特許第6100243号(P6100243)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6100243潤滑添加剤としての芳香族イミドおよびエステル
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  • 特許6100243-潤滑添加剤としての芳香族イミドおよびエステル 図000018
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6100243
(24)【登録日】2017年3月3日
(45)【発行日】2017年3月22日
(54)【発明の名称】潤滑添加剤としての芳香族イミドおよびエステル
(51)【国際特許分類】
   C10M 133/16 20060101AFI20170313BHJP
   C10M 141/12 20060101ALI20170313BHJP
   C10M 141/10 20060101ALI20170313BHJP
   C10M 141/06 20060101ALI20170313BHJP
   C10M 139/00 20060101ALN20170313BHJP
   C10M 137/04 20060101ALN20170313BHJP
   C10M 137/06 20060101ALN20170313BHJP
   C10M 125/24 20060101ALN20170313BHJP
   C10N 30/06 20060101ALN20170313BHJP
   C10N 40/04 20060101ALN20170313BHJP
   C10N 40/08 20060101ALN20170313BHJP
   C10N 40/25 20060101ALN20170313BHJP
   C10N 50/10 20060101ALN20170313BHJP
【FI】
   C10M133/16
   C10M141/12
   C10M141/10
   C10M141/06
   !C10M139/00 A
   !C10M137/04
   !C10M137/06
   !C10M125/24
   C10N30:06
   C10N40:04
   C10N40:08
   C10N40:25
   C10N50:10
【請求項の数】15
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2014-510401(P2014-510401)
(86)(22)【出願日】2012年5月8日
(65)【公表番号】特表2014-517106(P2014-517106A)
(43)【公表日】2014年7月17日
(86)【国際出願番号】US2012036867
(87)【国際公開番号】WO2012154708
(87)【国際公開日】20121115
【審査請求日】2015年4月28日
(31)【優先権主張番号】61/485,247
(32)【優先日】2011年5月12日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】591131338
【氏名又は名称】ザ ルブリゾル コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】THE LUBRIZOL CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】サコマンド, ダニエル ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】ビッカーマン, リチャード ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】バートリー, スチュアート エル.
(72)【発明者】
【氏名】コクシス, ジョディー エー.
【審査官】 中野 孝一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−265554(JP,A)
【文献】 特開平11−323364(JP,A)
【文献】 特開2008−127435(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10M101/00−177/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
組成物であって、
(a)潤滑粘性のオイル、および
(b)0.0001〜10重量パーセントの以下:
(i)少なくとも、隣接する2つの炭素原子に結合しているかまたはつの原子で分離されている2つの炭素原子に結合しているが芳香環上の互いにメタの位置には結合していない2つのカルボキシル基を有する芳香族ポリカルボン酸またはその混合物またはその反応性等価物であって、前記芳香族ポリカルボン酸またはその反応性等価物は、少なくとも1つのコハク酸基またはその反応性等価物によって置換された芳香環を含む、芳香族ポリカルボン酸またはその混合物またはその反応性等価物と、
(ii)6〜80個の炭素原子を含有する脂肪族第1級アミンとの縮合生成物であって、前記縮合生成物は、イミドまたはアミドを含む、縮合生成物
を含む、組成物。
【請求項2】
前記脂肪族第1級アミンが、12〜60個の炭素原子を含有し、第2級もしくは第3級アミノ基またはエーテル基をさらに含有する第1級アミンを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記縮合生成物が環状イミドを含む、請求項1〜2のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項4】
前記芳香族ポリカルボン酸またはその反応性等価物が、少なくとも2つの芳香族炭素原子上に少なくとも2つのカルボン酸基またはその反応性等価物を有する芳香族基を含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
前記芳香族ポリカルボン酸またはその反応性等価物が、隣接炭素原子上に少なくとも2つのカルボン酸基またはその反応性等価物を有するベンゼン環を含む、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
前記芳香族ポリカルボン酸またはその反応性等価物が、ナフタレン構造であって、前記ナフタレン構造の1位および8位に配置された2つのカルボン酸基またはその反応性等価物を有するナフタレン構造を含む、請求項4に記載の組成物。
【請求項7】
前記縮合生成物がジイミドを含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項8】
前記縮合生成物がピロメリット酸ジイミドを含む、請求項1〜3、4、5、または7のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項9】
前記脂肪族第1級アミンが、式:
N−(C2n)−X−R
式中、nは2〜6であり、
XはOまたはN−Rであり、
は、少なくとも8個の炭素原子のアルキル基であり、
はHまたはアルキル基である;
によって示される、請求項1〜8のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項10】
前記脂肪族第1級アミンがN,N−ジアルキル−1,3−プロパンジアミンを含む、請求項1〜9のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項11】
前記N,N−ジアルキル−1,3−プロパンジアミンが、N,N−ジ−(水素化タロー)−1,3−プロパンジアミン、N,N−ジココ−1,3−プロパンジアミン、またはN,N−ジイソステアリル−1,3−プロパンジアミンを含む、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
前記縮合生成物が、
【化12】

式中、RおよびRのそれぞれは、独立して、8〜22個の炭素原子のアルキル基であり、RおよびRのそれぞれは、独立して、水素または1〜22個の炭素原子のアルキル基であり、但し、RおよびR中の総炭素原子数が少なくとも13であり、RおよびR中の総炭素原子数が少なくとも13であることを条件とする;
によって示される材料を含む、請求項1〜3、4、5、または7〜11のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項13】
、R、R、およびRが、タローアミン、ココアミン、またはイソステアリルアミンの特徴を示すアルキル基である、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
有機ホウ酸エステル、有機ホウ酸塩、有機リンのエステル、有機リンの塩、無機リンの塩、および無機リンの酸からなる群から選択される少なくとも1つの添加剤をさらに含む、請求項1〜12のいずれかに記載の組成物。
【請求項15】
機械的デバイスを潤滑する方法であって、請求項1〜14のいずれか1項に記載の組成物を前記デバイスに供給することを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明技術は、自動変速機流体、トラクション流体、連続可変変速機流体(CVT)用流体、二段クラッチ自動変速機流体、農業用トラクター流体、エンジン潤滑剤、工業用ギア潤滑剤、グリース、および作動液などの流体、ならびにエンジンオイルなどの潤滑剤のための添加剤の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
