特許第6100341号(P6100341)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6100341構造体の表面に形成されたルテニウム含有触媒層を含む触媒の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6100341
(24)【登録日】2017年3月3日
(45)【発行日】2017年3月22日
(54)【発明の名称】構造体の表面に形成されたルテニウム含有触媒層を含む触媒の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 37/03 20060101AFI20170313BHJP
   B01J 37/02 20060101ALI20170313BHJP
   B01J 37/04 20060101ALI20170313BHJP
   C01B 3/38 20060101ALI20170313BHJP
   C01B 3/48 20060101ALI20170313BHJP
   C01B 32/50 20170101ALI20170313BHJP
   B01J 37/10 20060101ALI20170313BHJP
   B01J 23/46 20060101ALI20170313BHJP
【FI】
   B01J37/03 A
   B01J37/02 301M
   B01J37/04 102
   C01B3/38
   C01B3/48
   C01B31/20 A
   B01J37/10
   B01J23/46 301M
【請求項の数】18
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2015-203734(P2015-203734)
(22)【出願日】2015年10月15日
(65)【公開番号】特開2017-13040(P2017-13040A)
(43)【公開日】2017年1月19日
【審査請求日】2015年10月15日
(31)【優先権主張番号】10-2015-0093080
(32)【優先日】2015年6月30日
(33)【優先権主張国】KR
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 学会名:NAM24(第24回 触媒作用学会) 開催年月日:2015年6月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】511248261
【氏名又は名称】コリア インスティチュート オブ エナジー リサーチ
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】ク キ−ヨン
(72)【発明者】
【氏名】ファン ヨン−ジェ
(72)【発明者】
【氏名】チョン ウン−ホ
(72)【発明者】
【氏名】ユン ワン−ライ
(72)【発明者】
【氏名】オム ヒョン ジ
【審査官】 延平 修一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−088058(JP,A)
【文献】 特表2014−510620(JP,A)
【文献】 中国特許出願公開第102513102(CN,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0261600(US,A1)
【文献】 馬場宣良 他,ルテニウム錯体水溶液からのRuO2薄膜の化学析出,表面技術協会 第81回 講演大会 講演要旨集,1990年 3月14日
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00 − 38/74
C01B 3/38
C01B 3/48
C01B 32/50
JSTPlus(JDreamIII)
JMEDPlus(JDreamIII)
JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造体の表面に形成されたルテニウム含有触媒層を含む触媒の製造方法であって、
ルテニウム(Ru)前駆体含有溶液に沈殿剤を添加して混合溶液を得る第1段階、
前記第1段階の混合溶液を10〜40℃で1次熟成(aging)させることにより、ルテニウム含有沈殿物シード(seed)を形成させる第2段階、
前記1次熟成させた混合溶液を80〜100℃で2次熟成させることにより、ルテニウム含有沈殿物シードを成長させてルテニウム含有沈殿物の粒子を形成させる第3段階、
前記2次熟成させた混合溶液に構造体を接触させ、前記構造体の表面上に前記ルテニウム含有沈殿物の粒子がコーティングされてルテニウム含有層が形成されるように誘導する第4段階、及び
前記ルテニウム含有層を熱処理する第5段階を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記第2段階及び第3段階を順次行うことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第3段階で1次熟成させた混合溶液に構造体を先に入れた後、2次熟成を行うことによりルテニウム含有沈殿物の粒子が形成されるとともに、同時に構造体の表面上にコーティングされることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
