特許第6100522号(P6100522)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6100522
(24)【登録日】2017年3月3日
(45)【発行日】2017年3月22日
(54)【発明の名称】磁気共鳴装置およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/055 20060101AFI20170313BHJP
【FI】
   A61B5/05 311
【請求項の数】13
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2012-286798(P2012-286798)
(22)【出願日】2012年12月28日
(65)【公開番号】特開2014-128333(P2014-128333A)
(43)【公開日】2014年7月10日
【審査請求日】2015年12月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】300019238
【氏名又は名称】ジーイー・メディカル・システムズ・グローバル・テクノロジー・カンパニー・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100137545
【弁理士】
【氏名又は名称】荒川 聡志
(72)【発明者】
【氏名】岩舘 雄治
【審査官】 右▲高▼ 孝幸
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−178070(JP,A)
【文献】 特開2011−167559(JP,A)
【文献】 特開2004−089722(JP,A)
【文献】 特開2006−149559(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/055
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体の第1の部位におけるスライスのk空間のデータを複数回収集するためのスキャンを実行する磁気共鳴装置であって、
前記被検体の体動する第2の部位の位置を検出する検出手段と、
前記第2の部位の基準位置を決定する基準位置決定手段と、
前記検出手段により検出された前記第2の部位の位置と前記基準位置とのずれ量に基づいて、前記第1の部位のスライスを補正する補正手段と、
補正されたスライスに従って前記スキャンを実行することにより収集された複数のk空間のデータの各々を画像データに変換する変換手段と、
前記複数のk空間のデータの各々の収集時において検出された前記第2の部位の位置と前記基準位置とのずれ量に基づいて、前記変換手段により得られた複数の画像データを合成する合成手段と、
を有する、磁気共鳴装置。
【請求項2】
前記第2の部位の位置に基づいて前記第1の部位のスライスを補正する補正手段を有し、
前記スキャンは、補正されたスライスに従ってk空間のデータを複数回収集する、請求項1に記載の磁気共鳴装置。
【請求項3】
前記第2の部位の基準位置を決定する基準位置決定手段を有し、
前記合成手段は、
前記検出手段により検出された前記第2の部位の位置と前記基準位置とのずれ量に基づいて、前記複数の画像データを合成する、請求項1又は2に記載の磁気共鳴装置。
【請求項4】
前記第2の部位は、前記被検体の呼吸により体動し、
前記基準位置は、前記被検体が息を吐き切ったときの前記第2の部位の位置である、請求項3に記載の磁気共鳴装置。
【請求項5】
前記合成手段は、
前記ずれ量に基づいて、前記複数の画像データの各々のピクセルの信号値を重み付けし、重み付けられた信号値を加算することにより、前記複数の画像データを合成する、請求項3又は4に記載の磁気共鳴装置。
【請求項6】
前記合成手段は、
前記ずれ量が小さいほど、前記信号値を重み付けするときに用いられる重み付け係数の値を大きくする、請求項5に記載の磁気共鳴装置。
【請求項7】
前記合成手段は、
前記ずれ量が所定値以上の場合は、前記重み付け係数の値をゼロにする、請求項6に記載の磁気共鳴装置。
【請求項8】
前記合成手段は、