重量を減らし変速機能力を高めることを望むことにより推進される急速な技術変化のある自動変速機市場では、向上したクラッチ把持力のための高い静的摩擦係数を示す自動変速機流体が望まれている。例えば、連続的にスリップするトルクコンバータークラッチは、自動変速機流体(ATF)に対して厳しい摩擦要件を負わせることになる。その流体は、良好な摩擦対滑り速度の関係を有していなければならず、そうでない場合、車両においてシャダーと呼ばれる好ましくない現象が起こる。変速機シャダーは、一般に滑りトルクコンバータークラッチにおいて起こる「スティックスリップ」または「動的摩擦振動」とも呼ばれる自励振動状態である。流体および材料系の摩擦特性は変速機の機械的設計および制御と合わせて、シャダーに対する変速機の感受性を決定する。一般的にμ−V曲線と呼ばれる測定された摩擦係数(μ)対滑り速度(V)のプロットは、変速機シャダーと相関することが示されている。理論と実験の両方から、このμ−V曲線の正からやや負の勾配の領域が、変速機流体の良好な耐シャダー性能と相関することが支持されている。振動またはシャダーなしで車両を作動させることができる流体は、良好な耐シャダー性能を有すると言われる。流体は、その供用期間にわたってこれらの特性を維持しなければならない。車両における耐シャダー性能の寿命は、一般に「耐シャダー耐久性」と称される。可変速度摩擦試験機(VSFT)は、変速機クラッチにおいて見られる速度、負荷および摩擦材料をシミュレートする滑り速度に関して摩擦係数を測り、実際の使用において見られる性能と相関させる。こうした手順は文献にきちんと解説されている;例えば、Society of Automotive Engineers publication #941883を参照されたい。
【0003】
高い静的摩擦係数と持続的な正の勾配とを合わせた要件はしばしば、特許文献に非常によく記載されている伝統的なATF摩擦調整剤の技術と相いれないものである。一般的に使用される摩擦調整剤の多くは、低い静的摩擦係数をもたらし、実用に十分な正の勾配の耐久性を有さない。
【0004】
2010年11月18日の特許文献1は、ヒドロキシ−ポリカルボン酸とN,N−ジ(ヒドロカルビル)アルキレン−ジアミンとの縮合生成物を開示し、ここで各ヒドロカルビル基は、独立して1〜22個の炭素原子を含む。生成物は、アミドまたはイミドであり得る。
【0005】
2008年2月28日、Liの特許文献2は、(a)主要量のポリカルボン酸アシル化剤のエステル;および(b)(i)金属ヒドロカルビルジチオホスフェートまたは(ii)粘度調整剤由来の少なくとも1つの化合物を含有する潤滑組成物を開示している。この組成物は、高温エンジンに適切である。ポリカルボン酸アシル化剤は、とりわけ、ピロメリット酸であり得る。
【0006】
1980年12月2日、Barrerの特許文献3は、ターターイミド(tartar-imide)および潤滑剤およびそれを含有する燃料を開示している。実施例(IX)では、自動変速機流体が、酒石酸とArmeen O(本質的にオレイルアミン)との反応生成物を含むことが報告されている。
【0007】
2006年8月16日、Kocsisらの特許文献4は、潤滑剤のための添加物として有用なタートレート、酒石酸イミド、酒石酸アミド、またはその組み合わせを開示している。自動変速機流体を含む種々の組成物が、それらから利益を得ると言われている。材料のうち開示されているのは、オレイル酒石酸イミドおよびトリデシルプロポキシアミン酒石酸イミドである。アミンのアルキル基は、直鎖または分枝であり得る。
【0008】
1988年12月6日、Horodyskyの特許文献5は、N−アルキルアルキレンジアミンアミドを含有する潤滑剤を開示している。開示されているのはR−N(R)−R−NH−Rであり、式中、RはC〜Cアルキレン基であり、RはC12〜C30ヒドロカルビル基でなければならず、Rは、H、C〜C脂肪族基またはR−C(=O)−であり;Rの少なくとも1つはR−C(=O)−でなければならない。RはHまたはC1〜4である。1つの例はココ−NH−(CH−NH−C(=O)Hである。
【0009】
1966年5月17日、Hokeの特許文献6は油溶性アシル化アミンを開示している。実施例では、反応物は、キシリル−ステアリン酸またはヘプチルフェニル−ヘプタン酸と、テトラエチレンペンタミンまたはドデシルアミンまたはN−2−アミノエチルオクタデシルアミンとの反応物であってよい。1つの例は、N−2−アミノエチルオクタデシルアミンとキシリル−ステアリン酸との縮合生成物である。
【0010】
2009年1月1日、Wattsらの特許文献7は、成分の中でもとりわけ、アシル化剤と反応して少なくとも1つの第2級アミン基をアミドに変換させるポリアルキレンポリアミンベースの摩擦調整剤を含む、優れた摩擦安定性を有すると言われる潤滑オイル組成物を開示している。
【0011】
したがって、本開示技術は、一定の実施形態では、高い摩擦係数またはμ−V曲線における持続的な正の勾配あるいはその両方を有する変速機流体(自動変速機流体など)を提供するのに適した摩擦調整剤を提供する。
【0012】
特に、低硫酸灰分、リン、および硫黄レベルによって特徴づけられる配合物中に内燃機関などの機械的デバイスを潤滑するために使用した場合に摩耗防止性能および腐食抑制を示す潤滑剤も必要である。一定の実施形態では、本開示技術は、機械的デバイスを潤滑するために使用した場合に摩耗防止性能および腐食抑制のうちの1つ以上を提供する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】国際公開第WO2010/132318号
【特許文献2】米国特許出願公開第2008/0051307号明細書
【特許文献3】米国特許第4,237,022号明細書
【特許文献4】米国特許出願公開第2006/0183647号明細書
【特許文献5】米国特許第4,789,493号明細書
【特許文献6】米国特許第3,251,853号明細書
【特許文献7】米国特許出願公開第2009/0005277号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0014】
本開示技術は、(a)潤滑粘性のオイルおよび(b)(i)環状イミドが形成されるように位置している少なくとも2つのカルボキシル基を有し、上記環状構造内に5個または6個の原子を有する、芳香族ポリカルボン酸またはその混合物またはその反応性等価物と、(ii)6〜80個の炭素原子を含む脂肪族第1級アミンまたはアルコールとの縮合生成物を含む組成物を提供する。
【0015】
一定の実施形態では、脂肪族第1級アミンまたはアルコールは、12〜60個の炭素原子を含有し、第2級もしくは第3級アミノ基またはエーテル基をさらに含有する第1級アミンを含む。
【0016】
本開示技術は、任意の上記組成物を供給することを含む、機械的デバイスを潤滑する方法をさらに提供する。一定の実施形態では、機械的デバイスは自動変速機を含む。一定の実施形態では、組成物は、自動変速機を潤滑する場合に有用な摩擦特性を付与する。
一実施形態において、たとえば、以下の項目が提供される。
(項目1)
組成物であって、
(a)潤滑粘性のオイル、および
(b)以下:
(i)環状イミドが形成されるように位置している少なくとも2つのカルボキシル基を有し、前記環状構造内に5個または6個の原子を有する芳香族ポリカルボン酸またはその混合物またはその反応性等価物と、
(ii)約6〜約80個の炭素原子を含有する脂肪族第1級アミンまたはアルコールとの縮合生成物
を含む、組成物。
(項目2)
前記脂肪族第1級アミンまたはアルコールが、約12〜約60個の炭素原子を含有し、第2級もしくは第3級アミノ基またはエーテル基をさらに含有する第1級アミンを含む、項目1に記載の組成物。
(項目3)
前記縮合生成物がエステル、アミド、イミド、またはイミダゾリンを含む、項目1に記載の組成物。
(項目4)
前記縮合生成物が環状イミドを含む、項目1〜3のいずれか1項に記載の組成物。
(項目5)
前記芳香族ポリカルボン酸またはその反応性等価物が、少なくとも1つのコハク酸基またはその反応性等価物によって置換された芳香環を含む、項目1〜4のいずれか1項に記載の組成物。
(項目6)
前記芳香族ポリカルボン酸またはその反応性等価物が、少なくとも2つの芳香族炭素原子上に少なくとも2つのカルボン酸基またはその反応性等価物を有する芳香族基を含む、項目1〜4のいずれか1項に記載の組成物。
(項目7)
前記芳香族ポリカルボン酸またはその反応性等価物が、隣接炭素原子上に少なくとも2つのカルボン酸基またはその反応性等価物を有するベンゼン環を含む、項目6に記載の組成物。
(項目8)
前記芳香族ポリカルボン酸またはその反応性等価物が、ナフタレン構造であって、前記ナフタレン構造の1位および8位に配置された2つのカルボン酸基またはその反応性等価物を有するナフタレン構造を含む、項目6に記載の組成物。
(項目9)
前記縮合生成物がジイミドを含む、項目1〜8のいずれか1項に記載の組成物。
(項目10)
前記縮合生成物がピロメリット酸ジイミドを含む、項目1〜4、6、7、または9のいずれか1項に記載の組成物。
(項目11)
前記脂肪族第1級アミンが、式:
N−(C2n)−X−R
式中、nは2〜約6であり、
