(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電気自動車もしくはハイブリッド自動車のように、外部充電設備からの充電および外部機器への給電が可能なバッテリシステムを備える車両では、充電または給電を行う際、車両周辺が無人となる時間が長くなる。このため、車両の周辺の監視が望まれる。また、犯罪の増加や治安に対する不安感の増大に伴い、充電または給電を行うときだけでなく、自宅や駐車時に車両の周辺の監視が望まれる。
【0005】
特許文献1の記載のような車両周辺視認装置のバックモニタ用カメラは車両内部の撮像のみで、車両の周辺を監視できないため、車両の周辺を監視するには、複数のカメラを車両に設ける必要がある。
ところで、特許文献2の記載のようにカメラモニタシステムがドアミラーに代替して開発されている。カメラモニタシステムでは、後方視認用のカメラが車両に設けられ、複数のカメラを車両に設ける必要がある。
今後、車両周辺監視装置は、監視およびカメラモニタシステム等の目的のため、カメラの点数がますます増大し、部品点数が多くなり、車両の重量増またはコスト増加を招く虞がある。
【0006】
本発明は、このような点に鑑みて創作されたものであり、その目的は、カメラモニタシステムを搭載する車両の周辺を監視し、車両に搭載されるカメラの点数を削減し、車両を軽量化可能な車両周辺視認装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の車両周辺視認装置は、ボディ(10)、カメラ(4、5)、アクチュエータ(20)および制御部(25)を備える。
ボディは、車両(1)の側部(12、13)に設けられ、曲部(102)を有し、車両の前方に対し左右方向に突出するように形成されている。
カメラは、曲部に設けられ、車両の後方または車両の周辺を撮像可能である。
アクチュエータは、ボディに収容され、曲部に沿ってカメラが移動してカメラの位置または向きを変更可能である。
制御部は、車両の状況に応じてカメラが移動するようにアクチュエータを駆動する。
【0008】
好ましくは、ボディは、半球状の形成されており、曲部は、曲部の表面が球面形状に形成されており、案内部(103)を含む。
案内部は、曲部の頂点(104)から車両の前方に対し左右方向に向かう螺旋状の穴(105)が形成されている。
【0009】
この車両周辺視認装置は、カメラが曲部に沿って移動してカメラの位置または向きが変更されるため、360度全方向を撮像することができる。これにより、カメラモニタシステムおよび車両の周辺の監視のために、複数のカメラを設ける必要なしに、車両周辺視認装置はカメラモニタシステムおよび車両の周辺の監視の両方が可能になる。したがって、車両に搭載されるカメラの点数を削減し、車両を軽量化できる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態による車両周辺視認装置を図面に基づいて説明する。複数の実施形態の説明において、一実施形態と実質的に同一の構成には同一の符号を付して説明する。一実施形態による車両周辺視認装置は、カメラモニタシステムを搭載する車両に設けられる。
【0012】
一実施形態の車両周辺視認装置51に用いられる車両1を
図1から
図3を参照して説明する。
車両1は、ハイブリッド自動車で、駆動源としてのエンジン2およびモータ3を備え、運転座席6、車両周辺視認装置51の左サイドカメラ4および右サイドカメラ5を備える。
【0013】
車両1の前進方向を「前」とし、車両1の後退方向を「後」とする。また、前進方向から見て上側を「上」とし、前進方向から見て下側を「下」とし、上下方向と車両の高さ方向である車高方向は同一である。さらに、前進方向から見て右側を「右」とし、前進方向から見て左側を「左」とし、左右方向は、車幅方向と同一である。
【0014】
図1に示すように、エンジン2は、燃料をガソリンとする内燃機関で、車両1の前部に設けられている。
モータ3は、例えば、永久磁石式同期型の3相交流のモータで、車両1の前部に設けられており、トランスミッション7とエンジン2との間に設けられている。
モータ3は、車両1に搭載されるバッテリからの電力で駆動されることによりトルクを発生する電動機としての機能および車両1の制動時に駆動されて発電する発電機としての機能を有する。
【0015】
車両1は、エンジン2とモータ3との両方を走行に使用するパラレル式ハイブリッドシステムが搭載されている。
運転座席6は、車両1の内部であって、右側に設けられ、前部に取付けられる右ハンドル8に対向している。運転座席6は、左側に設けられ、左ハンドルとしてもよい。
