特許第6100252号(P6100252)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6100252異なる治療用途のための熱安定性酸素キャリアを含有する医薬組成物
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6100252
(24)【登録日】2017年3月3日
(45)【発行日】2017年3月22日
(54)【発明の名称】異なる治療用途のための熱安定性酸素キャリアを含有する医薬組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 38/16 20060101AFI20170313BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20170313BHJP
   A61K 31/198 20060101ALI20170313BHJP
【FI】
   A61K37/14
   A61P35/00
   A61K31/198
【請求項の数】7
【全頁数】29
(21)【出願番号】特願2014-520266(P2014-520266)
(86)(22)【出願日】2012年7月11日
(65)【公表番号】特表2014-520850(P2014-520850A)
(43)【公表日】2014年8月25日
(86)【国際出願番号】US2012046130
(87)【国際公開番号】WO2013009790
(87)【国際公開日】20130117
【審査請求日】2015年5月28日
(31)【優先権主張番号】13/179,590
(32)【優先日】2011年7月11日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】513321342
【氏名又は名称】ビリオン キング インターナショナル リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100129643
【弁理士】
【氏名又は名称】皆川 祐一
(74)【代理人】
【識別番号】100138760
【弁理士】
【氏名又は名称】森 智香子
(72)【発明者】
【氏名】ウォン,ビン ロウ
(72)【発明者】
【氏名】クォック,スイ イー
(72)【発明者】
【氏名】ラウ,シエ ハン
【審査官】 石井 裕美子
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第07932356(US,B1)
【文献】 竹村 信行,肝硬変合併肝癌切除時の術前脾摘の有用性,臨床外科,2009年,第64巻第4号,第447-452頁
【文献】 松股 孝,止血剤の使い方,臨床外科,2004年,第59巻第12号,第1403-1408頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 38/00−38/58
A61K 31/198
A61P 35/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
検出不能な濃度の二量体を有する架橋四量体ヘモグロビンを含み、且つ、非ポリマー性で高度に精製され、並びに熱安定性を有する、酸素キャリアを含有する組成物であり、該組成物は、腫瘍の切除術時における、局所貧血の前および再かん流時に、前記哺乳類に投与され、哺乳類の癌性腫瘍再発を減少することおよび/または哺乳類の腫瘍細胞を最小化させるための薬剤の製造に用いられる、組成物の使用方法。
【請求項2】
前記組成物は、約0.2g/kg〜1.2g/kg体重の範囲で前記哺乳類に投与される、請求項1に記載の使用方法。
【請求項3】
前記癌性腫瘍および前記腫瘍細胞が、肝臓または鼻咽の腫瘍および細胞である、請求項1に記載の使用方法。
【請求項4】
前記癌性腫瘍および前記腫瘍細胞が低酸素である、請求項1に記載の使用方法。
【請求項5】
前記架橋四量体ヘモグロビンは、分子量が60〜70kDaであり、0.2〜0.4%の濃度のN−アセチルシステインを有する、請求項1に記載の使用方法。
【請求項6】
前記組成物は、血管収縮不純物およびタンパク質不純物を含まず、かつ非発熱性、内毒素フリー、リン脂質フリー、ストローマフリーのものであり、更に、該組成物のメトヘモグロビンレベルが5%未満である、請求項5に記載の使用方法。
【請求項7】
検出不能な濃度の二量体を有する架橋四量体ヘモグロビンを含み、且つ、非ポリマー性で高度に精製され、並びに熱安定性を有する、酸素キャリアを含有する組成物であり、該組成物は、腫瘍の切除術時における、局所貧血の前および再かん流時に、前記腫瘍に投与され、腫瘍の寸法を減少するための薬剤の製造に用いられる、組成物の使用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
【0002】
本願は、2011年7月11日に出願された特許第8,048,856号である米国一部継続特許出願第13/179,590号の優先権を主張する国際特許出願であり、当該出願の開示内容は、引用としてここに併せられる。
【0003】
(著作権の通告/許諾)
【0004】
この特許書類の開示の一部には、著作権の保護を受ける事項が含まれる。著作権者は、何人かが、特許書類または特許情報開示が特許商標庁(Patent and Trademark Office)の特許ファイルまたは記録に開示された時にファクシミリにより再生することには反対しないが、それ以外の如何なる場合にも全ての著作権を維持するものである。以下の告知は、以下の記載および添付の図面におけるプロセス、実験およびデータに適用される:2010、ビリオン・キング・インターナショナル・リミテッドが全ての権利を保有する。
【0005】
本発明は、熱安定性酸素キャリアを含有する医薬組成物の調製方法および当該方法により調製された組成物に関する。また、本発明は、熱安定性酸素キャリアを含有する医薬組成物を、ヒトおよび他の動物の癌治療、酸素欠乏障害および臓器保存の用途に適用することに関する。
【背景技術】
【0006】
ヘモグロビンは、殆どの脊椎動物において、血管系と組織との間のガス交換のために重要な役割を果たす。それは、血液循環を介して呼吸系から体細胞へ酸素を運搬し、また代謝老廃物である二酸化炭素を、体細胞から呼吸系へ運び去って、呼吸系で二酸化炭素が吐出されることを担当している。ヘモグロビンはこの酸素供給の特徴を有しているので、エクスビボで安定化でき且つインビボで使用できれば、強力な酸素供給体として使用することができる。
【0007】
天然に存在するヘモグロビンは四量体であり、赤血球に存在する時、一般的に安定である。しかし、天然に存在するヘモグロビンが赤血球から取り出されると、それは血漿中で不安定になり、二つのα−β二量体に分裂する。これらの二量体の分子量は各々、約32kDaである。これらの二量体は、腎臓を通して濾過および排泄される時に、かなり大きな腎障害を引き起こす。また、四量体結合の分解は、機能性ヘモグロビンの循環中の持続可能性に悪影響を与える。
【0008】
この問題を解決するために、ヘモグロビン加工における最近の発展は、四量体内での分子内結合、並びに四量体間での分子間結合を形成してポリマーヘモグロビンを形成するために、種々の架橋技術に取り込んできた。従来技術は、ヘモグロビンの循環半減期を増大させるためには、ポリマーヘモグロビンが好ましい形態であることを教示している。しかし、本発明者が確認したように、ポリマーヘモグロビンは血液循環において、より容易にメトヘモグロビン(met−hemoglobin)に変換される。メトヘモグロビンは、酸素と結合することができないので、組織に酸素供給することができない。従って、従来技術に開示されている、ポリマーヘモグロビンを生じるための架橋には問題がある。当該技術においては、ポリマーヘモグロビンの同時形成を伴うことなく安定な四量体を形成するための、分子内架橋を可能にする技術が必要とされている。
【0009】
ヘモグロビンを安定化させようとした従来技術に伴う更なる問題には、許容できない高パーセンテージの二量体ユニットを含んだ四量体ヘモグロビンの産生が含まれる。二量体の存在により、ヘモグロビン組成物は、理想的に哺乳類へ投与されないものとなる。ヘモグロビンの二量体形態は、哺乳類の身体において重篤な腎障害を生じる可能性がある。この腎障害は、死亡の原因になり得るほどに十分に重篤である。従って、この技術には、最終製品中に二量体形態が検出され得ない安定な四量体ヘモグロビンを製造することが必要とされている。
【0010】
従来技術のヘモグロビン製品に伴うもう一つの問題は、投与後の突然の血圧上昇である。これまでに、旧世代のヘモグロビンに基づく酸素キャリアからの血管収縮事件が記録されている。例えば、Hemopure製品(Biopure社、USA)(登録商標)は、文献(Katz et al.,2010)に開示されたように、高い平均動脈圧(124±9mmHg)、または基底ライン(96±10mmHg)より30%高い平均動脈圧を生じた。この問題を解決するための以前の試みはスルフヒドリル剤に依存しており、当該試薬はヘモグロビンスルフヒドリル基と反応して、内皮由来の弛緩因子がスルフヒドリル基と結合するのを防止すると言われている。しかし、スルフヒドリル処理を使用することは、処理工程を増やし、追加のコストを生じ、また後でヘモグロビン組成物から除去しなければならない不純物をもたらす。従って、当該技術では、哺乳類に適用したときに血管収縮および高血圧を生じないヘモグロビンを調製するための方法が必要とされている。