XはOまたはN−Rであり、
は、少なくとも約8個の炭素原子のアルキル基であり、
はHまたはアルキル基である;
によって示される、項目1〜10のいずれか1項に記載の組成物。
(項目12)
前記脂肪族第1級アミンがN,N−ジアルキル−1,3−プロパンジアミンを含む、項目1〜11のいずれか1項に記載の組成物。
(項目13)
前記N,N−ジアルキル−1,3−プロパンジアミンが、N,N−ジ−(水素化タロー)−1,3−プロパンジアミン、N,N−ジココ−1,3−プロパンジアミン、またはN,N−ジイソステアリル−1,3−プロパンジアミンを含む、項目12に記載の組成物。
(項目14)
前記縮合生成物が、
【化12】


式中、RおよびRのそれぞれは、独立して、約8〜約22個の炭素原子のアルキル基であり、RおよびRのそれぞれは、独立して、水素または1〜約22個の炭素原子のアルキル基であり、但し、RおよびR中の総炭素原子数が少なくとも約13であり、RおよびR中の総炭素原子数が少なくとも約13であることを条件とする;
によって示される材料を含む、項目1〜4、6、7、または9〜13のいずれか1項に記載の組成物。
(項目15)
、R、R、およびRが、タローアミン、ココアミン、またはイソステアリルアミンの特徴を示すアルキル基である、項目14に記載の組成物。
(項目16)
前記縮合生成物の量が約0.0001〜約10重量%である、項目1〜15のいずれか1項に記載の組成物。
(項目17)
分散剤、粘度調整剤、補助的摩擦調整剤、清浄剤、酸化防止剤、シール膨潤剤、および摩耗防止剤からなる群から選択される少なくとも1つのさらなる添加剤をさらに含む、項目1〜16のいずれか1項に記載の組成物。
(項目18)
有機ホウ酸エステル、有機ホウ酸塩、有機リンのエステル、有機リンの塩、無機リンの塩、および無機リンの酸からなる群から選択される少なくとも1つの添加剤をさらに含む、項目1〜16のいずれかに記載の組成物。
(項目19)
機械的デバイスを潤滑する方法であって、項目1〜18のいずれか1項に記載の組成物を前記デバイスに供給することを含む、方法。
(項目20)
前記機械的デバイスが変速機を含む、項目19に記載の方法。
(項目21)
前記機械的デバイスが自動変速機を含む、項目19または20に記載の方法。
(項目22)
前記機械的デバイスが内燃機関を含む、項目19に記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、本開示技術のピロメリット酸ジイミドを含有する潤滑剤によって提供される30,000試験サイクルにわたる摩擦係数を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
様々な特徴および実施形態を以下に非限定的な例示で説明する。
【0019】
本開示技術の一定の実施形態において使用する1つの成分は潤滑粘性のオイルであり、このオイルは、潤滑剤組成物用には多量で存在してよく、また、濃縮物用には濃縮物形成量で存在してよい。適切なオイルには天然および合成の潤滑オイルならびにその混合物が含まれる。完全に配合された潤滑剤では、潤滑粘性のオイルは一般に多量(すなわち、50重量%を超える量)で存在する。典型的には、潤滑粘性のオイルは、組成物の75〜95重量%、しばしば80重量%超の量で存在する。
【0020】
本発明の潤滑剤および機能性流体を作製するのに有用な天然油には、動物油および植物油ならびに水素化分解法および水素化仕上げ法によってさらに精製されていてよいパラフィン型、ナフテン型または混合パラフィン/ナフテン型の液体石油および溶媒処理または酸処理された鉱物性潤滑オイルなどの鉱物性潤滑オイルが含まれる。
【0021】
合成潤滑オイルには、ポリアルファオレフィンとしても公知の重合および内部重合オレフィン;ポリフェニル;アルキル化ジフェニルエーテル;アルキルもしくはジアルキルベンゼン;およびアルキル化ジフェニルスルフィド;ならびにその誘導体、アナログおよびホモログなどの炭化水素オイルおよびハロ置換炭化水素オイルが含まれる。末端ヒドロキシル基がエステル化またはエーテル化で修飾されていてよいアルキレンオキシドポリマーおよびインターポリマーならびにその誘導体も含まれる。ジカルボン酸と様々なアルコールとのエステル、またはC5〜C12モノカルボン酸とポリオールもしくはポリオールエーテルとから得られるエステルも含まれる。他の合成油には、ケイ素系オイル、リン含有酸の液体エステルおよびポリマー性テトラヒドロフランが含まれる。
【0022】
天然または合成の未精製、精製および再精製オイルを本発明技術(すなわち、本開示の発明技術)の潤滑剤で使用することができる。未精製オイルは、天然または合成の供給源からさらに精製処理することなく直接得られるものである。精製オイルは、1つ以上の精製ステップでさらに処理して1つ以上の特性が改善されている。例えば、それらを水素化して酸化に対する安定性が改善されたオイルをもたらすことができる。
【0023】
1つの実施形態では、その潤滑粘性のオイルは、合成油を含むAPIグループI、グループII、グループIII、グループIVもしくはグループVのオイルまたはその混合物である。別の実施形態では、そのオイルはグループII、III、IVまたはVである。これらは、API基油互換可能指針(the API Base Oil Interchangeability Guidelines)によって確立された分類である。グループIIIのオイルは0.03%以下の硫黄分および90%以上の飽和分を含有し、120以上の粘度指数を有する。グループIIのオイルは80〜120の粘度指数を有し、0.03%以下の硫黄分および90%以上の飽和分を含有する。ポリアルファオレフィンはグループIVに分類される。オイルは、スラックワックスまたはフィッシャー−トロプシュ(Fischer−Tropsch)合成ワックスなどのワックスの水素異性化反応により得られるオイルであってもよい。かかる「GTL(Gas−to−Liquid)」オイルは一般にグループIIIと分類される。グループVは「他のすべて」(0.03%超のSおよび/または90%未満の飽和分を含有し、80〜120の粘度指数を有するグループIを除く)を包含する。
【0024】
1つの実施形態では、潤滑粘性のオイルの少なくとも50重量%はポリアルファオレフィン(PAO)である。典型的には、ポリアルファオレフィンは、4〜30個、4〜20個または6〜16個の炭素原子を有するモノマーから誘導される。有用なPAOの例には、1−デセンから誘導されるものが含まれる。これらのPAOは、100℃で1.5〜150mm/秒(cSt)の粘度を有することができる。PAOは、典型的には、水素化された材料である。
【0025】
本発明技術のオイルは、単一の粘度範囲のオイルまたは高粘度および低粘度の範囲のオイルの混合物を包含することができる。1つの実施形態では、オイルは1または2〜8または/〜10mm/秒(cSt)の100℃での動粘度を示す。潤滑剤組成物全体を、100℃での粘度が1または1.5〜10、〜15または〜20mm/秒であり、−40℃でのブルックフィールド粘度(ASTM−D−2983)が20または15Pa−s(20,000cPまたは15,000cP)未満、例えば10Pa−s未満、さらには5Pa−s以下となるように、オイルおよび他の成分を用いて配合することができる。
【0026】
本発明技術は、1つの成分として、環状イミドが形成されるように位置している少なくとも2つのカルボキシル基を有し、該環状構造内に5個または6個の原子を有する、芳香族ポリカルボン酸またはその混合物またはその反応性等価物と、6〜60個の炭素原子を含有する脂肪族第1級アミンまたはアルコールとの縮合生成物を提供する。本明細書中で使用する場合、用語「脂肪族」には、いくつかの実施形態では、環状または非環状の基(すなわち、「脂環式」)の両方が含まれ得、他の実施形態では、非環状基に制限され得る。一定の実施形態では、これらの材料は、特に自動変速機の潤滑のための摩擦調整剤として有用である。他の実施形態では、これらの材料は、特に内燃機関の潤滑のための摩耗防止剤または腐食防止剤として有用である。
【0027】
芳香族ポリカルボン酸またはその反応性等価物は、二酸、三酸、四酸、または四酸を超える酸(higher acid)(または反応性等価物)であり得る。反応生成物がモノイミドである場合、ポリカルボン酸は、少なくとも2つの酸(または等価物)の基を含有する。反応生成物がジイミドである場合、ポリカルボン酸は、少なくとも4つの酸(または等価物)の基を含有する。酸の基は、5員または6員の環状イミドが形成されるように位置している。これは、酸の基が、例えば、芳香環上で相互にオルト位であり得るか、以下にさらに詳細に説明している他の関係を有してもよい(例えば、2つのカルボニル基が、隣接する2つの炭素原子にまたは、順として1つの原子によって分離される2つの炭素原子に結合してもよい一般に、芳香環上の互いにメタ結合しない)ことを意味する。しかし、この用語は、環状イミドがそれぞれの場合に必ず形成されることが必要であると解釈されるべきではない。例えば、アミドまたはエステルは環状イミド構造を形成しないが、前駆体の酸基の同一の幾何学的関係が適用可能である。
【0028】