また、運転座席6には、運転手が運転座席6に座っているかわかるように重力センサ等が設けられている。
図1において、エンジン2、モータ3およびトランスミッション7の位置、運転座席6および右ハンドル8は、車両1の内部にあるため、破線で示す。
【0016】
図2に示すように、左サイドカメラ4は、車両1の左側の側部である左ドア12に設けられ、左側の後方で路面を含んだ範囲A
Lを撮像する。
図3に示すように、右サイドカメラ5は、車両1の右側の側部である右ドア13に設けられ、右側の後方で路面を含んだ範囲A
Rを撮像する。以下、左サイドカメラ4および右サイドカメラ5を総称するとき、「カメラ」と記載する。
図2および
図3中において、カメラモニタシステムで用いられるときのカメラ4、5が撮像する範囲A
L、A
Rを破線で示す斜線のハッチングで示す。
左ドア12および右ドア13は、図示はしないが、機械的な鍵としてのキーが設けられ、施錠または解錠可能に形成されている。
【0017】
カメラ4、5は、広角レンズを有する撮像光学系を備えるとともに、CCD型やCMOS型の撮像素子を有し、撮像を1秒間に数コマ以上のコマ数の動画として出力可能である。ここで、CCDは、Charge Coupled Deviceの略で、電荷結合素子を用いたセンサのことである。CMOSは、Complementary MOSFETの略で、金属酸化物半導体電界効果トランジスタであるMOSFETを相補形に設置されたゲート構造のことである。
車両1は、カメラ4、5が撮像を表示するモニタが内部に設けられており、カメラ4、5がドアミラーに代替するカメラモニタシステムが搭載されている。
【0018】
近年、特許文献2のように、カメラモニタシステムがドアミラーに代替して開発されており、複数のカメラを車両に設ける必要がある。
一方で、特開2014−095999に記載のように、電気自動車もしくはハイブリッド自動車のように、充電または給電を行うとき、車両の周辺が無人となる時間が長くなっており、車両の周辺の監視が望まれる。また、犯罪の増加や治安に対する不安感の増大に伴い、充電または給電を行うときだけでなく、自宅や駐車時に車両の周辺の監視も望まれる。
【0019】
比較例として、
図9に示すように、特許文献1の記載のような車両周辺視認装置91のバックモニタ用カメラで、監視を目的として車両の周辺を撮像するとき、撮像範囲A
REFが狭く車両の周辺を監視できない。このため、車両の周辺を監視するには、複数のカメラを車両に設ける必要がある。
図9において、撮像範囲A
REFを破線で示す斜線のハッチングで示す。
今後、車両周辺視認装置は、監視やカメラモニタシステム等の目的のため、カメラの点数がますます増大し、部品点数が多くなり、車両の重量増またはコスト増加を招く虞がある。
【0020】
そこで、一実施形態の車両周辺視認装置では、カメラモニタシステムを搭載する車両の周辺を監視し、カメラの点数を削減し、車両を軽量化可能にするため、車両周辺視認装置に「ある工夫」を施している。以下、一実施形態の車両周辺視認装置の構成を示す。
【0021】
(一実施形態)
図4および
図5に示すように、車両周辺視認装置51は、車両1の側部に設けられており、ボディ10、カメラ4、5、アクチュエータ20、制御部25および「記録部」としてのレコーダ30を備える。カメラ4、5、アクチュエータ20、制御部25およびレコーダ30は、車両1に搭載されるバッテリから電力が供給される。
【0022】
ボディ10は、左ドア12および右ドア13に設けられており、例えば、ポリアセタール等の樹脂で形成されている。
ボディ10は、半球状で、車両1の前方に対し左右方向に突出するように形成されており、底部101および曲部102を有し、底部101および曲部102で区画形成されている中空空間107を有する。
【0023】
底部101は、左右方向の断面が円形形状に形成され、上下方向の断面が長方形形状に形成されており、左ドア12および右ドア13に接合されている。
曲部102は、底部101に接合され、曲部102の表面108が球面形状に形成され、左右方向に突出しており、案内部103を含む。
案内部103は、曲部102の表面108で、曲部102の頂点104から左右方向に進む螺旋状の穴105が形成されている。
【0024】
カメラ4、5は、曲部102に設けられており、案内部103に沿って移動し、車両1の周辺の映像を撮像可能である。カメラ4、5が曲部102に沿って移動しやすくなるように、曲部102側のカメラ4、5の端面に回転体11が2つ形成されている。カメラ4、5の中心軸Pは、表面108の法線方向と同一である。ここで、「同一」とは常識的な誤差範囲を含む。
