(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
Z軸まわりのトルクが作用した結果、前記固定電極に対する前記変位電極の相対位置が変化した場合にも、前記第1及び第2容量素子を構成する各一対の電極の実効対向面積が変化しないように、前記第1及び第2容量素子のそれぞれの変位電極及び固定電極のうちの一方の面積を他方の面積よりも大きく設定した
ことを特徴とする請求項1または2に記載のトルクセンサ。
XY平面上に、原点Oを通りX軸およびY軸に対して45°をなすV軸およびW軸を定義した場合に、Z軸方向から見ると、前記第1容量素子及び前記第2容量素子は、共にV軸上またはW軸上に配置される
ことを特徴とする請求項4に記載のトルクセンサ。
前記第1〜第4容量素子の各変位電極のうち少なくとも2つが共通の電極で構成されているか、または、前記第1〜第4容量素子の各固定電極のうち少なくとも2つが共通の電極で構成されている
ことを特徴とする請求項6に記載のトルクセンサ。
Z軸まわりのトルクが作用した結果、前記固定電極に対する前記変位電極の相対位置が変化した場合にも、前記第1〜第4容量素子を構成する各一対の電極の実効対向面積が変化しないように、前記第1〜第4容量素子のそれぞれの変位電極及び固定電極のうち一方の面積を他方の面積よりも大きく設定した
ことを特徴とする請求項6または7に記載のトルクセンサ。
XY平面上に、原点Oを通りX軸およびY軸に対して45°をなすV軸およびW軸を定義した場合に、Z軸方向から見ると、前記第1容量素子は正のV軸上に配置され、前記第2容量素子は正のW軸上に配置され、前記第3容量素子は負のV軸上に配置され、前記第4容量素子は負のW軸上に配置される
ことを特徴とする請求項9に記載のトルクセンサ。
前記第1〜第8容量素子の各変位電極のうち少なくとも2つが共通の電極で構成されているか、または、前記第1〜第8容量素子の各固定電極のうち少なくとも2つが共通の電極で構成されている
ことを特徴とする請求項11に記載のトルクセンサ。
Z軸まわりのトルクが作用した結果、前記固定電極に対する前記変位電極の相対位置が変化した場合にも、前記第1〜第8容量素子を構成する各一対の電極の実効対向面積が変化しないように、前記第1〜第8容量素子のそれぞれの変位電極及び固定電極のうち一方の面積を他方の面積よりも大きく設定した
ことを特徴とする請求項11または12に記載のトルクセンサ。
Z軸まわりのトルクが作用した結果、前記固定電極に対する前記変位電極の相対位置が変化した場合にも、前記第1及び第2容量素子を構成する各一対の電極の実効対向面積が変化しないように、前記第1及び第2容量素子のそれぞれの変位電極及び固定電極のうち一方の面積を他方の面積よりも大きく設定した
ことを特徴とする請求項20または21に記載のトルクセンサ。
前記第1〜第4容量素子の各変位電極のうち少なくとも2つが共通の電極で構成されているか、または、前記第1〜第4容量素子の各固定電極のうち少なくとも2つが共通の電極で構成される
ことを特徴とする請求項27に記載のトルクセンサ。
Z軸まわりのトルクが作用した結果、前記固定電極に対する前記変位電極の相対位置が変化した場合にも、前記第1〜第4容量素子を構成する各一対の電極の実効対向面積が変化しないように、前記第1〜第4容量素子のそれぞれの変位電極及び固定電極のうち一方の面積を他方の面積よりも大きく設定した
ことを特徴とする請求項27または28に記載のトルクセンサ。
XY平面上に、原点Oを通りX軸およびY軸に対して45°をなすV軸およびW軸を定義した場合に、Z軸方向から見ると、前記第1容量素子は、正のV軸上に配置され、前記第2容量素子は、正のW軸上に配置され、前記第3容量素子は、負のV軸上に配置され、前記第4容量素子は、負のW軸上に配置される
ことを特徴とする請求項30に記載のトルクセンサ。
前記第1〜第8容量素子の各変位電極のうち少なくとも2つが共通の電極で構成されているか、または、前記第1〜第8容量素子の各固定電極のうち少なくとも2つが共通の電極で構成されている
ことを特徴とする請求項34に記載のトルクセンサ。
Z軸まわりのトルクが作用した結果、前記固定電極に対する前記変位電極の相対位置が変化した場合にも、前記第1〜第4容量素子を構成する各一対の電極の実効対向面積が変化しないように、前記第1〜第4容量素子のそれぞれの変位電極及び固定電極のうち一方の面積を他方の面積よりも大きく設定した
ことを特徴とする請求項34または35に記載のトルクセンサ。
Z軸方向から見ると、前記第1容量素子は、原点Oを通り正のX軸に対して30°の角度をなす直線上に配置され、前記第2容量素子は、原点Oを通り正のX軸に対して60°の角度をなす直線上に配置され、前記第3容量素子は、原点Oを通り正のX軸に対して120°の角度をなす直線上に配置され、前記第4容量素子は、原点Oを通り正のX軸に対して150°の角度をなす直線上に配置され、前記第5容量素子は、原点Oを通り正のX軸に対して210°の角度をなす直線上に配置され、前記第6容量素子は、原点Oを通り正のX軸に対して240°の角度をなす直線上に配置され、前記第7容量素子は、原点Oを通り正のX軸に対して300°の角度をなす直線上に配置され、前記第8容量素子は、原点Oを通り正のX軸に対して330°の角度をなす直線上に配置される
ことを特徴とする請求項37に記載のトルクセンサ。
前記第2、第4、第6及び第8検出部の前記第1及び第2変形部は、前記環状変形体の径方向において、前記第1、第3、第5及び第7検出部の前記第1及び第2変形部よりも幅狭に構成されている
ことを特徴とする請求項34乃至38のいずれか一項に記載のトルクセンサ。
前記第2、第4、第6及び第8検出部の前記第1及び第2変形部は、Z軸方向において、前記第1、第3、第5及び第7検出部の前記第1及び第2変形部よりも肉薄に構成されている
ことを特徴とする請求項34乃至38のいずれか一項に記載のトルクセンサ。
【発明の開示】
【0008】
本発明は、XYZ三次元座標系におけるZ軸まわりのトルクを検出するトルクセンサであって、
検出対象となるトルクの作用により弾性変形を生じる材質からなり、Z軸が挿通する貫通開口部を有する環状変形体と、
前記環状変形体がXZ平面と交わる2つの第1部位において当該環状変形体に接続された第1支持体と、
前記環状変形体がZ軸を含みXZ平面とは異なる平面と交わる2つの第2部位において当該環状変形体に接続され、前記第1支持体に対してZ軸まわりに回転可能な第2支持体と、
前記環状変形体に配置され、当該環状変形体の弾性変形に起因した変位を生じる変位電極と、
前記第1支持体のうち前記変位電極に対向する位置に配置された固定電極と、
前記変位電極と前記固定電極とによって構成される容量素子の静電容量値の変動量に基づいて、前記第1支持体及び前記第2支持体の一方に負荷がかかった状態において他方に作用したZ軸まわりのトルクを示す電気信号を出力する検出回路と、を備え、
前記環状変形体は、高弾力部と、前記高弾力部のバネ定数よりも小さいバネ定数を有する低弾力部と、を有し、
前記容量素子は、第1容量素子及び第2容量素子を有し、前記第1容量素子は、Z軸まわりのトルクが作用したときに、前記高弾力部のうち前記環状変形体と前記第1支持体との離間距離が変化する第1位置に配置された変位電極及び固定電極から構成され、前記第2容量素子は、Z軸まわりのトルクが作用したときに、前記低弾力部のうち前記環状変形体と前記第1支持体との離間距離が変化する第2位置に配置された変位電極及び固定電極から構成され、
前記検出回路は、
前記第1容量素子の静電容量値に相当する第1電気信号と、前記第2容量素子の静電容量値に相当する第2電気信号と、を作用したトルクを示す電気信号として出力し、
前記第1電気信号と前記第2電気信号との比率に基づいて、当該トルクセンサが正常に機能しているか否かを判定する。
【0009】
本発明によれば、高弾力部よりも低弾力部の方が先に金属疲労することに伴って、第1電気信号と第2電気信号との比率に変化が生じる。このことに着目してトルク検出部を構成する弾性体が破断する前に当該弾性体に金属疲労が生じていること検出することにより、当該トルク検出部の故障を診断することが可能なトルクセンサを提供することができる。
【0010】
第1及び第2容量素子を構成する各固定電極及び各変位電極は、それぞれの容量素子ごとに個別的に形成され得る。あるいは、各固定電極及び各変位電極のうちの一方が共通電極として構成されていても良い。すなわち、前記第1及び第2容量素子の各変位電極が共通の電極で構成されているか、または、前記第1及び第2容量素子の各固定電極が共通の電極で構成されていても良い。
【0011】
好ましくは、Z軸まわりのトルクが作用した結果、前記固定電極に対する前記変位電極の相対位置が変化した場合にも、前記第1及び第2容量素子を構成する各一対の電極の実効対向面積が変化しないように、前記第1及び第2容量素子のそれぞれの変位電極及び固定電極のうちの一方の面積を他方の面積よりも大きく設定されている。
【0012】
この場合、Z軸まわりのトルクが作用しても第1及び第2容量素子を構成する各一対の電極の実効対向面積が変化しないため、トルクの検出精度とトルクセンサが正常に機能しているか否かの判定精度とを高めることができる。
【0013】
以上のようなトルクセンサにおいて、前記第2支持体は、前記環状変形体がYZ平面と交わる2つの領域において当該環状変形体に接続されていることが好ましい。この場合、作用したトルクによる環状変形体の変形が、原点Oに関して対称となるため、当該トルクの測定が容易である。
【0014】
好ましくは、XY平面上に、原点Oを通りX軸およびY軸に対して45°をなすV軸およびW軸を定義した場合に、Z軸方向から見ると、前記第1容量素子及び前記第2容量素子は、共にV軸上またはW軸上に配置されている。
【0015】
この場合、各容量素子の静電容量値の変化について、第1及び第2容量素子が互いに反対の挙動を示す。このため、各容量素子の静電容量値の変化に基づくトルクの測定及びトルクセンサの故障診断のための処理が容易である。
【0016】
あるいは、本発明は、XYZ三次元座標系におけるZ軸まわりのトルクを検出するトルクセンサであって、
検出対象となるトルクの作用により弾性変形を生じる材質からなり、Z軸が挿通する貫通開口部を有する環状変形体と、
前記環状変形体がXZ平面と交わる2つの第1部位において当該環状変形体に接続された第1支持体と、
前記環状変形体がZ軸を含みXZ平面とは異なる平面と交わる2つの第2部位において当該環状変形体に接続され、前記第1支持体に対してZ軸まわりに回転可能な第2支持体と、
前記環状変形体に配置され、当該環状変形体の弾性変形に起因した変位を生じる変位電極と、
前記第1支持体のうち前記変位電極に対向する位置に配置された固定電極と、
前記変位電極と前記固定電極とによって構成される容量素子の静電容量値の変動量に基づいて、前記第1支持体及び前記第2支持体の一方に負荷がかかった状態において他方に作用したZ軸まわりのトルクを示す電気信号を出力する検出回路と、を備え、
前記環状変形体は、高弾力部と、前記高弾力部のバネ定数よりも小さいバネ定数を有する低弾力部と、を有し、
前記容量素子は、第1容量素子、第2容量素子、第3容量素子及び第4容量素子を有し、前記第1容量素子及び前記第2容量素子は、Z軸まわりのトルクが作用したときに、前記高弾力部のうち前記環状変形体と前記第1支持体との離間距離が変化する2つの第1位置に配置された変位電極及び固定電極からそれぞれ構成され、前記第3容量素子及び前記第4容量素子は、Z軸まわりのトルクが作用したときに、前記低弾力部のうち前記環状変形体と前記第1支持体との離間距離が変化する2つの第2位置に配置された変位電極及び固定電極からそれぞれ構成され、
前記検出回路は、
「前記第1容量素子の静電容量値と、前記第2容量素子の静電容量値と、の差」に相当する第1電気信号と、「前記第3容量素子の静電容量値と、前記第4容量素子の静電容量値と、の差」に相当する第2電気信号と、を作用したトルクを示す電気信号として出力し、
前記第1電気信号と前記第2電気信号との比率に基づいて、当該トルクセンサが正常に機能しているか否かを判定する。
【0017】
本発明によれば、高弾力部よりも低弾力部の方が先に金属疲労することに伴って、第1電気信号と第2電気信号との比率に変化が生じる。このことに着目して故障診断を行うことにより、トルク検出部を構成する弾性体が破断する前に当該弾性体に金属疲労が生じていること検出し、当該トルク検出部の故障を診断することが可能なトルクセンサを提供することができる。また、本発明においては、高弾力部及び低弾力部に各2つの容量素子が配置されているため、差分検出を行うことが可能である。このため、トルクを高精度に検出することができる。
【0018】
第1〜第4容量素子を構成する各固定電極及び各変位電極は、それぞれの容量素子ごとに個別的に形成され得る。あるいは、各固定電極及び各変位電極のうちの一方が共通電極として構成されていても良い。すなわち、 前記第1〜第4容量素子の各変位電極のうち少なくとも2つが共通の電極で構成されているか、または、前記第1〜第4容量素子の各固定電極のうち少なくとも2つが共通の電極で構成されていても良い。
【0019】
好ましくは、Z軸まわりのトルクが作用した結果、前記固定電極に対する前記変位電極の相対位置が変化した場合にも、前記第1〜第4容量素子を構成する各一対の電極の実効対向面積が変化しないように、前記第1〜第4容量素子のそれぞれの変位電極及び固定電極のうち一方の面積を他方の面積よりも大きく設定されている。
【0020】
この場合、Z軸まわりのトルクが作用しても第1〜第4容量素子を構成する各一対の電極の実効対向面積が変化しないため、トルクの検出精度とトルクセンサが正常に機能しているか否かの判定精度とを高めることができる。
【0021】
以上のようなトルクセンサにおいて、前記第2支持体は、前記環状変形体がYZ平面と交わる2つの領域において当該環状変形体に接続されていることが好ましい。この場合、作用したトルクによる環状変形体の変形が、原点Oに関して対称となるため、当該トルクの測定が容易である。
【0022】
好ましくは、XY平面上に、原点Oを通りX軸およびY軸に対して45°をなすV軸およびW軸を定義した場合に、Z軸方向から見ると、前記第1容量素子は正のV軸上に配置され、前記第2容量素子は正のW軸上に配置され、前記第3容量素子は負のV軸上に配置され、前記第4容量素子は負のW軸上に配置されている。
【0023】
この場合、各容量素子の静電容量値の変化について、第1及び第3容量素子が互いに同様の挙動を示し、第2及び第4容量素子が互いに同様の挙動を示す。このため、各容量素子の静電容量値の変化に基づくトルクの測定及びトルクセンサの故障診断のための処理が容易である。
【0024】
あるいは、本発明は、XYZ三次元座標系におけるZ軸まわりのトルクを検出するトルクセンサであって、
検出対象となるトルクの作用により弾性変形を生じる材質からなり、Z軸が挿通する貫通開口部を有する環状変形体と、
前記環状変形体がXZ平面と交わる2つの第1部位において当該環状変形体に接続された第1支持体と、
前記環状変形体がZ軸を含みXZ平面とは異なる平面と交わる2つの第2部位において当該環状変形体に接続され、前記第1支持体に対してZ軸まわりに回転可能な第2支持体と、
前記環状変形体に配置され、当該環状変形体の弾性変形に起因した変位を生じる変位電極と、
前記第1支持体のうち前記変位電極に対向する位置に配置された固定電極と、
前記変位電極と前記固定電極とによって構成される容量素子の静電容量値の変動量に基づいて、前記第1支持体及び前記第2支持体の一方に負荷がかかった状態において他方に作用したZ軸まわりのトルクを示す電気信号を出力する検出回路と、を備え、
前記環状変形体は、4つの高弾力部と、前記高弾力部のバネ定数よりも小さいバネ定数を有する4つの低弾力部と、が周方向に各1つずつ交互に配置されて構成され、
前記容量素子は、第1容量素子、第2容量素子、第3容量素子、第4容量素子、第5容量素子、第6容量素子、第7容量素子及び第8容量素子を有し、前記第1、第3、第5及び第7容量素子は、Z軸まわりのトルクが作用したときに、前記高弾力部のうち前記環状変形体と前記第1支持体との離間距離が変化する各1つの第1位置に配置された変位電極及び固定電極からそれぞれ構成され、前記第2、第4、第6及び第8容量素子は、Z軸まわりのトルクが作用したときに、前記低弾力部のうち前記環状変形体と前記第1支持体との離間距離が変化する各1つの第2位置に配置された変位電極及び固定電極からそれぞれ構成され
前記検出回路は、
「前記第1容量素子の静電容量値と前記第5容量素子の静電容量値との和と、前記第3容量素子の静電容量値と前記第7容量素子の静電容量値との和と、の差」に相当する第1電気信号と、「前記第2容量素子の静電容量値と前記第6容量素子の静電容量値との和と、前記第4容量素子の静電容量値と前記第8容量素子の静電容量値との和と、の差」に相当する第2電気信号と、を作用したトルクを示す電気信号として出力し、
前記第1電気信号と前記第2電気信号との比率に基づいて、当該トルクセンサが正常に機能しているか否かを判定する。
【0025】
本発明によれば、高弾力部よりも低弾力部の方が先に金属疲労することに伴って、第1電気信号と第2電気信号との比率に変化が生じる。このことに着目して故障診断を行うことにより、トルク検出部を構成する弾性体が破断する前に当該弾性体に金属疲労が生じていること検出し、当該トルク検出部の故障を診断することが可能なトルクセンサを提供することができる。また、本発明においては、高弾力部及び低弾力部に各4つの容量素子が配置されているため、高精度な差分検出を行うことが可能である。このため、トルクをより高精度に検出することができる。
【0026】
このようなトルクセンサにおいて、第1〜第8容量素子を構成する各固定電極及び各変位電極は、それぞれの容量素子ごとに個別的に形成され得る。あるいは、各固定電極及び各変位電極のうちの一方が共通電極として構成されていても良い。すなわち、前記第1〜第8容量素子の各変位電極のうち少なくとも2つが共通の電極で構成されているか、または、前記第1〜第8容量素子の各固定電極のうち少なくとも2つが共通の電極で構成されていても良い。
【0027】
好ましくは、Z軸まわりのトルクが作用した結果、前記固定電極に対する前記変位電極の相対位置が変化した場合にも、前記第1〜第8容量素子を構成する各一対の電極の実効対向面積が変化しないように、前記第1〜第8容量素子のそれぞれの変位電極及び固定電極のうち一方の面積を他方の面積よりも大きく設定されている。
【0028】
この場合、Z軸まわりのトルクが作用しても第1〜第8容量素子を構成する各一対の電極の実効対向面積が変化しないため、トルクの検出精度とトルクセンサが正常に機能しているか否かの判定精度とを高めることができる。
【0029】
以上のようなトルクセンサにおいて、前記第2支持体は、前記環状変形体がYZ平面と交わる2つの領域において当該環状変形体に接続されていることが好ましい。この場合、作用したトルクによる環状変形体の変形が、原点Oに関して対称となるため、当該トルクの測定が容易である。
【0030】
好ましくは、XY平面上に、原点Oを通りX軸およびY軸に対して45°をなすV軸およびW軸を定義した場合に、Z軸方向から見ると、前記第1高弾力部は、正のX軸と正のV軸とで区画された領域に配置され、前記第2高弾力部は、正のY軸と正のW軸とで区画された領域に配置され、前記第3高弾力部は、負のX軸と負のV軸とで区画された領域に配置され、前記第4高弾力部は、負のY軸と負のW軸とで区画された領域に配置され、前記第1低弾力部は、正のV軸と正のY軸とで区画された領域に配置され、前記第2低弾力部は、正のW軸と負のX軸とで区画された領域に配置され、前記第3低弾力部は、負のV軸と負のY軸とで区画された領域に配置され、前記第4低弾力部は、負のW軸と正のX軸とで区画された領域に配置され、前記第1容量素子は、前記第1高弾力部に配置されている。
【0031】
より具体的には、前記第1容量素子及び前記第2容量素子は、正のV軸近傍に、Z軸方向から見て当該V軸に関して対称的に配置され、
前記第3容量素子及び前記第4容量素子は、正のW軸近傍に、Z軸方向から見て当該W軸に関して対称的に配置され、
前記第5容量素子及び前記第6容量素子は、負のV軸近傍に、Z軸方向から見て当該V軸に関して対称的に配置され、
前記第7容量素子及び前記第8容量素子は、負のW軸近傍に、Z軸方向から見て当該W軸に関して対称的に配置されている。
【0032】
この場合、各容量素子の静電容量値の変化について、第1及び第5容量素子が互いに同様の挙動を示し、第2及び第6容量素子が互いに同様の挙動を示し、第3及び第7容量素子が互いに同様の挙動を示し、第4及び第8容量素子が互いに同様の挙動を示す。このため、各容量素子の静電容量値の変化に基づくトルクの測定及びトルクセンサの故障診断のための処理が容易である。