カルボン酸の反応性等価物には、酸、エステル、酸塩化物などの酸ハライド、および無水物が含まれる。用語「カルボン酸」を、本明細書中でカルボン酸またはその反応性等価物を称する記する簡潔性のために使用することができる。その入手しやすさおよび反応の容易さのために、無水物、特に、環状無水物をしばしば使用する。環状無水物自体が普通は5個または6個の原子の環状構造を構成すると考えられるので、環状無水物は、典型的には、そのカルボキシル基が環状構造中に5または6個の炭素原子を有する環状イミドを形成するように位置している。本発明技術の縮合生成物は、環状イミド構造を有し得るが、必然ではないが。縮合生成物は、例えば、エステル基、アミド基、またはイミダゾリン基を含むことができる。全環境下での反応によって水などの小分子を生成することができないとしても、無水物とアミンまたはアルコールとの反応生成物は、通常、縮合生成物と呼ばれる。
【0029】
カルボン酸基を芳香族基に直接結合することができるか、介在炭素原子を介して間接的に結合することができる。後者の種類の材料の例は、少なくとも1つのコハク酸(または無水物)基であって、他の環置換基も任意選択的に存在する、例えばフェニルコハク酸または無水物によって置換された芳香環である。
【0030】
【化1】
【0031】
この材料は、環状構造内に5個の炭素原子を有する環状イミドが形成されるように位置している2個のカルボキシル基を有する。
【0032】
他の実施形態では、芳香族ポリカルボン酸は、少なくとも2つの芳香族炭素原子に直接結合した少なくとも2つのカルボキシル基を有する芳香族基を含むことができる。芳香族基は、単一の環(単環)または縮合環であり得る。カルボン酸基は、芳香環上の隣接した位置にあることができるか(例えば、互いに対してオルト位)、異なる芳香環上に適切に位置することができる。例には、無水フタル酸、無水ピロメリット酸、およびナフタレン−1,8−二酸無水物が含まれる。前者はベンゼン環上に基を有し、後者はナフタレン(すなわち、縮合)環上に基を有する。後者は、1位および8位に存在する2個のカルボン酸基を有し、環内に6個の原子を有する環状イミドを形成することができる材料の例である。
【0033】
【化2】
【0034】
任意の芳香環上には、さらなるカルボン酸基、ヒドロカルビル基、ヒドロキシ基、エーテル基、およびさらなる芳香族基(縮合環または非縮合環が含まれる)が含まれるさらなる置換基が存在してもよい。さらに、1つのカルボキシル基を芳香環に直接結合することができ、第2のカルボキシル基を1つ以上の炭素原子を介して連結することができる(例えば、2−カルボキシメチル安息香酸無水物)。
【0035】
芳香族ポリカルボン酸は、6〜60個の炭素原子を含有する第1級アミンまたはアルコールと縮合する。得られる縮合生成物型は、反応物に依存する。反応物がアルコールである場合、生成物はエステル(モノエステル(すなわち、部分エステル)またはポリエステル(すなわち、芳香族ポリカルボン酸の同一性に応じて、ジエステル、トリエステル、またはテトラエステル)のいずれか)である。高分子生成物は用語「ポリエステル」を意図しないが、高分子材料は必ずしも排除されない。エステル型は、反応するアルコールの当量数に依存する。当業者に自明であるように、反応物が第1級アミンである場合、生成物は、やはり反応するアミンの当量数および反応条件に応じてアミドまたはイミドであり得る。より過酷な条件では、典型的には、環状イミドを形成する必要がある。一定の実施形態では、縮合生成物はイミドを含み、一定の場合、ジイミドを含む。一定の実施形態では、縮合生成物はピロメリット酸ジイミドを含む。
【0036】
反応生成物は、脂肪族第1級アミンまたは脂肪族アルコールとの縮合生成物であり得る。生成物は、エステル、アミド、またはイミドを含むことができ、イミドは環状イミドであり得る。第1級アミンまたはアルコールは、6〜80個の炭素原子、または8〜70個の炭素原子、または12〜60個の炭素原子、または16〜50個の炭素原子、または18〜40個の炭素原子を含有することができる。任意の上記の炭素数を有する第1級アミンまたはアルコールは、炭素鎖を分断することができる第2級もしくは第3級アミノ基またはエーテル基をさらに含むことができる。いくつかの例では、普通はアミンまたはアルコールの炭素鎖内の3、4、5、6、または7位にある炭素原子は、酸素原子または窒素原子に置き換えられる。いくつかの実施形態では、この置き換え原子は、4位にある。
【0037】
一定の実施形態では、生成物は、式HN−(C2n)−X−R(式中、nは2〜6であり、XはOまたはN−Rであり、Rは少なくとも8個または少なくとも10個の炭素原子のアルキル基であり、RはHまたはアルキル基である)によって示される脂肪族第1級アミンとの縮合生成物である。R基およびR基は、少なくとも4個の炭素原子、例えば、6〜40、または8〜30、または10〜24、または12〜20、または16〜18個の炭素原子を含むアルキル基、およびかかる基の混合物であってよい。一定の実施形態では、上記構造の脂肪族第1級アミンは、N,N−ジアルキル−1,3−プロパンジアミンを含み、例えば、N,N−ジ−水素化タロー−1,3−プロパンジアミン、N,N−ジココ−1,3−プロパンジアミン、またはN,N−ジイソステアリル−1,3−プロパンジアミンを含むことができる。
【0038】
アミンまたはアルコール内のヒドロカルビル基は、上記の炭素数の範囲内に概ね含まれる多様な炭素数を有する同じかまたは異なる分子上に個々の基の混合物を含み得るが、この範囲に含まれないヒドロカルビル基を有する分子も存在してよい。ヒドロカルビル基の混合物が存在する場合、それらは多くの天然に存在する材料から誘導される基の特徴である主に偶数の炭素数(例えば、12、14、16、18、20、または22)のものであってもよく、また、それらは偶数炭素数と奇数炭素数の混合物、あるいは奇数炭素数または奇数炭素数の混合物であってもよい。それらは、分枝状、直鎖状もしくは環状であってよく、飽和もしくは不飽和であってよく、またはその組み合わせであってよい。一定の実施形態では、ヒドロカルビル基は16〜18個の炭素原子を含有することができ、また、主に16個または主に18個の炭素原子を含有することができる場合がある。具体的な例には、ココアミン(主にC12およびC14アミン)由来の混合「ココ」基、ならびにタローアミン(主にC16およびC18基)由来の混合「タロー」基、「イソステアリル」基(例えば、イソオクタデシル基または16−メチルヘプタデシル基)、および2−エチルヘキシル基が含まれる。
【0039】
かかる生成物の調製に適切なジアミンには、
【0040】
【化3】
【0041】
などの一般構造を有する、AkzoNobelから入手できるDuomeen(商標)シリーズのジアミンが含まれる。かかるポリアミンを、モノアミンRNHをアクリロニトリルへ付加して、アルキルニトリルアミン(シアノアルキルアミン)
【0042】
【化4】
【0043】
を調製し、続いてこのニトリル基を、例えばPd/C触媒上でHを用いて接触還元してジアミンを得ることによって調製することができる。
【0044】
本開示技術の材料のいくつかの具体的な例には、以下の構造(I):
【0045】
【化5】
【0046】
によって示されるものが含まれる。この表示では、RおよびRのそれぞれは、独立して、10〜22個の炭素原子のアルキル基であってよく、RおよびRのそれぞれは、独立して、水素または1〜22個の炭素原子のアルキル基であってよく、但し、RおよびR中の総炭素原子数が少なくとも約13であり、RおよびR中の総炭素原子数が少なくとも約13であることを条件とする。一定の実施形態では、R、R、R、およびRは、独立して、タローアミン(水素化「タロー」基が含まれる)またはココアミンの特徴を示すアルキル基である。
【0047】
完全に配合された潤滑剤中の縮合生成物の量は、およそ0.0001〜10重量%であってよい。変速機を潤滑するために使用する場合、適当量には、0.05〜10重量%、0.1〜10%、または0.3〜5%、または0.5〜6%、または0.5〜2.5%、または0.8〜4%、または1〜2.5%、または0.8〜2%が含まれる。内燃機関を潤滑するために使用する場合、適当量には、0.0001〜0.1重量%、または0.001〜0.05%、または0.002〜0.03%が含まれる。
【0048】
他の成分も存在してよい。かかる成分の1つは分散剤である。上記生成物のいくつかが分散剤特性を示すことができる場合、それを「上記で説明したような縮合生成物以外」と表現することができる。分散剤の例は、以下の米国特許:第3,219,666号、第3,316,177号、第3,340,281号、第3,351,552号、第3,381,022号、第3,433,744号、第3,444,170号、第3,467,668号、第3,501,405号、第3,542,680号、第3,576,743号、第3,632,511号、第4,234,435号、米国再発行特許26,433号、および第6,165,235号を含む多くの米国特許に記載されている。
【0049】
カルボン酸分散剤の1種であるスクシンイミド分散剤は、上記で説明したように、ヒドロカルビル置換無水コハク酸(または酸、酸ハライドもしくはエステルなどのその反応性等価物)とアミンとの反応によって調製される。ヒドロカルビル置換基は一般に、平均して少なくとも8、または20、または30または35から350まで、または200までまたは100個までの炭素原子を含有する。1つの実施形態では、ヒドロカルビル基はポリアルケンから誘導される。かかるポリアルケンは、少なくとも500の
【0050】
【化6】
【0051】
(数平均分子量)を特徴とすることができる。一般に、ポリアルケンは、500または、700、または800または900から5000まで、または2500まで、または2000まで、または1500までの