さらに、前記ルテニウム(Ru)前駆体含有溶液が白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)、イリジウム(Ir)、オスミウム(Os)、又はこれらの混合金属前駆体を含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記沈殿剤が、アンモニア、KOH、NaOH、尿素、Na2CO3、K2CO3又はこれらの混合物であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記第1段階の混合溶液のpHが、6〜11であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記1次熟成が撹拌下で行われることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記1次熟成が3時間〜48時間行われることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記2次熟成が36時間〜100時間行われることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記構造体が、FeCr合金、SiC、Al、Al合金、Ti、Ti合金又はステンレス鋼からなることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記構造体が、モノリス、フォーム、フェルト、マット、メッシュ、箔又はピンの形態を有することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
ルテニウム含有層を構造体の表面に形成させる方法であって、
ルテニウム(Ru)前駆体含有溶液に沈殿剤を添加して混合溶液を得る第1段階、
前記第1段階の混合溶液を10〜40℃で1次熟成(aging)させることにより、ルテニウム含有沈殿物シードを形成させる第2段階、
前記1次熟成させた混合溶液を80〜100℃で2次熟成させることにより、ルテニウム含有沈殿物シードを成長させてルテニウム含有沈殿物の粒子を形成させる第3段階、及び
前記2次熟成させた混合溶液に構造体を接触させ、前記構造体の表面上に前記ルテニウム含有沈殿物の粒子がコーティングされてルテニウム含有層が形成されるように誘導する第4段階を含むことを特徴とする方法。
【請求項13】
請求項1〜11のいずれか1項に記載の方法で製造され、構造体上に球形のルテニウム含有沈殿物の粒子が溜まってルテニウム含有触媒層が形成されることを特徴とする触媒を用いて水素を生成する段階を含む水素製造方法。
【請求項14】
前記水素生産が、水蒸気改質反応、水性ガス転換反応(Water-gas Shift、WGS)又は選択的酸化(preferential oxidation、PROX)反応であることを特徴とする、請求項13に記載の水素製造方法。
【請求項15】
天然ガスの水蒸気改質反応を利用して合成ガスを製造する方法であって、
i)請求項1〜11のいずれか1項に記載の方法で製造され、構造体上に球形のルテニウム含有沈殿物の粒子が溜まってルテニウム含有触媒層が形成されることを特徴とする触媒を天然ガスの水蒸気改質反応器に適用する段階、
ii)前記触媒を還元させて活性化させる段階、及び
iii)前記活性化された触媒により天然ガスの水蒸気改質反応を行う段階を含むことを特徴とする製造方法。
【請求項16】
前記の段階iii)が、反応温度500〜800℃、反応圧力1.2〜3 bar、空間速度3,000〜60,000 h-1で行われる、請求項15に記載の製造方法。
【請求項17】
選択的一酸化炭素(CO)酸化反応を利用して一酸化炭素を除去する方法であって、
i)請求項1〜11のいずれか1項に記載の方法で製造され、構造体上に球形のルテニウム含有沈殿物の粒子が溜まってルテニウム含有触媒層が形成されることを特徴とする触媒を選択的一酸化炭素酸化反応器に適用する段階、
ii)前記触媒を還元させて活性化させる段階、及び
iii)前記活性化された触媒により選択的一酸化炭素酸化反応を行う段階を含むことを特徴とする製造方法。
【請求項18】
前記段階iii)が、反応温度80〜200℃、反応圧力1.2〜3 bar、酸素過剰率(oxygen excess、λ)1〜4、及び空間速度(GHSV、Gas Hourly Space Velocity)5,000〜10,000 h-1で行われる、請求項17に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構造体の表面に形成されたルテニウム含有触媒層を含む触媒の製造方法及び上記方法で製造された触媒の適用に関する。
【背景技術】
【0002】
従来は、触媒コート層を有する金属構造体の製造において、触媒の前駆体溶液に金属構造体を含浸して触媒を担持する含浸法と担体に触媒を予め担持した粉末触媒をアルミナゾルと混合したスラリー溶液で金属表面に触媒をコーティングする洗浄コーティング方法が代表的な触媒コーティング方法として適用されてきた。
【0003】
含浸法は、少触媒担持量により一定量の触媒担持のためには、担持回数の増加と活性金属粒子の分散度の制御が困難であるという問題がある。また、洗浄コーティングは、コーティング層の厚さの制御及び均一コーティングが困難であり、触媒コート層と金属構造体との結合力が弱いという問題があり、コーティング溶液の損失が大きいため大量の触媒を必要とする。
【0004】
