特許第6100191号(P6100191)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6100191
(24)【登録日】2017年3月3日
(45)【発行日】2017年3月22日
(54)【発明の名称】車両用構造部材の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B60R 19/04 20060101AFI20170313BHJP
【FI】
   B60R19/04 M
【請求項の数】2
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-64554(P2014-64554)
(22)【出願日】2014年3月26日
(65)【公開番号】特開2015-186946(P2015-186946A)
(43)【公開日】2015年10月29日
【審査請求日】2016年1月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000241496
【氏名又は名称】豊田鉄工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085361
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 治幸
(74)【代理人】
【識別番号】100147669
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 光治郎
(72)【発明者】
【氏名】中西 誠
(72)【発明者】
【氏名】山田 豊
【審査官】 森本 哲也
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−168814(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0015902(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 19/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の側板と、該側板を連結する複数の連結板と、を有する角形閉断面の長手形状の中空押出形材を用いて、前記一対の側板の相互の間隔である幅寸法が長手方向において相違している車両用構造部材を製造する方法において、
前記複数の連結板が何れも屈曲形状とされた前記中空押出形材を押出成形によって製造する押出成形工程と、
前記屈曲形状の前記連結板を平坦に延ばすように前記一対の側板の相互の間隔を前記長手方向において部分的に拡げて前記幅寸法を拡大する拡幅工程と、
を有し、且つ、前記拡幅工程は、前記一対の側板の一方に貫通孔を形成し、該貫通孔内にパンチを挿入するとともに、該一方の側板を保持した状態で該パンチを他方の側板に当接させてプレスにより互いに離間させることにより前記幅寸法を拡大するものである
ことを特徴とする車両用構造部材の製造方法。
【請求項2】
前記連結板は、前記一対の側板に対して垂直姿勢になる垂直部を中間部分に備えており、該垂直部の両側の2箇所に屈曲部が設けられている
ことを特徴とする請求項1に記載の車両用構造部材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バンパーリインフォースメントやフロアブレース、タワーバー、クロスメンバ等の中空の車両用構造部材に係り、特に、中空押出形材を用いて幅寸法が長手方向において相違している車両用構造部材を製造する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一対の側板と、その側板を連結する複数の連結板と、を有する角形閉断面の長手形状の中空押出形材を用いて、前記一対の側板の相互の間隔である幅寸法が長手方向において相違している車両用構造部材を製造する技術が知られている。特許文献1に記載の車両用構造部材の製造方法はその一例で、断面が矩形の中空押出形材の一対の連結板にノッチ等の易屈曲形状部を設け、一対の側板をプレスによって押圧することにより、部分的に連結板を曲げ変形させて押し潰すようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−174047号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このようにノッチ等の易屈曲形状部を設けて押し潰す場合、元の中空押出形材の幅寸法が小さく且つアルミニウムのように所定の強度を得るために肉厚が厚いと、ノッチ等の易屈曲形状部を設けても連結板を適切に曲げ変形させることが困難で、割れたり破損したりする可能性があった。また、一対の側板の間に空間を残した状態で成形しようとすると、その押し潰し形状を細かく設定することが難しい。
