特許第6100400号(P6100400)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6100400二重活性H1インバースアゴニスト/5−HT2Aアンタゴニストとしての(チエノ[2,3−b][1,5]ベンゾオキサゼピン−4−イル)ピペラジン−1−イル化合物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6100400
(24)【登録日】2017年3月3日
(45)【発行日】2017年3月22日
(54)【発明の名称】二重活性H1インバースアゴニスト/5−HT2Aアンタゴニストとしての(チエノ[2,3−b][1,5]ベンゾオキサゼピン−4−イル)ピペラジン−1−イル化合物
(51)【国際特許分類】
   C07D 498/04 20060101AFI20170313BHJP
   A61K 31/553 20060101ALI20170313BHJP
   A61P 25/20 20060101ALI20170313BHJP
【FI】
   C07D498/04 116
   C07D498/04CSP
   A61K31/553
   A61P25/20
【請求項の数】7
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2015-551850(P2015-551850)
(86)(22)【出願日】2014年1月8日
(65)【公表番号】特表2016-508149(P2016-508149A)
(43)【公表日】2016年3月17日
(86)【国際出願番号】US2014010577
(87)【国際公開番号】WO2014110065
(87)【国際公開日】20140717
【審査請求日】2015年7月1日
(31)【優先権主張番号】61/752,203
(32)【優先日】2013年1月14日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】594197872
【氏名又は名称】イーライ リリー アンド カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100100158
【弁理士】
【氏名又は名称】鮫島 睦
(74)【代理人】
【識別番号】100126778
【弁理士】
【氏名又は名称】品川 永敏
(74)【代理人】
【識別番号】100162684
【弁理士】
【氏名又は名称】呉 英燦
(72)【発明者】
【氏名】ピーター・サデウス・ギャラガー
【審査官】 榎本 佳予子
(56)【参考文献】
【文献】 特表2009−504676(JP,A)
【文献】 特表2007−505106(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/109011(WO,A1)
【文献】 特表2014−525440(JP,A)
【文献】 特表2014−518280(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
A61K
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の式の化合物:
【化1】
またはその薬学的に許容可能な塩。
【請求項2】
HCl塩である、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
少なくとも1種の薬学的に許容可能な担体、希釈剤または賦形剤と組み合わせて、請求項1に記載の化合物またはその薬学的に許容可能な塩を含む、医薬組成物。
【請求項4】
請求項1に記載の化合物またはその薬学的に許容可能な塩を含む、不眠症の治療用医薬組成物。
【請求項5】
前記不眠症が、睡眠開始もしくは睡眠維持またはその両方の困難性によって特徴付けられる、請求項に記載の組成物
【請求項6】
不眠症を治療するための医薬の製造における請求項1に記載の化合物またはその薬学的に許容可能な塩の使用。
【請求項7】
前記不眠症が、哺乳動物における睡眠開始もしくは睡眠維持またはその両方における困難性によって特徴付けられる、請求項に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(該当個所なし)
【背景技術】
【0002】
ヒスタミンは、少なくとも4個の異なるGタンパク質共役受容体、H1−H4受容体とのその相互作用により種々の生理学的プロセスにおいて重要な役割を果たす。CNSにおいて、H1受容体は睡眠調節サイクルにおいて重要な役割を果たし、H1アンタゴニスト/インバースアゴニストは眠気を誘導することが知られている。
【0003】
同様に、セロトニンは、少なくとも14個の異なるGタンパク質共役受容体とのその相互作用により種々の生理学的プロセスにおいて重要な役割を果たす。CNSにおける5−HT2A受容体の調節は眠気調節サイクルにおいて重要な役割を果たし、5−HT2Aアンタゴニストは、不眠症を患っている患者における徐波睡眠および睡眠維持を改善することが示されている。
【0004】
H1または5−HT2Aインバースアゴニストまたはアンタゴニスト活性を有する化合物(例えば、それぞれドキセピンおよびトラゾドン)は不眠症の治療に使用されており、動物の睡眠研究において有意な薬理学的効果を示している。しかしながら、選択的二重活性H1/5−HT2Aインバースアゴニスト/アンタゴニストは現在市販されていない。
【0005】
特許文献1は、睡眠障害を治療するための特定の置換(チエノ[2,3−b][1,5]ベンゾジアゼピン−4−イル)ピペラジン−1−イルおよび(チエノ[2,3−b][1,5]ベンゾオキサゼピン−4−イル)ピペラジン−1−イル化合物を記載している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2007/022068号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、特に他のヒスタミン受容体、セロトニン受容体および他の生理学的に関連する受容体と比べて、特に5−HT2C受容体、GABA受容体、ムスカリン受容体、ドーパミン受容体、アドレナリン受容体およびhERGチャネルと比べて、H1受容体に対して高いインバースアゴニスト効力、5−HT2A受容体に対して高いアンタゴニスト効力、およびこれらの受容体に対して良好な選択性を有する、3−[4−(2−シクロプロピル−8−メチル−チエノ[2,3−b][1,5]ベンゾオキサゼピン−4−イル)ピペラジン−1−イル]−2,2−ジメチル−プロパン酸およびその薬学的に許容可能な塩を提供する。