特許第6100433号(P6100433)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ クアンタンス, インコーポレイテッドの特許一覧

<>
  • 特許6100433-電源 図000002
  • 特許6100433-電源 図000003
  • 特許6100433-電源 図000004
  • 特許6100433-電源 図000005
  • 特許6100433-電源 図000006
  • 特許6100433-電源 図000007
  • 特許6100433-電源 図000008
  • 特許6100433-電源 図000009
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6100433
(24)【登録日】2017年3月3日
(45)【発行日】2017年3月22日
(54)【発明の名称】電源
(51)【国際特許分類】
   H03F 1/06 20060101AFI20170313BHJP
   H03F 3/24 20060101ALI20170313BHJP
   H03F 3/68 20060101ALI20170313BHJP
   H04B 1/04 20060101ALI20170313BHJP
【FI】
   H03F1/06
   H03F3/24
   H03F3/68 Z
   H04B1/04 P
【請求項の数】20
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-502024(P2016-502024)
(86)(22)【出願日】2014年3月13日
(65)【公表番号】特表2016-516354(P2016-516354A)
(43)【公表日】2016年6月2日
(86)【国際出願番号】US2014026009
(87)【国際公開番号】WO2014160191
(87)【国際公開日】20141002
【審査請求日】2016年10月14日
(31)【優先権主張番号】61/785,588
(32)【優先日】2013年3月14日
(33)【優先権主張国】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】508233401
【氏名又は名称】クアンタンス, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ドゥロギ,セルジュ・フランソワ
(72)【発明者】
【氏名】マートシング,マーカス
(72)【発明者】
【氏名】パンセリ,ルイジ
【審査官】 緒方 寿彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−183135(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/191826(US,A1)
【文献】 特表2008−527759(JP,A)
【文献】 特開2002−314345(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03F 1/00− 3/45、3/50− 3/52、
3/62− 3/64、3/68− 3/72
H04B 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
RF入力信号をRF出力信号に増幅する無線周波数(RF)電力増幅器のための電源であって、前記電源は、
前記電源への入力電圧を前記RF電力増幅器の第1の供給電圧に変換する第1の電力変換器と、
前記入力電圧および前記第1の供給電圧を受信し、前記入力電圧または前記第1の供給電圧のいずれか一方を、前記RF電力増幅器の第2の供給電圧の少なくとも一部に選択的に変換する第2の電力変換器とを備える、電源。
【請求項2】
記RF入力信号の振幅を示す振幅信号に基づいて、前記第2の電力変換器への供給制御信号を生成する制御回路をさらに備え、
前記第2の電力変換器は、前記供給制御信号に基づいて、前記RF電力増幅器の前記第2の供給電圧の前記一部のレベルを制御する、請求項1に記載の電源。
【請求項3】
前記第2の電力変換器は、前記電源への前記入力電圧のレベルに基づいて、前記入力電圧または前記第1の供給電圧のいずれか一方を変換のために選択する、請求項1に記載の電源。
【請求項4】
前記第2の電力変換器は、前記入力電圧または前記第1の供給電圧のいずれか一方を第1の出力電圧に選択的に変換し、さらに、
前記入力電圧を受信し、前記入力電圧を第2の出力電圧に変換する第3の電力変換器と、
