【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の態様は、構造体の表面に形成されたルテニウム含有触媒層を含む触媒の製造方法において、ルテニウム(Ru)前駆体含有溶液に沈殿剤を添加して混合溶液を得る第1段階;上記第1段階の混合溶液を10〜40℃で1次熟成(aging)させることにより、ルテニウム含有沈殿物シード(seed)を形成させる第2段階;上記1次熟成させた混合溶液を80〜100℃で2次熟成させることにより、ルテニウム含有沈殿物シードを成長させてルテニウム含有沈殿物の粒子を形成させる第3段階;上記2次熟成させた混合溶液に構造体を接触させ、上記構造体の表面上に上記ルテニウム含有沈殿物の粒子がコーティングされてルテニウム含有層が形成されるように誘導する第4段階;及び上記ルテニウム含有層を熱処理する第5段階を含むことを特徴とする方法を提供する。
【0009】
本発明の第2の態様は、ルテニウム含有層を構造体の表面に形成させる方法であって、ルテニウム(Ru)前駆体含有溶液に沈殿剤を添加して混合溶液を得る第1段階;上記第1段階の混合溶液を10〜40℃で1次熟成させることにより、ルテニウム含有沈殿物シードを形成させる第2段階;上記1次熟成させた混合溶液を80〜100℃で2次熟成させることにより、ルテニウム含有沈殿物シードを成長させてルテニウム含有沈殿物の粒子を形成させる第3段階;及び上記2熟成させた混合溶液に構造体を接触させ、上記構造体の表面上に上記ルテニウム含有沈殿物の粒子がコーティングされてルテニウム含有層が形成されるように誘導する第4段階を含むことを特徴とする方法を提供する。
【0010】
本発明の第3の態様は、上記第1の態様の方法により製造され、球形のルテニウム含有沈殿物の粒子が溜まってルテニウム含有触媒層が形成されたことを特徴とする触媒を提供する。
【0011】
本発明の第4の態様は、上記第3の態様による触媒を用いて水素を生成する段階を含む水素製造方法を提供する。
本発明の第5の態様は、天然ガスの水蒸気改質反応を利用して合成ガスを製造する方法であって、i)上記第3の態様による触媒を、天然ガスの水蒸気改質反応器に適用する段階、ii)上記触媒を還元させて活性化させる段階、及びiii)上記活性化された触媒により天然ガスの水蒸気改質反応を行う段階を含むことを特徴とする製造方法を提供する。
【0012】
本発明の第6の態様は、選択的一酸化炭素(CO)酸化反応を利用して一酸化炭素を除去する方法であって、i)上記第3の態様による触媒を選択的一酸化炭素酸化反応器に適用する段階、ii)上記触媒を還元させて活性化させる段階、及びiii)上記活性化された触媒により選択的一酸化炭素酸化反応を行う段階を含むことを特徴とする製造方法を提供する。
【0013】
以下、本発明を詳しく説明する。
本発明では、構造体の表面上にルテニウム含有層を形成させる際に、
図1に示すように、ルテニウム(Ru)前駆体含有溶液と沈殿剤の混合溶液を40℃以下の低温で1次熟成させてルテニウム含有沈殿物シードを形成させた後、80℃以上の高温で2次熟成させることにより、ルテニウム含有沈殿物シードを成長させてルテニウム含有沈殿物粒子を形成させ、その後構造体を接触させて上記構造体の表面上に上記ルテニウム含有沈殿物粒子がコーティングされてルテニウム含有層の形成がなされるように誘導することにより、構造体の表面上でルテニウム含有層が均一で、かつ高分散して形成され、優れた触媒活性を発揮するルテニウム含有層が形成可能であることを見出した。本発明は、これに基づくものである。
【0014】
前述したように、本発明による構造体の表面に形成されたルテニウム含有触媒層を含む触媒の製造方法は、
ルテニウム(Ru)前駆体含有溶液に沈殿剤を添加して混合溶液を得る第1段階、
上記第1段階の混合溶液を10〜40℃で1次熟成させることにより、ルテニウム含有沈殿物シードを形成させる第2段階、
上記1次熟成させた混合溶液を80〜100℃で2次熟成させることにより、ルテニウム含有沈殿物シード(seed)を成長させてルテニウム含有沈殿物の粒子を形成させる第3段階、
