特許第6100170号(P6100170)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6100170中和したコポリマーのクラムおよび中和したコポリマーのクラムを作製するための方法
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  • 特許6100170-中和したコポリマーのクラムおよび中和したコポリマーのクラムを作製するための方法 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6100170
(24)【登録日】2017年3月3日
(45)【発行日】2017年3月22日
(54)【発明の名称】中和したコポリマーのクラムおよび中和したコポリマーのクラムを作製するための方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 3/12 20060101AFI20170313BHJP
   D01F 6/80 20060101ALI20170313BHJP
【FI】
   C08J3/12 ZCFG
   D01F6/80 321D
【請求項の数】2
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-549563(P2013-549563)
(86)(22)【出願日】2012年1月13日
(65)【公表番号】特表2014-503710(P2014-503710A)
(43)【公表日】2014年2月13日
(86)【国際出願番号】US2012021220
(87)【国際公開番号】WO2012097236
(87)【国際公開日】20120719
【審査請求日】2015年1月13日
(31)【優先権主張番号】61/432,350
(32)【優先日】2011年1月13日
(33)【優先権主張国】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】390023674
【氏名又は名称】イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【弁理士】
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100084663
【弁理士】
【氏名又は名称】箱田 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100093300
【弁理士】
【氏名又は名称】浅井 賢治
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(72)【発明者】
【氏名】リー キウ−セウン
(72)【発明者】
【氏名】マローン フレデリック ケイ
(72)【発明者】
【氏名】ニュートン クリストファー ウィリアム
【審査官】 久保田 葵
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2008/075751(WO,A1)
【文献】 特開平07−278303(JP,A)
【文献】 特開昭51−008363(JP,A)
【文献】 特表2007−511649(JP,A)
【文献】 国際公開第2005/054337(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0083032(US,A1)
【文献】 特表2011−516710(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 3/00−3/28、99/00
D01F 1/00−9/04
C08G 69/00−69/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)パラ−フェニレンジアミン、5(6)−アミノ−2−(p−アミノフェニル)ベンゾイミダゾール、およびテレフタロイルジクロリドを溶液中で共重合してコポリマーを形成し、前記コポリマーを溶液からコポリマーのクラムとして回収する工程であって、前記コポリマーのクラムが、酸副産物を含んでなる工程と、
b)前記コポリマーのクラムを塩基に接触させて前記酸を有する塩を形成する工程と、
c)蒸留水中の中和したコポリマー粒子のスラリーのpHが5〜9になるように、前記塩の少なくとも一部を除去して中和したコポリマー粒子を形成する工程とを備え、前記塩基が、0.4モル/Kg未満の滴定酸度を有するポリマーを提供するのに十分な時間、前記コポリマーのクラムに接触され、前記中和したコポリマー粒子が、少なくとも3dl/gの固有粘度を有する、方法。
【請求項2】
アラミド糸を形成する方法であって、パラ−フェニレンジアミン、5(6)−アミノ−2−(p−アミノフェニル)ベンゾイミダゾール、およびテレフタロイルジクロリドを溶液中で共重合してコポリマーを形成し、前記コポリマーを溶液中からコポリマーのクラムとして回収する工程と、前記コポリマーのクラムを硫酸に溶かして、紡糸溶液を形成する工程を備え、前記コポリマーのクラムは、前記回収の後、かつ、前記紡糸溶液を形成するのに先立って、蒸留水中の前記クラムのスラリーのpHが5〜9になるように中和され、前記中和したクラムは、少なくとも3dl/gの固有粘度を有し、かつ0.4モル/Kg未満の滴定酸度を有する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本特許出願は、パラ−フェニレンジアミン、5(6)−アミノ−2−(p−アミノフェニル)ベンゾイミダゾール、およびテレフタロイルジクロリドの共重合から得られるポリマー中の酸の中和に関する。