前記第1の出力電圧および前記第2の出力電圧を前記RF電力増幅器の前記第2の供給電圧に結合する電力結合器回路とを備える、請求項1に記載の電源。
【請求項5】
前記電力増幅器への前記RF入力信号の振幅が閾値未満であることに応答して、前記電源は前記第3の電力変換器を無効にする、請求項4に記載の電源。
【請求項6】
前記RF電力増幅器への前記第1の供給電圧と前記RF電力増幅器への前記第2の供給電圧との間に結合されるスイッチをさらに備え、
前記電力増幅器への前記RF入力信号の前記振幅が閾値未満であることに応答して、前記電源は前記第2の電力変換器を無効にし、前記スイッチを閉じて前記第1の供給電圧と前記第2の供給電圧とを接続する、請求項5に記載の電源。
【請求項7】
前記電力増幅器への前記RF入力信号の前記振幅が前記閾値未満であることに応答して、前記電源は前記第3の電力変換器を無効にする一方で前記第2の電力変換器を有効にし続ける、請求項5に記載の電源。
【請求項8】
前記第3の電力変換器は、前記第1の電力変換器および前記第2の電力変換器よりも高い周波数で動作する、請求項4に記載の電源。
【請求項9】
前記第1の電力変換器は第1のスイッチング電力変換器であり、前記第2の電力変換器は第2のスイッチング電力変換器であり、前記第3の電力変換器はリニア電力変換器である、請求項4に記載の電源。
【請求項10】
前記第1の供給電圧は、前記RF電力増幅器の第1の段に電力を提供し、前記第2の供給電圧は、前記第1の段に続く前記RF電力増幅器の第2の段に電力を提供する、請求項1に記載の電源。
【請求項11】
前記第2の供給電圧は、前記RF電力増幅器の第1の段に電力を提供し、前記第1の供給電圧は、前記第1の段に続く前記RF電力増幅器の第2の段に電力を提供する、請求項1に記載の電源。
【請求項12】
前記入力電圧はバッテリ電圧である、請求項1に記載の電源。
【請求項13】
前記RF電力増幅器への前記第2の供給電圧は、前記RF電力増幅器への前記RF入力信号の振幅を追跡する、請求項1に記載の電源。
【請求項14】
RF入力信号をRF出力信号に増幅する無線周波数(RF)電力増幅器に電力を提供する電源における動作の方法であって、前記方法は、
第1の電力変換器によって、前記電源への入力電圧を前記RF電力増幅器の第1の供給電圧に変換することと、
の電力変換器によって、前記電源への前記入力電圧または前記RF電力増幅器の前記第1の供給電圧のいずれか一方を、前記RF電力増幅器の第2の供給電圧の少なくとも一部に選択的に変換することとを備える、方法。
【請求項15】
前記RF入力信号の振幅を示す振幅信号に基づいて、前記第2の電力変換器への供給制御信号を生成することと、
前記第の電力変換器によって、前記供給制御信号に基づいて、前記RF電力増幅器の前記第2の供給電圧の前記一部のレベルを制御することとをさらに備える、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記第2の電力変換器によって選択的に変換することは、前記入力電圧のレベルに基づいて、変換のために前記入力電圧または前記第1の供給電圧のいずれか一方を選択すことを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記RF電力増幅器の前記第2の供給電圧の前記一部は第1の出力電圧であり、前記方法は、さらに、
第3の電力変換器によって、前記入力電圧を第2の出力電圧に変換することと、
前記第1の出力電圧および前記第2の出力電圧を前記RF電力増幅器の前記第2の供給電圧に結合することとを備える、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
前記RF電力増幅器への前記RF入力信号の振幅が閾値未満であることに応答して、前記第3の電力変換器を無効にすることをさらに備える、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記RF電力増幅器への前記RF入力信号の前記振幅が前記閾値未満であることに応答して、前記第2の電力変換器を無効にし、前記第1の供給電圧と前記第2の供給電圧とを接続することをさらに備える、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記RF電力増幅器への前記RF入力信号の前記振幅が前記閾値未満であることに応答して、前記第3の電力変換器を無効にする一方で前記第2の電力変換器を有効に維持することをさらに備える、請求項18に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願との相互参照
