(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
頂壁(3a)と、頂壁(3a)から離間して配置される底壁(3b)と、頂壁(3a)と底壁(3b)との間に配置される一周する側面又は側壁(3c)とを有する誘電性の基板(3)と、
基板(3)の底壁(3b)上又は底壁(3b)の下方に設けられた接地電位面(17)と、
基板(3)の頂壁(3a)上又は頂壁(3a)の上方に配置されかつ切欠部(13)の周囲に環状及び/又は枠状に形成された導電性の放射面(11)と、
放射面(11)内の切欠部(13)の領域内に設けられて放射面(11)に給電する位相調整装置式の給電構造体(15)とを備えるパッチ放射器において、
側面若しくは側壁(3c)上に形成され又は側面若しくは側壁(3c)から側面空間(S)を空けて形成されかつ接地電位面(17)から離間する側面放射構造体(18)を放射面(11)に通電接続し、
側面又は側壁(3c)の周方向に形成された複数の側面放射部(19)と、隣り合う側面放射部(19)間に形成された複数の不通電間隙領域(20)とを側面放射構造体(18)に設けて、側面放射構造体(18)の複数の側面放射部(19)と不通電間隙領域(20)との間に境界線及び/又は輪郭線(23)を形成し、
給電構造体(15)は、2つの接続部(48)で位相偏移を発生して放射面(11)に接続される位相調整装置を有し又は位相調整装置により構成され、
境界線及び/又は輪郭線(23)を三角形状、台形状、波状又は次元分裂状の形状に形成したことを特徴とするパッチ放射器。
側面放射部(19)は、基板(3)の全体高さ(H)に対して小さい部分高さ(19')で延伸し、側面放射部(19)は、基板(3)の底壁(3b)の前で帯状部(33)を空けて終了し、かつ/又は
不通電間隙領域(20)は、基板(3)の高さ(H)で又はその部分高さ(20')で延伸し、間隙領域(20)は、基板(3)の頂壁(3a)の下方及び/又は放射面(11)の下方で帯状部(29)をもって終了する請求項1又は2に記載のパッチアンテナ。
側面若しくは側壁(3c)上に形成される重複領域(35)内で一周する側面放射部(19)と間隙領域(20)とを交互に配置した請求項1〜3の何れか1項に記載のパッチアンテナ。
側面若しくは側壁(3c)上で側面放射面(19)と不通電間隙領域(20)とを相互に入れ込む形状により、基板(3)の周面長さよりも大きい境界線及び/又は輪郭線(23)を形成した請求項1〜4の何れか1項に記載のパッチアンテナ。
環状又は枠状の放射面(11)の複数の接続部(48)で互いに位相を90°偏移して位相調整導線(47)内に給電導線(42)の給電領域(53)を配置した請求項1〜5の何れか1項に記載のパッチアンテナ。
平面図上部分円形状、直角、複数屈曲形状又は弓形で延伸する位相調整導線(47)は、給電領域(53)から放射面(11)での接続部(48)まで2本の結合導線(47', 47"; 147’, 147”)を形成し、放射面(11)での給電領域(48)に関する90°の到達時間差及びそれに伴う位相差を発生する請求項1〜6の何れか1項に記載のパッチアンテナ。
互いに180°回転変位して配置されかつ/又は180°回転変位して他の対の接続部(148)に接続される2本の位相調整導線(47, 147)内に設けられる給電領域(53, 153)に対し位相が角度180°偏移する請求項1〜7の何れか1項に記載のパッチアンテナ。
位相調整導線(47)と結合導線(47a, 47b)とは、切欠部(13)内で容量結合され、結合導線(47a, 47b)は、位相調整導線(47)の結合導線(47', 47")に対して平行に延びる請求項1〜8の何れか1項に記載のパッチアンテナ。
平面図上、基板(3)は、正方形の環状又は枠状の放射面(11)を有する正方形の形状又はその上に形成された環状の放射面(11)を有する円筒の形状又は適切に成形される放射面(11)を有する規則的なn角形形式で形成される外側輪郭を有する請求項1〜9の何れか1項に記載のパッチアンテナ。
側面又は側壁(3c)は、放射面(11)に対して垂直及び/又は基板(3)の頂壁(3a)及び/又は底壁(3b)に対して垂直及び/又はパッチアンテナの中心軸(7)に対して平行に延びる請求項1〜10の何れか1項に記載のパッチアンテナ。
側面又は側壁(3c)は、放射面(11)に対して角度を付けてかつ/又は基板(3)の頂壁(3a)及び/又は底壁(3b)に対して垂直及び/又はパッチアンテナの中心軸(7)に対して平行に延び、角度(α)は、基板(3)の底壁(3b)と中心軸(7)に対して垂直な平面、即ち中心軸(7)に対して垂直な切断平面との間に形成され、角度(α)は、10°より大きく、かつ
角度(α)は、170°より小さい請求項1〜10の何れか1項に記載のパッチアンテナ。
基板(3)の側壁若しくは側面(3c)上に直接、特に金属化面形式で、基板(3)の頂壁(3a)上に形成される金属化面と共に設けられ又は形成される側面放射部(19)により放射面(11)を形成した請求項1〜13の何れか1項に記載のパッチアンテナ。
基板(3)の側壁又は側面(3c)に対して側方間隔(A)を空けて配置した側面放射部(19)は、放射面(11)に対して垂直又は角度を付けて延伸する請求項1〜14の何れか1項に記載のパッチアンテナ。
側面放射器(18)、放射面(11)と側面放射構造体(18)、位相調整導線(47)及び給電導線(42)を有する全放射構造体(25)は、導電性の金属製の薄板により形成され、側面放射部(19)及び/又は給電導線(42)は、金属製の薄板の屈曲加工又は角部形成加工により、放射面(11)又は位相調整導線(47)に対して屈曲する請求項1〜13及び15の何れか1項に記載のパッチアンテナ。
回路基板(107)と共に、少なくとも1つの他の電気部品組立体又は電気部品(109)を基板(3)内の中空室(103)内に収容した請求項18に記載のパッチアンテナ。
切欠領域(213)の周囲に延伸する環状及び/又は枠状の放射面(211)として第2のパッチアンテナ(B)の放射面(211)を形成した請求項20に記載のパッチアンテナ。
第2のパッチアンテナ(B)の切欠領域(213)の内部に第2のパッチアンテナ(B)の給電構造体(215)を設け、給電構造体(215)は、2つの接続部(248)で放射面(211)に接続されて位相を偏移する位相調整装置を有し又は位相調整装置からなり、給電構造体(215)は、位相調整装置形式で放射面(211)に通電可能に又は容量結合される請求項21に記載のパッチアンテナ。
位相調整装置を有する第2のパッチアンテナ(B)の給電構造体(215)は、2本の位相調整導線(247', 247")を有し、付属の給電導線(242)は、位相調整導線の接続部まで延伸する請求項22に記載のパッチアンテナ。
第2のパッチアンテナ(B)の放射面(211)は、横に延伸する第2の側面放射構造体(218)を有し、第1のパッチアンテナ(A)の側面放射構造体(18)は、第2の側面放射構造体(218)の少なくとも一部を高さ方向に覆い、第1のパッチアンテナ(A)の側面放射部(19)は、第2のパッチアンテナ(B)の放射面(211)と接地電位面(17)との間まで延伸する請求項21〜24の何れか1項に記載のパッチアンテナ。
第2のパッチアンテナ(B)は、切欠き(401)を有し、誘電体(3)は、誘電体(3)の頂壁(3a)を越えて上方に突出する台状の隆起(303)を有し、隆起(303)は、平面的な第2のパッチアンテナ(B)内の切欠き(401)を通り突出して、第2のパッチアンテナ(B)は、誘電体(3)の上面(3a)上に載置され、かつ
台状の隆起(303)の頂壁(303')上に第1のパッチアンテナ(A)の放射面(11)を配置した請求項28に記載のパッチアンテナ。
パッチアンテナ(A)の側面放射部(19)は、放射面(11)から接地電位面(17)に向かって末広がりに延伸し、正角錐台形構造を形成する請求項1〜29の何れか1項に記載のパッチアンテナ。
【背景技術】
【0002】
パッチ放射器は、原則的に例えば特許文献1により公知である。
【0003】
公知のように、この種のパッチ放射器は、頂壁と、底壁と、一周する壁部、即ち側面とを備える誘電基板を有する。公知の形態では、多くの適用例では、誘電基板は、平面図上正方形状に形成される三次元物体である。誘電基板の頂壁上に形成される正方形状の閉回路状の放射面には、放射面に対して基板全体を通り垂直に延伸する給電導線を介して底壁から電力が供給される。
【0004】
基板の外側輪郭を越えて張出して底壁に設けられる接地電位面に穴状の適切な切欠きが設けられる場合、切欠きを通して接地電位面の底壁まで延びる給電導線を介して放射面の給電が行われる。
【0005】
円分極される放射器及びアンテナ装置としてパッチ放射器を使用することもある。
【0006】
特に、例えば衛星信号の受信にパッチアンテナ(例えば、衛星測位システム(GPS)アンテナ等)を使用するとき、角部(側縁)に形成される非連続性の面取部を平面図上通常正方形の照射器面に設けて、円形又は循環式の電磁波を受信(又は送信)することができる。例えば、対向する2つの角部に三角状の平坦部又は切欠きとして形成される面取部を介して、パッチアンテナの円形性又は周期性が形成される。
【0007】