【背景技術】
【0002】
ここ数十年にわたる高分子化学および技術の躍進は、高性能の高分子繊維の開発を可能としてきた。例えば、剛直棒状および半剛直棒状ポリマーの液晶ポリマー溶液は、液晶ポリマー溶液をドープフィラメントに紡糸して、ドープフィラメントから溶媒を除去し、繊維を洗浄して乾燥し、必要に応じて、乾燥繊維をさらに加熱処理することにより、高強度繊維に形成されることが可能である。高性能の高分子繊維の一例は、パラアラミド繊維、例えば、ポリ(パラフェニレンテレフタルアミド)(「PPD−T」または「PPTA」)である。
【0003】
繊維強度は、典型的には、1つもしくは複数のポリマーのパラメーター(組成、分子量、分子間相互作用、骨格、残留溶媒または残留水、高分子配向、およびプロセス履歴を含む)に相関する。例えば、繊維強度は、典型的には、ポリマーの長さ(つまり、分子量)、ポリマー配向、および強い求引性の分子間相互作用の存在と共に増大する。高分子量の剛直棒状ポリマーは、繊維に紡糸できるポリマー溶液(「ドープ」)を形成するのに有用であるので、分子量を増大することは、典型的には、結果として繊維強度を増大する。
【0004】
5(6)−アミノ−2−(p−アミノフェニル)ベンゾイミダゾール、パラ−フェニレンジアミンおよびテレフタロイルジクロリドから得られる繊維は、当技術分野で公知である。塩酸が、重合反応の副産物として生成される。このようなコポリマーから作製される繊維の大部分は、一般的に、さらなる処理をすることなく、重合溶液から直接紡糸されてきた。このようなコポリマーは、例えば商標名Armos(登録商標)およびRusar(登録商標)の下でロシアで製造される高強度繊維の基盤である。ロシア特許出願第2,045,586号明細書を参照のこと。しかしながら、コポリマーは、重合溶媒から単離された後、別の溶媒(典型的には、硫酸)に再び溶解されて、繊維に紡糸されることが可能である。このプロセスに関して、コポリマーは、重合からのHCl酸副産物を除去するべく、水で洗浄されることもある。しかしながら、単純な水洗浄では、コポリマーから十分な量のHClは除去されない。一旦、コポリマーが、硫酸中に再び溶解されると、この残留HClが蒸発して、コポリマーの紡糸溶液中に気泡を形成し、それが、最終のフィラメントの品質および機械的強度に影響を与えると考えられている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
重合溶液から直接コポリマー繊維を作製し、弾道および他のアラミド最終用途に使用される良好な製品を生産する公知のプロセスは、非常に乏しい投資財力ではかなり高価なものである。従って、当技術分野で公知のプロセスと比べて経済性が改善されてかつ優れた物理的特性を有するコポリマー繊維を提供する、一般的な溶媒(例、硫酸)にコポリマーを溶解する製造プロセスに対する必要性が当技術分野に存在する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、パラ−フェニレンジアミン、5(6)−アミノ−2−(p−アミノフェニル)ベンゾイミダゾール、およびテレフタロイルジクロリドの共重合から得られるコポリマーのクラムに関し、コポリマーのクラムは、少なくとも3dl/gの固有粘度を有し、かつ0.4モル/Kg未満の滴定酸度を有する。いくつかの実施形態において、コポリマーのクラムは、0.1モル/Kg未満の滴定酸度または0.05モル/Kg未満の滴定酸度を有する。コポリマーは、5(6)−アミノ−2−(p−アミノフェニル)ベンゾイミダゾールのモル数とパラ−フェニレンジアミンのモル数との比が30/70〜85/15である。いくつかの好適な実施形態において、コポリマーは、45/55〜85/15のモル比を有する。
【0007】
好適なコポリマーは、少なくとも4dl/gの固有粘度を有する。本発明は、また、このようなポリマーのクラムから形成されるフィラメントおよび糸条と、フィラメントおよび糸条を形成するプロセスとにも関する。
【0008】
いくつかの態様において、本発明は、a)パラ−フェニレンジアミン、5(6)−アミノ−2−(p−アミノフェニル)ベンゾイミダゾール、およびテレフタロイルジクロリドの共重合から得られるコポリマーのクラムを提供する工程であって、コポリマーのクラムが、酸副産物または不純物を有する工程と、b)コポリマーのクラムを塩基に接触させて酸副産物または不純物を有する塩を形成する工程と、c)塩の少なくとも一部を除去して、中和したコポリマーのクラムを形成する工程であって、0.4モル/Kg未満の滴定酸度を有するコポリマーのクラムを提供するのに十分な時間、塩基が、コポリマーのクラムに接触され、中和したコポリマーのクラムが、少なくとも3dl/gの固有粘度を有する工程とを備えるプロセスにも関する。いくつかの実施形態において、工程b)に先だって、コポリマーのクラムは、水性媒体で前洗浄される。特定の実施形態において、水性媒体は、水である。