【0052】
【化7】
【0053】
を特徴とする。別の実施形態では、
【0054】
【化8】
【0055】
は500、または700または800から1200までまたは1300の範囲で変わる。1つの実施形態では、多分散性
【0056】
【化9】
【0057】
は少なくとも1.5である。
【0058】
ポリアルケンには、2〜16、または〜6または〜4個の炭素原子の重合性オレフィンモノマーのホモポリマーおよびインターポリマーが含まれる。そのオレフィンは、エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブテン、および1−オクテンなどのモノオレフィン;または1,3−ブタジエンおよびイソプレンなどのジオレフィンモノマーなどのポリオレフィンモノマーであってよい。1つの実施形態では、インターポリマーはホモポリマーである。ポリマーの一例はポリブテンである。一例では、ポリブテンの約50%または少なくとも50%はイソブチレンから誘導される。ポリアルケンは従来の手順で調製することができる。
【0059】
1つの実施形態では、コハク酸アシル化剤は、ポリアルケンを過剰の無水マレイン酸と反応させて置換コハク酸アシル化剤を提供することによって調製される。ここで、各当量の置換基についてのコハク酸基の数は少なくとも1.3、例えば、1.5、または1.7または1.8である。置換基当たりのコハク酸基の最大数は一般に4.5、または2.5、または2.1または2.0を超えない。置換基がかかるポリオレフィンから誘導される置換コハク酸アシル化剤の調製および使用は米国特許第4,234,435号に記載されている。
【0060】
置換コハク酸アシル化剤は、上記のアミンおよびアミンスティルボトムとして公知のヘビーアミン(heavy amine)生成物を含むアミンと反応させることができる。アシル化剤と反応させるアミンの量は、典型的には、1:2〜1:0.25または1:2〜1:0.75のCO:Nのモル比を提供する量である。アミンが第1級アミンである場合、イミドへの完全縮合を行うことができる。様々な量のアミド生成物、例えばアミド酸も存在することができる。むしろ、アルコールとの反応である場合、得られる分散剤はエステル分散剤である。アミン官能基とアルコール官能基の両方が存在する場合、別個の分子においても同じ分子(上記した縮合アミンのような)においてもアミド、エステルおよびおそらくイミド官能基の混合物が存在することができる。これらはいわゆるエステル−アミド分散剤である。
【0061】
「アミン分散剤」は、比較的高い分子量の脂肪族または脂環式ハライドとアミン、例えばポリアルキレンポリアミンとの反応生成物である。その例は以下の米国特許:第3,275,554号、第3,438,757号、第3,454,555号および第3,565,804号に記載されている。
【0062】
「マンニッヒ分散剤」は、そのアルキル基が少なくとも30個の炭素原子を含むアルキルフェノールとアルデヒド(特にホルムアルデヒド)およびアミン(特にポリアルキレンポリアミン)との反応生成物である。以下の米国特許に記載の材料は例示的なものである:第3,036,003号、第3,236,770号、第3,414,347号、第3,448,047号、第3,461,172号、第3,539,633号、第3,586,629号、第3,591,598号、第3,634,515号、第3,725,480号、第3,726,882号および第3,980,569号。
【0063】
後処理分散剤も本発明技術の一部である。それらは一般に、カルボン酸、アミンまたはマンニッヒ分散剤を、尿素、チオ尿素、二硫化炭素、アルデヒド、ケトン、カルボン酸、炭化水素置換無水コハク酸、ニトリル、エポキシド、ホウ酸などのホウ素化合物(「ホウ酸化分散剤」が得られる)、リン酸もしくはその無水物などのリン化合物、または2,5−ジメルカプトチアジアゾール(DMTD)などの試薬と反応させることによって得られる。この種の材料の例は、以下の米国特許:第3,200,107号、第3,282,955号、第3,367,943号、第3,513,093号、第3,639,242号、第3,649,659号、第3,442,808号、第3,455,832号、第3,579,450号、第3,600,372号、第3,702,757号および第3,708,422号に記載されている。
【0064】
分散剤の混合物も使用することができる。本発明技術の配合物中に存在する場合、分散剤の量は一般に0.3〜10重量%である。他の実施形態では、分散剤の量は最終ブレンド流体配合物の0.5〜7%、または1〜10%、または1〜5%、または1.5〜9%、または2〜8%である。濃縮物では、その量は比例して高くなる。
【0065】
しばしば用いられる別の成分は粘度調整剤である。粘度調整剤(VM)および分散剤粘度調整剤(DVM)は周知である。VMおよびDVMの例には、ポリメタクリレート、ポリアクリレート、ポリオレフィン、スチレン−マレイン酸エステルコポリマー、ならびにホモポリマー、コポリマー、およびグラフトコポリマーを含む類似の重合物質が含まれ得る。DVMは、窒素含有メタクリレートポリマー、例えばメチルメタクリレートとジメチルアミノプロピルアミンとから誘導される窒素含有メタクリレートポリマーを含むことができる。
【0066】
市販のVM、DVMおよびその化学物質の種類の例には、以下:ポリイソブチレン(BP AmocoからのIndopol(商標)またはExxonMobilからのParapol(商標)など);オレフィンコポリマー(LubrizolからのLubrizol(商標)7060、7065および7067ならびにMitsuiからのLucant(商標)HC−2000LおよびHC−600など);水素化スチレン−ジエンコポリマー(ShellからのShellvis(商標)40および50ならびにLubrizolからのLZ(登録商標)7308および7318など);分散剤コポリマーであるスチレン/マレエートコポリマー(LubrizolからのLZ(登録商標)3702および3715など);ポリメタクリレート(そのいくつかが分散剤特性を有する)(RohMaxからのViscoplex(商標)シリーズのもの、Aftonからの粘度指数向上剤のHitec(商標)シリーズならびにLubrizolからのLZ7702(商標)、LZ7727(商標)、LZ7725(商標)およびLZ7720C(商標)など);オレフィン−グラフト−ポリメタクリレートポリマー(RohMaxからのViscoplex(商標)2−500および2−600など);ならびに水素化ポリイソプレンスターポリマー(ShellからのShellvis(商標)200および260など)が含まれ得る。LubrizolからのAsteric(商標)ポリマー(放射状または星形の構造を有するメタクリレートポリマー)も含まれる。使用できる粘度調整剤は米国特許第5,157,088号、同第5,256,752号および同第5,395,539号に記載されている。VMおよび/またはDVMは、機能性流体において最大で20重量%の濃度で使用することができる。1〜12重量%または3〜10重量%の濃度で用いることができる。
【0067】
本発明技術で用いる組成物において使用できる他の成分は、補助的摩擦調整剤である。これらの摩擦調整剤は当業者に周知である。使用できる摩擦調整剤のリストは米国特許第4,792,410号、同第5,395,539号、同第5,484,543号および同第6,660,695号に含まれている。米国特許第5,110,488号は、摩擦調整剤として有用な脂肪酸の金属塩、特に亜鉛塩を開示している。使用できる補助的摩擦調整剤のリストには:
脂肪ホスファイト ホウ酸化アルコキシル化脂肪アミン
脂肪酸アミド 脂肪酸の金属塩
脂肪エポキシド 硫化オレフィン
ホウ酸化脂肪エポキシド 脂肪イミダゾリン
上記で論じた脂肪アミン以外の脂肪アミン カルボン酸とポリアルキレン−ポリアミンとの縮合生成物
グリセロールエステル アルキルサリチレートの金属塩
ホウ酸化グリセロールエステル アルキルリン酸のアミン塩
アルコキシル化脂肪アミン エトキシル化アルコール
オキサゾリン イミダゾリン
ヒドロキシアルキルアミド ポリヒドロキシ第3級アミン
ジアルキルタートレート モリブデン化合物
およびその2つ以上の混合物
が含まれ得る。
【0068】
これらのタイプの摩擦調整剤のそれぞれの代表的なものは公知であり、市販されている。例えば、脂肪ホスファイトは一般に式(RO)PHOまたは(RO)(HO)PHOのものであってよく、式中、Rは、油溶性を付与するのに十分な長さのアルキルまたはアルケニル基であってよい。適切なホスファイトは市販されており、米国特許第4,752,416号に記載されているようにして合成することもできる。
【0069】
使用できるホウ酸化脂肪エポキシドはカナダ特許第1,188,704号に開示されている。これらの油溶性のホウ素含有組成物は、ホウ酸または三酸化ホウ素などのホウ素源を少なくとも8個の炭素原子を含有することができる脂肪エポキシドと反応させることによって調製することができる。非ホウ酸化脂肪エポキシドも補助的摩擦調整剤として有用であり得る。
【0070】
