特許第6100345号(P6100345)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6100345金属管用塗料組成物、それを塗布してなる金属管、およびその塗装方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6100345
(24)【登録日】2017年3月3日
(45)【発行日】2017年3月22日
(54)【発明の名称】金属管用塗料組成物、それを塗布してなる金属管、およびその塗装方法
(51)【国際特許分類】
   C09D 133/00 20060101AFI20170313BHJP
   C09D 7/12 20060101ALI20170313BHJP
   B05D 7/14 20060101ALI20170313BHJP
【FI】
   C09D133/00
   C09D7/12
   B05D7/14 K
【請求項の数】8
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2015-212128(P2015-212128)
(22)【出願日】2015年10月28日
【審査請求日】2015年12月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000142595
【氏名又は名称】株式会社栗本鐵工所
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】特許業務法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大津 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】八尾 昌彦
(72)【発明者】
【氏名】宍戸 了
【審査官】 岡山 太一郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−113381(JP,A)
【文献】 特開2014−185238(JP,A)
【文献】 特開2011−006612(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 1/00−201/10
B05D 7/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクリル樹脂と、芳香族炭化水素およびC3-4分岐アルコールからなる内割溶剤と、所定の蒸発速度およびSP値を有する外割溶剤とを含んでなる金属管用塗料組成物であって、
上記芳香族炭化水素が炭素数1〜4のアルキル基置換ベンゼンであり、
内割溶剤100質量部に対する外割溶剤の配合量が7.0〜20.0質量部であり、
上記蒸発速度が酢酸ブチルを基準値100として45〜60であり、かつ、上記SP値が9.0〜12.0である、
金属管用塗料組成物。
【請求項2】
芳香族炭化水素がトルエンおよびキシレンを含むものであり、
内割溶剤100質量%中のトルエンの比率が44.0質量%以上、かつ、キシレンの比率が42.6質量%以上である、請求項1記載の金属管用塗料組成物。
【請求項3】
3-4分岐アルコールがイソプロピルアルコールおよびイソブチルアルコールの少なくとも一つであり、
内割溶剤100質量%中のC3-4分岐アルコールの比率が4.0質量%未満である、請求項1または2記載の金属管用塗料組成物。
【請求項4】
外割溶剤が1−ブタノールおよびプロピレングリコールモノメチルエーテルの少なくとも一つである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の金属管用塗料組成物。
【請求項5】
消泡剤をさらに含んでなる、請求項1〜4のいずれか1項に記載の金属管用塗料組成物。
【請求項6】
消泡剤の配合量が、塗料組成物100質量部に対し、外割成分として1〜5質量部である、請求項5記載の金属管用塗料組成物。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の金属管用塗料組成物をその外面に塗布してなる金属管。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の金属管用塗料組成物を金属管の外面に塗布する工程を含んでなる、金属管の塗装方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属管用塗料組成物、該組成物を塗布してなる金属管、およびその塗装方法に関し、さらに詳しくは、水道管やガス管として使用される鋳鉄管に被覆される塗料組成物、該組成物を塗布してなる鋳鉄管、および該塗料組成物を用いた鋳鉄管の塗装方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、水道管やガス管などには鋳鉄管や鋼管などの金属管が用いられる。水道管やガス管は地中に埋設して使用されることが多く、地中での腐食を防止するために金属管の外面には防食用の塗料が被覆されている。このような塗料組成物として、ビニル系重合体(アクリル樹脂)を主成分とする有機溶剤系の塗料組成物が記載されている(特許文献1)。
【0003】