上記2熟成させた混合溶液に構造体を接触させ、上記構造体の表面上に上記ルテニウム含有沈殿物の粒子がコーティングされてルテニウム含有層が形成されるように誘導する第4段階、及び
上記ルテニウム含有層を熱処理する第5段階を含む。
【0015】
また、前述したように、本発明によるルテニウム含有層を構造体の表面に形成させる方法は、
ルテニウム(Ru)前駆体含有溶液に沈殿剤を添加して混合溶液を得る第1段階、
上記第1段階の混合溶液を10〜40℃で1次熟成させることにより、ルテニウム含有沈殿物シードを形成させる第2段階、
上記1次熟成させた混合溶液を80〜100℃で2次熟成させることにより、ルテニウム含有沈殿物シードを成長させてルテニウム含有沈殿物の粒子を形成させる第3段階、及び
上記2熟成させた混合溶液に構造体を接触させ、上記構造体の表面上に上記ルテニウム含有沈殿物の粒子がコーティングされてルテニウム含有層が形成されるように誘導する第4段階を含む。
【0016】
本発明における一実施態様として、上記の各段階例えば、第1段階〜第5段階、第1段階〜第4段階、特に第2段階と第3段階は、順次行うことができる。上記第2段階と第3段階を順次行う場合に、ルテニウム含有沈殿物粒子の形成が上手く行われ、構造体の表面上に上記ルテニウム含有沈殿物の粒子が蒸着して均一なルテニウム含有層をコーティングすることができる。また、他の一実施形態として、上記第3段階と第4段階は、同時に行うことができる。即ち、構造体をルテニウム含有沈殿物シード(seed)と接触させた状態で、ルテニウム含有沈殿物シード(seed)を成長させてルテニウム含有沈殿物シードの成長とルテニウム含有沈殿物の粒子のコーティングが同時に行うことができる。言い換えれば、上記第3段階で1次熟成させた混合溶液に構造体を先に入れた後、2次熟成を行ってルテニウム含有沈殿物の粒子が形成されるとともに、同時に構造体の表面上にコーティングすることができる。
【0017】
上記第1の段階は、ルテニウム含有沈殿物の粒子の形成のために、ルテニウム(Ru)前駆体含有溶液に沈殿剤を添加して混合溶液を得る段階である。
本発明において、上記ルテニウム(Ru)前駆体含有溶液は、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)、イリジウム(Ir)、オスミウム(Os)、又はこれらの混合金属前駆体をさらに含み、その後に形成されるルテニウム含有層がルテニウム以外に、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)、イリジウム(Ir)、オスミウム(Os)、又はこれらの混合金属をさらに含有することができる。
【0018】
本発明において、金属前駆体は、金属ナイトレート、金属ハロゲン化物、金属アセテート、金属硫酸塩、金属アセトアセテート、金属フルオロアセトアセテート、金属ペルクロロレート、金属スルファメート、金属ステアレート、金属リン酸塩、金属炭酸塩、シュウ酸塩及び金属錯体(例、金属EDTA)からなる群から選択された一つ以上が好ましいが、これに限定されるものではない。
【0019】
本発明において、沈殿剤は、金属前駆体由来の可溶性イオン物質とイオン交換して不溶性の固体物質(沈殿物)を形成させる沈殿反応に使用される反応物質として作用し、具体的には、アンモニア、KOH、NaOH、尿素、Na
2CO
3、K
2CO
3 、又はこれらの混合物であってもよく、これらに限定されるものではない。
【0020】
本発明において、前駆体溶液と沈殿剤の混合は、前駆体溶液に沈殿剤を一定の速度で供給することもでき、前駆体溶液と沈殿剤を同時に混合することもできる。上記前駆体溶液は、前駆体と水を混合した水溶液であってもよい。
【0021】
本発明において、上記第1段階の混合溶液のpHは、6〜11、好ましくは6〜8.5であってもよい。上記第1段階の混合溶液のpHが6〜11の範囲においてもルテニウム含有層が形成されうるが、pHが8.5を超える場合、ルテニウム含有粒子の形成速度が遅く構造体の表面に蒸着が十分に行われないことがある。本発明において、特に第1段階の混合溶液のpHを6.5〜8.5の範囲に調整すると、ルテニウム含有粒子が球状の形に良く成長し、この時の粒子の大きさも均一であり、構造体の表面上にルテニウム含有粒子がコーティングされたとき、球状粒子間の気孔により、ルテニウム含有粒子の比表面積が大きくなり、ルテニウム含有粒子が形成されたコーティング層の厚さも均一になる。従って、ルテニウム含有粒子が触媒として適用される場合、触媒活性の面で優れた長所を有する。
