(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のようなドアトリムの組付け作業は、組付作業者の技能に頼るところが多く多大な組付工数を要する懸念がある。また、ドアトリムの位置ずれ状態によっては位置の調整作業が技能的に困難である場合もあり得る。したがってドアトリムの組付けは、部品の寸法精度の過度な設定とドアパネルに組付ける際のドアパネル側(車体側)の構造上の寸法精度に頼るところが大きかった。係る寸法精度への依存は、特に上記のようにインストルメントパネルからドアトリムにおいて連続性を有する車室デザインに用いられるドアトリムにおいて顕著となる。そのため、ドアトリム及びドアパネルにおける部品の歩留まりに影響する懸念があった。
【0005】
そこで、本発明は、このような点に鑑みて創案されたものであり、本発明が解決しようとする課題は、ドアトリムをドアパネルへ組付ける際に、ドアトリムの位置合わせの調整を可能とすることでドアトリムの取付位置によって影響を受ける周辺部品との合わせ向上を図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の自動車用ドアトリムの位置調整構造は次の手段をとる。先ず、第1の発明は、自動車におけるドアパネルと、該ドアパネルの車室の内方側に取り付けられるドアトリムを備え、前記ドアパネルと前記ドアトリムとを面方向に相対的に移動可能に仮組付する仮組付構造と、該仮組付されたドアパネルとドアトリムの面方向の相対的な位置関係を調整方向に調整する位置調整機構を有
しており、前記位置調整機構は、前記ドアトリムにおいて複数構成されており、前記調整方向が交差する関係に配置構成されていることを特徴とする。
【0007】
この第1の発明によれば、ドアパネルとドアトリムとを面方向に相対的に移動可能に仮組付する仮組付構造を有しているため組付作業性の向上を図り得る。また、仮組付されたドアパネルとドアトリムの面方向の相対的な位置関係を調整方向に調整する位置調整機構を有しているため、ドアトリムを仮組付した後に任意の位置に調整することが可能となる。これにより、ドアトリムをドアパネルへ組付ける際に、ドアトリムの位置合わせの調整を可能とすることができ、ドアトリムの取付位置によって影響を受ける周辺部品との合わせ向上を図ることができる。
また、位置調整機構は、ドアトリムにおいて複数構成されており、調整方向が交差する関係に配置構成されていることで、調整方向を複数にすることができる。よって調整方向の自由度がより一層増す。
【0008】
次に、第2の発明は、第1の発明の自動車用ドアトリムの位置調整構造において、前記位置調整機構は、前記ドアパネルに対して取り付けられる取付構造と、前記ドアパネルとドアトリムの面方向における調整方向に相対的に移動可能に係合する係合構造を有するキャリアと、該キャリアに対して前記調整方向に規制されて保持される位置調整操作用の浮動部品と、該浮動部品と前記ドアトリムとの間に構成される螺合構造を有することを特徴とする。
【0009】
この第2の発明によれば、位置調整機構は、キャリアと、浮動部品と、螺合構造を有している。ここで、浮動部品とドアトリムは、浮動部品が操作されることで螺合構造による螺合方向に相対移動する。ここで、浮動部品は、キャリアに対して調整方向に規制されて保持される構成である。そのため、ドアパネルとドアトリムとは、面方向における調整方向に相対的に移動する構成となる。すなわち、浮動部品とドアトリムとの間に構成される螺合構造によって、複雑な調整機構を採用することなくドアトリムの位置合わせの調整を可能とすることができる。
【0010】
次に、第3の発明は、
第2の発明の自動車用ドアトリムの位置調整構造において、
前記浮動部品は、前記螺合構造の雌螺子として構成されていることを特徴とする。
【0011】
この第3の発明によれば、
浮動部品は、雌螺子の構成であるほうが製作しやすい。また、雌螺子の方がコンパクトな浮動部品としやすい。そのため、位置調整機構を全体としてコンパクトに構成し得る。
【0012】
次に、第4の発明は、
第1の発明から第3の発明のいずれかの自動車用ドアトリムの位置調整構造において、
前記位置調整機構は前記ドアトリムの部位のうち、該ドアトリムの周辺部品との境界近傍に構成されることを特徴とする。
【0013】
この第4の発明によれば、