一方、最近は、金属管の耐用年数についての要求が高まっており、例えば、100年塗装、すなわち、耐用年数100年を実現できる塗装についての要請も高まっている。かかる状況下、塗膜の厚さも厚くなる傾向にある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3545253号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、塗膜の厚さの増加は、塗装時に塗膜に泡が発生することを助長する傾向がある。すなわち、出荷塗装(最終塗装)の膜厚が厚くなることで該塗装中に混入した空気による泡が塗膜から抜けきらずに残ることや、加えて、下地塗装の膜厚も厚くなることでその表面が粗く凸凹になり、これらのことが出荷塗装時に塗膜に泡が発生することを助長していると考えられる(図1参照)。
【0006】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、出荷塗装において塗膜に泡が発生するのを抑制することのできる金属管用塗料組成物、それを塗布してなる金属管、および該塗料組成物を用いた金属管の塗装方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題解決に向け鋭意検討した結果、溶剤系の塗料組成物において、その溶剤の揮発性を調節することで、泡の発生を抑制できることを見出し、さらに検討を重ねて、本発明を完成した。
【0008】
すなわち、本発明は、
[1]アクリル樹脂と、芳香族炭化水素およびC3-4分岐アルコールからなる内割溶剤と、所定の蒸発速度およびSP値を有する外割溶剤とを含んでなる金属管用塗料組成物であって、
内割溶剤100質量部に対する外割溶剤の配合量が7.0〜20.0質量部、好ましくは10.0〜19.0質量部、より好ましくは11.0〜18.0質量部、さらに好ましくは12.0〜17.0質量部、さらに好ましくは13.0〜16.0質量部、さらに好ましくは14.0〜15.0質量部であり、
上記蒸発速度が酢酸ブチルを基準値100として45〜60、好ましくは45〜55、より好ましくは46〜54、さらに好ましくは47〜53、さらに好ましくは48〜52、さらに好ましくは49〜51であり、かつ、上記SP値が9.0〜12.0、好ましくは10.0〜11.9、より好ましくは11.0〜11.8、さらに好ましくは11.1〜11.7、さらに好ましくは11.2〜11.6、さらに好ましくは11.3〜11.5である、
金属管用塗料組成物、
[2]芳香族炭化水素がトルエンおよびキシレンを含むものであり、
内割溶剤100質量%中のトルエンの比率が44.0質量%以上、好ましくは44.5質量%以上、かつ、キシレンの比率が42.6質量%以上、好ましくは43.1質量%以である、上記[1]記載の金属管用塗料組成物、
[3]C3-4分岐アルコールがイソプロピルアルコールおよびイソブチルアルコールの少なくとも一つであり、
内割溶剤100質量%中のC3-4分岐アルコールの比率が4.0質量%未満、好ましくは3.4質量%未満である、上記[1]または[2]記載の金属管用塗料組成物、
[4]外割溶剤が1−ブタノールおよびプロピレングリコールモノメチルエーテルの少なくとも一つである、上記[1]〜[3]のいずれか1項に記載の金属管用塗料組成物、
[5]消泡剤をさらに含んでなる、上記[1]〜[4]のいずれか1項に記載の金属管用塗料組成物、
[6]消泡剤の配合量が、塗料組成物100質量部に対し、外割成分として1〜5質量部、好ましくは2〜3質量部である、上記[5]記載の金属管用塗料組成物、
[7]上記[1]〜[6]のいずれか1項に記載の金属管用塗料組成物をその外面に塗布してなる金属管、
[8]上記[1]〜[6]のいずれか1項に記載の金属管用塗料組成物を金属管の外面に塗布する工程を含んでなる、金属管の塗装方法、
に関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、出荷塗装において塗膜に泡が発生するのを抑制することのできる金属管用塗料組成物、それを塗布してなる金属管、および該塗料組成物を用いた金属管の塗装方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】気泡の例を示した図面代用写真である。
図2】金属管塗装ラインの模式図である。
図3図2の右側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<アクリル樹脂>
本発明の金属管用塗料組成物に使用されるアクリル樹脂は、該塗料組成物の主成分となるものであり、塗料組成物(外割成分を除く)中に15〜50質量%含まれ、より好ましくは20〜30質量%含まれる。アクリル樹脂はビニル系共重合体(A)とビニル系共重合体(B)とを含有する。ビニル系重合体(A)とビニル系重合体(B)との質量比は、好ましくは50.0:50.0〜99.9:0.1、より好ましくは66.7:33.3〜99.9:0.1、最も好ましくは75.0/25.0〜99.9:0.1である。ビニル系重合体(A)の質量比が50.0未満になると、塗膜硬度が低くなるため、表層用塗膜としては不適当となり、99.9を超えると、ビニル系重合体(B)の使用量が少なくなりすぎるため、層間の親和性を向上させ、付着性を向上させる効果が不充分になる。
【0012】