【0011】
安定なヘモグロビンを作製しようとした従来技術に伴う更なる問題には、タンパク質不純物の存在も含まれ、該タンパク質不純物としては、例えば、哺乳類において、アレルギー効果を生じ得る免疫グロブリンGが挙げられる。従って、当該技術では、タンパク質不純物の存在しない安定な四量体ヘモグロビンを製造できる方法が必要とされている。
【0012】
上記問題に加えて、当該技術では、二量体とリン脂質を含まず、且つ工業的規模で製造できる安定化された四量体ヘモグロビンが必要とされている。
【発明の概要】
【0013】
本発明は、重篤な腎障害、血管への有害な影響および重篤な副作用(死亡を含む)を起こすことなく、且つ哺乳類に適用する、非ポリマー性且つ熱安定性の精製された架橋四量体ヘモグロビンを加工するための方法を提供する。本発明は、二量体形態のヘモグロビン、未架橋四量体ヘモグロビン、リン脂質、並びにタンパク質不純物を除去する。また、本発明は、(1)正確且つ制御された低張溶解のための瞬間細胞溶解装置と;(2)フロースルーカラムクロマトグラフィー(flowthrough column chromatography)と;(3)腎障害、血管の有害な影響および他の毒性反応を回避できるように、精製プロセスにおいてヘモグロビン溶液を熱処理して望ましくない非安定性ヘモグロビン二量体を除去し、且つタンパク質不純物(例えば免疫グロブリンG)を除去するための高温短時間(high temperature short time,HTST)装置と;(4)製品中への酸素の侵入を回避するための気密注入バッグ包装とを使用する。
【0014】
当該方法は、少なくとも赤血球および血漿を含む哺乳類の全血の出発物質を含んでいる。赤血球と哺乳類全血における血漿とを分離し、続いて濾過することにより濾過された赤血球画分を得る。濾過された赤血球画分は、血漿タンパク質不純物を除去するために洗浄される。洗浄された赤血球は、流量が50〜1000リットル/時の瞬間細胞溶解装置で、白血球を溶解することなく赤血球を溶解するために十分な時間をかけて、制御された低張溶解により破壊される。濾過は、溶解物から廃棄残余分の少なくとも一部を除去するように行われる。溶解物から、第一のヘモグロビン溶液が抽出される。
【0015】
第一の限外濾過プロセスは、第一のヘモグロビン溶液から四量体ヘモグロビンより高い分子量を有する不純物を除去し、更に何らかのウイルスおよび残留廃棄残余分を除去して第二のヘモグロビン溶液を得るように構成された、限外濾過フィルタを使用して行われる。第二のヘモグロビン溶液に対してフロースルーカラムクロマトグラフィーを行い、タンパク質不純物、二量体ヘモグロビンおよびリン脂質を除去して、リン脂質を含まないヘモグロビン溶液を形成する。リン脂質を含まないヘモグロビン溶液に対して、不純物を除去するように構成されたフィルタを使用して、第二の限外濾過プロセスを行い、濃縮精製されたリン脂質を含まないヘモグロビン溶液を得る。
【0016】
少なくとも精製されたヘモグロビンのα−αサブユニットは、ポリマーヘモグロビンの形成を伴うことなく熱安定性の架橋ヘモグロビンを形成するように、フマル酸ビス−3,5−ジブロモサリチルにより架橋され、得られる非ポリマー性架橋四量体ヘモグロビンの分子量は60−70kDaになる。ここで使用される「非ポリマー性(nonpolymeric)」との表現は、他のヘモグロビン分子または何れか他の非ヘモグロビン分子(例えば、PEG)と分子間架橋されていない四量体ヘモグロビンを意味する。リン酸緩衝生理食塩水(phosphate buffered saline,PBS)、乳酸リンゲル溶液(lactated Ringer’s solution)、酢酸リンゲル溶液またはトリス緩衝液のような適切な生理学的緩衝液が、架橋四量体ヘモグロビンに交換される。如何なる残留化学薬品も、接線流濾過(tangential−flow filtration)を使用して除去される。
【0017】
このプロセスに従って、架橋ヘモグロビンを熱処理して、全ての残留非架橋四量体ヘモグロビンおよび全ての非安定化ヘモグロビン(例えば二量体形態のヘモグロビン)、並びに全ての他のタンパク質不純物を除去する。熱処理に先立って、必要に応じて、メトヘモグロビンを形成することを防止するために、N−アセチルシステインを、約0.2%の濃度で架橋四量体ヘモグロビンに添加する。熱処理および冷卻の直後に、メトヘモグロビンの形成をさらに防止するために、N−アセチルシステインを、約0.2%〜0.4%の濃度で添加する。熱処理は、約70℃〜95℃において30秒間〜3時間の高温短時間処理を行い、続いて25℃までに冷却されることが好ましい。遠心分離または濾過装置により、熱処理の間に形成される何らかの沈殿を除去した後、透明な溶液が形成される。
【0018】
次いで、二量体フリー、リン脂質フリー、タンパク質不純物フリーで、且つ熱安定性の非ポリマー性架橋四量体ヘモグロビンを医薬的に許容可能なキャリアに添加する。
【0019】
その後、熱安定性の架橋四量体ヘモグロビンは製剤され、注文品の気密ポリエチレン、エチレン−ビニル−アセテート、エチレン−ビニルアルコール(PE、EVA、EVOH)製注入バッグの中に包装される。当該包装は、不活性なメトヘモグロビンの形成をもたらす酸素汚染を防止する。
【0020】
前記方法により製造される熱安定性の架橋四量体ヘモグロビンは、白血病、結腸直腸癌、肺癌、乳癌、肝臓癌、上咽頭癌および食道癌のような種々の癌の治療のために使用される。癌細胞を破壊するメカニズムは、低酸素の条件で腫瘍の酸素付加を改善することにより、放射線および化学療法剤に対する感受性を増大させることである。更に、熱安定性の架橋四量体ヘモグロビンは、移植の際の臓器組織を保存するため、またはインビボで(例えば酸素欠乏心臓において)の酸素供給不足の状況に心臟を保存するためにも使用される。
【0021】
また、前記方法により製造される熱安定性の架橋四量体ヘモグロビンは、癌性腫瘍の再発を減少することおよび腫瘍細胞を最小化させるために使用される。当該ヘモグロビンは、腫瘍除去手術における局所貧血の前と腫瘍を除去する時の血液供給の再建(再かん流)の間に投与される。当該ヘモグロビンは、癌性組織の酸素付加の増加および腫瘍の寸法の減小のためにも使用される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1図1は、本発明の方法の概要を描いたフローチャートである。
図2図2は、本発明の方法に使用される瞬間細胞溶解装置を模式的に描く。
図3図3は、(a)非熱処理架橋四量体ヘモグロビン、および(b)90℃で45秒間〜2分間、または80℃で30分間の熱処理を受けた熱安定性の架橋四量体ヘモグロビンの両方に対する高速液体クロマトグラフィー分析を描く。
図4図4は、熱安定性の架橋四量体ヘモグロビンに対する電子スプレーイオン化質量分光測定(electrospray ionization mass spectrometry,ESI−MS)分析を描く。
図5図5は、(a)精製されたヘモグロビン溶液および(b)熱安定性の架橋四量体ヘモグロビンに対する円二色性分光法分析を示す。
図6図6は、正常組織における酸素付加の改善を示す。0.2g/kgの熱安定性の架橋四量体ヘモグロビン溶液の注入は、(A)血漿ヘモグロビンの濃度および(B)筋肉への酸素供給の顕著な増大をもたらす。血漿ヘモグロビンレベルの増加と比較して、酸素付加の顕著な増大が長時間に亘ることが観察される。
図7図7は、低酸素腫瘍組織における酸素の改善を示す。0.2g/kgの熱安定性架橋四量体ヘモグロビン溶液の注入は、頭部および頸部の扁平上皮細胞癌(head and neck squamous cell carcinoma,HNSCC)異種移植への酸素供給を顕著に増大させた。
図8図8は、(A)上咽頭癌(NPC)および(B)肝臓腫瘍の齧歯類モデルにおける部分的な腫瘍縮小を示す。
図9図9は、熱安定性の架橋四量体ヘモグロビンで治療した後の、重篤な出血性ショックのラットモデルにおける平均動脈圧変化を説明する。
図10図10は、フロースルーカラムクロマトグラフィーについての溶出プロファイルである。ヘモグロビン溶液はフロースルー画分中にある。
図11図11は、工業的規模での動作のために使用される限外濾過を備えるフロースルーCMカラムクロマトグラフィーシステムを模式的に描く。
図12図12は、HTST熱処理加工工程のために使用される装置の模式的な描写である。
図13図13は、HTST処理装置における温度プロファイル、および85℃と90℃での本発明のシステムにおける非安定化四量体(二量体)を除去するために採用された時間を説明する。
図14図14は、図12のHTST処理装置において、85℃および90℃のシステムにおけるメトヘモグロビンの形成レートを説明する。
図15図15は、本発明の熱安定性の架橋四量体ヘモグロビンに用いられる注入バッグの模式的な描写である。
図16図16は、肝臓切除術の間に手術およびヘモグロビン製品の投与プロセスを概括する計画図を示す。