例えば、パッチアンテナの中央部の中心軸外部に90°変位して設けられる2つの給電領域で互いに変位して対向して延伸する2本の給電導線により円特性又は周期性を得ることも知られている。給電時の適切な位相偏移により、円分極される電磁波(通常衛星から放射される)を確実に受信できるからである。
【0008】
円分極されるこの種のパッチアンテナは、一連の他のアンテナ装置の他に、例えば携帯無線サービスの実施、ラジオ番組の受信等のため、前記のように、衛星測位システム(GPS)アンテナとして、特に自動車アンテナ内でも時折使用される。
【0009】
極力小型の組込空間が必要な衛星測位システム(GPS)アンテナに対する基本的要求がある。しかしながら、従来のパッチアンテナサイズの縮小には、特別に適する基板を選択しなければならない。極力大きいεr値のセラミック材料が基板に通常使用される。
【0010】
基本的なパッチ放射器は、例えば特許文献2から公知である。このパッチ放射器は、正方形の基板(誘電体)と、基板の頂壁に形成される導電性の放射面とを有する。放射面の中央部に環状の切欠きが形成される。誘電体に隣接して延伸しかつ放射面の外端縁に接続される給電導線を介して放射面に給電される。
【0011】
特許文献3の
図5の実施の形態からも関連する従来技術を理解できよう。
また、米国特許公開第2009/140930号公報は、空気形式の誘電体を形成して接地電位面から間隔を空けてかつ平行に放射面を配置するパッチアンテナを示す。正方形のパッチ放射面の周端縁は、垂直に下方に延伸する導電性の複数の舌片に接続され、舌片は、パッチ放射面の周方向に互いに離間して配置される。その装置により線形に分極され又は円分極される電磁放射器の改良された適合性が得られる。
また、英国特許公開第2429336号公報は、反射器の前に間隔を空けて枠状で導電性のアンテナ面を配置する小型の環状アンテナを示す。内側に配置される切欠きを有する環状又は枠状のアンテナは、中央部に適切な切欠きを有する誘電体の前側に形成される。内側に配置されて給電構造体に接続される2つの環状の給電装置が互いに垂直な誘電体の2つの壁に形成され、給電装置を介して枠状又は環状のアンテナに電力を供給することができる。90°変位して設けられる環状の給電装置により円分極される電波を発生し又は受信することができる。
【0012】
種々の幾何学形態を有するパッチ放射器は、特許文献4にも開示される。このバッチ放射器は、殆ど正方形の又はほぼ正方形の放射面を有し、例えば、H形状、二重台形状等の極めて異なる形状で成形される切欠きが放射面の内部に設けられる。放射面の外側の周端縁から及び放射面に形成される切欠きの内側形成端縁から延伸する給電導線を介して放射面に給電される。
【0013】
更に、完全に異なる構造の他のパッチ放射器とパッチ放射器装置も公知である。
【0014】
例えば、特許文献5は、環状及び/又は枠体状の放射面ではなく、多数のスリットを形成した基本的に正方形の放射面を有する円分極式パッチ放射器装置を開示する。各スリットは、放射面の外側に配置される角部から中心の方向に延伸する。また、スリットから離間してより大きい切欠きに通じるスリット形の切欠きが長手側に形成される。究極的に、パッチ放射器装置は、アンテナ形状の減少に使用されるスリットを有する折り畳まれたパッチアンテナである。パッチアンテナのように、外側輪郭での非連続性によって円特性又は周期性を得ることができる。しかしながら、パッチアンテナは、スリットのため全体として極めて狭帯域となる。
【0015】
一方、特許文献6は、いわゆる次元分裂図形(フラクタル)アンテナを示す。次元分裂図形アンテナ構造に閉回路状の放射面を設けることができる。また、パッチアンテナの外周面のみならず、中央部の間隙領域内にも次元分裂図形構造を形成できる点も示す。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明の課題は、周波数広帯域性を有ししかも極力小型のアンテナ体積を備えるパッチアンテナと、特に円分極されるパッチアンテナを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明では、請求項1に記載する特徴によりこの課題を解決する。本発明の好適な実施の形態を下位請求項に記載する。
【0019】
本発明の技術範囲内では、パッチアンテナの必要なアンテナ体積を従来の標準パッチアンテナ解決法に対して驚異的に50%まで(又は更にそれ以上に)減少できる。逆に、本発明によるパッチアンテナの大きさが同一ならば(従来の標準パッチアンテナと比較して)、アンテナの周波数広帯域を約50%増大させて、顕著に周波数特性を改善できる。
【0020】
本発明の技術範囲内で、特に、支持体、即ち基板の外側の側面又は壁面も、アンテナ形態又はアンテナ作用に利用して、前記課題を達成できる。換言すれば、基板の頂壁に設けられる環状又は枠状の放射器形式の放射構造体を三次元基板の側面又は外側面に拡張して、支持体の体積を最適に利用できる。また、放射構造体の拡張又は拡幅により、極めて小型のアンテナ形態を実現できる。放射器の頂壁に環状又は枠状の放射構造体を設け、円分極式アンテナとして駆動する固有の給電構造体を放射構造体の内部に設けることができる。
【0021】
本発明では、基板の頂壁に設けられる放射面は、基本的に環状及び/又は枠状に形成され、間隙領域は、環状及び/又は枠状の放射面構造体により包囲される。用語「環状の放射構造体」は、一周する閉回路状又は枠状の放射構造体を意味し、平面図上必ずしも円形の必要はなく、例えば正方形又は規則的なn角形の枠体等を形成する形態でもよい。
【0022】
環状及び/又は枠状の導電性の放射面の内部に設けられる固有の給電構造体は、少なくとも2つの給電領域を有し、給電領域は、特に2本の位相調整導線を形成しかつ偏心して接続部又は移行部で環状及び/又は枠状の放射面構造に電気的に接続される。
【0023】
給電領域から環状及び/又は枠状の細片導体構造に設けられる各部(接続部)までの到達時間を偏移させて、パッチアンテナの円特性又は周期性を生成する「位相調整」原理を2本の位相調整導線の偏心配置により模擬することが好ましい。
【0024】
基板の頂壁での放射形態を側壁、即ち基板の側面まで更に拡張する方法は、様々の態様で実現しかつ構造化することができる。
【0025】
好適な実施の形態では、基板の側面又は壁面上に設けられる放射構造体は、側面又は壁面の周方向に互いに変位すると共に、側面又は壁面の上から下に延伸する多数の放射部を有する。上から下に向かって側壁に形成され又は延伸する放射部は、基板の頂壁に配置される放射面に通電可能に接続される。従って、基板の一周する側壁では、基板の頂壁上に設けられる放射面は、通常、接地電位面に向かい下方に延伸する例えば複数の指状の放射部に移行し、複数の指状の放射部は、基板の周方向に隣り合う指状の放射部間に配置される不導通部により互いに間隔を空けて配置される。下方に延伸する例えば指状の放射部は、基板の頂壁に設けられる放射面に接続されかつ基板の側壁の一部高さに沿って延伸することが好ましい。
【0026】
パッチアンテナの頂壁上に設けられる放射面に接続される側面放射部に異なる形状を付与することができる。
【0027】
上から下に向かって延びる複数の導電性部を舌片状に形成し、例えば、舌片状の不通電部によって隣り合う導電性部を互いに分離することができる。それにより、ジグザグの又は蛇行する全区画線又は輪郭線を形成することができる。
【0028】
また、下方に張り出す複数の山形状隆起又は突出部と、隣り合う突出部間で上方に張り出す谷とを形成して波状に一周する全区画線又は輪郭線も形成できる。
【0029】
もっとも、全区画線又は輪郭線の形状は、側面から見て例えば三角形状、台形状等でもよい。その限りでは、形状に制限はない。
【0030】
本発明による小型アンテナ形態の本質的な目的は、支持体、即ち誘電体又は基板の外側面を放射面として利用する点にある。即ち、基板の頂壁から一周する側壁方向にパッチアンテナの外側面を拡張して、基本的に放射面を増大できるからである。どのように、放射面を拡張し構造化するかは、様々な方法で実施することができる。
【0031】
本発明の技術範囲内では、パッチアンテナの付加的な多数の側面放射面部を形成すると、従来の解決法に比較して、周波数広帯域性も著しく改良され、側面放射面部により、導電性の放射構造体の境界線が形成され、境界線の周方向長さは、本来の基板構造の周長さよりも極めて大きい。また、多数の側面放射面部の形成により、電磁場の垂直分極成分(地上アンテナ利得)も強化される。即ち、放射面に接続されかつ側壁上で下方に延伸する側面放射面部(部分的に指状部ともいう)を櫛状に形成し又は形成でき、側面放射面部の張出部は、小さい垂直の放射器要素として機能する。
【0032】
このように、前記形態により極めて小さい体積と、かつ/又は顕著に改善された周波数広帯域性とを有するパッチアンテナ(従来の解決法に比べて)を提供できる。即ち、従来のパッチアンテナに比較して大きさを減少しかつ同時に周波数広帯域性も改善できるパッチアンテナを本発明の技術範囲内で提供できる。
【0033】
