特許第6100487号(P6100487)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6100487
(24)【登録日】2017年3月3日
(45)【発行日】2017年3月22日
(54)【発明の名称】基板処理装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/306 20060101AFI20170313BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20170313BHJP
【FI】
   H01L21/306 J
   H01L21/306 R
   H01L21/304 643A
【請求項の数】5
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2012-181540(P2012-181540)
(22)【出願日】2012年8月20日
(65)【公開番号】特開2014-38978(P2014-38978A)
(43)【公開日】2014年2月27日
【審査請求日】2015年6月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【弁理士】
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【弁理士】
【氏名又は名称】有田 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】柴山 宣之
【審査官】 溝本 安展
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−084856(JP,A)
【文献】 特開平11−111673(JP,A)
【文献】 特開2001−077069(JP,A)
【文献】 特開2007−227765(JP,A)
【文献】 特開2011−086827(JP,A)
【文献】 特開2012−003255(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/306
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
温度が高いほど反応速度が速くなる処理液を用いて基板の化学処理を行う基板処理装置であって、
基板を略水平姿勢にて保持する基板保持部と、
前記基板保持部に保持された前記基板を略水平面内にて回転させる回転部と、
前記基板の下面の中央部分に加熱用の水蒸気を噴射して前記基板を全体的に加熱する加熱部と、
前記加熱部によって加熱された前記基板の周縁部に上方から処理液を供給して前記周縁部の化学処理を行う処理液供給ノズルと、
前記処理液供給ノズルよりも前記基板の回転軸側に設けられ、前記処理液供給ノズルによって前記処理液を供給された前記基板の前記周縁部に上方からリンス液を供給して前記周縁部のリンス処理を行うリンス液供給ノズルと、
を備えた基板処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の基板処理装置であって、
前記処理液供給ノズルと前記リンス液供給ノズルとを一体的に位置調整可能に保持する保持部、
をさらに備える基板処理装置。
【請求項3】
請求項2に記載の基板処理装置であって、
前記処理液供給ノズルよりも前記基板の回転軸側に設けられ、前記基板の上面のうち前記基板の前記周縁部の回転軌跡で囲まれた範囲における前記周縁部側の部分に規定された所定の噴射目標領域に当たるように前記噴射目標領域の上方から気体を噴射することにより、前記噴射目標領域から前記基板の前記周縁部に向かって流れる気体流を基板上に生成させる気体噴射ノズル、
をさらに備え、
前記保持部は、前記処理液供給ノズルと前記リンス液供給ノズルと前記気体噴射ノズルとを一体的に位置調整可能に保持する基板処理装置。
【請求項4】
請求項3に記載の基板処理装置であって、
前記気体噴射ノズルは、
前記基板の内側から外側に向かう斜め下向き方向の噴射経路に沿って前記気体を噴射する基板処理装置。
【請求項5】
請求項3または請求項4に記載の基板処理装置であって、
前記気体噴射ノズルは、
前記基板の周方向に沿って細長い円弧状の開口から前記気体を噴射する基板処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板を回転させつつ、その基板に処理液を供給してエッチング処理などの化学処理を行う基板処理装置に関する。処理の対象となる基板には、たとえば、半導体ウエハ、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板、フォトマスク用基板、太陽電池用基板などの基板が含まれる。
【背景技術】
【0002】
半導体ウエハ等の基板の一連の処理工程においては、基板の表面(「上面」)に金属やフォトレジスト等の薄膜を形成するための成膜工程を複数工程有しているが、この成膜工程では基板の裏面(「下面」)あるいは基板表面の周縁部にも成膜されることがある。しかしながら、一般的には基板において成膜が必要なのは基板表面の中央部の回路形成領域のみであり、基板の裏面あるいは基板表面の周縁部に成膜されてしまうと、成膜工程の後工程において、他の装置との接触により基板表面の周縁部に形成された薄膜が剥がれたりすることがあり、これが原因となって歩留まりの低下や基板処理装置自体のトラブルが起こることがある。
【0003】
そこで、略水平状態に保持した基板を回転させながら基板の周縁部に予め温度調整された処理液を供給して基板表面の周縁部に形成された薄膜を除去する、いわゆるベベルエッチング処理を行う装置が提案されている。
