特許第6100251号(P6100251)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6100251伸縮性の不織布を一時的に抑制するための方法および装置
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  • 特許6100251-伸縮性の不織布を一時的に抑制するための方法および装置 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6100251
(24)【登録日】2017年3月3日
(45)【発行日】2017年3月22日
(54)【発明の名称】伸縮性の不織布を一時的に抑制するための方法および装置
(51)【国際特許分類】
   D06H 7/02 20060101AFI20170313BHJP
   D06C 3/00 20060101ALI20170313BHJP
   D06C 27/00 20060101ALI20170313BHJP
【FI】
   D06H7/02
   D06C3/00
   D06C27/00 Z
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2014-519645(P2014-519645)
(86)(22)【出願日】2012年7月11日
(65)【公表番号】特表2014-524988(P2014-524988A)
(43)【公表日】2014年9月25日
(86)【国際出願番号】IB2012001594
(87)【国際公開番号】WO2013011377
(87)【国際公開日】20130124
【審査請求日】2015年7月9日
(31)【優先権主張番号】61/508,317
(32)【優先日】2011年7月15日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505196174
【氏名又は名称】タミケア リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】ジロー,エフド
【審査官】 加賀 直人
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭49−044841(JP,A)
【文献】 特表2000−515447(JP,A)
【文献】 特開2001−200429(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06H 7/02
D06C 3/00
D06C 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
変換工程の間に伸縮性不織布の伸縮性を一時的に抑制する方法であって、前記方法は、
(a)伸縮性不織布を提供することと、
(b)少なくともマシン方向において前記伸縮性不織布の伸縮性を一時的に抑制するために、前記伸縮性不織布に非伸縮特性を提供するように、連続する糸または繊維から成る非伸縮性要素を前記伸縮性不織布に挿入することにより、前記伸縮性不織布変更することと
(c)次いで、前記変換工程の間または後に、前記非伸縮性要素を小断片へと遮断し、切断し、または融解させることによって前記非伸縮性要素の連続性を除去することにより、前記伸縮性不織布によって先に獲得された非伸縮特性を除去することによって、前記伸縮性不織布の伸縮性を回復することであって、前記小断片は、前記伸縮性不織布に接合されず、前記伸縮性不織布の内部で自由に移動し、前記小断片は、前記伸縮性不織布の伸縮性を抑制しないことと、
(d)前記非伸縮性要素の連続性を除去した後に、前記非伸縮性要素を伸縮性不織布から取り除くことと、
を含む方法。
【請求項2】
変換工程の間に伸縮性不織布の伸縮性を一時的に抑制する方法であって、前記方法は、
(a)伸縮性不織布を提供することと、
(b)少なくともマシン方向において前記伸縮性不織布の伸縮性を一時的に抑制するために、前記伸縮性不織布に非伸縮特性を提供するように、前記伸縮性不織布内に非伸縮性要素を一時的に作製することにより、前記伸縮性不織布を変更することであって、前記非伸縮性要素は、前記伸縮性不織布内に繊維の高密度領域を創出するように前記伸縮性不織布を処置することにより作製さることと、
(c)次いで、前記変換工程の間または後に、前記非伸縮性要素を除去することによって、前記伸縮性不織布によって先に獲得された非伸縮特性を除去することにより、前記伸縮性不織布の伸縮性を回復することと、
(d)前記非伸縮性要素の連続性を除去した後に、前記非伸縮性要素を伸縮性不織布から取り除くことと、
を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
伸縮性のエラストマー不織布は、当該技術分野に公知である。伸縮性不織布材料の一例は、2008年11月27日に公開された米国特許出願公開第2008/0292788号に記載されている。
【背景技術】
【0002】
また、米国特許出願公開第2008/0292788号は、不織布産業において一般的に用いられるような、ベルトコンベア装置上で伸縮性の布を製造するための方法、および、変換用装置上で、更に加工し変形させるために、当該素材のシートを原反から製造するための方法を説明している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