【0009】
特定のプロセスは、追加のd)酸溶媒に溶かした中和したコポリマー粒子の紡糸可能な溶液を形成する工程をさらに備える。いくつかの酸溶媒は、硫酸を含んでなる。いくつかの実施形態において、酸溶媒は、少なくとも96%、98%、または100%の硫酸である。
【0010】
いくつかのプロセスは、追加のe)溶液からフィラメントを紡糸する工程をさらに備える。
【0011】
本発明のいくつかのコポリマーは、25℃で少なくとも約5dl/gの固有粘度を有する。
【0012】
他の態様において、本発明は、糸条を形成するためのプロセスにも関し、そのプロセスは、パラ−フェニレンジアミン、5(6)−アミノ−2−(p−アミノフェニル)ベンゾイミダゾール、およびテレフタロイルジクロリドの共重合から得られるコポリマーを硫酸に溶かし、紡糸溶液を形成する工程を備え、コポリマーは、前記紡糸溶液を形成するのに先立って、中和され、前記コポリマーは、少なくとも3dl/gの固有粘度を有し、0.4モル/Kg未満の滴定酸度を有する。
【0013】
さらに、本発明は、本明細書に記載されるプロセスによって作製されるフィラメントで作製される糸条に関する。
【0014】
前述の概要と同様に以下の詳細の説明は、添付の図面と共に読む際にさらに理解される。本発明を例証する目的のために、本発明の典型的な実施形態が図面に示される。しかしながら、本発明は、開示された特定の方法、組成、および装置に限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】繊維の生成方法の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、本開示の一部を形成する以下の詳細な説明を、添付の図面および実施例と関連して参照することにより、さらに容易に理解されるであろう。本発明は、本明細書に記載されるおよび/または示される具体的な装置、方法、条件もしくはパラメーターに限定されず、本明細書に用いられる専門用語は一例としてのみ特定の実施形態を記載する目的のためのものであり、そして特許請求される本発明を限定することを意図されないことを理解するべきである。
【0017】
添付の請求項を含む本明細書で使用される単数形「a」、「an」および「the」には、複数形が含まれ、ある特定の数値についての言及は、文脈が特に明らかに指示しない限り、少なくともその特定の値を含む。値の範囲が表される場合、別の実施形態は、1つの特定の値からおよび/または他の特定の値までを含む。同様に、値が先行する「約」を用いて近似値として表される場合、特定の値は、別の実施形態を形成すると理解されるであろう。全て範囲は、包括的であり、そして組み合わせ可能である。任意の変数が、任意の構成要素においてまたは任意の式において、2回以上出現する場合、各々の出現におけるその定義は、全ての他の出現におけるその定義から独立している。置換基および/または変数の組み合わせは、このような組み合わせが結果として安定した化合物となる場合に限り、許容される。
【0018】
本発明は、5(6)−アミノ−2−(p−アミノフェニル)ベンゾイミダゾール、パラ−フェニレンジアミンおよびテレフタロイルジクロリドの重合を、NMP/CaCl2またはDMAC/CaCl2中で高い固形分濃度(7パーセント以上)で実施し、コポリマーのクラムを単離し、単離したコポリマーのクラムを濃硫酸に溶かし、液晶溶液を生成し、溶液を繊維に紡糸するプロセスに関する。「固形分濃度」とは、溶液の総質量(つまり、コポリマー+溶媒の質量)に対するコポリマーの質量の比を意味する。
【0019】
5(6)−アミノ−2−(p−アミノフェニル)ベンゾイミダゾール、パラ−フェニレンジアミンおよびテレフタロイルジクロリドの共重合反応は、当技術分野で公知の手段によって、達成されることができる。例えば、PCT特許出願第2005/054337号パンフレットおよび米国特許出願公開第2010/0029159号明細書を参照のこと。典型的には、1種もしくは複数種の酸塩化物と1種もしくは複数種の芳香族ジアミンが、アミド極性溶媒(例、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルイミダゾリジノン等)中で反応する。いくつかの実施形態において、N−メチル−2−ピロリドンが、好適である。
【0020】
いくつかの実施形態において、重合前もしくは重合中に、無機塩の溶解剤(例、塩化リチウムまたは塩化カルシウム等)を適切な量で添加して、アミド極性溶媒中の生成した共重合ポリアミドの溶解度を高める。典型的には、アミド極性溶媒に対して3〜10重量%を加える。所望の重合度が達成された後、コポリマーは、未中和のクラムの形態で存在する。「クラム」とは、コポリマーが、剪断されたまたは切断された(例えばブレンダー内で刻まれた)際に特定可能な別個の塊に容易く分離する脆性物質かゲルの形態であることを意味する。未中和のクラムには、コポリマー、重合溶媒、溶解剤および縮合反応の副産物の水と酸(典型的には塩酸(HCl))が含まれる。
【0021】