【0005】
本発明は以上の事情を背景として為されたもので、その目的とするところは、幅寸法が比較的小さい部位を有する車両用構造部材であっても、中空押出形材を用いて適切に製造できるとともに、一対の側板の間に空間を有する状態で幅寸法を高い精度で細かく設定できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる目的を達成するために、第1発明は、一対の側板と、その側板を連結する複数の連結板と、を有する角形閉断面の長手形状の中空押出形材を用いて、前記一対の側板の相互の間隔である幅寸法が長手方向において相違している車両用構造部材を製造する方法において、(a) 前記複数の連結板が何れも屈曲形状とされた前記中空押出形材を押出成形によって製造する押出成形工程と、(b) 前記屈曲形状の前記連結板を平坦に延ばすように前記一対の側板の相互の間隔を前記長手方向において部分的に拡げて前記幅寸法を拡大する拡幅工程と、を有し、且つ、(c) 前記拡幅工程は、前記一対の側板の一方に貫通孔を形成し、その貫通孔内にパンチを挿入するとともに、その一方の側板を保持した状態でそのパンチを他方の側板に当接させてプレスにより互いに離間させることにより前記幅寸法を拡大するものであることを特徴とする。
【0008】
発明は、第1発明の車両用構造部材の製造方法において、前記連結板は、前記一対の側板に対して垂直姿勢になる垂直部を中間部分に備えており、その垂直部の両側の2箇所に屈曲部が設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
このような車両用構造部材の製造方法によれば、複数の連結板が何れも屈曲形状とされた中空押出形材を押出成形によって製造するとともに、その屈曲形状の連結板を平坦に延ばすように一対の側板の相互の間隔を長手方向において部分的に拡げて幅寸法を拡大するため、幅狭部分の幅寸法が比較的小さい車両用構造部材であっても中空押出形材を用いて適切に製造できるようになる。また、一対の側板の間隔を広げて幅寸法を拡大するため、例えば金型の成形面等に押圧して拡幅することにより拡幅形状を高い精度で細かく設定することができる。
【0010】
また、一対の側板の一方に貫通孔を形成し、その貫通孔内にパンチを挿入するとともに、その一方の側板を保持した状態でパンチを他方の側板に当接させてプレスにより互いに離間させることにより幅寸法を拡大するため、液圧成形等で拡幅する場合に比較して簡単な設備で安価に製造できる。
【0011】
発明では、連結板が、一対の側板に対して垂直姿勢になる垂直部を中間部分に備えており、その垂直部の両側の2箇所に屈曲部が設けられているため、屈曲部が一箇所のL字形状の連結板に比較して拡幅の際の各屈曲部における角度変化が小さくなり、延ばし変形の際の加工硬化等によるダメージが抑制されて割れや破損等が一層適切に抑制される。また、側板に対して垂直姿勢になる垂直部を備えているため、例えば車両衝突時等に一対の側板を接近させる荷重が加えられる場合、その垂直部によって荷重が適切に受け止められるとともに、その垂直部の変形で荷重を適切に吸収して衝撃を緩和することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明方法に従って製造された車両用バンパーリインフォースメントを示す図で、車両への配設状態において上方から見た平面図である。
図2図1の車両用バンパーリインフォースメントの2箇所の断面図で、(a) は図1におけるIA−IA矢視部分、すなわち幅寸法が比較的狭い幅狭部分の断面図であり、(b) は図1におけるIB−IB矢視部分、すなわち幅寸法が比較的広い幅広部分の断面図である。
図3図1の車両用バンパーリインフォースメントの製造工程を説明する工程図で、何れも図1に対応する平面図である。
図4図3のプレス拡幅工程でプレスにより中空押出形材の端部の幅寸法を拡げる工程を具体的に説明する断面図である。
図5】車両と衝突バリアとのラップが小さい微小ラップのオフセット衝突を説明する平面図である。
図6】本発明方法に従って製造される車両用バンパーリインフォースメントの別の例を説明する図で、(a) 、(b) はそれぞれ図2の(a) 、(b) に対応する断面図である。
図7】本発明方法に従って製造される車両用バンパーリインフォースメントの更に別の例を説明する図で、(a) 、(b) はそれぞれ図2の(a) 、(b) に対応する断面図である。
図8】本発明方法に従って製造される車両用バンパーリインフォースメントの更に別の例を説明する図で、(a) 、(b) はそれぞれ図2の(a) 、(b) に対応する断面図である。