【0004】
例えば、特許文献1に記載された装置は、略水平状態に保持した基板を回転させながら、基板の下面のうち中央部分に対向する形状のノズルから基板下面にエッチング液を供給し、遠心力の作用により周縁部に広がったエッチング液を基板の上面の周縁部に回り込ませることで基板上面のうち周縁部のエッチング処理を行う。
【0005】
また、特許文献2に記載された装置は、基板の上方に基板表面と対向する遮断部材を有し、基板を略水平面内にて回転させながら遮断部材の周縁部に配置されたノズルから、基板上面の周縁部に向けて処理液を供給して基板上面のうち周縁部のエッチング処理を行う。
【0006】
この種の技術においては、基板上のできるだけ広い面積をデバイスとして有効に活用するために、基板上面の周縁部(「端部」)におけるエッチング幅をできるだけ小さく、かつ均一にすることが求められる。特に半導体デバイス製造の技術分野においては、半導体ウエハの大口径化に伴って増加するウエハ周縁部のロスを抑えるため、従来2〜3mmであったエッチング幅を、例えば、1mm以下にまで減少させることが望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−6672号公報
【特許文献2】特開2008−47629号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1の装置によりエッチング幅を小さくするための手法としては、基板上面への処理液の回り込み量を少なくするために処理液の供給量を少なくし基板の回転速度を高めることが考えられる。この手法によれば、平均的なエッチング幅を小さくすることはできるものの、周縁部への処理液の回り込み量の制御が困難となって局所的に大きくエッチングされる部分が出現するなど、エッチング幅の均一性が悪化する。また、周縁部と、周縁部における処理液との温度が低下してエッチングレートが低下するといった問題も生ずる。
【0009】
特許文献2の装置によりエッチング幅を小さくするためには、基板の周縁部に供給する処理液の供給量を少なくする必要がある。しかしながら、処理液の液量の減少と、該減少による配管中での処理液の温度の低下とによって、基板の周縁部におけるエッチングレートが低下するといった問題がある。
【0010】
そしてこれらは、エッチング液を用いたエッチング処理に限らず、温度が高いほど反応速度が速くなる処理液を用いて基板の化学処理を行う処理一般に生じる問題である。
【0011】
本発明は、こうした問題を解決するためになされたもので、略水平状態に保持した基板を回転させながら基板の周縁部に、温度が高いほど反応速度が速くなる処理液を供給して周縁部の化学処理(エッチング処理など)を行う装置において、化学処理幅(エッチング幅など)の均一性と化学処理効率(エッチングレートなど)とのそれぞれの悪化を抑制しつつ化学処理幅を細くできる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の課題を解決するために、第1の態様に係る基板処理装置は、温度が高いほど反応速度が速くなる処理液を用いて基板の化学処理を行う基板処理装置であって、基板を略水平姿勢にて保持する基板保持部と、前記基板保持に保持された前記基板を略水平面内にて回転させる回転部と、前記基板の下面の中央部分に加熱用の水蒸気を噴射して前記基板を全体的に加熱する加熱部と、前記加熱部によって加熱された前記基板の周縁部に上方から処理液を供給して前記周縁部の化学処理を行う処理液供給ノズルと、前記処理液供給ノズルよりも前記基板の回転軸側に設けられ、前記処理液供給ノズルによって前記処理液を供給された前記基板の前記周縁部に上方からリンス液を供給して前記周縁部のリンス処理を行うリンス液供給ノズルとを備える。
【0013】
第2の態様に係る基板処理装置は、第1の態様に係る基板処理装置であって、前記処理液供給ノズルと前記リンス液供給ノズルとを一体的に位置調整可能に保持する保持部、をさらに備える。
【0014】
第3の態様に係る基板処理装置は、第の態様に係る基板処理装置であって、前記処理液供給ノズルよりも前記基板の回転軸側に設けられ、前記基板の上面のうち前記基板の前記周縁部の回転軌跡で囲まれた範囲における前記周縁部側の部分に規定された所定の噴射目標領域に当たるように前記噴射目標領域の上方から気体を噴射することにより、前記噴射目標領域から前記基板の前記周縁部に向かって流れる気体流を基板上に生成させる気体噴射ノズル、をさらに備え、前記保持部は、前記処理液供給ノズルと前記リンス液供給ノズルと前記気体噴射ノズルとを一体的に位置調整可能に保持する。
【0015】
第4の態様に係る基板処理装置は、第の態様に係る基板処理装置であって、前記気体噴射ノズルは、前記基板の内側から外側に向かう斜め下向き方向の噴射経路に沿って前記気体を噴射する。
第5の態様に係る基板処理装置は、第3または第4の態様に係る基板処理装置であって、前記気体噴射ノズルは、前記基板の周方向に沿って細長い円弧状の開口から前記気体を噴射する。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、基板の下面の中央部分に加熱用の水蒸気が噴射されて基板が全体的に加熱されて、周縁部に上方から処理液が供給されるので、供給される処理液の液量が少ないとしても周縁部を十分に加熱して周縁部における処理液の反応性を高めることができる。従って、周縁部のうち基板端部側の所望の細い幅の領域に上方から処理液が供給されれば、化学処理幅(エッチング幅など)の均一性と化学処理効率(エッチングレートなど)とのそれぞれの悪化を抑制しつつ化学処理幅を細くできる。また、基板の下面に加熱用の水蒸気が噴射されるので、下面において水蒸気が凝縮した水滴が生成されたとしても、水滴の基板上面への回り込みを抑制できる。従って、該水滴等の基板上面の被処理領域への付着による非処理領域の劣化を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】実施形態に係る基板処理装置の概略構成の一例を模式的に示す図である。
