(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
本実施形態に係る貼付剤は、支持体と、該支持体に積層された粘着剤層とを備える。そして、該粘着剤層は4−アミノピリジンと、カルボキシ基を有する粘着剤とを含有する。
【0014】
本明細書中、「優れた薬物安定性」とは、本実施形態に係る貼付剤を特定の温度及び期間(例えば、60℃、2週間)の条件で保管した後に、粘着剤層に含まれる薬物(4−アミノピリジン)が95%以上残存していることを意味する。
【0015】
最大皮膚透過速度は、4−アミノピリジンの薬理作用を十分に発揮できる点から、10μg/cm
2/hr以上であることが好ましく、15μg/cm
2/hr以上であることが好ましい。また、最大皮膚透過速度は、副作用軽減の点から、50μg/cm
2/hr以下であることが好ましい。
【0016】
支持体としては、通常貼付剤に使用できる伸縮性又は非伸縮性のものが用いられる。具体的には、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブタジエン等のポリオレフィン;エチレン酢酸ビニル重合体、ポリ塩化ビニル、ナイロン、ポリウレタン、セルロース誘導体、ポリアクリロニトリル等の合成樹脂や綿等の合成樹脂で形成された、フィルム若しくはシート又はこれらの積層体、多孔質膜、発泡体、織布及び不織布等の布帛、多孔質膜、発泡体、紙材等を好適に用いることができる。
【0017】
4−アミノピリジンは、下記化学式(1)で表される構造を有する化合物であり、その分子量は94.1である。4−アミノピリジンは、カリウムチャネルの阻害剤として知られている。
【化1】
【0018】
上記4−アミノピリジンの含有量は、粘着剤層全量を基準として、5〜20質量%であることが好ましく、5〜15質量%であることがより好ましい。4−アミノピリジンの含有量が5質量%以上であると、貼付剤中における薬物安定性が高くなり、4−アミノピリジンの薬理作用を十分に発揮することができる。また、4−アミノピリジンの含有量が20質量%以下であると、4−アミノピリジンの投与による副作用を生じにくい点から好ましい。
【0019】
本実施形態に係る粘着剤層は、カルボキシ基を有する粘着剤を含有する。カルボキシ基を有する粘着剤は、カルボキシ基を有するアクリレート共重合体(以下、「アクリレート共重合体(カルボキシ基含有タイプ)」ともいう。)であることが好ましい。
【0020】
アクリレート共重合体(カルボキシ基含有タイプ)としては、アクリル酸を含有するアクリレート共重合体が挙げられる。アクリル酸と共重合するモノマー成分としては、アクリル酸と共重合できるものであれば、特に制限はなく、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸2−エチルヘキシル等のアクリル酸エステル;アクリル酸ジメチルアミド、アクリル酸モルホリンアミド等のアクリル酸アミド;酢酸ビニル;ビニルアルコール;スチレンなどが挙げられる。アクリル酸と共重合するモノマー成分は1種単独であってもよいし、2種以上であってもよい。アクリレート共重合体(カルボキシ基含有タイプ)としては、例えば、Duro−tak(登録商標、ヘンケルコーポレーション)87−2852、Duro−tak(登録商標)87−2194、GELVA753等が挙げられる。
【0021】
カルボキシ基を有する粘着剤の含有量は、粘着剤層全量を基準として、25〜95質量%であることが好ましい。
【0022】
本実施形態に係る貼付剤の粘着剤層は、4−アミノピリジンに対する粘着剤に含まれるカルボキシ基のモル比率が、0.13以上である。該モル比率が0.2以上であることが好ましく、0.5以上であることが更に好ましい。
【0023】
本明細書中、「4−アミノピリジンに対するカルボキシ基を有する粘着剤に含まれるカルボキシ基のモル比率」とは、1つの粘着剤層において、カルボキシ基を有する粘着剤中のカルボキシ基のモル数を、4−アミノピリジンのモル数で除した値を意味する。
【0024】
カルボキシ基を有する粘着剤に含まれるカルボキシ基のモル数の算出方法としては、例えば、JIS−0070の方法にしたがい、酸価を測定することにより、カルボキシ基のモル数を求めることができる。
【0025】