【0033】
また、以上のトルクセンサにおいて、高弾力部及び低弾力部は、各種の態様によって構成され得る。例えば、前記低弾力部は、前記環状変形体の径方向において、前記高弾力部よりも幅狭に構成され得る。あるいは、前記低弾力部は、Z軸方向において、前記高弾力部よりも肉薄に構成され得る。
【0034】
また、前記変位電極は、前記環状変形体の表面、具体的には、前記環状変形体の内周面、外周面、または、前記第1支持体に面する表面に配置されていることが好ましい。この場合、固定電極との間で容量素子を構成することが容易である。
【0035】
あるいは、本発明は、XYZ三次元座標系におけるZ軸まわりのトルクを検出するトルクセンサであって、
検出対象となるトルクの作用により弾性変形を生じる材質からなり、Z軸が挿通する貫通開口部を有する環状変形体と、
前記環状変形体がXZ平面と交わる2つの第1部位において当該環状変形体に接続された第1支持体と、
前記環状変形体がZ軸を含みXZ平面とは異なる平面と交わる2つの第2部位において当該環状変形体に接続され、前記第1支持体に対してZ軸まわりに回転可能な第2支持体と、
前記環状変形体の所定位置に配置され、当該環状変形体の弾性変形に起因した変位を生じる変位電極と、
前記第1支持体のうち前記変位電極に対向する位置に配置された固定電極と、
前記変位電極と前記固定電極とによって構成される容量素子の静電容量値の変動量に基づいて、前記第1支持体及び前記第2支持体の一方に負荷がかかった状態において他方に作用したZ軸まわりのトルクを示す電気信号を出力する検出回路と、を備え、
前記環状変形体は、当該前記環状変形体上に定義された2つの検出点に位置する第1及び第2検出部と、これらの第1及び第2検出部の両端に接続された連結部と、を有し、
前記第1及び第2検出部は、それぞれ、検出対象となるトルクの作用により弾性変形を生じる第1変形部と、検出対象となるトルクの作用により弾性変形を生じる第2変形部と、前記第1変形部および前記第2変形部の弾性変形により変位を生じる変位部と、を有し、
前記第1変形部の外側端はこれに隣接する連結部に接続され、前記第1変形部の内側端は前記変位部に接続され、前記第2変形部の外側端はこれに隣接する連結部に接続され、前記第2変形部の内側端は前記変位部に接続され、
前記第1検出部の前記第1及び第2変形部は、前記第2検出部の前記第1及び第2変形部のバネ定数よりも大きいバネ定数を有し、
前記容量素子は、第1容量素子及び第2容量素子を有し、各容量素子は、前記第1及び第2検出部のそれぞれの前記変位部に対応する位置に配置された変位電極及び固定電極から構成され、
前記検出回路は、
前記第1容量素子の静電容量値に相当する第1電気信号と、前記第2容量素子の静電容量値に相当する第2電気信号と、を作用したトルクを示す電気信号として出力し、
前記第1電気信号と前記第2電気信号との比率に基づいて、当該トルクセンサが正常に機能しているか否かを判定する。
【0036】
本発明によれば、第1検出部の第1及び第2変形部よりも第2検出部の第1及び第2変形部の方が先に金属疲労しバネ定数が低下するため、長期間の使用により第1電気信号と第2電気信号との比率に変化が生じる。このことに着目して故障診断を行うことにより、トルク検出部を構成する弾性体が破断する前に当該弾性体に金属疲労が生じていること検出し、当該トルク検出部の故障を診断することが可能なトルクセンサを提供することができる。
【0037】
第1及び第2容量素子を構成する各固定電極及び各変位電極は、それぞれの容量素子ごとに個別的に形成され得る。あるいは、各固定電極及び各変位電極のうちの一方が共通電極として構成されていても良い。すなわち、前記第1及び第2容量素子の各変位電極が共通の電極で構成されているか、または、前記第1及び第2容量素子の各固定電極が共通の電極で構成されていても良い。
【0038】
好ましくは、Z軸まわりのトルクが作用した結果、前記固定電極に対する前記変位電極の相対位置が変化した場合にも、前記第1及び第2容量素子を構成する各一対の電極の実効対向面積が変化しないように、前記第1及び第2容量素子のそれぞれの変位電極及び固定電極のうち一方の面積を他方の面積よりも大きく設定されている。
【0039】
この場合、Z軸まわりのトルクが作用しても第1及び第2容量素子を構成する各一対の電極の実効対向面積が変化しないため、トルクの検出精度とトルクセンサが正常に機能しているか否かの判定精度とを高めることができる。
【0040】
また、前記第2支持体は、前記環状変形体がYZ平面と交わる2つの領域において当該環状変形体に接続されていることが好ましい。この場合、作用したトルクによる環状変形体の変形が、原点Oに関して対称となるため、当該トルクの測定が容易である。
【0041】
好ましくは、XY平面上に、原点Oを通りX軸およびY軸に対して45°をなすV軸およびW軸を定義した場合に、Z軸方向から見ると、
前記第1容量素子は、正のV軸上に配置され、前記第2容量素子は、正のW軸上に配置されている。
【0042】
この場合、各容量素子の静電容量値の変化について、第1及び第2容量素子が互いに反対の挙動を示す。このため、各容量素子の静電容量値の変化に基づくトルクの測定及びトルクセンサの故障診断のための処理が容易である。
【0043】
以上の各トルクセンサにおいて、相対的にバネ定数が大きい第1検出部の第1及び第2変形部と相対的にバネ定数が小さい第2検出部の第1及び第2変形部とは、各種の態様によって構成され得る。例えば、前記第2検出部の前記第1及び第2変形部は、前記環状変形体の径方向において、前記第1検出部の前記第1及び第2変形部よりも幅狭に構成され得る。あるいは、前記第2検出部の前記第1及び第2変形部は、Z軸方向において、前記第1検出部の前記第1及び第2変形部よりも肉薄に構成され得る。
【0044】
あるいは、本発明は、XYZ三次元座標系におけるZ軸まわりのトルクを検出するトルクセンサであって、
検出対象となるトルクの作用により弾性変形を生じる材質からなり、Z軸が挿通する貫通開口部を有する環状変形体と、
前記環状変形体がXZ平面と交わる2つの第1部位において当該環状変形体に接続された第1支持体と、
前記環状変形体がZ軸を含みXZ平面とは異なる平面と交わる2つの第2部位において当該環状変形体に接続され、前記第1支持体に対してZ軸まわりに回転可能な第2支持体と、
前記環状変形体の所定位置に配置され、当該環状変形体の弾性変形に起因した変位を生じる変位電極と、
前記第1支持体のうち前記変位電極に対向する位置に配置された固定電極と、
前記変位電極と前記固定電極とによって構成される容量素子の静電容量値の変動量に基づいて、前記第1支持体及び前記第2支持体の一方に負荷がかかった状態において他方に作用したZ軸まわりのトルクを示す電気信号を出力する検出回路と、を備え、
前記環状変形体は、当該前記環状変形体上に定義された4つの検出点に位置する第1〜第4検出部と、これらの第1〜第4検出部の両端に接続された連結部と、を有し、
前記第1〜第4検出部は、それぞれ、検出対象となるトルクの作用により弾性変形を生じる第1変形部と、検出対象となるトルクの作用により弾性変形を生じる第2変形部と、前記第1変形部および前記第2変形部の弾性変形により変位を生じる変位部と、を有し、
前記第1変形部の外側端はこれに隣接する連結部に接続され、前記第1変形部の内側端は前記変位部に接続され、前記第2変形部の外側端はこれに隣接する連結部に接続され、前記第2変形部の内側端は前記変位部に接続され、
前記第1及び第4検出部の前記第1及び第2変形部は、前記第2及び第3検出部の前記第1及び第2変形部のバネ定数よりも大きいバネ定数を有し、
前記容量素子は、第1容量素子、第2容量素子、第3容量素子及び第4容量素子を有し、各容量素子は、前記第1〜第4検出部のそれぞれの前記変位部に対応する位置に配置された変位電極及び固定電極から構成され、
前記検出回路は、
「前記第1容量素子の静電容量値と前記第4容量素子の静電容量値との差」に相当する第1電気信号と、「前記第2容量素子の静電容量値と前記第3容量素子の静電容量値との差」に相当する第2電気信号と、を作用したトルクを示す電気信号として出力し、
前記第1電気信号と前記第2電気信号との比率に基づいて、当該トルクセンサが正常に機能しているか否かを判定する。
【0045】
本発明によれば、第1及び第4検出部の第1及び第2変形部よりも第2及び第3検出部の第1及び第2変形部の方が先に金属疲労しバネ定数が低下するため、長期間の使用により第1電気信号と第2電気信号との比率に変化が生じる。このことに着目して故障診断を行うことにより、トルク検出部を構成する弾性体が破断する前に当該弾性体に金属疲労が生じていること検出し、当該トルク検出部の故障を診断することが可能なトルクセンサを提供することができる。
【0046】
このようなトルクセンサにおいて、第1〜第4容量素子を構成する各固定電極及び各変位電極は、それぞれの容量素子ごとに個別的に形成され得る。あるいは、各固定電極及び各変位電極のうちの一方が共通電極として構成されていても良い。すなわち、 前記第1〜第4容量素子の各変位電極のうち少なくとも2つが共通の電極で構成されているか、または、前記第1〜第4容量素子の各固定電極のうち少なくとも2つが共通の電極で構成されていても良い。
【0047】
好ましくは、Z軸まわりのトルクが作用した結果、前記固定電極に対する前記変位電極の相対位置が変化した場合にも、前記第1〜第4容量素子を構成する各一対の電極の実効対向面積が変化しないように、前記第1〜第4容量素子のそれぞれの変位電極及び固定電極のうち一方の面積を他方の面積よりも大きく設定されている。
【0048】
この場合、Z軸まわりのトルクが作用しても第1及び第2容量素子を構成する各一対の電極の実効対向面積が変化しないため、トルクの検出精度とトルクセンサが正常に機能しているか否かの判定精度とを高めることができる。
【0049】
また、前記第2支持体は、前記環状変形体がYZ平面と交わる2つの領域において当該環状変形体に接続されていることが好ましい。この場合、作用したトルクによる環状変形体の変形が、原点Oに関して対称となるため、当該トルクの測定が容易である。
【0050】
好ましくは、XY平面上に、原点Oを通りX軸およびY軸に対して45°をなすV軸およびW軸を定義した場合に、Z軸方向から見ると、前記第1容量素子は、正のV軸上に配置され、前記第2容量素子は、正のW軸上に配置され、前記第3容量素子は、負のV軸上に配置され、前記第4容量素子は、負のW軸上に配置される。
【0051】
この場合、各容量素子の静電容量値の変化について、第1及び第4容量素子が互いに反対の挙動を示し、第2及び第3容量素子が互いに反対の挙動を示す。このため、各容量素子の静電容量値の変化に基づくトルクの測定及びトルクセンサの故障診断のための処理が容易である。
【0052】
以上の各トルクセンサにおいて、相対的にバネ定数が大きい第1検出部の第1及び第2変形部と相対的にバネ定数が小さい第2検出部の第1及び第2変形部とは、各種の態様で構成され得る。例えば、前記第2及び第3検出部の前記第1及び第2変形部は、前記環状変形体の径方向において、前記第1及び第4検出部の前記第1及び第2変形部よりも幅狭に構成され得る。あるいは、前記第2及び第3検出部の前記第1及び第2変形部は、Z軸方向において、前記第1及び第4検出部の前記第1及び第2変形部よりも肉薄に構成され得る。
【0053】
あるいは、本発明は、XYZ三次元座標系におけるZ軸まわりのトルクを検出するトルクセンサであって、検出対象となるトルクの作用により弾性変形を生じる材質からなり、Z軸が挿通する貫通開口部を有する環状変形体と、
前記環状変形体がXZ平面と交わる2つの第1部位において当該環状変形体に接続された第1支持体と、
前記環状変形体がZ軸を含みXZ平面とは異なる平面と交わる2つの第2部位において当該環状変形体に接続され、前記第1支持体に対してZ軸まわりに回転可能な第2支持体と、
前記環状変形体の所定位置に配置され、当該環状変形体の弾性変形に起因した変位を生じる変位電極と、
前記第1支持体のうち前記変位電極に対向する位置に配置された固定電極と、
前記変位電極と前記固定電極とによって構成される容量素子の静電容量値の変動量に基づいて、前記第1支持体及び前記第2支持体の一方に負荷がかかった状態において他方に作用したZ軸まわりのトルクを示す電気信号を出力する検出回路と、を備え、
前記環状変形体は、当該前記環状変形体上に定義された8つの検出点に位置する第1〜第8検出部と、これらの第1〜第8検出部の両端に接続された連結部と、を有し、
前記第1〜第8検出部は、それぞれ、検出対象となるトルクの作用により弾性変形を生じる第1変形部と、検出対象となるトルクの作用により弾性変形を生じる第2変形部と、前記第1変形部および前記第2変形部の弾性変形により変位を生じる変位部と、を有し、
前記第1変形部の外側端はこれに隣接する連結部に接続され、前記第1変形部の内側端は前記変位部に接続され、前記第2変形部の外側端はこれに隣接する連結部に接続され、前記第2変形部の内側端は前記変位部に接続され、
前記第1、第3、第5及び第7検出部の前記第1及び第2変形部は、前記第2、第4、第6及び第8検出部の前記第1及び第2変形部のバネ定数よりも大きいバネ定数を有し、
前記容量素子は、第1容量素子、第2容量素子、第3容量素子、第4容量素子、第5容量素子、第6容量素子、第7容量素子及び第8容量素子を有し、各容量素子は、前記第1〜第8検出部のそれぞれの前記変位部に対応する位置に配置された変位電極及び固定電極から構成され、
前記検出回路は、
「前記第1容量素子の静電容量値と前記第5容量素子の静電容量値との和と、前記第3容量素子の静電容量値と前記第7容量素子の静電容量値との和と、の差」に相当する第1電気信号と、「前記第2容量素子の静電容量値と前記第6容量素子の静電容量値との和と、前記第4容量素子の静電容量値と前記第8容量素子の静電容量値との和と、の差」に相当する第2電気信号と、を作用したトルクを示す電気信号として出力し、
前記第1電気信号と前記第2電気信号との比率に基づいて、当該トルクセンサが正常に機能しているか否かを判定する。
【0054】
本発明によれば、第1検出部の第1及び第2変形部よりも第2検出部の第1及び第2変形部の方が先に金属疲労しバネ定数が低下するため、長期間の使用により第1電気信号と第2電気信号との比率に変化が生じる。このことに着目して故障診断を行うことにより、トルク検出部を構成する弾性体が破断する前に当該弾性体に金属疲労が生じていること検出し、当該トルク検出部の故障を診断することが可能なトルクセンサを提供することができる。また、本発明においては、第1及び第2電気信号を各4つの容量素子により提供するため、高精度な差分検出を行うことが可能である。このため、トルクをより高精度に検出することができる。
【0055】
第1〜第8容量素子を構成する各固定電極及び各変位電極は、それぞれの容量素子ごとに個別的に形成され得る。あるいは、各固定電極及び各変位電極のうちの一方が共通電極として構成されていても良い。すなわち、前記第1〜第8容量素子の各変位電極のうち少なくとも2つが共通の電極で構成されているか、または、前記第1〜第8容量素子の各固定電極のうち少なくとも2つが共通の電極で構成され得る。
【0056】
好ましくは、Z軸まわりのトルクが作用した結果、前記固定電極に対する前記変位電極の相対位置が変化した場合にも、前記第1〜第4容量素子を構成する各一対の電極の実効対向面積が変化しないように、前記第1〜第4容量素子のそれぞれの変位電極及び固定電極のうち一方の面積を他方の面積よりも大きく設定されている。
【0057】
この場合、Z軸まわりのトルクが作用しても第1〜第8容量素子を構成する各一対の電極の実効対向面積が変化しないため、トルクの検出精度とトルクセンサが正常に機能しているか否かの判定精度とを高めることができる。
【0058】
また、前記第2支持体は、前記環状変形体がYZ平面と交わる2つの領域において当該環状変形体に接続されていることが好ましい。この場合、作用したトルクによる環状変形体の変形が、原点Oに関して対称となるため、当該トルクの測定が容易である。
【0059】
好ましくは、Z軸方向から見ると、前記第1容量素子は、原点Oを通り正のX軸に対して30°の角度をなす直線上に配置され、前記第2容量素子は、原点Oを通り正のX軸に対して60°の角度をなす直線上に配置され、前記第3容量素子は、原点Oを通り正のX軸に対して120°の角度をなす直線上に配置され、前記第4容量素子は、原点Oを通り正のX軸に対して150°の角度をなす直線上に配置され、前記第5容量素子は、原点Oを通り正のX軸に対して210°の角度をなす直線上に配置され、前記第6容量素子は、原点Oを通り正のX軸に対して240°の角度をなす直線上に配置され、前記第7容量素子は、原点Oを通り正のX軸に対して300°の角度をなす直線上に配置され、前記第8容量素子は、原点Oを通り正のX軸に対して330°の角度をなす直線上に配置されている。
【0060】
この場合、各容量素子の静電容量値の変化について、第1及び第5容量素子が互いに同様の挙動を示し、第3及び第7容量素子が互いに同様の挙動を示し、第2及び第6容量素子が互いに同様の挙動を示し、第4及び第8容量素子が互いに同様の挙動を示す。このため、各容量素子の静電容量値の変化に基づくトルクの測定及びトルクセンサの故障診断のための処理が容易である。
【0061】
以上の各トルクセンサにおいて、バネ定数が相対的に大きい第1検出部の第1及び第2変形部とバネ定数が相対的に小さい第2検出部の第1及び第2変形部とは、各種の態様によって構成され得る。例えば、前記第2、第4、第6及び第8検出部の前記第1及び第2変形部は、前記環状変形体の径方向において、前記第1、第3、第5及び第7検出部の前記第1及び第2変形部よりも幅狭に構成され得る。あるいは、前記第2、第4、第6及び第8検出部の前記第1及び第2変形部は、Z軸方向において、前記第1、第3、第5及び第7検出部の前記第1及び第2変形部よりも肉薄に構成され得る。
【0062】
好ましくは、前記検出回路は、当該トルクセンサが正常に機能している状態における前記第1電気信号と前記第2電気信号との比率を基準比率として記憶する記憶部を有し、
前記第1電気信号と前記第2電気信号との比率と、前記基準比率と、の差が所定の範囲内にあるか否かを判定することによって、当該トルクセンサが正常に機能しているか否かを判定する。
【0063】
この場合、第1電気信号と第2電気信号との比率を基準比率と比較するため、環状変形体に金属疲労が生じていることを確実に検出することが可能である。
【0064】
以上のトルクセンサにおいて、作用したトルクが前記第1電気信号に基づいて計測され得る。この場合、バネ定数が相対的に大きい検出部の第1及び第2変形部は、バネ定数が相対的に小さい検出部の第1及び第2変形部よりも金属疲労が緩やかに発現するため、環状変形体に対して荷重が繰り返し作用しても、安定的に第1電気信号を提供することができる。
【0065】
あるいは、作用したトルクが前記第2電気信号に基づいて計測されても良い。この場合、第2電気信号を提供する容量素子に対応する検出部の第1及び第2変形部は、バネ定数が相対的に小さいため、作用したトルクに対して相対的に大きく変位する(感度が高い)ため、S/Nに優れたトルクの計測が可能となる。
【0066】
また、環状変形体、第1支持部材及び第2支持部材の配置としては、次のような態様が可能である。すなわち、前記第1支持体は、前記環状変形体のZ軸の一側に配置され、
前記第2支持体は、前記環状変形体のZ軸の他側に配置され、
前記環状変形体は、第1接続部材を介して前記第1支持体に接続され、第2接続部材を介して前記第2支持体に接続される。
【0067】
あるいは、前記第1支持体は、前記環状変形体の内周面の内側に配置され、
前記第2支持体は、前記環状変形体の外周面の外側に配置され、
前記環状変形体は、第1接続部材を介して前記第1支持体に接続され、第2接続部材を介して前記第2支持体に接続される。
【0068】
前者の場合は、トルクセンサの直径を小さく構成でき、後者の場合は、トルクセンサの厚み(Z軸方向の寸法)を小さく構成することができる。これらは、トルクセンサが設置されるスペースに応じて適宜選択することができる。
【0069】
もちろん、他の例として、これらの配置を組み合わせてもよい。すなわち、前記第1支持体は、前記環状変形体の内周面の内側または外周面の外側に配置され、
前記第2支持体は、前記環状変形体のZ軸の一側に配置され、
前記環状変形体は、第1接続部材を介して前記第1支持体に接続され、第2接続部材を介して前記第2支持体に接続される。
【0070】