図2】基板の表面に対するノズルユニットの配置を模式的に示す上面図である。
図3】ノズルユニットの構成の一例を示す側面図である。
図4】ノズルユニットの構成の一例を示す側面図である。
図5】水蒸気噴射ノズルの有無による基板上の温度分布の違いをグラフで例示する図である。
図6】水蒸気噴射ノズルの有無による基板上のエッチング幅の違いを例示する図である。
図7】基板の断面図の一例を示す図である。
図8図7の基板のエッチング処理後の断面図の一例を示す図である。
図9】比較技術を示す図である。
図10】実施形態における基板処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図11】実施形態における基板処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図面では同様な構成および機能を有する部分に同じ符号が付され、下記説明では重複説明が省略される。また、各図面は模式的に示されたものであり、例えば、各図面における表示物のサイズおよび位置関係等は必ずしも正確に図示されたものではない。
【0020】
<実施形態について>
<1.基板処理装置の構成>
図1は実施形態に係る基板処理装置100の概略構成の一例を模式的に示す図である。この基板処理装置100は、温度が高いほど反応速度が速くなる処理液を用いて基板の化学処理を行う。具体的には、基板処理装置100は、化学処理用の処理液としてエッチング液を用いて半導体ウエハ等の基板Wの表面(「上面」とも称する)S1のうち基板の周縁部(「表面周縁部」とも称する)S3のエッチング処理を行って、表面周縁部S3に形成されている薄膜(不要物)の除去を行う。表面周縁部S3は、基板Wの表面S1のうち基板Wの周端縁から、例えば、幅0.5〜3.0mmの環状の領域である。なお、表面S1と反対側の裏面S2は、「下面」とも称される。基板Wの表面形状は略円形であり、基板Wの表面S1とはデバイスパターンが形成されるデバイス形成面を意味している。
【0021】
なお、エッチング処理に用いられるエッチング液に限らず、化学的な処理液の多くは、温度が上昇するに伴って反応速度が速くなるという一般的なアレニウスの式に従う。つまり、多くの処理液が、「温度が高いほど反応速度が速くなる処理液」に属する。
【0022】
図7は、基板Wの断面図の一例を示す図である。図7に示されるように基板Wの中心層11は、シリコン(Si)により構成されている。中心層11の上に熱酸化膜(Th−SiO)、もしくはHf(ハフニューム)または酸化Hfなどの電気を通さない絶縁膜が、下膜12として成膜されている。そして、下膜12の上に、TiN膜またはTaN膜などのバリアメタル膜、もしくはAl膜、W膜、NiSi膜、またはCu膜などのメタル膜が、上膜13として成膜されている。基板Wにおいては、表面周縁部S3のうち周端縁側の領域(処理領域)における上膜13がエッチング処理により除去される。基板Wとして、例えば、中心層11の上に下膜12のみが成膜された基板が採用され、表面周縁部の処理領域における下膜12が除去されてもよい。
【0023】
図1に示されるように、基板処理装置100は、表面S1を上方に向けた状態で基板Wを略水平姿勢に保持して回転させるスピンチャック(「基板保持部」)111を備えている。スピンチャック111は、円筒状の回転支軸113がモータを含むチャック回転機構(「回転部」)154の回転軸に連結されており、チャック回転機構154の駆動により回転軸a1(鉛直軸)回りに、すなわち略水平面内にて回転可能となっている。
【0024】
回転支軸113の上端部には、円盤状のスピンベース115がネジなどの締結部品によって一体的に連結されている。したがって、装置全体を制御する制御部151からの動作指令に応じてチャック回転機構154が作動することによりスピンベース115が回転軸a1回りに回転する。また、制御部151はチャック回転機構154を制御して回転速度を調整する。制御部151は、例えば、CPUがメモリに記憶されたプログラムを実行することなどにより実現される。
【0025】
スピンベース115の周縁部付近には、基板Wの周縁部を把持するための複数個のチャックピン117が立設されている。チャックピン117は、円形の基板Wを確実に保持するために3個以上設けてあればよく、スピンベース115の周縁部に沿って等角度間隔で配置されている。チャックピン117のそれぞれは、基板Wの周縁部を下方から支持する基板支持部と、基板支持部に支持された基板Wの外周端面を押圧して基板Wを保持する基板保持部とを備えている。各チャックピン117は、基板保持部が基板Wの外周端面を押圧する押圧状態と、基板保持部が基板Wの外周端面から離れる解放状態との間を切り替え可能に構成されている。
【0026】
スピンベース115に対して基板Wが受渡しされる際には、複数個のチャックピン117を解放状態とし、基板Wに対してエッチング処理を行う際には、複数個のチャックピン117を押圧状態とする。押圧状態とすることによって、複数個のチャックピン117は基板Wの周縁部を把持してその基板Wをスピンベース115から所定間隔を隔てて略水平姿勢に保持することができる。これにより、基板Wはその表面(パターン形成面)S1を上方に向け、裏面S2を下方に向けた状態で支持される。
【0027】