前記ずれ量に基づいて、前記複数の画像データの各々のピクセルの信号値の二乗を重み付けし、重み付けられた信号値の二乗を加算し、加算値の平方根を求めることにより、前記複数の画像データを合成する、請求項3又は4に記載の磁気共鳴装置。
【請求項9】
前記合成手段は、
前記ずれ量が小さいほど、前記信号値の二乗を重み付けするときに用いられる重み付け係数の値を大きくする、請求項8に記載の磁気共鳴装置。
【請求項10】
前記合成手段は、
前記ずれ量が所定値以上の場合は、前記重み付け係数の値をゼロにする、請求項9に記載の磁気共鳴装置。
【請求項11】
前記スキャンは、前記第2の部位の位置を検出するためのナビゲータシーケンスと、前記第1の部位のk空間のデータを収集するためのイメージングシーケンスとを含み、
前記基準位置決定手段は、
前記ナビゲータシーケンスにより検出された前記第2の部位の位置に基づいて、前記基準位置を決定する、請求項3〜10のうちのいずれか一項に記載の磁気共鳴装置。
【請求項12】
前記第2の部位の位置を検出するための別のスキャンを実行し、
前記基準位置決定手段は、
前記別のスキャンにより検出された前記第2の部位の位置に基づいて、前記基準位置を決定する、請求項3〜10のうちのいずれか一項に記載の磁気共鳴装置。
【請求項13】
被検体の第1の部位におけるスライスのk空間のデータを複数回収集するためのスキャンを実行する磁気共鳴装置のプログラムであって、
前記被検体の体動する第2の部位の位置を検出する検出処理と、
前記第2の部位の基準位置を決定する基準位置決定処理と、
前記検出処理により検出された前記第2の部位の位置と前記基準位置とのずれ量に基づいて、前記第1の部位のスライスを補正する補正処理と、
補正されたスライスに従って前記スキャンを実行することにより収集された複数のk空間のデータの各々を画像データに変換する変換処理と、
前記複数のk空間のデータの各々の収集時において検出された前記第2の部位の位置と前記基準位置とのずれ量に基づいて、前記変換手段により得られた複数の画像データを合成する合成処理と、
を計算機に実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検体からk空間のデータを複数回収集するためのスキャンを実行する磁気共鳴装置、およびその磁気共鳴装置に適用されるプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
被検体の呼吸信号に基づいてスライス位置を変更するスライストラッキング法が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−026076号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
スライストラッキング法の一つとして、TRON(Tracking Only Navigator)法が知られている。TRON法は、主に体幹部の拡散強調画像データを取得するときに使用される。しかし、TRON法では、非剛体の動きをする臓器(肝臓など)を撮影する場合、スライストラッキングだけでは十分な動き補正をすることができず、再構成された画像にブラーリング(blurring)が現れるという問題がある。
したがって、ブラーリングが軽減された画像データを取得する技術が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1の観点は、被検体の第1の部位のk空間のデータを複数回収集するためのスキャンを実行する磁気共鳴装置であって、
前記被検体の体動する第2の部位の位置を検出する検出手段と、
前記スキャンにより収集された複数のk空間のデータの各々を画像データに変換する変換手段と、
前記複数のk空間のデータの各々の収集時において検出された前記第2の部位の位置に基づいて、前記変換手段により得られた複数の画像データを合成する合成手段と、
を有する、磁気共鳴装置である。
【0006】
本発明の第2の観点は、被検体の第1の部位のk空間のデータを複数回収集するためのスキャンを実行する磁気共鳴装置のプログラムであって、
前記被検体の体動する第2の部位の位置を検出する検出処理と、
前記スキャンにより収集された複数のk空間のデータの各々を画像データに変換する変換処理と、