これらの化合物はまた、動物モデルにより、これらが不十分な睡眠維持によって特徴付けられる睡眠障害の治療に有用であり得ることを実証する。このように、化合物は、例えば、慢性もしくは一過性一次性不眠症、または慢性もしくは一過性二次性不眠症、あるいはその両方などの不眠症の治療などの、不十分な睡眠潜時または不十分な睡眠維持あるいはその両方によって特徴付けられる睡眠障害の治療に有用であると考えられる。二次性不眠症の例としては、限定されないが、抑鬱障害(例えば、大鬱病性障害、気分変調および/または気分循環症)に関連する不眠症、不安障害(例えば、全般性不安障害および/または社会恐怖)に関連する不眠症、疼痛(例えば、炎症性関節炎もしくは変形関節炎、または糖尿病性神経障害に関連するものなどの線維筋痛、慢性骨痛または関節痛)に関連する不眠症、アレルギー反応(例えば、アレルギー性喘息、掻痒、鼻炎、鬱血など)に関連する不眠症、肺または気道障害(例えば、閉塞性睡眠時無呼吸、反応性気道疾患など)に関連する不眠症、精神障害、認知症および/または神経変性疾患に関連する不眠症、ならびに/あるいは概日リズム睡眠障害(例えば、交代勤務睡眠障害、時差ぼけ障害、睡眠相後退障害、睡眠相前進障害および非24時間睡眠−覚醒症候群など)に関連する不眠症が挙げられる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、式Iの化合物
【化1】

またはその薬学的に許容可能な塩を提供する。すなわち、3−[4−(2−シクロプロピル−8−メチル−チエノ[2,3−b][1,5]ベンゾオキサゼピン−4−イル)ピペラジン−1−イル]−2,2−ジメチル−プロパン酸またはその薬学的に許容可能な塩である。
【0009】
本発明の別の態様において、少なくとも1種の薬学的に許容可能な担体、希釈剤または賦形剤と組み合わせて、式Iの化合物またはその薬学的に許容可能な塩を含む医薬組成物が提供される。さらに、本発明のこの態様は、例えば、長時間の睡眠潜時または不十分な睡眠維持あるいはその両方によって特徴付けられる不眠症、例えば一次性不眠症、時差ぼけ、交代勤務睡眠障害、睡眠相後退障害、睡眠相前進障害、および/または非24時間睡眠−覚醒障害のような不眠症を治療するための医薬組成物であって、1種以上の薬学的に許容可能な賦形剤、担体または希釈剤と組み合わせて式Iの化合物またはその薬学的に許容可能な塩を含む、医薬組成物を提供する。
【0010】
本発明のこの態様のさらなる実施形態は、少なくとも1種の薬学的に許容可能な担体、賦形剤または希釈剤と、任意の他の治療成分とを組み合わせて、式Iに記載の化合物またはその薬学的に許容可能な塩を含む医薬組成物を提供する。
【0011】
本発明はまた、例えば、哺乳動物における、長時間の睡眠潜時または不十分な睡眠維持あるいはその両方によって特徴付けられる不眠症、例えば、一次性不眠症、時差ぼけ、交代勤務睡眠障害、睡眠相後退障害、睡眠相前進障害、および/または非24時間睡眠−覚醒障害のような不眠症を治療する方法であって、有効量の式Iの化合物またはその薬学的に許容可能な塩を、このような治療を必要とする哺乳動物に投与する工程を含む、方法を提供する。これらの治療方法の1つの特定の実施形態において、哺乳動物はヒトである。
【0012】
本発明はまた、療法に使用するための式Iの化合物またはその薬学的に許容可能な塩を提供する。この態様において、本発明は、不眠症の治療に使用するための、式Iの化合物またはその薬学的に許容可能な塩を提供する。さらなる実施形態において、不眠症は、例えば、一次性不眠症、時差ぼけ、交代勤務睡眠障害、睡眠相後退障害、睡眠相前進障害および/または非24時間睡眠−覚醒障害のような長時間の睡眠潜時または不十分な睡眠維持あるいはその両方によって特徴付けられる。本発明のこの態様の1つの特定の実施形態は、哺乳動物、特にヒトにおける使用である。
【0013】
本発明の別の態様は、例えば、長時間の睡眠潜時または不十分な睡眠維持あるいはその両方によって特徴付けられる一次性不眠症、例えば、一次性不眠症、時差ぼけ、交代勤務睡眠障害、睡眠相後退障害、睡眠相前進障害、および/または非24時間睡眠−覚醒障害のような不眠症の治療のための医薬の製造における式Iの化合物またはその薬学的に許容可能な塩の使用を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0014】
明確にするために、三環系構造の以下の番号付けが本出願全体を通して使用される:
【化2】
【0015】
本発明の化合物は塩基性および酸性部分を有するので、多くの有機酸および無機酸ならびに塩基と反応して、薬学的に許容可能な塩を形成する。本発明の化合物の薬学的に許容可能な塩は本出願の範囲内に意図される。本明細書で使用される場合、「薬学的に許容可能な塩」という用語は、生物に対して実質的に無毒性である本発明の化合物の任意の塩を指す。このような塩としては、当業者に公知である、Journal of Pharmaceutical Science、66、2−19(1977)に記載されているものが挙げられる。
【0016】
本明細書に使用される略語は以下のように定義される:
「ブライン」は飽和NaCl水溶液を意味する。
「DMEM」はダルベッコ最小イーグル培地を意味する。
「DMSO」はジメチルスルホキシドを意味する。
「EDTA」はエチレンジアミン四酢酸を意味する。
「Equiv」は等価を意味する。
「FBS」はウシ胎仔血清を意味する。
「HEPES」は4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジンエタンスルホン酸を意味する。
「HPLC」は高圧液体クロマトグラフィーを意味する。
「hr.」は時間を意味する。
「IC50」は50%の最大阻害が達成される濃度を意味する。
「LC−MS」はHPLC質量分析を意味する。
「MeOH」はメタノールを意味する。
「min.」は分を意味する。
「MS」は質量分析を意味する。
「MS(ES+)」はエレクトロスプレーイオン化を使用した質量分析を意味する。
「NMR」は核磁気共鳴を意味する。
「RO」は受容体占有を意味する。
「THF」はテトラヒドロフランを意味する。
【実施例】
【0017】
一般化学
本発明の化合物は以下の合成実施例に従って調製され得る。
調製例1. 2,5−ジクロロチオフェン−3−カルボニルクロリド
【化3】