図9】本発明方法に従って製造される車両用バンパーリインフォースメントの更に別の例を説明する図で、(a) 、(b) はそれぞれ図2の(a) 、(b) に対応する断面図である。
図10図9の実施例においてプレス拡幅工程でプレスにより中空押出形材の幅寸法を拡げる工程を具体的に説明する断面図である。
図11】長手方向の端部まで一定の幅寸法の車両用バンパーリインフォースメントに関する微小ラップのオフセット衝突を説明する図で、図5に対応する平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、車両用バンパーリインフォースメントやフロアブレース、タワーバー、クロスメンバ等の中空の車両用構造部材を、中空押出形材を用いて製造する場合に好適に適用される。中空押出形材は、アルミニウムやアルミニウム合金、或いはその他の金属の角形の押出形材である。連結板は、一対の側板と共に角形閉断面を構成する一対の外側連結板を有するが、内部に補強用等のリブ(仕切り板)が連結板として中空押出形材の軸方向と平行に設けられても良い。中空押出形材には、一対の側板の少なくとも一方の側板の両側部に外方へ突き出すフランジを設けることも可能で、拡幅工程の際にそのフランジを保持して他方の側板を離間させるようにしても良い。
【0014】
一対の側板は互いに略平行であることが望ましいが、軸方向と直角な断面において一方が他方に対して傾斜していても差し支えない。幅寸法を拡大する部位は、車両用構造部材の長手方向の端部であっても良いし長手方向の中央部分でも良いなど、種々の態様が可能で、車両用構造部材の形状や要求強度等に応じて適宜定められる。長手方向の複数箇所を拡幅するようにしても良い。
【0015】
連結板の屈曲形状は、例えば一対の側板に対して垂直姿勢になる垂直部を中間部分に有し、その垂直部の両側の2箇所に屈曲部を設けたものが適当であるが、屈曲部が一箇所のL字形状の連結板を採用することもできるし、湾曲形状であっても良いし、屈曲部を3箇所以上設けることもできるなど、種々の態様が可能である。その屈曲形状の連結板は拡幅工程で平坦に延ばされるが、完全に平坦に延ばすことは困難で、屈曲の程度が小さくなるようにして拡幅すれば良い。拡幅工程では、例えば連結板の屈曲部を押圧して平坦化しつつプレスで一対の側板を離間させるようにしても良い。この拡幅工程は、直線状の中空押出形材に対して行うことが望ましいが、例えば車両用バンパーリインフォースメントのように目的とする最終形状が全体として湾曲していたり部分的に折れ曲がったりしている車両用構造部材については、中空押出形材を所定形状に曲げ成形した後に拡幅工程を行って部分的に幅寸法を拡幅するようにしても良い。
【実施例】
【0017】
以下、本発明の実施例を、図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、以下の実施例における各部の寸法や寸法比、角度、肉厚等は必ずしも正確に表したものではない。
【0018】
図1は、フロント側の車両用バンパーリインフォースメント10を示す図で、車両への配設状態において上方から見た概略平面図である。この車両用バンパーリインフォースメント10は、図1の左右方向である車幅方向に長い長手形状を成しているとともに、図1に示す平面視において、車幅方向の中央部分が車両前側へ膨出する滑らかな湾曲形状を成している。そして、車幅方向の両端で車体側へなだらかに後退する一対の傾斜端部12において、それぞれクラッシュボックス16を介して車体側部材である左右のサイドメンバ18に固定される。この車両用バンパーリインフォースメント10は左右対称に構成されており、左右のクラッシュボックス16およびサイドメンバ18も略左右対称に構成されている。また、車両用バンパーリインフォースメント10の外側すなわち車両前側には、合成樹脂製のバンパー20が配設される。車両用バンパーリインフォースメント10は車両用構造部材の一例である。
【0019】
上記車両用バンパーリインフォースメント10は、角形閉断面の中空形状を成しており、図2の(a) は図1におけるIA−IA矢視部分、すなわち幅寸法W1が比較的狭い幅狭部分の断面図で、図2の(b) は図1におけるIB−IB矢視部分、すなわち幅寸法W2が比較的広い幅広部分の断面図である。これ等の断面図から明らかなように、車両の外側(前側)に位置する外側板22、および車体側に位置する内側板24と、それ等の外側板22、内側板24の上下の端部を連結する上連結板26および下連結板28とによって、全体として略矩形(実施例は長方形)の角形閉断面が構成されている。また、上連結板26と下連結板28との間には、一対の補強用のリブ(仕切り板)30、32が外側板22および内側板24を連結するように設けられている。この車両用バンパーリインフォースメント10は、アルミニウムの押出成形品で、上記外側板22、内側板24、上連結板26、下連結板28、リブ30、32は一体に構成されており、長手方向の両端の傾斜端部12を除いて図2(a) に示す断面形状と略同じ一定の断面形状であり、傾斜端部12では外側板22と内側板24との間の間隔である幅寸法W2が拡大されて幅広とされている。リブ30、32は上連結板26、下連結板28と共に複数の連結板を構成している。
