特許第6100411号(P6100411)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6100411-消臭剤の製造方法、及び、消臭剤 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6100411
(24)【登録日】2017年3月3日
(45)【発行日】2017年3月22日
(54)【発明の名称】消臭剤の製造方法、及び、消臭剤
(51)【国際特許分類】
   A61L 9/01 20060101AFI20170313BHJP
【FI】
   A61L9/01 Z
【請求項の数】5
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-18046(P2016-18046)
(22)【出願日】2016年2月2日
【審査請求日】2016年9月28日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】506329948
【氏名又は名称】Well Stone 有限会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096714
【弁理士】
【氏名又は名称】本多 一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100124121
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 由美子
(74)【代理人】
【識別番号】100176566
【弁理士】
【氏名又は名称】渡耒 巧
(74)【代理人】
【識別番号】100180253
【弁理士】
【氏名又は名称】大田黒 隆
(72)【発明者】
【氏名】石井 陽一
(72)【発明者】
【氏名】岡本 猛
(72)【発明者】
【氏名】石井 さやか
【審査官】 松村 真里
(56)【参考文献】
【文献】 実開平03−056627(JP,U)
【文献】 特公昭54−010553(JP,B1)
【文献】 特開平11−169444(JP,A)
【文献】 特開昭63−084618(JP,A)
【文献】 特開平07−242517(JP,A)
【文献】 実開平05−002724(JP,U)
【文献】 国際公開第2006/126797(WO,A1)
【文献】 中国特許出願公開第1721057(CN,A)
【文献】 特開平2−56216(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L 9/00−9/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ミミズの糞土と水とを混合する混合工程、及び、前記混合工程で得られた混合物から生じる気化した水を回収して液体を得る回収工程を含むことを特徴とする消臭剤の製造方法。
【請求項2】
前記混合工程において、前記ミミズの糞土及び前記水と共に、さらに有機物を混合する請求項1記載の消臭剤の製造方法。
【請求項3】
前記有機物が木材である請求項2記載の消臭剤の製造方法。
【請求項4】
さらに、前記回収工程において気化した水を回収して得た液体を、水で希釈する希釈工程を含む請求項1〜3のいずれか一項記載の消臭剤の製造方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項記載の消臭剤の製造方法で得られ、ミミズの糞土を含まないことを特徴とする消臭剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液状でも利用可能なミミズ糞土由来の消臭剤の製造方法、及び、当該製造方法で得られる消臭剤に関する。
【背景技術】
【0002】
ミミズの糞土の利用方法の一つとして、消臭剤として用いることが知られている(例えば、特許文献1〜3)。ミミズの糞土による消臭効果は、ミミズの糞土が活性炭やシリカゲルのように多孔質構造を有しており、種々の臭気成分を吸着脱臭する働きがあること、及び、ミミズの糞土に含まれる消化酵素や微生物によって、硫化水素やアンモニア等を分解することに基づいていると考えられている。
【0003】
近年、例えば噴霧型のような液状の消臭剤のニーズが高まっている。しかしながら、従来のミミズの糞土を利用した消臭剤は、ミミズの糞土自体を用いることから、液状の消臭剤を製造することは困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特公昭54−10553号公報