そこで、本発明者らは、金属触媒の前駆体及び沈殿剤を含む混合溶液と金属構造体を接触させて金属構造体上に金属沈殿物を形成し、熱処理して金属ナノ粒子がより均一に高分散担持され、触媒担体層と金属構造体の表面との結合力を向上させた金属構造体触媒を製造する方法を開発した(特許文献1)。
【0005】
しかし、ルテニウム触媒の前駆体を、上記方法に適用してルテニウム触媒層を形成させた場合、金属構造体の表面上でルテニウム触媒層のコーティングが上手くなされないため、上記方法では適切な触媒活性を発揮するルテニウム触媒層の形成が困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】大韓民国登録特許第10-1403698号
【特許文献2】大韓民国登録特許第10-1019234号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、構造体の表面上にルテニウム含有層が均一で、かつ高分散して形成され、優れた触媒活性を発揮するルテニウム含有触媒層を含む触媒の製造方法及び上記方法で製造された触媒の使用方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の態様は、構造体の表面に形成されたルテニウム含有触媒層を含む触媒の製造方法において、ルテニウム(Ru)前駆体含有溶液に沈殿剤を添加して混合溶液を得る第1段階;上記第1段階の混合溶液を10〜40℃で1次熟成(aging)させることにより、ルテニウム含有沈殿物シード(seed)を形成させる第2段階;上記1次熟成させた混合溶液を80〜100℃で2次熟成させることにより、ルテニウム含有沈殿物シードを成長させてルテニウム含有沈殿物の粒子を形成させる第3段階;上記2次熟成させた混合溶液に構造体を接触させ、上記構造体の表面上に上記ルテニウム含有沈殿物の粒子がコーティングされてルテニウム含有層が形成されるように誘導する第4段階;及び上記ルテニウム含有層を熱処理する第5段階を含むことを特徴とする方法を提供する。
【0009】
本発明の第2の態様は、ルテニウム含有層を構造体の表面に形成させる方法であって、ルテニウム(Ru)前駆体含有溶液に沈殿剤を添加して混合溶液を得る第1段階;上記第1段階の混合溶液を10〜40℃で1次熟成させることにより、ルテニウム含有沈殿物シードを形成させる第2段階;上記1次熟成させた混合溶液を80〜100℃で2次熟成させることにより、ルテニウム含有沈殿物シードを成長させてルテニウム含有沈殿物の粒子を形成させる第3段階;及び上記2熟成させた混合溶液に構造体を接触させ、上記構造体の表面上に上記ルテニウム含有沈殿物の粒子がコーティングされてルテニウム含有層が形成されるように誘導する第4段階を含むことを特徴とする方法を提供する。
【0010】
本発明の第3の態様は、上記第1の態様の方法により製造され、球形のルテニウム含有沈殿物の粒子が溜まってルテニウム含有触媒層が形成されたことを特徴とする触媒を提供する。
【0011】
本発明の第4の態様は、上記第3の態様による触媒を用いて水素を生成する段階を含む水素製造方法を提供する。
本発明の第5の態様は、天然ガスの水蒸気改質反応を利用して合成ガスを製造する方法であって、i)上記第3の態様による触媒を、天然ガスの水蒸気改質反応器に適用する段階、ii)上記触媒を還元させて活性化させる段階、及びiii)上記活性化された触媒により天然ガスの水蒸気改質反応を行う段階を含むことを特徴とする製造方法を提供する。
【0012】
本発明の第6の態様は、選択的一酸化炭素(CO)酸化反応を利用して一酸化炭素を除去する方法であって、i)上記第3の態様による触媒を選択的一酸化炭素酸化反応器に適用する段階、ii)上記触媒を還元させて活性化させる段階、及びiii)上記活性化された触媒により選択的一酸化炭素酸化反応を行う段階を含むことを特徴とする製造方法を提供する。
【0013】
以下、本発明を詳しく説明する。
本発明では、構造体の表面上にルテニウム含有層を形成させる際に、図1に示すように、ルテニウム(Ru)前駆体含有溶液と沈殿剤の混合溶液を40℃以下の低温で1次熟成させてルテニウム含有沈殿物シードを形成させた後、80℃以上の高温で2次熟成させることにより、ルテニウム含有沈殿物シードを成長させてルテニウム含有沈殿物粒子を形成させ、その後構造体を接触させて上記構造体の表面上に上記ルテニウム含有沈殿物粒子がコーティングされてルテニウム含有層の形成がなされるように誘導することにより、構造体の表面上でルテニウム含有層が均一で、かつ高分散して形成され、優れた触媒活性を発揮するルテニウム含有層が形成可能であることを見出した。本発明は、これに基づくものである。
【0014】
前述したように、本発明による構造体の表面に形成されたルテニウム含有触媒層を含む触媒の製造方法は、
ルテニウム(Ru)前駆体含有溶液に沈殿剤を添加して混合溶液を得る第1段階、
上記第1段階の混合溶液を10〜40℃で1次熟成させることにより、ルテニウム含有沈殿物シードを形成させる第2段階、
上記1次熟成させた混合溶液を80〜100℃で2次熟成させることにより、ルテニウム含有沈殿物シード(seed)を成長させてルテニウム含有沈殿物の粒子を形成させる第3段階、
上記2熟成させた混合溶液に構造体を接触させ、上記構造体の表面上に上記ルテニウム含有沈殿物の粒子がコーティングされてルテニウム含有層が形成されるように誘導する第4段階、及び
上記ルテニウム含有層を熱処理する第5段階を含む。
【0015】