このように基板Wを保持したスピンチャック111をチャック回転機構154により回転駆動することで基板Wを所定の回転速度で回転させながら、ノズルユニット120と、下ノズル141から基板の表面S1の表面周縁部S3と裏面S2とに対し処理液をそれぞれ供給することにより、所定の化学処理(エッチング処理)が施される。
【0028】
図2は、基板Wの表面S1に対するノズルユニット120の配置を模式的に示す上面図である。図示の都合上、ノズルユニット120のサイズは、基板Wに対して実際よりも大きく表示されている。図3図4は、ノズルユニット120の構成の一例を示す側面図である。
【0029】
図1図2に示されるように、スピンチャック111に保持された基板Wの側方には、モータを備えたノズル回転機構155が設けられており、ノズル回転機構155の動作は、制御部151により制御される。ノズル回転機構155には、剛性のある管状の配管アーム180がノズル回転機構155を回転中心として略水平面内にて旋回可能に取付けられている。
【0030】
配管アーム180の一端は、ノズル回転機構155を貫通してその下面に達しており、他端は、配管アーム180がノズル回転機構155により旋回されることによって基板Wの表面周縁部S3の上方に位置決め可能である。該他端には、ノズルユニット120が取付けられている。スピンベース115に対する基板Wの受渡しなどの際には、配管アーム180が旋回されてノズルユニット120が基板Wの搬入経路上から退避される。また、エッチング処理やリンス処理などを行う際のノズルユニット120の位置(処理位置)がサーボ制御により正確に調整されることにより、表面周縁部S3のエッチング幅が調整される。ここで、当該サーボ制御は、制御部151により制御される。従って、制御部151からの指令により表面周縁部S3のエッチング幅を調整することが可能となる。
【0031】
図2図4に示されるように、ノズルユニット120は、処理液供給ノズル126およびリンス液供給ノズル127を有する処理液吐出部(「周縁処理部」)122と、窒素ガス噴射ノズル128を有する窒素ガス噴出部124とを備えて構成されている。処理液供給ノズル126、リンス液供給ノズル127および窒素ガス噴射ノズル128には、配管182〜184がそれぞれ接続されている。配管182〜184は、それぞれ、ノズルユニット120の内部を経て、配管アーム180の内部を通され、ノズル回転機構155の下面の下方まで配設されている。
【0032】
また、図1に示されるように、基板処理装置100には、貯留されたエッチング液(処理液)を供給する処理液供給源132と、貯留されたリンス液を供給するリンス液供給源133も設けられている。エッチング液としては、例えば、SC1(ammonia-hydrogen peroxide mixture:アンモニア過酸化水素水)、SC2(hydrochloric acid/hydrogen peroxide mixture:塩酸過酸化水素水)、またはHF(フッ酸)などが採用される。なお、他の製造装置内部や搬送系におけるウエハとの接触部分、あるいはウエハを保持するFOUP/FOSBの内側などに、MoやCoなどのメタル成分が付着すると、汚染原因となる。このため、付着したメタル成分を除去することを目的として、例えば、SC2が、ウエハのベベル部や裏面の洗浄に用いられる。このように、処理液供給源132に貯留される処理液が、エッチング以外の目的のためにウエハに供給される場合もある。
【0033】
リンス液供給源133が供給するリンス液としては、純水(DIW:脱イオン水)などが採用される。リンス液として機能水や温水が採用されてもよい。
【0034】
処理液吐出部122の処理液供給ノズル126と接続された配管182は、処理液供給源132から配設された配管383と連通接続されており、配管383の途中部には開閉バルブ173が設けられている。処理液吐出部122のリンス液供給ノズル127と接続された配管183は、リンス液供給源133から配設された配管384と連通接続されている。配管384の途中部には、開閉バルブ174が設けられている。
【0035】
開閉バルブ173、174は、制御部151により制御されたバルブ制御機構152によって開閉制御されており、バルブ制御機構152が、必要に応じて開閉バルブ173と開閉バルブ174とを選択的に開く。
【0036】
開閉バルブ173が開かれれば、処理液供給源132から供給された処理液52(図3)が、処理液吐出部122の処理液供給ノズル126から吐出されて表面周縁部S3に供給される。なお、処理液吐出部122は、後述する下ノズル141によって加熱された基板Wの周縁部に上方から処理液52を供給して周縁部の化学処理(エッチング処理)を行う。表面周縁部S3に供給される処理液の流量は、例えば、毎分10ml〜100ml程度の少流量に設定される。また、既述したように、ノズルユニット120に接続された配管アーム180の回転角度が、ノズル回転機構155によって正確に調整されることにより、処理液吐出部122は、吐出する処理液が基板Wの表面周縁部S3に当たる部分の基板Wの径方向の幅を正確に調節可能である。
【0037】
温度が高いほど反応速度が速くなるエッチング液(処理液)が用いられる場合には、表面S1の全体が加熱された基板Wの表面周縁部S3の周端縁側の所望の細幅領域に処理液を供給することによってエッチング幅(化学処理幅)を狭くすることが出来る。具体的には、エッチング幅を、例えば、0.5mm〜1mm程度にまで狭くすることができる。
【0038】
また、処理液吐出部122は、好ましくは、基板Wの内側から外側に向かう斜め下向き方向の経路に沿って処理液を基板Wの表面周縁部S3に供給する。これにより、供給された処理液が、基板Wの非処理領域に付着することが抑制され得る。