【特許文献2】特開平2−56216号公報
【特許文献3】特開平5−4020号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで本発明の目的は、液状でも利用可能なミミズ糞土由来の消臭剤の製造方法、及び、当該製造方法で得られる消臭剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、ミミズの糞土と水とを混合した際に生じる気化した水を回収して得た液体が消臭効果を奏することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明の消臭剤の製造方法は、ミミズの糞土と水とを混合する混合工程、及び、前記混合工程で得られた混合物から生じる気化した水を回収して液体を得る回収工程を含むことを特徴とするものである。
【0008】
本発明の消臭剤の製造方法は、前記混合工程において、前記ミミズの糞土及び前記水と共に、さらに有機物を混合することが好ましい。
【0009】
本発明の消臭剤の製造方法は、前記有機物が木材であることが好ましい。
【0010】
本発明の消臭剤の製造方法は、さらに、前記回収工程において、気化した水を回収して得た液体を、水で希釈する希釈工程を含むことが好ましい。
【0011】
本発明の消臭剤は、前記消臭剤の製造方法で得られ、ミミズの糞土を含まないことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明により、液状でも利用可能なミミズ糞土由来の消臭剤の製造方法、及び、当該製造方法で得られる消臭剤を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】比較例1の水、実施例1〜4の消臭剤のニオイレベル(%)を比較したグラフ図である。
図2】比較例1の水、実施例5〜8の消臭剤のニオイレベル(%)を比較したグラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の消臭剤の製造方法は、ミミズの糞土と水とを混合する混合工程、及び、前記混合工程で得られた混合物から生じる気化した水を回収する回収工程を含むことを特徴とするものである。前記混合工程において、前記ミミズの糞土及び前記水と共に、さらに有機物を混合することが好ましい。詳しいメカニズムは明らかではないが、ミミズの糞土に含まれるバクテリア等の微生物が、ミミズの糞土に含まれる有機物や別途混合した有機物を分解発酵することに起因して、気化した水を回収して得られた液体に消臭作用が付されると考えられる。
【0015】
以下、本発明の消臭剤の製造方法、及び、消臭剤について、詳細に説明する。
【0016】
[消臭剤の製造方法]
(混合工程)
混合工程は、ミミズの糞土と水とを混合する工程である。
【0017】
ミミズの糞土は特に限定されず、例えばアカミミズ(Lumbricus rubellus)、LTミミズ(Lumbricus terrestris)、シマミミズ(Eisenia foetida)、カッショクツリミミズ(Allolobophora caliginosa)、ムラサキツリミミズ(Dendrobaena octaedra)、サクラミミズ(Allolobophora japonica Michaelsen)、ハッタミミズ(Drawida hattamimizu Hatai)、セグロミミズ(Pheretima divergens Michaelsen)、フツウミミズ(Pheretima communissima)、ハタケミミズ(Pheretima agrestis)、シーボルトミミズ(Pheretima sieboldi Horst)、ヒトツモンミミズ(Pheretima hilgendorfi)、イソミミズ(Pontodrilus matsushimensis Iizuka)、イトミミズ(Tubifex hattai Nomura)、ゴトウイトミミズ(ユリミミズ)[Limnodrilus gotoi Hatai=L.SocialisStephenson]などの糞土を用いることができる。
【0018】
ミミズの糞土と混合する水は特に限定されず、水道水や蒸留水を用いることができる。また、水は、濾材、逆浸透膜等を用いて浄水処理されていてもよい。バクテリア等の微生物の除去の観点から、微細孔の濾材や逆浸透膜等を用いることが好ましく、例えばSPG(シラス多孔質ガラス)透過膜を用いることが好ましい。
【0019】
ミミズの糞土と水の混合比は、ミミズの糞土1kg当たり、水を好ましくは 0.05〜20L、より好ましくは0.1〜10L、さらに好ましくは0.2〜5L、特に好ましくは0.5〜2Lである。