ジクロロメタン(500mL)中の2,5−ジクロロ−チオフェン−3−カルボン酸(49.7g;252.23mmol;1.00当量)の懸濁液に、ジメチルホルムアミド(0.5mL;6.47mmol)、続いてジクロロメタン(138.73mL;277.45mmol;1.1当量)中の2M塩化オキサリル溶液を1.5時間にわたって加えた(発生したガスは苛性溶液を通して通気する)。ガス発生が停止し、反応がLCMS(反応モニタリングのために7M NH/MeOH内で試料をクエンチする)によって完了するまで、室温にて1時間、得られた透明な溶液を撹拌する。対応する一級アミドについてMS(m/z):=195.9,197.9(M+H)。蒸発乾固して茶色の油(55g、252mmol、定量的)として標題の中間体を得る。
【0018】
調製例2. 2,5−ジクロロ−N−(2−ヒドロキシ−4−メチル−フェニル)チオフェン−3−カルボキサミド
【化4】

THF(450mL)中の6−アミノ−m−クレゾール(34.14g;277.20mmol;1.1当量)の溶液に、ピリジン(40.76mL;504.00mmol;2当量)、続いてTHF(250mL)中の2,5−ジクロロチオフェン−3−カルボニルクロリド(54.30g、252mmol、1.00当量)の溶液を、15〜20℃の温度を維持するために氷浴を使用して30分にわたって加える。得られた厚い混合物を室温にて1時間撹拌して、LCMSによってアミノフェノールの完全な消費を得た。撹拌しながら2MのHCl水溶液(500ml)及び氷(250ml)の混合物上に注ぐ。得られたベージュ色の固体を濾過によって回収し、水で十分に洗浄し、空気中で乾燥させる。MS(m/z):=301.84,303.94(M+H)。40℃にて一晩P上で真空オーブン中で乾燥させて標題の中間体(84.5g、推定定量的)を得る。
【0019】
調製例3. 2−クロロ−8−メチル−5H−チエノ[2,3−b][1,5]ベンゾオキサゼピン−4−オン
【化5】

ジメチルスルホキシド(450mL)中の2,5−ジクロロ−N−(2−ヒドロキシ−4−メチル−フェニル)チオフェン−3−カルボキサミド(76.15g;252mmol;1.00当量)の十分に撹拌した懸濁液に、炭酸カリウム(38.31g;277.20mmol;1.1当量)を加え、混合物を4.5時間、100〜110℃で加熱して、LCMSによって本質的に完全な変換を得る。室温に冷却し、1M塩酸水溶液(500ml)を含有する2つの別のビーカーにゆっくり加え、ガス発生を観察する。室温にて0.5時間撹拌し、得られた濃い灰色の固体を濾過によって回収する。水、続いて少量のエタノール、続いて少量のジエチルエーテルで連続して洗浄する。45℃にて一晩、真空オーブン中で乾燥させて、標題の中間体(58.5g、87%)を得る。MS(m/z):=265.99(M+H)
【0020】
調製例4. 2,4−ジクロロ−8−メチル−チエノ[2,3−b][1,5]ベンゾオキサゼピン
【化6】

1Lの丸底フラスコにメトキシベンゼン(225mL、5V)、2−クロロ−8−メチル−5H−チエノ[2,3−b][1,5]ベンゾオキサゼピン−4−オン(45g;169.4mmol;1当量)およびN,N−ジメチルアニリン(47.2g;389.5mmol;2.3当量)を入れる。60℃で加熱し、塩化ホスホリル(85.7g;558.9mmol;3.3当量)を0.5時間にわたって滴下して加える。100℃に加温し、TLC分析によって完了するまで2時間撹拌する。40〜60℃に冷却し、蒸発させて、暗褐色の固体(123.1g、433.2mmol、256%収率、アッセイによって補正されていない)として標題の中間体を得る。MS(m/z):283.8(M+H)。
【0021】
調製例5. メチル3−[4−(2−クロロ−8−メチル−チエノ[2,3−b][1,5]ベンゾオキサゼピン−4−イル)ピペラジン−1−イル]−2,2−ジメチル−プロパノエート
【化7】

1Lの丸底フラスコに、2,4−ジクロロ−8−メチル−チエノ[2,3−b][1,5]ベンゾオキサゼピン(121.1g;169.4mmol;1.0当量)、続いてアセトニトリル(600mL、12.5V)、次いで炭酸カリウム(119.4g;863.9mmol)を一度に入れる。10〜20分間撹拌し、次いでメチル2,2−ジメチル−3−(ピペラジン−1−イル)プロパノエートジヒドロクロリド(55.54g;203.3mmol;1.2当量)を一度に加える。80℃で加熱し、30時間撹拌する。混合物を真空下で濃縮乾固し、次いで酢酸エチル(1920mL、40V)および水(1920mL、40V)を混合物中に入れる。撹拌し、濾過し、次いで水相を分離し、酢酸エチル(960mL、20V)で抽出する。有機相を合わせ、水(960mL×2)およびブライン(200mL、4V)で洗浄する。濃縮し、シリカゲルカラム(石油エーテル/酢酸エチル(0〜10%))によって精製して、黄色の固体(55.4g、123.7mmol、95.8%純度、73.0%収率、アッセイによって補正されていない)として標題の中間体を得る。MS(m/z):448.2(M+H).H NMR(400MHz,CDCl):δ7.03(d,J=8.8Hz,1H),6.91(d,J=1.6Hz,1H),6.81(s,1H),6.50(s,1H),3.67(s,3H),3.47(t,J=4.4Hz,4H),2.58−2.54(q,6H),2.28(s,3H),1.19(s,6H)。
【0022】
調製例6. メチル3−[4−(2−シクロプロピル−8−メチル−チエノ[2,3−b][1,5]ベンゾオキサゼピン−4−イル)ピペラジン−1−イル]−2,2−ジメチル−プロパノエート
【化8】

メチル3−[4−(2−クロロ−8−メチル−チエノ[2,3−b][1,5]ベンゾオキサゼピン−4−イル)ピペラジン−1−イル]−2,2−ジメチル−プロパノエート(30.00g、66.97mmol)、シクロプロピルボロン酸(7.48g、87.06mmol)、第三リン酸カリウムn−水和物(49.75g、234.38mmol)、トリシクロヘキシルホスフィンテトラフルオロボレート(2.47g、6.7mmol)、水(13.39mL、13.39g、743.4mmol)およびトルエン(267.87mL、233.36g、2.53mol)の混合物を10分間、窒素により脱気する。酢酸パラジウム(II)(0.751g、3.35mmol)を加え、100℃にて一晩撹拌する。反応混合物を室温に冷やし、水を加え、反応混合物を酢酸エチルで抽出する。酢酸エチル抽出物(NaSO4)を乾燥させ、濃縮し、シリカ(ISCO)上でクロマトグラフし、酢酸エチル/イソヘキサン(0%:100%〜20%:80%)で勾配溶出する。生成物を含有する画分を回収し、濃縮する。25%エタノールおよび0.2%ジメチルアミンによる超臨界流体(CO)クロマトグラフィーを使用してさらにクロマトグラフする。生成物を含有する画分を回収し、濃縮し、真空中で6時間40℃にて、得られた固体を乾燥させて、メチル3−[4−(2−シクロプロピル−8−メチル−チエノ[2,3−b][1,5]ベンゾオキサゼピン−4−イル)ピペラジン−1−イル]−2,2−ジメチル−プロパノエート(23.73g、82.93%)を得る。MS(m/z):454.25(M+H)。1H NMR(300.11MHz,CDCl):6.98(d,J=7.9Hz,1H),6.88(dd,J=1.4,8.0Hz,1H),6.81(d,J=1.5Hz,1H),6.29(d,J=0.9Hz,1H),3.67(s,3H),3.50−3.47(m,4H),2.58−2.54(m,6H),2.27(s,3H),1.94−1.89(m,1H),1.58(s,1H),1.19(s,6H),0.94−0.87(m,1H),0.65−0.59(m,1H)。