重合反応を完了した後、未中和のクラムは、塩基に接触され、塩基は、一般的に水性形態における塩基性無機化合物(例、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、酸化カルシウム、水酸化アンモニウム等)とすることができ、HCl副産物の中和反応を実施するために、添加される。必要に応じ、塩基性化合物は、有機塩基(例、ジエチルアミンまたはトリブチルアミンまたは他のアミン)とすることができる。一般的に、未中和のコポリマーのクラムは、洗浄により水性塩基に接触し、それにより、酸性副産物が塩(一般的に、水酸化ナトリウムが塩基、HClが酸性副産物であるならば、塩化ナトリウム塩)に変換され、また、重合溶媒の一部が除去される。必要に応じて、塩基性無機化合物と接触させる前に、未中和のコポリマーのクラムを1回もしくはそれ以上水で最初に洗浄して過剰の重合溶媒を除去してもよい。コポリマーのクラム中の酸性副産物が一旦中和されると、必要ならば、追加の水洗浄を用いて、塩および重合溶媒を除去して、クラムのpHを下げることができる。
【0022】
本発明は、また、パラ−フェニレンジアミン、5(6)−アミノ−2−(p−アミノフェニル)ベンゾイミダゾール、およびテレフタロイルジクロリドの共重合から得られるコポリマーのクラムを硫酸に溶かし紡糸溶液を形成することを備えるアラミド糸条を形成するためのプロセスにも関し、前記紡糸溶液を形成する前に、コポリマーのクラムが中和される。前記コポリマーは、少なくとも3dl/gの固有粘度を有し、0.4モル/Kg未満の滴定酸度を有する。好適な一実施形態において、コポリマーのクラムは、水性塩基で洗浄されることにより、中和される。テレフタロイルジクロリドは、テレフタロイルクロリドとしても知られている。
【0023】
コポリマーは、溶液紡糸を用いて繊維に紡糸されるのが好ましい。一般的に、これは、中和されたコポリマーのクラムを適切な溶媒に溶解して紡糸液(紡糸ドープとしても知られている)を形成することを伴い、好適な溶媒は硫酸である。発明者らは、本明細書に記載される中和されたコポリマーのクラムを使用すると、このような中和されたクラムが溶解プロセスにおいて硫酸と化合される場合に、紡糸ドープの気泡の形成が劇的に低減されることを見出した。コポリマーのクラムが中和されないならば、コポリマー中の塩酸副産物は、硫酸と接触される際に蒸発して、紡糸ドープ中に気泡を形成するだろう。紡糸ドープの溶液粘度は、比較的高いので、溶解する間に形成されるこのような全ての気泡は、紡糸ドープ中に留まりやすく、そしてフィラメントに紡糸される。中和されたコポリマーのクラムは、硫酸に溶解される際に本質的に気泡を提供しないので、均一性にさらに優れたコポリマーのフィラメントおよび繊維を提供すると考えられる、より均一な紡糸溶液を提供する。
【0024】
本明細書に記載のコポリマーを含有する紡糸ドープは、任意の数のプロセスを用いて、ドープフィラメントに紡糸されることができる。しかしながら、湿式紡糸および「エアギャップ」紡糸が最もよく知られている。これらの紡糸プロセスのための紡糸口金および浴の一般的な配置は、当技術分野でよく知られており、米国特許第3,227,793号明細書、米国特許第3,414,645号明細書、米国特許第3,767,756号明細書、および米国特許第5,667,743号明細書における図面で、高強度ポリマーのためのこのような紡糸プロセスを例証できる。「エアギャップ」紡糸において、紡糸口金は、典型的には繊維を最初にガス(例、空気)中に押出す、そしてフィラメントを形成するのに好適な方法である。
【0025】
中和されたコポリマーのクラムを有する紡糸ドープを生成するのに加えて、最も良好な繊維特性のために、酸性溶媒から繊維を紡糸する製造プロセスは、ドープフィラメントから酸性溶媒を抽出するだけでなく、繊維中のコポリマーと会合または結合するいかなる残留酸をもさらに除去および/または中和する工程を追加的に含むのが望ましいと考えられている。さもないと、繊維中のコポリマーのさらなる潜在的劣化を招き、続いて時間が経つと繊維の機械的特性を低下させる結果となると考えられている。
【0026】
コポリマーのフィラメントを作製する一つのプロセスを図1に示す。ドープ溶液2は、コポリマーと硫酸とを含んでなり、典型的には、押出しおよび凝固の後に許容できるフィラメント6を形成するポリマーにとって十分に高い濃度のポリマーを含有する。ポリマーがリオトロピック液晶である場合、ドープ2中のポリマーの濃度は、液晶ドープを提供するのに十分に高いのが好ましい。ポリマーの濃度は、好ましくは少なくとも約7重量パーセント、さらに好ましくは少なくとも約10重量パーセント、最も好ましくは少なくとも約14重量パーセントである。
【0027】
ポリマードープ溶液2は、通例組み込まれる添加剤(例、酸化防止剤、潤滑剤、紫外線遮蔽剤、着色剤等)を含有してもよい。
【0028】
ポリマードープ溶液2は、典型的には、押出ダイまたは紡糸口金4を介して押出または紡糸されて、ドープフィラメント6を調製または形成する。紡糸口金4は、複数の孔を含むのが好ましい。紡糸口金の孔の数およびそれらの配置は、重要ではないが、経済的な理由により、孔の数を最大とするのが望ましい。紡糸口金4は、100または1000、またはそれより多く含むことが可能であり、それらは、円、格子、もしくはその他の所望の配置に配置されてもよい。紡糸口金4は、ドープ溶液2によって著しく劣化されないだろう任意の材料から構成されてもよい。