本願は、2013年3月14日に出願された、「電源(Power Supply)」と題された米国仮特許出願番号第61/785,588号の優先権を主張し、その全内容が引用により援用される。
【0002】
背景
1.開示の分野
本願は電源に関し、より特定的にはエンベロープトラッキング電力増幅器システムのための電源に関する。
【背景技術】
【0003】
2.関連技術の説明
モバイル機器はさまざまな無線技術を用いて通信し、それらの中には、エンベロープトラッキング電源を有する無線周波数(radio frequency:RF)電力増幅器(power amplifier:PA)システムを用いて無線信号を送信するものもある。モバイル機器は、RF PAシステムのための電力源を提供するバッテリも有する。しかし、バッテリは有限の電力源である。したがって、RF PAシステムの電源は電力効率が良いことが好ましい。また、バッテリ電圧は、モバイル機器内の他の回路からの電力要求のために垂下し得る。バッテリ電圧の変動によって、RF PAシステムのシグナルインテグリティが劣化し得る。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
概要
本開示の実施形態は、RF入力信号をRF出力信号に増幅する無線周波数(RF)電力増幅器のための電源を含む。上記電源は、上記電源への入力電圧を上記RF電力増幅器の第1の供給電圧に変換する第1の電力変換器を含む。上記電源は、上記入力電圧および上記第1の供給電圧を受信し、上記入力電圧または上記第1の供給電圧のいずれか一方を、上記RF電力増幅器の第2の供給電圧の少なくとも一部に選択的に変換する第2の電力変換器を含む。
【0005】
一実施形態では、上記電源はさらに、上記RF入力信号の振幅を示す振幅信号に基づいて、上記第2の電力変換器への供給制御信号を生成する制御回路を含む。上記第2の電力変換器は、上記供給制御信号に基づいて、上記RF電力増幅器の上記第2の供給電圧の上記一部のレベルを制御する。別の実施形態では、上記第2の電力変換器はさらに、上記電源への上記入力電圧のレベルに基づいて、上記入力電圧または上記第1の供給電圧のいずれか一方を変換のために選択する。
【0006】
別の実施形態では、上記第2の電力変換器は、上記入力電圧または上記第1の供給電圧のいずれか一方を第1の出力電圧に選択的に変換する。上記入力電圧を受信し、上記入力電圧を第2の出力電圧に変換する第3の電力変換器。上記第1の出力電圧および上記第2の出力電圧を上記RF電力増幅器の上記第2の供給電圧に結合する電力結合器回路。
【0007】
本開示の実施形態は、上記電源における動作の方法を含む。上記方法は、第1の電力変換器によって、上記電源への入力電圧を上記RF電力増幅器の第1の供給電圧に変換することを含む。上記方法はさらに、第1の電力変換器によって、上記電源への上記入力電圧または上記RF電力増幅器の上記第1の供給電圧のいずれか一方を、上記RF電力増幅器の第2の供給電圧の少なくとも一部に選択的に変換することを含む。
【0008】
ここに開示される実施形態の教示は、添付の図面と関連して以下の詳細な説明を考慮することによって容易に理解され得る。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】ある実施形態に係る、エンベロープトラッキング電源を有するRF PAシステムの図である。
図1A】ある実施形態に係る、図1からのバックコンバータの図である。
図1B】ある実施形態に係る、図1からの電力結合器回路の図である。
図2】ある実施形態に係る、エンベロープトラッキング動作モード時にエンベロープトラッキング電源によって電力を供給されるRF PAシステムの図である。
図3】ある実施形態に係る、別のエンベロープトラッキング動作モード時にエンベロープトラッキング電源によって電力を供給されるRF PAシステムの図である。
図4】ある実施形態に係る、平均電力トラッキング動作モード時にエンベロープトラッキング電源によって電力を供給されるRF PAシステムの図である。
図5】ある実施形態に係る、別の平均電力トラッキング動作モード時にエンベロープトラッキング電源によって電力を供給されるRF PAシステムの図である。
図6】別の実施形態に係る、エンベロープトラッキング電源によって電力を供給されるRF PAシステムの図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
詳細な説明