本発明の好適な実施の形態では、(基板の頂壁に設けられる)放射面に接続される側面放射構造体は、直接基板の側面又は側壁上に金属化形式で形成され又は設けられる。例えば、側面放射構造体又は好ましくは金属製の薄板等形式の側面放射構造体のために、別体の支持構造体を代替的に使用して、側面放射構造体を基板の側面又は側壁に対して間隔を空けて設けかつ位置決めすることも勿論可能である。その場合に、金属製の薄板により放射器全体を形成しかつ例えば基板の頂壁上に位置決めし又は例えば接着又は圧着することが好ましい。端縁を越え又は側壁又は側面を越えて間隔を空けて側面放射構造体を張り出すことができ、直角に延びる側面部とは異なり、角度をもって張り出して下方の端部で放射面に対向して側面放射構造体を屈曲させる場合もある。この場合に、多様の変形が可能である。例えば、数回外側に向かって異なる距離で張り出させ、折り畳み、屈曲させ又は角部を付した側面放射構造体を設けることもできる。特に、放射面に対して直角に基板を通り下方に延伸するように給電導線を屈曲させて、金属製の薄板から放射器と共に一体に給電導線の打ち抜き加工を行って、製造上の利点を実現できる。
【0034】
更に、本発明の技術範囲内で改良された給電が行われる。
【0035】
本発明の技術範囲内で、様々に形成されかつ異なる幾何学形態を有しかつ電流供給原理又は容量供給原理に基づく給電構造体を使用できる。
【0036】
また、1本の給電導線のみを介して又は例えば180°角度変位して配置した2本の給電導線を介してパッチアンテナの給電を実施することができる。
【0037】
要約すると、本発明の環状構造又は枠状構造のアンテナは、下記利点を有する:
− 本発明のアンテナでは、支持体、即ち基板の寸法を減少できる(アンテナの小型化)。
− 環状構造又は枠状構造により、より低い誘電定数の他の基板材料に変更できる。例えば、樹脂材料を使用できる。樹脂材料は、セラミック材料よりも通常好ましい。これにより、所望の価格低減と価格節約を行える。
− また、良好な電気的特性を有する限り、樹脂材料の使用は、損失要因の低い他の利点がある。更に、この特性を有する樹脂材料を使用できる。それによって、本発明のアンテナの出力、周波数帯域幅及び利得を改善でき、アンテナ出力も顕著に上昇する。
− 本発明のアンテナは、寸法を減少しても全体として良好に取り扱える。例えば外側面を縮小し又は外側から放射面内に延びるスリットを形成して、外側面の加工により周波数を容易に調節できる。これにより全体として良好に取扱うことができる。
【0038】
本発明の他の実施の形態では、下方から接近できる内部空間を形成して少なくとも部分的に箱形に基板を形成できる。例えば、適切な電気的又は電子的な組立体を実装した回路基板を自由空間の任意の高さに収納する大きさに内部空間の寸法を設計できる。
【0039】
特に好適な実施の形態では、パッチアンテナ装置により覆われかつ/又は把持される接地電位面に近い他のパッチアンテナをパッチアンテナ装置の内部に設けて、極めて小型のパッチアンテナ装置を形成することが好ましい。単分極されるパッチアンテナとして、全面的に金属化されたパッチアンテナとして又は例えば二重分極又は円分極されるパッチアンテナとして他のパッチアンテナを形成することができる。
【0040】
特に、内側又は低位置に配置される他のパッチアンテナを衛星測位システム(GPS)受信器として使用するとき、セラミック製の誘電体上に配置されかつ通常全面型放射面を有する第1の環状又は枠状のパッチアンテナを他のパッチアンテナの上方に配置して、例えば衛星デジタルラジオ放送サービス(SDARS)信号の受信に用いることができる。
【0041】
しかしながら、内側に配置されるパッチアンテナも同様に環状又は枠状に形成し、内側に配置される位相調整導線を介して給電して、円分極されるパッチアンテナを提供する本発明の変形例も、同様に有効であり、第2のパッチアンテナは、本発明の前記パッチアンテナと同様に、環状及び/又は枠状にそのパッチアンテナを形成し、環状及び/又は枠状の構造を付与し、異なる2つの給電領域に接続される位相調整導線を間隙領域内に設け、別体の給電導線と分岐した2つの位相調整導線を介して給電することができる。
【0042】
換言すれば、発明の枠内で、環状の2つのパッチアンテナを入れ子構造に形成して、比較的小型の組立寸法で2種類の信号を受信することができる。即ち、内側に配置されるパッチアンテナの低い側又は内側に配置される環状又は枠状の放射面を例えば、衛星デジタルラジオ放送サービス(SDARS)信号の受信に使用できるのに対し、外側の又はより高い位置に配置される放射面を有する外側の又は上方のパッチアンテナを例えば衛星測位システム(GPS)信号の受信に使用することができる。アンテナ間を相互に結合して、付加的に最小化アンテナ構造を得ることができる。その場合に、好ましくは樹脂材料によりアンテナ支持体を形成し、例えば、薄板の打ち抜き加工かつ/又は折り畳み加工によりアンテナ構造の放射面を形成することができる。例えば、3D−MID技術を用いて形成して、電気的な三次元組立体(Moldet Interconnect Device MID)により代替的にアンテナ構造を形成することもできる。
【0043】
また、例えば、第2のパッチアンテナの放射面に対して横方向に延びる導電性の拡幅部を放射面の支持構造体の側壁の領域内で外周面に設けること好ましい。
【0044】
この変形例では、例えば、例えばグローバルナビゲーションサテライトシステム(GNSS)から送信される信号、例えば衛星測位システム(GPS)信号を受信するアンテナとして外側に配置する環状又は枠状のパッチアンテナを使用できるのに対し、例えば衛星デジタルラジオ放送サービス(SDARS)信号の受信に低い位置のかつ/又は内側に配置される環状又は枠状のアンテナを使用できる。
【0045】
特に好適な実施の形態では、積層配置される2つのパッチ放射器は、構造を等しくし又は同様に形成することができ、通常、第2のパッチ放射面の一周する側縁に例えばジグザグ状又は蛇行して形成されつ放射面に対して横に延びる拡幅部は、上方のパッチ放射器に設けられる該当する開口部(中空室)よりも小さい高さで寸法設計される。
【発明を実施するための形態】
【0048】
図1は、パッチアンテナ1の基本構造を略示する斜視図である。
【0049】
パッチアンテナは、円分極されるパッチアンテナである。
【0050】
図2の断面図からも明らかなように、パッチアンテナは、下記では誘電体3を「基板」とも表示する。
【0051】
三次元に構成される基板3は、頂壁3aと、底壁3bと、頂壁3aの周縁部と底壁3bの周縁部との間に一周して配置される側壁3cとを有し、本明細書では、側壁3cを側面3cとも表示する。
【0052】
図示の実施の形態では、側壁、即ち側面3cは、基板3の頂壁3a及び底壁3bの中央を垂直に貫通する中心軸7に対して平行に、即ち、基板3の頂壁3a及び底壁3bに対して垂直に延伸する。
【0053】
後述のように、側壁3c上に直接他の側面放射構造体を設けるのみならず、側壁3cに対して間隔を開けて他の側面放射構造体を設けられるので、「側壁」又は「側面」3cの概念として、側面空間Sの概念を下記一部に使用することもある。
【0054】
適切な材料で基板3を構成することができる。比較的低い値の比誘電率、即ち誘電的導通性εrを有するセラミック材を使用することが好ましい。これにより、基板は、必ずしもセラミック材料に限定されず、例えば、衛星デジタルラジオ放送サービス(SDARS)を介して送信される番組(特に北米領域で使用される)を受信し又は衛星測位システム(GPS)を介して送信される位置データを受信する特にパッチアンテナを使用するとき、樹脂材料を基板に使用できることが好ましい。それにより、誘電損失、特にマイクロ波損失を最小限に抑制することができる。例えば、2から20の間でεr値を変更できることが好ましい。
【0055】
図示の実施の形態では、例えば、基板3の頂壁3a(又は通常頂壁3a)上に配置する導電性の放射面(放射器面)11は、頂壁3a上の金属薄膜で形成される。金属薄膜で頂壁3aを金属化するとき、例えば、基板3の頂壁3a上に金属製の薄板を接着し又は圧着して、良好に固定することができる。
【0056】
更に、閉回路状の放射面として放射面11を形成せずに、一周する閉回路面で包囲される少なくとも1つの切欠部13を形成して、一周する(閉回路状の)放射面形式で放射面11を環状又は枠状に形成し、放射面11の給電構造体15が切欠部13の内部に設けられる。
【0057】
換言すると、特に中心軸7に対してほぼ垂直に配置される平面内でかつパッチアンテナ1のほぼ中心を貫通する中心軸7周りに一周して、環状及び/又は枠状の放射面11が配置され形成される。
【0058】
パッチアンテナ1に通常設けられる接地電位面17を同様に金属化形式で基板3の底壁3bに又は底壁3bの下方に形成することができる。図示の実施の形態では、基板3の縦方向と横方向よりも縦方向と横方向に大きい寸法を有する接地電位面17は、基板3の側壁3cを越えて外側に延伸する。
【0059】
その場合に、金属製の薄板により接地電位面17を形成することができる。また、パッチアンテナ1に向く頂壁に金属体として接地電位面17を形成することが好ましく、回路基板LP上に形成される金属体上にパッチアンテナ1を構成する基板3の底壁3bを載置し、位置決めし、例えば接着することができる。
図2と
図2aは、回路基板LPの適切な使用状態例の断面図を示す。その場合に、例えば、別体の専用接地電位面を使用せずに、パッチアンテナ1の基板3を自動車車体の薄板上に位置決めし、例えば接着により取り付ける構造部分として接地電位面17を構成することもできる。
