ネジ部54nとバルブガイド60の筒軸部66の雌ネジ部66wとの螺合作用により、バルブガイド60が上下方向に予め決められたストローク量だけ移動するようになる。
前記封鎖弁40では、例えば、全開位置においてステップ数が約200Step、ストローク量が約5mmとなるように設定されている。
封鎖弁40のイニシャライズ状態(初期状態)では、
図2に示すように、バルブガイド60が下限位置に保持されて、そのバルブガイド60の筒壁部62の下端面がバルブケーシング42の弁座48の上面に対して当接している。また、この状態で、バルブ体70の連結凸部72tは、バルブガイド60の連結凹部62mの底壁部62bに対して上方に位置しており、バルブ体70のシール部材76はバルブスプリング77のバネ力により、バルブケーシング42の弁座48の上面に押付けられている。即ち、封鎖弁40は全閉状態に保持されている。そして、このときのステッピングモータ50のステップ数が0Stepであり、バルブガイド60の軸方向(上方向)の移動量、即ち、開弁方向のストローク量が0mmとなる。
また、車両の駐車中等では、封鎖弁40のステッピングモータ50がイニシャライズ状態から開弁方向に、例えば、4Step回転する。これにより、ステッピングモータ50の出力軸54の雄ネジ部54nとバルブガイド60の筒軸部66の雌ネジ部66wとの螺合作用でバルブガイド60が約0.1mm上方に移動し、バルブケーシング42の弁座48から浮いた状態に保持される。これにより、気温等の環境変化で封鎖弁40のバルブガイド60とバルブケーシング42の弁座48間に無理な力が加わり難くなる。
なお、この状態で、バルブ体70のシール部材76はバルブスプリング77のバネ力により、バルブケーシング42の弁座48の上面に押付けられている。
【0021】
ステッピングモータ50が4Step回転した位置からさらに開弁方向に回転すると、前記雄ネジ部54nと雌ネジ部66wとの螺合作用でバルブガイド60が上方に移動し、
図3に示すように、バルブガイド60の連結凹部62mの底壁部62bがバルブ体70の連結凸部72tに下方から当接する。そして、バルブガイド60がさらに上方に移動することで、
図4に示すように、バルブ体70がバルブガイド60と共に上方に移動し、バルブ体70のシール部材76がバルブケーシング42の弁座48から離れるようになる。これにより、封鎖弁40が開弁される。
ここで、封鎖弁40の開弁開始位置は、バルブ体70に形成された連結凸部72tの位置公差、バルブガイド60の連結凹部62mに形成された底壁部62bの位置公差等により、封鎖弁40毎に異なるため、正確に開弁開始位置を学習する必要がある。この学習を行なうのが学習制御であり、封鎖弁40のステッピングモータ50を開弁方向に回転(ステップ数を増加)させながら燃料タンク15の内圧が所定値以上低下したタイミングに基づいて開弁開始位置のステップ数を検出する。
このように、封鎖弁40が閉弁状態のときはバルブガイド60が本発明の弁可動部に相当し、封鎖弁40が開弁状態のときはバルブガイド60とバルブ体70とが本発明の弁可動部に相当する。
【0022】
<一般的な封鎖弁40の学習制御について>
次に、
図5、
図6に基づいて、一般的な封鎖弁40の開弁開始位置の学習制御について説明する。
学習制御は、封鎖弁40を所定回数開弁させる毎に1回の割合で行なわれる。また、学習制御は、車両のエンジンのイグニッションスイッチがオンしたタイミング等、燃料タンク15の状態が安定(タンク安定状態)と判定された場合に行われる。
ここで、
図5の上図は、時間を基準(横軸)としてステッピングモータ50のステップ数の変化、即ち、バルブガイド60、及びバルブ体70のストローク量(軸方向の移動量)を表している。このため、以後、ステップ数とストローク量とは同意語として使用する。
また、