前記複数のk空間のデータの各々の収集時において検出された前記第2の部位の位置に基づいて、前記変換手段により得られた複数の画像データを合成する合成処理と、
を計算機に実行させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0007】
体動する部位の位置に基づいて画像データを合成するので、ブラーリングを軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一形態の磁気共鳴装置の概略図である。
図2】本形態における撮影部位を概略的に示す図である。
図3】本形態で実施されるスキャンの説明図である。
図4】本形態のフローを示す図である。
図5】ローカライザスキャンSC1により取得された画像データを示す図である。
図6】設定されたスライスおよびナビゲータ領域の一例を示す図である。
図7】取得された呼吸信号を概略的に示す図である。
図8】設定された基準位置の一例を示す図である。
図9】本スキャンSC3の1回目のシーケンス群Gで収集されるk空間のデータを概略的に示す図である。
図10】2回目のシーケンス群Gを実行するときの説明図である。
図11】m回目のシーケンス群Gを実行するときの説明図である。
図12】1回目〜m回目のシーケンス群Gにより収集されたk空間のデータを概略的に示す図である。
図13】スライスSLの画像データを作成する手順の説明図である。
図14】画像データE〜Eを合成するときの説明図である。
図15】各ピクセルの信号値を合成した後の様子を示す図である。
図16】信号値の別の合成方法の一例を示す図である。
図17】各ピクセルの信号値を合成した後の様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、発明を実施するための形態を説明するが、本発明は、以下の形態に限定されることはない。
【0010】
図1は、本発明の一形態の磁気共鳴装置の概略図である。
磁気共鳴装置(以下、「MR装置」と呼ぶ。MR:Magnetic Resonance)100は、マグネット2、テーブル3、受信コイル4などを有している。
【0011】
マグネット2は、被検体11が収容されるボア21を有している。また、マグネット2は、超伝導コイルと、勾配コイルと、RFコイルとを有している。超伝導コイルは静磁場を印加し、勾配コイルは勾配磁場を印加し、RFコイルはRFパルスを送信する。尚、超伝導コイルの代わりに、永久磁石を用いてもよい。
【0012】
テーブル3は、被検体11を支持するクレードル3aを有している。クレードル3aは、ボア21内に移動できるように構成されている。クレードル3aによって、被検体11はボア21に搬送される。
【0013】
受信コイル4は、被検体11に取り付けられている。受信コイル4は、被検体11からの磁気共鳴信号を受信する。
【0014】
MR装置100は、更に、送信器5、勾配磁場電源6、受信器7、制御部8、操作部9、および表示部10などを有している。
【0015】
送信器5はRFコイルに電流を供給し、勾配磁場電源6は勾配コイルに電流を供給する。
受信器7は、受信コイル4から受け取った信号に対して、検波などの信号処理を実行する。
【0016】
制御部8は、表示部10に必要な情報を伝送したり、受信器7から受け取ったデータに基づいて画像を再構成するなど、MR装置100の各種の動作を実現するように、MR装置100の各部の動作を制御する。制御部8は、検出手段81〜合成手段85などを有している。
【0017】
検出手段81は、ナビゲータシーケンスにより得られたデータに基づいて、肝臓の上端のSI方向の位置を検出する。
ずれ量算出手段82は、検出された肝臓の上端の位置と基準位置とのずれ量dを算出する。
補正手段83は、スライスを、算出されたずれ量だけ補正する。
変換手段84は、k空間のデータを画像データに変換する。
合成手段85は、変換手段84により得られた複数の画像データを合成する。
尚、制御部8は、検出手段81〜合成手段85を構成する手段の一例であり、所定のプログラムを実行することにより、これらの手段として機能する。
【0018】
操作部9は、オペレータにより操作され、種々の情報を制御部8に入力する。表示部10は種々の情報を表示する。
MR装置100は、上記のように構成されている。
【0019】