【0029】
図1の紡糸プロセスは、「エアギャップ」紡糸(「乾式ジェット」湿式紡糸として公知のこともある)を採用する。ドープ溶液2は、紡糸口金4を出て、非常に短い期間、紡糸口金4と凝固浴10の間のギャップ8(空気を含有する必要はないが、典型的に「エアギャップ」と呼ばれる)に入る。ギャップ8は、ドープと凝固も逆反応も誘発しない任意の流体(例、空気、窒素、アルゴン、ヘリウム、または二酸化炭素)を含有してもよい。ドープフィラメント6は、エアギャップ8を横切って進み、直ぐに液体凝固浴に導入される。別の方法として、繊維は、「湿式紡糸」(示されていない)であってよい。湿式紡糸において、紡糸口金は、典型的には繊維を直接凝固浴の液体に押出し、標準的に紡糸口金は、凝固浴の表面の真下に浸されるまたは位置される。本発明のプロセスで使用される繊維を提供するのに、どちらかの紡糸プロセスを用いてもよい。本発明のいくつかの実施形態において、エアギャップ紡糸が、好適である。
【0030】
フィラメント6は、水または水と硫酸の混合液を含有する凝固浴10において、「凝固される」。複数のフィラメントが同時に押出されるならば、凝固工程の前、凝固工程中、もしくは凝固工程後に、複数のフィラメントを連合してマルチフィラメント糸条としてもよい。本明細書で使用される用語「凝固」は、ドープフィラメント6が流動液体であることおよび固相に変わることを必ずしも意味しない。ドープフィラメント6は、十分に低い温度でありうるので、凝固浴10に入る前、本質的に非流動である。しかしながら、凝固浴10は、フィラメントの凝固(つまり、ドープ溶液2からほぼ固体のポリマーフィラメント12へのポリマーの転化)を確実にするもしくは完了する。凝固工程中に除去される溶媒(つまり、硫酸)の量は、フィラメント6の凝固浴における滞留時間、浴10の温度、およびそこでの溶媒の濃度に応じて変わりうる。例えば、約23℃の温度、約1秒の滞留時間で、18重量パーセントのコポリマー/硫酸溶液を用いると、フィラメント6に存在する溶媒の約30パーセントが除去されるだろう。
【0031】
凝固浴の後、繊維は、1つもしくは複数の洗浄浴またはキャビネット14と接触してもよい。洗浄は、繊維を浴中に浸すことによりもしくは繊維に水溶液を噴霧することにより、達成されてもよい。洗浄キャビネットは、典型的には、キャビネットを出る前にフィラメントが何回も周りを動き横切る1つもしくは複数のロールを含む密閉キャビネットを含んでなる。フィラメントまたは糸条12は、ロールの周りを動く際に、洗浄流体を噴霧される。洗浄流体は、キャビネットの底に連続的に収集されて、排出される。
【0032】
洗浄流体の温度は、好ましくは30℃超である。洗浄流体は、蒸気の形態(スチーム)で適用されてもよいが、液体の形態で使用されるのがさらに便利である。多数の洗浄浴またはキャビネットが用いられるのが好ましい。任意の1つの洗浄浴またはキャビネット14での糸条12の滞留時間は、糸条12中の残留硫黄の所望の濃度に応じて変わるだろう。連続プロセスにおいて、好適な複数の洗浄浴および/またはキャビネットにおける全洗浄プロセスの所要時間は、好ましくは約10分以内、さらに好ましくは約5秒超である。いくつかの実施形態において、全洗浄プロセスの所要時間は、20秒以上である。いくつかの実施形態において、全洗浄は、400秒以内で達成される。バッチ法において、全洗浄プロセスの所要時間は、時間の幅で、12時間〜24時間程度、またはそれ以上である。
【0033】
糸条中の硫酸の中和は、浴またはキャビネット16中で生じうる。いくつかの実施形態において、中和浴またはキャビネットは、1つもしくは複数の洗浄浴またはキャビネットの後に続いてよい。繊維を浴内に浸すことによりもしくは繊維に水溶液を噴霧することにより、洗浄が、達成されてもよい。中和は、1つの浴またはキャビネットで生じても、複数の浴またはキャビネットで生じてもよい。いくつかの実施形態において、硫酸不純物の中和に好適な塩基として、NaOH、KOH、Na2CO3、NaHCO3、NH4OH、Ca(OH)2、NaHCO3、K2CO3、KHCO3、もしくはトリアルキルアミン(好ましくはトリブチルアミン)、他のアミン、もしくはそれらの混合物が挙げられる。一実施形態において、塩基は、水溶性である。いくつかの好適な例において、中和溶液は、1リットル当り0.01〜1.25モルの塩基、好ましくは1リットル当り0.01〜0.5モルの塩基を含有する水溶液である。カチオンの量も、塩基にさらされる時間および温度、そして洗浄方法に応じて変わる。いくつかの好適な実施形態において、塩基は、NaOHまたはCa(OH)2である。
【0034】
繊維を塩基で処理した後、プロセスは、水または酸を含有する洗浄溶液にフィラメントを接触させて全てもしくはほぼ全ての過剰の塩基を除去する工程を含んでもよい。この洗浄溶液は、1つもしくは複数の洗浄浴またはキャビネット18において適用されることができる。
【0035】
