特許第6100192号(P6100192)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6100192レーザ溶接装置、レーザ溶接方法及び電池ケース
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6100192
(24)【登録日】2017年3月3日
(45)【発行日】2017年3月22日
(54)【発明の名称】レーザ溶接装置、レーザ溶接方法及び電池ケース
(51)【国際特許分類】
   B23K 26/21 20140101AFI20170313BHJP
   B23K 26/03 20060101ALI20170313BHJP
   H01M 2/02 20060101ALI20170313BHJP
   H01M 2/04 20060101ALI20170313BHJP
【FI】
   B23K26/21 P
   B23K26/03
   H01M2/02 A
   H01M2/04 A
【請求項の数】7
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2014-66854(P2014-66854)
(22)【出願日】2014年3月27日
(65)【公開番号】特開2015-188901(P2015-188901A)
(43)【公開日】2015年11月2日
【審査請求日】2016年3月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】399107063
【氏名又は名称】プライムアースEVエナジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】坂柳 伸彰
【審査官】 青木 正博
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−086809(JP,A)
【文献】 特開昭62−234684(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/00−26/70
H01M 2/02
H01M 2/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ発振器の発振したレーザ光をケースの開口部と蓋との接合対象部分に照射してレーザ溶接するレーザ溶接装置であって、
前記ケースの開口部の内側面と前記蓋の外周面は、対向する前記接合対象部分により溝部を形成するように配置されるとともに、互いの傾斜面の滑動によって前記溝部の溝幅を変更可能とする滑動部を有するものであり、
前記溝部の溝幅を検出する検出部と、
前記ケース及び前記蓋の少なくとも一方に前記滑動部を介して前記溝部の溝幅を調整する力を付与する調整力付与部と、
前記検出部により検出された溝幅に応じて前記調整力付与部が付与する力を制御する制御部と、
を備えることを特徴とするレーザ溶接装置。
【請求項2】
前記照射するレーザ光がトップハット型の強度分布を有するレーザ光である
請求項1に記載のレーザ溶接装置。
【請求項3】
前記照射するレーザ光がガウシアン型の強度分布を有するレーザ光である
請求項1に記載のレーザ溶接装置。
【請求項4】
前記溝部を形成する前記接合対象部分の一方の端部が前記レーザ光の照射される方向に突出している
請求項1〜3のいずれか一項に記載のレーザ溶接装置。
【請求項5】
前記調整力付与部には冷却器が設けられてなる
請求項1〜4のいずれか一項に記載のレーザ溶接装置。
【請求項6】
レーザ発振器の発振したレーザ光をケースの開口部と蓋との接合対象部分に照射してレーザ溶接するレーザ溶接方法であって、
前記ケースの開口部の内側面と前記蓋の外周面は、対向する前記接合対象部分により溝部を形成するように配置されるとともに、互いの傾斜面の滑動によって前記溝部の溝幅を変更可能とする滑動部を有するものであり、
前記溝部の溝幅を検出部により検出するステップと、
前記ケース及び前記蓋の少なくとも一方に前記滑動部を介して前記溝部の溝幅を調整する力を調整力付与部により付与するステップと、
前記検出部により検出された溝幅に応じて前記調整力付与部が付与する力を制御部により制御するステップと、
を備えることを特徴とするレーザ溶接方法。
【請求項7】
ケースの開口部と蓋との接合対象部分がレーザ発振器から発振されるレーザ光の照射によりレーザ溶接される電池ケースであって、
前記ケースの開口部の内側面と前記蓋の外周面は、対向する前記接合対象部分により溝部を形成するように配置されるとともに、互いの傾斜面の滑動によって前記溝部の溝幅を変更可能とする滑動部を有する
ことを特徴とする電池ケース。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ光を用いて接合対象となる部材を溶接するレーザ溶接装置、及びレーザ溶接方法、及び該レーザ溶接装置により溶接される電池ケースに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、接合対象となる2つの部材がレーザ溶接装置によって溶接されるものの1つとして、ケースに蓋が溶接されてなる電池が知られている。こうした電池では、ケース内の電解液などが外部に漏れ出すことのない高い密閉性を維持すべく精度の高い溶接がそのケースと蓋との間で行われている。こうした電池のケースと蓋とを溶接する技術の一例が特許文献1に記載されている。
