(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一の機能を有する部材には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。また、以下の実施の形態では、特に必要なとき以外は同一または同様な部分の説明を原則として繰り返さない。
【0016】
本実施の形態の半導体装置は、半導体チップの上面に形成される再配線層の最上面にPd(パラジウム)膜を形成し、その上面にCu(銅)またはAu(金)からなるボンディングワイヤを接続するものである。
【0017】
まず、本実施の形態の半導体装置を
図1〜
図3を用いて説明する。
図1は本実施の形態の半導体装置を構成する半導体チップを、ボンディングワイヤを介してリードに接続し、モールド樹脂により封止したICパッケージの断面図である。ここでは、表面に半導体素子を含むIC(Integrated Circuit)を形成した半導体ウエハ(半導体基板)を切削して個片化したダイを半導体チップと呼ぶ。なお、本実施の形態では、外部接続端子としてボンディングワイヤBWを例示するが、これに限られず、半田またはAu(金)などからなるバンプ電極にも適用できる。
【0018】
図1に示すように、本実施の形態の半導体装置は、ダイパッドDP上に搭載された半導体チップCPを有する。半導体チップCPは、複数のボンディングワイヤBWを介して複数のリードLDに電気的に接続されており、半導体チップCP、ダイパッドDP、および複数のボンディングワイヤBWは、エポキシ樹脂などの絶縁体からなるモールドMOによって覆われて封止されている。また、複数のリードLDのそれぞれは、ボンディングワイヤBWが接続された領域を含む一部がモールドMOによって封止され、他の一部がモールドMOから外側に露出している。
【0019】
ダイパッドDPおよびリードLDは、Cu(銅)などからなる一の金属板をプレス打ち抜き法またはエッチング法などにより加工することで形成したリードフレームが、切断されて形成された導体板である。ボンディングワイヤBWは、例えばCu(銅)からなる導線であり、ICパッケージPGの外部と半導体チップCPとを電気的に接続するために形成されている。
【0020】
次に、
図2に半導体チップCPの平面レイアウトの一部を示す。半導体チップCPは平面視において矩形の形状を有しており、
図2には半導体チップCPの四隅のうちの一つの角部の近傍の再配線層のレイアウトを示している。
図2に示すように、半導体チップCPの上面には、複数の再配線層W1が形成されている。再配線層W1は、
図3を用いて後述するように、複数の導体膜の積層膜からなり、その最上層にはPd(パラジウム)からなる膜が形成されている。各再配線層W1の周囲には、後述する絶縁層であるポリイミド層MPが形成されている。
【0021】
図2に示すように、複数の再配線層W1のうち一部は、配線幅が比較的小さい領域と、比較的大きい領域とを有している。再配線層W1のうち、配線幅が比較的大きく、面積が大きい領域は、ボンディングワイヤBW(
図1参照)の端部を接着させるパッドとして用いられる領域である。なお、
図2ではボンディングワイヤBWの図示を省略している。ボンディングワイヤBWは、再配線層W1の上面にPd(パラジウム)膜が露出している領域であればいずれの領域にも接続させることが可能である。これは、再配線層W1の上面が全て、Cu(銅)ワイヤまたはAu(金)ワイヤとの接続性が比較的良いPd(パラジウム)膜により覆われているためである。ただし、ボンディングワイヤBWを接着させる領域の再配線層W1は、ある程度の面積を必要とする。したがって、ここでは例えば、前述した配線幅が比較的大きい領域にボンディングワイヤBWを接続する。
【0022】
次に、
図3に本実施の形態の半導体装置を構成する半導体チップの断面図を示す。
図3は、
図2のA−A線における断面を示すものである。
図3に示す半導体基板SBは、詳しい図示を省略しているが、例えば単結晶シリコンからなる基板と、その上面に形成されたMISFET(Metal Insulator Semiconductor Field Effect Transistor)などの半導体素子と、前記半導体素子上に形成された配線層を含むものである。
【0023】
具体的には、半導体基板SBはその底部に前記単結晶シリコンからなる基板と、その上面に形成された複数の半導体素子を有する。前記基板の上面および前記複数の半導体素子は層間絶縁膜により覆われ、層間絶縁膜を貫通するコンタクトプラグが、前記基板または前記複数の半導体素子などに接続されている。層間絶縁膜上には複数の層間絶縁膜が前記基板側から積層されており、前記複数の層間絶縁膜のそれぞれには、ダマシン法などにより形成された配線が埋め込まれ、上下の配線間には、配線同士を電気的に接続するビアが形成されている。このように、半導体基板SBは、基板、複数の半導体素子、複数の層間絶縁膜および複数の配線を含んでいる。