使用できるホウ酸化アミンが米国特許第4,622,158号に開示されている。ホウ酸化アミン摩擦調整剤(ホウ酸化アルコキシル化脂肪アミンを含む)は、上記で説明したように、ホウ素化合物と単純な脂肪アミンおよびヒドロキシ含有第3級アミンを含む対応するアミンとの反応によって調製することができる。ホウ酸化アミンを調製するのに有用なアミンには、商品名「ETHOMEEN」で公知でありAkzo Nobelから入手できる市販のアルコキシ化脂肪族アミン、例えば、ビス[2−ヒドロキシエチル]−ココ−アミン、ポリオキシエチレン[10]ココアミン、ビス[2−ヒドロキシエチル]−ソイアミン、ビス[2−ヒドロキシエチル]−タロー−アミン、ポリオキシエチレン−[5]タローアミン、ビス[2−ヒドロキシエチル]オレイル−アミン、ビス[2−ヒドロキシエチル]オクタデシルアミンおよびポリオキシエチレン[15]オクタデシルアミンが含まれ得る。かかるアミンは米国特許第4,741,848号に記載されている。
【0071】
アルコキシル化脂肪アミンおよび脂肪アミン自体(オレイルアミンなど)は摩擦調整剤として有用であり得る。これらのアミンは市販されている。
【0072】
グリセロールのホウ酸化脂肪酸エステルおよび非ホウ酸化脂肪酸エステルの両方を摩擦調整剤として使用することができる。グリセロールのホウ酸化脂肪酸エステルは、グリセロールの脂肪酸エステルをホウ酸などのホウ素源でホウ酸化することによって調製することができる。グリセロールの脂肪酸エステル自体は当該分野で周知の様々な方法で調製することができる。グリセロールモノオレエートおよびグリセロールタローエートなどのこれらのエステルの多くは商業規模で製造される。市販のグリセロールモノオレエートは、45重量%〜55重量%モノエステルと55重量%〜45重量%ジエステルとの混合物を含有することができる。
【0073】
脂肪酸は、上記グリセロールエステルを調製するのに用いることができ;それらは、その金属塩、アミドおよびイミダゾリンを調製するのにも用いることができ、そのいずれも、摩擦調整剤として使用することもできる。脂肪酸は、6〜24個の炭素原子または8〜18個の炭素原子を含有することができる。有用な酸はオレイン酸であってよい。
【0074】
脂肪酸のアミドは、アンモニアまたはジエチルアミンおよびジエタノールアミンなどの第1級もしくは第2級アミンとの縮合によって調製したものであってよい。脂肪イミダゾリンは、酸と、ジアミンまたはポリアミン、例えばポリエチレンポリアミンとの環状縮合生成物を含むことができる。1つの実施形態では、その摩擦調整剤は、C8〜C24脂肪酸とポリアルキレンポリアミンとの縮合生成物、例えば、イソステアリン酸とテトラエチレンペンタミンとの生成物であってよい。カルボン酸とポリアルキレンアミンとの縮合生成物はイミダゾリンまたはアミドであってよい。
【0075】
脂肪酸は、その金属塩、例えば、亜鉛塩として存在してもよい。これらの亜鉛塩は酸性であっても中性であっても塩基性(過塩基性)であってもよい。これらの塩は、亜鉛含有試薬とカルボン酸またはその塩との反応によって調製することができる。これらの塩を調製する有用な方法は、酸化亜鉛とカルボン酸とを反応させる方法である。有用なカルボン酸は上記に挙げたものである。適切なカルボン酸は式RCOOH(Rは脂肪族または脂環式炭化水素ラジカルである)の酸を含む。これらの中には、Rが脂肪基、例えば、ステアリル、オレイル、リノレイルまたはパルミチルであるものがある。中性塩を調製するのに必要な量より化学量論的に過剰に亜鉛が存在する亜鉛塩も適している。亜鉛が、亜鉛の化学量論量の1.1〜1.8倍、例えば1.3〜1.6倍の化学量論量で存在する塩を用いることができる。これらの亜鉛カルボキシレートは当該分野で公知であり、米国特許第3,367,869号に記載されている。金属塩としてはカルシウム塩も含むことができる。例には過塩基性カルシウム塩が含まれ得る。
【0076】
硫化オレフィンも、摩擦調整剤として用いられる周知の市販材料である。適切な硫化オレフィンは、米国特許第4,957,651号および同第4,959,168号の詳細な教示に従って調製されるものである。そこには、多価アルコールの少なくとも1つの脂肪酸エステル、少なくとも1つの脂肪酸、少なくとも1つのオレフィン、および一価アルコールの少なくとも1つの脂肪酸エステルからなる群から選択される2つ以上の反応物の共硫化混合物が記載されている。オレフィン成分は、通常、4〜40個の炭素原子を含有する脂肪族オレフィンであってよい。これらのオレフィンの混合物は市販されている。本発明技術のプロセスにおいて有用な硫化剤には、元素の硫黄、硫化水素、ハロゲン化硫黄+硫化ナトリウムおよび硫化水素と硫黄または二酸化硫黄との混合物が含まれる。
【0077】
アルキルサリチレートの金属塩には、長鎖(例えば、C12〜C16)アルキル置換サリチル酸のカルシウム塩および他の塩が含まれる。
【0078】
アルキルリン酸のアミン塩には、リン酸のオレイルエステルおよび他の長鎖エステルと、Primene(商標)という商品名で市販されている第3級脂肪族第1アミンなどのアミンとの塩が含まれる。
【0079】
存在する場合、補助的摩擦調整剤の量は、潤滑組成物の0.1〜1.5重量%、例えば0.2〜1.0または0.25〜0.75%であってよい。しかし、いくつかの実施形態では、補助的摩擦調整剤の量は0.2重量%未満または0.1重量%未満、例えば、0.01〜0.1重量%である。
【0080】
本発明技術の組成物は清浄剤を含むこともできる。本明細書で用いる清浄剤は有機酸の塩(典型的には金属塩であるが、第4級アンモニウム塩を含めた種々のアンモニウム塩が公知である)である。清浄剤の有機酸部分はスルホネート、カルボキシレート、フェネート、またはサリチレートであってよい。清浄剤の金属部分はアルカリ金属またはアルカリ土類金属であってよい。適切な金属にはナトリウム、カルシウム、カリウムおよびマグネシウムが含まれる。典型的には、清浄剤は過塩基性化されており、これは、中性金属塩を形成するのに必要な量より化学量論的に過剰な金属塩基が存在することを意味する。
【0081】
適切な過塩基性有機塩には、実質的に親油性の特徴を有しており、有機材料から形成されるスルホン酸塩が含まれる。有機スルホネートは、潤滑剤および清浄剤の技術分野で周知の材料である。スルホネート化合物は、平均して10〜40個の炭素原子、例えば平均して12〜36個の炭素原子または14〜32個の炭素原子を含有するべきである。同様に、フェネート、サリチレートおよびカルボキシレートは実質的に親油性の特徴を有する。
【0082】
本発明技術では、炭素原子は芳香族構成のものであってもパラフィン系構成のものであってもよいが、一定の実施形態では、アルキル化芳香族化合物が用いられる。ナフタレンベースの材料も用いることができるが、選択される芳香族はベンゼン部分である。
【0083】
したがって適切な組成物には、モノアルキル化ベンゼンなどの過塩基性モノスルホン化アルキル化ベンゼンが含まれる。アルキルベンゼン画分はスティルボトム源から得ることができ、これらはモノ−アルキル化またはジ−アルキル化されている。本発明技術では、モノ−アルキル化芳香族は、すべての特性において、ジアルキル化芳香族より優れていると考えられる。
【0084】
本発明技術のモノ−アルキル化塩(ベンゼンスルホン酸塩またはトルエンスルホン酸塩)を得るためにモノ−アルキル化芳香族(例えば、ベンゼン)の混合物を用いることが望ましい。その組成物の実質的な部分がアルキル基の供給源としてプロピレンのポリマーを含有する混合物は、その塩の溶解を助ける。モノ官能性(例えば、モノスルホン化)材料の使用は分子の架橋を回避させ、潤滑剤からの塩の析出を少なくする。
【0085】
その塩は「過塩基性」であってよい。過塩基性ということは、中性塩のアニオンについて必要な分より化学量論的に過剰な金属塩基が存在することを意味する。過塩基性化による過剰金属は、潤滑剤においてもたらされる可能性のある酸を中性化する作用を有する。典型的には、過剰金属は、アニオンを中和するのに必要とされる量より多い、当量ベースで最大で30:1、例えば5:1〜18:1の比で存在することになる。
【0086】
組成物中で用いられる過塩基性塩の量は、典型的には、オイル非含有ベースで0.025〜3までまたは5重量%まで、例えば0.1〜1.0量%または0.2〜4量%である。他の実施形態では、最終潤滑組成物は、清浄剤を含有しないか、清浄剤を実質的に含有しないかまたは清浄剤をごく低量しか含有しなくてよい。すなわち、例えば、カルシウム過塩基性清浄剤について、その量は、250ppm未満のカルシウム、例えば、0〜250、もしくは1〜200、もしくは10〜150、もしくは20〜100もしくは30〜50ppmのカルシウム、または上記のゼロでない量のいずれかより少ない量のカルシウムを提供する量であってよい。かかる少量の清浄剤は、自動変速機への適用に特に適切であり得る。これは、300〜600ppmのカルシウムを提供するのに十分なカルシウム清浄剤を含有し得る、より従来的な自動変速機用配合物と対照をなすものである。内燃機関の潤滑に適切な配合物は、典型的には、ゼロでない量、例えば、0.1〜5%の清浄剤を有する。過塩基性塩は通常約50%までのオイル中に作られ、オイル非含有ベースで10〜800または10〜600のTBN範囲を有する。ホウ酸化(borated)および非ホウ酸化過塩基性清浄剤は、米国特許第5,403,501号および同第4,792,410号に記載されている。
【0087】