図2は、本形態における撮影部位を概略的に示す図である。
本形態では、撮影部位は、肝臓を含む部位である。撮影部位には、スライスSL〜SLが設定される。図2では、スライスSL〜SLはアキシャルであるが、サジタル、コロナル、又はオブリークであってもよい。
【0020】
図3は本形態で実施されるスキャンの説明図である。
本形態では、ローカライザスキャンSC1、プレスキャンSC2、および本スキャンSC3が実行される。
【0021】
ローカライザスキャンSC1は、スライスの位置決めに使用される位置決め画像データを取得するためのスキャンである。
プレスキャンSC2は、肝臓の上端の基準位置を決定するために実行されるスキャンである。
【0022】
本スキャンSC3は、肝臓の画像データを取得するためのスキャンである。本スキャンSC3では、スライスSL〜SLの画像データを取得するためのシーケンス群Gが実行される。また、SNR(Signal to Noise Ratio)を向上させるために、シーケンス群Gの加算回数NEXを、NEX=m(mは2以上の整数)に設定している。
シーケンス群Gは、ナビゲータシーケンスA〜AとイメージングシーケンスB〜Bとが実行される。
【0023】
ナビゲータシーケンスA〜Aは、肺と肝臓との境界を横切るナビゲータ領域Rnav図2参照)から信号を収集し、肝臓の上端の位置を検出するためのシーケンスである。
イメージングシーケンスB〜Bは、それぞれ、スライスSL〜SLの画像データを取得するためのシーケンスである。
以下に、図3に示すシーケンス群Gにより画像データを収集するときのフローについて説明する。
【0024】
図4は、本形態のフローを示す図である。
ステップST1では、ローカライザスキャンSC1を実行する(図5参照)。
【0025】
図5は、ローカライザスキャンSC1により取得された画像データを示す図である。
ローカライザスキャンは、スライスの位置決めに使用される位置決め画像データEを取得するためのスキャンである。位置決め画像データEを取得した後、ステップST2に進む。
【0026】
ステップST2では、オペレータは、位置決め画像データEに基づいて、スライスおよびナビゲータ領域を設定する。図6に、設定されたスライスおよびナビゲータ領域の一例を示す。スライスSL〜SLは、肝臓全体を覆うように設定される。また、ナビゲータ領域Rnavは、肺と肝臓との境界を横切るように設定される。スライスSL〜SLおよびナビゲータ領域Rnavを設定した後、ステップST3に進む。
【0027】
ステップST3では、プレスキャンSC2が実行される。プレスキャンSC2では、ナビゲータシーケンスが繰り返し実行される。ナビゲータシーケンスは、ナビゲータ領域Rnav内における肝臓の上端のSI方向の位置を検出するためのシーケンスである。被検体の呼吸運動により肝臓の上端のSI方向の位置が変化するので、ナビゲータシーケンスを繰り返し実行することにより、被検体の呼吸信号を取得することができる。図7に、取得された呼吸信号を概略的に示す。呼吸信号を取得した後、ステップST4に進む。
【0028】
ステップST4では、ステップST3で取得した呼吸信号に基づいて、肝臓の上端のSI方向の基準位置を設定する。図8に、設定された基準位置の一例を示す。本形態では、被検体が息を吐き終ったときの位置を、基準位置Prefとして設定する。被検体が息を吐くと、肝臓の上端はS側に移動し、被検体が息を吸うと肝臓の上端はI側に移動する。したがって、呼吸信号の極大値を検出することにより、被検体が息を吐き終ったときの位置を検出することができる。基準位置Prefは、オペレータが呼吸信号を見ながら手動で設定してもよいし、呼吸信号に基づいて自動で設定してもよい。基準位置Prefを設定した後、ステップST5に進む。
【0029】
ステップST5では、本スキャンSC3を実行する。
図9は、本スキャンSC3の1回目のシーケンス群Gで収集されるk空間のデータを概略的に示す図である。
先ず、ナビゲータシーケンスAが実行される。ナビゲータシーケンスAが実行されると、検出手段81(図1参照)は、ナビゲータシーケンスAにより得られたデータに基づいて、時点t11における肝臓の上端のSI方向の位置P11を検出する。ずれ量算出手段82(図1参照)は、検出された肝臓の上端の位置P11と基準位置Prefとのずれ量d(=d11)を算出する。次に、補正手段83(図1参照)は、ステップST2で設定したスライスSLを、算出されたずれ量d11だけ補正する。図9(a)に、d11だけ補正された後のスライスSLを示す。