【0024】
図3に示す電極パッドM1は、例えばAl(アルミニウム)からなる導体膜であり、前述した複数の配線を介して基板上の半導体素子に電気的に接続されている。半導体基板SB上にはパッシベーション膜PVが形成されており、パッシベーション膜PVにより、半導体基板SBの上面および電極パッドM1の表面の一部は覆われている。ただし、電極パッドM1の上面の一部は、パッシベーション膜PVの開口部から露出している。パッシベーション膜PVは、配線工程が完了して形成された半導体基板SBの上面を外的な損傷から保護するための被膜(絶縁膜)であり、例えば、酸化シリコン膜とこの酸化シリコン膜上に配置された窒化シリコン膜とからなる積層構造を有している。
【0025】
また、パッシベーション膜PV上にはポリイミド層MPが形成されている。ポリイミド層MPはパッシベーション膜PVよりも膜厚が厚い絶縁層であり、電極パッドM1上に開口部を有している。ポリイミド層MPの開口部の底部にはパッシベーション膜PVの開口部が露出しているため、電極パッドM1はパッシベーション膜PVおよびポリイミド層MPの両方から露出しいている。ポリイミド層MPの材料としては、例えば感光性のポリイミドを用いる。
【0026】
ポリイミド層MP、パッシベーション膜PVおよび電極パッドM1のそれぞれの上には、半導体基板SB側から順に、第1シード膜S1、第2シード膜S2、Cu(銅)膜C1、Ni(ニッケル)膜N1およびPd(パラジウム)膜P1が形成されている。第1シード膜S1、第2シード膜S2、Cu膜C1、Ni膜N1およびPd膜P1は再配線層W1を構成している。第1シード膜S1は例えばCr(クロム)からなり、第2シード膜S2は例えばCu(銅)からなり、第1シード膜S1および第2シード膜S2は、再配線層W1を主に構成するCu膜C1を形成するためのシード膜SEを構成している。Cu膜C1、Ni膜N1およびPd膜P1は、シード膜SE上に電解めっき法により連続的に形成された金属膜である。
【0027】
再配線層W1を構成するシード膜SE、Cu膜C1、Ni膜N1およびPd膜P1は平面視において重なる同一のパターン形状を有している積層膜であり、これらの膜の側壁には、いずれも導体膜は接していない。つまり、シード膜SEの上面は全てCu膜C1に覆われており、Cu膜C1の上面は全てNi膜N1により覆われており、Ni膜N1の上面は全てPd膜P1により覆われているが、再配線層W1を構成する積層膜のうちのいずれの膜も、その側壁を上層の導体膜により覆われていない。
【0028】
例えば、Cu膜C1の側壁はNi膜N1およびPd膜P1から露出しており、Ni膜N1の側壁はPd膜P1から露出しており、Pd膜P1はNi膜N1の側壁またはCu膜C1の側壁を覆っていない。したがって、シード膜SE、Cu膜C1、Ni膜N1およびPd膜P1は、いずれも平面視において同一の面積を有している。
【0029】
再配線層W1はポリイミド層MPの上面の一部を覆う配線パターンであり、ポリイミド層MPの開口部を覆っている。したがって、再配線層W1はポリイミド層MPおよびパッシベーション膜PVのそれぞれの開口部内に埋め込まれており、電極パッドM1の上面に電気的に接続されている。再配線層W1の上面の一部にはボンディングワイヤBWが接着されている。したがって、半導体基板SB内の半導体素子は、電極パッドM1、再配線層W1およびボンディングワイヤBWを介してリードLD(
図1参照)に電気的に接続されている。半導体装置を動作させる際は、電極パッドM1、再配線層W1およびボンディングワイヤBWを介してICパッケージ(
図1参照)の外部から半導体素子などに所定の電位を供給し、電気信号を入力し、また、半導体素子などから外部に電気信号を出力する。
【0030】
再配線層W1を構成する積層膜のうち、電流を流すために主に使われる主導電膜はCu膜C1である。したがって、再配線層W1を構成する各膜のうち、Cu膜C1が最も大きい膜厚を有している。Ni膜N1は、再配線層W1にボンディングワイヤBWを接着させる工程において、その圧着の衝撃により半導体基板SB内の配線層または半導体素子などが破壊されることを防ぐ役割を有している。このように衝撃吸収の役割を果たすために、Ni膜N1の膜厚は、少なくとも1.0μm必要である。Ni膜N1は、具体的には2.5nmまたは4.5nmなどの膜厚で形成することが考えられる。
【0031】