洗浄および中和後、繊維もしくは糸条12を乾燥機20で乾燥させて、水および他の液体を除去してもよい。1台もしくは複数の乾燥機を使用してもよい。特定の実施形態において、乾燥機は、熱風を用いて繊維を乾燥させる炉であってよい。他の実施形態において、加熱ロールを用いて繊維を加熱してもよい。繊維は、少なくとも約20℃の温度(しかし約100℃未満)で、繊維の含水量が、繊維の20重量パーセント以下になるまで、乾燥機内で加熱される。いくつかの実施形態において、繊維は、85℃以下まで加熱される。いくつかの実施形態において、繊維は、これらの条件下で、繊維の含水量が繊維の14重量パーセント以下まで、加熱される。発明者らは、低温乾燥は繊維強度を改善するのに好適な手段であることを発見した。具体的には、発明者らは、未乾燥糸条が体験した最初の乾燥工程(つまり、加熱ロール、炉内におけるような加熱雰囲気等)は、工業規模で高強度繊維を乾燥させるのに使用される連続プロセスにおいて通常使用されない適度の温度で実施される場合に、最も良好な繊維強度の特性が達成されることを見出した。コポリマー繊維は、水に対してPPD−Tホモポリマーよりも大きい親和力を有すると考えられ、この親和力は、乾燥中のポリマーからの拡散速度を示し、従って、未乾燥糸条が典型的な高い乾燥温度に直接さらされるならば、一般的に大きな熱駆動力を作りだし、乾燥時間を低減し、繊維に修復できないほどの損傷が生じ、結果として劣等な繊維強度となる。いくつかの実施形態において、繊維は、少なくとも約30℃まで加熱される。いくつかの実施形態において、少なくとも約40℃まで加熱される。
【0036】
乾燥機の滞留時間は、10分未満、好ましくは180秒未満である。乾燥機は、窒素もしくは他の非反応性雰囲気を提供されうる。乾燥工程は、典型的には大気圧で実施される。しかしながら、必要に応じてその工程を減圧下で実施してもよい。一実施形態において、糸条またはフィラメントは、少なくとも0.1gpdの張力下で、好ましくは2gpd以上の張力下で乾燥される。
【0037】
乾燥工程の後、繊維は、例えば熱硬化装置22内で少なくとも350℃の温度まで加熱されるのが好ましい。1台もしくは複数の装置を利用してもよい。例えば、このような処理は、引張強さを増大させるおよび/またはフィラメント中の分子の機械的歪みを緩和するために、窒素パージした管状炉22において、実施されてもよい。いくつかの実施形態において、繊維または糸条は、少なくとも400℃の温度まで加熱される。一実施形態において、フィラメントは、加熱装置を通って糸条を前進させるのに十分なだけの張力を用いて、1gpd以下の張力下でさらに加熱される。
【0038】
いくつかの実施形態において、加熱は、複数工程のプロセスである。例えば、第一工程において、繊維もしくは糸条は、200〜360℃の温度で、少なくとも0.2cN/dtexの張力で加熱され、次に繊維もしくは糸条が、370〜500℃の温度、1cN/dtex未満の張力で加熱される第二加熱工程が続く。
【0039】
最終的に、フィラメントまたは糸条12は、巻き上げ装置24のパッケージに巻き上げられる。ロール、ピン、ガイドおよび/または電動装置26は、プロセスを通してフィラメントまたは糸条を運ぶのに適切に位置付される。このような装置は、当技術分野でよく知られており、任意の適切な装置を利用してよい。
【0040】
ポリマーの分子量は、典型的には、1種もしくは複数種の希薄溶液の粘度測定によってモニターされ、そしてそれに相関される。従って、相対粘度(「Vrel」または「ηrel」もしくは「nrel」)および固有粘度(「Vinh」または「ηinh」もしくは「ninh」)の希薄溶液測定は、典型的に、ポリマー分子量をモニターするために使用される。希薄ポリマー溶液の相対粘度および固有粘度は、以下の式で関連づけられ、
inh=ln(Vrel)/C
式中、lnは、自然対数関数であり、Cは、ポリマー溶液の濃度である。Vrelは、無単位の比率であり、このようにVinhは、濃度の逆数を単位として、典型的にはデシリットル/グラム(「dl/g」)として表される。
【0041】
本発明は、さらに、一部分、本発明の複数のフィラメントを含んでなる糸条と、本発明のフィラメントまたは糸条を含む布帛と、本発明の布帛を含む物品とに関する。本明細書において目的のために、「布帛」は、任意の製織、製編、または不織構造を意味する。「製織」とは、任意の織布(例、平織、千鳥綾織、斜子織、朱子織、綾織等)を意味する。「製編」とは、1本もしくは複数のエンド、繊維またはマルチフィラメント糸条を交互にループするもしくは交互に編むことにより生成される構造を意味する。「不織」とは、一方向繊維(母材樹脂に含まれるならば)、フェルト等を含む繊維網を意味する。
【0042】
「繊維」は、その長さに垂直なその横断面を横切る幅に対する長さの高い比を有する、相対的に柔軟性の、物質の構成単位を意味する。本明細書において、用語「繊維」は、用語「フィラメント」と相互に交換して使用される。本明細書に記載されるフィラメントの断面は、任意の形状であることが可能であるが、典型的に円形または豆形である。パッケージ内のボビンに紡糸された繊維は、連続繊維と呼ばれる。繊維は、ステープル繊維と呼ばれる短い長さに切断されることができる。繊維は、フロックと呼ばれるさらに短い長さにさえ切断されることができる。本明細書で使用される用語「糸条」は、フィラメントの束(マルチフィラメント糸条としても知られている)、または複数の繊維を含んでなるトウ、もしくはスパンステープル糸を含む。糸条は、縒り合わせられるおよび/または撚られることが可能である。
【0043】
試験方法