車両の内装におけるドアトリムは、ドアトリムの周辺部品との位置合わせにおいて内装の見栄えが優先される。特に、周辺部品からドアトリムにかけて連続性を有するような車室デザインにおいては、周辺部品とドアトリムの境界における位置ずれが見栄えの低下を招きやすい。そのため、上記位置調整機構はドアトリムの部位のうちドアトリムの周辺部品との境界近傍に構成される。これにより、好適にドアトリムの位置合わせの調整を可能とし得る。
【0016】
次に、第
5の発明は、第1の発明から第
4の発明のいずれかの自動車用ドアトリムの位置調整構造において、前記仮組付構造は、前記ドアパネルと前記ドアトリムとを連結する連結部材によって仮組付される構成であり、前記ドアトリムと前記連結部材との連結部位は、前記ドアトリムが前記ドアパネルに対して面方向の位置が相対的に移動可能な面方向隙間を有して連結される構成であり、前記位置調整機構は、前記面方向隙間の範囲内で前記調整方向に位置調整する構成であることを特徴とする。
【0017】
この第
5の発明によれば、仮組付構造は、ドアパネルとドアトリムとを連結する連結部材によって仮組付される構成である。そのため、複雑な構造を有することなく仮組付けすることができる。また、ドアトリムと連結部材との連結部位は、ドアトリムがドアパネルに対して面方向の位置が相対的に移動可能な面方向隙間を有して連結される構成である。そして、位置調整機構は、上記の面方向隙間の範囲内で調整方向に位置調整する構成である。これにより、面方向隙間の範囲内での調整となり、無駄な調整を省き得る。
【発明の効果】
【0018】
本発明は上記各発明の手段をとることにより、ドアトリムをドアパネルへ組付ける際に、ドアトリムの位置合わせの調整を可能とすることでドアトリムの取付位置によって影響を受ける周辺部品との合わせ向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】実施形態1に係るドアトリムの位置調整機構を示した全体斜視図である。
【
図2】実施形態1に係るドアトリムの位置調整機構の分解斜視図である。
【
図4】実施形態1に係るドアトリムの位置調整機構の拡大分解斜視図である。
【
図5】実施形態1に係るドアトリムの仮組付構造を示した平面図である。
【
図6】実施形態2に係るドアトリムの位置調整機構の拡大斜視図である。
【
図7】実施形態3に係るドアトリムの位置調整機構の拡大斜視図である。
【
図8】実施形態3に係るドアトリムの位置調整機構の拡大分解斜視図である。
【
図9】実施形態4に係るドアトリムの位置調整機構の拡大斜視図である。
【
図10】実施形態4に係るドアトリムの位置調整機構の拡大分解斜視図である。
【
図11】実施形態5に係るドアトリムの位置調整機構の拡大分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
<実施形態1>
以下に実施形態1に係る自動車用ドアトリムの位置調整構造について、
図1〜
図5を用いて説明する。実施形態1は、車両のドアパネル10の内方側に取り付けられるドアトリム20を例示して説明する。
図1、2に示すように、自動車におけるドアパネル10は、車室の内方側にドアトリム20が取り付けられる。そして、ドアパネル10とドアトリム20との間は、互いが面方向に相対的に移動可能に仮組付する仮組付構造30が構成されている。またドアパネル10とドアトリム20との間は、面方向の相対的な位置関係を上下方向に調整する位置調整機構40が構成されている。これにより仮組付構造30によってドアパネル10に仮組付されたドアトリム20は、位置調整機構40によって面方向の相対的な位置関係を上下方向に調整するように構成されている。ここで、実施形態1では、ドアトリム20がドアパネル10に対し上下方向の第1調整方向40aに調整される態様であり、係る第1調整方向40aを本願発明の「調整方向」とする。
【0021】
自動車におけるドアパネル10は、概略、鋼板によって車両のボディの開口(図示省略)を覆うように板状に構成されている。ドアパネル10の車両前方側には、車両のボディとヒンジ連結されるヒンジ構造(図示省略)が設けられている。ドアパネル10の車室内方側10aには、後述する仮組付構造30の軸状クリップ32(連結部材)の取付軸34が取り付けられる取付孔12が面方向に離間して複数設けられている。
【0022】
ドアトリム20は、