また、カルボキシ基を有する粘着剤の組成が公知である場合には、その組成から次のようにして算出することもできる。例えば、米国特許出願公開第2004/0137046号明細書によれば、Duro−tak(登録商標)87−2194とは、ポリ(アクリル酸2−エチルへキシル−co−酢酸ビニル−co−アクリル酸)であり、アクリル酸2−エチルへキシル、酢酸ビニル及びアクリル酸の含有量は、それぞれ75質量%、20質量%、5質量%である。したがって、粘着剤層におけるDuro−tak(登録商標)87−2194の含有量が、粘着剤層全量に対して90質量%である場合、該粘着剤層はモノマー単位としてアクリル酸を4.5質量%含有する。また、アクリル酸の分子量は72.1であるから、その貼付剤中にモノマー単位として含まれるアクリル酸のモル数は、容易に求めることができる。
【0026】
本実施形態に係る粘着剤層には、ヒドロキシ基を有するアクリレート共重合体(以下、「アクリレート共重合体(ヒドロキシ基含有タイプ)」ともいう。)をさらに含有してもよい。アクリレート共重合体(ヒドロキシ基含有タイプ)としては、例えば、アクリル酸2−ヒドロキシエチル等のヒドロキシアルキルアクリレートが挙げられる。上記ヒドロキシアルキルアクリレートは、さらにハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基等で置換されていてもよい。
【0027】
また、上記カルボキシ基を有する粘着剤が、ヒドロキシ基をも有するものであってもよい。
【0028】
上記アクリレート共重合体(ヒドロキシ基含有タイプ)としては、例えば、Duro−tak(登録商標)87−2516、GELVA788、GELVA737等が挙げられる。
【0029】
粘着剤層が、アクリレート共重合体(ヒドロキシ基含有タイプ)をさらに含有する場合、アクリレート共重合体(ヒドロキシ基含有タイプ)の含有量は、粘着剤層全量を基準として80質量%以下であり、20〜80質量%であることが好ましく、40〜70質量%であることがより好ましい。また、この場合、アクリレート共重合体(カルボキシ基含有タイプ)の含有量は、20質量%以上100質量%未満であることが好ましく、45質量%以上100質量%未満であることがより好ましい。
【0030】
粘着剤層は、必要に応じて、粘着付与樹脂、可塑剤、充填剤、紫外線吸収剤、抗酸化剤、溶剤等をさらに含有してもよい。
【0031】
粘着付与樹脂としては、脂環族飽和炭化水素樹脂;ロジン、ロジンのグリセリンエステル、水添ロジン、水添ロジンのグリセリンエステル又はロジンのペンタエリスリトールエステルなどのロジン誘導体;テルペン樹脂、石油樹脂又はマレイン酸レジンなどを好適に用いることができる。具体的には、例えば、エステルガム(荒川化学工業社製、商品名)、ハリエスター(ハリマ化成社製、商品名)、ペンタリン(登録商標、イーストマンケミカル社製、商品名)、フォーラル(イーストマンケミカル社製、商品名)、KE−311(荒川化学工業社製、商品名)等のロジン系樹脂、YSレジン(ヤスハラケミカル社製、商品名)、ピコライト(ルースアンドディルワース社製、商品名)等のテルペン系樹脂、アルコン(登録商標、荒川化学工業社製、商品名)、リガレッツ(イーストマンケミカル社製、商品名)、ピコラスチック(イーストマンケミカル社製、商品名)、エスコレッツ(エクソン社製、商品名)、ウイングタック(グッドイヤー社製、商品名)、クイントン(登録商標、日本ゼオン社製、商品名)等の石油樹脂、フェノール系樹脂、キシレン系樹脂等が使用可能である。
【0032】
上記粘着付与樹脂は、1種を単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、粘着付与樹脂の含有量は、貼付剤の十分な粘着力及び剥離時の局所刺激性を考慮し、当業者が適宜設定することが可能であるが、粘着剤層全量を基準として10〜60質量%であることが好ましく、20〜50質量%であることがさらに好ましい。
【0033】
可塑剤としては、例えば、飽和炭化水素系可塑剤;パラフィン系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイル及び芳香族系プロセスオイル等の石油系オイル;オリーブ油、ツバキ油、ひまし油、トール油及びラッカセイ油等の植物系オイル;ジブチルフタレート及びジオクチルフタレート等の二塩基酸エステル;ポリブテン及び液状イソプレンゴム等の液状ゴム;スクワラン;スクワレン;ジエチレングリコール;ポリエチレングリコール;プロピレングリコール;ジプロピレングリコール等が挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。可塑剤としては、流動パラフィン又はポリブテンが特に好ましい。
【0034】