あるいは、前記第1支持体は、前記環状変形体のZ軸の一側に配置され、
前記第2支持体は、前記環状変形体の内周面の内側または外周面の外側に配置され、
前記環状変形体は、第1接続部材を介して前記第1支持体に接続され、第2接続部材を介して前記第2支持体に接続される。
【発明を実施するための形態】
【0072】
本発明によるトルクセンサで採用されているトルクの検出原理自体は、従来のトルクセンサと共通しているため、まず、§1〜§3において従来のトルクセンサの構造とトルクの検出原理とを説明する。そして、この説明に基づいて、§4〜§6において本発明によるトルクセンサの実施の形態を説明することとする。更に、他の例として、§7及び§8において波形の検出部を採用したトルクセンサの構造とトルクの検出原理とを説明し、§9〜§11において、波形の検出部を採用した本発明によるトルクセンサの実施の形態を説明することとする。§7及び§8において説明される波形の検出部を採用したトルクセンサは、本出願人によって出願された国際特許出願PCT/JP2015/052783において提案されている。更に、いずれの実施例に対しても適用可能な変形例について§12及び§13で説明する。
【0073】
<<< §1. 従来のトルクセンサの基本構造部 >>>
図1は、従来のトルクセンサの基本構造部の分解斜視図である。図示されるように、この基本構造部は、左側支持体10と右側支持体20との間に、環状変形体30を配置し、これら3つの構成要素を相互に接合することによって構成される。ここでは、便宜上、図示のとおりXYZ三次元座標系を定義して、以下の説明を行うことにする。ここで、
図1の水平方向に描かれたZ軸が、検出対象となるトルクの回転軸に相当し、このトルクセンサは、この回転軸まわり(Z軸まわり)のトルクを検出する機能を果たすことになる。
【0074】
図1の中央に配置された環状変形体30は、検出対象となるトルクの作用により弾性変形を生じる材質からなり、その内部には、回転軸(Z軸)が挿通する貫通開口部H30が形成されている。一方、
図1の左側に配置された左側支持体10は、環状変形体30の左側面を支持する部材であり、
図1の右側に配置された右側支持体20は、環状変形体30の右側面を支持する部材である。ここに示す例の場合、左側支持体10は、回転軸(Z軸)が挿通する貫通開口部H10が形成された環状部材であり、右側支持体20は、回転軸(Z軸)が挿通する貫通開口部H20が形成された環状部材である。
【0075】
なお、一般に右側および左側という概念は、特定の観察方向から見た場合にのみ意味をもつ概念であるが、ここでは説明の便宜上、
図1に示すとおり、回転軸(Z軸)が左右に伸びる水平線をなすような基準観察方向(右方向がZ軸の正方向となるような観察方向)から見たときに、環状変形体30の左側に隣接する位置に配置された支持体を左側支持体10と呼び、環状変形体30の右側に隣接する位置に配置された支持体を右側支持体20と呼ぶことにする。
【0076】
ここでは、環状変形体30の中心位置にXYZ三次元座標系の原点Oを定義しており、左側支持体10,環状変形体30,右側支持体20は、いずれもZ軸を中心軸とする円環状の部材によって構成されている。より具体的には、環状変形体30は、Z軸(回転軸)を中心軸として配置された円盤の中央部に、より径の小さな同心円盤の形状をした貫通開口部H30を形成することにより得られる円環状の部材からなる。同様に、左側支持体10および右側支持体20も、Z軸(回転軸)を中心軸として配置された円盤の中央部に、より径の小さな同心円盤の形状をした貫通開口部H10,H20を形成することにより得られる円環状の部材からなる。もちろん、貫通開口部H10、H20が設けられていなくても良く、左側支持体10と右側支持体20は円盤でも良い。
【0077】
一方、左側支持体10の右側面には、右方に突出した2つの扇形の凸状部11,12が設けられており、この凸状部11,12の頂面が環状変形体30の左側面に接合されている。図示のとおり、凸状部11は環状変形体30の上部(Y軸正方向に位置する部分)に接合され、凸状部12は環状変形体30の下部(Y軸負方向に位置する部分)に接合される。同様に、右側支持体20の左側面には、左方に突出した2つの扇形の凸状部21,22が設けられており、この凸状部21,22の頂面が環状変形体30の右側面に接合されている。図示のとおり、凸状部21は環状変形体30の奥の部分(X軸正方向に位置する部分)に接合され、凸状部22は環状変形体30の手前の部分(X軸負方向に位置する部分)に接合される。
【0078】
図2は、
図1に示す3つの構成要素を相互に接合することにより得られるトルクセンサの基本構造部の側面図であり、
図3は、この基本構造部をYZ平面で切断した側断面図である。ここに示す例の場合、
図3に示すとおり、凸状部11,12は、左側支持体10と一体となった構造体であり、その頂面が環状変形体30の左側面に接合されている。同様に、凸状部21,22は、右側支持体20と一体となった構造体であり、その頂面が環状変形体30の右側面に接合されている。
【0079】
結局、凸状部11,12は、環状変形体30の左側支持体10に対向する左側の側面上の左側接続点を、左側支持体10に接続する左側接続部材として機能し、凸状部21,22は、環状変形体30の右側支持体20に対向する右側の側面上の右側接続点を、右側支持体20に接続する右側接続部材として機能する。
【0080】
図4は、左側支持体10および凸状部11,12を
図1の右方向から見た正面図、
図5は、環状変形体30を
図1の右方向から見た正面図、
図6は、右側支持体20および凸状部21,22を
図1の右方向から見た正面図である。
図4において、凸状部11,12の中心位置に示されている点P11,P12は左側接続点であり、§2において、環状変形体30に対する接続位置を説明するために用いられる。同様に、
図6において、凸状部21,22の中心位置に示されている点P21,P22は右側接続点であり、やはり§2において、環状変形体30に対する接続位置を説明するために用いられる。
【0081】
なお、
図4に示す部品(左側支持体10および凸状部11,12)と
図6に示す部品(右側支持体20および凸状部21,22)とは、実際には、全く同一のものにするのが好ましい。この場合、
図4に示す部品をY軸を回転軸として180°回転させて裏返し、更に、Z軸を回転軸として90°回転させれば、
図6に示す部品に完全に一致する。したがって、実際には、
図4に示す部品を2組用意し、
図5に示す部品を1組用意すれば、
図2に示す基本構造部を構成することができる。
【0082】
図5に示すとおり、環状変形体30には、円形の貫通開口部H30が設けられているが、これは、検出に必要な弾性変形を生じさせるためのものである。後述するように、この基本構造部に検出対象となるトルクが作用した場合、環状変形体30は楕円形に変形する必要がある。このような環状変形体30の弾性変形のしやすさは、センサの検出感度を左右するパラメータになる。弾性変形しやすい環状変形体30を用いれば、微小なトルクでも検出可能な感度の高いセンサを実現することができるが、検出可能なトルクの最大値は抑制されることになる。逆に、弾性変形しにくい環状変形体30を用いれば、検出可能なトルクの最大値を大きくとることができるが、感度は低下するため、微小なトルクの検出はできなくなる。
【0083】
環状変形体30の弾性変形のしやすさは、Z軸方向の厚み(薄くするほど弾性変形しやすい)および貫通開口部H30の径(大きくするほど弾性変形しやすい)に依存して決まり、更に、その材質にも依存して決まる。したがって、実用上は、トルクセンサの用途に応じて、環状変形体30の各部の寸法や材質を適宜選択すればよい。
【0084】
一方、左側支持体10および右側支持体20は、本発明の検出原理上、弾性変形を生じる部材である必要はない。むしろ、作用したトルクが環状変形体30の変形に100%寄与するようにするためには、左側支持体10および右側支持体20は、完全な剛体である方が好ましい。図示の例において、左側支持体10および右側支持体20として、中心部に貫通開口部H10,H20を有する環状の構造体を用いた理由は、弾性変形しやすくするためではなく、回転軸(Z軸)に沿って、左側支持体10、環状変形体30、右側支持体20の各貫通開口部H10,H30,H20を貫く挿通孔が確保されるようにするためである。
【0085】
図3の側断面図を見れば明らかなように、この基本構造部は、内部が中空となる構造を採っている。このような中空部分を有するトルクセンサを、ロボットアームの関節部分に組み込んで利用する場合、この中空部分に減速機などを配置することができ、総合的に省スペースのロボットアームを設計することが可能になる。これは、中実丸棒形状をしたトーションバーのねじれを利用する従来型のトルクセンサでは実現困難であった利点のひとつである。
【0086】
このように、本発明に係るトルクセンサでは、環状変形体30は、トルク検出に必要な程度の弾性変形を生じる材質で構成する必要があるが、左側支持体10および右側支持体20は、弾性変形を生じる必要はなく、むしろ剛性の高い材質を用いて構成するのが好ましい。実用上、左側支持体10,右側支持体20,環状変形体30の材料としては、絶縁材料を利用するのであれば、プラスチックなどの合成樹脂を用いれば十分であり、導電材料を利用するのであれば(この場合、後述するように、電極が短絡しないよう必要箇所に絶縁を施す必要がある)、ステンレス、アルミニウムなどの金属を用いれば十分である。もちろん、絶縁材料と導電材料とを組み合わせて利用してもかまわない。
【0087】
左側支持体10、右側支持体20、環状変形体30は、いずれも軸方向の厚みが小さな扁平構造体によって構成することができるので、センサ全体の軸長を短く設定することが可能になる。また、環状変形体30の形状の変位によってトルク検出が行われるので、環状変形体30としては、弾性変形を生じる材質を用いる必要があるものの、比較的高い剛性をもった材質を利用しても、高精度の検出が可能になる。
【0088】
<<< §2. 本発明におけるトルクの検出原理 >>>
続いて、ここでは、§1で述べた基本構造部にトルクが作用した場合、各部がどのように変形するかを考えてみる。
図7は、
図2に示す基本構造部をXY平面で切断し、
図2の左方向から見た断面図である。なお、この
図7に示されたXY座標系は、通常のXY座標系を裏側から見たものになる(X軸正方向は図の左方向になる)。したがって、このXY座標系では、左上領域が第1象限、右上領域が第2象限、右下領域が第3象限、左下領域が第4象限になる。図示のI〜IVは、この座標系の各象限を示すものである。
図7にハッチングを施した断面部分は、環状変形体30の部分に相当し、その奥に、右側支持体20が見えている。
図7の点P11〜P22は、
図4および
図6に示した各接続点P11〜P22のXY平面上への正射影投影像である。
【0089】
すなわち、
図7において、Y軸上に配置された点P11,P12は、左側支持体10の凸状部11,12の接合位置(接合面の中心点)を示しており、X軸上に配置された点P21,P22は、右側支持体20の凸状部21,22の接合位置(接合面の中心点)を示している。結局、環状変形体30の左側面は、Y軸に沿った2箇所の接続点P11,P12において左側支持体10に接合され、環状変形体30の右側面は、X軸に沿った2箇所の接続点P21,P22において右側支持体20に接合されていることになる。
【0090】
このように、環状変形体30の上下の2箇所を左側支持体10に接合し、左右の2箇所を右側支持体20に接合して、各接続点が90°ずつずれるようにすれば、トルクの作用によって、環状変形体30を効率的に変形させることができる。
【0091】
図7に示す例の場合、環状変形体30の両側面をXY平面上に投影して正射影投影像を得た場合に、第1の右側接続点P21の投影像が正のX軸上、第2の右側接続点P22の投影像が負のX軸上、第1の左側接続点P11の投影像が正のY軸上、第2の左側接続点P12の投影像が負のY軸上に配置されていることになる。このような配置を行うと、環状変形体30を軸対称性をもった楕円に変形させることができるので、軸対称性をもった検出値を得ることができる。
【0092】
本発明に係るトルクセンサは、
図2に示す基本構造部において、左側支持体10と右側支持体20との間に相対的に加わるトルク(回転モーメント)を検出するものであり、検出値は、両支持体10,20間に相対的に作用する力を示すものである。そこで、ここでは説明の便宜上、右側支持体20に負荷がかかった状態において、左側支持体10に加わった回転モーメントを検出対象となるトルクとして考えることにする(もちろん、左側支持体10に負荷がかかった状態において、右側支持体20に加わった回転モーメントを検出対象となるトルクとしても等価である。)。
【0093】
たとえば、ロボットアームの関節部分にこのトルクセンサを利用した一例として、左側支持体10にモータなどの駆動源を取り付け、右側支持体20にロボットハンドを取り付けた例を考えてみよう。ロボットハンドに重量のある物体が把持されている状態で、駆動源から左側支持体10に対して回転駆動力を加えたとすると、この回転駆動力が関節部分を構成する基本構造部を介して、ロボットハンド側へと伝達されることになる。この場合、右側支持体20を回転駆動させようとするトルクが作用することになり、当該トルクは、右側支持体20を固定した状態において、左側支持体10に加わった回転モーメントに相当する。
【0094】
さて、このような回転モーメントが、
図7に示す構造体にどのような変化をもたらすかを考えてみる。右側支持体20を固定すると、
図7に示すX軸上の接続点P21,P22の位置は固定状態となる。一方、左側支持体10に対して、たとえば、
図7において時計まわりの方向に回転モーメントが加わったとすると、Y軸上の接続点P11,P12は時計まわりに移動しようとする。そうなると、必然的に、第1象限Iに位置する円弧P21−P11の部分は内側方向に縮み、第2象限IIに位置する円弧P11−P22の部分は外側に膨らみ、第3象限IIIに位置する円弧P22−P12の部分は内側方向に縮み、第4象限IVに位置する円弧P12−P21の部分は外側に膨らむことになる。
【0095】
図8は、
図7に示す構造体に、このような変形が生じた状態を示す断面図である。すなわち、
図2に示す基本構造部にZ軸正まわりのトルクが作用した場合に、この基本構造部をXY平面で切断し、
図2の左方向から見た断面図である。なお、本願では、任意の座標軸に関して、右ねじを当該座標軸の正方向に進めるための回転方向を正方向と定義し、右ねじを当該座標軸の負方向に進めるための回転方向を負方向と定義している。したがって、
図8において、Z軸正まわりのトルクは、図に白抜き矢印で示すとおり時計まわりの方向に作用するトルクということになる。
【0096】
図8に描かれた破線は、環状変形体30の変形前の状態(
図7の状態)を示している。この破線を参考にすれば、Z軸正まわりのトルクが作用したことにより、環状変形体30は楕円形に変形していることが容易に把握できよう。ここでは、説明の便宜上、XY平面上に、原点Oを通りX軸およびY軸に対して45°をなすV軸およびW軸を定義する。V軸は第1象限Iを正方向とする座標軸であり、W軸は第2象限IIを正方向とする座標軸である。図示のとおり、環状変形体30は、V軸を短軸方向、W軸を長軸方向とする楕円に変形しており、V軸およびW軸に対して軸対称性を有している。このような軸対称性は、§3で述べる方法でトルクの検出値を得る場合に好都合である。
【0097】
図示の実施形態において、軸対称性をもった変形が生じるのは、
図7に示すとおり、無負荷時(トルクが作用していない時)に環状変形体30が完全な円形をしており、環状変形体30の両側面をXY平面上に投影して正射影投影像を得た場合に、第1の右側接続点P21の投影像が正のX軸上、第2の右側接続点P22の投影像が負のX軸上、第1の左側接続点P11の投影像が正のY軸上、第2の左側接続点P12の投影像が負のY軸上に配置されているためである。
【0098】
作用したトルクが大きければ大きいほど、環状変形体30はより扁平した楕円に変形することになる。したがって、
図8において、環状変形体30のV軸上に位置する部分の原点Oからの距離や、環状変形体30のW軸上に位置する部分の原点Oからの距離を測定することができれば(これらの距離は、破線で示す変形前の位置からの変位量を示す情報になる)、作用したトルクの大きさを求めることができる。別言すれば、環状変形体30の内周面もしくは外周面の径方向の変位を測定することができればよい。
【0099】
一方、逆向きにトルクが作用した場合、すなわち、Z軸負まわりのトルクが作用した場合は、
図8に示す例とは逆に、環状変形体30(の接続点P11,P12)に対して反時計まわりの回転力が作用するため、環状変形体30は、V軸を長軸方向、W軸を短軸方向とする楕円に変形する。したがって、環状変形体30のV軸上に位置する部分あるいはW軸上に位置する部分の変位方向は、
図8に示す例とは逆の方向になる。
【0100】
結局、環状変形体30のV軸上に位置する部分あるいはW軸上に位置する部分の変位を測定すれば、作用したトルクの方向および大きさの双方を検出することが可能になる。たとえば、環状変形体30の内周面とV軸との交点の位置をモニタした場合、破線で示す基準位置から内側方向に変位した場合はZ軸正まわりのトルクが加わっており、外側方向に変位した場合はZ軸負まわりのトルクが加わっていると判断できる。あるいは、環状変形体30の内周面とW軸との交点の位置をモニタした場合、破線で示す基準位置から外側方向に変位した場合はZ軸正まわりのトルクが加わっており、内側方向に変位した場合はZ軸負まわりのトルクが加わっていると判断できる。もちろん、変位量の絶対値は、作用したトルクの大きさを示すものになる。
【0101】
本発明に係るトルクセンサにおいて生じる環状変形体30の径方向の変位は、環状変形体30に生じたねじれ角度が小さくても、環状変形体の径次第で比較的大きな変位になる。このため、比較的剛性が高い環状変形体30を用いたとしても、十分な感度をもったトルク検出が可能になる。
【0102】
以上が、本発明におけるトルクの検出原理である。本発明では、このような原理に基づくトルク検出を行うために、これまで述べてきた基本構造部に、更に、容量素子と検出回路とが付加される。
【0103】
<<< §3. 容量素子と検出回路 >>>
トルクセンサは、
図3に示す基本構造部に、更に、容量素子と検出回路が付加されて構成されることになる。
図8に示すように、トルクの作用により、環状変形体30は楕円に変形する。このような変形により、最も大きな変位を生じる部分は、V軸上に位置する部分あるいはW軸上に位置する部分であるから、環状変形体30の特定部分の変位に基づいて、環状変形体30の変形量(作用したトルクの大きさ)を測定するには、V軸上に位置する部分あるいはW軸上に位置する部分の変位を測定するのが最も効率的である。
【0104】
そこで、ここで述べる実施形態では、環状変形体30の内周面のV軸上に位置する領域およびW軸上に位置する領域に変位電極を形成している。
図9は、内周面に変位電極E31、E32を形成した状態の環状変形体30を、
図2の左方向から見た平面図である。説明の便宜上、X,Y,V,W軸が重ねて描かれている。変位電極E31は、V軸の正の領域と環状変形体30の内周面との交差領域に形成された電極であり、変位電極E32は、W軸の正の領域と環状変形体30の内周面との交差領域に形成された電極である。これら変位電極E31の奥行き寸法(
図9の紙面に垂直方向の寸法)は、環状変形体30の奥行き寸法に等しい。この例の場合、変位電極E31、E32は、環状変形体30の内周面に、蒸着やメッキ等の方法で形成された金属膜などの導電層によって構成されている。もちろん、環状変形体30がアルミニウムやステンレスのような金属でできている場合は、環状変形体30自体が導電性をもつため、絶縁層を介して変位電極E31、E32を形成する必要がある。
【0105】
一方、これら変位電極E31、E32に対向する位置には、固定電極E21、E22が配置され、右側支持体20に固定されている。
図10は、これら固定電極E21、E22を取り付けた状態の右側支持体20を、
図2の左方向から見た平面図である。ここでも、説明の便宜上、X,Y,V,W軸が重ねて描かれている。固定電極E21は、V軸の正の領域に配置され、変位電極E31に対向している。固定電極E22は、W軸の正の領域に配置され、変位電極E32に対向している。
【0106】
図11は、
図10に示す右側支持体20の側面図である。図示のとおり、固定電極E21は、右側支持体20の左側面から回転軸に沿った方向(Z軸負方向)に突き出した導電板によって構成されている。なお、固定電極E21は、固定電極E22の奥に隠れているため、