図17図17は、肝臓切除術および局所貧血/再かん流プロセスの後、IR損傷群のラットで誘発した肝内肝臓癌の再発および転移並びに遠隔肺転移の代表的な実施例、および本発明の熱安定性の架橋四量体ヘモグロビンによる予防を示す。
図18図18は、肝臓切除術およびIR損傷プロセスの後の4週間における実験群および対照群の組織学的検査を示す。
図19A図19Aは、肝臓切除術およびIR損傷プロセスの後、IR損傷群(対照群)のラットおよび本発明の熱安定性の架橋四量体ヘモグロビンで治療したラット(Hb治療群)に見られた再発肝臓腫瘍の体積(cm)を示す。
図19B図19Bは、肝臓切除術およびIRプロセスの後、IR損傷ラット(対照群)および本発明の熱安定性の架橋四量体ヘモグロビンで治療したラット(Hb群)の肝臓再発率(左)および平均再発腫瘍の寸法(右)を示す。
図20図20は、肝臓切除術および局所貧血/再かん流プロセスの後、IR損傷群のラット(対照群:C10およびC13)および本発明の熱安定性の架橋四量体ヘモグロビンで治療したラット(Hb治療群:Y9、Y10およびY11)で誘発した肝内肝臓癌の再発および転移並びに遠隔肺転移の代表的な実施例を示す。
図21図21は、全体の肝臓手術および再かん流において、本発明のヘモグロビン製品またはRA緩衝液(対照群)を1回目投与する肝臓由来の酸素分圧(mmHg)の代表的な実施例を示す。
図22図22は、肝臓手術後28日間に本発明のヘモグロビン製品で治療するか治療しない場合におけるラットの周辺血液中の循環内皮前駆細胞(endothelial progenitor cell,EPC)レベルの間の対比を示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
ヘモグロビンは、哺乳類および他の動物の血液の赤血球における、鉄を含んだ酸素輸送タンパク質である。ヘモグロビンは、タンパク質の三次構造と四次構造の両方の特徴を示す。ヘモグロビン中のアミノ酸の殆どは、短い非螺旋セグメントにより接続されたαヘリックスを形成する。水素結合は、ヘモグロビンの内側の螺旋部分を安定させて、分子内でのこれらの螺旋部分に向く引力を生じることにより、各ポリペプチド鎖を特定の形状に折畳む。ヘモグロビン分子は、四つの球状タンパク質サブユニットから組み立てられる。各サブユニットは、埋め込まれたヘム基(heme group)と共に、「ミオグロブリン畳み込み(myoglobin fold)」配列で接続された一組のαヘリックス構造セグメントに配置されているポリペプチド鎖で構成されている。
【0024】
ヘム基は、ポルフィリンと呼ばれるヘテロ環に収容される鉄原子からなっている。鉄原子は、一つの面内にある環の中心において、四つの全ての窒素原子に均等に結合している。次いで、酸素はポルフィリン環の平面に垂直する鉄中心に結合できる。従って、単一のヘモグロビン分子は、四つの酸素分子と結合する能力を有している。
【0025】
成人で最も普通のタイプのヘモグロビンは、ヘモグロビンAと呼ばれる四量体であり、α2β2と称する非共有結合で結合された二つのαサブユニットと二つのβサブユニットとからなり、各サブユニットは、それぞれ、141個および146個のアミノ酸残基からなる。αサブユニットおよびβサブユニットの寸法および構造は、互に非常に類似している。四量体の約65kDaの合計分子量について、各サブユニットは約16kDaの分子量を有している。四つのポリペプチド鎖は、塩橋、水素結合および疎水性相互作用によって相互に結合される。ウシヘモグロビンの構造は、ヒトヘモグロビンに類似している(α鎖で90.14%の同一性;β鎖で84.35%の同一性。)。相違点は、ウシヘモグロビンにおける二つのスルフヒドリル基がβ Cys 93に位置するのに対して、ヒトヘモグロビンにおけるスルフヒドリル基はそれぞれα Cys 104、β Cys 93およびβ Cys 112に位置することである。
【0026】
赤血球の内部に天然に存在するヘモグロビンにおいて、α鎖とその対応するβ鎖との会合は非常に強く、生理学的条件下では解離しない。しかし、赤血球外では、一つのαβ二量体ともう一つのαβ二量体との会合は非常に弱い。結合は、各々が約32kDaの二つのαβ二量体に分離する傾向を有している。これらの望ましくない二量体は、腎臓で濾過および排泄されるためには十分に小さく、その結果として潜在的な腎障害をもたらし、実質的に血管内滞在時間を減少する。
【0027】
従って、有効性と安全性のために、赤血球外で使用される全てのヘモグロビンを安定化させることが必要とされる。以下、安定化されたヘモグロビンを製造するために使用される方法を概述する。本発明の方法の概観が、図1のフローチャートに提示されている。
【0028】
最初に、赤血球由来ヘモグロビン源としての全血源を選択する。ヒト、ウシ、ブタ、ウマおよびイヌといった哺乳類の全血が選択されるが、これらに限定されない。赤血球を血漿から分離し、濾過し、洗浄して、血漿タンパク質不純物を除去する。
【0029】
赤血球からヘモグロビンを放出させるためには、細胞膜を溶解する。赤血球を溶解させるために種々の技術を使用できるが、本発明では、工業的規模の生産に適した容量で正確に制御できるように、低張条件下での溶解を使用する。このために、図2に見られる瞬間細胞溶解装置が、赤血球を溶解する時に使用される。低張溶解により、ヘモグロビンおよび廃棄残余分を含む溶解物の溶液が形成される。工業的規模での製造を可能にするために、当該溶解は、白血球または他の細胞を溶解することなく、赤血球だけを溶解させるように注意深く制御される。一つの実施形態において、瞬間細胞溶解装置のサイズは、2〜30秒間または赤血球が十分に溶解された時間、好ましくは30秒間で赤血球が装置を横切るように選択される。瞬間細胞溶解装置は、スタテックミキサーを含む。脱イオンされた蒸留水が低張溶液として使用される。もちろん、異なる食塩水濃度を有する他の低張溶液を使用すれば、赤血球を溶解させるための時間が異なることをもたらすことが分かるはずである。制御された溶解プロセスは、白血球または細胞物質を溶解せずに赤血球のみを溶解するので、毒性のタンパク質、リン脂質または白血球および他の細胞物質由来のDNAの放出を最小化する。高張溶液は、30秒後に、即ち、赤血球を含有する溶液が瞬間細胞溶解装置のスタテックミキサー部分を横切った後、直ちに添加される。得られたヘモグロビンは、他の溶解技術を使用して得たヘモグロビンよりも高い純度、並びに低レベルの汚染物(例えば、望ましくないDNAおよびリン脂質)を有する。ヘモグロビン溶液において、白血球由来の望ましくない核酸およびリン脂質不純物は、それぞれポリメラーゼ連鎖反応(検出限界=64pg)および高速液体クロマトグラフィー(HPLC、検出限界=1μg/ml)法によっても、検出されない。
【0030】
二つの限外濾過プロセスが実行される。一つは、フロースルーカラムクロマトグラフィーの前に、ヘモグロビンよりも大きい分子量を有する不純物を除去し、もう一つは、フロースルーカラムクロマトグラフィーの後に、ヘモグロビンよりも小さい分子量を有する不純物を除去する。後者の限外濾過プロセスにより、ヘモグロビンを濃縮する。幾つかの実施形態においては、第一の限外濾過において100kDaのフィルタが使用されるのに対して、第二の限外濾過において30kDaのフィルタが使用される。
【0031】
精製されたヘモグロビン中のタンパク質不純物、例えば、免疫グロブリンG、アルブミンおよび炭酸脱水酵素を除去するためには、フロースルーカラムクロマトグラフィーが使用される。幾つかの実施形態において、カラムクロマトグラフィーは、DEAEカラム、CMカラム、ヒドロキシアパタイトカラム等のような市販の一つのイオン交換カラムまたはこれらのカラムの組合せを使用することにより行われる。カラムクロマトグラフィーのpHは、典型的には6〜8.5である。一つの実施形態において、フロースルーCMカラムクロマトグラフィー工程では、pH8.0でタンパク質不純物を除去する。カラムクロマトグラフィーから溶出した後、サンプルに残存しているタンパク質不純物およびリン脂質を測定するために、酵素結合免疫吸着アッセイ(enzyme−linked immunosorbent assay,ELISA)を行う。この独特なフロースルーカラムクロマトグラフィー分離は、工業的規模での製造に、連続的な分離スキームを実行することができる。ELISAの結果は、溶出したヘモグロビン中に、これらの不純物の量が実質的には低いことを示している(免疫グロブリンG:44.3ng/ml;アルブミン:20.37ng/ml;炭酸脱水酵素:81.2μg/ml)。異なるpHを有する各種類のカラムによりタンパク質不純物を除去された結果は、下記の表1に示される。
【0032】
【表1】
【0033】
カラムクロマトグラフィープロセスに続き、ヘモグロビンは、フマル酸ビス−3,5−ジブロモサリチル(DBSF)による架橋を受ける。ポリマーヘモグロビンの形成を防止するために、当該反応は、脱酸素化された環境(好ましくは0.1ppm未満の溶存酸素レベル)、ヘモグロビンとDBSFとのモル比が1:2.5〜1:4.0、周囲温度(15〜25℃)、3〜16時間、好ましいpHは約8〜9とのような雰囲気に丁寧に制御し、そして、得られた架橋ヘモグロビンは60〜70kDaの分子量を有する四量体ヘモグロビンであり、且つポリマーヘモグロビンが存在しない。DBSF反応の収率は高く(>99%)、最終生成物における二量体の濃度が低い。必要に応じて、本発明方法は、種々の従来技術の方法に使用されているような、架橋前のヘモグロビンと反応するスルフヒドリル処理試薬(例えば、ヨードアセタミド等)を必要としない。