【0003】
特許文献1に記載の技術では、レーザ光の照射により電池の蓋(電池蓋)とケース(電池缶)との溶接に際し、電池の溶接所要個所には蓋の先端部分をケースの開口上端面と外壁面との稜線を越えて存在させ、その先端部分を含むようにレーザ光を照射する。そしてこれにより、蓋の先端部分の溶融体の少なくとも一部が溶接所要箇所の間隙に充填されるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−21365号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1に記載の技術では、電池のケースと蓋との間隙に溶融体が充填されるようにはなるものの、この電池のケースと蓋との間隙はケースや蓋の公差などに起因して一定の寸法に保たれるとは限らない。すなわち、ケースと蓋との相対位置や電池としての個体差によってケースと蓋との溶接の状態が影響を受けるおそれがある。なお、こうした、レーザ光による溶接において接合対象となる部材は、上述した電池のケースと蓋には限られない。
【0006】
本発明は、このような実情に鑑みなされたものであって、その目的は、レーザ光による溶接に際し、接合対象となる部材同士の相対位置又は個体差による影響を抑制して、より適切な溶接を行うことのできるレーザ溶接装置、及びレーザ溶接方法、及び該レーザ溶接装置により溶接される電池ケースを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するレーザ溶接装置は、レーザ発振器の発振したレーザ光をケースの開口部と蓋との接合対象部分に照射してレーザ溶接するレーザ溶接装置であって、前記ケースの開口部の内側面と前記蓋の外周面は、対向する前記接合対象部分により溝部を形成するように配置されるとともに、互いの傾斜面の滑動によって前記溝部の溝幅を変更可能とする滑動部を有するものであり、前記溝部の溝幅を検出する検出部と、前記ケース及び前記蓋の少なくとも一方に前記滑動部を介して前記溝部の溝幅を調整する力を付与する調整力付与部と、前記検出部により検出された溝幅に応じて前記調整力付与部が付与する力を制御する制御部と、を備えることを要旨とする。
【0008】
上記課題を解決するレーザ溶接方法は、レーザ発振器の発振したレーザ光をケースの開口部と蓋との接合対象部分に照射してレーザ溶接するレーザ溶接方法であって、前記ケースの開口部の内側面と前記蓋の外周面は、対向する前記接合対象部分により溝部を形成するように配置されるとともに、互いの傾斜面の滑動によって前記溝部の溝幅を変更可能とする滑動部を有するものであり、前記溝部の溝幅を検出部により検出するステップと、前記ケース及び前記蓋の少なくとも一方に前記滑動部を介して前記溝部の溝幅を調整する力を調整力付与部により付与するステップと、前記検出部により検出された溝幅に応じて前記調整力付与部が付与する力を制御部により制御するステップと、を備えることを要旨とする。
【0009】
上記課題を解決する電池ケースは、ケースの開口部と蓋との接合対象部分がレーザ発振器から発振されるレーザ光の照射によりレーザ溶接される電池ケースであって、前記ケースの開口部の内側面と前記蓋の外周面は、対向する前記接合対象部分により溝部を形成するように配置されるとともに、互いの傾斜面の滑動によって前記溝部の溝幅を変更可能とする滑動部を有することを要旨とする。
【0010】
このような構成又は方法によれば、ケースと蓋との間の溝部に溶融された材料が入り込み適切な溶接が可能となる。また、より適切な溶接が行われるように、ケース及び蓋の少なくとも一方に力(以下、調整力と称することもある)を加えて、滑動部を滑動させることで、溝部の溝幅を調整することができるようになる。このように、溝部の溝幅の調整を可能にすることで、レーザ光による溶接に際し、接合対象となる部材同士の相対位置又は個体差による影響を抑制して、より適切な溶接を行うことができるようになる。
【0011】
なお、溝部は、溝幅が狭くなると溶融された材料が入り込みづらくなるため適切な溶接が難しくなり、逆に、溝幅が広くなると溶融材料を多く供給しないと接合対象となる部材同士が適切に溶接されなくなるおそれが高くなる。よって、溶接対象との間の溝部に適切な溝幅を設定することによって溶接対象を適切に溶接させることができる。
【0012】
さらに、ケースと蓋とが滑動部で当接することにより、溶接時の溶融金属やスパッタにより飛散する部材がケース内部に進入することが抑制されるようにもなる。
好ましい構成として、前記照射するレーザ光がトップハット型の強度分布を有するレーザ光である。
【0013】
このような構成によれば、トップハット型のレーザ光は、ガウシアン型のレーザ光に比べて溶接加工時の安定性が高いことから、レーザ溶接におけるスパッタの発生などが抑制されるようになる。また、トップハット型のレーザ光は、キーホールを発現させづらいものの、溝部によってキーホールが生じたときと同様の好適な溶接が可能ともなる。
【0014】
好ましい構成として、前記照射するレーザ光がガウシアン型の強度分布を有するレーザ光である。
このような構成によれば、ガウシアン型のレーザ光であっても、凹部があることにより、そのレーザ光によるキーホールの形成が不要となることから溶接加工に要する時間の短縮が図られるようになる。
【0015】
好ましい構成として、前記溝部を形成する前記接合対象部分の一方の端部が前記レーザ光の照射される方向に突出している。