図5の下図は、時間を基準(横軸)として燃料タンク15の内圧(タンク内圧)の変化を表している。ここで、タンク内圧は、一定周期毎に検出される。
前述のように、車両の駐車中では、ステッピングモータ50が開弁方向に、例えば、4Step回転してバルブガイド60がバルブケーシング42の弁座48から約0.1mm浮いた状態に保持されている。この状態で、エンジンのイグニッションスイッチがオンすると、ステッピングモータ50が閉弁方向に4Step(−4Step)回転し、前記封鎖弁40はイニシャライズ状態(0Step)に戻される。次に、
図5の上図に示すように、ステッピングモータ50が封鎖弁40の前回の開弁開始位置(前回の学習値Sx)から所定ステップZStep戻った閉弁限界位置S0(S0=Sx−Z)まで開弁方向に高速回転する。
【0023】
これにより、バルブガイド60が比較的速く閉弁限界位置S0まで上方に移動するようになり、学習時間の短縮を図れるようになる。なお、このときには、バルブ体70のシール部材76は、バルブスプリング77のバネ力でバルブケーシング42の弁座48の上面に当接しており、封鎖弁40は閉弁状態である。
そして、ステッピングモータ50が封鎖弁40の閉弁限界位置S0(S0=Sx−Z)Stepまで開弁方向に回転すると、ステッピングモータ50が停止し、
図6の上図に示すように、一定時間Tだけこの状態が維持される。そして、ステッピングモータ50が停止している間にタンク内圧が検出される。そして、タンク内圧が前回の検出値に対して所定値(ΔP1)以上低下していなければ、閉弁限界位置S0(S0=Sx−Z)Stepがストローク量として記憶される。
次に、
図6の上図に示すように、ステッピングモータ50がAStep(例えば、2Step)だけ開弁方向に回転し、一定時間Tだけ維持され、この間にタンク内圧が検出される。このとき、タンク内圧が前回の検出値に対して所定値(ΔP1)以上低下していなければ、前回のストローク量S0Stepに今回のストローク量(AStep)を加算した値が新たなストローク量として記憶される。即ち、ストローク量がS0Stepから(S0+A)Stepに更新される。
そして、このような工程が繰り返し実行されて、今回検出されたタンク内圧が前回の検出値に対して所定値(ΔP1)以上低下していると、封鎖弁40の開弁が開始されたと判定される。これにより、学習フラグがオンし(図示省略)、一つ前の工程で更新したストローク量S4に(A−1)Stepが加算された値が開弁開始位置の学習値として記憶され、学習制御が終了する。
【0024】
<封鎖弁40の学習禁止条件について>
次に、
図7、
図8に基づいて、封鎖弁40の学習禁止判定について説明する。
例えば、高負荷走行をしてエンジンを停止した直後等、燃料タンク15内の蒸発燃料の発生量が多く、内圧の上昇量が大きいときには、学習制御により封鎖弁40の開弁が開始されても燃料タンク15の内圧が所定値(ΔP1)以上低下しない場合がある。このような条件下では、封鎖弁40の開弁開始位置を正確に学習することができないため、学習制御を禁止する必要がある。
本実施形態に係る蒸発燃料処理装置20では、
図8に示すフローチャートに基づいて学習禁止条件の判定を行なっている。ここで、
図8のフローチャートに示す処理は、ECU19の記憶装置に格納されたプログラムに基づいて所定時間毎に繰り返し実行される。
先ず、
図8のステップS101で、燃料タンク15の内圧P1を読み取り(
図7参照)、ステップS102でカウンタCntをスタートさせる。次に、カウンタCntのスタート後、例えば、T1=500ms経過したタイミングで燃料タンク15の内圧P2を読み取る(ステップS103)。そして、タンク内圧P1とタンク内圧P2との差圧計算を行なって差圧ΔP(=P2−P1)を求め(ステップS104)、その差圧ΔPを所定値B(例えば、B=0.1kPa)と比較する(ステップS105)。そして、差圧ΔPが所定値Bよりも小さい場合には(ステップS105 YES)、タンク安定状態と判定される(ステップS106)。タンク安定状態と判定された場合には、封鎖弁40の開弁開始位置の学習制御が許容される。