ここでいくつかの実施形態を詳細に参照し、その例を添付の図面に示す。なお、可能な場合は必ず、同様または類似の参照番号が図面で用いられ得、同様または類似の機能性を示し得ることに留意されたい。図面および添付の説明は、例示のためのみにさまざまな実施形態を示す。当業者は以下の説明から、ここに例示される構造および方法の代替実施形態がここに説明される原理から逸脱することなく採用され得ることを容易に認識するであろう。ここに使用される「推定する」「決定する」または「演算する」という用語は互いに交換可能に用いられ得る。
【0011】
超高速電源アーキテクチャを開示する。その主な使用は、エンベロープトラッキング(envelope tracking:ET)電力増幅器(PA)システム内のエンベロープトラッキング(ET)電源としてである。電源は、2つのスイッチング電力変換器(たとえば1つのバック/ブースト、1つのバック)とリニア電力変換器とを含む。2つのスイッチング電力変換器とリニア電力変換器との組合せによって、電源は、バッテリ入力電圧が垂下した場合でも2つの電力レールへの出力電力調整を維持することができる。電力変換器の組合せによって電源の柔軟性も高まり、電源を異なるモードで動作させて電力効率を高めることができる。
【0012】
図1は、ある実施形態に係るエンベロープトラッキング電源を有するRF PAシステムである。RF PAシステムは、CDMA、LTE等を用いる携帯電話などのモバイル通信機器内に見ることができる。示されるように、RF PAシステムは、振幅検出器120、RFアップコンバータ110、電力増幅器112およびエンベロープトラッキング電源100を含む。
【0013】
RFアップコンバータ回路110はデジタルベースバンド信号102を受信する。RFアップコンバータ110はベースバンド信号102を搬送周波数にアップコンバートし、振幅および位相が異なるRF入力信号104を生成する。電力増幅器(PA)はRF入力信号104を受信および増幅してRF出力信号106を生成する。RF出力信号106は、遠隔装置への送信用のアンテナ(図示せず)に提供される。
【0014】
一実施形態では、PA112は2つの増幅段を有する二段PA112である。第1の段114は供給電圧VCC1によって電力を供給される。第2の段116は第1の段114に続いており、供給電圧VCC2によって電力を供給される。第2の段116は、第1の段114よりも大きく、より大量の電力を消費し得る。PA112は、バイアス供給電圧のためのバイアス入力(図示せず)をさらに有する。
【0015】
振幅検出器120はデジタルベースバンド信号102を受信し、RF入力信号104のエンベロープ振幅を追跡するエンベロープ振幅信号108を生成する。振幅検出器は、ベースバンド信号102のデジタル変調成分(IおよびQ)の関数として振幅信号108を生成し得る。エンベロープ振幅信号108は差動信号であってもよい。一実施形態では、エンベロープ振幅信号108は、RF入力信号104の振幅が変化するにつれて変化する、調整可能な変化する制御信号と見なすことができる。
【0016】
エンベロープトラッキング電源100は、バッテリ入力電圧VBATをPA112への供給電圧VCC1およびVCC2に変換する。供給電圧VCC1およびVCC2はエンベロープトラッキングモードで制御され得、この間、VCC1は比較的一定に保持され、VCC2は振幅信号108の瞬間的なエンベロープ振幅を追跡する。供給電圧VCC1およびVCC2は平均電力トラッキングモードで制御され得、この間、VCC1およびVCC2は振幅信号108の平均エンベロープ振幅を大まかに追跡する。PA112はエンベロープトラッキング電源100の負荷の例であるが、他の実施形態では当該電源を用いてPA112以外の負荷に電力を提供してもよい。図示されるように、エンベロープトラッキング電源100は、制御回路124、バック/ブースト電力変換器126、バック電力変換器128、リニア電力変換器130および電力結合器回路132を含む。
【0017】
制御回路124はエンベロープ振幅信号108を受信し、エンベロープ振幅信号108に従って電力変換器126,128および130を制御するための供給制御信号140,142および144を生成する。供給制御信号140,142および144は、電力変換器126,128および130の各々が出力すべき個々の目標または所望の電圧レベルを示す。電力変換器126,128および130は、自身の出力電圧レベルを制御する際にそれぞれの供給制御信号140,142および144を用いる。制御回路124はさらに、電力変換器126,128および130を有効または無効にするために電力変換器126,128および130に提供されるイネーブル信号(図示せず)を生成し得る。