【0060】
図1に示す本発明の実施の形態では、側壁又は側面3cに一周する側面放射構造体18もパッチアンテナ1に設けられるので、側面放射構造体18は、基板3の頂壁3a上の放射面11に対し通電可能に接続されて、放射面11に合体され接続される。
【0061】
図示の実施の形態では、放射面11に通電可能に接続され又は放射面11に合体される放射面11側に配置される上端19aを各々有する多数の側面放射部19が側面放射構造体18に設けられる。上端19aとは反対側の下端は、接地電位面17とは通電接触せずに間隔を開けて、放射面11から離間する方向に接地電位面17に向かって一定距離延伸する。
【0062】
側面放射部19の下端により、少なくとも各側壁3cの部分的に異なる高さで延伸する不通電の間隙領域(切欠き部又はスリット)20が隣接する2つの側面放射部19間に形成される。
【0063】
それにより、基板3の頂壁3a上に配置される放射面11と、側壁又は側面3cに形成される複数の付属側面放射部19を有する付加的な側面放射構造体18とを備える全放射面体、即ち全放射構造体25が究極的に形成される。従って、基板3の外側を構成する側面3cを利用して、パッチアンテナ1の寸法を増大せずに、放射構造体の全面積を増加することができる。同時に、側壁3cに放射構造体を拡幅して、全放射構造体を拡張し又は増大し更に、特に、全放射構造体を包囲して側面放射部19を間隙領域20から分離する境界線を規定する全区画線又は輪郭線23も増大する。
【0064】
前記実施の形態では、基板3の一周する側面、即ち側壁3c上に又は側壁3c領域内に側面放射部19を形成して、側面放射構造体18を直接設け、特に、頂壁3a面上に配置される放射面11と共に、対応する表面領域上の金属化面形式で該当する全放射構造体25を形成することができる。特に、例えば、側壁を越えて側方に張り出す支持構造を使用するとき、側壁3cの各表面に対して側方に間隔を空けて側面放射部19を設けて、例えば下方に開放する箱形で基板上に支持構造体を取り付けられるので、基板3の側壁3cに対して間隔を空けて比較的薄いフランジ部を一周して形成して、フランジ部上に側面放射構造体18を形成できる点に留意されたい。また、例えば、金属製の薄板で形成した全放射構造体25に角を形成し、屈曲部を設ける等の加工が可能であるから、基板3上に配置される放射面11を側面放射構造体18に接続させて、側壁3cの表面に対して離間して側面放射部19を配置することが好ましい。基板の側面及び側壁3c上に側面放射部19を一般的に直接形成するのみならず、側面又は側壁3cの前に間隔を空けて配置される側面領域及び側壁領域S内にも側面放射部19を設けることもできる。前記のように、内部に側面放射構造体18を部分的に設けかつ/又は形成する側壁空間Sにも言及する。他の実施の形態についてこの点を後に更に説明する。
【0065】
図1に示す実施の形態の側面放射部19は、基板3の全体高さHの部分高さ19’に延伸し、基板3の底壁3bの前に帯状部(距離)33を空けて終了する。
【0066】
同様に、間隙領域20は、2つの側面放射部19間に基板3の部分高さ20’に延伸し、基板3の頂壁3aの下方で帯状部(距離)29をもって終了する。
【0067】
パッチアンテナ1の左側では、側面放射部19は、上方の放射面11から部分高さ19’だけ下方に延伸するのに対し、パッチアンテナ1の右側では、間隙領域20が延伸する断面図を
図2に示し、間隙領域20は、接地電位面17の部分高さ20’だけ上方に延伸し、基板3の頂壁3aの前帯状部29をもって終了する。
【0068】
この形状により、放射面11側に配置される側面放射部19の複数の端部は、全体に渡り側壁3c上の導電性の帯状部29を介して互いに接続される。同様に、複数の不通電の間隙領域20は、下方に配置される帯状部33を介して互いに接続され、側面放射部19の下方への延伸領域は、帯状部33の前で終了する。
【0069】
図示の実施の形態では、部分高さ35aを有する重複領域35内では導電性の側面放射部19と間隙領域20とが互いに並置して形成される。
【0070】
間隙領域20の高さ20’、側面放射部19の高さ19’及び重複領域35の高さ35’を異なる広範囲内で選択することができる。側壁3cの高さ全体にわたり又は部分高さのみの範囲内で、間隙領域20の高さ20’、側面放射部19の高さ19’及び重複領域35の高さ35’を決定できる。前記高さ範囲は、制限されない。また、種々の箇所で側面放射部19と間隙領域20の高さと部分高さを異なる寸法に決定して、一周する側壁3cの種々の箇所で他の帯状部29, 33にも異なる値を付与できる。基板3の頂壁3aまで形成されるスリット状の間隙領域(切欠部)20を延伸させる場合もあり、同様に側面放射部19の高さ又は長さを少なくともほぼ接地電位面17の平面まで延伸させることもできる。
【0071】
多数の側面放射部19の幅及び間隙領域20の幅も、広範囲に任意の幅に選択することができる。唯一の実施の形態内でも前記幅を変更できる。側面放射部19の各幅と間隙領域20の各幅を減少する程、その分、区画線/輪郭線23は、拡張され長くなる。
【0072】
即ち、例えば、4個〜16個の側面放射部19と、側面放射部19の数に対応する数の間隙領域20とを周面3c全体に又は側面空間S内に連続的に並置することが好ましい。側面放射部19と間隙領域20の各個数は、10個〜50個又は20個〜40個の間の個数が好ましい。真の限定は存在しないが、側面放射部19と間隙領域20の数が増大する程、区画線/輪郭線23の長さが増大して、好ましい。側面放射部19と間隙領域20の個数は、単なる例示に過ぎず、本発明を限定するものではない。
【0073】
また、側面放射部19と間隙領域20には、種々の異なる形状を選択できる。
【0074】
支持体3の外側の側面又は側壁を利用してアンテナを小型形態に形成できる主たる根拠は、本発明のパッチアンテナ構造の説明から明らかであろう。換言すれば、基板の頂壁3a上にある放射面11を側壁3cの側面放射部19に移行させ拡張することにより全放射構造体を増大できるからである。
【0075】
また、本明細書のパッチアンテナにより、電磁場の垂直分極成分(地上アンテナ利得)を増幅することができる。即ち、図示の実施の形態では、小さい垂直の放射器要素となる指状の側面放射部19により櫛状の側面放射構造体18を形成できるからである。
【0076】
図1及び
図2に示す実施の形態並びに
図3aに示す側面放射構造体18は、矩形の複数の側面放射部19と、隣り合う側面放射部19間に配置される矩形の間隙領域20とを有するので、側面放射構造体18は、屈曲する連続的な矩形パルス状構造、即ち屈曲する区画線及び/又は輪郭線23を形成し、矩形の側面放射部19は、周方向に配置される矩形パルス状の間隙領域20に対して輪郭線23を介して分離される。
【0077】
図3bは、全放射構造体25に属する側面放射部19と間隙領域20を互いに分離する波形構造(波形線は、正弦波状、余弦波状又は他の波形状でもよい)即ち、波形に延びる区画線又は輪郭線23を単に図式的に示す。
【0078】
図3cは、側面放射部19と間隙領域20とを分離するジグザグ状の区画線23を示す。
【0079】
側面放射部19と間隙領域20とに異なる形状を付与できるが、例えば、
図3dは、側面放射部19と間隙領域20とを分離する次元分裂形(フラクタル状)の区画線23を示す。
【0080】
図3dは、側面放射部19及び/又はその間に配置される間隙領域20が次元分裂形の区画線及び/又は輪郭線23を形成する実施可能な他の形態を示す。従って、側面放射部19と間隙領域20とを分離する輪郭線23の形態可能性は、多様かつ無制限である。
【0081】
例示するように、放射面11から接地電位面17方向に指状、舌片状、矩形状、三角形状、台形状、櫛形状又は波形等又は例えば次元分裂形に延伸する多数の側面放射部19及び/又は不通電間隙領域20を側面放射構造体18に設けることができる。従って、前記形態では、区画線及び/又は輪郭線23は、より長くなり、即ち基板3の側壁に沿う純粋な周面輪郭線よりも大きい。
【0082】
従って、前記実施の形態は、究極的に基板3の一周する側面又は壁面3cを含む外側面上に拡幅して、基板3の体積を最適に利用できる環状又は放射器形状の放射面11を示す。それにより、基板3の体積を増大させずに全放射構造体25を増大することができる。接地電位面17方向に適切に延伸する隣り合う2つの側面放射部19間に形成される間隙領域20により、環状又は枠状の全放射構造体25の周面輪郭線、特に画成輪郭線23の全長を究極的に更に増大できるので、基板3の体積材料を50%まで削減しかつ/又は広伝送帯域を50%まで増大できる。
【0083】
図1〜
図3dは、支持体又は基板3の外側の側面3cを利用して、本発明のアンテナの小型の形態を改良できる上、側面又は側壁3cでの様々な設計と幾何学形態により全放射構造体25を広範囲に拡大できる可能性を示す。また、
図3a〜
図3dに示す変形例(単なる例示)では、電磁場の垂直分極成分(地上アンテナ利得)を増幅できる。即ち、全体的に櫛状に作用する指状の側面放射部19は、小型の垂直放射器要素として機能する。
【0084】
パッチアンテナに適用した本発明の給電構造体を以下更に詳述する。
【0085】