図11には現れていない。
【0107】
図12は、
図3に示す基本構造部に変位電極および固定電極を付加した構造体をVZ平面で切断した側断面図である。
図3がYZ平面で切断した側断面図であるのに対して、
図12はVZ平面で切断した側断面図であるため、
図12の上方は、Y軸方向ではなく、
図9および
図10に示すV軸方向となっている。この
図12の側断面図には、V軸上に配置された変位電極E31と固定電極E21とが互いに対向している状態が明瞭に示されている。変位電極E31、E32は、環状変形体30の内周面に固着された電極であるため、環状変形体30の変形に依存して変位する。一方、固定電極E21、E22は、右端が右側支持体20に固定されており、環状変形体30の変形にかかわらず、常に一定の位置を保つことになる。
【0108】
結局、変位電極E31の固定電極E21に対する相対位置及び変位電極E32の固定電極E22に対する相対位置は、環状変形体30の変形に依存して変化することになる。別言すれば、変位電極E31と固定電極E21との電極間距離及び変位電極E32と固定電極E22との電極間距離は、環状変形体30の変形に依存して変化する。
【0109】
図13は、
図2に示す基本構造部に上述した変位電極および固定電極を付加した構造体をXY平面で切断し、
図2の左方向から見た断面図である。この断面図では、V軸上に配置された変位電極E31、E32と固定電極E21、E22とが互いに対向した状態が明瞭に示されている。
【0110】
本実施の形態の場合、変位電極E31、E32は、環状変形体30の内周面に形成された導電層によって構成されているため、その表面は環状変形体30の内周に沿った曲面になる。そこで、これらに対向する固定電極E21、E22も、曲面状の電極にしている。別言すれば、変位電極E31、E32や固定電極E21、E22の表面は、Z軸を中心軸とした同心状の円柱表面によって構成されている。もっとも、各電極の表面形状は容量素子を構成する役割を果たすことができれば、どのような形状であってもよいので、表面が平面となる平板状の電極を用いてもかまわない。
【0111】
なお、本願図面では、図示の便宜上、各変位電極および各固定電極の厚みの実寸を無視して描いてある。たとえば、変位電極E31、E32を、環状変形体30の内周面に形成された導電層(蒸着層やメッキ層)によって構成した場合、その厚みは、数μm程度に設定することができる。これに対して、固定電極E21、E22を、右側支持体20の左側面から突き出した導電板(金属板)によって構成した場合、実用上の強度を確保するために、その厚みは、数mm程度確保するのが好ましい。したがって、
図13等では、便宜上、変位電極の厚みと固定電極の厚みを同じ寸法で描いてあるが、これら電極の厚みの実寸は、製造工程や実用上の強度を考慮して、それぞれ適当な値に設定されるべきものである。
【0112】
図14は、
図13に示す基本構造部に対して、Z軸正まわりのトルクが作用したときの状態を示すXY断面図である。§2で述べたとおり、このようなトルクが作用すると、環状変形体30は楕円状に変形し、V軸は当該楕円の短軸方向、W軸は当該楕円の長軸方向になる。その結果、V軸上に配置された一対の電極E21,E31の電極間隔は狭まり、W軸上に配置された一対の電極E23,E33の電極間隔は広がることになる。そこで、一対の電極E21,E31により容量素子C11を構成し、一対の電極E22,E32により容量素子C12を構成しておけば、この容量素子C11、C12の静電容量値の変動量として、作用したトルクの方向および大きさを検出することが可能になる。
【0113】
たとえば、
図13に示す無負荷状態(トルクが作用していない状態)を基準として、電極E21,E31からなる容量素子C11の静電容量値の変動に着目すると、
図14に示すようにZ軸正まわりのトルクが作用すると、電極間隔が狭まるため、静電容量値は増加する。逆に、Z軸負まわりのトルクが作用すると、電極間隔が広がるため、静電容量値は減少する。したがって、静電容量値の増加変動はZ軸正まわりのトルクが作用していることを示し、静電容量値の減少変動はZ軸負まわりのトルクが作用していることを示すことになる。もちろん、変動量の絶対値は、作用したトルクの大きさを示すことになる。
【0114】
同様に、電極E22,E32からなる容量素子C12の静電容量値の変動に着目すると、
図14に示すようにZ軸正まわりのトルクが作用すると、電極間隔が広がるため、静電容量値は減少する。逆に、Z軸負まわりのトルクが作用すると、電極間隔が狭まるため、静電容量値は増加する。したがって、静電容量値の減少変動はZ軸正まわりのトルクが作用していることを示し、静電容量値の増加変動はZ軸負まわりのトルクが作用していることを示すことになる。もちろん、変動量の絶対値は、作用したトルクの大きさを示すことになる。
【0115】
結局、2つの容量素子C11、C12のうちいずれを用いても、Z軸まわりのトルク検出が可能であり、理論的には、いずれか1つの容量素子のみを用いれば足りる。ただし、実用上は、2つの容量素子C11、C12の双方を用いた検出を行うのが好ましい。すなわち、環状変形体30が楕円に変形した際の短軸位置(V軸上)に容量素子C11を設けておき、長軸位置(W軸上)に容量素子C12を設けておけば、同一のトルクが加わった場合、短軸位置(V軸上)では電極間隔が狭まり静電容量値が増加するのに対して、長軸位置(W軸上)では電極間隔が広がり静電容量値が減少するので、2つの静電容量値C11とC12との差分として、作用したトルクを検出することができる。
【0116】
<<< §4. 本発明に係る2電極タイプのトルクセンサの実施例 >>>
次に、
図15乃至
図19を参照して、本発明に係る2電極タイプのトルクセンサの実施例について説明する。
【0117】
図15は、本発明による2電極タイプのトルクセンサの基本構造部を示すXY断面図である。
図15に示すように、本実施の形態の環状変形体30は、高弾力部30aと、この高弾力部30aのバネ定数よりも小さいバネ定数を有する低弾力部30bと、を有している。本実施の形態では、環状変形体30のうち、Y座標が正である領域に配置されている半円環状の部分が高弾力部30aとして構成され、Y座標が負の領域に配置されている残りの半円環状の部分が低弾力部30bとして構成されている。高弾力部30aと低弾力部30bとを具現化する手段としては種々の態様が考えられるが、ここでは、図示されるように、高弾力部30aの径方向の肉厚を低弾力部30bの径方向の肉厚よりも大きくすることによって、当該高弾力部30aのバネ定数を低弾力部30bのバネ定数よりも大きくしている。
【0118】
もちろん、高弾力部30aのZ軸方向の肉厚を低弾力部30bのZ軸方向の肉厚よりも大きくすることによって、当該高弾力部30aのバネ定数を低弾力部30bのバネ定数より大きくすることも可能であるし、高弾力部30aと低弾力部30bとを異なる材質で構成することによって、当該高弾力部30aのバネ定数を低弾力部30bのバネ定数より大きくすることも可能である。
【0119】
また、
図15に示す例においては、高弾力部30aと低弾力部30bとが内周面に段差が生じないように接続され、Z軸方向から見て、環状変形体30の内周面が円形となっている。換言すれば、原点Oから環状変形体30の内周面がV軸及びW軸と交わる4つの部位までの距離が全て等しくなっている。そして、図示されるように、この4つの部位に対応する位置に、各1つの変位電極E31a、E32a、E31b、E32bが配置されている。詳述すれば、変位電極E31aは、V軸の正の領域と環状変形体30の高弾力部30aの内周面とが交わる領域に形成された電極であり、変位電極E32aは、W軸の正の領域と環状変形体30の高弾力部30aの内周面とが交わる領域に形成された電極である。また、変位電極E31bは、V軸の負の領域と環状変形体30の低弾力部30bの内周面とが交わる領域に形成された電極であり、変位電極E32bは、W軸の負の領域と環状変形体30の低弾力部30bの内周面とが交わる領域に形成された電極である。
【0120】
そして、これら変位電極E31a、E32a、E31b、E32bに対向する位置には、固定電極E21a、E22a、E21b、E22bがそれぞれ配置され、右側支持体20に固定されている。右側支持体20及び左側支持体10の構成は、前述した従来のトルクセンサと同様であるため、その詳細な説明は省略する。ここでは、高弾力部30a及び低弾力部30bに各2つの容量素子を配置したトルクセンサを、2電極タイプのトルクセンサと呼ぶことにする。
【0121】
図16は、本実施の形態のトルクセンサにZ軸正まわりのトルクが作用した時の
図15の基本構造部の変形状態を示すXY断面図である。§2で述べたとおり、このようなトルクが作用すると、環状変形体30は楕円状に変形し、V軸は当該楕円の短軸方向、W軸は当該楕円の長軸方向になる。但し、本実施の形態の環状変形体30は、高弾力部30aのバネ定数が低弾力部30bのバネ定数よりも大きい。このため、図示されるように、高弾力部30aの変形の程度よりも低弾力部30bの変形の程度の方が大きい。その結果、V軸上に配置された一対の電極E21a,E31a及び一対の電極E21b,E31bの各電極間隔は共に狭まるのであるが、その程度は、負のV軸上に配置された一対の電極E21b,E31bの電極間隔の方が大きい。また、W軸上に配置された一対の電極E22a,E32a及び一対の電極E22b,E32bの各電極間隔は共に広がるのであるが、その程度は、負のW軸上に配置された一対の電極E22b,E32bの電極間隔の方が大きい。
【0122】
一方、逆向きにトルクが作用した場合、すなわち、Z軸負まわりのトルクが作用した場合は、
図16示す例とは逆に、環状変形体30(の接続点P11,P12)に対して反時計まわりの回転力が作用するため、環状変形体30は、V軸を長軸方向、W軸を短軸方向とする楕円に変形する。したがって、環状変形体30のV軸上及びW軸上に位置する各変位電極E31a、E31b、E32a、E32bの変位方向は、
図16に示す例とは逆の方向になる。
【0123】
このため、以下の[式1]に示すように、一対の電極E21a,E31aにより構成される容量素子C1a、及び、一対の電極E22a,E32aにより構成される容量素子C2aの静電容量値の差分に相当する第1電気信号T1に基づいて、作用したトルクの方向および大きさを検出することが可能になる。更に、一対の電極E21b,E31bにより構成される容量素子C1b、及び、一対の電極E22b,E32bにより構成される容量素子C2bの静電容量値の差分に相当する第2電気信号T2に基づいて、作用したトルクの方向および大きさを検出することが可能になる。なお、以下の[式1]において、C1a、C2a、C1b、C2bは、それぞれ容量素子C1a、C2a、C1b、C2bの静電容量値を示している。
[式1]
T1=C1a−C2a
T2=C1b−C2b
【0124】
本実施の形態では、環状変形体30に金属疲労が蓄積することに伴って、これら第1及び第2電気信号T1及びT2の比率が変化することを利用して、トルクセンサの故障診断を行う。このため、以下の説明においては、環状変形体30に金属疲労が生じていない初期状態での第1及び第2電気信号をT1a、T2aとし、環状変形体30に金属疲労が生じている(蓄積している)状態での第1及び第2電気信号をT1b、T2bとして、それぞれ区別することとする。
【0125】
図17は、
図15の環状変形体30に金属疲労が生じていない状態(初期状態)において、トルクセンサに作用するトルクの大きさと、当該トルクセンサから出力される第1電気信号T1a及び第2電気信号T2aと、の関係を示すグラフであり、
図18は、
図15の環状変形体30に金属疲労が生じている(蓄積している)状態において、トルクセンサに作用するトルクの大きさと、当該トルクセンサから出力される第1電気信号T1b及び第2電気信号T2bと、の関係を示すグラフである。各図において、横軸はトルクセンサに作用したトルクを示し、縦軸は当該トルクに応じてトルクセンサから出力される電気信号の大きさを示している。このため、各図において、各電気信号T1a〜T2bを示す直線の傾きは、トルクセンサの検出感度を示すことになる。結局、本実施の形態の基本構造部は、前述した従来の2電極タイプの基本構造部を異なる感度で2つ配置した構成と等価である。なお、各直線の傾きは、対応する高弾力部30a及び低弾力部30lのバネ定数に依存する。
【0126】
次に、トルクセンサが正常に機能しているか否かを判定する方法について説明する。本実施の形態のトルクセンサに対して繰り返しの負荷が作用すると、環状変形体30に金属疲労が生じる。金属疲労は、トルクによる変形が相対的に大きい低弾力部30bにおいて顕著に発現する。この金属疲労が蓄積されると、低弾力部30bの強度が低下し、最終的に環状変形体30が破断することになる。一般的に、金属材料においては、金属疲労が蓄積すると、当該金属材料が軟化するため、低弾力部30bのバネ定数が低下することになる。すなわち、本実施の形態の環状変形体30においては、低弾力部30bに金属疲労が蓄積すると、当該低弾力部30bがトルクによって大きく変形されるようになり、初期状態と比較して、トルクに対する低弾力部30bの感度が上昇する。このことは、
図17と
図18とを比較することによって理解される。
【0127】
具体的には、
図17を参照すると、初期状態においては、低弾力部30bに対応する第2電気信号T2aを示す直線の傾き(感度)は2.0である。一方、
図18を参照すると、金属疲労が蓄積している状態においては、低弾力部30bに対応する第2電気信号T2bを示す直線の傾き(感度)は3.0であり、感度が50%上昇している。
【0128】
もちろん、金属疲労は、高弾力部30aにも発現するが、その発現の程度は、低弾力部30bにおける金属疲労の発現の程度よりも小さい。実際、
図17を参照すると、初期状態においては、高弾力部30aに対応する第1電気信号T1aを示す直線の傾き(感度)は0.5である。その一方、
図18を参照すると、金属疲労が蓄積している状態においては、高弾力部30aに対応する第1電気信号T1bを示す直線の傾き(感度)は0.6である。従って、感度の上昇は20%にとどまっている。
【0129】
ここで着目すべきは、高弾力部30aと低弾力部30bとで、金属疲労の発現の程度が異なっているということである。すなわち、初期状態においては、第1電気信号T1aと第2電気信号T2aとの比率(T2a/T1a)は、4.0であるのに対し、金属疲労が蓄積している状態においては、第1電気信号T1bと第2電気信号T2bとの比率(T2b/T1b)は、5.0に上昇しているということである。本発明は、このことを利用してトルクセンサの故障診断を行うものである。
【0130】
換言すれば、高弾力部30aと低弾力部30bとで金属疲労の蓄積の特性が異なることに起因して、繰り返しの負荷に伴って第1電気信号T1と第2電気信号T2との比率が次第に変化する。そして、トルクセンサに対して繰り返しの負荷が更に作用すると、環状変形体30は最終的に低弾力部30bにおいて破断し、当該低弾力部30b側に配置された2つの容量素子C1b、C2bが正常に機能しなくなる。一方、この時点では高弾力部30a側に配置された2つの容量素子C1a、C2aは正常に機能している蓋然性が高い。
【0131】
以上のことから、トルクの計測を例えば高弾力部30a側に配置された容量素子C1a、C2aを用いて行いつつ、第1電気信号T1bと第2電気信号T2bとの比率と、初期状態における第1電気信号T1aと第2電気信号T2aとの比率と、の差が所定の範囲内にあるか否かを評価することによって、トルクセンサが正常に機能しているか否かを判定することができる。
【0132】
以上の判定原理を具現化するために、本実施の形態のトルクセンサは、
図19に示す検出回路を有している。
図19は、本実施の形態のトルクセンサに採用されている検出回路のブロック図である。この検出回路は、環状変形体30及び容量素子C1a、C2a、C1b、C2bを含む機構部から提供される4つの容量素子の静電容量値に関する情報をそれぞれ対応する電圧値に変換するC/V変換器41と、C/V変換器41から提供される4つの電圧値を[式1]に対応してそれぞれ差分処理し、前述した第1電気信号T1と第2電気信号T2とを演算してトルクセンサに作用しているトルクを算出するマイコン47と、マイコン47に接続され第1電気信号T1aと第2電気信号T2aとの初期状態の比率を記憶する記憶部48と、を有している。マイコン47は、記憶部48に記憶された初期状態の比率と、現在の第1電気信号T1bと第2電気信号T2bとの比率と、を比較して、その比較結果が所定の範囲内にあるか否かを判定する機能を有している。
【0133】
比較の結果、前記比率が所定の範囲内にある場合、マイコン47は、トルクセンサが正常に機能していると判定し、計測されたトルクの値を出力する。本実施の形態では、高弾力部30側に設けられた容量素子C1a、C2aに基づいて提供される第1電気信号T1a、T1bを用いてトルクが計測される。これは、前述したように、高弾力部30aの方が低弾力部30bよりも相対的に金属疲労が発現しにくいため、当該金属疲労による影響が小さく、トルクをより高精度に計測することができると考えられるためである。一方、前記比率が所定の範囲内に無い場合は、マイコン47は、トルクセンサが正常に機能していない(故障している)と判定し、故障診断信号を出力する。もちろん、トルクの計測を低弾力部30bに配置された容量素子C1b、C2bの静電容量値の変動量に基づいて行ってもよい。これらの容量素子C1b、C2bは、容量素子C1a、C2aと比較してトルクに対し大きく変化する(感度が高い)ためS/Nに優れたトルクの計測が可能である。
【0134】
なお、本実施の形態では、各固定電極E21a、E22a、E21b、E22bを、右側支持体20に固定しているが、固定電極は左側支持体10に固定されてもかまわない。たとえば、
図12に示す例の場合、固定電極E21は、右側支持体20の左側面から左側へ突き出した導電板によって構成されているが、左側支持体10の右側面から右側へ突き出した導電板によって固定電極E21を構成してもかまわない。要するに、固定電極E21は、変位電極E31に対向する定位置に、環状変形体30の変形にかかわらず維持されるように設けられていればよい。
【0135】
また、ここに示す実施形態では、変位電極E31a、E32a、E31b、E32bを、環状変形体30の内周面に固定しているが、変位電極は、環状変形体30の外周面に固定してもかまわない。
図16を見れば明らかなように、環状変形体30が楕円に変形した際に変位を生じるのは、環状変形体30の内周面だけではなく、外周面も同じように変位を生じる。したがって、変位電極は環状変形体30の外周面に形成してもよい。この場合、変位電極に対向する固定電極は、変位電極の更に外側に配置すればよい。但し、この場合、高弾力部30aと低弾力部30bとが、外周面において段差が生じないように滑らかに接続されるならば、高い対称性で各電極を配置することが可能である。この場合、低弾力部30bを、環状変形体30の径方向の肉厚が高弾力部30aの当該径方向の肉厚よりも薄く構成する場合には、環状変形体30の内周面において高弾力部30aと低弾力部30bとの接続部分に段差が生じることになる。もっとも、環状変形体30の外側に各電極を配置する構造を採ると、センサの全体的なサイズが大きくなるので、実用上は、これまで述べた実施形態のように、環状変形体30の内周面に変位電極を設けるのが好ましい。ただし、後述の
図38及び
図39に示す変形例では、変位電極を外側に配置してもサイズは同じである。
【0136】
以上のような本実施の形態のトルクセンサによれば、高弾力部30aよりも低弾力部30bの方が先に金属疲労することに伴って、第1電気信号T1と第2電気信号T2との比率に変化が生じる。このことに着目して、環状変形体30が破断する前に当該環状変形体30に金属疲労が生じていること検出することにより、環状変形体30の故障を診断することが可能なトルクセンサを提供することができる。
【0137】
<<< §5. 本発明に係る1電極タイプのトルクセンサの実施例 >>>
§4では、2電極タイプのトルクセンサとして、高弾力部30a及び低弾力部30bに各2つの容量素子を配置したトルクセンサについて説明した。このトルクセンサは、各2つの容量素子によって差分検出を行うことができるため、温度変化の影響を排除した高精度なトルクの計測が可能である。しかしながら、温度が一定の場合や温度補償がなされる場合には、高弾力部30a及び低弾力部30bに各1つの容量素子のみを配置しても、単一のトルクセンサによって、トルクの検出と故障診断とを行うことができる。ここでは、高弾力部30a及び低弾力部30bに各1つの容量素子を配置したトルクセンサを、1電極タイプのトルクセンサと呼ぶことにする。