【0039】
また、開閉バルブ174が開かれればリンス液供給源133から供給されたリンス液53(図4)が、処理液吐出部122のリンス液供給ノズル127から吐出されて表面周縁部S3に供給される。これにより、基板Wの周縁部のリンス処理が行われる。
【0040】
図1に示されるように、スピンベース115の中央部には、回転支軸113の貫通孔に接続された貫通孔が形成されている。これらの貫通孔には、円筒部143が挿通されている。円筒部143の上端には、略円盤状の下ノズル141が固定されている。回転するスピンベース115に立設されたチャックピン117と下ノズル141とが干渉しないように、下ノズル141の径は、チャックピン117の回転軌跡の径よりも小さく設定されている。
【0041】
下ノズル141の処理液吐出口148に接続された供給管147には、配管386を介して処理液供給源132から処理液が供給されるとともに、配管388を介してリンス液供給源133からリンス液が供給される。配管386、388のそれぞれの途中部には、開閉バルブ176、178がそれぞれ設けられている。開閉バルブ176、178は、バルブ制御機構152によって開閉制御される。バルブ制御機構152が、開閉バルブ176と開閉バルブ178とを選択的に開くことにより、処理液とリンス液とが供給管147に選択的に供給されて、下ノズル141の上面145における処理液吐出口148から基板Wの裏面S2に向けて選択的に吐出される。吐出された処理液、およびリンス液は、基板Wの回転による遠心力の作用により裏面S2の全域に広がる。これにより、下ノズル141は、裏面S2のエッチング処理およびリンス処理を行う。
【0042】
また、下ノズル141には、上面145の中央部に開口を有し、下ノズル141を貫通する処理液吐出口148が形成されている。処理液吐出口148は、円筒部143の内壁がなす貫通孔である供給管147に連通接続されている。
【0043】
また、供給管147および処理液吐出口148には、供給管147および処理液吐出口148を貫通する供給管181が挿通されている。すなわち、供給管181は、スピンベース115を支持してスピンベース115と一体的に回転する回転支軸113の内部を通されている。下ノズル141の上面145に突出された供給管181の上端には、水蒸気噴射ノズル125(「加熱部」とも称される)が供給管181に連通接続されている。また、供給管181の下端は、配管385によって基板処理装置100の外部の水蒸気供給源131と接続されている。水蒸気供給源131から供給される加熱用の水蒸気は、配管385、供給管181を通して水蒸気噴射ノズル125に供給される。そして、水蒸気噴射ノズル125は、供給された加熱用の水蒸気51を基板Wの裏面S2の中央部分に噴射して基板Wを全体的に加熱する。
【0044】
水蒸気供給源131と供給管181とを接続する配管385のうち基板処理装置100における配管の途中部には、ヒーター139と開閉バルブ175とが設けられている。
【0045】
ヒーター139は、制御部151の制御に応じて水蒸気供給源131から供給される水蒸気を加熱する。水蒸気供給源131においては、純水などが加熱されることにより基板Wを全体的に加熱するための水蒸気が生成されている。生成された加熱用の水蒸気は、ヒーター139によって加熱され、例えば、100℃よりも高温の過熱水蒸気として供給される。
【0046】
開閉バルブ175は、制御部151により制御されたバルブ制御機構152によって開閉制御される。バルブ制御機構152が、必要に応じて開閉バルブ175を開くことにより、水蒸気供給源131から供給された加熱用の水蒸気51が、下ノズル141の供給管181から基板Wの裏面S2の中央部分に噴射される。
【0047】
水蒸気噴射ノズル125から裏面S2の中央部分に噴射された水蒸気51は、基板Wの裏面S2に対して相対的に、基板Wの回転方向と逆の回転方向に回転しつつ、基板Wの回転による遠心力と供給圧とによって裏面S2の周縁部に広がっていく。これにより、裏面S2の全域が加熱されるとともに、裏面S2から表面S1への熱伝導により表面S1の全域も加熱される。
【0048】
裏面S2の中央部分に噴射された水蒸気51は、裏面S2の周縁部に広がっていく過程で、基板Wに熱を奪われることなどによって冷却される。このため、水蒸気51が、裏面S2において凝縮されて水滴が生成される場合がある。生成された水滴は、基板Wの高速回転による遠心力の作用により裏面S2の周縁部から基板Wの外部に振り払われ、非処理領域である表面S1に付着することはない。
【0049】
水蒸気供給源131からは、例えば、110℃の過熱水蒸気がヒーター139に供給され、ヒーター139により加熱された直後の過熱水蒸気の温度は、好ましくは、例えば、140℃〜160℃などに設定される。このような高温の過熱水蒸気は、回転する基板Wの裏面S2の中央部分に噴射されて基板Wを加熱しつつ裏面S2に沿って周縁部に到達した後においてもなお高温に保たれ得る。従って、水蒸気51が凝縮した水滴等による基板Wの表面S1の非処理領域への付着がさらに抑制される。また、該高温の過熱水蒸気が用いられれば、例えば、100℃までの温度の飽和水蒸気が下ノズル141から吐出される場合に比べて基板Wの表面周縁部S3をより高温にすることができ、エッチングレートをより上げることができる。
【0050】