また、差圧ΔPが所定値Bよりも大きい場合には(ステップS105 NO)、タンク不安定状態と判定される(ステップS107)。タンク不安定状態と判定された場合には、封鎖弁40の開弁開始位置の学習制御が禁止される。
ここで、タンク安定状態と判定されて封鎖弁40の開弁開始位置の学習制御が行なわれた場合であっても封鎖弁40の開弁操作時に燃料タンク15の内圧変動が大きくなったり、あるいはエンジンの空燃比が不安定になったことが検出された場合には、封鎖弁40の開弁開始位置の誤学習と判定して、速やかに次の学習制御を行ない前回の学習値をリセットする。
【0025】
次に、
図9、
図10に基づいて、変更例に係る封鎖弁40の学習禁止判定について説明する。
ここで、
図10のフローチャートに示す処理は、ECU19の記憶装置に格納されたプログラムに基づいて所定時間毎に繰り返し実行される。
図10のフローチャートに示す処理では、先ず、ステップS201で不安定カウンタCntT1がスタートする。次に、不安定カウンタCntT1がスタートしてからの時間判定が行なわれる(ステップS202)。不安定カウンタCntT1のスタート直後は、ステップS202の時間判定がYESとなるため、処理がステップS203〜ステップS205に進み、今回検出したタンク内圧(Pn)と前回検出したタンク内圧(Pn−1)との差圧ΔPが計算される。そして、差圧ΔPが、例えば、0.1kPaよりも大きければ(ステップS206 NO)、安定カウンタCntT2がリセットされ(ステップS212)、処理はステップS201に戻される。
タンク内圧の変化が大きい状態では(
図9におけるPn−3〜Pn−1 参照)、ステップS201からステップS212までの処理が繰り返し実行される。そして、不安定カウンタCntT1の値が、例えば、3secよりも大きくなると(ステップS202 NO)、タンク不安定状態と判定(不安定判定)される(ステップS214)。これにより、封鎖弁40の開弁開始位置の学習制御が禁止される。
【0026】
また、ステップS201からステップS212までの処理が繰り返し実行されている途中で、差圧ΔPが、例えば、0.1kPaよりも小さくなると(ステップS206 YES)、安定カウンタCntT2がスタートする(ステップS207)。そして、ステップS208で、安定カウンタCntT2が、例えば、500ms以上経過したか否かが判定される。安定カウンタCntT2のスタート直後では500ms以上経過していないため(ステップS208 NO)、処理はステップS201に戻る。タンク内圧の変化が小さい状態では(
図9におけるPn〜Pn+4 参照)、ステップS201からステップS208までの処理が繰り返し実行されて、安定カウンタCntT2の値が500msec以上になると(ステップS208 YES)、
図9の下図に示すように、安定フラグがオンしてタンク安定状態と判定(安定判定)される(ステップS209)。これにより、不安定カウンタCntT1がリセットされる(ステップS210)。
そして、タンク安定状態と判定されることで、封鎖弁40の開弁開始位置の学習制御が許容される。
【0027】
<本実施形態に係る蒸発燃料処理装置20の長所>
本実施形態に係る蒸発燃料処理装置20によると、封鎖弁40の開弁開始位置を学習する際には、前回に学習した開弁開始位置(前回の学習値Sx)よりも所定ステップZStep戻った閉弁限界位置S0(S0=Sx−Z)からバルブガイド60(弁可動部)を開弁方向に変化させて学習を行なう。即ち、前回に学習した開弁開始位置(前回の学習値Sx)よりも所定ステップZStep戻った閉弁限界位置S0(S0=Sx−Z)までは、バルブガイド60(弁可動部)を速やかに開弁方向に変化させ、その後、ゆっくりとバルブガイド60(弁可動部)のストローク量を開弁方向に変化させて学習を行なうことができる。このように、開弁開始位置の近傍のみでバルブガイド60(弁可動部)をゆっくりと開弁方向に変化させる方法のため、短時間で高精度の学習を行なえるようになる。