このような構成によれば、角度を有し熱の集中しやすい部分がレーザ光の近くに配置されるため、その部分を溶融の起点として、レーザ光による溶接が迅速に行われるようになる。
【0016】
好ましい構成として、前記調整力付与部には冷却器が設けられてなる。
このような構成によれば、溝部からその周囲に伝達された熱はケースや蓋を熱により変形させるおそれがある。そこで、調整力付与部を介して溶接に不要な熱を吸収することにより、溶接に伴ってケースや蓋に熱に起因する変形が生じることが抑制されるようになる。また、電池ケースに収容される発電要素への影響が生じるおそれも軽減される。
【発明の効果】
【0017】
このレーザ溶接装置、及びレーザ溶接方法、及び該レーザ溶接装置により溶接される電池ケースによれば、レーザ光による溶接に際し、接合対象となる部材同士の相対位置又は個体差による影響を抑制して、より適切な溶接を行うことができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】レーザ溶接装置を具体化した一実施形態について、その概略構成を示す構成図。
図2】同レーザ溶接装置における接合対象の電池ケースの一例についてその斜視構造を示す斜視図。
図3】同レーザ溶接装置における電池ケースの接合対象部分の溝部の溝幅を狭めるように調整する態様について説明する説明図。
図4】同レーザ溶接装置における電池ケースの接合対象部分の溝部の溝幅が適切な幅に調整された例を模式的に示す模式図。
図5】同レーザ溶接装置における溶接時の溶接部分の状態について模式的に示す模式図。
図6】接合対象部分の溝部の有無と、溶接速度及び溶け深さの関係を示すグラフ。
図7】接合対象部分の溝部の有無と溶け深さとの関係を模式的に示す模式図。
図8】レーザ溶接装置を具体化した他の実施形態において、電池ケースの接合対象部分の溝部の溝幅を広げるように調整する態様について説明する説明図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1〜7に従って、レーザ溶接装置を具体化した一実施形態について説明する。
本実施形態のレーザ溶接装置は、図5に示すように、レーザ光を発振するレーザ発振器を含み構成されるレーザ生成部100と、レーザ生成部100から入力されたレーザ光を接合対象部分に照射させるレーザ光出力部200とを備えている。つまり、レーザ溶接装置は、レーザ生成部100の出力するレーザ光をレーザ光出力部200から照射レーザ光Ltgとして出力し、接合対象としての電池300の接合対象部分に照射させる。なお本実施形態では、例えば、レーザ生成部100は半導体レーザが発振するレーザ光を出力し、例えば、照射レーザ光Ltgは、エネルギー強度分布がトップハット型である。
【0020】
続いて、図1を参照して、本実施形態のレーザ溶接装置の詳細について説明する。なお、図1では、図示の都合上、上述したレーザ生成部100及びレーザ光出力部200の図示を省略している。
【0021】
レーザ溶接装置は、電池300のケース310と蓋320との2つの部材の間の距離を検出する検出部としての検出器270と、検出器270の検出した結果が入力される制御部としての制御装置500とを備えている。また、レーザ溶接装置は、制御装置500の制御に基づいてケース310の外側面314に加えるべき調整力を発生する調整力付与部を構成する押圧装置510と、押圧装置510の発生する調整力をケース310の外側面314に伝達する調整力付与部を構成する伝達部520とを備えている。
【0022】
図2に示すように、電池300は、ケース310と、そのケース310に嵌め込まれる蓋320とを備えている。ケース310及び蓋320は、板厚が2mm以下の厚みであるアルミニウムを含む金属材料からなる。なお、板厚が2mmより厚くてもレーザ溶接は可能である。本実施形態では、ケース310と蓋320とを含む態様で電池ケースが構成されている。
【0023】
そして本実施形態では、このような電池300のケース310の隣接する2側面に対して、図示を省略するがそれぞれ設ける押圧装置510によりそれぞれ調整力F1,F2(以下単に、調整力Fと記載することもある。)を付与している。また、レーザ溶接装置は、各押圧装置510により調整力Fが付与される電池300のケース310の各側面に対向する対向側面の外側面にそれぞれ突き当て治具550,551を備えている。よってケース310は、各側面に押圧装置510より付与される調整力Fの反力が突き当て治具550,551を介して各対向側面の外側面に付与されるようになっている。こうしてケース310は、その4側面に調整力Fが付与される態様になっている。なお以下では、説明の便宜上、電池300のケース310の1側面を例にして説明する。
【0024】
図3に示すように、ケース310は、蓋320が嵌め込まれる開口である開口部311を備えている。開口部311は、その内面(内側面)の縁部分に設けられた内周縁部312と、内周縁部312よりもケース310の底部側に設けられ、内面側に突出するケース傾斜面313とを備えている。内周縁部312は、蓋320よりも大きく開口されており、蓋320を通過させることが可能である。ケース310の開口端側は蓋320よりも大きい大きさの開口を形成し、ケース310の底部側は蓋320よりも小さい大きさの開口を形成し、それら大きい大きさの開口と小さい大きさの開口とを結ぶ面としてケース傾斜面313が構成されている。よって、ケース310は、その開口部311に嵌め込まれる蓋320を、内周縁部312に接触させずに通過させることができる一方、ケース傾斜面313に当接させ、その当接させた位置に保持する。