ビニル系重合体(A)は、主として基材の表層で硬質の樹脂層を形成し、耐腐食性、塗装後の耐ブロッキング性、耐候性、耐アルカリ性および耐水性を付与するために使用される成分である。
【0013】
ビニル系重合体(A)の示差熱走査熱量計(DSC)により測定されるガラス転移温度(Tg)は特に限定されないが、塗膜の硬質化の観点から40以上であることが好ましく、より好ましくは50℃以上、さらに好ましくは60℃以上である。一方、Tgはクラック防止の観点から110℃以下であることが好ましく、より好ましくは105℃以下、さらに好ましくは100℃以下である。
【0014】
ビニル系重合体(A)の数平均分子量は特に限定されないが、耐水性、耐アルカリ性、塗膜硬度を考慮すると高分子量であることが良く、塗装作業性、塗膜外観を考慮すると低分子量であることが良いことから、10,000〜50,000であることが好ましい。
【0015】
ビニル系重合体(A)を構成する単量体としては、たとえば下記の単量体(a)〜(i)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0016】
単量体(a):スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエンまたはジビニルベンゼンなどの各種スチレン系芳香族モノマー(芳香族ビニル系モノマー)。
【0017】
単量体(b):メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、iso−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、iso−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレートなどの炭素数1〜13のアルキル基を有する(メタ)アクリレート;シクロヘキシル(メタ)アクリレート、4−t−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレートなどのシクロアルキル基または芳香族基などを有する(メタ)アクリレートなどの各種(メタ)アクリレート。
【0018】
単量体(c):ジメチルマレエート、ジエチルマレエート、ジエチルフマレート、ジブチルフマレート、ジブチルイタコネートなどのマレイン酸、フマル酸、イタコン酸などによって代表される各種のジカルボン酸と炭素数1〜4の1価アルコールとのジエステル。
【0019】
単量体(d):2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートなどの水酸基含有(メタ)アクリレート;ジ−2−ヒドロキシエチルフマレート、モノ−2−ヒドロキシエチル−モノブチルフマレートなどの各種ジカルボン酸の水酸基含有エステル;プラクセルFA、プラクセルFM(以上、ダイセル化学工業(株)製のカプロラクトン付加モノマーの商品名)などに代表される、いわゆるε−カプロラクトン系のモノマーなどの各種α,β−エチレン性不飽和カルボン酸ヒドロアルキルエステル。
【0020】
単量体(e):酢酸ビニル、安息香酸ビニル、ベオバ(商品名、シェル社製、分岐状脂肪族モノカルボン酸のビニルエステル)などの各種ビニルエステル。
【0021】
単量体(f):グリシジル(メタ)アクリレート、(β−メチル)グリシジル(メタ)アクリレート、(メタ)アリルグリシジルエーテルなどの各種グリシジル基含有ビニルモノマー。
【0022】
単量体(g):(メタ)アクリル酸、クロトン酸などの不飽和モノカルボン酸;マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸などの不飽和ジカルボン酸などの各種不飽和カルボン酸;前記不飽和ジカルボン酸と1価アルコールとのモノエステル(ハーフエステル)などの種々のα,β−エチレン性不飽和カルボン酸。
【0023】
単量体(h):ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレートなどの各種ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート;N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N−ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドなどのN−ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミド;t−ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、t−ブチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、アジリジニルエチル(メタ)アクリレート、ピロリジニル(メタ)アクリレート、ピペリジニルエチル(メタ)アクリレートなどのアミノ基含有ビニルモノマー。
【0024】
単量体(i):上記単量体(a)〜(h)と共重合性を有する不飽和結合含有ポリエステル。特に代表的なものとしては、特公昭45−22011号公報、特公昭46−20502号公報、特公昭44−7134号公報、特開昭48−78233号公報または特開昭50−58123号公報などに開示されているような、共重合性不飽和結合を有する成分を必須として、他の成分と反応させることによって、樹脂骨格中に共重合性不飽和結合を有する不飽和結合含有ポリエステル。