【0034】
この時、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)(一つの生理学的緩衝液である。)を架橋溶液に変換してと共に、接線流濾過により全ての残留化学薬品を除去する。
【0035】
脱酸素条件下でDBSFによりヘモグロビンを架橋させるとのプロセスに続き、本発明は、脱酸素環境中の架橋された四量体ヘモグロビン溶液に用いる熱処理工程を提供する。熱処理に先立って、必要に応じて、メトヘモグロビン(不活性ヘモグロビン)の形成を防止するために、N−アセチルシステインを添加する。熱処理工程の後、低いレベルのメトヘモグロビンを維持するために溶液を冷却し、またN−アセチルシステインを直ちに添加する。熱処理の前後にN−アセチルシステインを添加すると、熱処理の前に添加される量が約0.2%であり、熱処理の後に添加される量が約0.2%〜0.4%である。しかし、N−アセチルシステインが熱処理の後だけに添加されると、添加される量が0.4%である。
【0036】
幾つかの実施形態において、架橋四量体ヘモグロビン溶液は脱酸素環境(0.1ppm未満の溶存酸素レベル)において、50℃〜95℃の温度範囲で0.5分間〜10時間加熱される。幾つかの実施形態において、架橋四量体ヘモグロビン溶液は、70℃〜95℃の温度範囲で30秒間〜3時間加熱される。幾つかの好ましい実施形態において、架橋四量体ヘモグロビン溶液は、80℃で30分間加熱される。さらに、他の好ましい実施形態において、連結されたヘモグロビン溶液は、30秒間〜3分間90℃まで加熱され、次いで、約15〜30秒間約25℃まで迅速に冷却され、上記で述べたようにしてN−アセチルシステインが添加される。非常に小量、例えば3%未満のメトヘモグロビンが生じる。N−アセチルシステインを使用しない場合に、形成されるメトヘモグロビンの量が約16%であり、これは医薬使用に許容できないほど高いパーセンテージである。
【0037】
その後、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、電子スプレーイオン化質量分光測定(ESI−MS)、円偏光二色性(CD)分光法、およびp50を測定するためのヘモックス(Hemox)分析装置を使用して、熱安定性の架橋四量体ヘモグロビンが分析および特徴付けされる。図3は、ウシ血液を起源とするヘモグロビンの場合、90℃で45秒間〜2分間、または80℃で30分間の熱処理を受けたヘモグロビンについて、HPLCシステム(検出限界:2.6μg/mlまたは0.043%)では二量体形態のヘモグロビンが検出不能であることを示している。架橋非ポリマー性四量体ヘモグロビンは、80℃または90℃において、ある期間は熱的に安定であることが分かる。熱処理(高温短時間、HTST)工程は、天然の未反応四量体形態および二量体形態のヘモグロビンを変性させるための強力な工程である。
【0038】
このHTST工程の結果を分析するために、HPLC分析方法を使用して、この熱処理工程後の二量体の量を測定する。HPLC分析の移動相は、二量体(非安定化四量体)および熱安定性の架橋四量体ヘモグロビンを分離できる塩化マグネシウム(0.75M)を含んでいる。二量体へのヘモグロビンの解離を促進するためには、塩化マグネシウムは、同じイオン強度の塩化ナトリウムよりも約30倍効果的である。熱処理工程は、架橋四量体ヘモグロビン中の望ましくないタンパク質不純物を顕著に除去させるための変性工程としても働く(免疫グロブリンGにおいて検出不能;アルブミンにおいて検出不能;炭酸脱水酵素において99.99%減少)。サンプル中のタンパク質不純物を測定するために、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)が行われる。従って、精製された熱安定性の架橋四量体ヘモグロビン溶液は、検出不能なレベルの二量体(検出限界未満:0.043%)および免疫グロブリンG、並びに極めて小量のアルブミン(0.02μg/ml)および炭酸脱水酵素(0.014μg/ml)を有している。表2は、HTST熱処理工程によるタンパク質不純物および二量体の除去に関する実験結果を示す。このHTST加熱工程は、四量体および二量体からの熱安定性架橋四量体の選択的分離を可能にする。
【0039】
【表2】
【0040】
脱酸素条件下での架橋ヘモグロビンに対する熱処理工程の後に、熱安定性の架橋四量体ヘモグロビンは、医薬の製剤化および包装のための準備ができている。本発明は、脱酸素環境における熱安定性の架橋四量体ヘモグロビン溶液の気密包装工程を描いている。本発明における熱安定性の架橋四量体ヘモグロビンは、脱酸素条件下において2年以上安定である。
【0041】
本発明において、酸素キャリア含有医薬組成物は、主に静脈注射に用いられる。伝統的には、従来の製品は、高酸素透過性を有する公知のPVC血液バッグまたはステリコン(Stericon)血液バッグを用い、その結果、最終的に製品の寿命が縮小されてしまう。その原因は、当該製品は、酸素付加の条件下で速く不活性なメトヘモグロビン(数日以内)になるからである。
【0042】
本発明に用いる包装は、熱安定性の架橋四量体ヘモグロビンを2年以上安定させる。ガス透過性を最小限にして不活性なメトヘモグロビンの形成を回避するために、EVA/EVOH材料の多層包装が使用される。本発明の精製された熱安定性の架橋四量体ヘモグロビンとともに使用するために設計された100ml注入バッグは、厚さが0.4mmの5層EVA/EVOHラミネート材料で製造され、これは、0.006〜0.132cm/(100平方インチ・24時間・室温気圧)の酸素透過性を有する。この材料は、クラスVIのプラスチック(USP<88>に定義されている)であり、これはインビボ生物学的反応性試験と物理化学的試験(Physico−Chemical Test)に適合し、また静脈注射目的の注入バッグを製造するために適している。この一次バッグは、それの不安定性を生じ且つ最終にその治療特性に影響する長期間の酸素露出から、熱安定性の架橋四量体ヘモグロビン溶液を保護するには、特に有用である。
【0043】
血液製品の二次保護のために、潜在的な空気漏れに対して保護し、且つ製品を脱酸素状態に維持するアルミニウム製の上包装を使用することが知られている。しかし、アルミニウム製の上包装には潜在的な針穴が存在し、その気密性を損ない、製品が不安定になる。従って、本発明においては、二次包装として、酸素付加及び光露出を防止するアルミニウム製の上包装パウチを用いる。当該上包装パウチの組成には、0.012mmのポリエチレンテレフタレート(polyethylene terephthalate,PET)、0.007mmのアルミニウム(Al)、0.015mmのナイロン(nylon,NY)、および0.1mmのポリエチレン(polyethylene,PE)が含まれている。上包装フィルムは、0.14mmの厚さおよび0.006cm/(100平方インチ・24時間・室温気圧)の酸素透過率を有している。この二次包装は、ヘモグロビンの安定時間を長くして、製品の貯蔵寿命を延長する。
【0044】
本発明のヘモグロビンは、ESI−MSを含む種々の技術によって分析される。ESI−MSは、非常に大きな分子の分析を可能にする。それは、タンパク質をイオン化して、次いでイオン化されたタンパク質を質量/電荷比に基づいて分離することにより、高分子量化合物を分析するイオン化技術である。従って、分子量およびタンパク質相互作用を正確に測定することができる。図4において、ESI−MS分析結果は、熱安定性の架橋四量体ヘモグロビンの寸法が65kDa(非ポリマーヘモグロビン四量体)であることを示している。190〜240nmの遠紫外CDスペクトルは、ヘモグロビンにおけるグロブリン部分の二次構造を明らかにしている。図5には、精製されたヘモグロビン溶液および熱安定性の架橋四量体ヘモグロビンのスペクトルの一致性から、90℃での熱処理した後でも、ヘモグロビン鎖が適当に折り畳まれていることが明らかである。CDの結果は、熱安定性の架橋四量体ヘモグロビンが、約42%のαヘリックス、38%のβシート、2.5%のβターン、および16%のランダムコイルを有することを示している。それは更に、架橋四量体ヘモグロビンが熱的に安定であることを確認している。
【0045】
本発明における方法は、熱安定性の架橋四量体ヘモグロビンの大規模の工業的製造に適用する。加えて、熱安定性の架橋四量体ヘモグロビンと医薬キャリア(例えば、カプセル形態における水、生理学的緩衝液)との組合せは、哺乳類での使用に適している。
【0046】
本発明は更に、組織の酸素付加の改善、癌治療、酸素欠乏症(例えば、出血性ショック)、および低酸素レベル環境下での心臟保存(例えば、心臟移植)における、酸素キャリアを含有する医薬組成物の使用を開示している。用量は、10mL/(時・kg体重)未満の注入速度で、約0.2〜1.3g/kgの濃度範囲を有するように選択される。
【0047】
癌治療における使用について、本発明の酸素キャリアを含有する医薬組成物は組織感性酸素化剤として、腫瘍組織における酸素付加を改善することにより、化学感受性および放射線感受性を高める。
【0048】