【0030】
次に、d11だけ補正された後のスライスSLに従って、イメージングシーケンスBが実行される。本形態では、イメージングシーケンスBは高速撮像シーケンスであり、イメージングシーケンスBを実行することにより、スライスSLのk空間の全てのビューのデータが収集される。図9(a)に、イメージングシーケンスBにより収集されたk空間のデータD11を概略的に示す。
【0031】
イメージングシーケンスBが実行された後、ナビゲータシーケンスAが実行される。ナビゲータシーケンスAが実行されると、検出手段81は、ナビゲータシーケンスAにより得られたデータに基づいて、時点t12における肝臓の上端のSI方向の位置P12を検出する。ずれ量算出手段82は、検出された肝臓の上端の位置P12と基準位置Prefとのずれ量d(=d12)を算出する。次に、補正手段83は、ステップST2で設定したスライスSLを、算出されたずれ量d12だけ補正する。図9(b)に、d12だけ補正された後のスライスSLを示す。
【0032】
次に、d12だけ補正された後のスライスSLに従って、イメージングシーケンスBが実行される。イメージングシーケンスBは高速撮像シーケンスであり、イメージングシーケンスBを実行することにより、スライスSLのk空間の全てのビューのデータが収集される。図9(b)に、イメージングシーケンスBにより収集されたk空間のデータD12を概略的に示す。
【0033】
以下同様に、ナビゲータシーケンスとイメージングシーケンスとが交互に実行され、各スライスのk空間のデータが収集される。そして、ナビゲータシーケンスAが実行される。ナビゲータシーケンスAが実行されると、検出手段81は、ナビゲータシーケンスAにより得られたデータに基づいて、時点t1nにおける肝臓の上端のSI方向の位置P1nを検出する。ずれ量算出手段82は、検出された肝臓の上端の位置P1nと基準位置Prefとのずれ量d(=d1n)を算出する。次に、補正手段83は、ステップST2で設定したスライスSLを、算出されたずれ量d1nだけ補正する。図9(c)に、d1nだけ補正された後のスライスSLを示す。
【0034】
したがって、1回目のシーケンス群Gを実行することにより、スライスSL〜SLのk空間のデータD11〜D1nを収集することができる。
1回目のシーケンス群Gを実行した後、2回目のシーケンス群Gが実行される。
【0035】
図10は、2回目のシーケンス群Gを実行するときの説明図である。
2回目のシーケンス群Gでも、1回目のシーケンス群Gと同様にナビゲータシーケンスA〜Aが実行され、肝臓の上端の位置P21〜P2nが検出される。そして、検出した位置P21〜P2nと基準位置Prefとのずれ量d21〜d2nに基づいて、ステップST2で設定したスライスSL〜SLが補正され、イメージングシーケンスB〜Bが実行される。したがって、2回目のシーケンス群Gでは、スライスSL〜SLのk空間のデータD21〜D2nが収集される。
【0036】
以下同様に、2回目のシーケンス群Gが終了したら、3回目以降のシーケンス群Gも同様に実行され、スライスSL〜SLのk空間のデータが収集される。そして、最後に、m回目のシーケンス群Gが実行される。
【0037】
図11は、m回目のシーケンス群Gを実行するときの説明図である。
m回目のシーケンス群Gでも、1回目のシーケンス群Gと同様にナビゲータシーケンスA〜Aが実行され、肝臓の上端の位置Pm1〜Pmnが検出される。そして、検出した位置Pm1〜Pmnと基準位置Prefとのずれ量dm1〜dmnに基づいて、ステップST2で設定したスライスSL〜SLが補正され、イメージングシーケンスB〜Bが実行される。したがって、m回目のシーケンス群Gでは、スライスSL〜SLのk空間のデータDm1〜Dmnが収集される。
【0038】
このようにして、シーケンス群Gが加算回数NEX(=m)だけ実行される。図12に、1回目〜m回目のシーケンス群Gにより収集されたk空間のデータを概略的に示す。
k空間のデータを収集した後、ステップST6に進む。
【0039】