【0020】
上記外側板22および内側板24は、車両幅方向において滑らかに湾曲させられた略平板形状を成しており、略垂直な姿勢で互いに略平行に設けられている。上連結板26、下連結板28、リブ30、32は、それぞれ外側板22、内側板24に対して略垂直姿勢になる略水平な垂直部34を中間部分に備えているとともに、その垂直部34の両側の2箇所に屈曲部36、38が設けられた屈曲形状を成している。具体的には、上連結板26および下側のリブ32は、垂直部34が下方へ平行移動するように変位させられており、一対の屈曲部36、38よりも前側および後側の部分がそれぞれ斜め上方へ延びる傾斜部とされて外側板22、内側板24に連結された略同一の断面形状とされている。また、下連結板28および上側のリブ30は、垂直部34が上方へ平行移動するように変位させられており、一対の屈曲部36、38よりも前側および後側の部分がそれぞれ斜め下方へ延びる傾斜部とされて外側板22、内側板24に連結された略同一の断面形状とされている。
【0021】
図2の(a) に示す幅狭部分と(b) に示す幅広部分とでは、上記上連結板26、下連結板28、リブ30、32の屈曲の程度の相違によって幅寸法W1、W2が相違させられており、それ等の屈曲形状に沿った長さ寸法は幅寸法W1、W2の相違に拘らず略同じである。すなわち、図2の(b) の幅広部分では、上連結板26、下連結板28、リブ30、32がそれぞれ平坦になるように延ばされ、屈曲部36、38の屈曲角度が広げられているのであり、その分だけ外側板22が内側板24に対して車両前側へ突出させられている。このように傾斜端部12で外側板22が内側板24に対して車両前側へ突出させられると、図5から明らかなように外側板22が車両の進行方向に対して略直角になり、クラッシュボックス16による衝撃吸収性能が適切に得られるようになる。図5は、衝突面42を有する衝突バリア40に対して所定の車速V1で車両の右側前部を衝突させるオフセット衝突を示す平面図で、衝突バリア40と車両用バンパーリインフォースメント10とのラップ(車両幅方向の重なり)が小さい微小ラップの場合であり、衝突部位における外側板22が車両進行方向に対して略直角であるため、衝突バリア40から入力される荷重Fが車両前後方向と略平行になり、クラッシュボックス16が軸方向へ適切に圧縮変形させられるようになって、所定の衝撃吸収性能が得られるようになるのである。
【0022】
これに対し、図11に示す車両用バンパーリインフォースメント200のように外側板22と内側板24との間の幅寸法がW1で一定の場合には、外側板22の傾斜に応じて入力荷重Fが車両の内側向きになるため、その入力荷重Fの車幅方向分力が発生し、クラッシュボックス16に車両の内側向き(左回り)のモーメントMが生じて内側へ倒れ易くなり、衝撃吸収性能が損なわれる。
【0023】
また、本実施例の車両用バンパーリインフォースメント10は、外側板22および内側板24を連結している上連結板26、下連結板28、リブ30、32が、何れもそれ等の側板22、24に対して垂直姿勢になる垂直部34を中間部分に備えているため、車両衝突時に入力荷重Fによって外側板22が内側板24に対して接近させられる際に、その垂直部34によって入力荷重Fが適切に受け止められるとともに、その垂直部34の変形で入力荷重Fを適切に吸収して衝撃を緩和することができる。
【0024】
次に、以上のように構成された車両用バンパーリインフォースメント10の製造方法の一例を、図3に示す製造工程の工程図に基づいて説明する。図3の(a) 〜(d) は、何れも前記図1に対応する平面図であり、(a) は押出成形工程で、アルミニウム材料を用いて全長に亘って前記図2の(a) と同じ一定の角形閉断面の直線状の中空押出形材50を押出成形によって製造する。図2の(a) は、この中空押出形材50の断面図、すなわち図3の(a) におけるIIIA−IIIA矢視部分の断面図でもある。
【0025】
図3の(b) は穿孔工程で、幅寸法をW2に拡幅する軸方向の両端部の内側板24に、レーザ加工或いはプレスによる孔抜き加工などで貫通孔52(図4参照)を形成する。この貫通孔52は、図10の断面図に示されるように上連結板26とリブ30との間、リブ30と32との間、リブ32と下連結板28の間に、それぞれ1個または中空押出形材50の長手方向に離間して複数個(図4では各1個)設けられる。図10は、外側板22および内側板24の各々の両側部に外方に向かって延び出すフランジ104、106が設けられた他の実施例で、図4におけるIV−IV矢視断面に相当する断面図であるが、本実施例においても貫通孔52については図10と同様に設けられる。図3の(b) に示す矢印Pは、貫通孔52の孔開け位置である。