粘着剤層中の可塑剤の含有量は、粘着剤としての十分な粘着力の維持を考慮し、当業者が適宜調整することができるが、粘着剤層全量を基準として5〜60質量%であることが好ましく、10〜30質量%であることがより好ましい。
【0035】
充填剤としては、ケイ酸アルミニウムやケイ酸マグネシウム等のケイ酸塩、水酸化アルミニウム、炭酸アルミニウム、炭酸マグネシウム、ケイ酸、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、亜鉛酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、酸化亜鉛、酸化チタン等が例示できる。
【0036】
紫外線吸収剤としては、p−アミノ安息香酸誘導体、アントラニル酸誘導体、サリチル酸誘導体、クマリン誘導体、アミノ酸誘導体、イミダゾリン誘導体、ピリミジン誘導体、ジオキサン誘導体等が例示できる。
【0037】
抗酸化剤としては、トコフェロール及びそのエステル誘導体、アスコルビン酸及びそのエステル誘導体、ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール等を好適に用いることができる。
【0038】
上記充填剤、紫外線吸収剤及び抗酸化剤は、合計で、粘着剤層全量を基準として、好ましくは0.01〜10質量%、さらに好ましくは0.01〜5質量%、特に好ましくは0.1〜2質量%の量で配合される。
【0039】
また、本実施形態の貼付剤には、保存中の外的な環境から粘着剤層を保護するために、粘着剤層の表面を剥離ライナーで被覆してもよい。貼付剤が剥離ライナーを備える場合、貼付剤を使用する時に、剥離ライナーを剥離して除去する。
【0040】
剥離ライナーとしては、一般に貼付剤の剥離ライナーとして使用できる紙、フィルム、箔及びこれらの積層体等を使用することができ、実質的に薬物非透過性のプラスチック製フィルムが好ましい。特に、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートのようなポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、アルミニウム等の金属、セルロース等を好適に使用することができる。
【0041】
剥離ライナーの粘着剤層に面する表面は、シリコーン及びテフロン(登録商標)等による離型処理を施してもよい。離型処理することにより、剥離除去しやすくすることができる。特に、シリコーンによる離型処理がより好ましく、剥離特性が経時安定的に保持される。
【0042】
本実施形態に係る貼付剤は、アルミニウム製の包材中に入れて、保管することが好ましい。アルミニウム製の包材には、本実施形態に係る貼付剤とともに、乾燥剤、脱酸素剤等の保存剤を同封することがより好ましい。このような保存剤としては、例えば、焼成珪藻土、未焼成珪藻土、結晶性シリカ、ソルビン酸等が挙げられ、具体的には、ファーマキープ(登録商標、三菱ガス化学社製)、エージレス(登録商標、三菱ガス化学社製)等を使用することができる。
【0043】
本実施形態に係る貼付剤は、例えば、以下のような方法で製造することができる。まず、4−アミノピリジンと粘着剤、必要に応じて、その他の成分を溶媒中で混合して塗工液を得る。次に、得られた塗工液を剥離ライナー上に塗布した後、溶媒を乾燥除去して粘着剤層を形成させ、該粘着剤層上に支持体を積層し、貼付剤を得る。したがって、得られた貼付剤は、剥離ライナー、粘着剤層、支持体の順に積層される。また、4−アミノピリジンの結晶の析出を抑制するために、得られた貼付剤を加温してもよい。
【実施例】
【0044】
実施例、比較例及び参考例を用いて、本発明をより詳細に説明するが、本発明は実施例によって何ら制限されるものではない。なお、貼付剤の配合割合を示す表1、表2及び表4に記載の数値は、特に記載のない限り、質量(g)を意味する。
【0045】
1.アクリレート共重合体に含まれる官能基の違いによる4−アミノピリジンの安定性
(1)実施例1及び比較例1〜4の貼付剤の製造方法
表1に記載の比率にしたがって、4−アミノピリジン以外の成分を酢酸エチルに溶解させて混合させた後、4−アミノピリジンを加え、十分に混合して塗工液を得た。得られた塗工液をポリエチレンテレフタレート製の剥離ライナー上に塗布した後、溶媒を乾燥除去して、所定の膏体厚み(100μm)を有する粘着剤層(薬物含有層)を形成させた。次に、上記粘着剤層にポリエチレンテレフタレート製の支持体を貼り合わせて、剥離ライナー、粘着剤層、支持体の順に積層し、貼付剤をそれぞれ得た。
【0046】
(2)参考例1の貼付剤の製造方法