【0025】
ビニル系重合体(A)を製造するにあたり、単量体(a)〜(i)はそれぞれ単独で使用しても良く、2種以上を組み合わせて使用しても良い。
【0026】
単量体(a)〜(i)から製造されるビニル系重合体(A)の具体例としては、メチルメタクリレート/n−ブチルメタクリレート/2−エチルヘキシルアクリレート/メタクリル酸/ジメチルアミノエチルメタクリレート/(不飽和ポリエステル)共重合体で、DSCによる実測Tgが60℃、数平均分子量が20,000のものをはじめ、スチレン/メチルメタクリレート/イソブチルメタクリレート/2−ヒドロキシエチルメタクリレート共重合体で、DSCによる実測Tgが80℃、数平均分子量が15,000のものや、メチルメタクリレート/ターシャリーブチルメタクリレート/n−ブチルアクリレート/メタクリル酸共重合体で、DSCによる実測Tgが70℃、数平均分子量が15,000のものや、スチレン/メチルメタクリレート/シクロヘキシルメタクリレート/ジブチルフマレート/グリシジルメタクリレート共重合体で、DSCによる実測Tgが60℃、数平均分子量が30,000のものなどが挙げられる。
【0027】
ビニル系重合体(A)の製造は懸濁重合法や塊状重合法などが採用されるが、溶液重合法または溶液ラジカル重合法によって製造することが簡便であり、また、懸濁重合法で多用される界面活性剤のような通常の有機溶剤に溶解しがたい不純物が混入する余地がなくなるため好ましい。
【0028】
溶液重合法によりビニル系重合体(A)を製造する際に使用される有機溶剤としては、たとえばトルエン、キシレンや、ソルベッソ100、ソルベッソ150(以上、エクソン社製の商品名)などの各種芳香族炭化水素系溶剤;スワゾール310(商品名、丸善石油化学(株)製)、LAWS(商品名、シェル社製)などの各種脂肪族−芳香族炭化水素混合溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテートなどの各種エステル系溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどの各種ケトン系溶剤;EEP(商品名、イーストマン・コダック社製)、ブチルセロソルブなどの各種のエーテル系溶剤;メタノール、エタノール、プロパノール、n−ブタノール、iso−ブタノール、sec−ブタノールなどの各種アルコール系溶剤などが挙げられる。これらは単独で使用しても良く、2種以上を組み合わせて使用しても良い。
【0029】
溶液ラジカル重合法に使用されるラジカル重合開始剤としては、たとえばアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、ベンゾイルパーオキシド(BPO)、t−ブチルパーベンゾエート(TBPB)、t−ブチルハイドロパーオキシド(TBPO)、ジ−t−ブチルパーオキシド(DTBPO)、クメンハイドロパーオキシド(CHP)などが挙げられる。
【0030】
本発明のアクリル樹脂に含有されるビニル系重合体(B)は、主として硬質のビニル系重合体(A)に相溶し、基材や下地に存在する水酸基と反応性を有し、また比較的軟質で粘着性を有するので、トップコートとこれらの間の付着性向上のために使用される成分である。また、ビニル系重合体(A)と同様に耐水性、耐アルカリ性および耐候性に優れる。
【0031】
ビニル系重合体(B)は加水分解性シリル基を含有し、DSCにより測定されたTgが所定の範囲である以外は特に限定されるものではないが、層間付着向上のための粘着性付与の点からは低分子量であることが良く、耐水性、耐アルカリ性、耐候性の点からは高分子量であることが良いことから、数平均分子量は2,000〜10,000であることが好ましい。DSCにより測定されたビニル系重合体(B)のTgは、耐水性の観点から−20℃以上であることが好ましく、より好ましくは−10℃以上、さらに好ましくは0℃以上である。一方、Tgは付着性向上の観点から30℃以下であることが好ましく、より好ましくは25℃以下、さらに好ましくは20℃以下である。
【0032】
加水分解性シリル基とは、ケイ素原子に加水分解性基、たとえばアルコキシ基、アシロキシ基、ハロゲン原子などが結合した基である。ビニル系重合体(B)中における加水分解性シリル基を含有するビニル系単量体単位の含量は、付着性向上の観点から5〜80質量部、より好ましくは10〜70質量部、さらに好ましくは10〜60質量部であることが好ましい。
【0033】
ビニル系重合体(B)を構成する単量体としては、前記単量体(a)〜(i)および単量体(j):ビニルトリエトキシシラン、メチルビニルジエトキシシランなどのビニル基含有アルコキシシラン;γ−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシランなどのメタクリロキシ基含有アルコキシシランなどの加水分解性シリル基含有重合性不飽和単量体;KR−215、X−22−5002(以上、信越化学工業(株)製の商品名)などの各種シリコン系モノマーなどが挙げられる。単量体(j)は単独で使用しても良く、2種以上を組み合わせて使用しても良い。なかでも、同時に使用するビニル系モノマーとの共重合性に優れるという理由からγ−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシランが好ましい。