【0018】
さらに、制御回路124は、供給電圧VCC2のレベルおよびリニア電力変換器130の出力電圧154を示すフィードバック信号を受信する。これらのフィードバック信号は、電源100内のさまざまな電力変換器126,128および130の動作を制御する閉ループフィードバックとして用いられ得る。
【0019】
バック/ブーストコンバータ126はバッテリ電圧VBATを受信し、バッテリ入力電圧VBATから供給電圧VCC1を生成する。バック/ブーストコンバータ126は、供給制御信号140によって示される目標電圧レベルおよびバッテリ入力電圧VBATのレベルに依存して、バッテリ入力電圧VBATを昇圧または降圧して供給電圧VCC1を生成可能なスイッチング電力変換器である。目標電圧レベルがVBATよりも高い場合、バック/ブーストコンバータ126はブーストモードで動作して、VBATよりも高いPA114への供給電圧VCC1を生成する。目標電圧レベルがVBATよりも低い場合、バック/ブーストコンバータ126はバックモードで動作して、VBATよりも低い供給電圧VCC1を生成する。
【0020】
バック/ブーストコンバータ126の出力は一般に供給制御信号140を追跡する。供給制御信号140が増加するにつれて、バック/ブーストコンバータ126が出力する供給電圧VCC1は増加する。供給制御信号140が減少するにつれて、バック/ブーストコンバータ126が出力する供給電圧VCC1は減少する。バック/ブーストコンバータ126は、バック/ブースト電力変換器126の出力を調整するのを助けるインダクタ(図示せず)などの構成要素を含んでもよい。
【0021】
バックコンバータ128は、バッテリ入力電圧VBATおよび供給電圧VCC1を受信する。バックコンバータ128は、供給制御信号142の制御下でバッテリ入力電圧VBATまたは供給電圧VCC1のいずれか一方からバック出力供給電圧152を生成する。バックコンバータ128は、入力電圧をより低いバック出力供給電圧152に降圧のみ可能な降圧スイッチング電力変換器である。供給制御信号142が増加するにつれて、バック出力供給電圧152は増加する。供給制御信号142が減少するにつれて、バック出力供給電圧152は減少する。
【0022】
バックコンバータ128はさらに、自身の2つの入力電圧(VBAT,VCC1)のいずれか一方を用いてバック出力供給電圧152を生成する二重レール電力変換器である。バックコンバータ128は、バック出力供給電圧152を生成する際に用いるバッテリ入力電圧VBATまたは供給電圧VCC1のいずれか一方を選択する2つのスイッチ170および172を含む。
【0023】
次に図1Aを参照して、ある実施形態に係る図1からのバックコンバータ128が示されている。バックコンバータ128は、基準発生器176、比較器180、インバータ184およびスイッチング電力変換回路188を含む。基準発生器176は、バック出力電圧152に0.3Vを加算して閾値基準電圧178(バック出力電圧152+0.3V)を生成する。比較器180は、閾値基準電圧178をVBATと比較して出力信号を生成し、当該出力信号はスイッチ170に提供され、インバータ184で反転され、スイッチ172に提供される。一般に、VBATレベルが閾値基準電圧178よりも高い場合は、スイッチ170が閉じられ、スイッチング電力変換回路188への入力としてVBATが提供される。一方、VBATレベルが閾値基準電圧178よりも低い場合は、スイッチ172が開かれ、(VCC1がVBATよりも高いと仮定して)スイッチング電力変換回路188への入力としてVCC1が提供される。この選択は、VBATがその出力において目標電圧を生成するのに十分なマージンを有している場合はVBATが用いられると仮定する。スイッチング電力変換回路188は、選択された電圧(VBATまたはVCC1)を用いてバック出力供給電圧152を生成する。
【0024】
再び図1を参照して、別の実施形態では、選択される入力電圧は、供給制御信号142によって示される目標出力電圧およびバッテリ入力電圧VBATのレベルに依存する。バックコンバータ128は、供給制御信号142をVBATによって決定された閾値基準電圧(たとえばVBAT−0.3V)と比較する。目標出力電圧が閾値基準電圧よりも低い場合、バック電力変換器128はバッテリ入力電圧VBATを用いてバック出力供給電圧152を生成する。目標出力電圧が閾値基準電圧よりも高い場合、バックコンバータ128は(VCC1がVBATよりも高いと仮定して)供給電圧VCC1を用いてバック出力供給電圧152を生成する。