【0025】
蓋320は、ケース310の外方向に向く表面である外表面324と、外周にあってケース310の開口部311に対向する外周面321とを備える。外周面321は、ケース310の内周縁部312に対向する外周縁部322と、蓋320の外表面324の裏面である内表面の方向に、外周縁部322から同蓋320の中央方向に傾斜する蓋傾斜面323とを備えている。外周縁部322は、その外周が、内周縁部312よりも小さい大きさ、かつ、ケース傾斜面313に当接する大きさに形成されている。蓋傾斜面323は、ケース傾斜面313に対向するとともに、ケース傾斜面313に面接触することが可能な傾斜角度に形成されている。よって、蓋320は、ケース310の開口部311に嵌め込まれることで、ケース310の内周縁部312に入り込み、その蓋傾斜面323がケース傾斜面313に面接触などの接触態様によって当接する。つまり、蓋320は、蓋傾斜面323のケース傾斜面313への当接により、ケース310の開口部311に蓋状に嵌め込まれるかたちに保持される。
【0026】
よって、ケース310の開口部311に蓋320が嵌め込まれると、ケース310の内周縁部312と蓋320の外周縁部322との間には、溝幅Wの溝部330が形成される。溝幅Wは、ケース310の内周縁部312の開口の大きさと蓋320の外周縁部322の大きさとの差に応じた距離、例えば差の半分の距離を有する。また、蓋傾斜面323とケース傾斜面313とは、相互の斜面を滑動可能に当接される滑動部340を構成する。
【0027】
また、本実施形態では、内周縁部312と外周縁部322とが当接するとき、ケース310の開口部311の先端部と蓋320の外表面324との高さが略同じになるようになっている。よって、溝部330の溝幅Wが大きくなると、ケース310の開口部311の先端部が蓋320の外表面324よりも突出するようになっている。つまり、溝部330に照射レーザ光Ltgが照射されるとき、ケース310の先端部が照射レーザ光Ltgの照射される方向に突出されている。
【0028】
滑動部340は、ケース傾斜面313と蓋傾斜面323とが当接されてなることから、蓋320方向への調整力Fがケース310の外側面314に付与されると、ケース傾斜面313と蓋傾斜面323とが滑動する。するとこのとき、ケース傾斜面313を蓋傾斜面323が滑り上がる、又は逆に、ケース傾斜面313が蓋傾斜面323を滑り下がることにより、蓋320がケース310に対して外表面324の方向Mへ移動する。
【0029】
図4に示すように、上述の移動に伴って、内周縁部312と外周縁部322との対向面が接近するため溝部330の溝幅Wが小さくなる。このように、本実施形態の電池300は、ケース310の外側面314への押圧装置510からの調整力の付与に応じてケース310と蓋320との間の溝部330の溝幅Wが変化する。
【0030】
なお、本実施形態では、ケース310と蓋320との溝部330を含む範囲がレーザ溶接の対象部分としての接合対象部分とされる。つまり、ケース310の開口部311と蓋320の外周面321は、対向する接合対象部分により溝部330を形成するように配置される。また滑動部340は、互いの傾斜面である蓋傾斜面323とケース傾斜面313との滑動によって溝部330の溝幅Wを変更可能としている。つまり、溶接されるケース310と蓋320との間の開先が変更可能な溝幅Wを有する溝部330として設けられるようになる。
【0031】
ところで、滑動部340は、溶接される溝部330よりもケース310の内側に設けられている。そのため、溝部330が溶接のため溶融されとき、その溶融された材料がケース310の内側に流れ込もうとしても滑動部340により進入が抑制される。また、溶接時に溶融池に生じるスパッタなどで溶融された材料が飛散することもあるが、滑動部340は、こうして飛散した材料についてもケース310の内部への進入を抑制することができる。つまり電池300は、発電要素を内部に収容した状態でケース310に蓋320が溶接されるため、溶接時にケース310内部に異物が進入すると電池品質の低下を招くおそれもあるが、本実施形態によれば、ケース310内部への溶融金属の進入やスパッタにより飛散した材料の進入などが抑制されて電池品質の低下の抑制が図られるようになる。
【0032】
図1に示すように、検出器270は、溝部330の溝幅Wを計測用レーザ光Seによるレーザ計測によって検出する。例えば、検出器270は、溝部330を横切るように計測用レーザ光Seを走査させて検出器270と接合対象との間の距離を測長し、測長結果の長くなる部分を溝部330として認識し、その認識した溝部330の溝幅Wを検出する。また検出器270が画像認識によって溝部330とその溝幅Wを認識してもよい。検出器270は、検出した溝部330の溝幅Wを制御装置500に出力する。
【0033】
制御装置500は、検出器270から検出した溝幅Wが入力されるとともに、当該入力された溝幅Wに応じた調整力を算出し、この算出した調整力に基づいて押圧装置510を制御する。詳述すると、制御装置500は、溝幅Wが適切な溶接を行うことのできる目標幅になるように、押圧装置510から出力される調整力を制御する。つまり、制御装置500は、溝幅Wと目標幅との差に基づいて押圧装置510から出力される調整力をフィードバック制御する。こうして印加される調整力Fがケース310に生じさせる歪みやたわみによって溝幅Wが制御されるようになる。よって、溝幅Wに、ケース310と蓋320との部材同士の相対位置又は個体差による影響があったとしても、溝部330の溝幅Wが好適に調節されるようになる。