糸条の引張強さは、ASTM D885に従って測定され、力/単位断面積(ギガパスカル(GPa)として)、または力/単位質量/長さ(グラム/デニールまたはグラム/dtex)のどちらかで表される、糸条の最大応力または破壊応力である。
【0044】
固有粘度は、96wt%の濃度を有する濃硫酸に、ポリマー濃度(C)0.5g/dl、温度25℃で、ポリマーを溶かした溶液を用いて測定される。固有粘度は、ln(tpoly/tsolv)/Cとして算出され、式中、tpolyは、ポリマー溶液の滴下時間であり、tsolvは、純溶媒の滴下時間である。
【0045】
硫黄の百分率は、ASTM D4239法Bに従って測定される。
【0046】
繊維の含水量は、最初に繊維試料を秤量し、300℃で20分間、試料を炉に入れた後、直ちに試料を再び秤量することにより、得られた。次に、含水量は、初期の試料重量から乾燥試料の重量を減じて、乾燥試料の重量で割って100を掛けて、算出される。
【0047】
滴定可能な酸の量は、水90gと0.5M水酸化ナトリウム10.00g中でコポリマーの試料2グラムをスラリーにすることにより、測定される。スラリーを1時間煮沸した後、その液体を0.5MHClで中和点まで滴定する。滴定中に、ポリマーを中和させるのに必要な正味の塩基(NaOHのモル数−HClのモル数)が判明される。
【0048】
多くの以下の実施例は、本発明の様々な実施形態を例示するために提供され、決して限定するものと理解されるべきではない。特に明記しない限り、全ての部および百分率は重量によるものである。
【実施例】
【0049】
2つの実施例は、同一のポリマーから作られた。パラ−フェニレンジアミン1.7289g、5(6)−アミノ−2−(p−アミノフェニル)ベンゾイミダゾール8.0043g、およびテレフタロイルクロリド10.5257gをn−メチルピロリドン中で2.8%塩化カルシウム(CaCl2)と反応させた。反応時間は、40分であった。回収したコポリマーのクラムをワーリングブレンダー(Waring Blender)において水400mlを加えて90秒間、細断した。このクラムに関してpHを測定し、洗浄1として表に報告する。細断されたコポリマーのクラムを濾過し、実施例で第一部と第二部と称する2つの同一な部に分離した。
【0050】
比較例A
コポリマーのクラムの第一部を蒸留水で、さらに9回洗浄し、総計10回水で洗浄した。各洗浄は、総質量が260gに達するまで、事前に洗浄した濾過ケークに蒸留水を加え、ワーリングブレンダー内で3分間さらに細断し、スラリーのpHを測定した後、濾過することからなった。各洗浄(2〜10)後のpHを表に示す。表の洗浄データからわかるように、pH5〜9の範囲を有するポリマーは、獲得されなかった。このようなpHを得るとすれば、非常に多数回の(かつ不経済的な)洗浄が必要とされるのは明らかであろう。
【0051】
最終洗浄後、120℃で、窒素パージを用い、真空で、回収したコポリマーを乾燥させた。このコポリマーの試料の測定した固有粘度は、6.5dl/gであった。
【0052】
次に、水90gと0.5M水酸化ナトリウム10.00g中でコポリマー2gをスラリーにすることにより、乾燥したコポリマーの試料を残留酸に関して分析した。スラリーを1時間煮沸した後、液体を0.5MHClで中和点まで滴定した。滴定中に、ポリマーを中和させるのに必要な正味の塩基(NaOHのモル数−HClのモル数)が0.44モル/kgであることが判明した。これにより、滴定酸度は0.44モル/kgとなる。この実施例における総イオン濃度は、HとClが各々0.44モル存在し、他のイオンは殆ど存在しないので、およそ0.88モル/kgである。
【0053】
次に、乾燥したコポリマーの試料を19.6%の固形分濃度で硫酸に溶かし、ドープ溶液を形成した。ドープ溶液を真空炉内に置き、HClの特有な臭いを検出した。ドープ溶液には、抽出するのが困難な大量の気泡が存在した。その溶液を用いて繊維を作製することは可能であろうが、しかしながら、これらの繊維は、多数の気孔を有し、不良な品質となり、結果として強度不足の糸条となるだろう。
【0054】
実施例1
コポリマーのクラムの第二部は、異なる一連の洗浄を有した。洗浄2は、既に一回洗浄をしたコポリマーのクラムを4.2gの50%腐食剤と総計260gまでの十分な水で、洗浄することからなった。ブレンダーを3分間、稼働させた後、pHを測定して材料を濾過した。次に、コポリマーを蒸留水のみでさらに8回洗浄した。各洗浄は、総量が260gに達するまで、既に洗浄した濾過ケークに蒸留水を加え、ワーリングブレンダー内で3分間、細断し、スラリーのpHを測定し、濾過することからなった。各洗浄(2〜10)後のpHを表に示す。表の洗浄データからわかるように、pH5〜9の範囲を有するポリマーが、数回の洗浄だけで容易に獲得された。
【0055】
最終洗浄後、120℃で、窒素パージを用い、真空で、回収したコポリマーを乾燥させた。このコポリマーの試料の測定した固有粘度は、6.8dl/gであった。固有粘度を測定するためにポリマーを秤量した際にHClが欠けるために、この数字が、比較例におけるよりも、大きいと考えられる。
【0056】