Pd膜P1は再配線層W1の最上面に形成された膜であり、ボンディングワイヤBWを再配線層W1の上面に直接接続するための電極パッド(ボンディングパッド)としての役割を有する膜である。Pd(パラジウム)は特にCu(銅)との接着性がAu(金)よりも優れているため、ここではAu膜ではなくPd膜を電極パッドとして用いることで、Cu(銅)からなるボンディングワイヤBWと再配線層W1との接着性を高めている。Pd膜P1は、その膜厚が薄いほど、製造工程においてPd膜P1を形成するために行うめっき工程にかける時間を短縮することができ、また、膜厚が薄いことで材料費を低減することができる。したがって、Pd膜P1の膜厚は1.0μm未満とすることで、半導体装置の製造コストを低減することができる。
【0032】
また、Pd膜P1はボンディングワイヤBWと電極パッドとして用いる再配線層W1との接続強度を高めるために形成された膜であり、その接続強度を安定して実現させるには、Pd膜P1の膜厚は0.2μm以上必要である。つまり、本実施の形態において、Pd膜P1の膜厚は0.2μm以上1.0μm未満であり、Cu膜C1およびNi膜N1のいずれの膜の膜厚よりも小さい。
【0033】
このように、再配線層W1を構成するPd膜P1の底面にはNi膜N1が接しており、Ni膜N1の底面にはCu膜C1が接しており、それぞれの膜厚は、Pd膜P1はNi膜N1より小さく、Ni膜N1はCu膜C1より小さくなっている。これにより、Cu膜C1の膜厚を厚くすることで導電性を高め、Ni膜N1を1.0μm以上の膜厚とすることでボンディングに対する衝撃耐性を向上し、Pd膜P1を1.0μm未満の膜厚とすることで半導体装置の製造コストを低減することを可能としている。
【0034】
ここで、比較例として、半導体装置の配線レイアウトを
図12に示し、当該半導体装置の断面図を
図13に示す。
図13は、
図12のB−B線における断面図である。
図12では、電極パッドWPの下層に形成された再配線層W2の輪郭を破線で示している。
【0035】
図12に示すように、比較例として示す半導体装置の半導体チップCPaの配線レイアウトは、本実施の形態と異なり、再配線層W2上の一部に、Au(金)からなる電極パッドWPが形成されている。つまり、
図12において図示を省略しているボンディングワイヤBW(
図13参照)は、再配線層W2の上面ではなく電極パッド(ボンディングパッド)WPの上面に直接接続されている。また、再配線層W2の最上面にPd膜は形成されておらず、Ni膜が形成されている。このように、再配線層W1上の一部のみに電極パッドWPを形成している理由は、電極パッドWPを構成するAu(金)が高価であること、および、Au(金)が、半導体チップCPaを覆うモールド樹脂(図示しない)との接着性が悪いことにある。
【0036】
このため、
図12に示す比較例の半導体チップCPaでは、電極パッドWPを極力小さい面積で形成している。したがって、電極パッドWPは再配線層W2の上面の一部のみを覆うように形成されており、他の領域では再配線層W2の上面が電極パッドWPから露出している。このように、Au(金)からなる導体膜を再配線層W2上の電極パッドとして用いる場合は、モールド樹脂との密着性の低下、および製造コストの増大を防ぐために、電極パッドWPを形成する面積を極力小さくしている。つまり、電極パッドWPの面積を、ボンディングワイヤを接続させるための最小限の面積としている。
【0037】
図13に示すように、比較例の半導体装置の再配線層W2は、ポリイミド層MP上に順に形成されたシード膜SE、Cu膜C2およびNi膜N2を有する積層膜である。
図13に示す半導体基板SB、電極パッドM1、パッシベーション膜PV、ポリイミド層MPおよびシード膜SEの構造は、
図3に示す本実施の形態と同様である。Cu膜C2およびNi膜N2はシード膜SE上にめっき法により形成された導電膜であり、再配線層W2は
図12に示すようなパターン形状を有している。
【0038】
図13に示すように、再配線層W2の上面上の一部には、Au膜からなる電極パッドWPが形成されている。電極パッドWPと再配線層W2との間には、電極パッドWPの予備の下地層としてNi膜N3が形成されている。Ni膜N3は、平面視において電極パッドWPと同じパターン形状を有している。Ni膜N3および電極パッドWPは、Ni膜N2上にめっき法により形成された導電膜である。電極パッドWPの上面には、Cu(銅)からなるボンディングワイヤBWが圧着されており、電極パッドWPと電気的に接続されている。なお、以下ではCu(銅)からなるボンディングワイヤをCuワイヤ、Au(金)からなるボンディングワイヤをAuワイヤと呼ぶ場合がある。
【0039】