【0138】
図20は、本発明による1電極タイプのトルクセンサの基本構造部を示すXY断面図である。
図20においても、説明の便宜上、X,Y,V,W軸が重ねて描かれている。図示されるように、本実施の形態によるトルクセンサの環状変形体30は、§4で説明した2電極タイプのトルクセンサの環状変形体30と同じ構造を有している。また、V軸の正の領域と環状変形体30の高弾力部30aの内周面との交差領域には変位電極E31aが配置されており、V軸の負の領域と環状変形体30の低弾力部30bの内周面との交差領域には変位電極E31bが配置されている。
【0139】
そして、これら変位電極E31a、E31bに対向する位置には、固定電極E21a、E21bがそれぞれ配置され、右側支持体20に固定されている。このような構成により、変位電極E31aと固定電極E21aとにより容量素子C1aが構成され、変位電極E31bと固定電極E21bとにより容量素子C1bが構成されている。結局、本実施の形態のトルクセンサは、§4で説明した2電極タイプのトルクセンサからW軸上に配置された2つの容量素子C2a、C2bを構成する各電極を取り除いた構成となっている。その他の構成は§4で説明した2電極タイプのトルクセンサと同様であるため、その詳細な説明は省略する。
【0140】
図21は、
図20の基本構造部に対して、Z軸正まわりのトルクが作用したときの状態を示すXY断面図である(破線は変形前の状態を示す)。
図21に示すように、本実施の形態によるトルクセンサの基本構造部に対してZ軸正まわり(
図21における右回り)のトルクが作用すると、前述したように、環状変形体30は楕円状に変形し、V軸は当該楕円の短軸方向、W軸は当該楕円の長軸方向になる。但し、環状変形体30は、高弾力部30aのバネ定数が低弾力部30bのバネ定数よりも大きい。このため、§4において述べたように、高弾力部30aの変形の程度よりも低弾力部30bの変形の程度の方が大きい。その結果、V軸上に配置された一対の電極E21a,E31a及び一対の電極E21b,E31bの電極間隔は共に狭まるのであるが、その程度は、負のV軸上に配置された一対の電極E21b,E31bの電極間隔の方が大きい。
【0141】
もちろん、逆向きにトルクが作用した場合、すなわち、Z軸負まわりのトルクが作用した場合は、
図21示す例とは逆に、環状変形体30(の接続点P11,P12)に対して反時計まわりの回転力が作用するため、環状変形体30は、V軸を長軸方向、W軸を短軸方向とする楕円に変形する。したがって、環状変形体30のV軸上に位置する部分の変位方向は、
図21に示す例とは逆の方向になる。
【0142】
このため、以下の[式2]に示すように、一対の電極E21a,E31aにより構成される容量素子C1aの静電容量値に対応する第1電気信号T1に基づいて、作用したトルクの方向および大きさを検出することが可能になる。更に、一対の電極E21b,E31bにより構成される容量素子C1bの静電容量値に対応する第2電気信号T2に基づいて、作用したトルクの方向および大きさを検出することが可能になる。なお、以下の[式2]において、C1a及びC1bは、それぞれ容量素子C1a、C1bの静電容量値を示している。
[式2]
T1=C1a
T2=C1b
【0143】
本実施の形態でも、環状変形体30に金属疲労が蓄積することに伴って、これらT1とT2との比率が変化することを利用して、トルクセンサの故障診断を行う。このため、以下の説明においては、§4と同様に、環状変形体30に金属疲労が生じていない初期状態での第1及び第2電気信号をT1a、T2aとし、環状変形体30に金属疲労が生じている(蓄積している)状態での第1及び第2電気信号をT1b、T2bとして、それぞれ区別することとする。本実施の形態では、トルクセンサに作用するトルクの大きさと、初期状態での第1及び第2電気信号T1a、T2aとの関係は、
図17に示すグラフと同じである。また、トルクセンサに作用するトルクの大きさと、環状変形体30に金属疲労が生じている状態での第1及び第2電気信号T1b、T2bと、の関係は、
図18に示すグラフと同じである。
【0144】
以上のような本実施の形態によるトルクセンサが正常に機能しているか否かを判定するための原理及び方法は、§4と同じである。すなわち、§4における第1電気信号T1(T1a、T1b)及び第2電気信号T2(T2a、T2b)を[式2]に読み替えることによって、本実施の形態によるトルクセンサの故障判定の原理及び方法が理解される。このため、ここでは、当該原理及び方法の詳細な説明は省略する。但し、本実施の形態では、検出回路のマイコン47は、差分検出を行う必要が無い。このため、マイコン47は、C/V変換器41から提供される2つの電圧値をそのまま第1電気信号T1及び第2電気信号T2として出力すればよい。
【0145】
以上のような本実施の形態のトルクセンサによれば、高弾力部30aよりも低弾力部30bの方が先に金属疲労することに伴って、第1電気信号T1と第2電気信号T2との比率に変化が生じる。このことに着目して、環状変形体30が破断する前に当該環状変形体30に金属疲労が生じていること検出することにより、環状変形体30の故障を診断することが可能なトルクセンサを提供することができる。
【0146】
なお、以上の説明においては、2つの容量素子C1a、C1bが正のV軸上と負のV軸上とに各1つ配置され、W軸上には容量素子が配置されていないが、2つの容量素子が正のW軸上と負のW軸上とに各1つ配置され、V軸上には容量素子が配置されていない、という態様でも、同様の機能を提供することができる。
【0147】
<<< §6. 本発明に係る4電極タイプのトルクセンサの実施例 >>>
次に
図22を参照して、本発明による4電極タイプのトルクセンサについて説明する。
図22は、本発明による4電極タイプのトルクセンサの基本構造部を示すXY断面図である。
図22においても、説明の便宜上、X,Y,V,W軸が重ねて描かれている。本実施の形態による基本構造部は、2電極タイプ及び1電極タイプのトルクセンサの基本構造部とは異なり、4つの高弾力部30aと4つの低弾力部30bとが周方向に交互に配置されて構成されている。具体的には、図示されるように、XY平面上に、原点Oを通りX軸およびY軸に対して45°をなすV軸およびW軸を定義した場合に、Z軸方向から見ると、高弾力部30aは、正のX軸と正のV軸とで区画された領域(i)と、正のY軸と正のW軸とで区画された領域(iii)と、負のX軸と負のV軸とで区画された領域(v)と、負のY軸と負のW軸とで区画された領域(vii)と、に各1つずつ配置されている。一方、低弾力部30bは、残りの領域、すなわち正のV軸と正のY軸とで区画された領域(ii)と、正のW軸と負のX軸とで区画された領域(iv)と、負のV軸と負のY軸とで区画された領域(vi)と、負のW軸と正のX軸とで区画された領域(viii)と、に各1つずつ配置されている。4電極タイプのトルクセンサとは、このようにな高弾力部30a及び低弾力部30bに各4つの容量素子を配置したトルクセンサを意味することとする。
【0148】
図示されるように、各高弾力部30a及び各低弾力部30bは、環状変形体30の内周面に段差が生じないように互いに接続されている。そして、この内周面に、8つの変位電極E31a〜E34bが配置されている。変位電極E31aは、正のV軸近傍において、領域(i)に配置された高弾力部30aの内周面に配置されており、変位電極E31bは、正のV軸近傍において、領域(ii)に配置された低弾力部30bの内周面に配置されている。変位電極E32aは、正のW軸近傍において、領域(iii)に配置された高弾力部30aの内周面に配置されており、変位電極E32bは、正のW軸近傍において、領域(iv)に配置された低弾力部30bの内周面に配置されている。変位電極E33aは、負のV軸近傍において、領域(v)に配置された高弾力部30aの内周面に配置されており、変位電極E33bは、負のW軸近傍において、領域(vi)に配置された低弾力部30bの内周面に配置されている。変位電極E34aは、負のW軸近傍において、領域(vii)に配置された高弾力部30aの内周面に配置されており、変位電極E34bは、負のW軸近傍において、領域(viii)に配置された低弾力部30bの内周面に配置されている。
【0149】
一方、これらの変位電極E31a〜E34bに対向する位置には、図示されるように、固定電極E21a〜E24bがそれぞれ配置され、右側支持体(不図示)に固定されている。そして、これらの互いに対向する8組の電極によって、8つの容量素子C1a〜C4bが構成されている。
【0150】
本実施の形態では、固定電極E21aと変位電極E31aとによって構成される容量素子C1aと、固定電極E21bと変位電極E31bとによって構成される容量素子C1bとは、Z軸方向から見てV軸に関して対称的に配置されている。また、固定電極E22aと変位電極E32aとによって構成される容量素子C2aと、固定電極E22bと変位電極E32bとによって構成される容量素子C2bとは、Z軸方向から見てW軸に関して対称的に配置されており、固定電極E23aと変位電極E33aとによって構成される容量素子C3aと、固定電極E23bと変位電極E33bとによって構成される容量素子C3bとは、Z軸方向から見てV軸に関して対称的に配置されており、固定電極E24aと変位電極E34aとによって構成される容量素子C4aと、固定電極E24bと変位電極E34bとによって構成される容量素子C4bとは、Z軸方向から見てW軸に関して対称的に配置されている。その他の構成は、前述の2電極タイプ及び1電極タイプのトルクセンサと同様であるため、その詳細な説明は省略する。
【0151】
図23は、
図22に示す基本構造部に対して、Z軸正まわりのトルクが作用したときの状態を示すXY断面図である。前述したように、このようなトルクが作用すると、環状変形体30は略楕円状に変形し、V軸は当該楕円の短軸方向、W軸は当該楕円の長軸方向になる。但し、本実施の形態による環状変形体30は、相対的に変形しにくい高弾力部30aと、相対的に変形しやすい低弾力部30bとが、交互に配置されて構成されている。このため、環状変形体30は、図示されるように、高弾力部30aと低弾力部30bとで変位の程度が異なっている。具体的には、領域(i)の高弾力部30aと領域(ii)の低弾力部30bとは、共に正のV軸方向に変位するが、領域(ii)の低弾力部30bの方が大きく変位する。同様に、領域(iii)の高弾力部30aと領域(iv)の低弾力部30bとは、共に負のW軸方向に変位するが、領域(iv)の低弾力部30bの方が大きく変位する。また、領域(v)の高弾力部30aと領域(vi)の低弾力部30bとは、共に負のV軸方向に変位するが、領域(vi)の低弾力部30bの方が大きく変位する。領域(vii)の高弾力部30aと領域(viii)の低弾力部30bとは、共に正のW軸方向に変位するが、領域(viii)の低弾力部30bの方が大きく変位する。
【0152】
逆向きにトルクが作用した場合、すなわち、Z軸負まわりのトルクが作用した場合は、
図23示す例とは逆に、環状変形体30(の接続点P11,P12)に対して反時計まわりの回転力が作用するため、環状変形体30は、V軸を長軸方向、W軸を短軸方向とする楕円に変形する。したがって、環状変形体30のV軸及びW軸の近傍に位置する各変位電極E31a〜E34bの変位は、
図23に示す例とは逆の方向になる。
【0153】
本実施の形態のトルクセンサによれば、以下の[式3]に示すように、各一対の電極により構成される容量素子C1a、C2a、C3a、C4aの各静電容量値に基づく第1電気信号T1によって、作用したトルクの方向および大きさを検出することが可能である。更に、各一対の電極により構成される容量素子C1b、C2b、C3b、C4bの各静電容量値に基づく第2電気信号T2によっても、作用したトルクの方向および大きさを検出することが可能である。なお、以下の[式3]において、C1a〜C4bは、容量素子C1a〜C4bの静電容量値を示している。
[式3]
T1=(C1a+C3a)−(C2a+C4a)
T2=(C1b+C3b)−(C2b+C4b)
【0154】
本実施の形態でも、環状変形体30に金属疲労が蓄積することに伴って、これらT1及びT2が変化することを利用して、トルクセンサの故障診断を行う。このため、以下の説明においては、§4と同様に、環状変形体30に金属疲労が生じていない初期状態での第1及び第2電気信号をT1a、T2aとし、環状変形体30に金属疲労が生じている(蓄積している)状態での第1及び第2電気信号をT1b、T2bとして、それぞれ区別することとする。本実施の形態では、トルクセンサに作用するトルクの大きさと、初期状態での第1及び第2電気信号T1a、T2aとの関係は、
図17に示すグラフと同じである。また、トルクセンサに作用するトルクの大きさと、環状変形体30に金属疲労が生じている状態での第1及び第2電気信号T1b、T2bと、の関係は、
図18に示すグラフと同じである。
【0155】
以上のような本実施の形態によるトルクセンサが正常に機能しているか否かを判定するための原理及び方法は、§4と同じである。すなわち、§4における第1電気信号T1(T1a、T1b)及び第2電気信号T2(T2a、T2b)を[式3]に読み替えることによって、本実施の形態によるトルクセンサの故障判定の原理及び方法が理解される。このため、ここでは、当該原理及び方法の詳細な説明は省略する。
【0156】
但し、本実施の形態では、高弾力部30a側及び低弾力部30b側に設けられた各4つの容量素子を用いて高精度な差分検出が行われる。このため、検出回路のマイコン47は、「2つの容量素子C1a、C3aの静電容量値の和と、2つの容量素子C2a、C4aの静電容量値の和と、の差」に相当する第1電気信号T1と、2つの容量素子C1b、C3bの静電容量値の和と、2つの容量素子C2b、C4bの静電容量値の和と、の差」に相当する第2電気信号T2と、を作用したトルクを示す電気信号として出力することになる。
【0157】
以上のような本実施の形態のトルクセンサによれば、高弾力部30aよりも低弾力部30bの方が先に金属疲労することに伴って、第1電気信号T1と第2電気信号T2との比率に変化が生じる。このことに着目して、環状変形体30が破断する前に当該環状変形体30に金属疲労が生じていること検出することにより、環状変形体30の故障を診断することが可能なトルクセンサを提供することができる。
【0158】
なお、本実施の形態では、環状変形体30の内周面に変位電極E31a〜E34bが配置されているが、変形例として、環状変形体30の外周面に当該変位電極E31a〜E34bを配置することも可能である。この場合、変位電極に対向する固定電極は、変位電極の更に外側に配置すればよい。但し、この場合、高弾力部30aと低弾力部30bとが、外周面において段差が生じないように滑らかに接続されるならば、高い対称性で各電極を配置することが可能である。この場合、低弾力部30bを、環状変形体30の径方向の肉厚が高弾力部30aの当該径方向の肉厚よりも薄く構成する場合には、環状変形体30の内周面において高弾力部30aと低弾力部30bとの接続部分に段差が生じることになる。もっとも、環状変形体30の外側に各電極を配置する構造を採ると、センサの全体的なサイズが大きくなるので、実用上は、これまで述べた実施形態のように、環状変形体30の内周面に変位電極を設けるのが好ましい。ただし、本実施の形態でも、後述の
図38及び
図39に示す変形例では、変位電極を外側に配置してもサイズは同じである。
【0159】
また、§6で述べた4電極タイプのトルクセンサでは、Z軸まわりのトルク以外のX軸方向の力Fx、Y軸方向の力Fy、Z軸方向の力Fz、X軸まわりのトルクTx、Y軸まわりのトルクTyの影響を受けることなく、Z軸まわりのトルクTzを正確に計測することができる。この詳細については本出願人による特開2012−37300号公報に記載されている。
【0160】
<<< §7. 本出願人によって提案された波型の検出部を採用したトルクセンサの基本構造部 >>>
<7−1.基本構造部の全体構成>
次に、本出願人によって出願された国際特許出願PCT/JP2015/052783において提案されているトルクセンサに対して本発明の故障判定の機能を付与した新たなトルクセンサについて説明する。この説明に先だち、まず、
図24乃至
図32を参照して、当該国際特許出願において提案されたトルクセンサの基本構造部について述べることとする。
図24は、波型の検出部を採用した従来のトルクセンサの基本構造部の分解斜視図である。図示されるように、この基本構造部は、左側支持体10と右側支持体20との間に、環状変形体50を配置し、これら3つの構成要素を相互に接合することによって構成される。ここでも、便宜上、図示のとおりXYZ三次元座標系を定義して、以下の説明を行う。図の水平方向に描かれたZ軸が、検出対象となるトルクの回転軸に相当し、このトルクセンサは、この回転軸まわり(Z軸まわり)のトルクを検出する機能を果たす。
【0161】
図1に示すトルクセンサの基本構造部と、
図24に示す波型の検出部を採用したトルクセンサの基本構造部との相違は、前者の環状変形体30が、後者では環状変形体50に置き換えられている点である。
図1に示す環状変形体30は、Z軸(回転軸)を中心軸として配置された円盤の中央部に、より径の小さな同心円盤の形状をした貫通開口部H30を形成することにより得られる円環状の部材である。これに対して、
図24に示す環状変形体50は、この円環状の環状変形体30に対して、部分的な材料除去加工を施すことにより得られた部材であり、内部に形成された貫通開口部H50には、回転軸(Z軸)が挿通している。したがって、この環状変形体50は、基本的には、内部に同心円盤状の貫通開口部H50が形成された円環状の部材であるが、材料除去加工を施した部分によって、図示のような第1〜第4検出部D1〜D4が形成されていることになる。
【0162】
なお、ここでは、環状変形体50の形状を説明するために「材料除去加工」という文言を用いているが、環状変形体50を実際に作成する際には、必ずしも円環状の部材に対して切削加工などを施す必要はない。たとえば、環状変形体50を金属で構成する場合であれば、鋳型を用いた鋳造によって製造することもでき、プラスチックなどの樹脂で構成する場合であれば、所定の型を用いた射出成形加工やプレス加工によって環状変形体50を製造することができる。
【0163】
ここでは、環状変形体50のうち、第1〜第4検出部D1〜D4以外の部分を連結部L1〜L4と呼ぶことにする。図示のとおり、環状変形体50は、4組の検出部D1〜D4と4組の連結部L1〜L4とを交互に配置した構造を有する。4組の連結部L1〜L4は、円環状の部材の円弧状部分によって構成され、4組の検出部D1〜D4は、後述するように、トルクの作用による弾性変形が生じる構造を有している。図示の例の場合、環状変形体50の第1〜第4検出部D1〜D4の部分は、肉厚の薄い板状片によって構成されており、この板状片が板ばねとして機能して検出対象となるトルクの作用により弾性変形を生じる。
【0164】
なお、この
図24に示す左側支持体10および右側支持体20は、
図1に示す左側支持体10および右側支持体20と全く同一の構成要素であり、Z軸(回転軸)を中心軸として配置された円盤の中央部に、より径の小さな同心円盤の形状をした貫通開口部H10,H20を形成することにより得られる円環状の部材である。結局、この
図24に示す基本構造部の場合も、左側支持体10および右側支持体20は、中心部に貫通開口部H10,H20を有する環状の構造体であり、Z軸(回転軸)に沿って、左側支持体10、環状変形体50、右側支持体20の各貫通開口部H10,H50,H20を貫く挿通孔が確保されている。なお、各支持体10,20について貫通開口部H10,H20を形成することは、本発明を実施する上での必須条件ではないので、貫通開口部H10,H20は必ずしも設ける必要はない。
【0165】
図24に示す基本構造部においても、左側支持体10は、環状変形体50の左側面を支持する部材であり、右側支持体20は、環状変形体50の右側面を支持する部材である。ここでも、環状変形体50の中心位置にXYZ三次元座標系の原点Oを定義しており、左側支持体10,環状変形体50,右側支持体20は、いずれもZ軸が中心軸となるように配置されている。
【0166】
また、左側支持体10の右側面には、右方に突出した2つの扇形の凸状部11,12(左側接続部材)が設けられており、この凸状部11,12の頂面が環状変形体50の左側面に接合されている。同様に、右側支持体20の左側面には、左方に突出した2つの扇形の凸状部21,22(右側接続部材)が設けられており、この凸状部21,22の頂面が環状変形体50の右側面に接合されている。