【0025】
バック電力変換器128の二重性質によって、電源100は、バッテリ入力電圧VBATのディップを依然として処理可能でありながら良好な電力効率を有することができる。バッテリ入力電圧VBATが十分なヘッドルームを提供する場合、バックコンバータ128がこれを直接用いて高効率でバック出力供給電圧152を生成することができる。バッテリ入力電圧VBATが十分なヘッドルームを提供しない場合、電源100は供給電圧VCC1を用いて、バック/ブーストコンバータ126の損失のために効率がわずかに減少するのみでバック出力供給電圧152を生成することができる。
【0026】
リニア電力変換器130は、供給電圧VCC1を受信し、供給制御信号144の制御下でリニア出力供給電圧154を生成するリニア増幅器である。供給制御信号144が増加するにつれて、リニア出力供給電圧154は増加する。供給制御信号144が減少するにつれて、リニア出力供給電圧154は減少する。
【0027】
リニア電力変換器130はバック/ブーストコンバータ126およびバックコンバータ128よりも高い周波数で動作することができ、これは、スイッチング要素がそれらをより低い周波数で動作させることを含む。しかし、リニア電力変換器130は、バック/ブーストコンバータ126およびバックコンバータ128よりも電力効率が低い。制御回路124はリニア電力変換器130を用いてRF入力信号104のエンベロープの急速な変化を補償するのに対して、バック/ブーストコンバータ126およびバックコンバータ128はより高い電力効率でより緩やかな変化を補償するために用いられ得る。
【0028】
バック出力供給電圧152およびリニア出力供給電圧154は、周波数遮断電力結合器回路132と結合される。周波数遮断電力結合器回路132の出力は、供給電圧VCC2となる結合電圧出力である。図1Bは、ある実施形態に係る図1からの周波数遮断電力結合器回路132を示す。周波数遮断電力結合器回路132は、インダクタL2およびコンデンサC2を含む。コンデンサC2は高周波数リニア出力供給電圧154を通過させる一方で、低周波数バック出力供給電圧152を遮断する。インダクタL2は低周波数バック出力供給電圧152を通過させる一方で、高周波数リニア出力供給電圧154を遮断する。
【0029】
2つの出力供給電圧152および154はこのように結合されて、PA116への供給電圧VCC2となる結合出力電圧を生成する。供給電圧152および154は両方とも、供給電圧VCC2の一部に寄与する。RF入力信号104の低周波数エンベロープ振幅変化の間、供給電圧VCC2はバック出力供給電圧152から完全に生成され得る。
【0030】
制御回路124は、エンベロープ振幅信号108のレベルに依存して、電源100をエンベロープトラッキング動作モードまたは平均電力トラッキング(average power tracking:APT)動作モードのいずれか一方で動作させ得る。図2および図3を参照してエンベロープトラッキング動作モードを説明する。エンベロープトラッキング動作モード時、電源100は供給電圧VCC1を一定にし、供給電圧VCC2がRF入力信号104の瞬間的なエンベロープ振幅を実質的に追跡するように供給電圧VCC2を制御する。エンベロープトラッキングモードは一般に、RF入力信号104のエンベロープ振幅が高精度で追跡されるように、RF入力信号のエンベロープ振幅が高い、すなわち一定の閾値を超えている状況で起こる。
【0031】
エンベロープトラッキングモードでは、制御信号140は一定電圧を有するように生成される。制御信号142は、たとえば振幅信号108をローパスフィルタに通過させることによって、振幅信号108の緩やかな変化を追跡するように生成される。これにより、バック出力電圧152は、RF入力信号104のエンベロープ振幅の緩やかな変化を追跡する。制御信号144は、たとえば振幅信号108をハイパスフィルタに通過させることによって、振幅信号108の急速な変化を追跡するように生成される。これにより、リニア出力電圧154は、RF入力信号104のエンベロープ振幅の急速な変化を追跡する。
【0032】
図4図5および図6を参照して平均電力トラッキング(APT)動作モードを説明する。平均電力トラッキング(APT)動作モード時、電源100は供給電圧VCC1およびVCC2を制御してRF入力信号104の平均エンベロープ振幅を追跡する。平均エンベロープは、ベースバンド信号のいくつかの変調周期(たとえば0.5ms)などのある期間にわたる平均であってもよい。APTモードは一般に、RF入力信号104のエンベロープ振幅が高精度で追跡されないように、RF入力信号のエンベロープ振幅が低い、すなわち一定の閾値未満である状況で起こる。