【0023】
実施例1. 3−[4−(2−シクロプロピル−8−メチル−チエノ[2,3−b][1,5]ベンゾオキサゼピン−4−イル)ピペラジン−1−イル]−2,2−ジメチル−プロパン酸
【化9】

水酸化ナトリウム(9.27g、231.68mmol)を、水(210.18mL)およびイソプロピルアルコール(210.18mL)中のメチル3−[4−(2−シクロプロピル−8−メチル−チエノ[2,3−b][1,5]ベンゾオキサゼピン−4−イル)ピペラジン−1−イル]−2,2−ジメチル−プロパノエート(35.03g、77.23mmol)のスラリーに加え、85℃で45分間加熱する。室温に冷やし、2Mの塩酸でpH6〜6.5に中和する。混合物を濃縮してイソプロピルアルコールを除去し、得られた沈殿物を濾過により単離し、シンター上で洗浄する。単離した固体を真空中で40℃にて一晩乾燥させて、3−[4−(2−シクロプロピル−8−メチル−チエノ[2,3−b][1,5]ベンゾオキサゼピン−4−イル)ピペラジン−1−イル]−2,2−ジメチル−プロパン酸(32.6g、95.12%収率)を得る。MS(m/z):440.1(M+H).1H NMR(300.11MHz,CDCl):7.03(d,J=7.9Hz,1H),6.92(dd,J=1.3,8.1Hz,1H),6.84(d,J=1.3Hz,1H),6.32(d,J=0.9Hz,H),3.70(s,4H),2.88(t,J=4.6Hz,4H),2.62(s,2H),2.30(s,3H),1.97−1.91(m,1H),1.28(s,6H),0.98−0.91(m,2H),0.67−0.62(m,2H)。
【0024】
実施例2. 3−[4−(2−シクロプロピル−8−メチル−チエノ[2,3−b][1,5]ベンゾオキサゼピン−4−イル)ピペラジン−1−イル]−2,2−ジメチル−プロパン酸ジヒドロクロリド
【化10】

2Mの塩酸(0.119mL、0.24mmol)を、アセトニトリル(1mL)および水(1mL)中の3−[4−(2−シクロプロピル−8−メチル−チエノ[2,3−b][1,5]ベンゾオキサゼピン−4−イル)ピペラジン−1−イル]−2,2−ジメチル−プロパン酸(0.0497g、0.11mmol)の懸濁液に加え、凍結乾燥して、3−[4−(2−シクロプロピル−8−メチル−チエノ[2,3−b][1,5]ベンゾオキサゼピン−4−イル)ピペラジン−1−イル]−2,2−ジメチル−プロパン酸ジヒドロクロリド(0.058g、100%)を得る。MS(m/z):440.2(M+H)。
【0025】
文献データ(Morairty SR,Hedley L,Flores J,Martin R,Kilduff TS.(2008) Selective 5−HT2A and 5−HT receptor antagonists promote sleep in rats. Sleep 31,34−44.;およびBarbier,A.J., and Bradbury,M.J.,Histaminergic Control of Sleep−Wake Cycles:Recent Therapeutic Advances for Sleep and Wake Disorders,CNS & Neurological Disorders−Drug Targets,vol 6,pg.31−43(2007))および非臨床動物研究において生成されたデータは、不眠症の治療ならびに抑鬱障害、不安障害、疼痛、アレルギー、肺または気道障害、精神障害、認知症および/または神経変性疾患ならびに/あるいは概日リズム睡眠障害などの他の障害に関連する不眠症の対症療法における二重活性H1インバースアゴニスト/5−HT2Aアンタゴニストについての役割を支持している。具体的には、特定の二重活性H1インバースアゴニスト/5−HT2Aアンタゴニストが、過度もしくは臨床的に意義のある低活動性、REM睡眠の減少または傾眠過剰のないEEGでモニタリングした齧歯動物を使用して、総睡眠時間の増加に効果的であることが見出される。
【0026】
本化合物の特性をさらに実証するために、それらは以下のインビトロおよびインビボアッセイにおいて実施され得る。
【0027】
インビトロ結合および活性アッセイ:
H1競合結合アッセイ
H]−ピリラミン結合実験をSPA(シンチレーション近接アッセイ)96ウェル形式において実行する。このアッセイにおいて使用する膜を組換えH1受容体(ヒト)を安定的に発現するHEK−293細胞から調製する。インキュベーションは、3.5nMの[H]−ピリラミンおよび変動する濃度の試験化合物(10点濃度応答曲線)を含有するアッセイバッファー(67mMトリス;pH7.6)へ、WGA PVT PAビーズ(1mg/ウェル、Perkin Elmer(MA、USA)RPNQ0001)および3μgの膜混合物を添加することによって開始する。非特異的結合は10μMのトリプロリジンの存在下において決定する。サンプルを室温(22℃)で4時間インキュベーションし、次いでMicrobeta(登録商標)Triluxにおいて読み取る。
【0028】
5−HT2A競合結合アッセイ
H]−ケタンセリン結合実験をSPA 96ウェル形式において実行する。このアッセイにおいて使用する膜を組換え5−HT2A受容体(ヒト)を安定的に発現するAV−12細胞から調製する。インキュベーションは、3.1nMの[H]−ケタンセリンおよび変動する濃度の試験化合物(10点濃度応答曲線)を含有するアッセイバッファー(67mMトリス、0.5mM EDTA;pH7.6)へ、WGA YSi SPAビーズ(1mg/ウェル、Perkin Elmer(MA、USA)RPNQ0011)および2μgの膜混合物を添加することによって開始する。非特異的結合は20μMの1−(1−ナフチル)ピペラジンの存在下において決定する。サンプルを室温(22℃)で4時間インキュベーションし、次いでMicrobeta(登録商標)Triluxにおいて読み取る。