【0167】
図示のとおり、凸状部11は環状変形体50の上部(Y軸正方向に位置する連結部L2)に接合され、凸状部12は環状変形体50の下部(Y軸負方向に位置する連結部L4)に接合される。同様に、凸状部21は環状変形体50の奥の部分(X軸正方向に位置する連結部L1)に接合され、凸状部22は環状変形体50の手前の部分(X軸負方向に位置する連結部L3)に接合される。後述するように、これら各凸状部の接続位置は、環状変形体50の各接続点Q1〜Q4の位置に相当する。
【0168】
図25は、
図24に示す3つの構成要素を相互に接合することにより得られるトルクセンサの基本構造部の側面図である(図が繁雑になるのを避けるため、検出部に関しては、手前に位置する検出部D2,D3の外周面のみを示してある)。ここに示す例の場合、
図24に示すとおり、凸状部11,12は、左側支持体10と一体となった構造体であり、その頂面が環状変形体50の連結部L2,L4の左側面に接合されている。同様に、凸状部21,22は、右側支持体20と一体となった構造体であり、その頂面が環状変形体50の連結部L1,L3の右側面に接合されている。
【0169】
結局、凸状部11,12は、環状変形体50の左側支持体10に対向する左側の側面上の左側接続点を、左側支持体10に接続する左側接続部材として機能し、凸状部21,22は、環状変形体50の右側支持体20に対向する右側の側面上の右側接続点を、右側支持体20に接続する右側接続部材として機能する。
【0170】
図26は、
図24に示す環状変形体50を
図24の右方向から見た正面図である。この図においても、説明の便宜上、XY平面上に、原点Oを通りX軸およびY軸に対して45°をなすV軸およびW軸を定義している。V軸はXY平面上において、原点Oを中心としてX軸を反時計まわりに45°回転させた座標軸であり、W軸はXY平面上において、原点Oを中心としてY軸を反時計まわりに45°回転させた座標軸である。図示のとおり、第1の検出部D1は正のV軸上(第1象限I)、第2の検出部D2は正のW軸上(第2象限II)、第3の検出部D3は負のV軸上(第3象限III)、第4の検出部D4は負のW軸上(第4象限IV)にそれぞれ配置されている。
【0171】
ここで、各検出部D1〜D4は、いずれも第1の変形部51,第2の変形部52,変位部53なる3つの部品によって構成されている。図では、検出部D1の構成部品についてのみ符号を記してあるが、検出部D2〜D4についても同様である。これら4組の検出部D1〜D4の三次元形状は、
図24の分解斜視図に示すとおりである。4組の連結部L1〜L4は、これら4組の検出部D1〜D4を連結する機能を有し、各検出部D1〜D4の間にそれぞれ各連結部L1〜L4が介挿されている。
【0172】
図26には、凸状部11,12(左側接続部材)の接合位置および凸状部21,22(右側接続部材)の接合位置が破線で示されている。
【0173】
図27は、
図24に示す環状変形体50の各検出点Q1〜Q4および各接続点P11〜P22の配置を示すXY平面上への投影図である(右側支持体20側から見た図)。環状変形体50は、その内側および外側の輪郭円の投影像のみを示す。また、図に一点鎖線で描かれた太い円は、XY平面上に定義された基本環状路Rである。この基本環状路Rは、図示の実施例の場合、環状変形体50の内側輪郭円と外側輪郭円との中間位置を通るXY平面上の円であり、環状変形体50の環状肉厚部分の中心線になる。
【0174】
図示のとおり、4組の検出点Q1〜Q4は、この基本環状路R上の点として定義される。具体的には、第1の検出点Q1は、正のV軸と基本環状路Rとの交点位置に定義され、第2の検出点Q2は、正のW軸と基本環状路Rとの交点位置に定義され、第3の検出点Q3は、負のV軸と基本環状路Rとの交点位置に定義され、第4の検出点Q4は、負のW軸と基本環状路Rとの交点位置に定義されている。これら検出点Q1〜Q4は、それぞれ検出部D1〜D4の配置を示すものである。すなわち、
図26および
図27を対比すれば、第1の検出部D1は第1の検出点Q1の位置に配置され、第2の検出部D2は第2の検出点Q2の位置に配置され、第3の検出部D3は第3の検出点Q3の位置に配置され、第4の検出部D4は第4の検出点Q4の位置に配置されていることがわかる。
【0175】
一方、
図27に白ドットで示されている点P11,P12は左側接続点の投影像であり、
図27に黒ドットで示されている点P21,P22は右側接続点の投影像である。前述したとおり、左側接続点P11,P12は、実際には、環状変形体50の左側面上の点であり、凸状部11,12(左側接続部材)の接続位置を示しており、右側接続点P21,P22は、実際には、環状変形体50の右側面上の点であり、凸状部21,22(右側接続部材)の接続位置を示している。図示の例の場合、これら各接続点P11〜P22の投影像も基本環状路R上に位置している。すなわち、左側接続点P11,P12の投影像は、Y軸と基本環状路Rとの交点位置に定義され、右側接続点P21,P22の投影像は、X軸と基本環状路Rとの交点位置に定義されている。
【0176】
結局、
図27に示す例の場合、左側接続部材11,12の接続位置を示す左側接続点P11,P12(白ドット)と、右側接続部材21,22の接続位置を示す右側接続点P21,P22(黒ドット)とは、基本環状路Rに沿って交互に配置されていることになる。このような交互配置は、後述するように、検出対象となるトルクが作用したときに、環状変形体50に効果的な変形を生じさせる上で重要である。また、4組の検出点Q1〜Q4は、各接続点P11〜P22の間に配置されている。このような配置も、検出対象となるトルクが作用したときに、各検出部D1〜D4に効果的な変位を生じさせる上で重要である。
【0177】
<7−2.検出部の構造と機能>
続いて、各検出部D1〜D4の構造と機能について説明する。
図28は、
図24に示す環状変形体50の検出部D1〜D4の詳細構造を示す部分断面図である。4組の検出部D1〜D4は、いずれも同一の構造を有している。
図28に示す検出部Dは、これら4組の検出部D1〜D4を代表するものであり、環状変形体50を、基本環状路Rを含む円柱面で切断したときの断面部分を示している。
図28(a)は、トルクが作用していない状態、
図28(b)は、トルクの作用により検出部Dに圧縮力f1が作用した状態、
図28(c)は、トルクの作用により検出部Dに伸張力f2が作用した状態をそれぞれ示している。
【0178】
図28(a)に示すとおり、検出部Dの左右両脇には、連結部Lが位置している。この連結部Lは、4組の連結部L1〜L4のいずれかに相当する。たとえば、
図28(a)に示す検出部Dが、
図24に示されている第2の検出部D2の場合、右脇に配置されている連結部Lは、
図24に示す連結部L2に相当し、左脇に配置されている連結部Lは、
図24に示す連結部L3に相当する。
【0179】
図示のとおり、検出部Dは、検出対象となるトルクの作用により弾性変形を生じる第1の変形部51と、検出対象となるトルクの作用により弾性変形を生じる第2の変形部52と、第1の変形部51および第2の変形部52の弾性変形により変位を生じる変位部53と、を有しており、左脇に配置された連結部Lの端部と右脇に配置された連結部Lの端部との間に配置されている。
【0180】
ここに示す例の場合、第1の変形部51は、可撓性を有する第1の板状片によって構成され、第2の変形部52は、可撓性を有する第2の板状片によって構成され、変位部53は、第3の板状片によって構成されている。実際には、環状変形体50は、金属(ステンレス、アルミニウムなど)や合成樹脂(プラスチックなど)といった同一材料からなる構造体によって構成される。第1の板状片51、第2の板状片52、変位部53は、連結部Lに比べて肉厚の薄い板状の部材であるため可撓性を有することになる。
【0181】
なお、ここに示す例の場合、変位部53も肉厚の薄い板状の部材であるため可撓性を有しているが、変位部53は必ずしも可撓性をもった部材である必要はない(もちろん、可撓性があってもよい)。変位部53の役割は、トルクが作用したときに、対向する右側支持体20に対して変位を生じることであり、そのような変位を生じさせるには、第1の変形部51および第2の変形部52が可撓性を有していれば足りる。したがって、変位部53は、必ずしも肉厚の薄い板状の部材によって構成する必要はなく、より肉厚の厚い部材であってもかまわない。一方、連結部Lは、ある程度の可撓性を有していてもかまわないが、作用したトルクによって、第1の変形部51および第2の変形部52に効果的な変形を生じさせる上では、連結部Lはなるべく変形しない方が好ましい。
【0182】
第1の変形部51の外側端はこれに隣接する連結部Lに接続され、第1の変形部51の内側端は変位部53に接続されている。また、第2の変形部52の外側端はこれに隣接する連結部Lに接続され、第2の変形部52の内側端は変位部53に接続されている。
図28(a)に示す例の場合、第1の変形部、第2の変形部、変位部は、それぞれ第1の板状片51、第2の板状片52、第3の板状片53によって構成されており、第1の板状片51の外側端(左端)は、左脇に配置された連結部Lの右端部に接続され、第1の板状片51の内側端(右端)は、第3の板状片53の左端に接続され、第2の板状片52の外側端(右端)は、右脇に配置された連結部Lの左端部に接続され、第2の板状片52の内側端は、第3の板状片53の右端に接続されている。
【0183】
前述したとおり、検出部Dは、基本環状路R上に定義された検出点Qの位置に配置される。
図28(a)に示す法線Nは、検出点Qの位置に立てた、基本環状路Rを含む基本平面(XY平面)の法線であり、検出部Dは、この法線Nが中心にくるように配置されている。また、
図28(a)の断面図において、第1の板状片51および第2の板状片52は、法線Nに対して傾斜しており、かつ、第1の板状片51の傾斜方向(右下がり)と第2の板状片52の傾斜方向(右上がり)とが逆向きとなっている。特に、図示の例の場合、検出部Dの断面形状は法線Nに関して線対称となっており、第3の板状片53の上下両面は、XY平面に平行な面を構成している。
【0184】
このように、基本環状路Rを含む断面に関して、法線Nに対する第1の板状片51の傾斜方向と第2の板状片52の傾斜方向とが逆向きとなっているため、基本環状路Rに沿った方向に圧縮力f1が作用した場合と、伸張力f2が作用した場合とでは、第3の板状片53(変位部)の変位方向が逆になる。これは、後述するように、複数の容量素子を用いた差分検出を行う上で好都合である。
【0185】
すなわち、
図28(b)に示すとおり、検出部Dに対して基本環状路Rに沿った方向に圧縮力f1(図の白矢印)が作用した場合は、検出部Dには、横幅を縮める方向に応力が加わることになるので、第1の板状片51および第2の板状片52の姿勢は、より垂直に立った状態に変化する。その結果、第3の板状片53(変位部)は、図に黒矢印で示すとおり下方に変位する。一方、
図28(c)に示すとおり、検出部Dに対して基本環状路Rに沿った方向に伸張力f2(図の白矢印)が作用した場合は、検出部Dには、横幅を広げる方向に応力が加わることになるので、第1の板状片51および第2の板状片52の姿勢は、より水平に寝た状態に変化する。その結果、第3の板状片53(変位部)は、図に黒矢印で示すとおり上方に変位する。
【0186】
本発明の基本原理は、このような変位を利用して、作用したトルクの向きおよび大きさを検出することにある。すなわち、作用したトルクの向きは、変位部53の変位方向(
図28における上方か下方か)によって検出することができ、作用したトルクの大きさは、その変位量によって検出することができる。
【0187】
<7−3.容量素子の構成>
本発明では、変位部53の変位を検出するために容量素子を利用する。
図29は、
図15に示す環状変形体50の第1〜第4検出部D1〜D4およびこれに対向する右側支持体20の所定部分に電極を設けた詳細構造を示す部分断面図であり、
図24に示す環状変形体50および右側支持体20の一部を示すものである。この
図29においても、検出部Dは、4組の検出部D1〜D4を代表するものであり、環状変形体50を、基本環状路Rを含む円柱面で切断したときの断面部分を示している。すなわち、
図29の左側に示されている環状変形体50の一部分は、
図28(a)に示す環状変形体50の一部分に対応する。
【0188】
前述したとおり、トルクが作用していない状態において、第3の板状片53の両面は、基本環状路Rを含むXY平面に平行な面を構成している。したがって、図示のとおり、第3の板状片53(変位部)と右側支持体20の対向面とは平行な状態になっている。しかも、ここに示す実施例の場合、検出部Dの断面形状は法線Nに関して線対称となっているため、第3の板状片53(変位部)は、
図28(b)、
図28(c)に示すとおり、法線Nに沿って平行移動する形で変位を生じる。結局、第3の板状片53(変位部)と右側支持体20の対向面とは常に平行な状態に維持される。
【0189】
変位部の変位を検出するために、第3の板状片53(変位部)の右側支持体20に対向する位置には、絶縁層I50を介して変位電極E50が固定される。また、右側支持体20の変位電極E50に対向する位置には、絶縁層I20を介して固定電極E20が固定される。そうすれば、変位電極E50と固定電極E20とによって構成される容量素子Cの静電容量値に基づいて、第3の板状片53(変位部)の変位方向および変位量を検出することができる。
【0190】
具体的には、
図28(b)に示すように、検出部Dに圧縮力f1が作用すると、両電極間距離が縮み、容量素子Cの静電容量値は増加し、
図28(c)に示すように、検出部Dに伸張力f2が作用すると、両電極間距離が広がり、容量素子Cの静電容量値は減少する。
図29には、検出部Dについて容量素子Cを形成した例が示されているが、もちろん、実際には、
図24に示す4組の検出部D1〜D4について、それぞれ変位電極E50と固定電極E20とが設けられ、4組の容量素子C1〜C4が形成されることになる。これら4組の容量素子C1〜C4を用いた具体的なトルク検出の原理は、次の§8において詳述する。
【0191】
なお、
図29に示す実施例では、変位電極E50を絶縁層I50を介して第3の板状片53(変位部)に固定しているが、これは、環状変形体50を金属などの導電性材料によって構成したためである。同様に、固定電極E20を絶縁層I20を介して右側支持体20に固定しているが、これは、右側支持体20を金属などの導電性材料によって構成したためである。すなわち、ここに示す実施例の場合、左側支持体10、右側支持体20、環状変形体50を、金属などの導電性材料により構成しているため、変位電極E50を、変位部53の表面に絶縁層I50を介して形成し、固定電極E20を、右側支持体20の表面に絶縁層I20を介して形成している。
【0192】
したがって、環状変形体50(そのうち、少なくとも変位電極E50の形成面)を樹脂などの絶縁材料によって構成した場合は、絶縁層I50を設ける必要はない。同様に、右側支持体20(そのうち、少なくとも固定電極E20の形成面)を樹脂などの絶縁材料によって構成した場合は、絶縁層I20を設ける必要はない。
【0193】
また、環状変形体50を金属などの導電性材料により構成した場合は、環状変形体50の右側面の表面の一部の領域を変位電極E50として利用することもできる。たとえば、
図29に示す実施例において、環状変形体50を導電性材料により構成すれば、第3の板状片53(変位部)は導電性の板になるため、それ自身が変位電極E50としての機能を果たすことになる。このため、別途、変位電極E50を設ける必要はなくなる。この場合、電気的には、環状変形体50の表面全体が同電位になるが、実際に4組の容量素子C1〜C4の変位電極E50としての機能を果たす部分は、個別に設けられた4組の固定電極E20に対向する領域のみということになる。したがって、4組の容量素子C1〜C4はそれぞれ別個の容量素子として振る舞うことになり、原理的な支障は生じない。
【0194】
逆に、右側支持体20を金属などの導電性材料により構成した場合は、右側支持体20の左側面の表面の一部の領域を固定電極E20として利用することもできる。たとえば、
図29に示す実施例において、右側支持体20を導電性材料により構成すれば、その左側面の表面の一部が固定電極E20としての機能を果たすことになる。このため、別途、固定電極E20を設ける必要はなくなる。この場合、電気的には、右側支持体20の表面全体が同電位になるが、実際に4組の容量素子C1〜C4の固定電極E20としての機能を果たす部分は、個別に設けられた4組の変位電極E50に対向する領域のみということになる。したがって、4組の容量素子C1〜C4はそれぞれ別個の容量素子として振る舞うことになり、原理的な支障は生じない。
【0195】
このように、環状変形体50を金属などの導電性材料により構成したり、あるいは、右側支持体20を金属などの導電性材料により構成したりすれば、個別の変位電極E50や個別の固定電極E20を設ける工程を省略することができるので、生産効率を更に向上させることができる。
【0196】
もっとも、このような省略構造を採ると、環状変形体50全体あるいは右側支持体20全体が共通の電極になり、意図していない様々な部分に浮遊容量が形成されることになる。このため、静電容量の検出値にノイズ成分が混入しやすくなり、検出精度が低下する可能性がある。したがって、高精度の検出が要求されるトルクセンサの場合には、環状変形体50や右側支持体20を導電性材料によって構成した場合であっても、
図29に示す実施例のように、それぞれ絶縁層を介して、個別の変位電極E50および個別の固定電極E20を設けるようにするのが好ましい。
【0197】
なお、検出部Dの弾性変形のしやすさは、センサの検出感度を左右するパラメータになる。弾性変形しやすい検出部Dを用いれば、微小なトルクでも検出可能な感度の高いセンサを実現することができるが、検出可能なトルクの最大値は抑制されることになる。逆に、弾性変形しにくい検出部Dを用いれば、検出可能なトルクの最大値を大きくとることができるが、感度は低下するため、微小なトルクの検出はできなくなる。
【0198】
検出部Dの弾性変形のしやすさは、第1の変形部51(第1の板状片)および第2の変形部52(第2の板状片)の厚み(薄くするほど弾性変形しやすい)、幅(狭くするほど弾性変形しやすい)、長さ(長くするほど弾性変形しやすい)などの形状に依存して決まり、更に、その材質にも依存して決まる。また、変位部53(第3の板状片)を弾性変形させる構造で検出部Dを設計することもできる。したがって、実用上は、トルクセンサの用途に応じて、検出部Dの各部の寸法や材質を適宜選択すればよい。
【0199】
なお、前述したとおり、本願図面では、図示の便宜上、各部の実寸を無視して描いてある。たとえば、
図29では、変位電極E50,固定電極E20の厚みや、絶縁層I50,絶縁層I20の厚みが、各板状片51,52,53の厚みとほぼ同じになるように描かれているが、これら各電極や絶縁層は、蒸着やメッキによって構成することができ、その厚みは、数μm程度に設定することができる。これに対して、各板状片51,52,53の厚みは、実用的な強度を考慮してより厚く設計するのが好ましく、たとえば、金属により構成する場合であれば、1mm程度に設定するのが好ましい。
【0200】
一方、左側支持体10および右側支持体20は、トルクを検出する原理上、弾性変形を生じる部材である必要はない。むしろ、作用したトルクが環状変形体50の変形に100%寄与するようにするためには、左側支持体10および右側支持体20は、完全な剛体である方が好ましい。図示の例において、左側支持体10および右側支持体20として、中心部に貫通開口部H10,H20を有する環状の構造体を用いた理由は、弾性変形しやすくするためではなく、回転軸(Z軸)に沿って、左側支持体10、環状変形体50、右側支持体20の各貫通開口部H10,H50,H20を貫く挿通孔が確保されるようにするためである。§1〜§3で述べた先願トルクセンサと同様に、内部が中空となる構造を採用すれば、この中空部分に様々な部品を配置することができ、実用的な利用勝手が向上する。
【0201】
図24に示すとおり、左側支持体10、右側支持体20、環状変形体50は、いずれもZ軸方向の厚みが小さな扁平構造体によって構成することができるので、センサ全体の軸長を短く設定することが可能になる。しかも、容量素子Cを構成するための電極構造を単純化することができるため、生産効率を向上させる効果が期待できる。この効果は、
図12に例示されているトルクセンサの容量素子と、