図1〜4に示すように、ドアパネル10の車室内方側10aを覆うように取り付けられる板状の樹脂成形品である。ドアトリム20は、保形性と取付剛性を備えるためにポリプロピレン等の合成樹脂からなり、かかるドアトリム20の表面20aには、意匠性を高めるために柔軟な複数表皮が覆われて貼り付けられ得る。また、ドアトリム20の表面20aは、車両の内装品の一構成であるインストルメントパネル16からドアトリム20において曲面が連続した連続性を有する車室デザインに形成されている。
実施形態1においては、車両の内装におけるドアトリム20の周辺部品としてインストルメントパネル16を例示する。すなわち、実施形態1におけるインストルメントパネル16は、本発明の「周辺部品」に相当する。以降の実施形態においても同様である。
【0023】
また、ドアトリム20の車両前方側の一部は、車両のドアが開いた際に露出するが閉じた際に隠蔽される(露出しない)隠蔽部28が設けられている。この隠蔽部28は、インストルメントパネル16(周辺部品)との境界近傍に相当する。かかる隠蔽部28には、後述する位置調整機構40が構成される。隠蔽部28の一部は、ドアパネル10側に向かって矩形状に凹む凹部28aが構成されている。凹部28aの底は、一部がドアパネル10と対向するように立設された平面部28bと、凹部の底が厚み方向に貫通した開口部28cが形成されている。平面部28bは、第1調整方向40aに沿って切り欠かれた切欠部28dを有している。切欠部28dは、第1調整方向40aに沿った端面28e、28eがキャリア50を受け入れ可能な幅寸法を有している。また切欠部28dには、第1調整方向40aに沿って延出する軸状部位74が一体的に設けられている。この軸状部位74は、外周面には螺合構造80としての雄螺子84の溝が切り欠き形成されている。また、ドアトリム20の裏面20bと、ドアパネル10の車室内方側10aと、の間には、ドアパネル10とドアトリム20が互いに面方向に相対的に移動可能に仮組付する仮組付構造30が設けられている。なお、軸状部位74はドアトリム20と一体であっても別体であってもよい。
【0024】
仮組付構造30は、
図2、5に示すように、ドアパネル10とドアトリム20とを面方向に相対的に移動可能に仮組付するものである。仮組付構造30は、ドアパネル10とドアトリム20との間を複数の軸状クリップ32(連結部材)によって連結することで仮組付される構成である。軸状クリップ32は、例えば合成樹脂製が適用される。軸状クリップ32は、ドアパネル10側に取り付けられる取付軸34と、ドアトリム20側に係合する係合軸36とが軸方向に隣接して形成されている。係合軸36には、外周面から径方向外方に突出すると共に軸方向に離間した鍔部38、38が形成される。
【0025】
ドアトリム20には、ドアパネル10の取付孔12に対応した位置に軸状クリップ32を保持する取付座22が設けられている。取付座22は、ドアトリム20の裏面20bからドアトリムに向かって突出する側面部24とこれら側面部24から屈曲してドアトリム20と対向する面となる上面部26によって略箱型に形成されている。上面部26には厚み方向に貫通する係合孔26aと、上面部26の端縁部26bから係る係合孔26aまでを連結する連結孔26cが形成されている。連結孔26cの開口幅は、軸状クリップ32の係合軸36の径よりやや小さく形成され、上面部26の端縁部26bが弾性変形することで係合軸36を受け入れ可能に構成されている。また、係合孔26aは、軸状クリップ32の係合軸36の径より大きい径で形成されている。これにより、軸状クリップ32は、取付座22の連結孔26cから脱落することなく係合孔26a内において径方向に移動可能な構成となる。この軸状クリップ32と取付座22の寸法関係は、いずれの取付座22にも適用されている。そのためドアトリム20と軸状クリップ32との連結部位は、ドアトリム20がドアパネル10に対して面方向の位置が相対的に移動可能な面方向隙間90を有して連結される構成となる。なお、軸状クリップ32と取付座22の寸法関係は、同様の面方向隙間90を有するように構成することもできるし、ドアトリム20の位置調整に鑑み異なる面方向隙間90を設定する構成であってもよい。
【0026】