図5は、基板Wの裏面S2を加熱する水蒸気噴射ノズル125の有無による基板W上の温度分布の違いをグラフで例示する図である。グラフ83は、基板Wの裏面S2側に設けられた下ノズル141から、所定の回転速度で回転している基板Wの裏面S2に向けて処理液が吐出された場合の基板Wの表面S1上の温度分布の一例を示している。水蒸気噴射ノズル125による裏面S2の加熱は行われていない。裏面S2に吐出される処理液は、予め、例えば、70℃などに温度調整されており、遠心力の作用によって基板Wの周縁部にまで供給される。表面S1は、裏面S2に供給された処理液によって加熱されている。また、グラフ84は、水蒸気噴射ノズル125から裏面S2に加熱用の水蒸気が噴射された場合の基板Wの表面S1上の温度分布の一例を示している。
【0051】
図5の各グラフに示されるように、基板Wの中心部から離れるにつれて基板Wの回転によって処理液や水蒸気の温度が低下し、表面S1上の温度も低下する。しかし、水蒸気噴射ノズル125による基板Wの裏面S2の加熱が行われた場合には、グラフ84に示されるように、水蒸気噴射ノズル125による加熱が行われない場合に比べて表面周縁部S3部分の温度を高くすることが出来る。また、裏面S2のエッチングを行う場合には、処理液と水蒸気を同時に供給することにより、基板Wの温度が高い(すなわち、エッチングレートが高い)状態で処理を行うことが出来る。
【0052】
図6は、水蒸気噴射ノズル125による加熱用の水蒸気の供給動作の有無による図7に例示された基板Wの表面S1上のエッチング幅の違いを示す図である。図示の都合上、各エッチング幅は実際よりも大きく記載されている。
【0053】
略円形の境界41は、水蒸気噴射ノズル125による裏面S2の加熱が行われつつ、処理液供給ノズル126から表面周縁部S3に処理液が供給された場合において、エッチングされた領域と、回転軸a1側のエッチングされなかった非処理領域との境界の一例を示している。また、図8は、この場合のエッチング処理後の基板Wの断面図の一例を示す図である。幅21(図6図8)は、境界41上の一つの点におけるエッチング幅を示している。エッチング幅21は、例えば、0.5〜1.0mm程度になり、そのばらつきは、例えば、エッチング幅21の平均値の1/10以下程度に抑えられる。
【0054】
境界42は、基板Wの裏面S2側に設けられた下ノズル141から、回転している基板Wの裏面S2に吐出された処理液によって表面周縁部S3のエッチング処理が行われた場合の基板Wの表面S1におけるエッチングされた領域と、非処理領域との境界の一例を示している。図9は、この場合のエッチング処理後の基板Wの断面図の一例を示す図である。表面周縁部S3は、裏面S2に吐出された処理液に遠心力が作用することで、処理液が基板Wの周縁部に広がり、さらに表面周縁部S3にまで回り込むことによってエッチングされている。基板Wの回転速度は、処理液が裏面S2から表面周縁部S3に回り込める回転速度に調整されている。水蒸気噴射ノズル125による裏面S2の加熱と、処理液吐出部122による表面周縁部S3への処理液の供給とは行われていない。
【0055】
幅22は、境界42上の一つの点におけるエッチング幅を示している。遠心力の作用によって処理液が表面周縁部S3に回り込む量の制御が困難であるために、境界42の形状は、略円形の境界41に比べて大きく波打っており、エッチング幅22は、例えば、2〜3mm程度であり、エッチング幅21に比べて大きくなる。また、エッチング幅22のばらつきも、エッチング幅21のばらつきに比べて大きくなる。
【0056】
図6図8、および図9に示されるように、水蒸気噴射ノズル125による基板Wの裏面S2の加熱と、処理液吐出部122による表面周縁部S3の周端縁側の細幅の領域への処理液の供給とが行われた場合には、裏面S2側からの処理液の回り込みによるエッチング処理が行われる場合に比べて、表面周縁部S3におけるエッチング幅は小さく、また、エッチング幅のばらつきも小さくなる。
【0057】
図1に戻って、基板処理装置100の外部には窒素ガス供給源134が設けられている。そして、図3図4に示されるように、基板処理装置100の窒素ガス噴出部124に接続された配管184には、窒素ガス供給源134から配管381を介して窒素ガスが供給される。基板処理装置100における配管381の途中部にはバルブ制御機構152により開閉制御される開閉バルブ171が設けられている。
【0058】
制御部151がバルブ制御機構152を介して開閉バルブ171を開くことにより、窒素ガス供給源134から窒素ガス噴出部124に窒素ガスが供給される。
【0059】
窒素ガス噴出部124は、例えば、基板Wの周方向に沿って細長い円弧状の断面形状を有して構成される。窒素ガス噴射ノズル128は、窒素ガス噴出部124の下面において基板Wの周方向に細長い円弧状の開口を有する噴射ノズル、若しくは、窒素ガス噴出部124の下面において所定の間隔で設けられた円筒状の複数の噴射ノズルなどによって構成される。窒素ガス噴出部124に供給された窒素ガスは、窒素ガス噴射ノズル128から窒素ガスG1(パージ用ガス)として回転している基板Wの表面S1に噴出される。
【0060】
より詳細には、窒素ガスG1は、基板Wの表面S1のうち表面周縁部S3の回転軌跡で囲まれた範囲内に規定された所定の噴射目標領域に向けて基板Wの上方の窒素ガス噴射ノズル128から噴射される。そして、表面S1に噴射された窒素ガスG1は、噴射目標領域から基板Wの表面周縁部S3に向かって流れる気体流となる。窒素ガスG1による当該気体流によって、水蒸気噴射ノズル125から裏面S2に噴射された水蒸気51が凝縮したミストや、処理液吐出部122の処理液供給ノズル126から吐出された処理液52などが基板Wの表面S1のうちエッチング処理が行われない非処理領域に付着することが抑制される。
【0061】
また、リンス処理が終了した後の基板Wの表面S1の乾燥処理においても、窒素ガス噴射ノズル128から供給される窒素ガスG1によって、基板Wの乾燥が促進されるとともに、基板Wの高速回転により作用する遠心力によって表面周縁部S3から基板外に振り切られたリンス液が基板Wに戻って表面S1の非処理領域に付着することも抑制される。