【0026】
図3の(c) はプレス拡幅工程で、中空押出形材50の両端部の外側板22を内側板24から離間させるように、プレスにより変形させて幅寸法をW2まで拡幅することにより、幅広の傾斜端部12に対応する拡幅部54を形成する。図4は、このプレス拡幅工程を具体的に説明する図で、左右方向が中空押出形材50の長手方向であり、その中空押出形材50の一端部を示す断面図である。プレス拡幅工程では先ず、一対の金型60、62によって中空押出形材50を位置決めして保持するとともに、スライド型64をカム機構等により中空押出形材50の軸方向から開口の内部へ挿入し、内側板24を金型60との間に位置決めして保持する。金型60にはパンチ66が軸方向に進退可能に配設されており、前記貫通孔52内に挿入して外側板22の内側面に当接させるとともに、そのパンチ66を更に突出させて外側板22を金型62の成形面68に押圧して変形させることにより、内側板24から離間させて前記幅寸法W2まで拡幅する。これにより、一点鎖線で示すように成形面68に対応する拡幅形状、すなわち幅寸法がW1からW2まで連続的に滑らかに変化する拡幅部54が形成される。
【0027】
上記プレス拡幅工程では、屈曲形状の上連結板26、下連結板28、リブ30、32は、それぞれその屈曲形状が引っ張り延ばされて図2の(b) に示すように平坦化され、この平坦化によって幅寸法W2への拡幅が実現される。また、これ等の上連結板26、下連結板28、リブ30、32は、垂直部34の両側の2箇所に屈曲部36、38が設けられているため、拡幅の際の各屈曲部36、38における角度変化が、屈曲部が1箇所の場合に比較して小さくなり、延ばし変形の際の加工硬化等によるダメージが抑制される。図4の一点鎖線は、外側板22がパンチ66により成形面68に沿って変形させられた状態である。本実施例では、図3の(b) の穿孔工程および(c) のプレス拡幅工程が拡幅工程である。なお、図2の(b) は、中空押出形材50の両端部の拡幅部54の断面図、すなわち図3の(c) におけるIIIB−IIIB矢視部分の断面図でもある。
【0028】
その後、スライド型64を後退させるとともに金型60、62を開いて、両端部に幅寸法W2の拡幅部54が設けられた中空押出形材50を取り出す。そして、(d) の曲げ成形工程でプレスにより湾曲形状に曲げ成形することにより、目的とする車両用バンパーリインフォースメント10が製造される。なお、(b) の穿孔工程や(c) のプレス拡幅工程を、(d) の曲げ成形工程の後で行うことも可能である。
【0029】
ここで、このような本実施例の車両用バンパーリインフォースメント10の製造方法によれば、外側板22および内側板24を連結する上連結板26、下連結板28、リブ30、32が何れも屈曲形状とされた中空押出形材50を押出成形によって製造するとともに、その上連結板26、下連結板28、リブ30、32を平坦に延ばすように、中空押出形材50の長手方向の両端部の外側板22をそれぞれ部分的に内側板24から離間させて幅寸法W2まで拡幅するため、長手方向の中間部分の幅狭部分の幅寸法W1が比較的小さい車両用バンパーリインフォースメント10であっても、中空押出形材50を用いて割れや破損等を抑制しつつ適切に製造できる。
【0030】
また、外側板22を部分的に内側板24から離間させ、金型62の成形面68に押圧して幅寸法W2まで拡幅するため、その成形面68によって拡幅形状を高い精度で細かく設定することができる。
【0031】
また、中空押出形材50を部分的に拡幅する際には、拡幅すべき端部の内側板24に貫通孔52を形成し、その貫通孔52内にパンチ66を挿入するとともに、スライド型64と金型60との間で内側板24を保持した状態で、パンチ66を外側板22に当接させてプレスにより互いに離間させて拡幅するため、液圧成形等で拡幅する場合に比較して簡単な設備で安価に製造できる。
【0032】
また、外側板22および内側板24を連結する上連結板26、下連結板28、リブ30、32は、垂直部34の両側の2箇所に屈曲部36、38が設けられているため、屈曲部が一箇所のL字形状の連結板に比較して拡幅の際の各屈曲部36、38における角度変化が小さくなり、延ばし変形の際の加工硬化等によるダメージが抑制されて割れや破損等が一層適切に抑制される。
【0033】