加えて、本発明において、熱安定性の架橋四量体ヘモグロビンは、正常組織(図6)、極度の低酸素の腫瘍(図7)、ヒト上咽頭癌(CNE2細胞系を使用する)における酸素付加を改善する能力が示される。ヒトCNE2異種移植の組織トラックに従った代表的な酸素プロファイルを図7に示される。腫瘍塊中の酸素分圧(pO)は、微小位置決めシステム(DTI Limited)に結合された光ファイバー酸素センサ(Oxford Optronix Limited)によって直接にモニターされる。静脈に、0.2g/kgの熱安定性の架橋四量体ヘモグロビンを注射した後、pO値の中央値は、15分間以内に基底ラインから相対的平均酸素分圧の約2倍まで上昇して、6時間までに達する。更に、平均酸素レベルは、注入後24〜48時間でも、基底ライン値より25%〜30%高いレベルを維持する。本発明で調製された酸素キャリア含有医薬組成物に比較すると、市販される製品または現存の技術は、そのような高い効率を示さない。 腫瘍組織の酸素付加について、ヒト頭部および頸部における扁平上皮細胞癌(HNSCC)異種移植(FaDu)の代表的な酸素プロファイルが図7に示されている。静脈に、0.2g/kgの熱安定性の架橋四量体ヘモグロビンを注射した後、6.5倍および5倍を超える平均pO2の顕著な増大が、それぞれ3時間および6時間の時点で観察される(図7)。
【0049】
癌治療における応用について、本発明の酸素キャリア含有医薬組成物は組織酸素付加剤として、腫瘍組織における酸素付加を改善することにより、化学療法感受性および放射線感受性を高める。X線照射と熱安定性の架橋四量体ヘモグロビンの組合せにより、腫瘍の増殖は遅延される。図8Aにおいて、代表的な曲線は、上咽頭癌の齧歯類モデルにおける腫瘍の顕著な縮小を示している。CNE2異種移植を有するヌードマウスを、X線の単独(2Gy)または熱安定性の架橋四量体ヘモグロビンとの組合せ(2Gy+Hb)で治療する。1.2g/kgの熱安定性の架橋四量体ヘモグロビンは、X線照射の約3〜6時間前にマウスに静脈注射され、上咽頭癌異種移植の一部が縮小する。
【0050】
一つの実施形態においては、化学療法剤と組み合わせて当該組成物を注入した後に、顕著な肝臓腫瘍の縮小が観察される。図8Bにおいて、代表的なチャートは、ラットの正所性肝臓癌モデルにおいて腫瘍の顕著な縮小を示している。肝臓腫瘍の正所移植片を有するバッファローラット(Buffalo Rat)(CRL1601細胞系)を、3mg/kgのシスプラチン(cisplatin)単独で、または0.4g/kgの熱安定性の架橋四量体ヘモグロビンとの組合せ(シスプラチン+Hb)で治療する。シスプラチン注射の前に熱安定性の架橋四量体ヘモグロビンを投与することは、肝臓腫瘍の一部が縮小する。
【0051】
酸素欠乏障害の治療および心臓保存に用いることについて、本発明の酸素キャリア含有医薬組成物は、標的器官に酸素を提供する代替血液として働く。
【0052】
0.5g/kgの熱安定性の架橋四量体ヘモグロビンで治療した後の、重篤な出血性ショックのラットモデルの平均動脈圧変化が図9に示されている。重篤な出血性ショックのラットモデルでは、熱安定性の架橋四量体ヘモグロビンによる治療後に、平均動脈圧は安全且つ安定なレベルに復帰し、基底ラインまたはその近傍に維持される。熱安定性の架橋四量体ヘモグロビンによる治療後に平均動脈圧が正常に戻るために必要とされる時間は、正の対照として働くラットの自己血液を投与する場合よりも短い。この結果は、熱安定性の架橋四量体ヘモグロビンの注入後に血管収縮事象が起こらないことを示している。
【実施例】
【0053】
次の例は、如何なる意味でも本発明の範囲を限定することを意図せず、本発明の特定の態様を説明することにより提供される。
【0054】
(実施例1)
【0055】
プロセスの概観
【0056】
図1に、本発明の方法の概略フローチャートが示される。ウシ全血を、抗凝固剤としての3.8%(w/v)のクエン酸三ナトリウム溶液を含む閉じた滅菌容器/バッグの中に採取する。次いで、直ちに血液をクエン酸三ナトリウム溶液と十分に混合させ、血液の凝固を阻止する。アフェレーシス(apheresis)機構により、血漿および他の小さい血液細胞から赤血球(RBC)を単離して回収する。そして、ガンマ線で滅菌された使い捨ての遠心分離ボウルを有する「細胞洗浄機」を使用する。RBCは等容量の0.9%(w/v塩化ナトリウム)食塩水で洗浄される。
【0057】
RBC細胞膜に対して低張性ショックを処置することにより、洗浄されたRBCを溶解してヘモグロビン内容物を放出させる。RBC溶解装置に用いられる特殊化された図2に示す瞬間細胞溶解装置が、この目的によって使用される。RBCが溶解された後、100kDaの膜を使用した接線流限外濾過により、ヘモグロビン分子を他のタンパク質から単離する。濾液中のヘモグロビンを採取して、フロースルーカラムクロマトグラフィーに用いて、30kDa膜により更に12〜14g/dLまで濃縮する。カラムクロマトグラフィーを行い、タンパク質不純物を除去する。
【0058】
最初に、濃縮ヘモグロビン溶液を脱酸素条件下でDBSFと反応させて、熱安定性の架橋四量体ヘモグロビン分子を形成する。次いで、90℃で30秒間〜3分間、脱酸素条件下で熱処理工程を行った後、最終的な製剤化および包装を行う。
【0059】
(実施例2)
【0060】
時間&制御された低張溶解および濾過
【0061】
ウシ全血を新たに採取し、冷却条件下(2〜10℃)で輸送する。細胞洗浄機およびこれに続く0.65μmの濾過を介して、赤血球を血漿から分離する。赤血球(RBC)濾液を0.9%食塩水で洗浄した後、濾液を低張溶解により破壊する。当該低張溶解は、図2に示した瞬間細胞溶解装置を使用して行う。瞬間細胞溶解装置は、細胞溶解を補助するためのスタテックミキサーを含む。ヘモグロビン濃度が制御された(12〜14g/dL)RBC懸濁液を4容量の精製水と混合して、RBC細胞膜に対して低張ショックを発生させる。低張ショックの時間は、望ましくない白血球および血小板の溶解を回避するように制御される。低張溶液は、瞬間細胞溶解装置のスタテックミキサー部分を2〜30秒または赤血球を溶解するのに十分な時間、好ましくは30秒の間に通過する。このショックは、30秒後に溶解液がスタテックミキサーを出るときに、当該溶解液に1/10容量の高張緩衝液を混合することによって停止される。使用した高張溶液は、0.1Mリン酸緩衝液、7.4%NaCl、pH7.4である。図2の瞬間細胞溶解装置は、連続運転で50〜1000L/時、好ましくは少なくとも300L/時の溶解物を処理することができる。
【0062】
RBCが溶解した後、赤血球溶解物を0.22μmのフィルタにより濾過してヘモグロビン溶液を得る。白血球からの望ましくない核酸およびリン脂質不純物は、それぞれポリメラーゼ連鎖反応(検出限界=64pg)およびHPLC法(検出限界=1μg/mL)によっては、ヘモグロビン溶液中において検出されない。ヘモグロビンよりも高い分子量を有する不純物を除去するために、第一の100kDa限外濾過が行われる。次に、ヘモグロビン溶液を更に精製するために、フロースルーカラムクロマトグラフィーが続いて行われる。次いで、ヘモグロビンよりも低分子量の不純物を除去し、また濃縮するために、第二の30kDa限外濾過が行われる。
【0063】
(実施例3)
【0064】
ストローマを含まないヘモグロビン溶液に対するウイルスクリアランスの研究
【0065】
本発明の製品の安全性を示すために、(1)0.65μmダイアフィルトレーション工程および(2)100kDa限外濾過工程のウイルス除去能力がウイルス確認研究によって示される。前記研究は、異なるモデルウイルス(脳心筋炎ウイルス、仮性狂犬病ウイルス、ウシウイルス性下痢ウイルス、およびウシパルボウイルス)を慎重的に用いた前記二つの処理の縮小規模バージョンによって行われた。この研究においては、四つのタイプのウイルスが使用された(表3参照)。これらのウイルスは、それらの生物物理学的および構造的特徴が異なっており、また物理的および化学的な薬剤または治療に対して、相違な抵抗を示す。
【0066】
【表3】
【0067】
確証スキームを以下の表4に簡単に示す。
【0068】
【表4】
【0069】
(1)0.65μmダイアフィルトレーションおよび(2)100kDa限外濾過における4種類のウイルスの対数減少結果の要約を、下記の表5に示す。BVDV、BPV、EMCVおよびPRVの4種類のウイルスの全ては0.65μmダイアフィルトレーションおよび100kDa限外濾過によって効果的に除去された。
【0070】
【表5】
【0071】
(実施例4)
【0072】
フロースルーカラムクロマトグラフィー
【0073】
何れかのタンパク質不純物を更に除去するために、CMカラム(GEヘルスケア社から商業的に入手可能)を使用する。出発緩衝液は20mMの酢酸ナトリウム(pH8.0)であり、溶出緩衝液は20mMの酢酸ナトリウム、2MのNaCl(pH8.0)である。出発緩衝液でCMカラムを平衡化した後、タンパク質サンプルを当該カラムに載せる。未結合のタンパク質不純物を、少なくとも5カラム容量の出発緩衝液で洗浄する。8カラム容量の25%溶出緩衝液(0〜0.5MのNaCl)を使用して溶出を行う。溶出プロファイルを図10に示す。ヘモグロビン溶液はフロースルー画分の中にある。フロースルー画分の純度を、ELIZAにより分析する。その結果を下記の表6に示す。