【0025】
回転体11は、カメラ4、5と曲部102との間に設けられ、球状の回転体で、比較的小さく形成されている。カメラ4、5が案内部103に沿って移動するとき、回転体11によって、カメラ4、5と曲部102とが転がりながら摺動する。
【0026】
アクチュエータ20は、ボディ10に収容され、案内部103に沿ってカメラ4、5が移動してカメラ4、5の位置または向きを変更可能である。
アクチュエータ20は、回転機構21と図示しないモータとを有する。
アクチュエータ20は、モータが回転して、左右方向に延びている回転軸Oを中心に回転機構21が回転する。
回転機構21は、左右方向に延びる支持部材に沿って棒状部材が移動しながら回転軸Oを中心に回転する。
【0027】
アクチュエータ20とカメラ4、5との間には、穴105を介して「引張ばね」としてのスプリング106が設けられている。
スプリング106は、アクチュエータ20とカメラ4、5とに接続され、アクチュエータ20とカメラ4、5とが近づく方向に働く引張力Fsをアクチュエータ20およびカメラ4、5に作用する。
【0028】
アクチュエータ20が回転したとき、案内部103に沿ってカメラ4、5が螺旋状に移動して、アクチュエータ20は、カメラ4、5の位置および向きを変更する。引張力Fsによって、案内部103に沿ってカメラ4、5が螺旋状に移動するとき、曲部102と回転体11とが接触している。
【0029】
制御部25は、ボディ10に収容され、車両1の状況に応じて、カメラ4、5が移動するようにアクチュエータ20を駆動する。制御部25は、車両1の内部に設けてもよい。
制御部25は、エンジン2もしくはモータ3の始動または車両1が走行しているとき、カメラ4、5が後方を向くように、アクチュエータ20を駆動し、車両周辺視認装置51は、カメラモニタシステムの機能をする。
【0030】
制御部25は、エンジン2およびモータ3が停止して、車両1が停止しており、運転座席6が無人であるとき、案内部103に沿ってカメラ4、5が螺旋状に移動するように、アクチュエータ20を駆動する。
カメラ4、5の初期位置をカメラモニタシステムが機能するときで、カメラ4、5が後方に向く位置とする。
制御部25によって、カメラ4、5は、初期位置から頂点104に向かって移動し、頂点104から初期位置に戻る移動を繰り返す。
【0031】
レコーダ30は、ボディ10に収容され、カメラ4、5に接続されており、カメラ4、5の撮像を保存可能で、カメラ4、5が動作中、常に録画する常時記録型の記録媒体である。レコーダ30は、過去のデータを古い順に自動的に消すようにしてもよい。
【0032】
(作用)
車両周辺視認装置51の作用について説明する。
エンジン2もしくはモータ3が始動したとき、制御部25によって、アクチュエータ20が駆動し、カメラ4、5が後方を向く。
カメラ4、5の視野は範囲A
L、A
Rで、車両1が走行しているとき、車両周辺視認装置51はカメラモニタシステムの機能をする。
【0033】
車両1が停止し、運転者が運転座席6を離れ、ドア12、13に施錠をして、運転座席6が無人になったとき、制御部25によって、アクチュエータ20が駆動し、カメラ4、5が初期位置から頂点104に向かって移動する。
図6に示すように、カメラ4、5は案内部103に沿って螺旋状に移動する。
【0034】
図7に示すように、カメラ4、5は頂点104に到達し、また案内部103に沿って螺旋状に移動する。カメラ4,5初期位置に戻り、再び頂点104に向かって、案内部103に沿って螺旋状に移動する。エンジン2もしくはモータ3が始動するまで、カメラ4、5は移動し、カメラ4、5の撮像は、レコーダ30が保存している。なお、
図5、
図6および
図7は、上下方向における車両周辺視認装置51の断面図である。
【0035】
図8に示すように、カメラ4、5が案内部103に沿って移動することによって、車両1の周辺の範囲を含んだ範囲A
Mで撮像し、車両周辺視認装置51は、車両1の周辺の監視を行う。
範囲A
Mは、車両1の周辺における前後方向および上下左右方向の範囲を含んでおり、360度全方向を含んでおり、車両周辺視認装置51は、車両1の周辺の監視を範囲A
Mで行う。
図8において、範囲A
Mを破線で示す斜線のハッチングで示す。
【0036】
車両周辺視認装置51は、例えば、不審者が自宅に侵入しないかの監視、駐車時における盗難防止のための監視、または、犯罪を防ぐための車両周辺の監視を行う。また、充電または給電時に車両1が無人の盗難防止のために監視してもよい。
車両周辺視認装置51は、車両1の周辺の監視を繰り返し、運転者がエンジン2もしくはモータ3の始動したとき、カメラ4、5は初期位置に戻り、車両周辺視認装置51はカメラモニタシステムの機能に切り替わる。