アクリレート(ヒドロキシ基含有タイプ)95.0gの酢酸エチル溶液に、4−アミノピリジン5.0gを加え、十分に撹拌して塗工液を得た。得られた塗工液をポリエチレンテレフタレート製の剥離ライナー上に塗布した後、溶媒を乾燥除去して、所定の膏体厚み(100μm)を有する粘着剤層(薬物含有層)を形成させた。次に、上記粘着剤層にポリエチレンテレフタレート製の支持体を貼り合わせて、剥離ライナー、粘着剤層、支持体の順に積層し、貼付剤を得た。
【0047】
【表1】
【0048】
(3)薬物安定性試験
実施例1、比較例1〜4及び参考例1の貼付剤の薬物安定性は、以下のようにして評価した。
製造した貼付剤を25mm×25mmの略矩形に打ち抜き、アルミニウム製の包材にそれぞれ個別に封入した後、該包材を表2に記載の条件(60℃、2週間)にしたがって保管した。2週間が経過した後、該包材から貼付剤を取り出し、得られた貼付剤にテトラヒドロフラン及びメタノールを添加して振とう及び超音波処理することにより、貼付剤中に含有される薬物(4−アミノピリジン)を抽出した。得られた抽出液を濃縮したのち、高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)にて吸光度を測定した。得られた吸光度から、検量線に基づいて貼付剤一枚あたりの薬物含有量を算出した。なお、保管前の貼付剤中の薬物含有量を同様に算出し、初期4−アミノピリジン含有量とした。薬物安定性試験における貼付剤中の薬物残存率を、下記式(1)により算出し、薬物安定性を示す値とした。結果を表2に示す。
薬物残存率=(試験後の貼付剤1枚あたりの薬物含有量)/(試験前の貼付剤1枚あたりの薬物含有量)×100(%) …(1)
【0049】
【表2】
【0050】
表2に示すように、実施例1の貼付剤は、60℃、2週間経過後においても、4−アミンピリジンの分解が見られなかったのに対し、比較例1〜4及び参考例1の貼付剤は、薬物含有量が8〜17%程度低下した。したがって、Duro−tak(登録商標)87−2194を用いた実施例1の貼付剤は、アクリレート共重合体(無官能タイプ)を用いた比較例1、3及び4の貼付剤、並びにアクリレート共重合体(ヒドロキシ基含有タイプ)を用いた比較例2及び参考例1の貼付剤よりも、4−アミノピリジンの安定性に優れていることが明らかとなった。
【0051】
2.アクリレート共重合体(カルボキシ基含有タイプ)及びアクリレート共重合体(ヒドロキシ基含有タイプ)の混合検討
(1)実施例2〜7及び比較例5〜6の貼付剤の製造方法
表3に記載の比率にしたがって、4−アミノピリジン以外の成分を酢酸エチルに溶解させて混合させた後、4−アミノピリジンを加え、十分に混合して塗工液を得た。得られた塗工液をポリエチレンテレフタレート製の剥離ライナー上に塗布した後、溶媒を乾燥除去して、所定の膏体厚み(100μm)を有する粘着剤層(薬物含有層)を形成させた。次に、上記粘着剤層にポリエチレンテレフタレート製の支持体を貼り合わせて、剥離ライナー、粘着剤層、支持体の順に積層し、貼付剤をそれぞれ得た。
【0052】
【表3】
【0053】
(2)薬物安定性試験
実施例1〜7、比較例5〜6の貼付剤の薬物安定性は、以下のようにして評価した。
製造した貼付剤を25mm×25mmの略矩形に打ち抜き、アルミニウム製の包材にそれぞれ個別に封入した後、該包材を表4に記載の条件(60℃、2週間)にしたがって保管した。2週間が経過した後、該包材から貼付剤を取り出し、得られた貼付剤にテトラヒドロフラン及びメタノールを添加して振とう及び超音波処理することにより、貼付剤中に含有される薬物(4−アミノピリジン)を抽出した。得られた抽出液を濃縮したのち、高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)にて吸光度を測定した。得られた吸光度から、検量線に基づいて貼付剤一枚あたりの薬物含有量を算出した。なお、保管前の貼付剤中の薬物含有量を同様に算出し、初期4−アミノピリジン含有量とした。薬物安定性試験における貼付剤中の薬物残存率を、下記式(1)により算出し、薬物安定性を示す値とした。結果を表5に示す。
薬物残存率=(試験後の貼付剤1枚あたりの薬物含有量)/(試験前の貼付剤1枚あたりの薬物含有量)×100(%) …(1)
【0054】
表4に示すように、4−アミノピリジンの濃度が5〜20質量%の場合において、それぞれアクリレート共重合体(カルボキシ基含有タイプ)の割合が増加するにつれて、4−アミノピリジンの安定性が改善する傾向が見られた。特に、比較例5の貼付剤は、Duro−tak(登録商標)87−2194を含有しているものの、4−アミノピリジンの残存率は90%未満であった。