【0034】
なお、目標幅としては、例えば、溶接したい深さ、つまり溶け込み深さの全部から半分程度の幅を設定することができる。つまり例えば、板厚1mmの部材を半分の深さまで溶接したいときには、目標幅を0.05〜0.5mmに設定することができる。また、制御装置500は、溝部330の溝幅Wの調節を溶接開始前に行い、この溶接開始前に調節された溝幅の下で溶接させるようにしてもよい。また制御装置500は、溶接中にこれから溶接する接合対象部分の溝幅Wを逐次確認するとともに、この確認した溝幅Wを目標幅に調整するように逐次制御するようにしてもよい。なお、溝幅Wは、上記値に限らず、溶接される部材の材質や溶接時の条件(環境温度やレーザ光の出力等)に対応する適切な値を適宜設定させることができる。
【0035】
押圧装置510は、エアシリンダやピエゾアクチュエータ、モータなどのアクチュエータであり、制御装置500の制御に基づいてケース310の外側面314方向へ出力する調整力を調整する。例えば、押圧装置510は、制御装置500から入力される指令値に応じた調整力を出力する。なお、押圧装置510は、そのピストンがシリンダを出入りする長さ(ストローク)を指示されることに基づいて制御されてもよい。
【0036】
伝達部520は、押圧装置510とケース310の外側面314との間に介在し、押圧装置510の発生する調整力をケース310の外側面314に伝達する。つまり、伝達部520は、ケース310の外側面314よりも高い剛性を有する部材であって、押圧装置510から入力される調整力を少ないロスでケース310の外側面314に伝達する。
【0037】
また、伝達部520は、例えば冷却水などの冷媒を流通させることのできる冷媒通路523を備えている。冷媒通路523は、冷媒を供給する冷却器としての冷却装置530の冷媒供給口に一端が接続され、同冷却装置530の冷媒回収口に他端が接続されている。伝達部520は、冷媒通路523に冷媒が供給されることで、その部材が冷却され、ケース310の外側面314から溶接時などに伝達される熱を吸収する。レーザ溶接においては、溶接の際、接合対象部分は金属を溶融させる程度に加熱する必要があるものの、溶接されない部分については接合対象部分から伝達される高温によってケース310内部の発電要素に影響が生じたり、ケース310に熱歪みなどの形状変化が生じたりするおそれもある。そこで、伝達部520を冷却させることで、溶接時に加熱の必要のない部分の温度上昇を抑制させ、溶接時にケース310内部の発電要素に影響が生じたり、ケース310に変形が生じたりすることなどを抑制させる。
【0038】
また、溶接時にケース310が熱により変形することに応じて溝幅Wが変化するようなことがあると、その溝幅の変化によって適切な溶接ができなくなるおそれもあるため、ケースの熱変形の抑制により適切に溶接が行われる蓋然性が高められる。なお、このように熱に起因する溝幅Wの変化であれ、検出器270で溝幅Wの変化を検出し、その変化に対応する調整力Fを付与させることによって溝幅Wを調整させるようにすることもできる。
【0039】
また、伝達部520は、接合対象部分に近い部分を凹ませるような形状に形成された非当接部522を備えている。つまり、伝達部520は、非当接部522を除く当接部521がケース310の外側面314に当接する。非当接部522は、ケース310の開口部311の先端部から、溶接部分の溶け込み深さに対応する深さまでの間に設けられており、伝達部520がケース310の外側面314に当接しないようにしている。つまり伝達部520は、接合対象部分に近い部分を冷却してしまうと、溶接に必要な熱を吸収してしまい溶接に影響を生じさせるおそれもあることから、非当接部522を備えることによって、冷却が逆に、溶接に影響を及ぼすおそれを抑制している。
【0040】
図5を参照して詳述すると、溝部330を含む接合対象部分に溶接用の照射レーザ光Ltgが照射されると、レーザ光出力部200の方向に突出しているケース310の内周縁部312の端部が溶融の起点になるなどして溶融が進行し、溶融した金属材料からなる溶融池350が形成される。なおこのとき、目標幅に調整された溝部330の溝幅Wがあることにより深い溶融による溶接が行えるようになり、目標幅に調整された溝幅Wを設けることによって溶接の条件に応じた適切な溝幅Wによる適切な溶接が行われるようになる。
【0041】
ところで、一般的に溶接ではキーホール(加熱により気化された材料によって溶融池350に生じる凹み)を発現させることによって、溶融した材料がキーホール内に流れて部材の深くまで溶融加工が行われるようになることを発明者らは発見した。つまりレーザ溶接による溶接加工でも、レーザ光による加熱によりキーホールを生じさせつつ、部材深くまでの溶接加工を好適に行うことがある。例えば、レーザ溶接の場合、キーホールは、ガウシアン型のエネルギー強度分布を有するレーザ光を照射させることで、そのレーザ光の中央の高エネルギー部分に生じさせることができる。しかし、ガウシアン型のレーザ光は、短時間で溶接状態が変わるなど加工に対する感度が高くなるとともに、ロバスト安定性が低下したり、照射時間が少しでも長くなると過熱や貫通のおそれが生じたり、レーザ光を照射する位置を高い精度で制御しなければならないなど、その制御に高い精度が求められるという特性も有する。