【0034】
単量体(a)〜(j)から製造されるビニル系重合体(B)の具体例としては、n−ブチルアクリレート/2−エチルヘキシルアクリレート/メチルメタクリレート/γ−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン共重合体で、DSCによる実測Tgが20℃、数平均分子量が5,000のものをはじめ、スチレン/ジブチルフマレート/ビニルトリエトキシシラン共重合体で、実測Tgが25℃、数平均分子量が4,000のものや、メチルメタクリレート/2−エチルヘキシルアクリレート/γ−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン共重合体で、実測Tgが10℃、数平均分子量が5,000のものや、n−ブチルメタクリレート/シクロヘキシルメタクリレート/ジブチルフマレート/ビニルトリエトキシシラン/γ−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン共重合体で、実測Tgが20℃、数平均分子量が5,000のものなどが挙げられる。
【0035】
加水分解性シリル基を導入したビニル系重合体(B)の製造は、加水分解性シリル基を含有しない単量体と、これらと共重合性を有する加水分解性シリル基含有単量体とを共重合させる方法;γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランなどの加水分解性シリル基含有シランカップリング剤を、ビニル系重合体分子中に含まれる官能基と反応させることによって加水分解性シリル基を導入する方法などによって製造される。
【0036】
加水分解性シリル基を含有しない単量体と、これらと共重合性を有する加水分解性シリル基含有単量体とを共重合させる方法の場合、ビニル系重合体(A)の製造の場合と同様にして製造すれば良い。
【0037】
一方、加水分解性シリル基含有シランカップリング剤を、ビニル系重合体分子中に含まれる官能基と反応させることによって加水分解性シリル基を導入する方法の場合、ビニル系重合体をビニル系重合体(A)の場合と同様にして製造した後、加水分解性シリル基含有シランカップリング剤に含まれる加水分解性シリル基以外の官能基と、ビニル系重合体に含まれる官能基とを、必要に応じて触媒を使用して加熱などの方法によりグラフトさせることにより製造すれば良い。
【0038】
加水分解性シリル基含有シランカップリング剤としては、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランのほか、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシランのようなアミノ基含有アルコキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシランのようなメルカプト基含有アルコキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシランのようなクロロ基含有アルコキシシランなどが挙げられる。
【0039】
<有機溶剤>
有機溶剤には、内割成分として配合される有機溶剤(すなわち、内割溶剤)と、外割成分として配合される有機溶剤(すなわち、外割溶剤)とがある。いずれの溶剤も日本水道協会の規格に適合するものであり、好ましくは、たとえば、日本水道協会規格JWWA K 139「水道用ダクタイル鋳鉄管合成樹脂塗料」に適合する溶剤である。溶剤は、内割溶剤および外割溶剤のいずれも、アクリル樹脂との相溶性や、溶剤全体としての揮発性の他、作業性、安全性、法規制などを考慮して選択される。
【0040】
(内割溶剤)
内割溶剤は、芳香族炭化水素およびC3-4分岐アルコールからなるものである。ここで、芳香族炭化水素とは、ベンゼンなどの芳香環に、アルキル基などの炭化水素基が置換したものである。該アルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基などの炭素数1〜4(C1-4)のものが挙げられ、このうち、C1-2のものが好ましい。
【0041】
芳香族炭化水素としては、具体的には、トルエン、キシレン、エチルベンゼンなどが挙げられる。また、C3-4分岐アルコールとしては、イソプロピルアルコール、イソブチルアルコール、t−ブチルアルコールなどが挙げられる。芳香族炭化水素およびC3-4分岐アルコールのいずれも、1種単独で使用することもできれば、2種以上を組み合わせて使用することもできる。
【0042】
芳香族炭化水素は、トルエンおよびキシレンを含むものであることが好ましく、この場合において、トルエンは、内割溶剤100質量%中、44.0質量%以上であることが好ましく、より好ましくは44.5質量%以上である。一方、キシレンは、内割溶剤100質量%中、42.6質量%以上であることが好ましく、より好ましくは43.1質量%以上である。トルエンとキシレンの質量比は、トルエン:キシレン=28〜34:27〜33の範囲内であることが好ましく、より好ましくはトルエン:キシレン=29〜33:28〜32の範囲内、さらに好ましくはトルエン:キシレン=30〜32:29〜31の範囲内、最も好ましくはトルエン:キシレン=約31:約30である。ここで、「約」とは、1%の増減を許容する趣旨である。