【0062】
また、図1に示されるように、下ノズル141に接続する供給管147には、窒素ガス供給源134から配管387を介して窒素ガスが供給される。配管387の途中部にはバルブ制御機構152により開閉制御される開閉バルブ177が設けられている。裏面S2のリンス処理が終了した後に制御部151がバルブ制御機構152を介して開閉バルブ177を開くことにより、下ノズル141の処理液吐出口148から回転している基板Wの裏面S2に窒素ガスが供給される。
【0063】
裏面S2に付着しているリンス液には、基板の高速回転により大きな遠心力が作用して、リンス液は基板Wの周囲に振り切られ、裏面S2の乾燥処理が行われる。また、下ノズル141から裏面S2に供給される窒素ガスによっても裏面S2の乾燥が促進される。
【0064】
なお、基板処理装置100が窒素ガス供給源134、窒素ガス噴出部124を備えていないとしても、エッチング幅の均一性とエッチングレートとのそれぞれの悪化を抑制しつつエッチング幅を細くできるので、本発明の有用性を損なうものではない。
【0065】
<2.基板処理装置の動作>
図10図11は、実施形態に係る基板処理装置100による基板処理の流れの一例を示すフローチャートである。処理の開始前には、各開閉バルブは、いずれも閉じられており、スピンチャック111は静止している。また、ノズルユニット120は、基板Wの搬入経路上以外の待機位置に位置決めされている。まず、図示省略の基板搬送ロボットにより1枚の基板Wが、スピンチャック111が設置された図示省略の処理室(チャンバー)内に搬入されてスピンチャック111に載置され、チャックピン117により保持される(ステップS110)。
【0066】
続いて、ノズルユニット120が基板Wの表面周縁部S3の上方の所定位置に位置決めされる。そして、開閉バルブ171が開かれて、窒素ガス供給源134から、例えば、毎分30L〜100Lの流量で窒素ガスの供給が開始される。当該窒素ガスは、窒素ガス加熱ヒーター138によって、例えば、120℃〜150℃に加熱された後、窒素ガス噴出部124から窒素ガスG1(パージ用ガス)として基板Wの表面周縁部S3に向けて噴射される(ステップS120)。窒素ガス供給源134から供給される常温の窒素ガスが、加熱されることなく窒素ガス噴出部124からパージ用ガスとして噴射される場合には、基板Wでの温度低下を招き、エッチングレートが低下するが、窒素ガス加熱ヒーター138により加熱された窒素ガスがパージ用ガスとして基板Wの表面周縁部S3に供給されれば、エッチングレートの低下を抑制することが出来る。
【0067】
続いて、制御部151がチャック回転機構154を制御することにより、スピンチャック111の回転速度が、例えば、50rpm〜1000rpmの所定の高速の回転速度になるように、スピンチャック111の回転が開始される(ステップS130)。その後、開閉バルブ175が開かれることにより、水蒸気供給源131で生成されてヒーター139により加熱された加熱用の水蒸気が、供給管181を経て水蒸気噴射ノズル125に供給される。そして、水蒸気噴射ノズル125は、基板Wの裏面S2の中央部分に向けて加熱用の水蒸気の噴射を開始することにより(ステップS140)、裏面S2の中央部分からの熱伝導による基板Wの全体的な加熱を開始する。
【0068】
続いて、基板Wの表面周縁部S3のエッチング処理が行われる(ステップS150)。具体的には、開閉バルブ173が開かれて処理液供給源132からノズルユニット120の処理液吐出部122に処理液が供給されて処理液供給ノズル126から加熱された表面周縁部S3の周端縁側の細幅領域に吐出される。そして、吐出された処理液によって基板Wの表面周縁部S3のエッチング処理が行われる。
【0069】
所定の時間が経過して表面周縁部S3のエッチング処理が完了すると、開閉バルブ175が閉じられて基板Wへの処理液の供給が停止される。
【0070】
続いて、基板Wの表面周縁部S3のリンス処理が行われる(ステップS160)。具体的には、開閉バルブ174が開かれてリンス液供給源133からリンス液の供給が開始される。そして、処理液吐出部122のリンス液供給ノズル127から表面周縁部S3にリンス液が吐出されて表面周縁部S3のリンス処理が行われる。所定時間が経過して表面周縁部S3のリンス処理が完了すると、開閉バルブ174が閉じられてリンス液の供給が停止される。
【0071】
続いて、基板Wの裏面S2のエッチング処理が行われる(ステップS170)。具体的には、開閉バルブ176が開かれて処理液供給源132から下ノズル141に処理液が供給されて加熱されている裏面S2に吐出される。そして、吐出された処理液によって基板Wの裏面S2のエッチング処理が行われる。なお、裏面S2のエッチング処理の際には、リンス液供給ノズル127から表面周縁部S3に上方から純水やDIWを供給することにより、裏面S2から表面周縁部S3への処理液の回り込みを抑制することが好ましい。
【0072】
所定の時間が経過して裏面S2のエッチング処理が完了すると、開閉バルブ176が閉じられて裏面S2への処理液の供給が停止される。そして、開閉バルブ175が閉じられて、裏面S2への加熱用の水蒸気の噴射が停止される(ステップS180)。なお、裏面S2の加熱用の水蒸気の噴射は、例えば、ステップS160の開始前に一旦停止され、ステップS170の開始前に再開されてもよい。
【0073】