【0042】
そこで、本実施形態では、安定性が高く制御が比較的容易であるトップハット型の照射レーザ光Ltgを溶接に用いている。トップハット型は強度分布が平均化されているためキーホールを生じさせるためにレーザ光の照射時間を一定時間確保する必要がある。そのためキーホールが発現しづらく、適切な溶接ができなかったり、溶接に時間を要したりする。
【0043】
そこで、本実施形態のレーザ溶接装置は、溝幅Wを調整することによって、溶接部分の溶融池350にキーホール、もしくはキーホールと同等の役割を果たす凹みを発現させるようにしている。このように、溶融池350に凹みを発現させることで、キーホールが発現したときと同様の好適な溶接を行うことができるようになる。このような凹みの発現によれば、部材の表面だけではなく所定の深さまでを溶接させることができる。つまり、平らな表面に照射されたレーザの熱が表面から内部へ徐々に伝達されて材料が溶融される溶接、いわゆる熱伝導溶接と比較しても安定した溶接が行なわれるようになる。このように目標幅に調節された溝幅Wを有する接合対象部分を溶接することにより、照射レーザ光Ltgの強度や照射時間の長さをキーホールを発現させる程度に高い精度で制御しなくとも、好適な溶接加工が可能となる。
【0044】
また、本実施形態では、ケース310の4つの側面にそれぞれ調整力Fが付与され、これら4つの側面すべてにおいて溝幅Wが制御される状態で溶接が行われる。なお仮に、1つの側面毎に溝幅Wを調整して溶接を行う場合、他の側面等が溶接された状態で溝幅Wを調整しなければならないなど溝幅Wの幅を調整することのできる範囲が制限されることもある。
【0045】
ところで、照射レーザ光Ltgによりレーザ溶接が行われると、溶融池350の熱などがケース310や蓋320に伝達される。こうしてケース310や蓋320に伝達される熱は、ケース310や蓋320に熱を要因とする歪みを生じさせるおそれがある。そこで、本実施形態は、伝達部520がケース310の外側面314を冷却することにより、溶接に伴う熱H1を同伝達部520に吸収させるようにする。また、熱H1を伝達部520に吸収させることにより、蓋320に伝達される熱H2も少なくなる。これにより、ケース310や蓋320に蓄積される熱が減少されるため、発電要素への影響やケース310や蓋320に熱に起因する歪みなどの発生が抑制されるようになる。
【0046】
続いて、本実施形態の作用について説明する。
図6及び図7を用いて以下に説明するように、本実施形態では、レーザ溶接する接合対象部分に溝部330を設けることによって、当該接合対象部分の溶接を深い位置まで迅速に行うことができるようになる。
【0047】
図6には、部材の平面をレーザ溶接するときと、溝部を含むかたちに2つの部材をレーザ溶接するときとのそれぞれの溶接について、その溶接速度と溶け深さとの関係をグラフで示している。なお平面は、溝部を形成しないように当接される2つの部材をレーザ溶接するときと同様の状態であるものと考えられる。詳述すると、溝部を有する接合対象部分を溶接するときの関係がグラフL1に示され、溝部を有しない平板を溶接するときの関係がグラフL2に示されている。つまり、2つの部材を溶接するレーザ溶接において、同様の溶接深さを得るとき、部材が溝部を有するときよりも、部材が溝部を有しないときの方が溶接に長い時間を要することが示されている。
【0048】
図7には、部材の平面をレーザ溶接するときに生じる溶融池34の態様と、溝部を有する2つの部材をレーザ溶接するときに生じる溶融池35の態様とが示されている。なおこのときも平面は、溝部を形成しないように当接される2つの部材をレーザ溶接するときと同様の状態であるものと考えられる。まず、レーザ溶接において溝部を有しない接合対象部分は、熱伝導溶接となる。このため溶融池34の深さが深くなりづらいため深くまで溶接加工することが難しい。
【0049】
一方、レーザ溶接において溝部を有する接合対象部分は、第1の部材30と、第2の部材31との間の溝部の溝幅Wに照射レーザ光Ltgが進入し、深い位置までエネルギーが伝達される。そして照射されるレーザ光や溶融金属の対流などによって溶融が迅速に進行して溶融池35の深さが深くなり、深い位置まで溶接加工されるようになる。つまり、溝部を有する接合対象部分は、キーホールが発現されたときと同様の溶接が行われるようになる。
【0050】
本実施形態によれば、レーザ溶接装置、及びレーザ溶接方法、及び該レーザ溶接装置により溶接される電池ケースは、レーザ光による溶接に際し、接合対象となる部材同士の相対位置又は個体差による影響を抑制して、より適切な溶接を行えるようにすることができるようになる。
【0051】
以上説明したように、本実施形態のレーザ溶接装置、レーザ溶接方法、及び該レーザ溶接装置により溶接される電池ケースによれば、以下に列記するような効果が得られるようになる。
【0052】
(1)ケース310と蓋320との間の溝部330に溶融された材料が入り込み適切な溶接が可能となる。また、より適切な溶接が行われるように、ケース310及び蓋320の少なくとも一方に力(調整力)を加えて、滑動部340を滑動させることで、溝部330の溝幅Wを調整することができるようになる。このように、溝部330の溝幅Wの調整を可能にすることで、照射レーザ光Ltgによる溶接に際し、接合対象となるケース310と蓋320との部材同士の相対位置又は個体差による影響を抑制して、より適切な溶接を行うことができるようになる。