本発明技術の組成物は、一定の実施形態では、0.002〜1.0重量%の量で存在し得る硫黄含有類似物を含む少なくとも1つのリン化合物、例えば有機または無機のリンの酸(phosphorus acid)、有機または無機のリンの酸の塩、有機リンの酸のエステルまたはその誘導体も含むこともできる。一定の実施形態では、かかるリン化合物の量は、0.025〜0.085%または0.02〜0.08%のリンを組成物に供給する量である。リンの酸、塩、エステルまたはその誘導体には、リン酸、亜リン酸、リンの酸のエステルまたはその塩、ホスファイト、リン含有アミド、リン含有カルボン酸またはエステル、リン含有エーテル、およびこれらの混合物が含まれる。いくつかのリンの材料は、摩耗防止剤としての機能を果たし得る。
【0088】
1つの実施形態では、リンの酸、エステルまたは誘導体は、有機または無機のリンの酸、リンの酸のエステル、リンの酸の塩またはその誘導体であってよい。リンの酸には、リン酸、ホスホン酸、ホスフィン酸、ならびにジチオリン酸を含むチオリン酸、ならびにモノチオリン酸、チオホスフィン酸およびチオホスホン酸が含まれる。リン化合物の1つのグループは式
【0089】
【化10】
【0090】
(式中、R、R、Rはアルキルもしくはヒドロカルビル基であるか、RおよびRの1つはHであってよい)で表されるアルキルリン酸モノアルキル第1級アミン塩である。材料は、通常、ジアルキルリン酸エステルとモノアルキルリン酸エステルとの1:1混合物である。この種の化合物は米国特許第5,354,484号に記載されている。
【0091】
85%リン酸は、完全に配合された組成物に加えるのに適した材料であり、それを、組成物の重量に対して0.01〜0.3重量%、例えば0.03〜0.2または〜0.1%のレベルで含むことができる。リン酸は、塩基性成分、例えばスクシンイミド分散剤と塩を形成し得る。
【0092】
存在し得る他のリン含有材料には、亜リン酸ジブチルなどの亜リン酸ジアルキル(ホスホン酸水素ジアルキルと称されることもある)が含まれる。さらに他のリン材料には、ホスホロチオ酸のリン酸化ヒドロキシ置換トリエステルおよびそのアミン塩、ならびにリン酸の硫黄非含有ヒドロキシ置換ジ−エステル、リン酸の硫黄非含有リン酸化ヒドロキシ置換ジ−またはトリエステルおよびそのアミン塩が含まれる。これらの材料は、米国特許出願公開第2008−0182770号にさらに記載されている。
【0093】
上記必要成分または仕様に不適合であることがないという前提で、本発明技術の組成物中に任意選択的に他の材料を含むことができる。かかる材料には、酸化防止剤(すなわち、酸化抑制剤)が含まれ、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、芳香族第2級アミン酸化防止剤、例えばジノニルジフェニルアミン、ならびに他のアルキル置換基(モノ−またはジ−オクチルなど)を用いたモノノニルジフェニルアミンおよびジフェニルアミンのような周知の変形体、硫化フェノール系酸化防止剤、油溶性銅化合物、リン含有酸化防止剤、ならびに有機スルフィド、ジスルフィドおよびポリスルフィド、例えば、2−ヒドロキシアルキル、アルキルチオエーテル、または1−t−ドデシルチオ−2−プロパノールまたは硫化4−カルボブトキシシクロヘキセンもしくは他の硫化オレフィンが含まれる。いくつかの実施形態では、酸化防止剤の量は、0.1〜5重量%または0.15〜2.5%または0.2〜4%であり得る。
【0094】
トリルトリアゾールおよびジメルカプトチアジアゾールならびにかかる材料の油溶性誘導体などの腐食防止剤も含まれてよい。他の任意選択の成分には、イソデシルスルホランまたはフタル酸エステルなどの、シールを柔軟に保持できるように設計されたシール膨潤剤が含まれる。流動点降下剤、例えばアルキルナフタレン、ポリメタクリレート、ビニルアセテート/フマレートまたは/マレエートコポリマーおよびスチレン/マレエートコポリマーも許容される。他の材料は、摩耗防止剤、例えば亜鉛ジアルキルジチオホスフェート、アジピン酸トリデシル、およびヒドロキシカルボン酸の種々の長鎖誘導体、例えば米国特許出願公開第2006−0183647号に記載されているようなタートレート、酒石酸アミド、酒石酸イミドおよびシトレートである。これらの任意選択の材料は、当業者に公知であり、一般に市販されており、公開されている欧州特許出願第761,805号にさらに詳細に記載されている。腐食防止剤(例えば、トリルトリアゾール、ジメルカプトチアジアゾール)、染料、流動化剤、臭気マスキング剤および消泡剤などの公知の材料も含めることができる。有機ホウ酸エステルおよび有機ホウ酸塩も含めることができる。
【0095】
上記成分は、完全に配合された潤滑剤の形態であっても、より少ない量の潤滑オイル中の濃縮物の形態であってもよい。それらが濃縮物で存在する場合、その濃度は一般に、最終ブレンドでのより希釈された形態のその濃度と正比例する。
【0096】
本明細書中に記載の組成物を、機械的デバイスに本明細書中に記載の任意の潤滑剤組成物を供給することを含む、機械的デバイスを潤滑する方法で使用することができる。機械的デバイスは、自動車などの車両に見られる自動変速機であり得る。自動変速機には、無段変速機および二段クラッチ変速機、ならびに種々のタイプのガソリンエンジン、ディーゼルエンジン、およびハイブリッドエンジン(ガソリン/電気ハイブリッドが含まれる)用の変速機が含まれる。機械的デバイスには、2サイクル機関および4サイクル機関、ガソリン燃料エンジン、ディーゼル燃料エンジン、火花点火エンジン、圧縮点火エンジン、サンプ潤滑エンジン、ならびに潤滑剤を燃料との混合物中に供給するエンジンが含まれる内燃機関も含まれる。
【0097】
本明細書中で使用する場合、用語「ヒドロカルビル置換基」または「ヒドロカルビル基」は、当業者に周知の通常の意味で用いられる。具体的には、それは、分子の残りの部分に直接結合している炭素原子を有し、かつ主に炭化水素の特徴を有する基をいう。ヒドロカルビル基の例には以下が含まれる。
【0098】
炭化水素置換基、すなわち、脂肪族(例えば、アルキルまたはアルケニル)、脂環式(例えば、シクロアルキル、シクロアルケニル)置換基、ならびに芳香族−置換芳香族置換基、脂肪族−置換芳香族置換基および脂環式−置換芳香族置換基、ならびにその環が分子の別の部分を介して完成している環状置換基(例えば、2つの置換基が一緒に環を形成する);
置換炭化水素置換基、すなわち本発明技術の状況において、置換基(例えば、ハロ(特にクロロおよびフルオロ)、ヒドロキシ、アルコキシ、メルカプト、アルキルメルカプト、ニトロ、ニトロソおよびスルホキシ)の主に炭化水素的性質を変えない非炭化水素基を含有する置換基;
ヘテロ置換基、すなわち、本発明技術の状況において主に炭化水素的性質を有しており、環または鎖の中に炭素以外のものを含有し、それ以外は炭素原子からなり、ピリジル、フリル、チエニルおよびイミダゾリルのような置換基を包含する置換基。ヘテロ原子には硫黄、酸素および窒素が含まれる。一般に、ヒドロカルビル基中の10個の炭素原子毎に2つ以下または1つ以下の非炭化水素置換基が存在する;典型的には、ヒドロカルビル基中に非炭化水素置換基は存在しない。
【0099】
上記材料のいくつかは最終配合物中で相互に作用する可能性があり、したがって最終配合物の成分は最初に加えたものと異なっている可能性があるということは公知である。例えば、金属イオン(例えば清浄剤の)は、他の分子の他の酸性またはアニオン性部位へ移動する可能性がある。それによって形成される生成物は、その目的とする用途において本発明技術の組成物を用いて形成される生成物も含めて、簡単に説明できない場合がある。にもかかわらず、かかるすべての改変および反応生成物は本発明技術の範囲内に含まれる;本発明技術は、上記成分を混合することによって調製される組成物を包含する。
【実施例】
【0100】
調製例A。ピロメリット酸ジイミド、例えば上記構造(I)のものを得るための、Duomeen(登録商標)2HTの無水ピロメリット酸との反応。Duomeen(登録商標)2HTは、(Hタロー)N−(CHNH(式中、Hタローは水素化タローを示し、約64%のC18基、31%のC16基、4%のC14基、および1%のC12基の混合物である)によって示すことができるジアミンについてのAkzo Nobelの商品名である。
【0101】
2Lの丸底フランジフラスコに、スターラー、窒素インレット、熱電対、ディーン・スターク・トラップ、および冷却管を装備する。フラスコに、56.7gの無水ピロメリット酸および750mLのキシレンを投入する。混合物を撹拌しながら約110℃に加熱し、300gのDuomeen(登録商標)2HTを約2時間にわたって滴下する。混合物を145℃に加熱し、4時間撹拌し、次いで、真空下で1時間190℃にさらに加熱し、蒸留によって溶媒および任意の残存する水を除去し、次いで、冷却する。それにより、332gの量のジイミドが得られる。
【0102】
調製例B。2−エチルヘキサノールの無水ピロメリット酸との反応。無水ピロメリット酸21.2gおよび2−エチルヘキサノール25.6gを、メカニカルスターラー、窒素インレット、熱電対、および上部に冷却管を装着したディーン・スターク・トラップを備えた250mLの4つ口フラスコに添加する。反応混合物を30分間にわたって150℃に加熱し、その温度で2時間保持する。その後、さらなる26.2gの2−エチルヘキサノールおよび0.24gのメタンスルホン酸を、156〜160℃に温度上昇するように複数回に分けて添加し、この温度で約2時間撹拌する。反応混合物を180℃に加熱し、減圧下でストリップして生成物を得る。
【0103】
ベース配合物Iを、以下の成分を使用して調製する。
6.24%高分子粘度調整剤(30%希釈オイルを含む)