また、
図7に示すように、燃料タンク15の内圧を検出し、基準時間T1に対する内圧変化量ΔPが所定値(0.1kPa)以上となってタンク不安定状態と判定された場合に、封鎖弁40の開弁開始位置の学習が禁止されるため、誤学習を防止できる。
【0028】
また、
図9に示すように、一定時間毎に燃料タンク15の内圧を検出して差圧ΔPを求め、差圧ΔPが所定値(0.1kPa)以上の状態が第1所定時間(例えば、3sec)継続した場合はタンク不安定状態と判定され、前記差圧ΔPが所定値(0.1kPa)よりも小さい状態が第2所定時間(例えば、500msec)継続した場合はタンク安定状態と判定される。
このため、燃料タンク15の内圧の安定、不安定の判別精度が高くなる。
また、封鎖弁40は、ネジの螺合作用を利用して弁座48に対するバルブガイド60(弁可動部)のストローク量を制御することで流量を調整可能な構成であるため、ネジの回転角度からバルブガイド60(弁可動部)のストローク量を正確に把握できるようになる。
また、封鎖弁40が開弁されているときの燃料タンク15の内圧、あるいはエンジンの空燃比信号に基づいて、学習値が誤っているか否かの判定を行ない、封鎖弁40の開弁開始位置の学習値が誤っていると判定された場合には、その学習値がリセットされる。このため、誤った学習値に基づいて封鎖弁40が使用されることがなくなり、燃料タンク15の内圧制御やエンジンの空燃比制御が不安定にならない。
【0029】
<変更例>
本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更が可能である。例えば、本実施形態では、燃料タンク15の内圧の変化からタンク安定状態、あるいはタンク不安定状態を判定する例を示した。しかし、特に燃料タンク15の内圧の変化を監視せずに、燃料タンク15内の液面の揺れが車両の通常走行時と比較して大きくなると判断される動作時にタンク不安定状態と判定し、封鎖弁の開弁開始位置の学習を禁止することも可能である。
ここで、燃料タンク15内の液面の揺れが車両の通常走行時と比較して大きくなると判断される動作には、例えば、急加速・急減速動作(スロットル開度、加速度センサ、ブレーキ踏力等で検出)、旋回動作(ステアリング角度で検出)、悪路走行(ショックアブソーバの内圧で検出)、坂道走行(車体の傾きで検出)、突風受け時(ナビ強調で検出)等がある。
このように、燃料タンク15内の液面の揺れが車両の通常走行時と比較して大きくなると判断される場合には、一般的に燃料タンク15内で蒸発燃料が発生し、燃料タンク15の内圧が上昇する。したがって、燃料タンク15内の液面の揺れが車両の通常走行時と比較して大きくなると判断される場合に封鎖弁40の開弁開始位置の学習を禁止することで、誤学習を防止できる。また、車両の停止中、あるいはハイブリット車のモータ走行時は、一般的に、タンク安定状態と判定して、封鎖弁40の開弁開始位置の学習を行なうことが可能である。
また、本実施形態では、封鎖弁40を所定回数開弁させる毎に1回の割合で封鎖弁40の開弁開始位置の学習制御を行なう例を示した。しかし、封鎖弁40を開弁させる毎に、前記学習制御を行ない前回の学習値をリセットすることも可能である。これにより、常に封鎖弁40を正常な状態で使用できるようになる。
また、本実施形態では、封鎖弁40のモータにステッピングモータ50を使用する例を示したが、ステッピングモータ50の代わりにDCモータ等を使用することも可能である。