また、前述したように、本発明によるルテニウム含有層を構造体の表面に形成させる方法は、
ルテニウム(Ru)前駆体含有溶液に沈殿剤を添加して混合溶液を得る第1段階、
上記第1段階の混合溶液を10〜40℃で1次熟成させることにより、ルテニウム含有沈殿物シードを形成させる第2段階、
上記1次熟成させた混合溶液を80〜100℃で2次熟成させることにより、ルテニウム含有沈殿物シードを成長させてルテニウム含有沈殿物の粒子を形成させる第3段階、及び
上記2熟成させた混合溶液に構造体を接触させ、上記構造体の表面上に上記ルテニウム含有沈殿物の粒子がコーティングされてルテニウム含有層が形成されるように誘導する第4段階を含む。
【0016】
本発明における一実施態様として、上記の各段階例えば、第1段階〜第5段階、第1段階〜第4段階、特に第2段階と第3段階は、順次行うことができる。上記第2段階と第3段階を順次行う場合に、ルテニウム含有沈殿物粒子の形成が上手く行われ、構造体の表面上に上記ルテニウム含有沈殿物の粒子が蒸着して均一なルテニウム含有層をコーティングすることができる。また、他の一実施形態として、上記第3段階と第4段階は、同時に行うことができる。即ち、構造体をルテニウム含有沈殿物シード(seed)と接触させた状態で、ルテニウム含有沈殿物シード(seed)を成長させてルテニウム含有沈殿物シードの成長とルテニウム含有沈殿物の粒子のコーティングが同時に行うことができる。言い換えれば、上記第3段階で1次熟成させた混合溶液に構造体を先に入れた後、2次熟成を行ってルテニウム含有沈殿物の粒子が形成されるとともに、同時に構造体の表面上にコーティングすることができる。
【0017】
上記第1の段階は、ルテニウム含有沈殿物の粒子の形成のために、ルテニウム(Ru)前駆体含有溶液に沈殿剤を添加して混合溶液を得る段階である。
本発明において、上記ルテニウム(Ru)前駆体含有溶液は、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)、イリジウム(Ir)、オスミウム(Os)、又はこれらの混合金属前駆体をさらに含み、その後に形成されるルテニウム含有層がルテニウム以外に、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)、イリジウム(Ir)、オスミウム(Os)、又はこれらの混合金属をさらに含有することができる。
【0018】
本発明において、金属前駆体は、金属ナイトレート、金属ハロゲン化物、金属アセテート、金属硫酸塩、金属アセトアセテート、金属フルオロアセトアセテート、金属ペルクロロレート、金属スルファメート、金属ステアレート、金属リン酸塩、金属炭酸塩、シュウ酸塩及び金属錯体(例、金属EDTA)からなる群から選択された一つ以上が好ましいが、これに限定されるものではない。
【0019】
本発明において、沈殿剤は、金属前駆体由来の可溶性イオン物質とイオン交換して不溶性の固体物質(沈殿物)を形成させる沈殿反応に使用される反応物質として作用し、具体的には、アンモニア、KOH、NaOH、尿素、Na2CO3、K2CO3 、又はこれらの混合物であってもよく、これらに限定されるものではない。
【0020】
本発明において、前駆体溶液と沈殿剤の混合は、前駆体溶液に沈殿剤を一定の速度で供給することもでき、前駆体溶液と沈殿剤を同時に混合することもできる。上記前駆体溶液は、前駆体と水を混合した水溶液であってもよい。
【0021】
本発明において、上記第1段階の混合溶液のpHは、6〜11、好ましくは6〜8.5であってもよい。上記第1段階の混合溶液のpHが6〜11の範囲においてもルテニウム含有層が形成されうるが、pHが8.5を超える場合、ルテニウム含有粒子の形成速度が遅く構造体の表面に蒸着が十分に行われないことがある。本発明において、特に第1段階の混合溶液のpHを6.5〜8.5の範囲に調整すると、ルテニウム含有粒子が球状の形に良く成長し、この時の粒子の大きさも均一であり、構造体の表面上にルテニウム含有粒子がコーティングされたとき、球状粒子間の気孔により、ルテニウム含有粒子の比表面積が大きくなり、ルテニウム含有粒子が形成されたコーティング層の厚さも均一になる。従って、ルテニウム含有粒子が触媒として適用される場合、触媒活性の面で優れた長所を有する。
【0022】
上記第2段階は、上記第1段階で得た混合溶液を10〜40℃で1次熟成(aging)させることにより、粒子に成長させるためのルテニウム含有沈殿物シード(seed)を形成させる段階である。
【0023】
上記1次熟成は、上記したように、10〜40℃の温度範囲で行うことができ、好ましくは、常温、具体的に20〜30℃の温度範囲で行うことができる。もし上記1次熟成温度が10℃未満であるか、又は40℃を超える場合、シードがうまく形成されず、それ以後に2次熟成を行っても、粒子の成長が困難になることがある。上記1次熟成は、3時間〜48時間行うことができる。熟成時間が短かすぎるとシード形成がうまく行われず、熟成時間が長すぎるとそれ以後の粒子の成長が困難になることもある。また、上記1次熟成は撹拌下で行うことによりシードの形成を促進させることができる。
【0024】
上記第3段階は、1次熟成させた混合溶液の温度を80〜100℃に上昇させて2次熟成させることにより、ルテニウム含有沈殿物シード(seed)を成長させてルテニウム含有沈殿物の粒子を形成させる段階である。
【0025】