特に、
図1に示すように、給電構造体15は、四分円周細片51を備え、アンテナ給電導線(内側導体)42は、基板3内の対応する孔3dと接地電位面17内の対応する孔17aを貫通しかつ偏心して示す給電領域53で終了する。その場合に、同軸の給電導線43の内側導体43’の延長部として給電導線42を使用でき、外側導体43”は、接地電位面17に通電可能に接続される。その場合に、四分円周細片51は、位相調整導線47形式の通常の位相調整器を構成する。
【0086】
好適な実施の形態では、説明しかつ図示するパッチアンテナは、回路基板LP上に位置決めされて接続され、回路基板LPの頂壁(従って基板3の底壁3b)に設けられ又は形成される金属化面は、接地電位面17として作用する。また、更に大きい寸法を有する回路基板LPの頂壁上の金属化面として
図1に示す接地電位面17を設ける場合もある。何れも給電導線42の領域内で、金属化面に切欠きを設けかつ回路基板LPに貫通孔を形成し、貫通孔を通して給電導線42を回路基板LPの底壁に導出して電気的に接続し、特に半田付けされる。その限りでは、回路基板LP内の該当する孔を貫通接続部として形成でき、接地電位面17とは接触しない点に注意を要する。この場合に、同軸の接続導線は存在しない。
【0087】
その限りでは、
図2aは、回路基板LPも一緒に
図2に相当する断面図を示す。
【0088】
給電領域53を偏心して配置すると、位相調整導線47内に2つの異なる長さの結合導線47’と47”とが形成され、図示の実施の形態では、結合導線47’と47”は、一周して閉成する環状又は枠状の放射面11の対応する内側縁11aの中央の接続部48まで延伸して、中央の接続部48で放射面11に移行することが好ましい(本実施の形態では、結合導線47’, 47”の中央の接続部48での結合は、正方形に形成される切欠き各内側縁11aまでの該当する長さを付与する)。位相調整導線47内の種々の到達時間長さにより、異なる長さに形成される結合導線47’, 47”を例えば90°の所望の位相差に調節することができる。それにより、パッチアンテナの円分極が得られる。
【0089】
放射面11の環状構造又は枠状構造により、標準パッチアンテナとは異なり、非連続性(面取り)を介してではなく、給電領域53を介して形成される位相調整導線47により所望の周期を発生することができる。周期状態は、特に、環状及び/又は枠状の放射面11が外側面又は側面3cに拡幅され、支持体、即ち基板3の体積を最適に利用できる利点を生ずる。側面放射部19と切欠き面20とを有する側面放射構造体18により、環状及び/又は枠状の全放射構造体25の周面を更に増大させ、それにより、支持体材料の体積を50%まで減少させることができる。
【0090】
結合導線47’, 47”を有する位相調整導線47を備える給電構造体15は、(後記実施の形態と同様に)基板3の頂壁3aに又はその上方に設けられるが、環状及び/又は枠状の放射面11と同一平面内に通常設けられ又は配置される。
【0091】
図4は、環状及び/又は枠状の構造を有する全放射構造体25の補足的な等価回路を示し、環状及び/又は枠状の放射構造体は、交互に連続して側壁3c上に形成される側面放射部19と間隙領域20により形成され、放射構造体の電気特性は、互いに交互に連続する直列インダクタンス39と直列容量41によって定められる。
【0092】
本発明による前記パッチアンテナは、適切な材料を選択して適切に寸法を設計することができる。例えば、下記の材料と寸法により、パッチアンテナを形成できる:
【0093】
外側寸法:25mmx25mmx6mm
スリット幅又は切欠幅:(間隙領域20の):1.5mm
重複領域35の高さ:3.6mm
側面放射部19の幅:2mm
給電領域53に対する中心軸7の間隔:4mm
位相調整導線47及び結合導線47’47”の幅:2mm
切欠部13の側面長さ:14mmx14mm
基板材料比誘電率:ポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS) εr=3.2
誘電正接Tan(δ)=0.0007
【0094】
前記寸法は、広い範囲内で前記値とは相違してもよいことは勿論である。即ち好ましくは50%未満、特に40%未満、30%未満、20%未満かつ特に10%未満の偏差も、同様に好適な実施の形態を得ることができる。しかしながら、上方に向かい更に任意に適切な前記値を増大できるので、規模において好ましくは60%未満、70%未満、...90%未満、そして特に100%未満の偏差も、同様に可能である。
【0095】
樹脂の比誘電率εr値に関して、この偏差は特に上方に向かって多様な値に設定できる(その限りでは制限は原則的にない)。即ちεr値は、例えば、2と20との間に設定できる。特に、衛星デジタル音声ラジオサービス(SDARS)を介して送信される番組の受信に本発明によるパッチアンテナを使用するとき、特に、εr値を2と10との間の設定に適し、その場合に、基板及びパッチアンテナに付随して一周する放射面は、15mmx15mm〜30mmx30mmの寸法を有する。
【0096】
例えば、衛星利用測位システム(GPS)信号の受信に本発明によるパッチアンテナを使用するとき、10と20との間のεr値材料を用いる基板を使用すること好ましい。この場合に、適切なパッチアンテナ大きさ、即ち平面図上基板寸法は、例えば15mmx15mm〜25mmx25mmの間にあることが好ましい。前記値の間で、各1mmきざみの任意の異なる大きさも同様に使用できかつ変更できる。
【0097】
図5a〜
図5hは、例えば
図1に示す(平面図上)正方形に形成されるパッチアンテナ(1)に使用できる種々の給電構造体15の平面図を示す。
【0098】
図5aは、
図1に示す実施の形態に示す給電構造体15の変形例を略示する。
【0099】
図5b〜
図5jは、全て他の構造も同様に多様に変更できる変形例を示す。
【0100】
図5bは、2つの結合導線47’, 47”を有する位相調整導線47の四分円の代わりに、直角の導線構造体の変形例を示し、導線脚の移行領域となる角部61(中心軸7が貫通する)ではなく、角部61から変位する導線脚内に給電領域53を設け、中心の給電領域53から放射面11の内側縁11aまで異なる長さの結合導線47', 47”が得られる。
【0101】
図5cは、角度270°の円弧状の通電可能な通電環を構成する位相調整導線47を備える変形例を示し、位相調整導線47の結合導線47’, 47”は、互いに角度90°変位して配置されかつ放射面11に接続される2つの接続部48で環状又は枠状の放射面11の内側縁11aに接続される。給電用の給電領域53(中央に配置され、中心軸7は、給電領域53を通り延伸する)に共通に接続される第1の径方向給電脚57は、分岐箇所57’から反対方向に延びる2つの結合導線47’, 47”に接続される。
【0102】
図5dは、複数の屈曲部を形成して矩形状に延伸する結合導線47’, 47” の変形例を示し、結合導線47’, 47”は、異なる幅と長さに選択され、給電に関して90°の位相差を得ることができる。
【0103】
図5eは、分岐する2本の結合導線47’, 47”を設けた位相調整導線47の複雑な構造の変形例を示し、2本の結合導線47’, 47”は、図示のように、複数の屈曲部を介して給電領域53から放射面11の内側縁11aに設けられる接続部48に接続される。
図5eから明らかなように、2本の結合導線47’, 47”は、互いに垂直な2つの付加的結合導線47a, 47bを介して接続部48に再度互いに通電可能に接続される。
【0104】
図5fは、
図5eの結合導線とは異なる形状で、放射面11から通電不能に分離しかつ容量結合した位相調整導線47の2本の結合導線47’, 47”を示す。互いに垂直に配置される2つの結合導線47’, 47”は、放射面11を有する基板3の側面形成面に対して垂直に延伸する。また、2つの結合導線47’, 47”は、互いに直角に配置され、同様に互いに直角に配置される2つの接続導線47a, 47bは、結合導線47’, 47”に対して平行にかつ離間して配置され、2つの接続導線47a, 47bの対向端部は、接続部48で放射面11に接続される。結合導線47’, 47”に対して接続導線47a, 47bを平行に配置すると、形成される位相調整導線47の本来の結合導線47’, 47”に対し、接続導線47a, 47bが容量結合される。
図5fに示す位相調整導線47でも、前記実施の形態と同様に、位相調整導線47の全長に対して給電領域53を同様に偏心して配置して、接続部(給電部)48で位相を90°偏移させ、放射面11の内側縁11aに対し角度90°変位して接続部(給電部)48が設けられる。環状及び/又は枠状の放射面11及び環状及び/又は枠状の全放射構造体25での容量結合は、更に、アンテナ利得ビーム(ローブ又はビーム)が約9°〜11°傾斜する。特に傾斜する車両屋根では、これは、アンテナを設置する構造的な傾斜状態の補償に有利である。
【0105】
閉回路状の給電構造体を構成する矩形の枠体を示す
図5gの位相調整導線47にも原則的に同様の位相調整法を適用でき、給電領域53から延伸する2本の結合導線47’, 47”は、角度90°変化する2つの接続部48を介して放射面11に電気的に接続される。その場合に、2つの接続部48は、他の接続導線47a, 47bを介して再度互いに接続される(