【0053】
なお、溝部330は、溝幅Wが狭くなると溶融された材料が入り込みづらくなるため適切な溶接が難しくなり、逆に、溝幅Wが広くなると溶融材料を多く供給しないと接合対象となるケース310と蓋320と同士が適切に溶接されなくなるおそれが高くなる。よって、ケース310と蓋320との間の溝部330に適切な溝幅Wを設定することによってケース310と蓋320とを適切に溶接させることができる。
【0054】
さらに、ケース310と蓋320とが滑動部340で当接することにより、溶接時の溶融金属やスパッタにより飛散する部材がケース310内部に進入することが抑制されるようにもなる。
【0055】
(2)トップハット型のレーザ光は、ガウシアン型のレーザ光に比べて溶接加工時の安定性が高いことから、レーザ溶接におけるスパッタの発生などが抑制されるようになる。また、トップハット型のレーザ光では、キーホールを発現させづらいものの、溝部330によってキーホールが生じたときと同様の好適な溶接が可能ともなる。
【0056】
(3)溝部330を形成するケース310の先端部、すなわち内周縁部312が照射レーザ光Ltgの照射される方向に突出している。これにより、角度を有し熱の集中しやすい部分が照射レーザ光Ltgの近くに配置されるため、その部分を溶融の起点として、レーザ光による溶接が迅速に行われるようになる。
【0057】
(4)溝部330からその周囲に伝達された熱はケース310や蓋320を熱により変形させるおそれがある。そこで、伝達部520を介して溶接に不要な熱を吸収することにより、溶接に伴ってケース310や蓋320に熱に起因する変形が生じることが抑制されるようになる。
【0058】
(その他の実施形態)
なお上記実施形態は、以下の態様で実施することもできる。
・上記実施形態では、溝幅Wを調整するためにケース310に対し、4側面から調整力Fを付与する場合について例示した。しかしこれに限らず、1〜3側面毎に調整力を付与してもよい。例えば、一方向に挟むかたちであれば2側面に調整力を付与することができるし、底面を固定することなどにより任意の1〜3側面に調整力を付与することもできる。この場合、一部が溶接された状態など溝幅Wの調整幅が制限される状態で溝幅Wの調整が行われるようになることもあるものの、例えば4方中3方が溶接されていたとしてもケース(又は蓋)のたわみなどにより溝幅は調節される。これにより、レーザ溶接装置としての適用範囲の拡大が図られるようになる。
【0059】
・上記実施形態では、ケース310は、隣接する2側面には押圧装置510の出力する調整力が付与され、他の2側面には突き当て治具550,551からの反力で調整力が付与される場合について例示した。しかしこれに限らず、適切な調整力を付与することができるのであれば、他の2側面の少なくとも一方には、対応するように設けられた押圧装置から調整力が付与されてもよい。これにより、レーザ溶接装置としての設計自由度の向上が図られるようになる。
【0060】
・上記実施形態では、溶接加工にトップハット型のレーザを採用した。しかしこれに限らず、溶接加工にガウシアン型のレーザを用いてもよい。ガウシアン型のレーザを用いる場合、通常、レーザを所定時間照射させてキーホールを形成させるが、溝部があることによってキーホールの形成に要する時間を短縮させることができるなどレーザ溶接にかかる時間の短縮が図られるようになる。また、ガウシアン型のレーザの場合、トップハット型よりもエネルギーが集中して照射範囲が狭くなるものの、たとえ溶接幅が狭い範囲であっても溝部によって溶接深さが確実に確保されるため、確実な溶接が行われるようになる。これにより、レーザ溶接装置としての適用範囲の拡大が図られるようになる。
【0061】
・上記実施形態では、溝幅Wを調整するためにケース310の外側面314に調整力が付与される場合について例示した。しかしこれに限らず、溝幅Wが調整されるのであれば、蓋に対して調整力が付与されてもよい。
【0062】
例えば、図8に示すように、蓋320の外表面324にケース310の底部方向への調整力Fを付与することにより、この調整力Fを滑動部340に作用させて蓋傾斜面323にケース傾斜面313を押し広げさせる、つまりケース310の外側面314を外方向Mへ広げさせるようにすることもできる。よって溝部330の溝幅Wも広げられることとなる。つまり、溝幅Wが目標幅よりも狭いようなとき、蓋320の外表面324を押すように力を付与するようにすることで、溝部330の溝幅Wを広げることが簡単にできる。これにより、溝幅を広げる操作が容易になることから、レーザ溶接装置としての利便性が向上されるようになる。
【0063】
・上記実施形態では、ケース310の外側面314が押圧されることにより溝幅Wが変更される場合について例示した。しかしこれに限らず、滑動部が滑動して溝幅が変更されるのであれば、ケースの外側面が外方向に引っ張られてもよい。例えば、外側面が引っ張られるとケースの開口部が広がることから蓋傾斜面がケース傾斜面を滑り下り、蓋がケースの底部方向へ移動するようになる。こうした移動によれば、内周縁部と外周縁部との対向面を離間させて溝部の溝幅を広く変更することができるようになる。例えば、調整力を押す力と引く力とにするようにすれば溝幅の縮小/拡大も可能となる。なお、蓋に力を付与する場合であれば、同様に引く力を付与してもよい。これにより、レーザ溶接装置の適用範囲の拡大が図られるようになる。
【0064】