上記2次熟成は、上述のように80〜100℃の温度範囲で行うことができ、さらに好ましくは90〜100℃の温度範囲で行うことができる。上記2次熟成温度が80℃未満であれば、沈殿剤と金属前駆体溶液の化学反応速度が遅くなり、1次(primary)ナノ粒子の成長が困難になることがあり、100℃を超えると、反応があまりにも速いため、1次粒子サイズの制御が困難になるという問題がある。上記2次熟成は、36時間〜100時間行うことができる。熟成時間が短すぎると粒子の成長がうまく行われず、所望のサイズの粒子を得ることが困難であり、熟成時間が長すぎると粒子のサイズが大きくなるという問題があり好ましくない。
【0026】
上記第4段階は、2熟成させた混合溶液に構造体を接触させ、2熟成させた混合溶液内のルテニウム含有沈殿物の粒子を構造体の表面上に蒸着させてルテニウム含有層をコーティングさせる段階である。
【0027】
本発明において、上記構造体は、ルテニウム含有沈殿物の粒子が蒸着する表面を有するものであれば、いずれの材質も使用可能である。好ましくは、上記構造体は、金属構造体又はセラミック構造体であってもよい。具体的には、上記構造体は、FeCr合金、SiC、Al、Al合金、Ti、Ti合金又はステンレス鋼からなるものであってもよい。また、上記構造体は、モノリス、フォーム、フェルト、マット、メッシュ、箔又はピンなどの様々な形態を有することができる。上記ピンの形としては、ラッフルド(ruffled)、パーフォレーテッド(perforated)、ヘリンボーン(herringbone)などの形態を例として挙げることができる。
【0028】
上記構造体として金属構造体を使用する場合は、金属構造体は、金属構造体の表面を電解質内で印加電圧と電解質の濃度を調節して金属酸化物層を形成させる電気化学的表面処理段階:金属構造体に形成されたアモルファス金属酸化物層を結晶化するか、又は合金中の特定の金属成分の金属酸化物層のみを形成するために、酸化雰囲気下で熱処理する段階を含めて製造することができる。さらに、上記表面処理を行う前に、金属構造体の表面を洗浄する段階を行うことができる。上記電気化学的の表面処理段階は、陰極は銅、鉄、又は白金コイルの一つで、陽極は金属構造体で、電解質は0.5〜3重量%のフッ酸、リン酸、フッ化ソーダ、硝酸ナトリウムから選択された一つ又はこれらの組み合わせで行った後、常温で両電極間に2〜30 Vの電圧を5〜60分印加する段階を意味する。上記熱処理段階は、700〜1100℃の酸化雰囲気下で行うことが望ましい。上記金属構造体は、上記熱処理段階の後、金属酸化物層に追加の担体をコーティングする塗布段階をさらに経て製造されてもよい。上記担体は、アルミナ、ベーマイト、チタニア、シリカ又はセリア-ジルコニアの混合物であってもよいが、これに限定されるものではない。
【0029】
上記構造体として金属構造体を使用する場合は、金属構造体自体が熱伝導に優れ、速い熱伝達が必要な触媒に使用することができる。
上記第5段階は、上記第4段階で形成されたルテニウム含有層を熱処理する段階である。
【0030】
上記熱処理は、200〜900℃の温度範囲で行うことが好ましく、より好ましくは200〜800℃で行うことができる。もし熱処理温度が200℃未満の場合には、ナノ粒子の結晶成長が行われず、900℃を超えると、ナノ粒子の凝集により粒子のサイズが増加するという問題がある。上記熱処理は、酸化又は還元雰囲気下で行うことができる。上記酸化は酸素含有気体、例えば、空気(大気)雰囲気下で行うことができ、還元は水素雰囲気下で行うことができる。
【0031】
本発明による方法で製造された構造体の表面に形成されたルテニウム含有触媒層を含む触媒は、構造体上に球形のルテニウム含有沈殿物の粒子が溜まってルテニウム含有触媒層が形成された形態を有することができる。本発明に係る方法で製造された触媒は、1次熟成と2次熟成を経て形成された均一な大きさの球形のルテニウム含有沈殿物の粒子が表面に溜まってルテニウム含有触媒層を形成し、より均一な厚さのルテニウム含有触媒層を有することができる。また、ルテニウム含有沈殿物の粒子を形成させる1次熟成と2次熟成のpH条件、温度と時間を調整することにより、ルテニウム含有沈殿物の粒子の大きさを調節し、構造体の表面にコーティングされるルテニウム含有触媒層の厚さを制御することができる。
【0032】
上記ルテニウム含有沈殿物の粒子は、0.02〜0.5μmの平均粒径を有し、ルテニウム含有触媒層が0.1〜25μmの平均厚さを有することができる。
さらに、ルテニウム含有沈殿物の粒子を、先に形成させて蒸着させる過程を通じて少量のルテニウムだけで高分散されたルテニウム含有触媒層が得られる長所がある。
【0033】
上記のように、本発明による方法で製造され、ルテニウム含有沈殿物の粒子が先に形成された後、上記粒子が構造体の表面に蒸着し、均一な厚さで高分散されたルテニウム含有触媒層を含む触媒は、触媒の比表面積が大きくなってルテニウム触媒により水素を生産する様々な反応において優れた触媒の性能を発揮することができる。
【0034】
従って、従来のペレット触媒を適用した充填塔反応器より少量のルテニウムがコーティングされた本発明による構造体触媒を水素及び合成ガスの生産反応器に適用すると、反応器のコンパクト化が可能であり、高価な貴金属触媒の使用量を画期的に減らすことにより、水素及び合成ガス生産システムのコスト削減効果を期待することができる。
【0035】
上記水素生産は水蒸気改質反応、水性ガス転換反応(Water-gas Shift、WGS)又は選択的酸化(preferential oxidation、PROX)反応などであってもよい。