【0022】
上記第2段階は、上記第1段階で得た混合溶液を10〜40℃で1次熟成(aging)させることにより、粒子に成長させるためのルテニウム含有沈殿物シード(seed)を形成させる段階である。
【0023】
上記1次熟成は、上記したように、10〜40℃の温度範囲で行うことができ、好ましくは、常温、具体的に20〜30℃の温度範囲で行うことができる。もし上記1次熟成温度が10℃未満であるか、又は40℃を超える場合、シードがうまく形成されず、それ以後に2次熟成を行っても、粒子の成長が困難になることがある。上記1次熟成は、3時間〜48時間行うことができる。熟成時間が短かすぎるとシード形成がうまく行われず、熟成時間が長すぎるとそれ以後の粒子の成長が困難になることもある。また、上記1次熟成は撹拌下で行うことによりシードの形成を促進させることができる。
【0024】
上記第3段階は、1次熟成させた混合溶液の温度を80〜100℃に上昇させて2次熟成させることにより、ルテニウム含有沈殿物シード(seed)を成長させてルテニウム含有沈殿物の粒子を形成させる段階である。
【0025】
上記2次熟成は、上述のように80〜100℃の温度範囲で行うことができ、さらに好ましくは90〜100℃の温度範囲で行うことができる。上記2次熟成温度が80℃未満であれば、沈殿剤と金属前駆体溶液の化学反応速度が遅くなり、1次(primary)ナノ粒子の成長が困難になることがあり、100℃を超えると、反応があまりにも速いため、1次粒子サイズの制御が困難になるという問題がある。上記2次熟成は、36時間〜100時間行うことができる。熟成時間が短すぎると粒子の成長がうまく行われず、所望のサイズの粒子を得ることが困難であり、熟成時間が長すぎると粒子のサイズが大きくなるという問題があり好ましくない。
【0026】
上記第4段階は、2熟成させた混合溶液に構造体を接触させ、2熟成させた混合溶液内のルテニウム含有沈殿物の粒子を構造体の表面上に蒸着させてルテニウム含有層をコーティングさせる段階である。
【0027】
本発明において、上記構造体は、ルテニウム含有沈殿物の粒子が蒸着する表面を有するものであれば、いずれの材質も使用可能である。好ましくは、上記構造体は、金属構造体又はセラミック構造体であってもよい。具体的には、上記構造体は、FeCr合金、SiC、Al、Al合金、Ti、Ti合金又はステンレス鋼からなるものであってもよい。また、上記構造体は、モノリス、フォーム、フェルト、マット、メッシュ、箔又はピンなどの様々な形態を有することができる。上記ピンの形としては、ラッフルド(ruffled)、パーフォレーテッド(perforated)、ヘリンボーン(herringbone)などの形態を例として挙げることができる。
【0028】
上記構造体として金属構造体を使用する場合は、金属構造体は、金属構造体の表面を電解質内で印加電圧と電解質の濃度を調節して金属酸化物層を形成させる電気化学的表面処理段階:金属構造体に形成されたアモルファス金属酸化物層を結晶化するか、又は合金中の特定の金属成分の金属酸化物層のみを形成するために、酸化雰囲気下で熱処理する段階を含めて製造することができる。さらに、上記表面処理を行う前に、金属構造体の表面を洗浄する段階を行うことができる。上記電気化学的の表面処理段階は、陰極は銅、鉄、又は白金コイルの一つで、陽極は金属構造体で、電解質は0.5〜3重量%のフッ酸、リン酸、フッ化ソーダ、硝酸ナトリウムから選択された一つ又はこれらの組み合わせで行った後、常温で両電極間に2〜30 Vの電圧を5〜60分印加する段階を意味する。上記熱処理段階は、700〜1100℃の酸化雰囲気下で行うことが望ましい。上記金属構造体は、上記熱処理段階の後、金属酸化物層に追加の担体をコーティングする塗布段階をさらに経て製造されてもよい。上記担体は、アルミナ、ベーマイト、チタニア、シリカ又はセリア-ジルコニアの混合物であってもよいが、これに限定されるものではない。