【0055】
【表4】
【0056】
表4に示すように、実施例1〜7の貼付剤は、4−アミノピリジンに対するカルボキシ基を有する粘着剤に含まれるカルボキシ基のモル比率が0.13以上であり、比較例5〜6の貼付剤と比較して高い薬物残存率を示した。実施例1〜7の貼付剤は、貼付剤中における薬物安定性に優れていることが明らかとなった。
【0057】
3.カルボキシ基を有する粘着剤とカルボキシ基を有しない粘着剤における皮膚透過性の比較
(1)参考例2の貼付剤の製造方法
表5に記載の比率にしたがい、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SIS)27.9g、脂環族飽和炭化水素樹脂50.3g、飽和炭化水素系可塑剤16.8gをトルエンに溶解させて混合し、4−アミノピリジン5.0gをさらに加えた。得られた混合物を撹拌して、塗工液を得た。得られた塗工液をポリエチレンテレフタレート製の剥離ライナー上に塗布した後、溶媒を乾燥除去して、所定の膏体厚み(100μm)を有する粘着剤層(薬物含有層)を形成させた。次に、上記粘着剤層にポリエチレンテレフタレート製の支持体を貼り合わせて、剥離ライナー、粘着剤層、支持体の順に積層し、貼付剤を得た。
【0058】
【表5】
【0059】
(2)皮膚透過性試験
実施例1及び2、参考例1及び2の貼付剤について、皮膚透過性試験を以下のような手順で行った。
ヘアレスマウスの背部皮膚を剥離し、剥離された皮膚の真皮側がレセプター層側になるようにして、37℃の温水を外周部に循環させたフロースルーセルに装着した。次に、皮膚の角質層側に貼付剤を貼付し、レセプター層としてリン酸緩衝液(pH7.4)を加えた生理食塩水を用いて、貼付してから0(貼付直後)、2、6、10、14、18及び22時間経過した時点でレセプター溶液をサンプリングし、高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いて4−アミノピリジン濃度を測定した。得られた測定値から1時間あたりの薬物透過速度を算出し、定常状態における単位面積あたりの薬物の皮膚透過速度とした。
【0060】
皮膚透過性試験の結果を
図1に示す。
図1から明らかなように、実施例1及び2の貼付剤は、ともに最大皮膚透過速度が10μg/cm
2/hr以上であり、貼付後14時間経過した時点においても、皮膚透過速度が10μg/cm
2/hrを維持した。一方、参考例1の貼付剤は、貼付後6時間経過した時点で、皮膚透過速度が50μg/cm
2/hrを超え、その後急激に皮膚透過速度が低下したことから、安定した局所濃度を得られず、副作用発現の可能性が予想された。また、参考例2の貼付剤は、皮膚透過性が顕著に低かった。
【0061】
4.包材の違いによる薬物安定性への影響
(1)参考例3の貼付剤の製造方法
表6に記載の比率にしたがって、乳酸及び4−アミノピリジンを酢酸エチルに溶解させ、アクリレート共重合体(ヒドロキシ基含有タイプ)35.5g及びアクリレート共重合体(カルボキシ基含有タイプ)35.5gを加え、十分に攪拌して塗工液を得た。得られた塗工液をポリエチレンテレフタレート製の剥離ライナー上に塗布した後、溶媒を乾燥除去して、所定の膏体厚み(100μm)を有する粘着剤層(薬物含有層)を形成させた。次に、上記粘着剤層にポリエチレンテレフタレート製の支持体を貼り合わせて、剥離ライナー、粘着剤層、支持体の順に積層し、貼付剤を得た。
【0062】
【表6】
【0063】
(2)薬物安定性試験
製造した貼付剤を25mm×25mmの略矩形に打ち抜き、包材の最内装がPE(ポリエチレン)製の包材、PAN(ポリアクリロニトリル)製の包材又はPP(ポリプロピレン)製の包材にそれぞれ個別に封入した後、該包材を表7に記載の条件(60℃、2週間)にしたがって保管した。2週間が経過した後、包材から貼付剤を取り出し、得られた貼付剤にテトラヒドロフラン及びメタノールを添加して振とう及び超音波処理することにより、貼付剤中に含有される薬物(4−アミノピリジン)を抽出した。得られた抽出液を濃縮したのち、高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)にて吸光度を測定した。得られた吸光度から、検量線に基づいて貼付剤一枚あたりの薬物含有量を算出した。なお、保管前の貼付剤中の薬物含有量を同様に算出し、初期4−アミノピリジン含有量とした。その結果を表7に示す。
【0064】
【表7】
【0065】
表7に示すように、参考例3の貼付剤における薬物安定性は、PE製の包材、PP製の包材、PAN製の包材の順で向上した。