【0033】
APTモードでは、制御信号140は振幅信号108の緩やかな変化を追跡するように生成される。これにより、VCC2は、RF入力信号104の平均エンベロープ振幅を追跡する。バックレギュレータ128およびリニアレギュレータ130は両方とも、図4に示されるように無効にされ得る。代替的に、図5に示されるように、制御信号142は振幅信号108の緩やかな変化を追跡するように生成されてもよい。
【0034】
供給電圧VCC1と供給電圧VCC2との間にスイッチ174がさらに結合される。スイッチ174は、制御回路124によって生成されるスイッチ制御信号176の制御下で閉じられるか開かれるトランジスタスイッチであってもよい。典型的に、スイッチ174は、供給電圧VCC1および供給電圧VCC2が互いに別個に制御可能であるように開いている。平均電力トラッキング動作モードでは、制御回路124は、バック/ブーストコンバータ126が供給電圧VCC1および供給電圧VCC2の両方を生成するように、スイッチ制御信号176を生成してスイッチ174を閉じることができる。
【0035】
一実施形態では、制御回路124はエンベロープ振幅信号108を閾値電圧レベル(たとえば3V)と比較する。エンベロープ振幅信号108が閾値よりも高い場合、制御回路124は制御信号140,142および144を生成して、電源100をエンベロープトラッキング動作モードで動作させる。一方、エンベロープ振幅信号108が閾値未満である場合は、制御回路124は制御信号140,142および144を生成して、電源100をAPT動作モードで動作させ得る。
【0036】
図2は、ある実施形態に係る、エンベロープトラッキング動作モード時にエンベロープトラッキング電源によって電力を供給されるRF PAシステムである。バック/ブーストコンバータ126は、バックまたはブースト構成で動作して供給電圧VCC1を生成していてもよい。リニア増幅器は供給電圧VCC1によって電力を供給される。スイッチ174は、供給電圧VCC1およびVCC2が互いに独立して動作するように開いている。電源100は、供給電圧VCC2がRF入力信号104の瞬間的なエンベロープ振幅を実質的に追跡するように供給電圧VCC2を制御する。これは、正常なVBATエンベロープトラッキング動作モードと見なされる。
【0037】
このモードでは、供給電圧VCC2の目標レベルは、バッテリ電圧VBATマイナス0.3Vによって規定される閾値未満である。バッテリ電圧VBATはしたがって、入力電圧としてバックコンバータ128によって用いられる十分なヘッドルームを有する。VBATを入力電圧として選択するため、バックコンバータ128はスイッチ172を開くと同時にスイッチ170を閉じる。このモードにおいてVBATをバックコンバータ128への入力電圧として使用すると、バック/ブーストコンバータ126によって生じる潜在的な電力損失を回避することによって電力消費が減少する。
【0038】
図3は、ある実施形態に係る、別のエンベロープトラッキング動作モード時にエンベロープトラッキング電源100によって電力を供給されるRF PAシステムである。図2と同様に、図3はエンベロープトラッキングモードを表わしており、この間、電源100は、供給電圧VCC2がRF入力信号104の瞬間的なエンベロープ振幅を実質的に追跡するように供給電圧VCC2を制御する。しかし、図2とは対照的に、供給電圧VCC2の目標レベルはVBATマイナス0.3Vの閾値電圧よりも高くなっている。バッテリ入力電圧VBATの低レベルは、バッテリ入力電圧VBATのディップに起因し得る。これは、低VBATエンベロープトラッキング動作モードと見なされる。
【0039】
図3では、バッテリ入力電圧VBATは、目標電圧レベルを満たすバック出力供給電圧152を依然として生成する一方で、入力電圧としてバックコンバータ128によって用いられる十分なヘッドルームをもはや有しない。バック/ブーストコンバータ126は、供給電圧VCC1がバッテリ入力電圧VBATよりも高いようにブーストモードで動作される。供給電圧VCC1は、入力電圧としてバックコンバータ128によって用いられる十分なヘッドルームを有する。供給電圧VCC1を入力電圧として選択するため、バックコンバータ128はスイッチ172を閉じてスイッチ170を開く。したがって、バッテリ電圧VBATがディップした場合でも、バックコンバータ128は、供給電圧VCC2電圧をその所望のレベルに維持するバック出力供給電圧152を依然として生成可能である。