前述したように、水素生産の一態様として、本発明は、天然ガスの水蒸気改質反応を利用して合成ガスを製造する方法において、
i)本発明の触媒を天然ガスの水蒸気改質反応器に適用する段階、
ii)上記触媒を還元させて活性化させる段階、及び
iii)上記活性化された触媒により天然ガスの水蒸気改質反応を行う段階を含むことを特徴とする製造方法を提供する。
【0036】
本発明において、上記の段階iii)は、反応温度500〜800℃、反応圧力1.2〜3 bar、空間速度3,000〜60,000 h-1で行うことができる。
また、水素生産の他の一態様として、本発明は、選択的一酸化炭素(CO)酸化反応を利用して、一酸化炭素を除去する方法において、
i)本発明の触媒を選択的一酸化炭素酸化反応器に適用する段階、
ii)上記触媒を還元させて活性化させる段階、及び
iii)上記活性化された触媒により選択的一酸化炭素酸化反応を行う段階を含むことを特徴とする製造方法を提供する。
【0037】
本発明において、上記の段階iii)は、反応温度80〜200℃、反応圧力1.2〜3 bar、酸素過剰率(oxygen excess、λ)1〜4、及び空間速度(GHSV、Gas Hourly Space Velocity)5,000 〜10,000 h-1で行うことができる
【発明の効果】
【0038】
本発明は、ルテニウム前駆体含有溶液と沈殿剤の混合溶液を1次熟成させてルテニウム含有沈殿物シードを形成させた後、2次熟成させることにより、上記シードを成長させてルテニウム含有沈殿物粒子を形成させた後、構造体を接触させ、上記粒子が構造体の表面に蒸着して均一な厚さで高分散したルテニウム含有触媒層が形成された触媒を製造することができる。上記触媒は、球状のルテニウム含有沈殿物の粒子が溜まってルテニウム含有触媒層が形成された形態を有し、触媒の比表面積が大きいため、ルテニウム触媒により水素を生産する多様な反応において優れた触媒の性能を発揮することができる。また、少量のルテニウムがコーティングされた構造体触媒として、既存のペレット触媒を適用した充填塔反応器より反応器のコンパクト化が可能であり、高価な貴金属触媒の使用量を画期的に減らすことにより、水素及び合成ガス生産システムのコストを節減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1】本発明により、構造体の表面上にルテニウム含有層が形成される過程を概略的に示す模式図である。
図2】前駆体溶液のpHを異にして製造したFeCr合金表面と断面の分析(SEM、イオンミリング分析)結果である。
図3】含浸法、又は条件を異にして沈殿法により造したRuがコーティングされたFeCr合金表面のSEMイメージである。ここで、試料5は含浸法によりRuを担持した試料であり、試料6〜8はそれぞれRu前駆体溶液の濃度を異にした試料である。
図4】熟成の条件を異にして製造したRuがコーティングされたFeCr合金断面のSEMイメージである。
図5】Ru/Al2O3ペレット触媒とRu/Al2O3 coated FeCralloy monolith触媒の性能評価の結果である。
図6】Ru/Al2O3ペレット触媒とRu/Al2O3 coated SiC monolith触媒の性能評価の結果である。
図7】Ru/Al2O3ペレット触媒とRu/Al2O3 coated FeCralloy monolith触媒の性能評価の結果である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、本発明を実施例によりさらに詳しく説明する。しかし、これらの実施例は本発明を例示的に説明するためのものであり、本発明の範囲がこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0041】
実施例1:ルテニウム前駆体沈殿反応溶液のpHによるルテニウムコーティング層の分析
まず、特許文献2(大韓民国登録特許第10-1019234号)と同様にフェクロアロイ材質の金属支持体としてFeCr合金箔を5V、30minの条件で電気化学的表面処理過程を経た後、900℃で6時間熱処理し、表面に担体としてアルミナ層が均一に形成された金属製の支持体をルテニウムコーティングのための構造体として準備した。
【0042】
ルテニウム前駆体としてルテニウムニトロシル硝酸塩(ruthenium nitrosyl nitrate)を蒸留水と混合して230mMの濃度の溶液を製造した。上記溶液に沈殿剤であるアンモニア溶液の添加量を異にして反応溶液のpHがそれぞれ6、7、8、及び11である試料1〜4を製造した。常温(25℃)で24時間攪拌して1次熟成(aging)させた後、上記熟成された溶液内に上記で準備した構造体であるFeCr合金箔を浸漬し、100℃で48時間2次熟成させた。
【0043】
ルテニウム前駆体溶液に沈殿剤の添加量を異にしてpH別に製造したFeCr合金箔の表面を走査電子顕微鏡(SEM)で分析した。その結果を図2に示した。図2に示されるように、反応溶液のpHの変化により、FeCr合金箔の表面において粒子の蒸着形態が異なることを確認することができる。特に、試料2において丸みを帯びた粒子、即ち、球状粒子がはるかに多く形成された。
【0044】