ステップST6では、ステップST5で収集されたk空間のデータに基づいて、各スライスSL〜SLの画像データを作成する。尚、どのスライスであっても、画像データの作成方法は同じであるので、以下では、スライスSL〜SLのうち、代表してスライスSLを取り上げ、スライスSLの画像データを作成する手順について説明する(図13参照)。
【0040】
図13は、スライスSLの画像データを作成する手順の説明図である。
変換手段84(図1参照)は、先ず、スライスSLのk空間のデータD11〜Dm1の各々を実空間のデータに変換する。k空間のデータD11〜Dm1の各々を実空間のデータに変換することにより、m枚のスライスSLの画像データE〜Eが得られる。画像データE〜Eを得た後、これらの画像データE〜Eを合成する(図14参照)。
【0041】
図14は、画像データE〜Eを合成するときの説明図である。
合成手段85(図1参照)は、画像データE〜Eから、同一位置のピクセルの信号値を取り出し、ずれ量dに基づいて、ピクセルの信号値を合成する。
【0042】
例えば、画像データE〜EのピクセルQの信号値を合成する場合、画像データE〜Eの各々のピクセルQの信号値S11〜Sm1に重み付け係数F〜Fを乗算し、重み付けられた信号値F*S11〜F*Sm1を求める。尚、重み付け係数F〜Fは、以下の式で表すことができる。
【数1】
【0043】
式(f1)〜(fm)の定数kは、予め設定されている値であり、例えば、k=3.33(cm)とすることができる。k=3.33の場合、式(f1)〜(fm)は、以下のように表される。
【数2】
【0044】
例えば、d11=1cm、d21=3cm、dm1=2cmである場合、F=0.7、F=0.1、F=0.4となる。この場合、重み付けられた信号値は、F*S11=0.7S11、F*S21=0.1S21、F*Sm1=0.4Sm1となる。したがって、肝臓の上端が基準位置Prefに近いほど、ピクセルQの信号値S11〜Sm1の重みが大きくなり、肝臓の上端が基準位置Prefから遠いほど、ピクセルQの信号値S11〜Sm1の重みが小さくなることがわかる。特に、ずれ量d11〜dm1がk=3.33(cm)以上ある場合は、重み付け係数F〜Fはゼロとなる。したがって、肝臓の上端が基準位置Prefから離れすぎている場合は、ピクセルQの信号値S11〜Sm1の重みをゼロにすることができる。
【0045】
重み付けられた信号値F*S11〜F*Sm1を求めた後、これらの信号値を加算する。加算の式は、以下の式で表すことができる。
【数3】
【0046】
このようにして得られた信号値SP1が、合成後の画像データEcombのピクセルQの信号値として採用される。
図14では、ピクセルQの信号値を合成する場合について説明されているが、他の各ピクセルQ〜Qの信号値を合成する場合も、各信号値を重み付け係数F〜Fで重み付けし、重み付けられた信号値を加算すればよい。図15に、各ピクセルの信号値を合成した後の様子を示す。このようにして、スライスSLの合成後の画像データを得ることができる。尚、場合によっては、スライスSLの全てのずれ量d11〜dm1がk=3.33(cm)以上になることがあり得る。この場合、全ての重み付け係数F〜Fがゼロになってしまうので、合成後の画像データEcombの全てのピクセルの信号値がゼロになってしまい、スライスSLの画像を表示することができなくなる。したがって、スライスSLの全てのずれ量d11〜dm1がk=3.33(cm)以上になった場合は、ずれ量d11〜dm1の少なくとも一つがk=3.33(cm)よりも小さい値になるまで、スライスSLのデータを再収集するためのスキャンを実行すればよい。
【0047】
図14および図15は、スライスSLの画像データを合成する方法について説明されているが、他のスライスSL〜SLについても、同様の方法で合成することができる。
【0048】
尚、信号値の合成方法は、図14および図15に示す方法に限定されることはない。
図16は、信号値の別の合成方法の一例を示す図である。
図16では、画像データE〜EのピクセルQの信号値を合成する場合、先ず、画像データE〜Eの各々のピクセルQの信号値S11〜Sm1を二乗し、重み付け係数F〜Fで重み付けする。したがって、信号値F*S11〜F*Sm1が求められる。尚、重み付け係数F〜Fは、図14および図15の場合と同じ式が用いられる。