【0040】
図4は、ある実施形態に係る、平均電力トラッキング動作モード時にエンベロープトラッキング電源100によって電力を供給されるRF PAシステムである。バックコンバータ128およびリニアコンバータ130は、それらのイネーブル入力を介して制御回路124によって無効にされる。スイッチ174はバックコンバータ128およびリニアコンバータ130をバイパスするために閉じられ、これにより、供給電圧VCC1が供給電圧VCC2に接続される。バック/ブーストコンバータ126はしたがって、供給電圧VCC1およびVCC2の両方を提供する。バック/ブーストコンバータ126がRF入力信号104の平均エンベロープ振幅を追跡する出力を生じさせるため、供給電圧VCC1およびVCC2の両方ともRF入力信号の平均エンベロープ振幅を追跡する。単一のバック/ブーストコンバータ126が供給電圧VCC1およびVCC2の両方を提供するため、APTモードは高効率で動作する。これは、正常なAPT動作モードと見なされる。
【0041】
図5は、ある実施形態に係る、別の平均電力トラッキング動作モード時にエンベロープトラッキング電源100によって電力を供給されるRF PAシステムである。このモードでは、供給電圧VCC2の目標レベルは閾値(たとえば2V)未満である。供給電圧VCC2は、節電のために、供給電圧VCC1よりも低い可能性がある低電圧で動作される。これは、低電力APT動作モードと見なされる。リニア電力変換器130は無効にされ、使用されない。
【0042】
バックコンバータ128は有効にされ、バック出力電圧152を生成する際に用いるバッテリ入力電圧VBATを選択する。リニアコンバータ130が無効にされるため、バック出力供給電圧152は供給電圧VCC2と同一である。バック/ブーストコンバータ126およびバックコンバータ128は、異なる供給電圧をもたらす出力を生成することができる。たとえば、供給電圧VCC1は0.7Vであってもよく、供給電圧VCC2は0.5Vであってもよい。
【0043】
VCC1およびVCC2の両方ともRF入力信号104の平均エンベロープを追跡するように制御され得るが、それらは異なる平均を追跡してもよい。たとえば、VCC1は、制御信号140の制御を介して10msにわたってより長い平均を追跡してもよい。VCC2は、制御信号142の制御を介して0.5msにわたってより短い平均を追跡してもよい。
【0044】
図6は、別の実施形態に係る、エンベロープトラッキング電源100によって電力を供給されるRF PAシステムである。図6のこのRF PAシステムは、供給電圧VCC1および供給電圧VCC2の接続が逆になっている以外は図5のRF PAシステムと同様である。供給電圧VCCは、ここでは電力結合器132を介してバックコンバータ128によって供給される。供給電圧VCC1は、ここではバック/ブーストコンバータ126によって供給される。リニアコンバータ130は依然として無効にされている。
【0045】
図6のPA612は図1からのPA112と異なっていてもよい。RF PAシステムの中には、同一電源によって電力を供給され得る複数のPAを含むものもある。したがって、PA112はRF PAシステム内の1つのPAを表わしてもよく、PA612は同一のRF PAシステム内の異なるPAを表わしてもよい。
【0046】
図6のRF PAシステムはAPTモードで動作する。バック/ブーストコンバータ126を用いて、供給電圧VCC2のレベルをバッテリ電圧VBATよりも上昇させる。供給電圧VCC1は、RF入力信号104の平均エンベロープ振幅を追跡する。図6の構成は典型的に、第2の段116のブースティングを必要とするPA612のために用いられる。これらの種類のPA612は、第2の段116のためにより高効率かつより高電圧で動作し得る。
【0047】
当業者はこの開示を読むと、電源の付加的な代替設計を認識するであろう。したがって、本開示の特定の実施形態および用途を図示および説明してきたが、実施形態はここに開示される正確な構成および構成要素に限定されないこと、ならびに当業者に自明となるさまざまな修正、変更および変形が、添付の請求項に規定される開示の思想および範囲から逸脱することなく、ここに開示される本開示の方法および装置の配置、動作および詳細になされ得ることが理解される。
図1
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5
図6