さらに、イオンミリング(ion milling)を通じた断面の分析により金属箔の表面にコーティングされた触媒層の厚さを測定した。試料2のコーティング層の厚さが最も厚いのに対して、その他の試料のコーティング層の厚さは、1μm程度と薄く形成された。pHが7未満(pHが6である試料1)、又はpHが8.5を超える(pHが11である試料4)反応溶液の場合、Ru粒子の形成速度が遅く構造体の表面にコーティングが上手くなされなかった。しかし、Ru粒子形成及びコーティング時間、即ち、2次熟成時間を長く維持すると、FeCr合金箔の表面でRuコーティングがなされるようになった。言い換えれば、試料1及び試料4の場合、2次熟成時間の初期にはRuが構造体の表面に上手くコーティングされないが、熟成時間の経過につれてRuコーティングがなされるようになった。
【0045】
従って、沈殿反応溶液のpHを調節することで、形成される粒子の大きさと形状を制御することができ、これにより、コーティングされるRu層の厚さを調節することができることが分かった。
【0046】
また、エネルギー分散X線分光分析(energy-dispersive X-ray spectroscopy 、EDS )によりRuがコーティングされたFeCr合金表面の組成を分析した。その結果を下記表1に示した。
【0047】
【表1】
【0048】
上記表1に示されるように、試料2においてRu含有量が最も高いことが分かる。従って、沈殿反応溶液のpHを調節することでコーティングされるRuの含有量を調整できることが分かった。
【0049】
上記図2及び表1の結果から、ルテニウム前駆体溶液に沈殿剤を添加して得た溶液のpHの範囲は7〜8である場合が形成されるRu粒子の大きさと形状はもちろん、Ruコーティング層の厚さ及びRuの含有量の面で特に好ましいことが分かった。
【0050】
比較例1:含浸法及び単一段階熟成方法によるルテニウムコーティング層の分析
構造体は、上記実施例1と同一なものを用いた。ルテニウム前駆体としてルテニウムニトロシル硝酸塩(ruthenium nitrosyl nitrate)を蒸留水と混合して所望の濃度のルテニウム前駆体溶液を製造して使用した。
【0051】
試料5は、含浸法(impregnation)でRuを担持した。具体的には、試料5は、濃度 300mMのルテニウム前駆体溶液内に上記で製造した構造体を浸してRu前駆体溶液を含浸させた後、90℃で乾燥した。
【0052】
試料6〜8は、それぞれRu前駆体溶液の濃度を異にし、上記のそれぞれのRu前駆体溶液に沈殿剤であるアンモニア溶液を添加して溶液のpHが11になるように調整した後、上記溶液内に構造体を浸し、90℃で64時間熟成させてRuをコーティングした。
【0053】
EDS分析により上記で製造した試料表面の組成を分析した。その結果を表2に示した。
【0054】
【表2】
【0055】
上記表1と表2を比較すると、含浸法で製造した試料5より、本発明の方法により製造した試料2と試料3のRuコーティング量が多いことが分かる。また、構造体であるFeCr合金箔を浸す前に1次熟成を行わず、直ちにFeCr合金箔を浸して、単一熟成段階でRu沈殿物を形成しながらコーティングを行った試料6〜8は、前駆体溶液の濃度が増加するにつれて、コーティングされるRuの量は増加するが、前駆体溶液の濃度を4倍以上高めて1000mMのRu前駆体溶液を使用して製造した試料8のRuコーティング量が同一なpH11の条件でRu前駆体溶液の濃度を230mMにして、本発明の方法により2次熟成段階で製造した試料4と比較してRuの量が66%に過ぎなかった。従って、本発明の方法のように構造体であるFeCr合金箔を浸す前に1次熟成を行った後、構造体を浸して2次熟成を経る方法の方が単一熟成段階を経る方法に比べて構造体の表面にRu金属の高分散担持が容易であることが確認された。
【0056】
また、上記試料5〜8のRuをコーティングしたFeCr合金箔の表面をSEMにより分析した。その結果を図3に示した。
図3に示されるように、含浸法で製造した試料5は、90℃の温度で乾燥だけ行ったにもかかわらず、表面にクラックが多く発生した。これは、活性金属であるRuが安定的にコーティング(蒸着)あるいは担持がなされていないことを示し、その場合、Ru層が焼成したり、あるいは反応中に容易に脱離が起こり、安定した触媒活性を示すことが困難である。試料6〜8では、ルテニウム前駆体溶液の濃度が増加するにつれて、FeCr合金表面のアルミナ層が埋められていくことが確認された。
【0057】
実施例2:熟成条件によるルテニウムコーティング層の分析
熟成の条件のうち、1次熟成時間と2次熟成温度を異にして、これに応じたRuのコーティングされる量とコーティング層の厚さの変化を測定した。
【0058】
試料9及び10は、それぞれpH7である前駆体含有沈殿反応溶液の1次常温(25℃)攪拌熟成時間を、それぞれ6時間と12時間で異にし、2次熟成では100℃で48時間と固定した。
試料11及び12は、それぞれpH7である前駆体含有沈殿反応溶液の1次常温(25℃)攪拌熟成時間は24時間と固定し、2次熟成温度を80℃と90℃で異にして48時間行った。
【0059】
上記攪拌時間と温度を異にして製造したRuがコーティングされたFeCr合金箔をイオンミリングして断面分析したSEMイメージを図4に示した。
図4に示されるように、撹拌時間と温度が増加するにつれて、Ruコーティング層の厚さが増加することが確認された。その他、形成されるRu粒子サイズもさらに増加した。
【0060】
実験例:構造体触媒の性能評価