【0074】
【表6】
【0075】
ヘモグロビン溶液は、pH8のCMカラムクロマトグラフィーからのフロースルーの中にある(溶出液中ではない)ので、連続的な工業的規模の操作にとっては良好なアプローチである。工業的規模の操作のために、第一の限界濾過設備をフロースルーCMカラムクロマトグラフィーシステムに直接接続し、またフロースルー配管を第二の限外濾過設備に接続することができる。工業的プロセスの概略的構成を図11に示す。
【0076】
(実施例5)
【0077】
熱安定性の架橋四量体ヘモグロビンの調製
【0078】
(5a)DBSFを用いた架橋反応
【0079】
脱酸素条件において架橋反応を行う。DBSFをヘモグロビン溶液に加えて、ポリマーヘモグロビンの形成を伴うことなく、架橋された四量体ヘモグロビンを形成する。DBSF安定化法は、ヘモグロビンの四量体形態(65kDa)を安定化させて、腎臓を通して排泄される二量体(32kDa)への解離を防止する。この実施形態において、ヘモグロビンとDBSFとのモル比が1:2.5であり、pHが8.6である。このプロセスは、ヘモグロビンの酸化による第一鉄メトヘモグロビン(生理学的に不活性である)の形成を防止するために、窒素の不活性雰囲気中において、3〜16時間、周囲温度(15〜25℃)で行われる(溶存酸素レベルは0.1ppm未満に維持される)。DBSF反応の完了は、HPLCを使用して残留DBSFを測定することによりモニターされる。DBSF反応の収率は高く、>99%である。
【0080】
(5b)HTST熱処理工程
【0081】
高温短時間(HTST)処理装置が図12に示されている。架橋四量体ヘモグロビンに対して、HTST処理装置を使用した熱処理を行う。この実施例において、熱処理の条件は90℃で30秒間〜3分間、好ましくは45〜60秒間であるが、上記で述べたような他の条件を選択することもでき、それに従って装置を変更することもできる。必要に応じて0.2%のN−アセチルシステインを添加した架橋ヘモグロビン含有溶液を、1.0L/分の流量でHTST処理装置の中にポンプ輸送し(HTST熱交換器の第一の区画は90℃に予熱および維持される)、また、当該装置の第一区画の滞留時間は45〜60秒間であり、次いで当該溶液を同じ流量で、25℃に維持されている熱交換器のもう一つの区画の中へ通す。冷却の所要時間は15〜30秒間である。25℃まで冷却した後、0.2%〜0.4%、好ましくは0.4%の濃度のN−アセチルシステインが直ちに添加される。HTST加熱プロセスの後のこの化学薬品の添加は、メトヘモグロビン(不活性ヘモグロビン)を低レベルに維持するために非常に重要である。当該処理装置の構成は、工業的な操作には、容易に制御されている。二量体含有量と共に温度プロファイルを図13に示す。ヘモグロビンが架橋されていなければ、それは熱的に安定ではなく、加熱工程の後に沈殿を形成する。遠心分離または濾過装置によりその沈殿を除去させ、透明な溶液を形成する。
【0082】
90℃でのHTST加熱プロセスの間に、メトヘモグロビン(不活性ヘモグロビン)が増大する(図14に示す)。N−アセチルシステインを直ちに添加した後、約3%未満の低レベルのメトヘモグロビンを維持することができる。
【0083】
下記の表7は、免疫グロブリンG、アルブミン、炭酸脱水酵素および望ましくない非安定化四量体または二量体等のタンパク質不純物が、熱処理工程の後に除去されることを示している。免疫グロブリンG、アルブミンおよび炭酸脱水酵素の量をELISA法を用いて測定し、二量体の量をHPLC法により測定する。HTST加熱処理工程の後の熱安定性の架橋四量体ヘモグロビンの純度は極めて高く、98.0〜99.9%の範囲である。p50値、即ち、ヘモックス分析器(Hemox Analyzer)により測定された酸素分圧(その分圧ではヘモグロビン溶液が半分(50%)飽和している)は、HTST熱処理工程の全体に渡り約30〜40mmHgに維持されるので、熱処理された架橋四量体ヘモグロビンは90℃で安定である。
【0084】
【表7】
【0085】
(実施例6)
包装
【0086】
本発明の製品は脱酸素条件下に安定であることから、製品の包装にとって重要なのはガス透過性を最小化することである。静脈内に適用するために、0.006〜0.132cm/(100平方インチ・24時間・室温気圧)の酸素透過性を有する厚さ0.4mmの5層のEVA/EVOH積層材料から、注文設計された100ml注入バッグを作製した。この特別な材料はクラスVIプラスチック(USP<88>に定義されている)であり、インビボ生物学的反応性試験および物理化学的試験に適合し、静脈注入に用いられる容器の製造に対しては適している(所望の使用に応じて、他の形態の包装も同様にこの材料から製造できる)。二次包装のアルミニウム製の上包装パウチも、一次包装注入バッグに適用されて更なるバリアを提供し、光露出および酸素拡散を最小化する。当該パウチの層は、0.012mmのポリエチレンテレフタレート(PET)、0.007mmのアルミニウム(Al)、0.015のmmナイロン(NY)、および0.1mmのポリエチレン(PE)を含んでいる。上包装フィルムは0.14mmの厚さ、および0.006cm/(100平方インチ・24時間・室温気圧)の酸素透過速度を有している。当該注入バッグの概略的描写が図15に描かれている。本発明による各注入バッグについての全体の酸素透過性は、0.0025cm/(24時間・室温気圧)である。
【0087】
(実施例7)
【0088】
酸素付加の改善
【0089】
(7a)正常組織における酸素付加の改善
【0090】
熱安定性の架橋四量体ヘモグロビンによる正常組織の酸素付加についての幾つかの研究(図6に示した)が行われる。バッファローラットで比較薬学動態学および薬力学の研究を行う。雄の純系バッファローラットに対して、ラットの陰茎静脈を通して、個別に大量瞬時投与の注射により、0.2g/kgの熱安定性の架橋四量体ヘモグロビン溶液または酢酸リンゲル緩衝液(対照群)を投与する。1、6、24、48時間に、ヘモキュー(HemocueTM)(登録商標)フォトメータによって血漿ヘモグロビンの濃度−時間プロファイルを測定し、基底ラインの読みと比較する。この方法はヘモグロビンの光測定に基づいており、ここではヘモグロビンの濃度がg/dLとして直接読み出される。酸素分圧(pO)は、バッファローラットの後脚筋肉中に、オキシラボ(OxylabTM)(登録商標)組織酸素付加および温度モニター(Oxford Optronix Limited)により直接測定する。ラットを30〜50mg/kgのペントバルビトン(pentobarbitone)溶液の腹腔内注射によって麻酔し、続いて酸素センサを筋肉内に挿入する。全てのpOの読みは、データトラックス2(Datatrax2)データ取得システム(World Precision Instrument)によりリアルタイムで記録される。結果として、0.2g/kgの熱安定性の架橋四量体ヘモグロビンの静脈注射後に、15分以内、平均pO値が基底ラインから平均酸素分圧の約2倍に上昇し、6時間までに延長することを示している。また、注射後24〜48時間でも、平均の酸素レベルは基底ラインより25%〜30%高く維持される(図6B)。
【0091】
(7b)極度に低酸素状態の腫瘍領域における酸素付加の顕著な改善
【0092】
極度に低酸素状態の腫瘍領域における酸素付加の改善を、ヒトの頭部及び頸部の扁平上皮細胞癌(HNSCC)異種移植モデルによって評価する。下咽頭扁平上皮細胞癌(FaDu細胞系)を、アメリカンタイプカルチャーコレクション(American Type Culture Collection)から入手する。約1×10個の癌細胞を4〜6週齢の純系BALB/cAnN−nu(ヌード)マウスに皮下注射する。腫瘍異種移植の直径が8〜10mmに達したときに、腫瘍塊内の酸素分圧(pO)をオキシラボ(OxylabTM)組織酸素付加および温度モニター(Oxford Optronix Limited)により直接測定する。全てのpOの読みは、データトラックス2(Datatrax2)データ取得システム(World Precision Instrument)によりリアルタイムで記録される。pOの読みが安定化した時に、0.2g/kgの熱安定性の架橋四量体ヘモグロビン溶液をマウスの尾静脈を通して静脈注射し、組織の酸素付加を測定する。結果として、0.2g/kgの当該熱安定性の架橋四量体ヘモグロビンの静脈注射の後に、6.5倍および5倍以上の平均pOの増大が、それぞれ3時間および6時間で観察された(図7)。
【0093】
(実施例8)
【0094】
癌治療研究:上咽頭癌における顕著な腫瘍縮小
【0095】
X線照射と組み合わせて熱安定性の架橋四量体ヘモグロビン溶液を投与した後に、顕著な腫瘍縮小が観察された(図8A)。ヒト上咽頭癌異種移植モデルが用いられる。約1×10個の癌細胞(CNE2細胞系)を、4〜6週齢の純系BALB/cAnN−nu(ヌード)マウスに皮下注射する。この腫瘍異種移植の直径が8〜10mmに達したときに、腫瘍をもったマウスを次の三つのグループにランダムに分ける。
【0096】
グループ1:酢酸リンゲル緩衝液(対照)
グループ2:酢酸リンゲル緩衝液+X線照射(2Gy)
グループ3:熱安定性の架橋四量体ヘモグロビン+X線照射(2Gy+Hb)
【0097】