ボンディングワイヤBWの材料としては、Au(金)などを用いることが考えられるが、材料費の低減などを目的として、その材料にCu(銅)を用いることも考えられる。上記した比較例の半導体装置のように、Au(金)からなる電極パッドWPの上面に、Cu(銅)からなるボンディングワイヤBWを接着した場合、Au(金)とCu(銅)との接着性の悪さに起因して、電極パッドWPとボンディングワイヤBWとの接着強度が低下し、半導体装置の信頼性が低下する問題がある。これは、例えばAu膜にAuワイヤを接着する場合、またはPd膜にCuワイヤを接着する場合などに比べて、Au膜とCuワイヤとの接着性が悪いために生じる問題である。
【0040】
また、比較例の半導体装置では、再配線層W2のパターンを電極パッドとして使うことはできず、電極パッドWPを再配線層W2とは異なるパターンで設ける必要がある。そのため、再配線層に直接ボンディングワイヤを接続する場合に比べて、再配線層のレイアウトの自由度が低下し、半導体装置の面積が増大する問題が生じる。このように、配線レイアウトの自由度が低下し、また、Au(金)からなる電極パッドWPの面積を極力小さくした場合、ボンディングワイヤBWと電極パッドWPとの接触面積を十分に確保できず、ボンディングワイヤBWと電極パッドWPとの接続強度が低下する虞がある。
【0041】
これに対し、本実施形態の半導体装置では、
図2および
図3に示すように、上面にワイヤボンディングすることが可能な再配線層W1を設けているため、再配線層W1とは別に電極パッドを形成する必要がない。再配線層W1は、その上面に、Cuワイヤとの接続性がAu膜よりも優れるPd膜P1を有しているため、
図12および
図13に示す比較例の半導体装置よりも、ボンディングワイヤBWの接着強度を向上させることができる。このため、半導体装置の信頼性を向上させることが可能である。
【0042】
また、
図12および
図13に示す半導体装置では、再配線層W2上にボンディング用の電極パッドWPを形成しているが、本実施の形態では、
図2および
図3に示す再配線層W1上に電極パッドを形成する必要がなく、再配線層W1の上面に直接ボンディングワイヤBWを接着することができるため、再配線層W1の配線レイアウトの自由度が向上する。これにより、半導体装置の微細化が可能となる。
【0043】
また、最小限の面積で形成したパターンである
図12の電極パッドWPにボンディングワイヤを接着する場合に比べ、
図2に示す本実施の形態の半導体装置では、再配線層W1の上面であればいずれの領域でもボンディングワイヤを接着することができ、また、配線レイアウトの自由度も向上していることから、ボンディング用の面積をより広く確保することができる。したがって、ボンディングワイヤBW(
図3参照)と再配線層W1の上面とが接着される面積を大きくすることができるため、ボンディングワイヤBWの接着強度を向上させることができる。よって、半導体装置の信頼性を向上させることが可能である。
【0044】
さらに、精度が低いボンディング装置を用いた場合に、ボンディング位置にずれが生じたとしても、再配線層W1の上面のいずれの領域でもボンディングワイヤBWを接着することが可能であるので、ボンディングの位置ずれに起因する接続不良を防ぐことができ、半導体装置の信頼性を向上させることが可能である。
【0045】
また、
図3に示すNi膜N1上には、再配線層W1と異なるパターンのNi膜N3(
図13参照)と、Pd(パラジウム)などよりも高価なAu(金)からなる電極パッドWP(
図13参照)を形成する必要がないため、半導体装置の構造が複雑になることを防ぐことができ、また、半導体装置のコストを低減することができる。
【0046】
なお、上記した比較例および本実施の形態において、Au(金)からなるボンディングワイヤBWを用いた場合は、電極パッドとして用いるAu膜とCuワイヤとの接着性が悪いことに起因する問題は生じない。しかし、本実施の形態では上記したように、再配線層と別に電極パッドを形成する必要がないため、配線レイアウトの自由度が向上する効果、半導体装置のコストが低減する効果、および半導体装置を微細化する効果を得ることができる。また、ボンディング用の面積をより広く確保することができ、ボンディングワイヤBWの接着強度を向上させることができるため、半導体装置の信頼性を向上させることができる。
【0047】
次に、上述した本実施の形態の半導体装置の製造方法について、
図4〜
図11を用いて説明する。
図4〜
図11は本実施の形態の半導体装置の製造方法を示す断面図である。なお、本実施の形態は金属配線に隣接する層間絶縁膜に関する技術であるため、ここでは基板上の半導体素子および配線層を形成する詳しい工程の説明は省略する。
【0048】
まず、通常の半導体製造技術を使用することにより、