本発明による2段階熟成方法を適用して多用な材質(FeCr合金、SiC)の構造体の表面にRuを高分散コーティングして製造した構造体触媒の性能を評価した。代表的な水素製造反応である天然ガスの水蒸気改質反応(実験例1及び2)と合成ガス内のCOを除去する選択的CO酸化反応(実験例3)に適用した。
【0061】
実験例1:Ru/Al2O3ペレット触媒とRu/Al2O3 coated FeCralloy monolith触媒の性能評価
構造体として箔の形ではなく、モノリス形態を有するものを使用したこと以外には、上記実施例1の試料2と同様の方法でアルミナ担持体が表面に形成されたFeCr合金モノリスの表面にRuコーティング層を形成した。
【0062】
上記Ruコーティング層が形成されたFeCr合金モノリス触媒(Ru/Al2O3 coated FeCralloy monolith触媒)を取得し、これに対して下記実験条件下で、天然ガス水蒸気改質反応に対する触媒の性能評価を行った。触媒の性能評価前に水素雰囲気下において700℃で3時間還元処理した。
【0063】
比較のために、Ru/Al2O3ペレット触媒に対しても同様な条件下で還元処理した後、下記実験条件下で、触媒の性能評価を行った。この時、Ru/Al2O3ペレット触媒は、Clariant社(スイス)から入手し使用した。
【0064】
Ru金属担持量は、ペレット触媒とモノリス触媒でそれぞれ0.14 gと0.038 gであった。
実験条件:steam/carbon(S/C)= 3.0、温度= 700℃、常圧
その結果を図5に示した。図5に示されるように、FeCr合金モノリス触媒がペレット触媒よりも少量のRu金属を担持しているにもかかわらず、天然ガスの水蒸気改質反応において非常に優れた触媒活性、即ち、高いCH4転換率を示すことを確認することができる。
【0065】
これは、水素生産反応器及びシステムにおいて、既存のペレット触媒の代わりに少量のRuが高分散コーティングされた本発明の構造体触媒を使用した場合、反応器のコンパクト化とコストの削減が可能であることを示唆する。
【0066】
実験例2:Ru/Al2O3ペレット触媒のRu/Al2O3 coated SiC monolith触媒の性能評価
SiC非酸化物系セラミック材質のモノリスを構造体として使用すること以外は、上記実施例1の試料2と同様の方法でアルミナ担持体が表面に形成されたSiCモノリスの表面にRuコーティング層を形成した。
【0067】
上記Ruコーティング層が形成されたSiCモノリス触媒(Ru / Al2O3 coated SiC monolith触媒)を取得し、これに対して下記実験条件下で、天然ガスの水蒸気改質反応に対する触媒の性能評価を行った。触媒の性能評価前に水素雰囲気の下において700℃で3時間還元処理した。
【0068】
比較のために、Ru/Al2O3ペレット触媒に対しても同様の条件下で還元処理した後、下記実験条件下で、触媒の性能評価を行った。この時、Ru/Al2O3ペレット触媒は、Clariant社(スイス)から入手し使用した。
【0069】
Ru金属担持量は、ペレット触媒とモノリス触媒でそれぞれ0.14 gと0.083 gであった。
実験条件:steam/carbon(S / C)= 3.0、F/W = 314-530 L/gRu・h、温度= 550-700℃、常圧(触媒重量を適用してGHSVをF/Wに換算する)
その結果を図6に示した。図6に示されるように、FeCr合金モノリス触媒がペレット触媒よりも少量のRu金属が担持されたにもかかわらず、天然ガスの水蒸気改質反応で非常に優れた触媒活性、即ち、高いCH4転換率を示すことを確認することができる。
【0070】
また、図6により、モノリスの材質に関係なく構造体の表面に活性金属である少量のRuを高分散担持でき、既存のペレット触媒より優れた触媒活性を示すことが分かる。
実験例3:Ru/Al2O3ペレット触媒とRu/Al2O3 coated FeCralloy monolith触媒の性能評価
FeCr合金モノリスに少量のRuをコーティングして選択的CO酸化反応で触媒の性能評価を行った。
【0071】
57mMの濃度のRu前駆体溶液を使用する以外は、上記実施例1の試料2と同様の方法でアルミナ担持体の表面に形成されたFeCr合金モノリスの表面に、本発明の方法によりRuコーティング層を形成した。
【0072】
上記Ruコーティング層が形成されたFeCr合金モノリス触媒(Ru/Al2O3 coated FeCralloy monolith触媒)を取得し、これに対して下記実験条件下で選択的CO酸化反応に対する触媒の性能評価を行った。触媒の性能評価前に水素雰囲気下において200℃で2時間還元処理した。
【0073】
比較のために、Ru/Al2O3ペレット触媒に対しても同様の条件下で還元処理した後、下記実験条件下で、触媒の性能評価を行った。この時、Ru/Al2O3ペレット触媒は、田中(Tanaka)貴金属インターナショナル株式会社(日本)から入手し使用した。
【0074】
Ru金属担持量は、ペレット触媒とモノリス触媒において、0.014 gと同一であった。
実験条件:59%のH2,0.61%のCO、0.61%のO2,16%のCO2,19%のH2O、N2 bal.、λ= 2、F / W = 2,755 L/gRu・h 、常圧
その結果を図7に示した。図7に示されるように、本発明によるモノリス触媒が140℃以下の低温でペレット触媒より遥かに高いCO転換率とCO2選択度を示すことが確認することができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7