0.2%高分子流動点降下剤(50%希釈オイルを含む)
5.65%スクシンイミド分散剤(44%希釈オイルを含む)
1.66%シール膨潤剤
1.02%アミンおよび硫黄含有酸化防止剤
0.30%ホスファイトおよびホスホネート摩擦調整剤
0.15%ホウ酸エステル摩擦調整剤
0.09%リン酸(85%)
0.1%腐食防止剤
0.014%市販の消泡剤
1.8%希釈オイル
残り:鉱物流体。
【0104】
ベース配合物IIを、以下の成分を使用して調製する。
9.6%高分子粘度調整剤(75%希釈オイルを含む)
0.2%高分子流動点降下剤(50%希釈オイルを含む)
3.5%スクシンイミド分散剤(44%希釈オイルを含む)
0.4%シール膨潤剤
0.9%アミン酸化防止剤
0.20%ホスファイト摩擦調整剤
0.10%リン酸(85%)
0.037%市販の消泡剤、色素、および他の微量成分
残り:鉱物流体。
【0105】
試験用の潤滑剤は、以下の表で特定される試験材料の1つを、表示したベース配合物に加えて調製する。得られた潤滑剤を、可変速度摩擦試験であるVSFT試験に供する。VSFT装置は、金属表面に対して回転する金属または他の摩擦材料であってよいディスクからなる。具体的な試験で用いる摩擦材料は、表に示したような自動変速機クラッチで一般的に使用される様々な市販の摩擦材料である。試験は、3つの温度および2つの負荷レベルで実施する。VSFTで測定された摩擦係数を、一定圧力でのいくつかの速度掃引にわたって滑り速度(50および200r.p.m.)に対してプロットする。結果を、時間の関数としてのμ−v曲線の勾配で示すことがあり、0時間から52時間まで4時間間隔で決定し、40、80および120℃と24kgおよび40kg(235および392N)力で報告する。典型的には、その勾配は最初、ある程度のばらつきで正となり、徐々に低下し得、一定の期間の後おそらく負になってくる。正の勾配の期間がより長いことが望ましい。
【0106】
データを最初、各試行について時間の関数としての勾配値の表として収集する。分析と比較をし易くするために、各温度での各配合物を「勾配スコア」に割り当てる。各温度で、正である、24kgで第1の7つの時間内の測定(0〜24時間)の勾配値および40kgでの第1の7つの測定の勾配値(したがって合計14の測定の勾配値)の割合を%で「A」と表示する。正である第2の24時間(28〜52時間)内の2つの圧力(合計14の測定)での勾配値の割合を「B」と表示する。勾配スコアをA+2Bと定義する。試験の後の方で与えられた追加的な重み付けは、試験の後段で正の勾配を保持する持続的な流体を調製することのより大きな重要性(および困難さ)を反映するためである。300の最大スコアは、試験全体にわたって一貫して正の勾配を示す流体を表す。勾配スコアを報告する概要および勾配スコアの例示的な計算のより詳細な記載は、2010年8月29日Vickermanらの米国特許出願公開第2010−021490号に見られる;段落0093〜0096を参照されたい。
【0107】
【表1】
【0108】
*参照例または比較例
a.摩擦材料:表示のRaybestos(商標)4211またはBorg Warner(商標)6100。
【0109】
結果は、特に本発明技術の材料が存在しないベース配合物と比較して、本発明技術の材料による望ましい摩擦性能を示している。結果は、1.0%と比較して2.5%の相対的に高い濃度で、より良好な性能が得られることも示している。
【0110】
さらなる摩擦試験は、本発明技術のさらなる特徴を示す。ベース配合物I中に調製例Aの2.5%のピロメリット酸ジイミド(pyromellitic dimide)を含む実施例3の流体を、Ford30K耐久性動的摩擦試験(Dynax(商標) D−0530−31)に供する。スチールと潤滑クラッチの摩擦板との間の摩擦を、係合プロセスの間に測定する。動的摩擦係数の中点値を、50ms間隔、1800r.p.m.で中央に存在し、400係合サイクルと30,000係合サイクルとの間、4サイクル/分で繰り返して決定する。潤滑剤の温度は135℃である。
【0111】
摩擦係数の中点値のプロットを、図1に示す。菱型で示した上部の実線は、ピロメリット酸ジイミドを含有する実施例3の流体についての摩擦係数を示す。白丸で示した下の破線は、ピロメリット酸ジイミド(pyromellitc diimide)を使用しない同一のベースライン流体を示す。
【0112】
試験の結果は、調製例Aのピロメリット酸ジイミドの添加により、潤滑剤によって付与された動的摩擦係数が望ましいレベルに有意に増加し、このレベルが30,000サイクルを通して維持されることを示す。これは固有且つ有利な性能である。なぜなら、伝統的に、長いポリイソブチレン「テール」成分を有する分散剤は高レベルの動的摩擦を提供する必要があるが、かかる分散剤は低温(過度の高粘度)において劣った性能をもたらし得るからである。本発明技術は、少量のかかる分散剤の不使用または使用にかかわらず高い動的摩擦係数を有する潤滑剤を配合することが可能である。
【0113】
本発明技術はまた、自動変速機で典型的に見られる湿式クラッチの潤滑に対して良好なシャダー防止耐久性を付与する。
【0114】
ヘビーデューティディーゼルエンジン潤滑剤で典型的に使用されるさらなる成分を含む一連の潤滑剤配合物を調製する。ベース配合物は、100〜120N鉱物流体中に、7.6%のオレフィンコポリマー粘度調整剤(92%希釈オイルを含む)、0.15%の流動点降下剤(オイルで希釈)、5.1%のスクシンイミド分散剤(47%希釈オイル)、0.63%亜鉛ジアルキルジチオリン酸(9%オイル)、2.2%の酸化防止剤の混合物、1.53%過塩基性スルホン酸カルシウム清浄剤(42%オイル)、0.1%オレアミド、および90ppmの市販の消泡剤を含有する。潤滑剤に、以下の表に示すさらなる成分(重量%で表現)(一定の例では、0.2%の、上記の調製例B由来の、ピロメリット酸の2−エチル−ヘキサノールとのテトラエステルを含む)を添加する。得られた潤滑剤配合物を、銅および鉛の試験片の腐食試験に供する。この試験では、CuおよびPb試験片を含有する50gの潤滑剤サンプルに50cmの空気を典型的には135℃にて典型的には216時間バブリングする。試験結果を、以下の表にも報告する。
【0115】
【表2】
【0116】
*参照例または比較例
a.市販のモリブデン含有組成物(潤滑剤配合物に0.05%Moを提供する)
b.ASTM D 130:1A=きれいであるかわずかな曇り;4C=重度の黒色沈殿物
グリセロールモノオレエートは、過剰な鉛腐食をもたらすことが公知である。この過剰な腐食は、ピロメリット酸エステルの存在によって有意に軽減される。目視評点によって評価した銅腐食は、典型的には、特にモリブデンも存在する場合にピロメリット酸エステルの存在によって改善される(ppm Cuによって測定した銅腐食は、有意に影響を受けない)。
【0117】
実施例17。エンジン潤滑剤としての使用に適切な潤滑剤組成物を、以下の成分(重量%)を使用して調製する。
1.0%調製例B由来のピロメリット酸と2−エチルヘキサノールとのテトラエステル
8%高分子粘度調整剤(91%希釈オイルを含む)
0.15%高分子流動点降下剤(25%オイル)
5.1%スクシンイミド分散剤(47%オイル)
0.48%亜鉛ジアルキルジチオリン酸(9%オイル)
1.53%過塩基性スルホン酸カルシウム(42%オイル)
0.1%カルボン酸エステル摩擦調整剤
2%ヒンダードフェノールエステル酸化防止剤
1%アミン系酸化防止剤
潤滑粘性のオイル−100%になるような残り。
【0118】
実施例17の潤滑剤組成物は、良好な摩耗防止性能および良好な摩擦係数のうちの1つ以上を示す。
【0119】
実施例18、19、および20。以下に示す構造を有するイミドを調製する。
【0120】
【化11】
【0121】
実施例18、19、および20の各材料を、自動変速機流体に特徴的な上記の2つのベース配合物IおよびIIのそれぞれに2.5重量%で添加する。これらを、BorgWarner(商標)6100摩擦材料を使用したVSFT試験(上記)に供する。結果を、「勾配スコア」(上記で定義)として以下の表に示す。
【0122】
【表3】
【0123】
上記に参照した文献のそれぞれは、参考により本明細書に組み込まれる。いずれの文献の言及も、かかる文献が従来技術と見なされるものではなく、また当業者の一般的知見を構成すると認めるものでもない。実施例、あるいは明白に示されている場合を除いて、材料の量、反応条件、分子量、炭素原子数などを指定する本説明におけるすべての数量は、「約」という言葉で修飾されているものと理解すべきである。別段の表示のない限り、本明細書で参照する化学物質または組成物は、異性体、副生成物、誘導体、および商業用グレード品中に存在すると普通は理解されるような他のかかる材料を含有する可能性のある商業用グレードの材料であると解釈されるべきである。しかし、別段の表示のない限り、各化学成分の量は、商業用材料中に慣習的に存在する可能性のあるいずれの溶媒または希釈オイルも除いて示している。本明細書で示す量、範囲および比の上限および下限は、独立に組み合わせることができることを理解されたい。同様に、本発明技術の各要素についての範囲および量は、他の要素のいずれかについての範囲または量と一緒に用いることができる。本明細書で用いる「〜から本質的になる」という表現は、考慮される組成物の基本的および新規な特徴に実質的に影響を及ぼさない物質を含むことを許容するものである。
図1