図4に示すように、例えば単結晶Si(シリコン)からなる基板上に複数の半導体素子を形成する。この半導体素子とは、例えばMISFETまたは容量素子などである。続いて、前記複数の半導体素子を覆う層間絶縁膜と、当該層間絶縁膜を貫通して前記複数の半導体素子に電気的に接続されたコンタクトプラグを形成する。続いて、前記層間絶縁膜上に複数の層間絶縁膜と、それらの層間絶縁膜のそれぞれに埋め込まれた複数の配線とを形成する。これらの配線は、例えば前記複数の半導体素子に電気的に接続され、半導体素子に電気信号を入出力するための引出し配線として利用される。このようにして、基板、複数の半導体素子、複数の層間絶縁膜および複数の配線を含む半導体基板SBを形成する。
【0049】
次に、半導体基板SBの上面上に、前記複数の配線に電気的に接続された電極パッドM1を形成する。電極パッドM1は例えば、半導体基板SBの上面上にスパッタ法などを用いて形成したAl(アルミニウム)膜を、フォトリソグラフィ技術およびエッチング法を用いてパターニングすることにより形成する。
【0050】
その後、半導体基板SB上に、電極パッドM1を覆うように、表面保護膜となるパッシベーション膜PVを形成する。パッシベーション膜PVは、例えば、酸化シリコン膜とこの酸化シリコン膜上に配置された窒化シリコン膜から形成され、例えば、CVD法により形成することができる。続いて、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を使用することにより、パッシベーション膜PVに開口部を形成して、この開口部の底部に電極パッドM1の上面を露出させる。
【0051】
続いて、電極パッドM1が露出したパッシベーション膜PV上にポリイミド層MPを形成する。そして、このポリイミド層MPをパターニングすることにより、電極パッドM1を露出させる。以上のようにして、
図4に示す構造を得る。
【0052】
次に、
図5に示すように、電極パッドM1上、パッシベーション膜PV上、およびポリイミド層MP上にスパッタ法を用いて第1シード膜S1および第2シード膜S2を順次形成する。第1シード膜S1はCr(クロム)からなる導電膜であり、第2シード膜S2はCu(銅)からなる導電膜である。第1シード膜S1および第2シード膜S2はシード膜SEを構成している。シード膜SEは、後の工程で形成するCu膜C1を電解めっき法により形成する際の導電膜として用いられる膜である。
【0053】
次に、
図6に示すように、シード膜SE上にパターン化され、複数の開口部を有するフォトレジスト膜PR1を形成する。フォトレジスト膜PR1は、パッシベーション膜PVの開口部の直上を覆わないように形成する。つまり、パッシベーション膜PVの開口部から露出している領域の電極パッドM1は、フォトレジスト膜PR1の開口部の底部に露出させる。
【0054】
次に、
図7に示すように、シード膜SE上にめっき法を用いてCu膜C1およびNi膜N1を形成する。Cu膜C1を形成する際は、シード膜SEを導電膜とする電解めっき法を用いる。また、Ni膜N1を形成する際は、Cu膜C1を導電膜とする電解めっき法を用いる。Ni膜N1は、後の工程で行うボンディングワイヤの圧着工程による衝撃を和らげ、半導体基板SBを構成する配線または半導体素子などが破壊されることを防ぐ衝撃吸収膜としての機能を有する。ボンディングワイヤの圧着による衝撃を吸収するためには、Ni膜N1の膜厚は1.0μm以上必要である。Cu膜C1は、シード膜SE、Cu膜C1およびNi膜N1を含む再配線層内において、導電膜として用いられるため、その膜厚はシード膜SEより厚く、またNi膜N1よりも厚く形成する。
【0055】
Cu膜C1およびNi膜N1からなる積層膜は、フォトレジスト膜PR1の高さよりも低い高さで形成する。したがって、Cu膜C1およびNi膜N1からなる積層膜は、フォトレジスト膜PR1の複数の開口部から露出するシード膜SE上に形成される。つまり、Cu膜C1は半導体基板SB上の全面を覆うシード膜SEを導電膜として形成するが、シード膜SEの上面の一部はフォトレジスト膜PR1により覆われているため、Cu膜C1およびNi膜N1からなる積層膜は、フォトレジスト膜PR1から露出しているシード膜SEの直上に形成される。これにより、パッシベーション膜PVの開口部から露出している領域の電極パッドM1の直上にCu膜C1およびNi膜N1からなる積層膜が形成される。
【0056】
ここでは、Cu膜C1およびNi膜N1は電解めっき法により連続的に形成することにより、Cu膜C1の上面に酸化膜などが形成されることを防ぐ。
【0057】
次に、