なお、ドアトリム20と軸状クリップ32との連結部位における面方向隙間90は、設計段階における寸法公差(車両構造、各部品、取付構造等)が累積した量に伴ってドアトリム20が位置ずれを起こす量を想定して設定されることが望ましい。なぜなら、設計段階では、車両の構造上の寸法交差、ドアトリム20等の各部品の寸法交差等が想定される。ここで、各部品単位毎に許容される寸法公差であってもこれら寸法交差が累積されると、その量に伴ってドアトリム20の位置ずれ状態が生じる。そのため、面方向隙間90を上記想定される寸法公差を累積した量からドアトリム20が位置ずれを起こす量を設定する。これによりドアトリム20の位置ずれの最大量を面方向隙間90で吸収することができる。その上で位置調整機構40が面方向隙間90の範囲内で第1調整方向40a(調整方向)に位置調整する構成となる。そのため、好適な調整量でインストルメントパネル16(周辺部品)との合わせの向上を図ることができる。
【0027】
位置調整機構40は、
図1〜4に示すように、仮組付されたドアパネル10とドアトリム20の面方向の相対的な位置関係を第1調整方向40a(調整方向)に調整するものであり、具体的には面方向隙間90の範囲内で第1調整方向40aに位置調整する構成である。位置調整機構40は、概略、合成樹脂が選択されているが、金属製であってもよいし金属と合成樹脂の複合部材であってもよい。位置調整機構40は、キャリア50と、浮動部品70と、螺合構造80を有している。
【0028】
キャリア50は、取付構造52と、係合構造58と、浮動部品収容構造64を一体に有している。キャリア50は、上板50aと、下板50bと、側板50c、50cとが連結されて矩形の筒状に構成されている。側板50c、50cは互いに対向するように配設されている。上板50aは、略中央に厚み方向に弾性変形する板ばね55を有する。側板50c、50cは、略中央に厚み方向に弾性変形する板ばね56を有する。下板50bは、軸状部位74が挿通可能な挿通孔57が設けられている。
【0029】
取付構造52は、キャリア50をドアパネル10に取り付けて保持する。上板50aと、下板50bと、側板50c、50cで囲まれた矩形の筒状の部位の一端は、取付部54として構成される。ドアパネル10には、ドアトリム20の開口部28cに対応した位置にキャリア50の取付部54が嵌合して取り付けられる被取付部14が設けられている。キャリア50は、取付部54が被取付部14に嵌合すると共に板ばね56の付勢によってドアパネル10に保持される。
【0030】
係合構造58は、ドアパネル10とドアトリム20の面方向における第1調整方向40aに相対的に移動可能に係合する。係合構造58は、側板50c、50cのそれぞれにおいて切欠部28dの端面28e、28eを厚み方向から挟み込む案内部60が設けられている。また、案内部60には、位置ずれ量を測ることのできる目盛62が設けられている。また、切欠部28dにも係る目盛62に対応して目盛28fが設けられている。
【0031】
浮動部品収容構造64は、浮動部品70をキャリアに対して第1調整方向40aに規制すると共に、浮動部品70の位置調整操作を行い得るように保持する。浮動部品収容構造64は、上板50aと、下板50bと、側板50c、50cで囲まれた矩形の筒状の内方側の空間である。ここで、浮動部品70は、上板50aと下板50bによって第1調整方向40aが規制されている。
【0032】
浮動部品70は、螺合構造80を操作してドアトリム20の位置を調整する操作部材である。浮動部品70は、略円筒形状に形成されている。浮動部品70の軸方向長さは、キャリア50の上板50aと下板50bの間隔と略等しい。浮動部品70の内周面は、螺合構造80としての雌螺子82の溝が切り欠き形成されている。これにより、浮動部品70は、キャリア50に対して第1調整方向40aに規制されて保持される。浮動部品70の位置調整操作は、軸線周りに回転するように行う。そのため、浮動部品70の外周面は、操作性に鑑み山谷が交互に連続して隣接したスプライン形状に形成された操作部位72として構成される。なお、セレーション形状であってもよい。また、浮動部品70の軸方向端面のうち上板50aに対向する端面には、軸方向に突出した突部73が周方向に隣接している。突部73は、上板50aの板ばね55と係り合う。これにより、浮動部品70は、板ばね55の弾性力に抗して回転させる構成となるため、浮動部品70の不意の回転を防ぎ得る。
【0033】