【0029】
5−HT2C競合結合アッセイ
125I]−(±)DOI結合実験をSPA 96ウェル形式において実行する。このアッセイにおいて使用する膜を組換え5−HT2C受容体(ヒト)を安定的に発現するAV−12細胞から調製する。インキュベーションは、0.2nM[[125I]−(±)DOIおよび変動する濃度の試験化合物(10点濃度応答曲線)を含有するアッセイバッファー(50mMトリスHCl、10mM MgCl、0.5mM EDTA、10μMパルギリン、0.1%アスコルビン酸、pH7.4)へ、WGA PVT SPAビーズ(0.5mg/ウェル、Perkin Elmer(MA、USA)、RPNQ0001)および2.5μgの膜混合物の添加によって開始する。非特異的結合は20μMの1−(1−ナフチル)ピペラジンの存在下において決定する。サンプルを室温(22℃)で4時間インキュベーションし、次いでMicrobeta(登録商標)Triluxにおいて読み取る。
【0030】
結合データ解析
4パラメータのロジスティック非線形方程式を使用して曲線を評価して、放射性リガンド結合の50%阻害を引き起こす競合物の濃度(IC50)を得る。平衡解離定数(K)を方程式K=IC50/(1+L/K)に従って計算し、式中、Lは実験において使用される放射性リガンドの濃度と等しく、Kは受容体について放射性リガンドの一定の平衡解離と等しく、標準的な飽和分析または相同な競合実験から決定される。Kについて報告された値は、n値が示される場合、nによって示される重複した決定の数により幾何平均値±標準誤差(SEM)として示される。幾何平均値は、方程式GeoMean=10^(Average(logK1+logK2+...logKn)/sqrt n)によって計算される。
【0031】
初代ニューロン培養におけるネイティブ受容体を使用するGABAアンタゴニズム
ネイティブGABA受容体に対する化合物の活性は、96ウェルフォーマットFLIPR(登録商標)システム(蛍光イメージングプレートリーダー(FLIPR(登録商標))、Molecular Devices)を使用して、カルシウムフラックスをモニタリングすることによって評価する。簡潔には、胚性皮質ニューロンをE18ラット胚から分離し、黒色壁で囲まれた透明底のポリ−D−リジンコート96ウェルFLIPR(登録商標)プレートの中へ最適の密度でプレーティングする。カルシウム感受性色素(Fluo4−AM、Molecular Devices)と共に細胞をロードした後に、細胞を低塩化物含有溶液(塩化物をグルコン酸塩によって置き換える)中に入れる。これらの条件下で、GABA受容体の活性化は塩化物イオンの流出を引き起こし(化学勾配の方向において)、電位関門型カルシウムチャネル(VGCC)の膜脱分極およびしたがって活性化をもたらす。VGCCを介するカルシウム流入を記録し、FLIPR(登録商標)システムを使用してオフラインで分析する。アッセイの薬理学的検証のために、標準的なアゴニスト(GABA)および標準的なアンタゴニスト(ギャバジン)について濃度応答曲線(CRC)を記録する。任意の効果は10μMのアゴニストGABAの固定した濃度(EC90GABA応答と等価)に対するCRCモードにおいて決定される。
【0032】
方法:
化合物のアンタゴニスト効果を、化合物の存在および非存在下におけるアゴニストGABAに対するピーク蛍光応答を比較することによって、10点用量応答曲線を使用して定量化する。アッセイウィンドウは、ギャバジンの完全阻害濃度(50μM)によって得られた応答を引いた、あらかじめ決定したEC90濃度でのGABAによって得られた最大応答として定義される。アンタゴニスト効果はアッセイウィンドウのパーセントとして計算される。すべてのデータは、4パラメータのロジスティック曲線フィッティングプログラム(Prism Graphpad(登録商標)3.01)を使用して、相対的IC50値として計算される。すべての化合物についてのアンタゴニスト効力は、各アッセイランにおける3つの重複測定によりギャバジンに対して比較される。
【0033】
さらに、本発明の化合物は、他の生理的に重要な受容体(hERGチャネル、他のセロトニン受容体(特に5−HT1B、5−HT1D受容体、5−HT2B受容体でのアゴニスト活性の欠如、5−HT2C、5−HT、5−HTおよび5−HT受容体)、ドーパミン作動性受容体(特にD1、D2およびD3)、GABA受容体、アドレナリン作動性受容体およびモノアミン輸送体等であるがこれらに限定されない)についての周知の方法による結合アッセイおよび機能的活性アッセイにおいて、試験することができる。
【0034】
実施例2の化合物は本質的には上記のように試験され、表1中で示されるような活性プロファイルを有することが見出される。
【0035】
【表1】
【0036】
したがって、本発明の化合物の生理的に意義のある用量は、H1および5−HT2A受容体のインビボでの実質的な阻害を提供するが、他の生理的に意義のある受容体と実質的に相互作用しないことが期待され、したがって所望される薬理学を提供するが、標的外の活性と関連する所望されない効果を回避することが期待される。かかる所望されない効果は以下のもの含むが、これらに限定されない。治療下で出現した体重増加と関連する5−HT2Cアンタゴニスト活性、弁膜症と関連する5−HT2Bアゴニスト活性、QT延長と関連するhERGチャネル修飾、および発作活動と関連するGABAアンタゴニスト活性。さらに、睡眠/覚醒生理的機能に対する妨害は、ドーパミン受容体、他のセロトニン受容体、アドレナリン作動性受容体およびモノアミン輸送体に関する選択性によって回避される。
【0037】