CNE2異種移植をもつヌードマウスにX線照射を単独で(グループ2)または熱安定性の架橋四量体ヘモグロビンとの組合せで(グループ3)行った。X線照射(グループ2および3)については、50mg/kgのペントバルビトン溶液の腹腔内注射によってマウスを麻酔する。線形加速器システム(Varian Medical Systems)により、2GrayのX線を、腫瘍を持ったマウスの異種移植に与える。グループ3については、X線治療の前に、1.2g/kgの熱安定性の架橋四量体ヘモグロビンを、尾静脈を通してマウスに注射する。腫瘍の寸法および体重を、治療の初日から始めて2日ごとに記録する。式1/2LW2を使用して腫瘍の重量を計算し、ここでのLおよびWは、デジタル測径器(Mitutoyo Co, Tokyo, Japan)により各測定時に計測された腫瘍塊の長さおよび幅を示す。グループ1は、非治療対照群である。結果(図8に示す)として、X線照射と組み合わせて熱安定性の架橋四量体ヘモグロビン溶液で治療されたマウスにおいて、CNE2異種移植の顕著な縮小が観察されることを示している(グループ3、図8A)。
【0098】
(実施例9)
【0099】
癌治療研究:肝臓腫瘍の顕著な縮小
【0100】
また、シスプラチンと組み合わせて熱安定性の架橋四量体ヘモグロビン溶液を投与した後に、顕著な腫瘍縮小が観察された(図8B)。ラットの正所性肝臓癌モデルが用いられる。ルシフェラーゼ遺伝子(CRL1601−Luc)で標識された約2×10個のラット肝臓腫瘍細胞を、バッファローラットの肝臓の左葉に注入する。ゼノーゲン(Xenogen)インビボ撮像システムによって、腫瘍成長をモニターする。注入の2〜3週後に、腫瘍組織を回収し、小片に切断して、第2グループのラットの左葉肝臓の同所に移植する。腫瘍をもつラットを、以下のように三つのグループにランダムに分ける。
【0101】
グループ1:酢酸リンゲル緩衝液(対照)
グループ2:酢酸リンゲル緩衝液+シスプラチン(シスプラチン)
グループ3:熱安定性の架橋四量体ヘモグロビン+シスプラチン(シスプラチン+Hb)
【0102】
肝臓腫瘍組織を移植したラットを、3mg/kgのシスプラチンを単独で(グループ2)または熱安定性の架橋四量体ヘモグロビンとの組合せで(グループ3)治療した。グループ2および3については、30〜50mg/kgのペントバルビトン溶液の腹腔内注射によってラットを麻酔し、左門脈を通してシスプラチンを投与する。グループ3については、0.4g/kgの熱安定性の架橋四量体ヘモグロビンを、シスプラチン治療の前にラットの陰茎静脈を通して静脈注射する。グループ1は、非治療対照群である。重要なこととしては、治療の3週後に肝臓腫瘍の顕著な縮小が観察された(図8B)。
【0103】
(実施例10)
【0104】
ラットの急性重篤な出血性ショックの治療
【0105】
熱安定性の架橋四量体ヘモグロビンを、ラットの急性重篤な出血性ショックのモデルでの蘇生剤としても使用される。50匹のスプラグ−ドーリー系ラット(Sprague−Dawley rat)を、蘇生剤に従って三つのグループにランダムに分ける。各グループには16〜18匹のラットが含まれる。
【0106】
グループ1:乳酸リンゲル液(負の対照、16匹のラット)
グループ2:動物の自家血液(正の対照、16匹のラット)
グループ3:熱安定性の架橋四量体ヘモグロビン治療群(0.5gHb/kg体重、18匹のラット)
【0107】
動物の全血の50%(体重の7.4%と見積もられる)を抜き取ることにより、急性の重篤な出血性ショックをもたらす。出血性ショックが10分間もたらされた後に、乳酸リンゲル溶液、動物の自家血液、または0.5gのHb/kgの熱安定性の架橋四量体ヘモグロビンを動物に注入する。熱安定性の架橋四量体ヘモグロビンの注入速度は5mL/時に設定し、その後、全ての実験動物を24時間観察する。研究期間に亘って、生存、血行動態、心筋機構、心臓出力、心機能、血液ガス、組織酸素供給&消費、組織灌流&酸素張力(肝臓、腎臓および脳)、肝臓機能&腎機能、血液レオロジー(血液粘度)、およびミトコンドリア呼吸制御速度(肝臓、腎臓および脳)を含むパラメータのパネルを観察および分析する。特に、生存は主要な終点である。24時間の観察の後、熱安定性の架橋四量体ヘモグロビン治療群は、乳酸リンゲル溶液または負の対照群および自家血液群と比較して、遥かに高い生存率を有する(下記の表8に示す)。
【0108】
【表8】
【0109】
(実施例11):肝臓腫瘍の術後の再発および転移を予防する方法
【0110】
肝臓腫瘍の外科切除術は、肝臓癌の最先端の治療である。しかし、癌の術後の再発および転移は、これらの患者にとって予後不良の主な特性である。例えば、従来の研究によると、肝臓切除術が、50%の5年生存率だけでなく70%の再発率と関連することが報道した。肝臓細胞癌(HCC)の患者についての追跡研究は、原発性HCCによる肝臓外転移が約15%のHCC患者で検出され、肺が最も頻繁に発生する肝臓外転移のサイトであることも開示されている。肝臓手術の間の外科的侵襲、特に局所貧血/再かん流(IR)損傷が、腫瘍の進行をもたらす主因であることが既に表明した。通常、肝臓血管制御は、大量出血を防止するために肝臓切除術の間に外科医によって使用される。例えば、門脈三管(portal triad)(Pringle操作)を締め付けることによる流入閉塞は、血液のロスを最小限にして周術期輸血の必要量を減少するために使用される。最新の日本の研究は、25%の外科医が常にPringle操作を適用することを示す。しかし、Pringle操作は、残留肝臓における種々なクラスの虚血性損傷をもたらし、癌の再発および転移に関連する。
【0111】
IR損傷と腫瘍の進行との繋がりは、従来の動物実験によっても示される。最初に、正所性肝臓癌モデルを用いた最新の研究には、IR損傷および肝臓切除術による肝臓癌の再発および転移への作用が確証された。肝臓IR損傷および肝臓切除術は、肝臓腫瘍の顕著な再発および転移をもたらす。類似な結果は、結腸直腸肝転移マウスモデルにおいて得られ、IR損傷の導入は、結腸直腸肝転移の進行を加速する。
【0112】
従来、幾つかの保護戦略は、切除術の間のIR損傷を減少するために研究されている。例えば、短期局所貧血(虚血性前処理(IP)と呼ばれる。)の応用は、長時間締め付ける前に、肝臓細胞の防御メカニズムを誘発し、また、この方法は既に肝切除術の間のIR損傷を減少するために使用されている。他の場合は、流入閉塞に引き続き再かん流の循環を許可する間欠的締め付け(IC)プロセスを適用する。大きな肝臓手術を受けた非肝硬変患者を術後肝臓損傷から保護することに有効である二つの方法が提出された。しかし、動物実験では、腫瘍の環境において、IPが肝臓をIR損傷による腫瘍成長の加速から保護するのに無効であることも示す。また、幾つかのグループは、肝臓をIR損傷から保護するために酸化防止剤(例えば、α−トコフェノールおよびアスコルビン酸)を使用することにより、肝転移を予防する試みをしている。しかし、二種類の酸化防止剤はいずれも、IRによって刺激される肝内腫瘍成長を制限するのに無効である。
【0113】
論理的には、幾つの証拠は、低酸素が多くの原因で腫瘍再発および転移に関連することを表明する。(1)研究によると、低酸素腫瘍は、放射線療法および化学療法に対してより強い抵抗性があり、治療後に生存する腫瘍細胞は、再発する傾向がある;臨床証拠は、より多い低酸素腫瘍領域を有する患者がより高い転移率を有することも示す;(2)低酸素条件下で、癌細胞は、低酸素誘導因子−1(HIF−1)の活性化パスによってもっと侵略的になる。これは逆に、細胞運動性を増強し特定の遠隔臓器に戻る、血管新生促進因子に関する血管内皮成長因子(vascular endothelial growth factor,VEGF)と、受容体(例えばc−MetおよびCXCR4)との相補的反応を誘発する;(3)最新の研究は、循環癌細胞(CTC)が低酸素条件下でもっと侵略的になることも証明した。癌患者の周辺血液で検出した循環腫瘍細胞は、遠隔転移患者の疾病侵略指数として示されるが、低酸素は、それらの細胞にもっと侵略的な表現型を付与でき、細胞自然死の可能性を減少できる。具体的には、放射線耐性がより大きい癌幹細胞集団は、酸素レベルを減少する場合に腦腫瘍に集中した。
【0114】
従って、前記観察および研究に鑑みて、本発明による非ポリマー性架橋四量体ヘモグロビンは、肝臓切除術後の術後肝臓腫瘍の再発および転移を予防するために使用される。ラットの正所性肝臓癌モデルを樹立する。肝臓細胞癌細胞系(McA−RH7777細胞)は、バッファローラット(雄、300〜350g)で正所性肝臓癌モデルを樹立するために使用される。図16は、手術およびヘモグロビン製品の投与プロセスを概括する計画図を示す。McA−RH7777細胞(3×10個/100μl)は、固形腫瘍の成長をもたらすためにバッファローラットの肝臓被膜(hepatic capsule)に注入される。2週間後(腫瘍の体積が約10×10mmに達した時)、腫瘍組織を回収し、1〜2mmの立方体に切断して、新たなグループのバッファローラットの肝臓の左葉に移植する。肝臓腫瘍を同所に移植した後2週間に、ラットは、肝臓切除術(肝臓腫瘍をもつ左葉)および部分的な肝臓IR損傷(右葉での30分間局所貧血)を受ける。
【0115】