次に、水90gと0.5M水酸化ナトリウム10.00g中でコポリマー2gをスラリーにすることにより、乾燥したコポリマーの試料を残留酸に関して分析した。スラリーを1時間煮沸した後、液体を0.5MHClで中和点まで滴定した。滴定中に、ポリマーを中和させるのに必要な正味の塩基(NaOHのモル数−HClのモル数)が0.031モル/kgであることが判明した。これにより、滴定酸度は0.031モル/kgとなる。煮沸中に起こる塩基性溶液の僅かな損失のために、この結果は、0とあまり違いがない。この実施例の総イオン濃度は、HとClが各々0.03モル存在するので、0.10モル/kg未満である。
【0057】
次に、乾燥したコポリマーの試料を19.6%の固形分濃度で硫酸に溶かし、ドープ溶液を形成した。ドープ溶液には、ほとんど気泡は存在しなかった。溶液を真空炉内に置いた。HClのいかなる臭いも検出されなかった。この溶液を用いて、ほぼ気孔のない均一な繊維を作製することが可能である。これらの繊維を収集して良好な強度を有する糸条を作製することができる。
【0058】
【表1】
本発明のまた別の態様は、以下のとおりであってもよい。
〔1〕パラ−フェニレンジアミン、5(6)−アミノ−2−(p−アミノフェニル)ベンゾイミダゾール、およびテレフタロイルジクロリドの共重合から得られるコポリマーのクラムであって、少なくとも3dl/gの固有粘度を有し、かつ0.4モル/Kg未満の滴定酸度を有するコポリマー。
〔2〕0.1モル/Kg未満の滴定酸度を有する前記〔1〕に記載のコポリマー。
〔3〕0.05モル/Kg未満の滴定酸度を有する前記〔1〕に記載のコポリマー。
〔4〕5(6)−アミノ−2−(p−アミノフェニル)ベンゾイミダゾールのモル数とパラ−フェニレンジアミンのモル数との比が、30/70〜85/15である前記〔1〕〜〔3〕のいずれか一項に記載のコポリマー。
〔5〕前記比が、45/55〜85/15である前記〔4〕に記載のコポリマー。
〔6〕前記コポリマーが、25℃で少なくとも4dl/gの固有粘度を有する前記〔1〕〜〔5〕のいずれか一項に記載のコポリマー。
〔7〕前記コポリマーが、25℃で少なくとも5dl/gの固有粘度を有する前記〔6〕に記載のコポリマー。
〔8〕a)パラ−フェニレンジアミン、5(6)−アミノ−2−(p−アミノフェニル)ベンゾイミダゾール、およびテレフタロイルジクロリドの共重合から得られるコポリマーのクラムを提供する工程であって、前記コポリマーのクラムが、酸副産物または不純物を含んでなる工程と、
b)前記コポリマーのクラムを塩基に接触させて前記酸を有する塩を形成する工程と、
c)前記塩の少なくとも一部を除去して中和したコポリマー粒子を形成する工程とを備え、前記塩基が、0.4モル/Kg未満の滴定酸度を有するポリマーを提供するのに十分な時間、前記コポリマーのクラムに接触され、前記中和したコポリマー粒子が、少なくとも3dl/gの固有粘度を有する、方法。
〔9〕工程b)に先だって、前記コポリマーのクラムが、水性媒体で前洗浄される前記〔8〕に記載の方法。
〔10〕前記水性媒体が、水である前記〔9〕に記載の方法。
〔11〕d)酸溶媒に溶かした中和したコポリマー粒子の紡糸可能な溶液を形成する工程をさらに備える前記〔8〕〜〔10〕のいずれか一項に記載の方法。
〔12〕前記酸溶媒が、硫酸である前記〔11〕に記載の方法。
〔13〕前記硫酸が、少なくとも96%である前記〔12〕に記載の方法。
〔14〕前記硫酸が、少なくとも98%である前記〔13〕に記載の方法。
〔15〕前記硫酸が、少なくとも100%である前記〔14〕に記載の方法。
〔16〕e)前記溶液からフィラメントを紡糸する工程をさらに備える前記〔8〕〜〔15〕のいずれか一項に記載の方法。
〔17〕前記コポリマーが、25℃で少なくとも5dl/gの固有粘度を有する前記〔8〕〜〔16〕のいずれか一項に記載の方法。
〔18〕アラミド糸を形成する方法であって、パラ−フェニレンジアミン、5(6)−アミノ−2−(p−アミノフェニル)ベンゾイミダゾール、およびテレフタロイルジクロリドの共重合から得られるコポリマーを硫酸に溶かして、紡糸溶液を形成する工程を備え、前記コポリマーは、前記紡糸溶液を形成するのに先立って、中和され、前記コポリマーは、少なくとも3dl/gの固有粘度を有し、かつ0.4モル/Kg未満の滴定酸度を有する方法。
〔19〕5(6)−アミノ−2−(p−アミノフェニル)ベンゾイミダゾールのモル数とパラ−フェニレンジアミンのモル数との比が、30/70〜85/15である前記〔18〕に記載の方法。
〔20〕前記比が、45/55〜85/15である前記〔19〕に記載の方法。
〔21〕前記硫酸が、少なくとも96%である前記〔18〕〜〔20〕のいずれか一項に記載の方法。
〔22〕前記硫酸が、少なくとも98%である前記〔21〕に記載の方法。
〔23〕前記硫酸が、少なくとも100%である前記〔22〕に記載の方法。
〔24〕前記紡糸溶液を紡糸口金を介して紡糸して、1本または複数本のフィラメントを形成する工程をさらに備える前記〔18〕〜〔23〕のいずれか一項に記載の方法。
〔25〕前記コポリマーが、25℃で少なくとも5dl/gの固有粘度を有する前記〔18〕〜〔23〕のいずれか一項に記載の方法。
〔26〕複数本のフィラメントを一緒にして糸条を形成する工程をさらに備える前記〔24〕または〔25〕に記載の方法。
〔27〕前記〔18〕〜〔26〕に記載のいずれかの方法により作製される糸条。
図1