図29に例示されているトルクセンサの容量素子とを比較すると、容易に理解できよう。
【0202】
<<< §8. 波形の検出部を有するトルクセンサによるトルク検出原理 >>>
<8−1.容量素子を用いたトルク検出>
続いて、§7で述べたトルクセンサによるトルクの検出原理を説明する。
図30は、
図24に示す基本構造部における右側支持体20に負荷がかかっている状態において、左側支持体10に、Z軸正まわりのトルク+Mzが作用したときの変形状態を示すXY平面での断面図である。別言すれば、
図24に示す基本構造部をXY平面で切断し、
図24の右方向から見た断面図である。ここでも、説明の便宜上、X軸およびY軸を反時計まわりに45°回転させた座標軸として、V軸およびW軸を定義している。
【0203】
図にハッチングを施した断面部分は、環状変形体50に相当し、その奥に、左側支持体10が見えている。図の点P11〜P22は、各接続点P11〜P22のXY平面上への正射影投影像である。左側支持体10にZ軸正まわりのトルク+Mzが作用すると、図に白ドットで示されている点P11,P12(左側接続点)には、白矢印で示すような反時計まわりの応力が作用する。一方、右側支持体20には負荷がかかっているので、図に黒ドットで示されている点P21,P22(右側接続点)は、そのまま定位置に留まろうとする。
【0204】
その結果、第1の検出点Q1および第3の検出点Q3の位置近傍には、図に白矢印で示すような伸張力f2が作用し、第2の検出点Q2および第4の検出点Q4の位置近傍には、図に白矢印で示すような圧縮力f1が作用する。結局、環状変形体50は、図示のとおり、W軸を長軸、V軸を短軸とする楕円形に変形する(図の破線は変形前の状態を示している)。
【0205】
前述したとおり、各検出点Q1〜Q4の位置には、それぞれ検出部D1〜D4が配置されており、容量素子C1〜C4が形成されている。そして、
図28(b)に示すように、圧縮力f1が作用した検出部Dの変位部53は右側支持体20に近づくように変位し、容量素子Cの静電容量値は増加し、
図28(c)に示すように、伸張力f2が作用した検出部Dの変位部53は右側支持体20から遠ざかるように変位し、容量素子Cの静電容量値は減少する。したがって、Z軸正まわりのトルク+Mzが作用したとき、各検出部D1〜D4は、
図31の表に示すような挙動を示すことになる。
【0206】
すなわち、検出部D1〜D4に配置された変位電極をそれぞれE501〜E504とし、これに対向する固定電極をそれぞれE201〜E204とすれば、Z軸正まわりのトルク+Mzの作用により、検出点Q1,Q3には、伸張力f2が作用し、変位電極E501,E503は、固定電極E201,E203から遠ざかるように変位し、容量素子C1,C3の静電容量値は減少(表では「−」で示す)する。一方、検出点Q2,Q4には、圧縮力f1が作用し、変位電極E502,E504は、固定電極E202,E204に近づくように変位し、容量素子C2,C4の静電容量値は増加(表では「+」で示す)する。
【0207】
したがって、各容量素子C1〜C4の静電容量値を、同じ符号C1〜C4を用いて表すことにすれば、表の最下行に示すように、演算式「Mz=−C1+C2−C3+C4」に基づく演算を行うことにより、作用したZ軸正まわりのトルク+Mzを検出することができる。この場合、得られる演算値Mzは正の値になり、その絶対値は作用したトルクの大きさを示すことになる。
【0208】
一方、逆回りのトルク、すなわち、Z軸負まわりのトルク−Mzが作用したときの各検出部D1〜D4の挙動は、
図31の表とは逆になり、検出点Q1,Q3には、圧縮力f1が作用し、検出点Q2,Q4には、伸張力f2が作用する。したがって、容量素子C1,C3の静電容量値は増加し、容量素子C2,C4の静電容量値は減少する。その結果、演算式「Mz=−C1+C2−C3+C4」に基づいて得られる演算値Mzは負の値になり、その絶対値は作用したトルクの大きさを示すことになる。結局、この演算式で得られる演算値Mzの符号は、作用したトルクの向きを示し、絶対値はその大きさを示すものになる。
【0209】
なお、ここでは説明の便宜上、右側支持体20に負荷がかかった状態において、左側支持体10に加わった回転モーメントを検出対象となるトルクとして考えたが、もちろん、左側支持体10に負荷がかかった状態において、右側支持体20に加わった回転モーメントを検出対象となるトルクとしても、検出原理は全く同じである。
【0210】
したがって、ここで説明した例の場合、
図32の回路図に示されているような検出回路を用いれば、Z軸まわりのトルクを検出することができる。この回路図に示すE501〜E504は、各検出部D1〜D4に設けられた変位電極であり、E201〜E204は、これら変位電極E501〜E504に対向する固定電極であり、C1〜C4は、これらの電極によって構成される容量素子である。また、C/V変換回路101〜104は、それぞれ容量素子C1〜C4の静電容量値C1〜C4を、電圧値V1〜V4に変換する回路であり、変換後の電圧値V1〜V4は、それぞれ各静電容量値C1〜C4に対応した値になる。差分演算器105は、上述した演算式「Mz=−C1+C2−C3+C4」なる演算を行い、その結果を出力端子Tに出力する機能を有する。
【0211】
なお、以上の説明においては、4つの検出部D1〜D4に設けられた4つ全ての容量素子の静電容量値を用いてトルクの方向及び大きさを検出しているが、検出部D1及びD2に設けられた2つの容量素子C1、C2の静電容量値を用いてトルクの方向及び大きさを検出することも可能である。この場合、「Mz=−C1+C2」に基づく演算を行うことにより、作用したZ軸正まわりのトルク+Mzを検出することができる。
【0212】
あるいは、温度が一定の場合や温度補償がなされる場合には、検出部D1に設けられた1つの容量素子C1の静電容量値のみを用いてトルクの方向及び大きさを検出することも可能である。この場合、「Mz=−C1」に基づく演算を行うことにより、作用したZ軸正まわりのトルク+Mzを検出することができる。もちろん、例えば検出部D2に設けられた1つの容量素子C2の静電容量値のみを用いることも可能であり、この場合は、「Mz=C2」に基づく演算を行えばよい。
【0213】
<<< §9. 本発明に係る、波形の検出部を採用した1電極タイプのトルクセンサの実施例 >>>
次に、
図33を参照して、本発明に係る、波形の変形部を有する1電極タイプのトルクセンサの実施例について説明する。
図33は、本実施の形態のトルクセンサの基本構造部を示す概略平面図である。本実施の形態の基本構造部は、第1検出部D1と第2検出部D2とが異なるバネ定数を有するように構成されている。具体的には、図示されるように、第1検出部D1における第1の変形部51及び第2の変形部52の前記肉厚が第2検出部D2における第1の変形部51及び第2の変形部52の前記肉厚よりも薄く構成されていることによって、検出部D1のバネ定数が検出部D2のバネ定数よりも小さくなっている。また、本実施の形態では、第3検出部D3は、第1検出部D1と同じ径方向の肉厚(すなわち同じバネ定数)を有し、第4検出部D4は、第2検出部D2と同じ径方向の肉厚(すなわち同じバネ定数)を有している。但し、本実施の形態においては、容量素子は、第1及び第2検出部D1、D2に対応する位置にのみ配置されており、第3及び第4検出部D3、D4に対応する位置には配置されていない。また、第1及び第2検出部D1、D2に配置された各容量素子C1、C2を構成する各固定電極E201、E202と各変位電極E501、E502の実効対向面積は共に同一である。その他の構成は§7及び§8で説明したトルクセンサと同様であるため、その詳細な説明は省略する。
【0214】
このようなトルクセンサに対してZ軸正まわりのトルクが作用すると、前述したように、第1検出部D1においては、変位電極E501が右側支持体20から遠ざかるように変位し、容量素子C1の静電容量値は減少する。その一方で、第2検出部D2においては、変位電極E502が右側支持体に近づくように変位し、容量素子C2の静電容量値は増加する。但し、本実施の形態においては、第1検出部D1のバネ定数が第2検出部D2のバネ定数よりも相対的に小さいため、変位電極E501の変位の方が変位電極E502の変位よりも大きい。すなわち、容量素子C1の静電容量値の変動量の絶対値の方が、容量素子C2の静電容量値の変動量の絶対値よりも大きい。
【0215】
逆向きにトルクが作用した場合、すなわち、Z軸負まわりのトルクが作用した場合は、これまでとは逆に、環状変形体50(の接続点P11,P12)に対して反時計まわりの回転力が作用する。このため、各変位電極E501、E502の変位方向は、逆の方向になる。
【0216】
このため、以下の[式4]に示すように、一対の電極E201,E501により構成される容量素子C1の静電容量値に相当する第1電気信号T1に基づいて、作用したトルクの方向および大きさを検出することが可能になる。更に、一対の電極E202,E502により構成される容量素子C2の静電容量値の相当する第2電気信号T2に基づいて、作用したトルクの方向および大きさを検出することも可能になる。なお、以下の[式4]において、C1、C2は、容量素子C1、C2の静電容量値をそれぞれ示している。
[式4]
T1=C1
T2=C2
【0217】
本実施の形態では、環状変形体50の特に第1検出部D1に金属疲労が蓄積することに伴って第1及び第2電気信号T1、T2の比率が変化することを利用して、トルクセンサの故障診断を行う。このため、以下の説明においては、各検出部D1、D2に金属疲労が生じていない初期状態での第1及び第2電気信号をT1a、T2aとし、各検出部D1、D2に金属疲労が生じている(蓄積している)状態での第1及び第2電気信号をT1b、T2bとして、それぞれ区別することとする。
【0218】
図34は、
図33の各検出部D1、D2に金属疲労が生じていない状態(初期状態)において、トルクセンサに作用するトルクの大きさと、当該トルクセンサから出力される第1電気信号T1a及び第2電気信号T2aと、の関係を示すグラフであり、
図35は、
図32の各検出部D1、D2に金属疲労が生じている状態において、トルクセンサに作用するトルクの大きさと、当該トルクセンサから出力される第1電気信号T1b及び第2電気信号T2bと、の関係を示すグラフである。各図において、横軸はトルクセンサに作用したトルクを示し、縦軸は当該トルクに応じてトルクセンサから出力される電気信号の大きさを示している。このため、各図において、各電気信号T1a〜T2bを示す直線の傾きは、トルクセンサの検出感度を示すことになる。
【0219】
次に、トルクセンサが正常に機能しているか否かを判定する方法について説明する。本実施の形態のトルクセンサに対して繰り返しの負荷が作用すると、環状変形体50に金属疲労が生じる。金属疲労は、前述したように、トルクによる変形が相対的に大きい第1検出部D1において顕著に発現する。この金属疲労が蓄積されると、第1検出部D1における第1の変形部51及び第2の変形部52の強度が低下し、最終的に当該第1検出部D1において環状変形体が破断することになる。第1検出部D1に金属疲労が蓄積すると、当該第1検出部D1がトルクによって大きく変形されるようになり、初期状態と比較して、トルクに対する第1検出部D1の感度が上昇する。このことは、
図34と
図35とを比較することによって理解される。
【0220】
具体的には、
図34を参照すると、初期状態においては、第1検出部D1に対応する第1電気信号T1aを示す直線の傾き(感度)は2.0である。一方、
図35を参照すると、金属疲労が蓄積している状態においては、第1検出部D1に対応する第1電気信号T1bを示す直線の傾き(感度)は3.0であり、感度が50%上昇している。
【0221】
もちろん、金属疲労は、第2検出部D2にも発現するが、その発現の程度は、第1検出部D1における金属疲労の発現の程度よりも小さい。実際、
図34を参照すると、初期状態においては、第2検出部D2に対応する第2電気信号T2aを示す直線の傾きの絶対値(感度)は0.5である。その一方、
図35を参照すると、金属疲労が蓄積している状態においては、第2検出部D2に対応する第2電気信号T2bを示す直線の傾きの絶対値(感度)は0.6である。従って、感度の上昇は20%にとどまっている。
【0222】
ここで着目すべきは、高弾力部30aと低弾力部30bとで、金属疲労の発現の程度が異なっているということである。本発明は、このことを利用してトルクセンサの故障診断を行うものである。すなわち、初期状態においては、第1電気信号T1aと第2電気信号T2aとの比率(T2a/T1a)の絶対値は、0.25であるのに対し、金属疲労が蓄積している状態においては、第1電気信号T1bと第2電気信号T2bとの比率(T2b/T1b)の絶対値は、0.2に下降している。
【0223】
換言すれば、第1検出部D1と第2検出部D2とで金属疲労の蓄積の特性が異なることに起因して、繰り返しの負荷に伴って第1電気信号T1と第2電気信号T2との比率が次第に変化する。そして、トルクセンサに対して繰り返しの負荷が更に作用すると、環状変形体50は最終的に第1検出部D1において破断し、第1検出部D1に配置された容量素子C1が正常に機能しなくなる。一方、この時点では第2検出部D2に配置された容量素子C2は正常に機能している蓋然性が高い。
【0224】
以上のことから、トルクの計測を相対的にバネ定数が大きい第1検出部D1側に配置された容量素子C1を用いて行いつつ、ある時点における第1電気信号T2bと第2電気信号T2bとの比率と、初期状態における第1電気信号T1aと第2電気信号T2aとの比率と、の差が所定の範囲内にあるか否かを評価することによって、トルクセンサが正常に機能しているか否かを判定することができる。もちろん、トルクの計測を相対的にバネ定数が小さい第2検出部D2に配置された容量素子C2の静電容量値の変動量に基づいて行ってもよい。容量素子C2は、容量素子C1と比較してトルクに対し大きく変化する(感度が高い)ためS/Nに優れたトルクの計測が可能である。
【0225】
以上の判定原理を具現化するために、本実施の形態のトルクセンサも、前述した
図19に示す検出回路を有している。この検出回路による故障診断の方法については、§4と略同様であるため、その詳細な説明は省略する。但し、本実施の形態では、検出回路のマイコン47は、差分検出を行う必要が無い。このため、マイコン47は、C/V変換器41から提供される2つの電圧値をそのまま第1電気信号T1及び第2電気信号T2として出力すればよい。
【0226】
以上のような本実施の形態のトルクセンサによれば、第2検出部D2よりも第1検出部D1の方が先に金属疲労することに伴って、第1電気信号T1と第2電気信号T2との比率に変化が生じる。このことに着目して、環状変形体50が破断する前に当該環状変形体50(第1検出部D1)に金属疲労が生じていること検出することにより、環状変形体50の故障を診断することが可能なトルクセンサを提供することができる。
【0227】
なお、本実施の形態では、環状変形体50に第3検出部D3及び第4検出部D4が設けられている。これは、トルクセンサにトルクが作用した際に当該環状変形体50(の第1及び第2検出部D1、D2)が回転軸に関して対称的に弾性変形され、第1電気信号T1及び第2電気信号T2に基づいて、作用したトルクの方向及び大きさを容易に計測できるようにすることを狙いとしている。しかしながら、第1電気信号T1及び第2電気信号T2に対して適宜の信号補償を行うことによって、第3検出部D3及び第4検出部D4を設けないこと、すなわち環状変形体50のうちY座標が負の領域を例えば一様な弾性体から構成することも、可能である。
【0228】
また、本実施の形態では、第1検出部D1及び第3検出部D3が、環状変形体50の基本環状路に沿って見た場合に径方向外側に偏って配置されている。しかしながら、このような態様には限定されず、例えば、環状変形体50の基本環状路に沿って見た場合に径方向内側に偏って配置しても良い。但し、
図33に示すように、径方向外側に沿って配置した方が、作用したトルクによって当該検出部により大きな変位がもたらされるため、トルクの検出感度が高められ、有利である。
【0229】
<<< §10. 本発明に係る、波形の検出部を有する2電極タイプのトルクセンサの実施例 >>>
次に、
図36を参照して、本発明に係る、波形の検出部を有する2電極タイプのトルクセンサについて説明する。
図36は、本実施の形態のトルクセンサの基本構造部を示す概略平面図である。
図36において、説明の便宜上、X,Y,V,W軸が重ねて描かれている。2電極タイプのトルクセンサは、§4において説明したように差分検出を行うことが可能であるため、温度変化の影響を排除した、より高精度なトルクの検出を行うことが可能である。
【0230】
本実施の形態によるトルクセンサの環状変形体50は、第1及び第4検出部D1、D4と第2及び第3検出部D2、D3とが異なるバネ定数を有するように構成されている。具体的には、図示されるように、検出部D2、D3の径方向の肉厚が、検出部D1、D4の径方向の肉厚よりも相対的に薄く構成されており、これによって第2及び第3検出部D2、D3のバネ定数が第1及び第4検出部D1、D4のバネ定数よりも小さくなっている。一方、第2検出部D2の径方向の肉厚(すなわちバネ定数)と第3検出部D3の径方向の肉厚(すなわちバネ定数)とは同一であり、第1検出部D1の径方向の肉厚(すなわちバネ定数)と第4検出部D4の径方向の肉厚(すなわちバネ定数)とは同一である。その他の構成は§7及び§8で説明したトルクセンサと同様であるため、その詳細な説明は省略する。なお、前述の2電極タイプのトルクセンサとは、以上のようにバネ定数が相対的に小さい検出部D2、D3及びバネ定数が相対的に大きい検出部D1、D4の、各2つの容量素子が配置されているトルクセンサを意味することとする。
【0231】
このようなトルクセンサに対してZ軸正まわりのトルクが作用すると、前述したように、検出部D1、D3においては、変位電極E501が右側支持体20から遠ざかるように変位し、容量素子C1、C3の静電容量値は減少する。その一方で、検出部D2、D4においては、変位電極E502が右側支持体に近づくように変位し、容量素子C2、C4の静電容量値は増加する。
【0232】
但し、本実施の形態の環状変形体50は、検出部D1、D4のバネ定数が検出部D2、D3のバネ定数よりも大きい。このため、検出部D1、D4の変位よりも検出部D2、D3の変位の方が大きい。その結果、正のV軸上に配置された一対の電極E201,E501の電極間隔は狭まり、負のV軸上に配置された一対の電極E203,E303の電極間隔はより一層狭まる。更に、正のW軸上に配置された一対の電極E202,E302の電極間隔は広がり、負のW軸上に配置された一対の電極E204,E304の電極間隔は一層広がることになる。
【0233】
逆向きにトルクが作用した場合、すなわち、Z軸負まわりのトルクが作用した場合は、環状変形体50(の接続点P11,P12)に対して反時計まわりの回転力が作用する。このため、各検出部D1〜D4に位置する各変位電極E301〜D304の変位方向は、逆の方向になる。
【0234】
このため、以下の[式5]に示すように、一対の電極E202,E502により構成される容量素子C2、及び、一対の電極E203,E503により構成される容量素子C3の静電容量値の差分に相当する第1電気信号T1に基づいて、作用したトルクの方向および大きさを検出することが可能になる。更に、一対の電極E204,E504により構成される容量素子C4、及び、一対の電極E201,E501により構成される容量素子C1、の静電容量値の差分に相当する第2電気信号T2に基づいても、作用したトルクの方向および大きさを検出することが可能になる。なお、以下の[式5]において、C1〜C4は、それぞれ容量素子C1〜C4の静電容量値を示している。
[式5]
T1=C2−C3
T2b=C4−C1
【0235】
本実施の形態でも、第2及び第3検出部D2、D3に金属疲労が蓄積することに伴って、これらT1とT2との比率が変化することを利用して、トルクセンサの故障診断を行う。ここでも、以下の説明においては、§9と同様に、初期状態での第1及び第2電気信号をT1a、T2aとし、各検出部D1〜D4に金属疲労が生じている(蓄積している)状態での第1及び第2電気信号をT1b、T2bとして、それぞれ区別することとする。本実施の形態では、トルクセンサに作用するトルクの大きさと、初期状態での第1及び第2電気信号T1a、T2aとの関係は、
図34に示すグラフと同じである。また、トルクセンサに作用するトルクの大きさと、各検出部D1〜D4に金属疲労が生じている状態での第1及び第2電気信号T1b、T2bと、の関係は、