図8に示すように、Ni膜N1上に電解めっき法によりPd膜P1を形成する。Pd膜P1はNi膜N1の形成工程に続いて形成する導電膜であり、Ni膜N1を導電膜とする電解めっき法により形成する。したがって、本実施の形態では、
図6を用いて説明したフォトレジスト膜PR1の形成工程の後、Cu膜C1、Ni膜N1およびPd膜P1を連続した工程で形成する。つまり、Cu膜C1の形成工程とNi膜N1の形成工程との間、およびNi膜N1の形成工程とPd膜P1の形成工程との間には、洗浄工程、加熱工程、他の導体膜、絶縁膜、フォトレジスト膜などの成膜工程または他の膜の除去工程などを行わない。
【0058】
また、Pd膜P1はボンディングワイヤBWとの接続強度を高めるために形成された膜であり、その接続強度を安定して実現させるには、0.2μm以上の膜厚が必要である。ただし、Pd膜P1はその膜厚が薄いほど、Pd膜P1を形成するめっき工程にかける時間を短縮することができ、また、膜厚が薄いことで材料費を低減することができる。したがって、Pd膜P1の膜厚を1.0μm未満とすることで、半導体装置の製造工程のスループットを向上させ、また、成膜に用いるPd(パラジウム)の量を低減することができるため、半導体装置の製造コストを低減することができる。したがって、本実施の形態において、Pd膜P1の膜厚は0.2μm以上1.0μm未満であり、Cu膜C1およびNi膜N1のいずれの膜の膜厚よりも小さい。
【0059】
Pd膜P1の上面はフォトレジスト膜の上面高さよりも低く形成される。つまり、Cu膜C1、Ni膜N1およびPd膜P1からなる積層膜はフォトレジスト膜PR1が形成されていない領域、つまりフォトレジスト膜PR1の開口部内のシード膜SE上に形成される。したがって、Cu膜C1、Ni膜N1およびPd膜P1は平面視において同一の形状のパターンで形成されるため、Cu膜C1の上面は全てNi膜N1により覆われ、Ni膜N1の上面は全てPd膜P1により覆われる。また、Cu膜C1の側壁はフォトレジスト膜PR1に接しており、Cu膜C1の側壁にNi膜N1またはPd膜P1は形成されず、Ni膜N1の側壁にPd膜P1は形成されない。
【0060】
次に、
図9に示すように、フォトレジスト膜PR1をアッシング処理により除去する。これにより、フォトレジスト膜PR1に覆われていた領域のシード膜SEの上面、Cu膜C1の側壁、Ni膜N1の側壁およびPd膜P1の側壁をそれぞれ露出させる。
【0061】
次に、
図10に示すように、エッチング工程により、Cu膜C1から露出しているシード膜SEを除去し、ポリイミド層MPの上面を露出させる。このとき、Cu膜C1により覆われている領域のシード膜SE、すなわちCu膜C1の直下のシード膜SEは除去されずに残る。このため、平面視において、シード膜SEはシード膜SEはCu膜C1、Ni膜N1およびPd膜P1からなる積層膜と同じパターン形状となる。このようにしてシード膜SEの一部を除去し、半導体基板SB上の複数のシード膜SEを複数に分離することで、シード膜SE、Cu膜C1、Ni膜N1およびPd膜P1からなる再配線層W1を半導体基板SB上に複数形成する。
【0062】
このとき、Cu膜C1の側壁はNi膜N1およびPd膜P1から露出しており、Ni膜N1の側壁はPd膜P1から露出しており、Pd膜P1はNi膜N1の側壁またはCu膜C1の側壁を覆っていない。つまり、再配線層W1を構成する各導電膜の側壁は、他の導電膜から露出している。このときの平面視における再配線層W1の配線レイアウトは、例えば
図2に示すような構造となる。
【0063】
次に、図示は省略するが、半導体基板SBの下面をバックグラインド法により削ることで半導体基板SBを薄くした後、ダイシングブレードを用いて半導体基板SBを切削し、複数の半導体チップ(ダイ)に個片化する。その後、それぞれの半導体チップをダイパッドの上面にAg(銀)ペーストなどを接着剤として用いて搭載することで、ダイボンディングを行う。
【0064】
次に、
図11に示すように、Cu(銅)からなるボンディングワイヤBWを用いて、半導体チップの上面の再配線層W1と、ダイパッド(図示しない)の周囲に複数配置されたリード(図示しない)とを電気的に接続する。ボンディングワイヤBWの先端は、再配線層W1の上面に接着する前は例えばボール状に加工され、キャピラリを通して接着される。その後、キャピラリをリード側に移動させ、リードの上面にボンディングワイヤBWの端部を接着する。その後、電気トーチからの放電によりボンディングワイヤBWの先端を溶解してボールを形成する。この工程を繰り返すことにより、複数の再配線層W1を複数のリードに対してボンディングする。
【0065】