【0037】
(効果)
(1)カメラ4、5が曲部102の表面108に沿って移動してカメラ4、5の位置または向きが変更されるため、車両周辺視認装置51は360度全方向を撮像することができる。これにより、カメラモニタシステムおよび監視のために複数のカメラ4、5を設ける必要なしに、車両周辺視認装置51は、カメラモニタシステムおよび車両1の周辺の監視の両方が可能になる。したがって、車両1に搭載されるカメラ4、5の点数を削減し、車両1を軽量化できる。
【0038】
(2)ボディ10が半球形状に形成され、曲部102の頂点104から左右方向に進む螺旋状の穴105が案内部103に形成されている。このため、カメラ4、5が案内部103に沿って移動するとき、カメラ4、5の移動量が少なくなり、カメラ4、5が360度全方向の撮像をする時間が短縮される。
【0039】
(3)制御部25が車両1の状況に応じて、カメラ4、5が移動するようにアクチュエータ20を駆動するため、車両周辺視認装置51の制御性が向上する。
(4)カメラ4、5の撮像をレコーダ30が保存することによって、トラブル等が起きた場合の証拠に保存された撮像がなるため、車両周辺視認装置51の監視能力が向上する。
【0040】
(5)カメラ4、5が案内部103に沿って移動するとき、回転体11によって、カメラ4、5と曲部102とが転がり摩擦する。転がり摩擦はすべり摩擦と比較して動摩擦係数が非常に小さいため、カメラ4、5が案内部103に沿って移動しやすくなり、カメラ4、5が移動するとき、カメラ4、5と曲部102との摩耗を抑制する。
【0041】
(その他実施形態)
(i)一実施形態の車両周辺視認装置が用いられる車両は、モータのみで駆動可能な電気自動車であってもよい。モータが停止し、車両が停止して、運転座席が無人であるとき、案内部に沿ってカメラが螺旋状に移動する。これにより、一実施形態と同様の効果が得られる。
【0042】
また、一実施形態の車両周辺視認装置が用いられる車両は、ガソリンもしくは軽油等で駆動する内燃機関であるエンジンのみで駆動可能な自動車であってもよい。電気自動車と同様に、エンジンが停止し、車両が停止して、運転座席が無人であるとき、案内部に沿ってカメラが螺旋状に移動する。これにより、一実施形態と同様の効果が得られる。
【0043】
(ii)レコーダは、カーナビゲーションまたはレーダー探知機と一体にして、車両周辺視認装置と連動するようにしてもよい。レーダー探知機は、路上に設置されている速度取締装置が発するレーダー波や緊急車両等が使用している無線を受信して警報および警告する車両装置である。
【0044】
(iii)車両のドアロックを電子的に遠隔操作可能な鍵であってもよい。また、車両周辺視認装置の制御部に虹彩認証システムを搭載させて、登録者が車両に近づくとカメラが後方を向くようにしてもよい。
虹彩認証は、眼球の黒目に現れる皺である虹彩のパターンを識別する認証方式で、カメラで眼球の部分を撮像し、制御部で虹彩のパターンを抽出して認証する。さらに、虹彩認証システムを用いて、登録者でない人が車両に近づいたとき、警報および警告音を鳴らすようにしてもよい。
【0045】
(iv)一実施形態の車両周辺視認装置のボディにおける曲部の表面は、楕円形状を有する楕円放物面、双曲線形状を有する双曲線放物面または放物線の回転体である回転放物面であってもよい。
【0046】
(v)制御部は、一定時間の間隔でカメラが初期位置とボディの頂点との間を移動するようにオンオフ制御をしてもよい。
(vi)カメラ、アクチュエータ、制御部およびレコーダに電力を供給するために、バッテリに代替して別電源を設けてもよい。
以上、本発明はこのような実施形態に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の形態で実施することができる。
【解決手段】車両周辺視認装置51は、ボディ10、カメラ4、アクチュエータおよび制御部を備える。ボディ10は車両1の側部12、13に設けられ、曲部102を有する。カメラ4は曲部102に設けられ、車両1の後方または車両1の周辺を撮像可能である。アクチュエータは曲部102に沿ってカメラ4が移動してカメラ4の位置または向きを変更可能である。カメラ4が曲部102に沿って移動してカメラの位置または向きが変更されるため、車両周辺視認装置51は360度全方向を撮像することができる。このため、複数のカメラを設ける必要なしに、カメラモニタシステムおよび車両1の周辺の監視の両方が可能になり、車両に搭載されるカメラの点数を削減し、車両を軽量化できる。