図5eの実施の形態と同様に、
図5gの付加的接続導線47a, 47bは、角部付近で内側に折り返される)。
【0106】
図5hに示す実施の形態は、
図5gの実施の形態に基づくが、中央に十文字に配置される2本の付加的接続導線47a, 47bを特徴とし、付加的接続導線47a, 47bを介して結合導線47’と47”が互いに接続されかつ接触点48に接続される。
【0107】
図5jと
図5gは、基板3と放射面11の輪郭に一致しない内側輪郭を有する切欠部13を設ける実施の形態を示す。即ち、例えば
図5iは、平面図上正方形のパッチ11を構成する正方形の基板3に円形縁部を有する切欠部13を設ける例を示す。位相調整導線47は、角度90°変位して直角に延伸する2つの脚を有する。
【0108】
図5jは、円形に形成されるパッチアンテナと放射面11に対して、正方形の縁部を有する切欠部13を設ける例を示す。位相調整導線47は、部分円形状(角度90°部分円又は1/4円)に形成される。様々な組合せと変形例を適用できる例として本例を示す。
【0109】
図6は、パッチアンテナ及び放射面を有する基板の幾何学形態を(平面図上)必ずしも正方形に形成する必要がなく、異なる形状に形成できる例を示す。通常、規則的な多角形状に形成することが好ましい。
【0110】
図6は、例えば円筒状の基板3の頂部に形成される放射面11と、内側に配置される円形の切欠部13とを円形に形成する例を示す。本例でも、給電導線42に接続される偏心する給電領域53に接続される位相調整導線47に角度90°偏移する2本の結合導線47’, 47”を設け、放射面11の環状(通常枠状)の一周する細片に結合導線47’, 47”を接続部48で通電接続して、位相を角度90°偏移させ、他の実施の形態と同様に、円分極されるパッチアンテナを駆動することができる。
【0111】
図6では、2本の結合導線47’, 47”が対称となる位置に第3の径方向腕47c、即ち通電可能な細片部47cを形成して、放射面11に結合し、細片部47cは、給電領域53に連絡する(互いに直角な2つの折り曲げ部を備える)より長い結合導線47”に対して僅かな間隔47cをもって終了することが好ましく、第1の結合導線47’は、環状の放射面11の接続部まで径方向に延伸する。
【0112】
例えば、前記パッチアンテナを下記値で形成できる:
【0113】
基板/放射面11の外側半径(中心軸7から測定):15mm
切欠部13の内側半径11a:8.2mm
基板全体高さ 6.4mm
中心軸7までの給電領域53距離:4.5mm
重複領域35での側面放射部19高さ:4.6mm
切欠き20幅:2mm
第3の細片部47cと第1の結合導線47’の間のスリット幅47’c:7.2mm
結合導線47’,47”幅:2mm
基板材料:εr値=2.5のスチレン樹脂(PS)
誘電正接Tan(δ)=0.0001
【0114】
本例でも、例えば、正方形のパッチアンテナに関して前記ように、正方形基本形状の基板又は上面を適切に変形することができる。同様に、εr値も変更することができる。正方形の前記基本形状の寸法設計の代わりに、本実施の形態では、測定値も変更することができる。
【0115】
図1〜
図6の実施の形態から変更した給電構造体を
図7について以下説明する。
【0116】
図7の実施の形態では、給電領域53に接続される2本の結合導線47’, 47”を有する位相調整導線47に加えて、第2の給電領域153に接続される他の2本の結合導線147’, 147”を有する第2の位相調整導線147を設け、給電領域153を有する位相調整導線147は、給電領域53を有する第1の位相調整導線47に関して中心軸7に対して、角度180°回転対称位置に配置され、接続部148にて放射面11に結合される。
【0118】
図7と
図8の実施の形態では、180°混成(ハイブリッド)位相調整器253を介して2つの給電領域53と153に電力が供給される。この給電法により、帯域幅を更に拡大することができる。また、アンテナの指向性は、対称となる。その場合に、アンテナ利得ビーム(ローブ又はビーム)は、傾斜しない。180°混成位相調整器253の全給電は、該当する給電導線43の内側導体43’”を介して行われる。
図8の給電原理は、
図4に示す等価回路図に関連する。
【0119】
前記変形実施の形態では、位相調整導線47及び第2の位相調整導線147を有する各給電領域は、一周する放射面11に対して90°偏位して給電を行う。
図4の変形例でも、
図8の実施の形態でも、給電領域53及び153に接続される結合導線47, 47”及び147’, 147”は、各位相調整導線47及び147を形成して90°偏移して各対の給電領域48及び148に接続する必要はない。この場合に、垂直軸又は対称軸7に対する位相差は、90°若しくは45°の他に、30°又は例えば、各付加的結合導線47’、47”又は147’、147”を介して適切な位相差を選択するとき、67.5°の位相差も可能である。前記各場合に、原則的に円分極される電波を送信し又は受信することができる。
【0120】
図9は、
図2とは異なり、例えば平面図上正方形又は円筒形状のパッチ放射器1の変形実施の形態の断面図を示し、基板3の頂壁又は底壁3a, 3bに対して垂直でなく、放射面11に対して垂直ではなく、傾斜して延伸する側壁3cがパッチ放射器1に形成され、パッチ放射器1の全体形状は、円錐台又は正角錐(ピラミッド)台形状に形成される。図示の実施の形態では、側壁3cは、中心軸7に対して角度αで傾斜する。基板3の底面又は底壁3bと側壁又は側面3cとの間で対称軸又は中心軸7を通る垂直切断面に沿って角度αが形成される。側面放射部19とその間に配置される間隙領域20は、傾斜する側面3c上に周方向に交互に配置される。
【0121】
広範囲に角度αを設定することができる。勿論、角度αは、0°よりも大きい。それでなければ、三次元基板は、ほぼ存在せず、放射面構造全体が平面内に配置されるからである。従って、10°を超え、特に20°を超え、30°を超え、40°を超え、50°を超え、60°を超え、70°を超え、かつ80°を超えて大きい角度α値が望ましい。角度αは、90°が好ましい。
【0122】
図10の断面図に示すように、90°を越えて角度α値を増加することも理論的には可能である。本例では、基板3は、
図9に対してほぼ逆さまの構造で形成され、放射面11は、頂壁3a上に設けられる。側壁3cは、
図9の実施の形態に対して逆に傾斜する。本例でも、実際に三次元の基板を形成するために、角度αは、180°未満であることが好ましい。170°未満、特に160°未満、150°、140°、130°、120°、110°及び特に100°値が好ましい。
【0123】
例えば、金属製の薄板を使用しても放射構造体全体を形成できかつ側壁3cの表面から前方に離間して側面放射部19を配置する
図2及び
図2aと同様の3つの断面図を
図11〜
図13について以下説明する。
【0124】
図11に示す変形例では、使用する薄板は、打ち抜き加工され、例えば、接着層又は両面接着テープを使用して基板の上面3aに薄板を接着して、放射面11上に配置することができる。予め適切に打ち抜き加工された側面放射部19を下方に屈曲し折り曲げて、一周する角部61が形成されるので、側面放射部19は、側面領域又は側壁領域S内に配置されるが、側壁3cの表面上に直接形成され又は位置決めされない。
【0125】
図11に示す側方間隔Aを広範囲に任意に設定することができる。異なる角度で屈曲できる側面放射部19を上方の放射面部分11に対して必ずしも角度90°に形成する必要はなく、
図9の実施の形態と同様に、側壁部分を角度αで傾斜して形成する2つの他の例を
図11に破線で示す。
【0126】
図12は、例えば、接地電位面17に向かい下方に延伸する側面放射部19の側面空間又は側壁空間S内に少なくとも1つの他の屈曲部19bを設け、接地電位面17に対して平行に又は傾斜する角度で延伸しかつ側壁又は側面3c上で又は側壁又は側面3cに対して間隔を空けて配置される自由端部を屈曲部19bに設ける他の変形例を示す。
【0127】
図13は、側壁3cから間隔を空けて側面空間又は側壁空間S内に配置する側面放射部19に複数の屈曲部161を設け、例えば、少なくとも垂直部と水平部とを交互に連続する一周するある種の段差構造を複数の屈曲部161に形成する断面図を示す。
【0128】
特に、通電可能な薄板の打ち抜き加工により屈曲部161を有する角部61を放射器又は放射構造体を全体的に形成するとき、必要な位相調整導線47を残存させる打ち抜き工程により、全放射構造体25の一部とする結合材料から放射面の残部と一体に特に頂部の適切な切欠部13を形成できる。
【0129】
前記実施の形態では、側面放射部19は、基板3の全周囲に連続的に閉回路状又は環状に通電可能に形成される。また、変位しながら周方向に延伸する複数の側面放射部19間に点状の接続部のみを角部61内に設けることもできる。特に、角部61の成形と打ち抜き可能な金属製の薄板によりパッチアンテナを形成するとき、側面放射部19を角部61で折り曲げて、特に角部61内で隣接する複数の側面放射部19から側面放射部19を打ち抜き線又は角部61により分離することができる。
【0130】