【0029】
上記構造体として金属構造体を使用する場合は、金属構造体自体が熱伝導に優れ、速い熱伝達が必要な触媒に使用することができる。
上記第5段階は、上記第4段階で形成されたルテニウム含有層を熱処理する段階である。
【0030】
上記熱処理は、200〜900℃の温度範囲で行うことが好ましく、より好ましくは200〜800℃で行うことができる。もし熱処理温度が200℃未満の場合には、ナノ粒子の結晶成長が行われず、900℃を超えると、ナノ粒子の凝集により粒子のサイズが増加するという問題がある。上記熱処理は、酸化又は還元雰囲気下で行うことができる。上記酸化は酸素含有気体、例えば、空気(大気)雰囲気下で行うことができ、還元は水素雰囲気下で行うことができる。
【0031】
本発明による方法で製造された構造体の表面に形成されたルテニウム含有触媒層を含む触媒は、構造体上に球形のルテニウム含有沈殿物の粒子が溜まってルテニウム含有触媒層が形成された形態を有することができる。本発明に係る方法で製造された触媒は、1次熟成と2次熟成を経て形成された均一な大きさの球形のルテニウム含有沈殿物の粒子が表面に溜まってルテニウム含有触媒層を形成し、より均一な厚さのルテニウム含有触媒層を有することができる。また、ルテニウム含有沈殿物の粒子を形成させる1次熟成と2次熟成のpH条件、温度と時間を調整することにより、ルテニウム含有沈殿物の粒子の大きさを調節し、構造体の表面にコーティングされるルテニウム含有触媒層の厚さを制御することができる。
【0032】
上記ルテニウム含有沈殿物の粒子は、0.02〜0.5μmの平均粒径を有し、ルテニウム含有触媒層が0.1〜25μmの平均厚さを有することができる。
さらに、ルテニウム含有沈殿物の粒子を、先に形成させて蒸着させる過程を通じて少量のルテニウムだけで高分散されたルテニウム含有触媒層が得られる長所がある。
【0033】
上記のように、本発明による方法で製造され、ルテニウム含有沈殿物の粒子が先に形成された後、上記粒子が構造体の表面に蒸着し、均一な厚さで高分散されたルテニウム含有触媒層を含む触媒は、触媒の比表面積が大きくなってルテニウム触媒により水素を生産する様々な反応において優れた触媒の性能を発揮することができる。
【0034】
従って、従来のペレット触媒を適用した充填塔反応器より少量のルテニウムがコーティングされた本発明による構造体触媒を水素及び合成ガスの生産反応器に適用すると、反応器のコンパクト化が可能であり、高価な貴金属触媒の使用量を画期的に減らすことにより、水素及び合成ガス生産システムのコスト削減効果を期待することができる。
【0035】
上記水素生産は水蒸気改質反応、水性ガス転換反応(Water-gas Shift、WGS)又は選択的酸化(preferential oxidation、PROX)反応などであってもよい。
前述したように、水素生産の一態様として、本発明は、天然ガスの水蒸気改質反応を利用して合成ガスを製造する方法において、
i)本発明の触媒を天然ガスの水蒸気改質反応器に適用する段階、
ii)上記触媒を還元させて活性化させる段階、及び
iii)上記活性化された触媒により天然ガスの水蒸気改質反応を行う段階を含むことを特徴とする製造方法を提供する。
【0036】
本発明において、上記の段階iii)は、反応温度500〜800℃、反応圧力1.2〜3 bar、空間速度3,000〜60,000 h
-1で行うことができる。
また、水素生産の他の一態様として、本発明は、選択的一酸化炭素(CO)酸化反応を利用して、一酸化炭素を除去する方法において、
i)本発明の触媒を選択的一酸化炭素酸化反応器に適用する段階、
ii)上記触媒を還元させて活性化させる段階、及び
iii)上記活性化された触媒により選択的一酸化炭素酸化反応を行う段階を含むことを特徴とする製造方法を提供する。
【0037】
本発明において、上記の段階iii)は、反応温度80〜200℃、反応圧力1.2〜3 bar、酸素過剰率(oxygen excess、λ)1〜4、及び空間速度(GHSV、Gas Hourly Space Velocity)5,000 〜10,000 h
-1で行うことができる