ボンディング工程では、ボンディングワイヤBWの先端を再配線層W1の上面に押し付けて圧着する際に、再配線層W1を介して半導体基板SBに圧力が加わることが考えられるが、ここではNi膜N1の膜厚1.0μm以上として、前記圧力(衝撃)を緩和させることを可能としている。したがって、ボンディング工程により半導体基板SBに衝撃が加わることを防ぎ、半導体基板SB内の配線および半導体素子が破壊されることを防ぐことができる。
【0066】
次に、
図1に示すように、ダイパッドDP、半導体チップCPおよびボンディングワイヤBWと、リードLDの一部とをモールドMOにより封止し、その後各リードを接続するタイバーを切り落とした後、必要に応じてプレス法などによりリードを変形させることで、本実施の形態の半導体装置が完成する。
【0067】
以下に、本実施の形態の半導体装置の製造方法の効果について説明する。
【0068】
図12および
図13を用いて説明した比較例の半導体装置のように、再配線層W2上に電極パッドWPを設ける場合、その製造工程は、
図6を用いて説明した工程までは、本実施の形態と同様に行う。つまり、
図6に示すフォトレジスト膜PR1を形成する工程までは、本実施の形態と同様の工程を行う。
【0069】
上記比較例の半導体装置を製造する工程では、
図6を用いて説明した工程の後、
図7を用いて説明した工程と同様にして、
図14に示すように、フォトレジスト膜PR1の開口部内に露出するシード膜SE上に、電解めっき法によりCu膜C2およびNi膜N2を形成する。
【0070】
次に、フォトレジスト膜PR1上およびNi膜N2上にフォトレジスト膜PR2を形成する。フォトレジスト膜PR2は、Ni膜N2の上面の一部を覆い、Ni膜N2の上面の他の一部を露出するように形成する。
図14は、比較例である半導体装置の製造工程中の断面図である。ここでフォトレジスト膜PR2の開口部から露出するNi膜N2上の領域は、後の工程でボンディングワイヤを接続するための電極パッドを形成するための領域である。
【0071】
次に、
図15に示すように、電解めっき法により、Ni膜N2上にNi膜N3および電極パッドWPを順次形成する。
図15は、比較例である半導体装置の製造工程中の断面図である。Ni膜N3はNi膜N2を導電膜とする電解めっき法により形成され、電極パッドWPはNi膜N3を導電膜とする電解めっき法により形成される。Ni膜N3は、電極パッドWPの予備の下地層である。電極パッドWPはAu(金)膜からなり、その上面はフォトレジスト膜PR2の上面を超えない高さで形成される。したがって、電極パッドWPは、Ni膜N3の全ての上面を覆うように形成され、Ni膜N2上の上面の一部を覆うように形成される。つまり、Ni膜N2の直上であって、フォトレジスト膜PR2により覆われている領域には、Ni膜N3および電極パッドWPは形成されない。
【0072】
次に、フォトレジスト膜PR1、PR2を除去した後、
図10を用いて説明した工程と同様にして、シード膜SEを除去することで、シード膜SE、Cu膜C2およびNi膜N2からなる再配線層W2を形成する。その後、電極パッドWPの上面にボンディングワイヤBWを接着することで、ボンディングワイヤBWを介して半導体チップCPa(
図12参照)と複数のリード(図示しない)とを電気的に接続し、
図13に示す構造を得る。
【0073】
上記のようにして製造した比較例の半導体装置では、
図12および
図15に示すように、再配線層W2上の一部の領域にAu(金)からなる電極パッドWPを形成し、電極パッドWPの上面にワイヤボンディングを行っている。このように、再配線層W1上の一部のみに電極パッドWPを形成している理由は、上述したように、電極パッドWPを構成するAu(金)が高価であること、および、Au(金)が、半導体チップCPaを覆うモールド樹脂(図示しない)との接着性が悪いことにある。
【0074】
図14および
図15を用いて説明した工程を行った場合、再配線層W2とは異なるパターンの電極パッドWPを形成するために、フォトレジスト膜PR1を形成するマスク(レチクル)とは異なるマスク(レチクル)を用いてフォトレジスト膜PR2のパターンを形成する必要がある。また、比較例の半導体装置では、電極パッドWPの材料に、Pd(パラジウム)よりも高価な材料であるAu(金)を用いており、さらに、電極パッドWPと再配線層W2との接続性を向上させるための予備の下地層であるNi膜N3を形成している。これらの要因により、上記比較例の半導体装置は製造コストが増大する問題がある。
【0075】
これに対し、本実施の形態の半導体装置では、
図11に示すように、電極パッドとして使用するPd膜P1を再配線層W1の上面に、再配線層W1を構成する他のCu膜C1などと同じパターンで形成している。したがって、