【0020】
混合工程においては、ミミズの糞土と水と共に、さらに有機物を混合することが好ましい。有機物を混合すると、より消臭効果に優れる消臭剤が得られ、また、消臭剤のpHも調整することができる。有機物は、ミミズの糞土と混合して分解される有機物であれば特に限定されないが、例えば、動物、植物、菌類、原生動物等の生物由来の有機物を用いることができる。植物由来の有機物としては、例えば、木材チップ、ノコクズ、モミガラ等の木材や、きのこの栽培に用いられる菌床等が挙げられる。有機物として木材を混合すると、回収工程において無臭の液体を回収しやすいため好ましい。木材としては木材チップが好ましい。
【0021】
ミミズの糞土と有機物の混合比は、ミミズの糞土1kg当たり、有機物を好ましくは0.05〜20kg、より好ましくは0.1〜10kg、さらに好ましくは0.2〜5kg、特に好ましくは0.5〜2kgである。
【0022】
混合工程における混合方法は特に限定されないが、攪拌等を行うことによって混合物を十分に混合することが好ましい。混合する順番は特に限定されず、例えば、容器にミミズの糞土と有機物を入れた後に水を加えてもよく、また、容器に有機物を入れて水を加えた後に、ミミズの糞土を加えてもよい。
【0023】
各成分の全量を一度にまとめて混合する必要はなく、水、ミミズの糞土及び/又は有機物を継ぎ足しして複数回に分けて混合してもよい。継ぎ足しすることによって、蒸発して減少した水や分解して減少したミミズの糞土や有機物を補いながら、気化した水を連続的に回収できるため好ましい。
【0024】
また、最初の混合から時間が経過すると発酵がより安定することから、例えば1日程度時間を経過させてから、気化した水を回収すると、より消臭作用に優れた液体を得ることができる。この観点からも、継ぎ足しして連続的に、気化した水を回収することが好ましい。
【0025】
混合物にはミミズの糞土や別途添加した有機物の発酵によって熱が生じるが、気温次第では、加温しながら混合することが好ましい。加温する際は、例えば30〜50℃に加温すればよい。
【0026】
(回収工程)
回収工程では、混合工程で得られた混合物から生じる気化した水を回収して液体(以下、「有機物分解水」とも称する)を得る工程である。混合工程を行いながら、回収工程を行ってもよい。
【0027】
回収工程では、混合物の発酵によって生じる発酵熱(反応熱)によって上昇する温度域で発生する気化した水を回収すればよく、沸点まで加熱する必要はない。気温次第では、加温しながら混合することが好ましく、加温する際は、例えば30〜50℃に加温すればよい。
【0028】
回収する方法は、気化した水を回収できれば特に限定されず、例えば、気化した水を除湿機を用いて回収すればよい。除湿機としては、例えば、冷却方式や圧縮方式の除湿機を用いることができる。また、混合物を沸騰させないで気化した水を回収することが好ましい。
【0029】
回収した気化した水を液体にする方法は特に限定されず、例えば、除湿機を用いて回収すれば、有機物分解水を得ることができる。除湿機としては、気化した水を液体で回収できる除湿機であれば特に限定されないが、例えば、冷却方式や圧縮方式の除湿機を用いることができる。
【0030】
気化した水を回収して得た液体のpHは、好ましくは5〜9、より好ましくは6〜8、さらに好ましくは6.5〜7.5である。
【0031】
(希釈工程)
気化した水を回収工程で回収して得られる有機物分解水をそのまま消臭剤として用いることもできるが、希釈して用いることが好ましい。希釈に用いる溶媒としては、水を用いればよく、水道水や蒸留水を用いることができる。また、希釈に用いる水は、濾材、逆浸透膜等を用いて浄水処理されていてもよい。バクテリア等の微生物の除去の観点から、微細孔の濾材や逆浸透膜等を用いることが好ましく、例えばSPG(シラス多孔質ガラス)透過膜を用いることが好ましい。
【0032】
希釈する場合は例えば1.5〜10倍、好ましくは4〜6倍、さらに好ましくは4.5〜5.5倍に希釈すればよい。
【0033】
[消臭剤]
本発明の消臭剤は、本発明の消臭剤の製造方法で得られることを特徴とするものである。本発明の消臭剤は、本発明の消臭剤の製造方法で得られる消臭効果を奏する液体を用いたものであれば特に限定されないが、液状であることが好ましい。また、前記消臭作用を有する液体に、例えば賦形剤等を混合して、ゲル状、粉状、粒状等の固形に加工されたものであってもよい。
【0034】