・上記実施形態では、伝達部520が冷却される場合について例示したが、これに限らず、突き当て治具が冷却されてもよい。これにより、レーザ溶接装置の設計の自由度の拡大が図れるようになる。
【0065】
・上記実施形態では、冷却媒体は水である場合について例示したが、これに限らず、冷却媒体は伝達部を冷却することのできる冷媒であれば、水以外の液体や、液体以外であって空気などの気体であってもよい。これにより、レーザ溶接装置の設計の自由度の拡大が図れるようになる。
【0066】
・上記実施形態では、伝達部520が冷媒の供給により強制的に冷却される場合について例示した。しかしこれに限らず、伝達部は強制的に冷却されなくてもよい。溶接時にあまり加熱されないものであったり、多少加熱されても問題が生じないのであれば、伝達部は自然に冷却されるものであってもよい。これにより、レーザ溶接装置としての設計の自由度の向上が図られるようになる。
【0067】
・上記実施形態では、伝達部520に非当接部522が設けられている場合について例示した。しかしこれに限らず、接合対象部分に近い部分が冷却されないようになるのであれば、当該非当接部が設けられている部分に熱伝導率の低い部材を配置させるなどしてもよい。これにより、レーザ溶接装置としての設計の自由度の向上が図られるようになる。
【0068】
・上記実施形態では、ケース310にその開口部311よりも小さい蓋320が嵌め込まれる場合について例示した。しかしこれに限らず、接合対象部分に溝部が形成されるのであれば、ケースの開口部と蓋との大きさの関係は、蓋がケースの開口部と同じ大きさでも、それより大きくてもよい。なお、溝部の形成される位置や向きが変化するようであれば、当該溝部を適切に溶接できるようにケースの位置や照射レーザの向きを調整すればよい。これにより、レーザ溶接装置を適用することができる範囲の拡張が図られるようになる。
【0069】
・上記実施形態では、内周縁部312と外周縁部322とが当接するとき、ケース310の開口部311の先端部と蓋320の外表面324との高さが略同じになるようになる場合について例示した。しかしこれに限らず、内周縁部と外周縁部とが当接されたときにそれらの間に段差が生じたとしてもよい。これにより、電池ケースの設計自由度の向上が図られるようになる。
【0070】
・上記実施形態では、ケース310の内周縁部312の先端部が、蓋320の外周縁部322の外表面324よりも突出している場合について例示した。しかしこれに限らず、適切な溶接ができるのであれば、ケースの内周縁部の先端部と蓋の外周縁部の外表面とが同じ高さであったり、蓋の外周縁部の外表面がケースの内周縁部の先端部よりも突出していたりしてもよい。例えば、蓋の外周縁部の外表面を突出させることで、蓋に溶融の起点を設定することができるようにもなる。これにより、電池ケースの設計自由度の向上が図られるようになる。
【0071】
・上記実施形態では、蓋傾斜面323がケース傾斜面313よりもケース310の内側にはみ出す場合について例示した。しかしこれに限らず、ケース傾斜面と蓋傾斜面とが当接するのであれば、蓋傾斜面がケース傾斜面よりもケースの内側にはみ出さなくてもよい。これにより、レーザ溶接装置や電池ケースの設計の自由度の向上が図られるようになる。
【0072】
・上記実施形態では、ケース傾斜面313と蓋傾斜面323とは面接触する場合について例示した。しかしこれに限らず、ケース傾斜面と蓋傾斜面との当接する部分の少なくとも一部の接触態様が面接触以外、例えば線接触であったり、点接触であったり、また多少の隙間が存在したりしていてもよい。当接部分の一部が線接触や点接触であったりしたとしても、ケース傾斜面と蓋傾斜面との間を溶融金属やスパッタにより散った部材が進入することが抑制される。また多少の隙間が存在していても、適切な溶接を行えば溶融金属などが電池ケースの内部に入り込むおそれも小さい。これにより、電池ケースの設計自由度の向上が図られるようになる。
【0073】
・上記実施形態では、電池300を溶接する場合について例示したが、これに限らず、溶接加工を要するものであれば、電池以外のものを溶接対象にしてもよい。これにより、レーザ溶接装置の適用範囲の拡大が図られるようになる。
【0074】
・上記実施形態では、接合対象がアルミニウムを含む金属製の部材からなる場合について例示した。しかしこれに限らず、接合対象の部材は、レーザ光により溶接できる材料からなるものであれば、例えば、アルミニウムを含まない金属材料や、樹脂などの金属以外の材料からなる部材であってもよい。これにより、レーザ溶接装置の設計自由度の向上や適用範囲の拡大などが図られるようになる。また、電池ケースについての設計自由度の向上が図られるようになる。
【符号の説明】
【0075】
30…第1の部材、31…第2の部材、34…溶融池、35…溶融池、100…レーザ生成部、200…レーザ光出力部、270…検出器、300…電池、310…ケース、311…開口部、312…内周縁部、313…ケース傾斜面、314…外側面、320…蓋、321…外周面、322…外周縁部、323…蓋傾斜面、324…外表面、330…溝部、340…滑動部、350…溶融池、500…制御装置、510…押圧装置、520…伝達部、521…当接部、522…非当接部、523…冷媒通路、530…冷却装置、550,551…突き当て治具、W…溝幅、Ltg…照射レーザ光。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8