2つのグループの腫瘍組織を移植したラットは、腫瘍の再発および転移を比較するために使用される。グループ1においては、ラットをペントバルビトンによって麻酔し、局所貧血の前1時間に、0.2g/kgの本発明に係る非ポリマー性熱安定性の架橋四量体ヘモグロビンを静脈内投与する。局所貧血は、ブルドック鉗子(bulldog clamp)で肝門静脈および肝動脈の右枝を締め付けることにより、右葉肝臓に導入される。次いで、左葉肝臓で結紮が行われた後、肝臓腫瘍をもつ左葉肝臓を切除する。局所貧血後30分間に、追加の0.2g/kgの熱安定性の架橋四量体ヘモグロビンを下大静脈を通して注射した後、再かん流する。グループ2においては、酢酸リンゲル緩衝液は、媒剤対照として同様なプロセスによって注射される。全てのラットは、肝臓切除術プロセス後4週間に殺される。
【0116】
腫瘍の成長および転移を検査するには、バッファローラットの肝臓および肺は、局所貧血/再かん流および肝臓切除術プロセス後の4週間に、形態学的検査のためにサンプルされる。組織は、回収されて、ヘマトキシリン(Hematoxylin)およびエオシン(Eosin)(HおよびE)染色の前に、パラフィルムで埋め込まれて切断される。局所的な再発/転移(肝内)および遠隔転移(肺)は、組織学的検査により検査される。表9は、観察の結果を概括する。
【0117】
表9:ラットの正所性肝臓癌モデルにおける肝臓切除術およびIR損傷後の4週間の腫瘍の再発/転移の比較。
【0118】
【表9】
【0119】
非ポリマー性熱安定性の架橋四量体ヘモグロビンによる肝臓腫瘍の再発および転移への予防作用を検査するには、全てのラットはいずれも、肝臓切除術およびIRプロセス後の4週間に殺される。肺および肝臓の組織は、回収される。肝臓腫瘍の再発/転移および遠隔肺転移は、2つのグループにおいて比較される。結果として、ヘモグロビン治療が、二種類の臓器における再発および転移の発生率が減少することを示す。
【0120】
図17は、肝臓切除術および局所貧血/再かん流プロセスの後のIR損傷群のラットに肝内肝臓癌の再発および転移および遠隔肺転移を発生する代表的な実施例、および本発明の熱安定性の架橋四量体ヘモグロビンによるそれらに対する予防を示す。図17Aには、広範囲の肝内肝臓癌の再発/転移がIR損傷群に観察される。遠隔肺転移も同一のラットに発生する(実線矢印で指示される。)。図17Bには、肝内肝臓癌再発/転移が、もう一つの場合にIR損傷群において観察される(点線矢印で指示される)。広範囲の肺転移は、同様な場合に(実線矢印で指示される。)観察される。一方、図17Cは、本発明による熱安定性の架橋四量体ヘモグロビンが治療したラットに肝内肝臓癌の再発/転移および遠隔肺転移を予防する代表的な実施例を示す。
【0121】
図18は、肝臓切除術およびIR損傷プロセス後の4週間に2つのグループに対する組織学的検査を示す。肝臓および肺組織の組織学的検査(HおよびE染色)は、腫瘍の結節の身元を確認するためにIR損傷群とヘモグロビン治療群において行われる。ヘモグロビン治療(T3)およびIR損傷群(T1およびT2)に示す肝内再発/転移の代表的な領域が示される。比較のために、治療群における正常な肝臓構造を示す組織学的検査が含まれる(N1)。また、遠隔肺転移は、IR損傷群(M)における同一のラットに見られる。比較のために、治療群(N2)における転移なしの肺組織が示される。
【0122】
非ポリマー性熱安定性の架橋四量体ヘモグロビンによる腫瘍の再発および転移への予防作用を更に確認するために、局所貧血/再かん流および肝臓切除術プロセス後の腫瘍の再発率および再発腫瘍の寸法に対して研究される。なお、前記したようにMcA−RH7777細胞を注射することにより調製された腫瘍組織を移植したラットは、図16に述べたように、肝臓切除術プロセス時における局所貧血の前および再かん流の時に、約0.2〜0.4g/kgの本発明に係る非ポリマー性熱安定性の架橋四量体ヘモグロビンまたは負の対照である酢酸リンゲル(RA)緩衝液で、静脈内治療を行う。総合で24匹のラットはテストされ、そのうち、11匹のラットは、本発明のヘモグロビンで治療され、RA緩衝液しか治療されない13匹は負の対照ラットである。全てのラットはいずれも、肝臓切除術およびIRプロセス後の4週間に殺され、試験ラットの肝臓および肺の腫瘍の再発/転移が検査され、再発する腫瘍の相対寸法が測定される。
【0123】
図19Aは、試験ラットにおける肝臓腫瘍の再発および個別な再発腫瘍の体積を示す。肝臓腫瘍の再発/転移は、13匹の未治療の対照ラットに9匹が発生したが、11匹の治療したラットに4匹しか腫瘍の再発/転移を受けない。腫瘍の再発が見られるにもかかわらず、本発明に係るヘモグロビンで治療したラットの再発腫瘍の寸法が、それらの未治療のラットよりも顕著に小さいことも明らかである。その結果から、図19Bに概括されたように、本発明の治療で、腫瘍の再発率は大きく下がり、再発腫瘍の寸法が顕著に減小することが示される。
【0124】
図20は、本発明の非ポリマー性熱安定性の架橋四量体ヘモグロビンで治療したラットおよびIR損傷(負の對照)群の肝臓切除術およびIRプロセス後の4週間に回収された肝臓および肺組織の代表的な実施例を説明する。未治療の負の対照ラットC10および13の代表的な実施例に見られるように、広範囲の肝内肝臓癌の再発/転移および遠隔肺転移(円)が観察される。一方、ラットY9、Y10およびY11に見られるように、肝内肝臓癌の再発/転移および遠隔肺転移は、本発明のヘモグロビンの治療によって予防される。
【0125】
(実施例12):非ポリマー性熱安定性の架橋四量体ヘモグロビンによる治療は局所貧血を減少することができる
【0126】
実施例7に説明されたように、本発明による非ポリマー性熱安定性の架橋四量体ヘモグロビンの低酸素腫瘍への静脈注射は、腫瘍における酸素付加を顕著に改善できる。したがって、腫瘍切除術およびIRプロセスの間の本発明のヘモグロビン製品の酸素付加作用が研究される。実施例11に述べたようにMcA−RH7777細胞を注射することにより調製された肝臓腫瘍組織を移植したラットを使用し、図16に概述したような手術および0.2〜0.4g/kgの本発明に係るヘモグロビン製品またはRA緩衝液投与プロセスを受けさせる。肝臓の酸素分圧は、肝臓腫瘍に本発明に係るヘモグロビン製品/RA緩衝液を初めて投与する時間から全体のIRプロセスに亘って、肝臓腫瘍切除術中および再かん流の後に計量される。その結果(図21)は、局所貧血を導入した後で、本発明のヘモグロビンで治療された酸素付加の増加が観察されたことを示す。また、図21に見られるように、再かん流後の本発明のヘモグロビンで治療した肝臓の酸素分圧が未治療の約3倍である。本発明のヘモグロビンの腫瘍切除術時における局所貧血の前および再かん流時の治療は、未治療と比べて、肝臓組織の酸素付加を顕著に改善することが確証された。この技術に提出された低酸素腫瘍と腫瘍の再発/転移の可能性の増加との間の強い関連性から見ると、この実施例に説明したような本発明のヘモグロビン製品の強い酸素付加作用および腫瘍切除術プロセスの間の使用は、本発明のヘモグロビン製品の腫瘍の再発および転移を減少するための適用性を確証する。
【0127】
(実施例13):非ポリマー性熱安定性の架橋四量体ヘモグロビンによる治療は循環内皮前駆細胞のレベルを減少することができる
【0128】
幾つの研究によると、癌幹細胞(CSC)および/または前駆細胞集団が肝臓癌の発展中に意義があることを証明した。重要には、従来の研究は、HCC患者(肝臓切除術を受けた患者を含む)に顕著な高いレベルの循環内皮前駆細胞(EPC)が見られる。
【0129】
したがって、循環EPCのレベルは、CD133、CD34およびVEGFR2といった表面分子の表現によって評価される。肝臓切除術手術およびIRプロセスの後の循環内皮前駆細胞のレベルは、本発明のヘモグロビン製品で治療するか治療しない場合に研究される。2つのグループの肝臓腫瘍を移植したラットを、それぞれ前記実施例11および図16に述べたように、肝臓切除術時における局所貧血の前および再かん流の時に、本発明に係るヘモグロビンまたはRA緩衝液(対照)による治療を受けさせる。次いで、2つのグループのラットの循環EPCの数は、肝臓切除術およびIRプロセスの後0、3、7、14、21および28日間に計量される。その結果(図22)は、手術後0日目〜3日目に治療および未治療群のEPCのレベルが相違し、ヘモグロビン治療群のEPCのレベルが、それらのRA緩衝液治療群よりも顕著に低いことを示す。これらの結果は、実施例11の結果と一致しており、本発明のヘモグロビンが腫瘍の再発/転移を減少させて腫瘍再発/転移を最小限にする予防作用が確認された。
【0130】
前記研究によって、本発明の非ポリマー性熱安定性の架橋四量体ヘモグロビンによる治療は、肝臓腫瘍の再発と他の臓器の転移に対しては予防性作用を有することが推知された。
【0131】
種々の態様に関して本発明を説明したが、このような態様は限定的なものではない。当業者は多くの変形例および修飾を理解するはずである。これらの変形および修飾は、以下の特許請求の範囲の範囲内に含まれるものと見なされる。
図19A
図19B
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図20
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図22