本発明の消臭剤には、本発明の損なわない範囲で、他の消臭成分や、消臭剤に用いられる公知慣用の添加剤、例えば、着色剤、香料、酸化防止剤、紫外線吸収剤、キレート剤、界面活性剤、粘度調整剤、pH調整剤、増粘剤、消泡剤、防腐剤、殺菌・抗菌剤、分散剤、有機溶剤等を添加することができる。
【0035】
また、本発明の消臭剤には、消臭効果以外の効果を奏する成分を含有させて、消臭効果以外の効果も付与してもよい。そのような成分としてミミズの抽出物を含有してもよい。ミミズの抽出物としては、例えば、ミミズの乾燥粉末から水、エタノール又はエタノール水溶液で抽出した抽出物等を用いることができる。
【実施例】
【0036】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。本発明は、以下の実施例により何ら制限されるものでは無い。尚、以下において「%」とあるのは、特に断りのない限り全て質量基準である。また、以下において、水として、水道水をSPG(シラス多孔質ガラス)透過膜(SPGテクノ社製)と活性炭で浄水処理した水を用いた。
【0037】
(実施例1)
アカミミズの糞土40kgを入れた槽(以下、「反応槽」と呼称する)に、水40Lを加えて、攪拌しながら、気化した水を反応槽に取り付けた除湿機(ナカトミ社製、DM−30)で約1日かけて回収し、15〜20Lの液体を得た。反応槽にさらに水を10〜20L加水して、気化した水を同様に除湿機で約1日かけて回収し、15〜20Lの液体を得た。得られた液体を混合した40L程度の液体(pH6.8)を実施例1の消臭剤として用いた。
【0038】
(実施例2)
アカミミズの糞土40kgと木材15kg(木材チップ5kgとノコクズやモミガラのブレンド10kg)を入れた反応槽に、水40Lを加えて、攪拌しながら、気化した水を反応槽に取り付けた除湿機(ナカトミ社製、DM−30)で約1日かけて回収し、15〜20Lの液体を得た。反応槽にさらに水を10〜20L加水し、木材10kg(木材チップ5kgとノコクズやモミガラのブレンド5kg)て、気化した水を同様に除湿機で約1日かけて回収し、15〜20Lの液体を得た。得られた液体を混合した40L程度の液体(pH8.71)を実施例2の消臭剤として得た。
【0039】
(実施例3)
アカミミズの糞土40kgと菌床5kgと木材15kg(木材チップ5kgとノコクズやモミガラのブレンド10kg)を入れた反応槽に、水40Lを加えて、攪拌しながら、気化した水を反応槽に取り付けた除湿機(ナカトミ社製、DM−30)で約1日かけて回収し、回収した15〜20Lの液体(pH8.27)を実施例3の消臭剤として得た。
【0040】
(実施例4)
アカミミズの糞土40kgと菌床5kgと木材15kg(木材チップ5kgとノコクズやモミガラのブレンド10kg)を入れた反応槽に、水40Lを加えて、攪拌しながら、1日経過させた後に、気化した水を反応槽に取り付けた除湿機(ナカトミ社製、DM−30)で約1日かけて回収し、回収した15〜20Lの液体(pH7.78)を実施例4の消臭剤として得た。
【0041】
(実施例5〜8)
実施例1〜4の消臭剤をそれぞれ、水で5倍に希釈した液体を実施例5〜8の消臭剤として得た。
【0042】
(消臭性の評価)
15mLの遠沈管に、各実施例の消臭剤を1.8mLと、ニオイの発生源として11%アンモニア水0.2mL又は比較対象として蒸留水0.2mLを添加して攪拌した後、30℃で保温し、2時間後及び4時間後の気相の臭いをニオイセンサXP329−IIIR(新コスモス電機社製)で測定した。また、比較試験として、消臭剤を水に変えて同様に臭いを測定した(比較例1)。臭いの測定値の算出方法は、アンモニア水添加のニオイ値から蒸留水添加のニオイ値を引いて、さらに測定場所の空間のニオイ値を引いて算出した。水を用いた比較試験(比較例1)のニオイ値を100%としたニオイレベルで比較した。100%を下回れば、消臭されていることを示す。結果を表1及び図1、2に示す。
【0043】
【表1】
【0044】
実施例1〜8に示すとおり、ミミズの糞土と水との混合物から生じる気化した水を回収することによって、消臭剤を製造できることが分かる。
【要約】
【課題】液状でも利用可能なミミズ糞土由来の消臭剤の製造方法、及び、消臭剤を提供することにある。
【解決手段】ミミズの糞土と水とを混合する混合工程、及び、前記混合工程で得られた混合物から生じる気化した水を回収して液体を得る回収工程を含むことを特徴とする消臭剤の製造方法、及び、当該製造方法で得られる消臭剤である。前記混合工程において、前記ミミズの糞土及び前記水と共に、さらに有機物を混合することが好ましい。
【選択図】図1
図1
図2