【0043】
また、芳香族炭化水素は、エチルベンゼンを含んでいてもよい。この場合において、エチルベンゼンは、内割溶剤100質量%中、9.0質量%未満であることが好ましく、より好ましくは8.5質量%未満、さらに好ましくは8.4質量%未満である。
【0044】
3-4分岐アルコールは、イソプロピルアルコールおよびイソブチルアルコールの少なくとも一つであることが好ましい。C3-4分岐アルコールの配合量は、内割溶剤100質量%中、4.0質量%未満であることが好ましく、より好ましくは3.4質量%未満である。
【0045】
内割溶剤の配合量は、塗料組成物100質量%中、25〜80質量%であることが好ましい。該配合量は、50質量%以上であることがより好ましく、60以上であることがさらに好ましい。一方、該配合量は75質量%以下であることが好ましい。
【0046】
(外割溶剤)
外割溶剤は、所定の蒸発速度およびSP値(溶解パラメーター)を有する溶剤である。ここで蒸発速度とは、酢酸ブチルの蒸発速度を基準値100とした場合において、各溶剤の蒸発速度として示される値をいう。また、SP値とは、ヒルデブラント(Hildebrand)の正則溶液論によって定義された溶解パラメーター(Solubility Parameter)である。
【0047】
本発明に係る外割溶剤が有する所定の蒸発速度とは、45〜60である。該蒸発速度は、好ましくは46以上、より好ましくは47以上、さらに好ましくは48以上、さらに好ましくは49以上である。一方、該蒸発速度は、好ましくは55以下、より好ましくは54以下、さらに好ましくは53以下、さらに好ましくは52以下、さらに好ましくは51以下である。
【0048】
本発明に係る外割溶剤が有する所定のSP値とは、9.0〜12.0である。該SP値は、好ましくは10.0以上、より好ましくは11.0以上、さらに好ましくは11.1以上、さらに好ましくは11.2以上、さらに好ましくは11.3以上である。一方、該SP値は、好ましくは11.9以下、より好ましくは11.8以下、さらに好ましくは11.7以下、さらに好ましくは11.6以下、さらに好ましくは11.5以下である。
【0049】
本発明に係る外割溶剤の具体例としては、例えば、1−ブタノール、エチレングリコールモノメチルエーテルが挙げられる。外割溶剤は、1種単独で、または、2種以上を混合して使用することができる。
【0050】
外割溶剤の配合量は、内割溶剤100質量部に対し、7.0〜20.0質量部である。該配合量は、10質量部以上が好ましく、より好ましくは11.0質量部以上、さらに好ましくは12.0質量部以上、さらに好ましくは13.0質量部以上、さらに好ましくは14.0質量部以上である。一方、該配合量は、19.0質量部以下が好ましく、より好ましくは18.0質量部以下、さらに好ましくは17.0質量部以下、さらに好ましくは16.0質量部以下、さらに好ましくは15.0質量部以下である。
【0051】
<消泡剤>
本発明の金属管用塗料組成物には、消泡剤を含めることができ、これにより、さらに優れた気泡抑制効果を奏する。消泡剤としては、シリコーン系消泡剤やアクリル系消泡剤など、この分野で通常使用されるものをいずれも好適に用いることができる。
【0052】
消泡剤は、外割成分としても、内割成分としても配合することができる。例えば、消泡剤を外割成分として配合する場合の配合量は、塗料組成物100質量部に対し、好ましくは1質量部以上、より好ましくは2質量部以上である。一方、該配合量は、5質量部以下、より好ましくは3質量部以下である。
【0053】
<その他の成分>
本発明の金属管用塗料組成物は、上記成分のほかに必要に応じて水質に影響を与えない範囲の公知の顔料、添加剤などを添加することができる。これらその他の成分は、内割成分として配合されるものである。
【0054】
本発明の金属管用塗料組成物は、塗装作業性を確保するために、塗装時のチクソ係数を2.0〜4.0に調整することが望ましい。塗装時粘度のチクソ係数が2.0未満の場合は浸漬塗装においてタレのため必要膜厚が塗装できなくなり、また4.0を超えるとスプレー塗装時に流動性(レベリング性)が低下するため塗装後の仕上がり外観が低下する。チクソ係数の調整は、主として粘性調整剤や、顔料の種類および添加量によってなされるが、一般的には塗膜性能を確保するため、顔料の種類および添加量が決定された後、チクソ性が不足している分だけ粘性調整剤を添加する方法がとられる。
【0055】
また、本発明の金属管用塗料組成物は、塗装作業性を確保するために、塗装時の塗料不揮発分を20〜50質量%に調整することが好ましい。塗装時不揮発分が20質量%未満では浸漬塗装において厚膜塗装が困難になり、50質量%を超えると粘度が高くなりすぎるため、スプレー塗装作業性、ローラー塗装作業性が低下し、好ましくない。
【0056】
本発明の金属管用塗料組成物に使用される顔料は、塗料に充分な着色性を付与するためのものであり、含量は特に限定されないが、塗料組成物100質量部中に5〜35質量部含まれることが好ましく、15〜30質量部含まれることがより好ましい。
【0057】