図14は、角部61を形成する金属製の薄板を使用する本発明によるパッチアンテナの他の変形実施の形態を示す。側面3cに沿って延伸し又は側面3cから間隔を空けて角部61から下方に延伸する側面放射部19は、金属製薄板から同時に打ち抜き加工される上方の角部61と共に形成される。金属製の薄板を打ち抜き加工する実施の形態では、給電領域53に隣接する2本の結合導線47’, 47”を有する位相調整導線47も、打ち抜き加工される金属製の薄板の一部である。
【0131】
本実施の形態では、全放射構造体25及び角部61と共に打ち抜き加工される金属製の薄板の一部として特に適切な長さの給電導線42を形成することができ、また、打ち抜きに加工により上方の放射面11内に切込み149が形成される。
【0132】
本実施の形態では、基板3の頂壁3aに形成される4つの調整ピン97を取付位置に配置するとき、上方の放射面11内の対応する位置に形成される孔97’を調整ピン97が貫通して、放射面11の取り付け位置を設定し調整することが好ましい。
【0133】
図15は、給電領域53から下方に折り曲げられて垂下する金属細片により形成される給電導線42は、給電位置又は半田接続部83に連絡して、回路基板LPに通電接続される断面図を示す(
図2及び
図2a)。
【0134】
図14及び
図15に示す切込み98は、基板を−例えば樹脂製の場合−極力無駄なく形成する製造技術上の条件の意味に過ぎない。
【0135】
図16、
図17及び
図18は、開口部103aを通じて底壁3bから接近できる中空室103を形成する基板3を示す。このように、上部に配置される天井3dと一周する側壁3cとを有する箱形の基板が形成される。例えば、
図17と
図18に示すように、付加的な回路基板107を中空室(内部空間)103内に収容しかつ電気部品、電子部品又はそれらの組立体109を回路基板107上に実装することができる。その場合に、例えば
図17に示す中間高さ又は
図18に示す上方の天井壁3dの底壁に直接に設置する等、任意の高さに回路基板107を中空室103内に収容することができる。
【0136】
天井壁3dの底壁と内側壁3’c上に形成される金属化層により、中空室103全体を内張し又は被覆して、中空室103全体は、側壁と上壁で基板3に対し電磁遮蔽される。同様に、理論的には、導電性、金属化され又は金属製の薄板で適切な大きさに形成された箱体を中空室103内に装着することができる。
【0137】
図18は、回路基板LPの開口部117の裏面に係合するまで、回路基板LP内の開口部117を通して、2つのばね装置115のばねアーム117’を差し込み、回路基板LPの所定の位置に基板3を保持するパッチアンテナを示す。
【0138】
電磁波及び特に円分極された電磁波の送信にも受信にも前記アンテナを原則的に使用できる。アンテナは、特に通常通り送信領域及び受信領域の周波数を−僅かでも−互いに区別できれば、同時に送信及び受信に使用することもできる。受信する信号は、給電導線を介して回路基板上に実装される電子素子及び/又は他の後段の電子組立体での他の処理に伝達される。
【0139】
前記実施の形態は、例えば衛星利用測位システム(GPS)信号と衛星デジタル音声ラジオサービス(SDARS)信号の受信に、比較的僅かな手間と費用で2つの3次元パッチアンテナを入れ子に配置する構造を示す。特に、パッチアンテナ装置にセラミック誘電体を要しない価格上有利な構造が得られる。また、比較的小型の構造を実現できる。更に、散乱行列(S行列)パラメータ、利得及び軸比が、要請に一致する。
【0140】
図19以下の図面は、環状又は枠状のパッチアンテナに相当する積層型パッチアンテナ形式の本発明によるアンテナ構造の他の変形実施の形態を示し、このアンテナ構造は、第1又は外側のパッチアンテナAと、パッチアンテナAの下方又は内部に配置される第2のパッチアンテナBとを備え、第1のパッチアンテナAは、第2のパッチアンテナBを多少でも完全に覆い又は包囲する。この構造により、アンテナの性能を低下させずに、アンテナ構造全体の寸法を更に縮小できる容量結合を第1のパッチアンテナAと第2のパッチアンテナBとの間に形成することができる。詳述すれば、第1のパッチアンテナAの放射面11と接地電位面17の間にかつこれらから一定距離離間して放射面211(第2のパッチアンテナB)を配置し、特に第1のパッチアンテナAの放射面11と接地電位面17との間の全体高さ又は全体間隔の20%〜80%の間、特に30%〜70%の間、特に40%〜60%の間の中間領域内に放射面211が配置される。
【0141】
換言すれば、下記実施の形態により、特に衛星利用測位システム(GPS)アンテナの周波数帯域幅と利得の両方が改善される。また、積層型パッチアンテナの従来の解決法に対して価格を低減することができる。2枚の薄板と単一の樹脂製支持体のみによりアンテナ構造を好適に形成できるからである。
【0142】
その場合に、積層型パッチアンテナ装置の三次元基本的構成を
図19に示し、分解斜視図を
図20に示す。
【0143】
図1以下に示すパッチ放射器と原則的に同一の構成を有し、最上段に配置されるパッチ放射器Aを
図20に示す。打ち抜き加工した1枚の薄板に角部を形成してパッチ放射器Aを形成することができる。同時に打ち抜き加工により十分な長さの給電導線42を2本の位相調整導線47’, 47”の間に形成するのに必要な切込み11’が一周する環状又は枠状のパッチ放射面内に形成され、十分な高さで折り曲げて形成される給電導線42は、アンテナ装置全体を通って支持体装置の下方領域に延伸することが好ましい。
【0144】
図示の好適な実施の形態では、
図20示す中間高さに第2のパッチアンテナBを配置し、パッチアンテナAとパッチアンテナBは、同様のアンテナ構造を有する。
【0145】
図示の実施の形態では、第2のパッチアンテナ装置Bは、環状又は枠状の放射面211と、一周する側部に形成される側面放射構造体218とを有し、側面放射構造体218は、多数の側面放射部219と、隣り合う側面放射部219間に形成されかつ放射面11とは逆側に開放する切欠き220とを有する。同一又は類似の構成により2つのパッチアンテナAとBとを形成できるので、パッチアンテナAに付する参照符号に数字200を加えた数字をパッチアンテナBの対応する構成に付する。この場合も、薄板片又は金属片に打ち抜き加工を行い、部分に角部を形成して放射面211を形成でき、この場合に同様に、2本の位相調整導線247’と247"を有する給電構造体215が切欠領域213内に形成され、放射面211の平面に対し横方向、好ましくは垂直に延伸する給電導線242は、位相調整導線247’と247"間に同様に形成される。金属製の薄板の打ち抜き加工により、適切な給電導線242を十分な長さで打ち抜き、角部を形成しながら折り返して垂直下方に好適に延伸させるために、放射面211内に他の切込み211’を形成することが必要であり、十分な長さを有する給電導線242は、支持構造体体内を通過して下方に延伸する。2本の位相調整導線247'と247”の各々は、切欠領域213を形成する放射面211の内角部に設けられる2つの接続部248まで延伸する。
【0146】
図20の最下段は、誘電材料により形成される支持構造体10を示す。支持構造体10は、一周する側壁301と、支持装置300の内部に形成される内壁302と、取付台303と有する支持装置300を備え、側壁301、内壁302及び取付台303は、異なる高さで延伸する。支持装置300により、下方又は内側に配置されるより低い平面又はより低い水準に第2のパッチアンテナBを載置し又は取り付け、また下方の第2のパッチアンテナBを覆う第1のパッチアンテナAをより高い水準に取り付けられるので、上方の第1のパッチアンテナAの放射面11は、第2のパッチアンテナBの放射面211よりも下方の接地電位面17から離間する。
【0147】
第2のパッチアンテナBは、環状又は枠状の放射面211を有し、径方向中心に向かって延伸する複数の指部を有する係止装置311を放射面211の領域内に設け、支持装置300の一部として係止部材313を例えば茸形に形成し、指状の係止部材311を下方の係止部材313に嵌合させて、支持装置300の対応する支持体部上に下方の第2のパッチアンテナBを固定的かつ確実に保持することにより、支持装置300第2のパッチアンテナBを取付けと組立を係止装置311により容易に行うことができる。
【0150】
載置部となる側壁301、内壁302及び取付台303を有する誘電体形式の支持装置300には、横方向かつ放射面211に対して少なくともほぼ垂直に、例えば、角度91°〜95°で下方に延伸してかつ一周する溝形状の切欠き又は凹部321が形成される。第2のパッチアンテナBを搭載するとき、支持装置300の内側面300’に側面放射部219の下端部が接触するように、側面放射部219は、幾分外側に傾斜して垂下し、側面放射部219により、内側の第2のパッチアンテナBを支持装置300に更に堅固に固定することができる。
【0151】
図22と
図23の断面図は、僅かな高さで外壁301の外側を一周する外縁の内側で上方に開放しかつ一周する溝301’が形成された下方の底領域を有する支持構造体10又は支持装置300を示し、上方の第1のパッチアンテナAの側面放射部19の前方に突出する端部は、溝301’内に嵌合され、側面放射部19の前方に突出する端部は、支持構造300の外壁301の外側面300”に当接する。また、図示の実施の形態では、一周する外壁301の外枠300”内、特に角部内に突起又はフック307(