キャリア50をドアパネル10に保持する。その上で、キャリア50に、浮動部品70を収容する。ドアトリム20の軸状部位74を挿通孔57に挿通させると共に、雌螺子82と雄螺子84を螺合するように浮動部品70を回転させる。そして、切欠部28dの端面28e、28eに案内部60を嵌め込む。ドアトリム20は、車両の構成部品であるインストルメントパネル16との位置を見ながら浮動部品70を回転させて第1調整方向40aへの位置調整を行う。なお、キャリア50の目盛62と、ドアトリムの目盛28fによって第1調整方向40aの位置調整量を測定ることで部品ロット毎の寸法公差の傾向等を把握し得る。最後に図示を省略したねじ等の固定部材を用いてドアパネル10とドアトリム20を共締めしてドアトリム20の位置を固定する。
【0034】
このように、実施形態1の自動車用ドアトリムの位置調整構造は、ドアパネル10とドアトリム20とを面方向に相対的に移動可能に仮組付する仮組付構造30を有しているため組付作業性の向上が図り得る。また、仮組付されたドアパネル10とドアトリム20の面方向の相対的な位置関係を第1調整方向40a(調整方向)に調整する位置調整機構40を有しているため、ドアトリム20を仮組付した後に任意の位置に調整することが容易となる。これにより、ドアトリム20をドアパネル10へ組付ける際に、ドアトリム20の位置合わせの調整を可能とすることができ、ドアトリム20の取付位置によって影響を受けるインストルメントパネル16(周辺部品)との合わせ向上を図ることができる。
【0035】
また、位置調整機構40は、キャリア50と、浮動部品70と、螺合構造80を有している。ここで、浮動部品70とドアトリム20は、浮動部品70が操作されることで螺合構造80による螺合方向に相対移動する。ここで、浮動部品70は、キャリア50に対して第1調整方向40aに規制されて保持される構成である。そのため、ドアパネル10とドアトリム20とは、面方向における第1調整方向40aに相対的に移動する構成となる。すなわち、浮動部品70とドアトリム20との間に構成される螺合構造80によって、複雑な調整機構を採用することなくドアトリム20の位置合わせの調整を可能とすることができる。
【0036】
また、車両の内装におけるドアトリム20は、ドアトリム20の周辺部品であるインストルメントパネル16との位置合わせにおいて内装の見栄えが優先される。特に、インストルメントパネル16からドアトリム20にかけて連続性を有するような車室デザインにおいては、インストルメントパネル16とドアトリム20の境界における位置ずれが見栄えの低下を招きやすい。そのため、上記位置調整機構40はドアトリム20の部位のうち自動車におけるインストルメントパネル16(周辺部品)との境界近傍に構成される。これにより、好適にドアトリム20の位置合わせの調整を可能とし得る。
【0037】
また、浮動部品70は、雌螺子82の構成であるほうが製作しやすい。また、雌螺子82の方がコンパクトな浮動部品70としやすい。そのため、位置調整機構40を全体としてコンパクトに構成し得る。
【0038】
また、仮組付構造30は、ドアパネル10とドアトリム20とを連結する軸状クリップ32によって仮組付される構成である。そのため、複雑な構造を有することなく仮組付けすることができる。また、ドアトリム20と軸状クリップ32との連結部位は、ドアトリム20がドアパネル10に対して面方向の位置が相対的に移動可能な面方向隙間90を有して連結される構成である。そして、位置調整機構40は、上記の面方向隙間90の範囲内で第1調整方向40aに位置調整する構成である。これにより、面方向隙間90の範囲内での調整となり、無駄な調整を省き得る。
【0039】
<実施形態2>
次に、実施形態2について、
図6を用いて説明する。なお、上記実施形態1と同様の構成については、同一の符号を付して図示、説明を省略することがある。以降の実施形態においても同様である。実施形態1では、位置調整機構40が一つの構成であった。そのため、ドアトリム20の調整方向は、車両の上下方向である第1調整方向40aに限られている。実施形態2においては、位置調整機構40が複数構成されており、調整方向が交差する関係に配置構成されている。詳しくは、位置調整機構40が二つ構成されている。すなわち、第1調整方向40aを調整する位置調整機構40に加え、車両の前後方向である第2調整方向40bを調整する位置調整機構40を構成している。ここで、実施形態2では、第1調整方向40aと第2調整方向40bが本願発明の「調整方向」に相当する。
【0040】