顔料としては、二酸化チタン、酸化鉄、カーボンブラック、シアニンブルー、シアニングリーンなどの着色顔料;炭酸カルシウム、タルク、硫酸バリウム、クレーなどの体質顔料;燐酸亜鉛、燐酸カルシウム、リンモリブデン酸アルミニウムなどの防錆顔料などが挙げられる。これらは単独で使用しても良く、必要により2種以上を混合して使用しても良い。
【0058】
その他の添加剤としては、シリコーンや有機高分子からなる表面調整剤;アマイドワックス、有機ベントナイトなどからなる粘性調整剤(タレ止め剤);シリカ、アルミナなどからなる艶消し剤;ポリカルボン酸塩などからなる分散剤;ベンゾフェノンなどからなる紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系光安定剤、フェノール系などの酸化防止剤;ワックスなど、公知の添加剤を挙げることができる。これらは必要により単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
【0059】
<塗料組成物の製造>
本発明の金属管用塗料組成物は、塗料製造に慣用されている設備を使用して製造することができる。製造方法は特に限定されないが、たとえば、ビニル重合体(A)およびビニル重合体(B)からなるアクリル樹脂を調製し、それに顔料、内割溶剤、所望により、消泡剤、その他の添加剤を添加した後、ロールミル、SGミル、ディスパーなどで分散処理して混合物を得、さらに該混合物を外割溶剤によって希釈することによって製造する。こうして得られる本発明の金属管用塗料組成物は、たとえば日本水道協会規格JWWA K 139「水道用ダクタイル鋳鉄管合成樹脂塗料」に規定されている塗料として適合し得るものであり、金属管の出荷前の仕上げ用の塗装(出荷塗装)に使用されるものである。
【0060】
<金属管>
本発明の金属管用塗料組成物が塗布される金属管は、金属製のものであれば特に限定されないが、たとえば鋳鉄管、鋼管などの金属管が挙げられる。とりわけ、鋳鉄管としては、ダクタイル鋳鉄管、さらには水道用ダクタイル鋳鉄管などが挙げられる。金属管には、その表面にエポキシ系、ラテックス系または亜鉛溶射などの下地処理が施されていても良い。
【0061】
鋳鉄管は、上下水道管やガス管などに広く用いられている。これら水道管、ガス管などは、埋設環境で使用されることが多く、特に管外面の耐久性、耐食性の向上が求められている。そのため、管外面の防食層として、たとえば日本ダクタイル鉄管協会規格JDPA Z 2010「ダクタイル鋳鉄管合成樹脂塗装」に規定されている亜鉛系プライマーを用いることが多い。鋳鉄管には、直管、異形管および押し輪などの付属品がある。
【0062】
<塗装方法>
本発明の金属管用塗料組成物を金属管に塗布する方法は特に限定されないが、ローラー塗装、刷毛塗装、ディッピング塗装、シャワー塗装、スプレー塗装などの、この分野において通常使用される塗装方法で塗布される。
【0063】
本発明の金属管用塗料組成物を金属管に塗布する場合、塗膜の厚さは、金属管の各用途に合わせて十分な耐用年数を保証できるものである限り特に限定はないが、例えば、ダクタイル鋳鉄管の場合、通常、10μm以上であることが好ましく、20μm以上であることがより好ましい。塗膜を厚くすることで、耐用年数100年を実現できる塗装、すなわち、100年塗装が可能となるからである。一方、塗膜を厚くすると、塗装時に、塗膜に泡が発生しやすくなるが、本発明の塗料用組成物によれば、かかる泡の発生を抑制することができる。
【0064】
本発明の塗料用組成物を用いた場合の塗装の条件は、当業者であれば、適宜設定することができる。例えば、呼び径100mmの4m管を、幅250mmのローラーを用いてローラー塗装する場合、管回転数は120〜140rpmであることが好ましく、塗料組成物の吐出量は125〜145g/10secであることが好ましく、ローラー移動速度は4.0〜5.0sec/mであることが好ましい。この場合、パス回数は1回で十分であり、吐出時間は12sec〜16sec程度、乾燥時間も含めた塗装時間は15秒〜19秒程度である。あるいは、呼び径150mmの5m耐震管を、幅300mmのローラーを用いてローラー塗装する場合、管回転数は50〜60rpmであることが好ましく、塗料組成物の吐出量は65〜85g/10secであることが好ましく、ローラー移動速度は11.0〜13.0sec/mであることが好ましい。この場合、パス回数は1回で十分であり、吐出時間は20sec〜24sec程度、乾燥時間も含めた塗装時間は26秒〜30秒程度である。ここで、「塗料用組成物の吐出量」とは、軸心とこれを覆うスポンジからなるローラーにおいて、軸心からの塗料用組成物の吐出量をいう。上記の如き塗装条件で、本発明においては、塗膜の厚さを20μm以上とすることができる。
【0065】
理論に拘束されることは意図しないが、本発明の金属管用塗料組成物において気泡の発生が抑制されるメカニズムとしては、以下が考えられる。すなわち、金属管用塗料組成物においては、その溶剤の揮発が速すぎる場合に、金属管に塗布された塗料の塗膜表面だけが乾燥し、その結果、塗膜内の泡が抜け切れなくなり、気泡が発生するのではないかと考えられる。本発明においては、塗料組成物の主成分であるアクリル樹脂との相溶性を確保しつつ、かつ、揮発性が所定の範囲となるように、溶剤の組成を選択した。その結果、本発明の効果を得るに至った。
【0066】
本明細書における用語の意味について説明する。