5HT2A受容体占有:受容体占有(RO)をアッセイして、5−HT2A受容体のインビボでのアンタゴニスト/インバースアゴニスト活性を実証する。簡潔には、およそ230〜280グラムの体重のオスのSprague−Dawleyラット(Harlan Sprague−Dawley、Indianapolis、IN)は、3時間の実験プロトコルの開始まで飲水および摂食を自由にさせる。1mg/kgのケタンセリン(非選択的5−HT2Aアンタゴニスト)をアッセイ妥当性を確立するために陽性対照として使用する。試験化合物または対照を、20%のヒドロキシプロピルβ−シクロデキストリンからなるビヒクル中で経口強制投与によって投与する。MDL 100907((R)−(+)−α−(2,3−ジメトキシフェニル)−1−[2−(4−フルオロフェニル)エチル]−4−ピペリジンメタノール)(選択的5−HT2Aアンタゴニスト)をトレーサーとして使用する。MDL 100907を5μlの希釈乳酸(1mg/ml)により水中で懸濁し、生理食塩水により6μg/mlまで希釈し、1mL/kgの体積で外側尾静脈を介して静脈内に投与して、3μg/kgのトレーサー用量がもたらされる。ラットに試験化合物、ケタンセリンまたはビヒクル(N=4)、続いて1時間後に静脈内で3μg/kgのトレーサー用量のMDL 100907を投与する。ROを測定するべきと判断されるのはトレーサー投与からの時間である。トレーサー投与の15分後に、ラットは頸椎脱臼によって屠殺される。血漿サンプルを回収し、前頭皮質および小脳のサンプルを取り出す。MDL 100907トレーサーのレベルを各皮質サンプルおよび小脳サンプルにおいて測定する。ROはよく確立されている比率法を使用して計算され、その方法は受容体がないかまたは非常に低いレベルの領域(小脳)によって正規化された代表的な高い受容体密度の領域(前頭皮質)の全結合を用いるものである。ヌル領域と称されるこの領域は、リガンドプローブの非特異的結合を示す。小脳と比較して皮質におけるトレーサーレベルのビヒクル比は、0%占有を示す。1の比は100%占有を示し、MDL 100907トレーサーの5−HT2A受容体への特異的な結合がすべてブロッキングされる場合に達成される。試験化合物で前処理された群からの小脳トレーサーに対する皮質トレーサーの中間の比は、パーセント5−HT2AROを決定するために、ビヒクル処理の動物におけるトレーサーレベルの比(0%占有)と1の比(100%占有)との間に直線補間される。
【0038】
MDL 100907分析:皮質サンプルおよび小脳サンプルの重量を量り、氷上のコニカル遠心分離機チューブ中に置く。4体積(w/v)の0.1%ギ酸を含有するアセトニトリルを各チューブに添加する。次いでサンプルをホモジナイズし、14,000RPM(21920×g)で16分間遠心分離する。上清をLC/MS/MS分析のためにHPLC注射バイアル中で100〜900μLの滅菌水の添加によって希釈する。MDL 100907の分析を、Agilentモデル1200 HPLC(Agilent Technologies、Palo Alto、CA)およびAPI 4000質量分析計を使用して実行する。クロマトグラフ分離は、全体的に0.1%ギ酸含有量で水中で60%アセトニトリルからなる移動相により、2.1×50mmのC18カラム(Agilentパーツ番号971700−907)上で行なわれる。MDL 100907の検出は、374.2対123.0の質量対電荷比(m/z)により、前駆体から産物へのイオン移行のモニタリングによって遂行される。スタンダードは、未処理のラットからの脳組織サンプルへ検体の既知量を添加し上記のように加工することによって調製する。
【0039】
統計的方法:JMP(登録商標)バージョン8.0(SAS Institute Inc、Cary NC)を使用して、0%で固定されたボトムにより、各研究についての曲線を4パラメータのロジスティック関数へフィッティングさせ、絶対的ED50をソフトウェアによって計算する。値は平均、標準誤差および95%の信頼区間として与えられる。実施例2の化合物は本質的に記載されるように試験され、0.41mg/kgのED50で高い5−HT2A受容体占有を達成することが見出される。
【0040】
DOI誘導性頭部振戦活性の阻害:本発明の化合物のインビボでの5−HT2A受容体アンタゴニスト活性を、5−HT2A受容体アゴニスト(2,5−ジメトキシ−4−ヨードアンフェタミン(DOI))によって誘導された頭部振戦活性をブロッキングする能力によって、さらに実証する(例えばBartoszyk GD,van Amsterdam C,Boettcher H,Seyfried CA.EMD 281014,a new selective serotonin 5−HT2A receptor antagonist.Eur J Pharmacol.2003 473:229−230を参照されたい)。簡潔には、オスのC57BL/6Jマウス(20〜25g、Charles River)を、標準的な収容条件(大きなIVCケージ中で32匹のマウス、07.00〜19.00の明相、一定温度(19〜23℃)および湿度(50%±10)、自由飲水および摂食)において収容する。マウスに、ビヒクル(0.25%メチルセルロース)、DOI(生理食塩水中で3mg/kg)または10mg/kg経口で試験化合物+DOI(生理食塩水中で3mg/kg)のいずれかを投与した。試験化合物は、各化合物についてn=4で、ビヒクルおよびDOI+ビヒクル(n=8)と共に、1実験あたり4群で個別に評価される。60分間の試験化合物前処理時間後に、マウスにビヒクル(生理食塩水)または3mg/kgのDOIいずれかを皮下投薬し、次いで透明なパースペックス観察チャンバの中へ置く。DOIまたはビヒクル投与の5分後に、個別のマウスによって示される視覚的にスコアリングした頭部振戦の数を、15分間カウントする。データはANOVAおよび事後Dunnet検定を使用して解析される。実施例2の化合物は本質的に記載されるように試験され、10mg/kgで、3mg/kgDOIによって生じるDOI誘導性頭部振戦応答を100%阻害することが見出される。
【0041】
ラットにおける睡眠および行動のモニタリング:本発明の化合物は、所望されない効果(REM睡眠の阻害、覚醒運動不全、および/または反跳性不眠症など)なしの、睡眠の量の増加もしくは睡眠中断の減少または両方の能力についてラットにおいて試験される。試験動物は、脳波図(EEG)、筋電図(EMG)ならびに累積非REM睡眠を測定する体動、累計睡眠、平均睡眠バウト継続、最長の睡眠バウト継続、反跳性不眠症、REM睡眠阻害および不眠の間の自発運動活性強度によって連続的にモニタリングされる。かかる研究のための方法は当該技術分野において公知である(例えばEdgar DM,Seidel WF.Modafinil induces wakefulness without intensifying motor activity or subsequent rebound hypersomnolence in the rat.J Pharmacology & Experimental Therapeutics 1997;283:757−769;van Gelder RN,Edgar DM,Dement WC.Real−time automated sleep scoring:validation of a microcomputer−based system for mice.Sleep 1991,14:48−55;およびGross BA,Walsh CM,Turakhia AA,Booth V,Mashour GA,Poe GR.Open−source logic−based automated sleep scoring software using electrophysiological recordings in rats.J Neurosci Methods.2009;184(1):10−8.中に記載される方法を参照されたい)。研究は以下のように行なわれる。