この産業における既知の問題点は、変換用装置における加工中に、マシン方向(machine direction)(MD)においてロール状素材に印加される張力が、素材の過剰な伸び、歪み、または断裂を生じさせうるという、変換用装置上での原反の製造工程に関連する。不織布材料に伸縮性がある場合、この問題はより悪化する。本願は、この問題点を解決するための手法を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本願は、一時的に非伸縮性となる能力、または一時的に伸縮性に制限を有する能力を備える不織布を開示する。この能力は、ある程度の弾性、伸縮性、および/または弾力を有する任意の不織布において実現可能である。
【0005】
本開示において、弾性材料、伸縮性材料、または弾力のある材料という用語は、互いに置換可能である。
【0006】
不織布は、米国特許出願公開第2008/0292788号において開示された方法を含む任意の方法によって製造されうるが、これに限定されることはない。
【0007】
本願は、製品、製造方法、および関連する装置を開示する。
【0008】
概して、本開示は、変換を容易にするために、任意のレベルの伸縮性を有する不織布において、主としてマシン方向における一時的な非伸縮特性を得ることに関する。この非伸縮特性は、不織布の元の特性を取り戻すために、その後除去することが可能である。本技術は、変換用装置による、伸縮性の不織布を備える最終製品の形成を可能とする。
【0009】
さらに明確にするために、既存の材料がある程度まで伸縮可能である一方で、本開示において用いられる「非伸縮性」との用語は、非伸縮性であると考えられる材料、または数パーセントのみ伸縮可能な材料に関する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】非伸縮性要素と関連付けられた不織布シートを示す図である。
図2】非伸縮性要素の連続性を破壊した後の図1の不織布シートを示す図である。
図3】引き伸ばされた後の不織布シートを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本開示は、変換用装置におけるロール状の不織布の稼働を促進するための、任意の不織布の伸縮性の変更または変換に関する。この伸縮性の変更は、変換工程における材料の変形も防止する。
【0012】
材料の伸縮性を変更する本方法は、少なくとも2つのステップを含む。第1に、不織布の伸縮性が一時的に抑制される。第2に、不織布シートの非伸縮特性が除去され、伸縮性が回復される。
【0013】
本方法は、様々な実施形態によって実施されうる。いくつかの代表的な実施形態を以下に示す。
【0014】
図1を参照すると、伸縮性の不織布シートまたは不織布1は、非伸縮性要素2と関連付けられる。この非伸縮性要素2を作製するために、糸または長繊維などの相対的に非伸縮性の構成材を不織布1に取り付ける、または組み込むことにより、不織布シート1の伸縮性は、一時的に抑制される。
【0015】
この糸または長繊維は、少なくともマシン方向(ロールの向きに対して長手方向)に非伸縮性を与えるように、不織布1に関連付けられる。
【0016】
非伸縮性要素2は、金属、綿、ビスコース、紙、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、任意のポリマー、または、ロール状シートの伸縮性と比べて相対的に非伸縮性の他の適切な材料など、任意の適した材料から作製されることが可能であり、また、これらに限定されるということもない。
【0017】
非伸縮性要素2は、任意の適切な方法によって作製されることが可能であり、または、例えば伸縮性不織布の製造中または製造後に非伸縮性の構成材を伸縮性不織布に縫い付けることによって、挿入されることが可能である。
【0018】
別の実施形態においては、この非伸縮性要素2は、不織布材料に処置を施すこと、例えば、繊維の融解もしくは接着、熱接着、または任意の他の適切な方法によって、繊維の高密度領域を形成することによって作製される。あるいは、非伸縮性要素2は、製造工程中に、糸または長繊維などの非伸縮性の構成材を伸縮性不織布1へと組み込むことによって作製されうる。この非伸縮性の構成材は、伸縮性不織布の内側、伸縮性不織布を形成している層の間、または伸縮性不織布を形成しているエラストマー材料の層の間に設置されうる。この非伸縮性の構成材は、変換工程における円滑で均一な稼働を可能とするために、少なくともマシン方向において、伸縮性材料と関連付けられる。
【0019】
さらに別の実施形態においては、この非伸縮性要素2は、液状エラストマー材料層の塗布の間に、または層塗布工程の間に、不織布1と関連付けられうる。エラストマー材料液の層は、壁、金型、被加工物の形成器、コンベアベルト、またはコンベアに連結された被加工物形成器に塗布されうる。液状エラストマー材料の塗布は、その液状エラストマー材料層が硬化するときには既に非伸縮性要素2が不織布1に組み込まれているように、スプレーによる噴霧、ブラッシング、ラミネート加工、または任意の他の適切な方法によって行われることが可能である。
【0020】