図20)を形成し、かつ、第1のパッチアンテナAに設けられる側面放射面部19の適切な係止部材19’を切欠き形式で形成し、第1のパッチアンテナAを支持装置300に装着すると、側面放射部19の係止部材19’は、フック307に係止される。フック307と係止部材19'による簡素な係止手段により、外側又は上方の第1のパッチアンテナAを支持構造体10又は支持装置300に確実に固定することができる。
【0152】
図24は、
図20に示すアンテナ装置の底面斜視図を示し、パッチアンテナ装置を適切な箇所、例えば台座に接着するため、接着バンド253をアンテナ装置に設けることができる。また、パッチアンテナ装置には、2本の給電導線42と242が設けられる。平面図上互いに角度180°離間する位置、即ち直径方向に対向して2つの協働する位相調整導線47’と47”及び247’と247”を位置決めしかつ方向付けして、給電導線42と242が互いに妨げられずに、2つのパッチアンテナAとBを配置し位置決めすることが好ましい。この種のアンテナにより、例えば円分極される2つのパッチアンテナを最小の組み込み空間上に取り付けて、例えば、上方又は外側のパッチアンテナを衛星利用測位システム(GPS)リングアンテナとして作動させ、下方又は内側のパッチアンテナを衛星デジタル音声ラジオサービス(SDARS)リングアンテナとして作動させるパッチアンテナ装置を実現できる。2つのアンテナの該当する共振波形を
図25に示す。
【0153】
本実施の形態では、アンテナ装置全体を覆う外側のパッチアンテナAは、例えばグローバルナビゲーションサテライトシステム(GNSS)から送信される信号の受信に適するのに対し、低位置又は内側に配置されるパッチアンテナBは、例えば、衛星デジタル音声ラジオサービス(SDARS)サテライト信号の受信に使用できるように、2つのパッチアンテナAとBの変量を調整することができる。
【0154】
図26と27は、
図20とは異なり、例えば、放射面211の全面(例えば、切欠きなし)を利用して、簡単に分極されるパッチアンテナを構成する第2のパッチアンテナBの簡略化実施の形態を示す。
【0155】
本例では、例えば、正方形又は正方形類似形状を有する中実の誘電体261の上面上で、低く又は内側に配置されるパッチアンテナBの多少でも全面に放射面211が形成される。本例では、例えばパッチアンテナBを構成する誘電体の支持体をセラミック(εr=20〜45のセラミック)で構成するパッチアンテナが使用される。
図19と
図20に示す実施の形態により、多少でも一周する支持体壁301を有しかつ例えば、εr=2〜6の誘電材料で形成される樹脂製枠体が、他の支持体300としてセラミック製の支持体の周りに設けられる。第1のパッチアンテナAの放射面は、前記の構成によりパッチアンテナBの上方に保持されかつ支持される。
【0156】
従って、外側又は上方のパッチアンテナ(好ましくは衛星デジタルラジオ放送サービス(SDARS)アンテナ形式)Aのセラミック製付属部品を省略して、製造価格を節減することができる。特に、衛星デジタルラジオ放送サービス(SDARS)アンテナ形式の外側のパッチアンテナを単純な薄板構造で形成することが好ましい。その場合に、例えば、2320MHz〜2345MHzで≦3dBの高帯域幅アンビギュイティ決定(AR)を実現できる。従って、シリウスXM衛星ラジオ放送基準の相互運用データ通信を確実に行うことができる。
【0157】
また、好ましくは衛星デジタルラジオ放送サービス(SDARS)受信アンテナの形式の外側又は上方のパッチアンテナは、特に衛星測位システム(GPS)位置データの受信性能を向上して、静止位置情報、例えば全地球航法衛星システム(GNSS)の通信範囲内で位置情報を受信することができる。その場合に、例えば、≦7dBを有する高い帯域幅AR(AR Patch Solo≦11dB)にて、頂点の利得4dB(Gen Patch Solo = 3dB)が得られる。
【0158】
例えば、27x27x8mmの外側寸法で外側のパッチアンテナA全体を形成するとき、好ましくは衛星測位システム(GPS)パッチアンテナ等として機能して内側に配置されるパッチアンテナBに18x18x4mm又は例えば25x25x4mmの外側寸法を付与することができる。換言れば、前記外側寸法下の適切な全中間寸法を選択できかつ極めて良好な結果が得られる。
【0159】
また、
図26と
図27に示す第2のパッチアンテナBの第2の放射面211は、
図20の実施の形態のように、多数の側面放射部219を有する側面放射構造体218を一周する端縁に設けることができる。例えば、
図20に示す2本の位相調整導線247’と247”を使用して、一周する側面放射構造体18の有無に関わらず又は円分極されるアンテナになる放射面11を形成することもできる。本例は、更に変更が可能である。
【0160】
最後に、
図28に示す斜視図及び
図29に示す分解斜視図について、他の実施の形態を説明する。
【0161】
本変形例でも、他の全ての前記実施の形態と同様の基本構造でほぼ三次元に形成されるパッチアンテナAを示す。本実施の形態では、放射面11又は11”の幅は、比較的細い枠状に形成される。放射面11の一周する各端縁には、側面放射部19が形成される。図示の実施の形態では、放射面11の各縁部、即ち各稜に長手方向に異なる位置に配置される2つの側面放射面19が設けられ、各側面放射面19は、放射面11の各稜の2つの側面放射部19間の間隔にほぼ相当する幅で、比較的幅広に形成される。平板状又は舌片状の側面放射部19は、垂直下方ではなく、放射面11から外側に傾斜角度で延伸し、従って、放射面11から末広がり状態で基板3方向に延伸し、図示の実施の形態では、側面放射部19の終端部分19”は、基板3の板状の基体の側壁3cに達し、少なくとも側壁3cの一部を把持し、側壁3cに接触しかつ平行に延伸する。
【0162】
板状の基板3の内部に設けられるほぼ台状の隆起、山形断面のスペーサ又は取付台303は、基板3の外側面より内側に変位して角部61内に配置される。全取付台303の高さは、同一である。
【0163】
図示の実施の形態では、第2のパッチアンテナBは、もはや三次元形状ではなく単に平板状の平坦なパッチアンテナとして形成される。基本的に前記実施の形態と同様に、内側に切欠きを形成しかつ適切な給電導線を有する枠状の放射面211として第2のパッチアンテナBを形成でき、同様に2本の協働する位相調整導線247’と247”を通じて給電できる。図示の実施の形態では、平坦な薄板状の第2のパッチアンテナBは、外側周面区画線から内側に間隔を空けて角部内に形成される山形断面の切欠き401を有し、基板(誘電体)3内の取付台303に相補的な大きさ、即ち寸法設計と長さで切欠き401を形成することが好ましい。そのため、誘電体3の上面又は頂壁を越えて上方に張り出す山形断面の取付台303を、第2のパッチアンテナBの放射面11内の対応する切欠き401内に嵌合して、第2のパッチアンテナBを基板(誘電体)3上、即ち基板3の上面3a上に取り付けることができる。この取付構造により、誘電体3の上面3a上に平面的に第2のパッチアンテナBを載置しかつパッチアンテナB内の該当する切欠き401を取付台303に係止することにより、第2のパッチアンテナBを確実に保持しかつ固定することができる。
【0164】
その後、第2のパッチアンテナBを覆いかつ取付台303の角形又は山形の頂壁303’に枠状の放射面11を載置して、基板3と第2のパッチアンテナBの組立体上に第1のパッチアンテナAを取り付けることができる。
【0165】
図示の実施の形態内では、多数の正方形の開口部に本来の誘電体を嵌合することは、決定的に重要ではない。
【0166】
前記変形実施の形態では、薄板構造により2つのパッチアンテナAとBを形成することが好ましい。即ち、打ち抜き加工によりパッチアンテナAとBとを形成し、更に角部を有する適切な側面放射面部分19を同時に形成する三次元構造にパッチアンテナAを変形することができる。また、打ち抜き加工により角部と共に給電導線を2つのパッチアンテナAとBに形成できる。本実施の形態では、角部を打ち抜き加工する際に、屈曲して形成される前記給電導線の代わりに、他の実施の形態を用いて給電用の径方向ピンを使用することが好ましい。即ち、該当する給電箇所に半田付けできる円筒状のピンを外側のパッチアンテナAにも内側のパッチアンテナBにも使用することが好ましい。
【0167】
従って、他の実施の形態と同様に、外側のパッチアンテナを三次元構造で成形する正角錐(ピラミッド状)形状より少ない立方体形状(上部から下部に末広がり状態で配置される側面放射部19)を有する全体構造が得られ、内側に配置される第2のパッチアンテナBは、三次元形状となる側面放射部19のない純粋に平面的形状である。
【0168】
前記アンテナにおいて、衛星デジタルラジオ放送サービス(SDARS)サービスの受信に外側、即ち上方のパッチアンテナ装置Aを使用するのに対し、図示の実施の形態では平坦な内側、即ち下方のパッチアンテナBを衛星測位システム(GPS)サービスの受信に使用することが好ましい。換言すれば、内側に配置される第2のパッチアンテナBは、二次元の構造、即ち二次元面を有するのに対し、外側のパッチアンテナAは、三次元で形成される。