このように、実施形態2は、上記実施形態1と同様の作用、効果を有する。更に、位置調整機構40は、ドアトリム20において二つ構成されており、第1調整方向40a、第2調整方向40bが交差する関係に配置構成されていることで、調整方向を複数にすることができる。よって、ドアトリム20の調整方向の自由度がより一層増す。なお、位置調整機構40は、二つに限られず複数構成されるものであればよい。そのため位置調整機構40は、ドアトリム20において複数箇所に構成される態様であってもよい。
【0041】
<実施形態3>
次に、実施形態3について、
図7、8を用いて説明する。実施形態1では、キャリア50が、取付構造52と、係合構造58と、浮動部品収容構造64を一体に有している構成であった。また、螺合構造80としての雄螺子84が構成される軸状部位74はドアトリム20に一体に構成されていた。
【0042】
実施形態3の位置調整機構340は、キャリア350と、浮動部品70と、螺合構造380と、を有している。浮動部品70は、キャリア350に対して第1調整方向40aに規制されて保持される構成であればよい。そのため、浮動部品収容構造364は、キャリア350と別体であり、ドアトリム20側に一体的に構成されている。すなわち、上板350a、下板350b、側板350c、350cがドアトリムと一体に構成されている。取付部354は別途、キャリア350に構成される。また、軸状部位374はキャリア350と一体的に構成されている。このように、実施形態3は、上記実施形態1と同様の作用、効果を有する。
【0043】
<実施形態4>
次に、実施形態4について、
図9、10を用いて説明する。実施形態1では、浮動部品70が螺合構造80としての雌螺子82が構成されていた。実施形態4の位置調整機構440の浮動部品470は、螺合構造480としての雄螺子484を有する構成である。またキャリア450には、螺合構造480としての雌螺子482が構成されている。浮動部品470は、キャリア450に対して第1調整方向40aに規制されて保持される構成として、ドアトリム20側に上板450a、下板450bが一体的に構成されている。このように、実施形態4は、上記実施形態1と同様の作用、効果を有する。
【0044】
<実施形態5>
次に、実施形態5について、
図11を用いて説明する。実施形態1では、取付構造52の構成としてキャリア50の取付部54がドアパネル10に嵌合して取り付けられる構造を示した。これに対し実施形態5の位置調整機構540の取付構造552は、ねじなどの締結部材や、リベット等の打鋲部材によって取り付けられる構成である。キャリア550の側板550c、550cにはドアパネル10の車室内方側10a(
図2参照)に面する取付面551、551が一体的に設けられている。取付面551、551には、ねじ等の締結部材又はリベット等の打鋲部材等による取付部材553、553が嵌めこまれる固定用孔部554a、554bが設けられている。固定用孔部554aは、取付部材553の径と略同径の孔部が設けられている。一方、固定用孔部554bは、長孔状の孔部で取付部材553の径より大きく設けられている。位置調整機構540は、取付部材553を固定用孔部554a、554bに通してドアパネル10に設けられた被取付部(図示省略)に固定される。なお、
図11に示すようにドアトリム20側の構成は、実施形態1(
図4参照)と同様であるため詳細な説明は省略する。
【0045】
このように、実施形態5は、上記実施形態1と同様の作用、効果を有する。また、位置調整機構540は、取付構造552によって強固にドアパネル10に固定することができる。また、位置調整機構540は、取付部材553の径より大きく形成される固定用孔部554bを有することでドアパネル10との取付位置のばらつきを吸収できる。ここで、実施形態5においては、取付構造552が2箇所に設けられているものを示しているがこれに限られず、複数個所設けられるものでもよい。また、取付構造552と、実施形態1のような嵌め込み式の取付構造とを組み合わせたような構成であってもよい。
【0046】
以上、本発明の実施形態1〜5について説明したが、本発明の自動車用ドアトリムの位置調整構造は、本実施の形態に限定されず、その他各種の形態で実施することができるものである。例えば、上記実施形態を種々組み合わせた構成であってもよい。
また、実施形態1〜5においては、車両の内装の一部の周辺部品としてインストルメントパネル16を例示した。しかしながら、これに限られず、ドアトリムの周辺部品であれば他の車両内装部品も含み得る。