図8を用いて説明した工程では、Cu膜C1およびNi膜N1を形成するために用いたフォトレジスト膜PR1の他にフォトレジスト膜を形成することなく、電極パッドであるPd膜P1を形成している。
【0076】
このように、前記比較例の半導体装置の製造工程と異なり、電極パッドWP(
図15参照)を形成するためのマスク(レチクル)を用意してフォトレジスト膜PR2を形成する必要がないため、本実施の形態の半導体装置の製造方法では、半導体装置の製造工程を簡便にすることが可能である。また、本実施の形態では、高価なAu(金)を用いて電極パッドを形成する必要がなく、予備の下地層として、Ni膜N1上にさらにNi膜を形成する必要もない。したがって、半導体装置のスループットを向上し、半導体装置の製造コストを低減することができる。
【0077】
また、
図13および
図15を用いて説明したように、電極パッドWPを形成した後にフォトレジスト膜PR1およびPR2を除去すると、電極パッドWPの上面にフォトレジスト膜PR2の除去工程に起因する汚れが付着するため、その後に電極パッドWPの上面にボンディングワイヤBWを接着すると、電極パッドWPとボンディングワイヤBWとの接続強度が低下する問題がある。
【0078】
本実施の形態では、電極パッドとして用いるPd膜P1の形成後に除去するフォトレジスト膜はフォトレジスト膜PR1のみであるため、上記比較例に比べて除去するフォトレジスト膜の量が少ないことから、Pd膜P1の上面に付着する汚れを低減することができる。したがって、Pd膜P1の表面の状態をより良好に保つことができるため、Pd膜P1とボンディングワイヤBWとの接続強度を向上させることができ、これにより半導体装置の信頼性を向上させることが可能である。
【0079】
さらに、上記比較例ではNi膜N2(
図14参照)形成後にフォトレジスト膜PR2形成のための塗布工程、露光工程を経てマスクの転写を行い、その後にNi膜N3(
図15参照)を形成するため、Ni膜N2とNi膜N3との接着性が低く、めっき膜の剥がれが生じる虞がある。本実施の形態では、
図7および
図8に示すように、Cu膜C1、Ni膜N1、およびPd膜P1を連続的に形成し、間にフォトレジスト膜などの成膜、または除去工程などを挟まないため、各めっき膜間の接続性(密着性)を向上させることができる。
【0080】
また、上述したように、Au(金)膜(電極パッドWP)とCuワイヤ(ボンディングワイヤBW)とは、比較的接着性が悪いため、電極パッドWPとボンディングワイヤBWとの接着強度が低下し、半導体装置の信頼性が低下する問題がある。
【0081】
また、比較例の半導体装置では、再配線層W2とは異なるパターンで電極パッドWPを設ける必要があるため、再配線層のレイアウトの自由度が低下し、半導体装置の面積が増大する問題が生じる。
【0082】
また、電極パッドWPとモールド樹脂とが触れる領域を低減し、Au(金)の使用量を減らして製造コストを低減するために、電極パッドWPの面積を極力小さくすることが考えられる。しかし、この場合、ボンディングワイヤBWと電極パッドWPとの接触面積を十分に確保できず、ボンディングワイヤBWと電極パッドWPとの接続強度が低下する虞がある。
【0083】
これに対し、本実施の形態では、
図11に示すように、Cuワイヤとの接着性がAu(金)膜よりも優れているPd(パラジウム)膜P1を再配線層W1の上面に形成し、再配線層W1の上面に直接ボンディングワイヤBWを接続しているため、ボンディングワイヤBWと半導体チップCP(
図2参照)との接続強度を向上し、半導体装置の信頼性を向上させることを可能としている。
【0084】
また、本実施の形態では、再配線層W2上にボンディング用の電極パッドWPを形成しているが、本実施の形態では、再配線層W1の上面に直接ボンディングワイヤBWを接着することができるため、電極パッドWPを形成する必要がなく、再配線層W1の配線レイアウトの自由度を向上させ、半導体装置を面積を縮小させることができる。
【0085】
また、再配線層W1の上面にボンディングを可能とし、配線レイアウトの自由度を向上させることで、ボンディング用の面積をより広く確保しているため、ボンディングワイヤBWの接着強度を向上させることができる。よって、半導体装置の信頼性を向上させることが可能である。
【0086】
さらに、精度が低いボンディング装置を用いた場合に、ボンディング位置にずれが生じたとしても、再配線層W1の上面のいずれの領域でもボンディングが可能であるので、ボンディングの位置ずれに起因する接続不良を防ぐことができ、半導体装置の信頼性を向上させることが可能である。
【0087】
以上、本発明者らによってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。