図35に示すグラフと同じである。
【0236】
以上のような本実施の形態によるトルクセンサが正常に機能しているか否かを判定するための原理及び方法は、§9と同じである。すなわち、§9における第1電気信号T1(T1a、T1b)及び第2電気信号T2(T2a、T2b)を[式5]に読み替えることによって、本実施の形態によるトルクセンサの故障判定の原理及び方法が理解される。このため、ここでは、当該原理及び方法の詳細な説明は省略する。但し、本実施の形態では、第1及び第4検出部D1、D4、並びに、第2及び第3検出部D2、D3にそれぞれ設けられた各2つの容量素子を用いて差分検出が行われる。このため、検出回路のマイコン47は、C/V変換器41から提供される4つの電圧値を[式5]に対応してそれぞれ差分処理することになる。
【0237】
以上のような本実施の形態のトルクセンサによれば、検出部D1、D4よりも検出部D2、D3の方が先に金属疲労することに伴って、第1電気信号T1と第2電気信号T2との比率に変化が生じる。このことに着目して、環状変形体50が破断する前に当該環状変形体50に金属疲労が生じていること検出することにより、環状変形体50の故障を診断することが可能なトルクセンサを提供することができる。
【0238】
<<< §11. 本発明に係る、波形の検出部を有する4電極タイプのトルクセンサの実施例 >>>
次に、
図37を参照して、本発明に係る、波形の検出部を有する4電極タイプのトルクセンサについて説明する。
図37は、本実施の形態のトルクセンサの基本構造部を示す概略平面図である。
図37においても、説明の便宜上、X,Y,V,W軸が重ねて描かれている。4電極タイプのトルクセンサは、§6において説明したように、高精度な差分検出を行うことが可能である。本実施の形態による基本構造部は、2電極タイプ及び1電極タイプのトルクセンサの基本構造部とは異なり、相対的にバネ定数が小さい4つの検出部D1b〜D4bと、相対的にバネ定数が大きい4つの検出部D1a〜D4aと、が連結部L1〜L8を介して周方向に交互に配置されて構成されている。
【0239】
本実施の形態では、図示されるように、検出部D1b〜D4bの径方向の肉厚が、検出部D1a〜D4aの径方向の肉厚よりも相対的に薄く構成されており、これによって検出部D1b〜D4bのバネ定数が検出部D1a〜D4aのバネ定数よりも小さくなっている。また、検出部D1a〜D4aは、互いに同じ径方向の肉厚(すなわち同じバネ定数)を有し、検出部D1b〜D4bは、互いに同じ径方向の肉厚(すなわち同じバネ定数)を有している。
【0240】
各検出部D1a〜D4bの具体的な配置について、Z軸方向から見ると、相対的にバネ定数が小さい検出部D1b〜D4bは、正のX軸と正のV軸とで区画された領域(i)と、正のY軸と正のW軸とで区画された領域(iii)と、負のX軸と負のV軸とで区画された領域(v)と、負のY軸と負のW軸とで区画された領域(vii)と、に各1つずつ配置されており、相対的にバネ定数が大きい検出部D1a〜D4aは、正のV軸と正のY軸とで区画された領域(ii)と、正のW軸と負のX軸とで区画された領域(iv)と、負のV軸と負のY軸とで区画された領域(vi)と、負のW軸と正のX軸とで区画された領域(viii)と、に各1つずつ配置されている。
【0241】
より具体的には、Z軸方向から見ると、検出部D1bは、原点Oを通り正のX軸に対して30°の角度をなす直線上に配置され、検出部D1aは、原点Oを通り正のX軸に対して60°の角度をなす直線上に配置され、検出部D2bは、原点Oを通り正のX軸に対して120°の角度をなす直線上に配置され、検出部D2aは、原点Oを通り正のX軸に対して150°の角度をなす直線上に配置され、検出部D3bは、原点Oを通り正のX軸に対して210°の角度をなす直線上に配置され、検出部D3aは、原点Oを通り正のX軸に対して240°の角度をなす直線上に配置され、検出部D4bは、原点Oを通り正のX軸に対して300°の角度をなす直線上に配置され、検出部D4aは、原点Oを通り正のX軸に対して330°の角度をなす直線上に配置されている。
【0242】
そして、各検出部D1a〜D4bには、変位電極E501a〜504bが配置されている。また、これらの変位電極E501a〜504bに対向する位置には、固定電極E201a〜E204bが配置され、右側支持体(不図示)に固定されている。そして、変位電極E501a〜504bと固定電極E201a〜E204bとによって、容量素子C1a〜C4bが構成されている。具体的には、変位電極E501aと固定電極E201aとによって容量素子C1aが構成されており、変位電極E502aと固定電極E202aとによって容量素子C2aが構成されており、変位電極E503aと固定電極E203aとによって容量素子C3aが構成されており、変位電極E504aと固定電極E204aとによって容量素子C4aが構成されている。更に、変位電極E501bと固定電極E201bとによって容量素子C1bが構成されており、変位電極E502bと固定電極E202bとによって容量素子C2bが構成されており、変位電極E503bと固定電極E203bとによって容量素子C3bが構成されており、変位電極E504bと固定電極E204bとによって容量素子C4bが構成されている。本実施の形態でも、各容量素子を構成する固定電極E201a〜E204bと変位電極E501a〜E504bとの実効対向面積がそれぞれ等しい。その他の構成は§7及び§8で説明したトルクセンサと同様であるため、その詳細な説明は省略する。
【0243】
本実施の形態のトルクセンサに対してZ軸正まわりのトルクが作用すると、環状変形体50は略楕円状に変形し、V軸は当該楕円の短軸方向、W軸は当該楕円の長軸方向になる。具体的には、領域(i)の検出部D1bと領域(ii)の検出部D1aとは、共に正のV軸方向に変位するが、バネ定数が小さい領域(i)の検出部D1bの方が大きく変位する。同様に、領域(iii)の検出部D2bと領域(iv)の検出部D2aとは、共に負のW軸方向に変位するが、領域(iii)の検出部D2bの方が大きく変位する。また、領域(v)の検出部D3bと領域(vi)の検出部D3aとは、共に負のV軸方向に変位するが、領域(v)の検出部D3bの方が大きく変位する。領域(vii)の検出部D4bと領域(viii)の検出部D4aとは、共に正のW軸方向に変位するが、領域(vii)の検出部D4bの方が大きく変位する。
【0244】
逆向きにトルクが作用した場合、すなわち、Z軸負まわりのトルクが作用した場合は、これとは逆に、環状変形体50(の接続点P11,P12)に対して反時計まわりの回転力が作用する。このため、環状変形体50のV軸及びW軸の近傍に位置する各変位電極E501a〜E504bの変位方向は、逆の方向になる。
【0245】
このため、以下の[式6]に示すように、各一対の電極により構成される容量素子C1b、C2b、C3b、C4bの各静電容量値に基づく第1電気信号T1によって、作用したトルクの方向および大きさを検出することが可能である。更に、各一対の電極により構成される容量素子C1a、C2a、C3a、C4aの各静電容量値に基づく第2電気信号T2によっても、作用したトルクの方向および大きさを検出することが可能である。なお、以下の[式6]において、C1a〜C4bは、容量素子C1a〜C4bの静電容量値を示している。
[式6]
T1=(C1b+C3b)−(C2b+C4b)
T2=(C1a+C3a)−(C2a+C4a)
【0246】
すなわち、本実施の形態におけるトルクセンサに採用されている検出回路は、2つの容量素子C1b、C3bの静電容量値の和と、2つの容量素子C2b、C4bの静電容量値の和と、の差」に相当する第1電気信号T1と、2つの容量素子C1a、C3aの静電容量値の和と、2つの容量素子C2a、C4aの静電容量値の和と、の差」に相当する第2電気信号T2と、を作用したトルクを示す電気信号として出力するようになっている。
【0247】
本実施の形態でも、とりわけ各検出部D1a〜D4bに金属疲労が蓄積することに伴ってT1とT2との比率が変化することを利用して、トルクセンサの故障診断を行う。このため、ここでも、§9と同様に、初期状態での第1及び第2電気信号をT1a、T2aとし、各検出部D1a〜D4bに金属疲労が生じている(蓄積している)状態での第1及び第2電気信号をT1b、T2bとして、それぞれ区別することとする。本実施の形態では、トルクセンサに作用するトルクの大きさと、初期状態での第1及び第2電気信号T1a、T2aとの関係は、
図34に示すグラフと同じである。また、トルクセンサに作用するトルクの大きさと、各検出部D1a〜D4bに金属疲労が生じている状態での第1及び第2電気信号T1b、T2bと、の関係は、
図35に示すグラフと同じである。
【0248】
以上のような本実施の形態によるトルクセンサが正常に機能しているか否かを判定するための原理及び方法は、§9と同じである。すなわち、§9における第1電気信号T1(T1a、T1b)及び第2電気信号T2(T2a、T2b)を[式6]に読み替えることによって、本実施の形態によるトルクセンサの故障判定の原理及び方法が理解される。このため、ここでは、当該原理及び方法の詳細な説明は省略する。
【0249】
但し、本実施の形態では、高弾力部30a側及び低弾力部30b側に設けられた各4つの容量素子を用いて高精度な差分検出が行われる。このため、検出回路のマイコン47は、「2つの容量素子C1a、C3aの静電容量値の和と、2つの容量素子C2a、C4aの静電容量値の和と、の差」に相当する第1電気信号T1と、「2つの容量素子C1b、C3bの静電容量値の和と、2つの容量素子C2b、C4bの静電容量値の和と、の差」に相当する第2電気信号T2と、を作用したトルクを示す電気信号として出力することになる。
【0250】
以上のような本実施の形態のトルクセンサによれば、相対的にバネ定数が大きい検出部D1a〜D4aよりも相対的にバネ定数が小さい検出部D1b〜D4bの方が先に金属疲労することに伴って、第1電気信号T2aと第2電気信号T2bとの比率に変化が生じる。このことに着目して、環状変形体50が破断する前に当該環状変形体50(検出部D1a〜D4b)に金属疲労が生じていること検出することにより、環状変形体50の故障を診断することが可能なトルクセンサを提供することができる。
【0251】
<<< §12. トルクセンサの基本構造部の変形例 >>>
これまで説明したトルクセンサは、例えば
図1に示すように、環状変形体30が左側支持体10と右側支持体20との間に配置された基本構造部を有していたが、このような形態には限られない。
【0252】
図38は、本発明のトルクセンサに採用され得る基本構造部の変形例を示す概略正面図である。
図38に示すように、本変形例の基本構造部は、環状変形体30と、環状変形体30の貫通開口部H30の内部に配置された円環状の内側支持体310と、環状変形体30の外周面を取り囲むように配置された円環状の外側支持体320と、を有している。図示されるように、環状変形体30、内側支持体310及び外側支持体320は、互いに同心である。
【0253】
また、
図38に示すX軸上には、内側支持体310と環状変形体30との間に第1及び第2内側接続部材331,332が原点Oに関して対称に設けられており、これら第1及び第2内側接続部材331,332によって、内側支持体310の外周面と環状変形体30の内周面とが接続されている。更に、Y軸上には、環状変形体30と外側支持体320との間に第1及び第2外側接続部材341,342が原点Oに関して対称に設けられており、これら第1及び第2外側接続部材341,342によって、環状変形体30の外周面と外側支持体320の内周面とが接続されている。従って、本変形例の基本構造部を採用したトルクセンサは、環状変形体30、内側支持体310及び外側支持体320がいずれもXY平面上に配置されているため、前述の
図2に示すトルクセンサよりも薄型の構造を有している。
【0254】
このような基本構造部に対する固定電極及び変位電極の配置を、
図39を参照して説明する。
図39は、2電極タイプのトルクセンサにおいて、容量素子が環状変形体30と内側支持体310との間に構成される場合における、固定電極及び変位電極の配置を示す図である。環状変形体30は、
図15に示す例と同様に、Y軸が正の領域が高弾力部30aであり、Y軸が負の領域が低弾力部30bとなっている。
【0255】
図39においては、基本構造部に4つの容量素子が設けられている。具体的には、説明の便宜上、XY平面上に、原点Oを通りX軸およびY軸に対して45°をなすV軸およびW軸を定義すると、環状変形体30の内周面には、正のV軸上に変位電極E31aが配置されており、正のW軸上に変位電極E32aが配置されており、負のV軸上に変位電極E31bが配置されており、負のW軸上に変位電極E32bが配置されている。
【0256】
そして、内側支持体310の外周面には、変位電極E31aに対向する位置に固定電極E21aが配置されており、変位電極E32aに対向する位置に固定電極E22aが配置されており、変位電極E31bに対向する位置に固定電極E21bが配置されており、変位電極E32bに対向する位置に固定電極E22bが配置されている。換言すれば、内側支持体310の外周面には、正のV軸上に固定電極E21aが配置されており、正のW軸上に固定電極E22aが配置されており、負のV軸上に固定電極E21bが配置されており、負のW軸上に第4固定電極E22bが当該W軸に関して対称的に配置されている。
【0257】
このような構成のトルクセンサは、
図15〜
図19を参照して既に説明したトルクセンサと同様の機能を提供するため、その詳細な説明は省略する。もちろん、図示されていないが、各容量素子が環状変形体30と外側支持体320との間に構成されていても良い。すなわち、変位電極E31a〜E32bが環状変形体30の外周面に配置され、固定電極E21a〜E22bが外側支持体320の内周面に配置されていても良い。
【0258】
また、このような構造は、1電極タイプ及び4電極タイプのトルクセンサに対しても採用し得るし、§7〜§11において説明した、波形の検出部を有するトルクセンサに対しても採用し得る。
【0259】
また、ここでは、内側支持体310及び外側支持体320が共に円環状である場合を例示したが、このような形態に限定されるものではなく、環状変形体30に対してトルクを伝達することが可能であれば、例えばロッド状や半円状などの他の形態でも良い。
【0260】
あるいは、他の変形例として、
図1に示す構造と
図39に示す構造とを組み合わせることも可能である。すなわち、図示されていないが、このような構造の一例として、
図39に示す外側支持体320と環状変形体30とが第1及び第2外側接続部材341、342を介して接続され、更に、環状変形体30が
図1の右側支持体20に凸状部21、22を介して接続される構造が挙げられる。もちろん、外側支持体320に代えて内側支持体310を採用することも可能であるし、右側支持体20に代えて左側支持体10を採用することも可能である。
【0261】
<<< §14. 固定電極と変位電極との実効対向面積を一定にした変形例 >>>
なお、Z軸まわりのトルクが作用すると、例えば
図30に示すように、各検出点Q1〜Q4の位置は、環状変形体30の変形に応じて、環状変形体30の円周に沿った方向に若干の変位を生じることになる。具体的には、図示の例の場合、各検出点Q1〜Q4の位置は、V軸もしくはW軸から時計まわりの方向に若干ずれた位置に移動している。したがって、トルクが作用すると、
図29に示す検出点Qも図の上下に移動することになり、変位部53(変位電極E50)は、図の左右方向に変位を生じるだけでなく、図の上下方向にも変位を生じる。
【0262】
ただ、
図29に示す実施例の場合、変位電極E50のサイズ(平面的なサイズ、すなわち、占有面積)に比べて、固定電極E20のサイズ(平面的なサイズ、すなわち、占有面積)の方が大きく設定されているため、変位電極E50が図の上下方向や図の紙面に垂直な方向に変位したとしても、固定電極E20に対する変位電極E50の対向面積に変化は生じない。したがって、容量素子Cの実効面積は、常に一定に維持されることになる。
【0263】
図40は、このように、固定電極E20に対する変位電極E50の相対位置が変化した場合にも、容量素子Cの実効面積が一定に維持される原理を示す図である。いま、
図40(a)に示すように、一対の電極EL,ESを互いに対向するように配置した場合を考える。両電極EL,ESは、互いに所定間隔をおいて平行になるように配置されており、容量素子を構成している。ただ、電極ELは電極ESに比べて面積が大きくなっており、電極ESの輪郭を電極ELの表面に投影して正射影投影像を形成した場合、電極ESの投影像は、電極ELの表面内に完全に含まれる。この場合、容量素子としての実効面積は、電極ESの面積になる。
【0264】
図40(b)は、
図40(a)に示す一対の電極ES,ELの側面図である。図にハッチングを施した領域は、実質的な容量素子としての機能を果たす部分であり、容量素子としての実効面積は、このハッチングを施した電極の面積(すなわち、電極ESの面積)ということになる。
【0265】
いま、図に一点鎖線で示すような鉛直面Uを考える。電極ES,ELは、いずれも鉛直面Uに平行になるように配置されている。ここで、電極ESを鉛直面Uに沿って垂直上方に移動させたとすると、電極EL側の対向部分は上方に移動するものの、当該対向部分の面積に変わりはない。電極ESを下方に移動させても、紙面の奥方向や手前方向に移動させても、やはり電極EL側の対向部分の面積は変わらない。
【0266】
要するに、面積が小さい方の電極ESの輪郭を、面積が大きい方の電極ELの表面に投影して正射影投影像を形成した場合、電極ESの投影像が、電極ELの表面内に完全に含まれる状態を維持している限り、両電極によって構成される容量素子の実効面積は、電極ESの面積に等しくなり、常に一定になる。
【0267】
したがって、
図29に示す変位電極E50と固定電極E20との関係が、
図40に示す電極ESと電極ELとの関係と同様の関係になっていれば、トルクの作用によって、変位電極E50がどの方向に変位したとしても、変位電極E50と固定電極E20との間に平行が保たれている限り、容量素子を構成する一対の電極の実効対向面積は一定になる。これは、容量素子Cの静電容量値の変化が、専ら、変位電極E50と固定電極E20との距離に応じて生じることを意味する。別言すれば、容量素子Cの静電容量値の変化は、変位部53の法線Nに沿った方向への変位にのみ依存して生じることになり、法線Nに直交する方向への変位には依存しないことを意味する。これは、上述した原理に基づいて、作用したトルクを正確に検出する上で重要である。
【0268】
結局、本発明を実施する上では、所定回転方向のトルクが作用した結果、固定電極E20に対する変位電極E50の相対位置が変化した場合にも、容量素子Cを構成する一対の電極の実効対向面積が変化しないように、固定電極E20および変位電極E50のうちの一方の面積を他方の面積よりも大きく設定しておくのが好ましい。
【0269】
なお、
図40には、2枚の電極EL,ESとして、矩形状の電極を用いた例を示したが、本発明に係るトルクセンサに用いる変位電極E50および固定電極E20の形状は任意であり、たとえば、円形の電極を用いるようにしてもかまわない。また、§4−3で述べたとおり、環状変形体50を金属などの導電性材料により構成し、その表面の一部の領域を変位電極E50として利用したり、右側支持体20を金属などの導電性材料により構成し、その表面の一部の領域を固定電極E20として利用するようにしてもかまわない。
【0270】
もちろん、このような構造は、§4〜§6において説明した2電極タイプ、1電極タイプ及び4電極タイプの各トルクセンサに対しても適用可能であるし、§10、§11において説明した2電極タイプ及び4電極タイプの波形の検出部を有するトルクセンサに対して適用可能である。
本発明のトルクセンサは、環状変形体と、環状変形体の弾性変形に起因した変位を生じる第1及び第2変位電極と、第1及び変位電極に対向する位置に配置された第1及び第2固定電極と、それぞれの変位電極と固定電極とによって構成される第1及び第2容量素子の静電容量値の変動量に基づいて、トルクを示す電気信号を出力する検出回路と、を備えている。環状変形体は、高弾力部と、前記高弾力部のバネ定数よりも小さいバネ定数を有する低弾力部と、を有している。検出回路は、第1容量素子の静電容量値に相当する第1電気信号と、前記第2容量素子の静電容量値に相当する第2電気信号と、を作用したトルクを示す電気信号として出力し、第1電気信号と第2電気信号との比率に基づいて、当該トルクセンサが正常に機能しているか否かを判定する。