【0042】
動物調製。成体のオスのWistarラット(外科手術時でおよそ270〜300g)は、EEG、EMGおよび動作の長期記録のために以下のように外科的に取り付けられる。EEG記録のための4つのステンレス鋼ネジからなる頭蓋のインプラント(前頭部に2つ[前頂部から前方に3.9mmおよび中外側に±2.0mm]および後頭部に2つ[前頂部から後方に6.4mmおよび中外側に±5.5mm])、およびEMG記録のための2つのテフロン加工のステンレス鋼ワイヤー(項部僧帽筋下に配置した)により、ラットを外科的に調製する。全ての導線を外科手術前に小型のコネクタ(Microtech、Boothwyn、PA)へはんだ付けする。インプラントアセンブリを、ステンレス鋼EEG記録ネジ、インプラントコネクターと頭蓋骨との間に適用されたシアノアクリレート、および歯科用アクリル樹脂の組み合わせによって頭脳に貼付する。腹部の中へ外科的に置いた小型の発信機(Minimitter PDT4000G、Philips Respironics、Bend、OR)を介して、自発運動活性をモニタリングする。少なくとも3週間回復させる。
【0043】
記録環境。各ラットを、頭上に垂直により多くのスペースをとるように挿入したポリカーボネートフィルタートップライザーにより修飾した微隔離器ケージ内で個別に収容する。移動を最小に限定したフレキシブルケーブルを、1つの端部でケージ上部に貼付した整流子へ、および他の端部で動物の頭蓋のインプラントへ連結する。各ケージは、ステンレス鋼の睡眠−覚醒記録チャンバーの分離して換気されたコンパートメント内に位置する。餌および水は自由に利用可能であり、周囲温度は約23±1℃で維持される。蛍光灯を使用する24時間の明暗サイクル(LD 12:12)を、研究の全体にわたって維持する。相対的湿度はおよそ50%の平均である。各動物は処理前後の少なくとも30時間安静にさせる。
【0044】
研究デザインおよび投薬。ラットが同じ処理を2回受けず、そしてラットが任意の1つの研究において8つの処理のうちの2つを超えてを受けないように、ビヒクル(プラセボ、水中でメチルセルロース15センチポアズ0.25%)または試験化合物のうちの1つの用量レベルを1mL/kgで経口で擬似無作為に投与する。各ラットの体重を量り処理するために約1分間ケージから取り出す。少なくとも6日間の「ウォッシュアウト」期間が各処理に先行および後続する。
【0045】
データ収集。睡眠および覚醒の区別は自動化することができる(例えばVan Gelder et al.1991(上述);Edgar et al.1997(上述);Winrow CJ,et al.,Neuropharmacology 2010;58(1):185−94.;およびGross et al.,2009(上述))。EEGは増幅およびフィルタリングされ(X10000、バンドパス1〜30Hz)、EMGは増幅および積分され(バンドパス10〜100Hz、RMS積分)、非特異的自発運動活性(LMA)は同時にモニタリングされる。喚起状態は、非REM睡眠、REM睡眠、覚醒またはθ優勢覚醒として10秒エポックに分類される。自発運動活性(LMA)は1分あたりのカウントとして記録し、商業的に入手可能な遠隔測定レシーバー(ER4000、Minimitter、Bend、OR)によって検出する。
【0046】
統計解析。少なくとも1つの転帰を有する動物はすべて、要約した結果中に含まれる(例えば、遠隔測定データが使用可能であるがEEGデータはそうではない動物処理からの適切なデータを含む)。処理後の観察期間は各転帰に適切な投薬後の区間へと分割され、そこで投薬の時間は開始の時間=0として定義され、転帰は、各期間にわたって1時間ごとの平均または累積値のいずれかを計算することによって観察期間において要約される(各転帰の正確な定義については表2の凡例を参照)。睡眠バウトは変動を安定化するためにlogスケール上で解析し、他のすべての変数は直線スケールで解析する。各期間における各転帰は、因子として処理群および処理期日、ならびに共変数として対応する前処理区間(24時間早いもの)を使用して、共分散分析によって解析する。調整された平均およびビヒクル平均からの変化ならびにそれらの対応する標準誤差は、各処理群について要約される。logスケールで解析した転帰を逆変換し、幾何平均値および平均比対ベヒクルの結果を報告する。
【0047】
実施例2の化合物は本質的に記載されるように試験される。実施例2の化合物は、3mg/kgで有意な反跳性不眠症、REM睡眠阻害または自発運動強度(LMI)の阻害なしに、累積NREM睡眠時間および累積睡眠時間を有意に増加させることが見出される(表2中の睡眠プロファイルおよび自発運動活性強度を参照されたい)。
【0048】
【表2】
表2.転帰統計:略称:N=サンプルサイズ;Adj.平均=ビヒクル対照と比較して調整された群平均値;SE=標準誤差;LCL=下側95%信頼限界、NERM=非REM、すなわち、REM睡眠以外のすべての睡眠。並列の参照ビヒクルサンプルサイズはN=27であった。
【0049】
定義および単位−平均はビヒクル対照からの差異を調整したものである:
・累積睡眠:分における、処理後最初の6時間にわたるもの(「全睡眠」はNREM睡眠+REM睡眠を示す)。
・平均睡眠バウト:ビヒクル対照に対してn倍増加として表現される、処理後最初の6時間のにわたる1時間ごとの平均化された睡眠バウトの平均。
・最長睡眠バウト:ビヒクル対照に対してn倍増加として表現される、処理後最初の6時間における最長睡眠バウト。
・反跳性不眠症:点灯期間の最初の3時間の間の(すなわち処理後7、8および9時間目)NREM+REM睡眠の累積分。
・REM阻害:処理後最初の12時間の間のREM睡眠の累積分。
・自発運動活性(LMA)強度:処理後最初の6時間にわたって平均化したEEGで定義した覚醒の1分あたりのカウントをLMAとして表現したもの。
【0050】