合成ゴムまたは天然ゴムのような液状エラストマー材料に基づく不織布の場合、この非伸縮性要素2は、液状エラストマー材料の硬化の後、および伸縮性不織布の圧延の前に、伸縮性不織布1と関連付けられうる。
【0021】
さらに別の実施形態においては、この非伸縮性要素2は、非伸縮性要素2と伸縮性不織布1を付着させ共圧延することによって伸縮性不織布に関連付けられたシートまたはメッシュでもよい。このシートまたはメッシュは、金属、綿、ビスコース、紙、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、任意のポリマー、または他の適切な材料などの任意の適切な非伸縮性材料から作製されることが可能であり、これらに限定されることもない。この非伸縮性のシートまたはメッシュの伸縮性不織布シートへの関連付けは、伸縮性不織布シートが変換工程の中で引き伸ばされることを非伸縮性シートまたはメッシュが防止し、円滑で支障のない変換を可能とするように、伸縮性不織布1の製造工程において、または伸縮性不織布の製造工程の後に実行されることが可能である。
【0022】
本願の方法は、第1のステップの間に伸縮性不織布が獲得した非伸縮特性の除去または撤去をさらに含むため、不織布1の元の弾力が回復し、再取得される。
【0023】
一実施形態において、非伸縮特性は、変換用装置における加工中に、糸、長繊維またはメッシュなどの非伸縮性要素2を形成する構成材の連続性を破壊することによって除去される。非伸縮性要素(糸、長繊維、またはメッシュ)の連続性の破壊は、所望のピッチで非伸縮性要素を切断することによって、変換用装置上で実施されることが可能である。このピッチは、典型的には、数ミリメートル未満から数センチメートル以上の間で変化しうる。切断は、穿孔機、ウォータージェット、レーザーもしくは他の電磁放射、化学反応、融解、または当業界において公知の任意の他の適切な手段などの任意の手段またはデバイスによって実施されうるものであり、またこれに限定されるものでもない。
【0024】
非伸縮性構成材(糸、繊維、またはメッシュ)の連続性の破壊の後、この非伸縮性構成材は、破壊のピッチに応じた小断片3(図2に図示)の形で現れる。
【0025】
図2は、非伸縮性要素の連続性の破壊の後の不織布シート1を示しており、残存する短い非伸縮性要素3、および、破壊が生じた箇所に形成される、残存する非伸縮性要素間の小さな隙間4を示す。別の実施形態においては、非伸縮性のシートまたはメッシュは、変換工程において伸縮性不織布1から非伸縮性シートを分離することによって伸縮性シートから取り除かれる。この非伸縮性シートまたはメッシュは、巻き取られ、再利用されうる。
【0026】
図3は、引き伸ばされた不織布シート5を示す。残存する非伸縮性要素3が不織布中に存在する一方で、不織布が引き伸ばされた結果、残存する非伸縮性要素3の間の隙間6が、小さな隙間4よりも広くなる。
【0027】
伸縮性不織布の非伸縮特性の除去により、糸または長繊維は依然として伸縮性不織布1と接続されているか、または組み込まれているが、これらは小断片3へと切断されており、このため不織布の伸縮性を抑制することはできない。不織布は以前の伸縮性及び弾力を取り戻しており、これにより、変換用装置上での円滑で支障のない伸縮性の最終製品の製造が可能となる。
【0028】
非伸縮性要素の材料を、伸縮性不織布の繊維を形成する材料に対する付着性が低いことが好ましい。これにより、小断片3が不織布1内部で移動することが可能となる。
【0029】
小断片3は、伸縮性不織布材料に固定され続けるということはなく、不織布の繊維の内側で移動可能である。換言すれば、非伸縮性要素と伸縮性不織布の間の摩擦により、切断された後、小断片3が不織布中で自由に動くことが可能となる。
【0030】
非伸縮性要素2の連続性が、例えば糸または長繊維の破壊または切断によって除去された後、非伸縮性要素の切断された小断片は接続されておらず、不織布を保持することもない。この小断片3は、伸縮性不織布1の内部で、様々な位置で「浮遊している」ため、伸縮性不織布は抑制されない。不織布が引き伸ばされたときに、各々の断片間の隙間または距離が広くなる。
【0031】
本願の装置は、2つのセクションまたはデバイスを含む。第1のデバイスは、伸縮性不織布の製造中に、または伸縮性不織布の製造の後に、伸縮性不織布に対して、糸、長繊維、メッシュ、または他の適切な非伸縮性要素などの形で、非伸縮性要素2を形成するか、または関連付ける。第2のデバイスは、変換用装置上に搭載されて、不織布の非伸縮性の除去を実行する。
【0032】
本装置の第1のデバイスは、伸縮性不織布のシートまたはロールを作製する装置と関連付けられる。
【0033】
本装置の第2のデバイスは、変換用装置と関連付けられており、変換用装置における加工または分配の間に、(糸、長繊維、またはメッシュなどの)非伸縮性構成材の連続性を破壊することにより、先に付加された非伸縮特性を除去するステップを実行する。非伸縮性構成材の連続性の破壊は、任意の適切なピッチでそれらを切断することにより、変換用装置上で実施されることが可能である。このピッチは、数ミリメートル以下から数センチメートル以上の範囲で変化しうる。切断は、穿孔機、ウォータージェット、電磁放射、化学反応、もしくは融解などの任意の手段またはデバイスを用いて、または当業界で公知の任意の他の適切な手段によって実施されうるが、これらに限定されることはない。
図1
図2
図3