ステップS180の処理に続いて、基板Wの裏面S2のリンス処理が行われる(ステップS190)。具体的には、開閉バルブ178が開かれてリンス液供給源133からリンス液の供給が開始される。そして、下ノズル141の処理液吐出口148から基板Wの裏面S2にリンス液が吐出されて裏面S2のリンス処理が行われる。所定時間が経過して裏面S2のリンス処理が完了すると、開閉バルブ178が閉じられてリンス液の供給が停止される。
【0074】
続いて、スピンチャック111の回転速度が、1000rpm〜1500rpmの高回転速度に設定された状態でスピンチャック111の回転が所定の時間継続される。これにより、表面周縁部S3に残留しているリンス液が遠心力の作用によって基板Wの外に振り切られて基板Wの表面S1の乾燥処理(スピン乾燥)が行われる(ステップS200)。なお、スピン乾燥の際には、窒素ガス噴出部124の窒素ガス噴射ノズル128から表面周縁部S3への窒素ガスG1の供給は継続される。これにより、表面周縁部S3に付着しているリンス液の乾燥が促進されるとともに、振り切られたリンス液が基板W側に戻って表面S1の非処理領域に付着することが抑制される。また、下ノズル141の処理液吐出口148から裏面S2に向けて窒素ガスが噴射され裏面S2の乾燥が促進される。
【0075】
乾燥処理の開始から所定の時間が経過すると、スピンチャック111の回転が停止されて乾燥処理が終了される(ステップS210)。続いて、開閉バルブ171、開閉バルブ177が閉じられて窒素ガス噴出部124、下ノズル141からのパージ用の窒素ガスの噴射が停止される(ステップS220)。
【0076】
窒素ガス噴出部124、下ノズル141からのガスの噴射が停止されると、制御部151はノズル回転機構155を制御してノズルユニット120を待機位置に移動させる。その後、図示省略の搬送ロボットによって処理済みの基板Wがスピンチャック111から取り外されて処理室外へ搬出され(ステップS230)、基板処理装置100による基板処理が終了する。
【0077】
以上のように構成された本実施形態に係る基板処理装置によれば、基板Wの裏面S2の中央部分に加熱用の水蒸気が噴射されて基板Wが全体的に加熱されて、周縁部に上方から処理液が供給される。これにより、供給される処理液の液量が少ない場合であっても、周縁部を十分に加熱して周縁部における処理液の反応性を高めることができる。従って、周縁部のうち基板端部側(周端縁側)の所望の細い幅の領域に上方から処理液が供給されれば、エッチング幅の均一性とエッチングレートとのそれぞれの悪化を抑制しつつエッチング幅を細くできる。また、基板Wの下面に加熱用の水蒸気が噴射されるので、水蒸気が凝縮した水滴が生成されたとしても、水滴の基板上面への回り込みを抑制できる。従って、水滴の基板上面の被処理領域への付着による非処理領域の劣化を抑制できる。また、加熱用の水蒸気の供給に起因した非処理領域の劣化が生じにくいことから、基板Wの表面周縁部S3の加熱に十分な量の水蒸気を裏面S2に供給することができる。
【0078】
また、以上のように構成された本実施形態に係る基板処理装置によれば、水蒸気噴射ノズル125は、スピンチャック111の回転支軸113の内部を通された供給管181を通して基板Wの裏面S2に加熱用の水蒸気を噴射する。これにより、簡単な構成で、回転するチャックピン117と水蒸気噴射ノズル125との接触を防止しつつ、裏面S2に加熱用の水蒸気を供給することが出来る。
【0079】
また、以上のように構成された本実施形態に係る基板処理装置によれば、加熱用の水蒸気として、高温の過熱水蒸気が用いられるので、例えば、100℃までの温度の飽和水蒸気が加熱処理に用いられる場合に比べて基板Wの表面周縁部をより高温にすることができ、エッチングレートをより上げることができる。そして、処理液を節約することも出来る。
【0080】
また、以上のように構成された本実施形態に係る基板処理装置によれば、処理液吐出部122は、ノズル回転機構155による制御によって処理液が表面周縁部S3に当たる部分の基板Wの径方向の幅を調節可能である。これにより、表面S1が加熱された基板Wの表面周縁部S3の所望の細幅の領域に上方から処理液を供給できるので、基板Wの回転速度に拘わらずエッチング幅を高精度で制御することが出来る。
【0081】
本発明は詳細に示され記述されたが、上記の記述は全ての態様において例示であって限定的ではない。したがって、本発明は、その発明の範囲内において、実施の形態を適宜、変形、省略することが可能である。例えば、窒素ガス供給源134や水蒸気供給源131が基板処理装置100内に設けられても良い。窒素ガス供給源134による窒素ガスの供給に代えて、乾燥空気などの乾燥気体や窒素ガス以外の不活性ガスが供給される構成が採用されてもよい。また、ノズルユニット120における各ノズル等は、基板Wに対して一体的に移動されるが、それぞれ個別に移動可能に構成されても良い。また、基板処理装置100が裏面S2と表面周縁部S3とのうち表面周縁部S3のみに処理液を供給することにより、表面周縁部S3と裏面S2とのうち表面周縁部S3のみのエッチング処理を行うとしても本発明の有用性を損なうものではない。また、基板処理装置100に窒素ガス加熱ヒーター138が設けられないとしても本発明の有用性を損なうものではない。
【符号の説明】
【0082】
100 基板処理装置
111 スピンチャック(基板保持部)
120 ノズルユニット
122 処理液吐出部(周縁処理部)
125 水蒸気噴射ノズル(加熱部)
126 処理液供給ノズル
127 リンス液供給ノズル
154 チャック回転機構(回転部)
155 ノズル回転機構
51 水蒸気
52 処理液
53 リンス液
G1 窒素ガス
S1 表面(上面)
S2 裏面(下面)
S3 表面周縁部
W 基板
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11