有効性の決定。各々の4つの有効性変数についての閾有効性は、処理後の6時間の期間の間のビヒクル対照と比較した各変数における増加を、log(用量)に対してプロットすることによって計算される。各変数についての閾有効性は、定義された有効性閾値、すなわち蓄積された非REM睡眠の+30分の追加、蓄積された全睡眠の+25分の追加、平均睡眠バウト継続における1.75倍の増加、および最長の睡眠バウト継続における1.5倍の増加を、与える用量(4パラメータのロジスティック非直線回帰によって推測される)である。最後の値は遊離塩基濃度に関して表現される。実施例2の化合物は表3中に示されるような閾有効用量を有することが見出される。
【0051】
【表3】
【0052】
所望されない効果の決定。各「所望されない効果」転帰変数(定義については表2の凡例を参照)を、log(用量)に対してプロットする。REM睡眠阻害についての閾値は−10分のREM睡眠の累積減少として定義される。反跳性不眠症についての閾値は−20分として定義される。LMI減少についての閾値は、EEGで定義した覚醒の1分あたり−5の自発運動活性カウントとして定義される。有意な所望されない効果は、下側信頼限界が任意の用量での閾値より下または平均有効用量の10倍より下になるとき、生じると定義され、そして用量応答傾向は閾有効性用量より上の用量について明らかである。実施例2の化合物について、REM睡眠阻害は10mg/kgで閾値を超えるが、この用量は最も控え目な有効性用量の0.78mg/kgの10倍を超える(表3)。負の値は、REM阻害、反跳性不眠症および減少したLMIを示す。上記のプロットにおいて、アスタリスクは所与の用量についてのビヒクルに対する統計的有意性を示すが、望ましくない効果を必ずしも示すわけではない。したがって、REM阻害、反跳性不眠症またはLMIの減少の望ましくない事例は、最も控え目な有効性用量の10倍内で観察されないことが結論付けられる。
【0053】
血漿クリアランス:望まれない効果(所望される睡眠期間を超える延長された傾眠、日中の眠気、覚醒後の認知力不全など等)を回避するために、好ましいクリアランス率により身体から適切にクリアランスされることは睡眠障害(不眠症等)の治療に有用な化合物において重要である。本発明は改善されたクリアランス率を備えた化合物を提供する。クリアランス率は本質的に以下に記載されるようにアッセイすることができる。
【0054】
留置大腿動脈カニューレを備えたオスのSprague Dawleyラット(体重範囲250〜320g)を、Charles River、Wilmington、MA 01887、USAから得る。試験化合物は、1.0mg/mLの最終薬物濃度(遊離塩基等価物)で、22.5mMリン酸緩衝液(pH2)中の20%Captisol(登録商標)中で、溶液(1mL/kg)で静脈内に投与される。血液サンプルは24時間にわたり留置カニューレを使用して得られる。血漿のサンプルを遠心分離によって得て、分析前に凍結(−20℃)またはドライアイス上で保存する。
【0055】
オスのビーグル犬(体重範囲10〜12kg)をMarshall Bioresources、USAから得る。試験化合物は、1.0mg/mLの最終薬物濃度(遊離塩基等価物)で、22.5mMリン酸緩衝液(pH2)中の20%Captisol(登録商標)中で、溶液(1mL/kg)で静脈内に投与される。血液サンプルは24時間にわたり頚静脈から得られる。血漿のサンプルを遠心分離によって得て、分析前に凍結(−20℃)保存する。
【0056】
凍結された血漿サンプルを、試験化合物の濃度のバイオ分析のために室温へ融解する。アセトニトリル/メタノール(1:1、v/v)中の関連する内部スタンダード化合物を、血漿のすべてのサンプルに添加する(1:1、v/v)。サンプルを遠心分離して沈殿させたタンパク質を分析前に除去する。上清は、Javelin Betasil C18カラム(20×2.1mmカートリッジ、移動相A:水/1M NHHCO、2000:10 v/v、移動相B:MeOH/1M NHHCO、2000:10 v/v)上でのインジェクションおよび迅速な勾配溶出によって分析する。溶出した検体は、Sciex API 4000トリプル四重極質量分析計を使用するLC−MS−MS分析によって検出する。化合物の濃度は、同一の条件下で調製および分析したスタンダードから決定する。クリアランスは、Watson 7.4(Thermo Fisher Scientific Inc)中の非コンパートメント分析を使用して計算する。
【数1】
【0057】
実施例2の化合物は本質的に記載されるように実行され、以下の好ましいクリアランスプロファイルを有することが見出される。
実施例 クリアランス(mL/分/Kg)
イヌ
2 6.06(+/−0.90)
【0058】
製剤化なしに本発明の方法において用いられるような化合物を直接投与することは可能であるが、化合物は通常、活性成分としての化合物またはその薬学的に許容される塩ならびに少なくとも1つの薬学的に許容される担体、希釈剤および/または賦形剤を含む医薬組成物の形態で投与される。これらの組成物は、経口、舌下、鼻腔、皮下、静脈内および筋肉内を含む多様な経路によって投与することができる。それらの調製のためのかかる医薬組成物およびプロセスは当該技術分野において周知である。例えばRemington:The Science and Practice of Pharmacy(University of the Sciences in Philadelphia編、第21版、Lippincott Williams & Wilkins Co.、2005年)を参照されたい。
【0059】
単位投薬量形態において好ましくは製剤化され、各投薬量は約0.1〜約60mg、通常約0.5〜約30mg、例えば約1〜約10mgの間の活性成分を含有する。「単位投薬量形態」という用語はヒト被験体および他の哺乳類についての一体型投薬量として好適な物理的に不連続の単位を指し、各単位は計算された既定量の活性材料を含有して、少なくとも1つの好適な薬学的に許容される担体、希釈剤および/または賦形剤と共同して所望される治療法上の効果を産生する。
【0060】
式Iの組成物は概して広範囲の投薬量範囲にわたって有効である。例えば、1日当たりの投薬量は、通常約0.002〜約1.0mg/kg、より通常約0.008〜0.5mg/kg、例えば0.015〜0.15mg/kg体重の範囲内である。いくつかの実例において、前記範囲の下限より下の投薬量レベルが適切であるよりも多いが、他の事例において、任意の有害な副作用も引き起こさずにさらに多い用量を用いることができ、したがって上記の投薬量範囲はいかなる方法でも本発明の範囲を限定することは意図しない。実際に投与される化合物の量は、治療条件、選ばれた投与経路、投与される実際の化合物(複数も含む)、個別の患者の年齢、重量、および応答ならびに患者の症状の重症度を含む関連する状況を考慮して、医師によって決定されることが理解されるだろう。