【0067】
「溶剤系塗料組成物」や「溶剤系」との用語は、水性塗料と区別するために用いられるものであり、溶剤として水を含まないものを意味する。
【0068】
「(メタ)アクリル」、「(メタ)アクリレート」などの用語は、それぞれ「メタクリル」と「アクリル」、「メタクリレート」と「アクリレート」の総称である。
【0069】
「(メタ)アリル」とは、「アリル」および「メタリル」の総称である。
【0070】
内割成分とは、塗料組成物に含まれる成分の内、その基準量(100質量部)に含まれる成分をいう。一方、外割成分とは、塗料組成物に含まれる成分の内、その基準量(100質量部)には含まれない成分をいう。
【実施例】
【0071】
以下、実施例により本発明を詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0072】
実施例1〜5および比較例1〜6
<実施例および比較例で使用した成分>
[アクリル樹脂]
メチルメタクリレート/n−ブチルメタクリレート/2−エチルヘキシルメタクリレート/メタクリル酸/(不飽和ポリエステル)共重合体(不揮発分:50.0%、25℃におけるガードナー粘度:Z2、酸価:1.5、数平均分子量:15,000、DSCによる実測Tg:60℃)80質量部と、n−ブチルアクリレート/2−エチルヘキシルアクリレート/メチルメタクリレート/γ−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン共重合体(不揮発分:50.0%、25℃におけるガードナー粘度:D、酸価:0.5、数平均分子量:5,000、DSCによる実測Tg:20℃)20質量部との混合物
[顔料]
酸化チタン(1〜5質量部)とカーボンブラック(0.1〜1質量部、商品名:MA100、三菱化学(株)製)との混合物
[粘性調整剤]
商品名:ディスパロン6900、楠本化成(株)製
[消泡剤]
商品名:ディスパロンOX−880EF、楠本化成(株)製
[溶剤]
下記表1に記載のものを使用した。
【0073】
【表1】
【0074】
<アクリル樹脂塗料の製造>
表3の配合に従い、容器にアクリル樹脂21部およびトルエン31部を仕込み、攪拌しながら顔料9部、粘性調整剤1部を加えた後、SGミルで粒度30μまで分散し、ミルベースとした。このミルベースにさらに溶剤(内割)を加え、ディスパー等で約30分間撹拌し、所定の粘度・不揮発分に調整した後、150メッシュの金網でろ過した。こうして得た混合物に、さらに、溶剤(外割)、および所望により消泡剤(外割)を加え、充分攪拌して、各実施例および比較例のアクリル樹脂塗料とした。
【0075】
(ゲル化の有無)
こうして得たアクリル樹脂塗料についてゲル化の有無を確認した。結果を表3に示す。
○:ゲル化せず
×:ゲル化した
【0076】
<塗装>
塗装の条件としては、表2記載のものを使用した。表2中、管回転数とは金属管の管回転数、吐出量とは塗布ローラーにおけるアクリル樹脂塗料の吐出量、移動速度とは塗布ローラーの移動速度をいう。また、「アクリル樹脂塗料の吐出量」とは、軸心とこれを覆うスポンジからなる塗布ローラーにおいて、軸心からのアクリル樹脂塗料の吐出量をいう。
【0077】
【表2】
【0078】
(塗布例1)
上記で製造した各実施例および比較例のアクリル樹脂塗料を用いて、図2に示す金属管塗装ラインにより、表2の塗布例1の条件の下、金属管を塗装した。塗装は、ローラー1により金属管2を所定の回転数で回転させながら、金属管に当接させた塗布ローラー3から所定量のアクリル樹脂塗料を吐出させ、かつ、該塗布ローラーを金属管の回転軸に平行に移動させて実施した。なお、図3は、図2の右側面図である。
【0079】
(気泡の発生状況)
各実施例および比較例における気泡の発生状況を以下の基準により評価した。結果を表3に示す。
++:良好
+:微量発生
A:少量発生
B:全体に発生
【0080】
【表3】
【0081】
表3から明らかなように、外割溶剤として、1−ブタノールまたはEGMを配合した各実施例では、塗料組成物がゲル化することなく、かつ、気泡の発生も十分に抑制された。一方、外割溶剤としてBG、MEG、PGMまたはキシレンを配合した各比較例では、塗膜全体に気泡が発生した。なお、比較例3においては、塗料組成物がゲル化もした。また、所定の外割溶剤に加えて消泡剤を配合した実施例4においては、気泡の発生が最も抑制された。
【0082】
(塗布例2)
比較例5のアクリル樹脂塗料を用いて、図2に示す金属管塗装ラインにより、表2の塗布例2の条件の下、金属管を塗装したところ、図1に示すように、気泡の発生が確認された。
【符号の説明】
【0083】
1 ローラー
2 金属管
3 塗布ローラー
【要約】
【課題】出荷塗装において塗膜に泡が発生するのを抑制することのできる金属管用塗料組成物、それを塗布してなる金属管、および該塗料組成物を用いた金属管の塗装方法を提供する。
【解決手段】アクリル樹脂と、芳香族炭化水素およびC3-4分岐アルコールからなる内割溶剤と、所定の蒸発速度およびSP値を有する外割溶剤とを含んでなる金属管用塗料組成物であって、内割溶剤100質量部に対する外割溶剤の配合量が7.0〜20.0質量部であり、上記蒸発速度が酢酸ブチルを基準値100として45〜60であり、上記SP値が9.0〜12.0である。
【選択図】なし
図2
図3
図1