また、上記上連結板26、下連結板28、リブ30、32は、外側板22および内側板24に対して垂直姿勢になる垂直部34を備えているため、傾斜端部12を含めた車両用バンパーリインフォースメント10の全長において、車両衝突時に入力荷重Fによって外側板22が内側板24に対して接近させられる際に、その垂直部34によって入力荷重Fが適切に受け止められるとともに、その垂直部34の変形で入力荷重Fを適切に吸収して衝撃を緩和することができる。
【0034】
次に、本発明の他の実施例を説明する。なお、以下の実施例において前記実施例と実質的に共通する部分には同一の符号を付して詳しい説明を省略する。
【0035】
図6の(a) 、(b) はそれぞれ図2の(a) 、(b) に対応する断面図で、この車両用バンパーリインフォースメント70は、前記実施例に比較して、上連結板74の垂直部34が上方へ突き出しているとともに、下連結板76の垂直部34が下方へ突き出している点が相違する。このような車両用バンパーリインフォースメント70も、(a) に示す幅狭の断面形状の中空押出形材72の長手方向の両端部をそれぞれ前記実施例と同様にして(b) に示すように拡幅することにより、外側板22が内側板24から離間するように車両前側へ曲げられた拡幅部54が形成され、この拡幅部54によって傾斜端部12が構成される。本実施例では上下に突き出す上連結板74および下連結板76の垂直部34を互いに接近させるように押圧することによっても、外側板22が内側板24から離間するように拡幅することができる。
【0036】
図7の(a) 、(b) はそれぞれ図2の(a) 、(b) に対応する断面図で、この車両用バンパーリインフォースメント80は、前記実施例に比較して、上連結板84、下連結板85、リブ86、87の断面形状が、何れも中央付近の1箇所の屈曲部88で折り曲げられた略L字形の屈曲形状で、前記垂直部34を備えていない点が相違する。このような車両用バンパーリインフォースメント80も、(a) に示す幅狭の断面形状の中空押出形材82の長手方向の両端部をそれぞれ前記実施例と同様にして(b) に示すように拡幅することにより、外側板22が内側板24から離間するように車両前側へ曲げられた拡幅部54が形成され、この拡幅部54によって傾斜端部12が構成される。
【0037】
図8の(a) 、(b) はそれぞれ図2の(a) 、(b) に対応する断面図で、この車両用バンパーリインフォースメント90は、前記実施例に比較してリブ30、32を備えていない断面が単純な略正方形の角筒形状である点が相違する。このような車両用バンパーリインフォースメント90も、(a) に示す幅狭の断面形状の中空押出形材92の長手方向の両端部をそれぞれ前記実施例と同様にして(b) に示すように拡幅することにより、外側板22が内側板24から離間するように車両前側へ曲げられた拡幅部54が形成され、この拡幅部54によって傾斜端部12が構成される。
【0038】
図9の(a) 、(b) はそれぞれ図2の(a) 、(b) に対応する断面図で、この車両用バンパーリインフォースメント100は、前記実施例に比較して、外側板22および内側板24の両側端部にそれぞれ外向きに突き出すフランジ104、106が設けられている点が相違する。このような車両用バンパーリインフォースメント100も、(a) に示す幅狭の断面形状の中空押出形材102の長手方向の両端部をそれぞれ(b) に示すように拡幅することにより、外側板22が内側板24から離間するように車両前側へ曲げられた拡幅部54が形成され、この拡幅部54によって傾斜端部12が構成される。本実施例では、図10に示すように内側板24の両側のフランジ106を一対のスライド型108、110によって金型60との間で保持した状態で、パンチ66により外側板22を成形面68に押圧して変形させることにより拡幅することもできる。この場合には、中空押出形材102の長手方向の端部だけでなく、長手方向の中間部分を含めた任意の部位を部分的に拡幅することができる。図10は、図4におけるIV−IV矢視断面に相当する断面図である。
【0039】
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、これ等はあくまでも一実施形態であり、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更,改良を加えた態様で実施することができる。
【符号の説明】
【0040】
10、70、80、90、100:車両用バンパーリインフォースメント(車両用構造部材) 12:傾斜端部 22:外側板 24:内側板 26:上連結板 28:下連結板 30、32:リブ(連結板) 34:垂直部 36、38:屈曲部 50、72、82、92、102:中空押出形材 52:貫通孔 54:拡幅部 66:パンチ W1、W2:幅寸法
図1
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図11