【0049】
重み付けられた信号値F*S11〜F*Sm1を求めた後、以下の式に従って、これらの信号値を加算し、平方根を求める。
【数4】
【0050】
このようにして得られた信号値SP1が、合成後の画像データEcombのピクセルQの信号値として採用される。
【0051】
図16では、ピクセルQの信号値を合成する場合について説明されているが、他の各ピクセルQ〜Qの信号値も、同様の方法で合成することができる。図17に、各ピクセルの信号値を合成した後の様子を示す。このようにして、スライスSLの合成後の画像データを得てもよい。
【0052】
図16および図17は、スライスSLの画像データを合成する方法について説明されているが、他のスライスSL〜SLについても、同様の方法で合成することができる。
【0053】
本形態では、肝臓の上端が基準位置Prefに近いほどピクセルの信号値の重みが大きくなり、肝臓の上端が基準位置Prefから遠いほどピクセルの信号値の重みが小さくなるので、ブラーリングが低減された画像データを得ることができる。
【0054】
また、本形態では、ずれ量dがk(cm)以上ある場合は、重み付け係数はゼロとなる。したがって、肝臓の上端が基準位置Prefから離れすぎている場合は、信号値の重みはゼロとなるので、ブラーリングを更に低減することが可能となる。
【0055】
尚、本形態では、基準位置Prefは、被検体が息を吐き終ったときの肝臓の上端の位置である。被検体が息を吐き終わる前後の時間では、肝臓の上端の位置の変動量は小さいので、基準位置Prefを、被検体が息を吐き終ったときの肝臓の上端の位置に設定しておくことにより、ブラーリングを更に低減することが可能である。尚、ブラーリングを低減することができるのであれば、基準位置Prefは、被検体が息を吐き終わったときの肝臓の上端の位置に限定されることはなく、例えば、被検体が息を吸い終わったときの肝臓の上端の位置に設定してもよいし、被検体が息を吸っている途中や息を吐いている途中における肝臓の上端の位置に設定してもよい。
【0056】
本形態では、シーケンス群Gで、n回のナビゲータシーケンスA〜Aとn回のイメージングシーケンスB〜Bとが実行されている。しかし、ナビゲータシーケンスが実行される回数は、イメージングシーケンスが実行される回数と同じである必要はなく、異なっていてもよい。例えば、1回のナビゲータシーケンスと、複数回(例えば2回)のイメージングシーケンスとを交互に実行してもよい。この場合、1回のナビゲータシーケンスにより得られた肝臓の上端の位置に基づいて、複数回のイメージングシーケンスにより得られた複数の画像データの重み付けを行えばよい。
【0057】
本形態では、プレスキャンSC2により得られたデータに基づいて基準位置Prefを求めているが、プレスキャンSC2を実行せずに、1回目のシーケンス群Gの最初に実行されるナビゲータシーケンスAで得られた肝臓の上端の位置を、基準位置Prefとしてもよい。
【0058】
本形態では、ずれ量に基づいてスライスを補正するスキャンを実行する場合について記載されているが、本発明はこれに限定されることはなく、スライスを補正しないスキャン(例えば、肝臓の上端が基準位置に到達したときにのみk空間のデータを収集するスキャン)を実行する場合にも適用することができる。この場合、イメージングシーケンスの直前にナビゲータシーケンスを実行してもよいし、イメージングシーケンスの直後にナビゲータシーケンスを実行してもよい。また、複数回のイメージングシーケンスを実行する直前に1回のナビゲータシーケンスを実行してもよいし、複数回のイメージングシーケンスを実行した直後に1回のナビゲータシーケンスを実行してもよい。
【0059】
また、本形態では、肝臓の上端の位置を検出しているが、被検体の体動を検出できるのであれば、肝臓の上端とは別の部位の位置を検出してもよい。また、本形態では、撮影部位は肝臓であるが、本発明は、肝臓以外の部位(例えば、腎臓)を撮影部位とする場合にも適用することができる。
【符号の説明】
【0060】
2 マグネット
3 テーブル
3a クレードル
4 受信コイル
5 送信器
6 勾配磁場電源
7 受信器
8 制御部
9 操作部
10 表示部
11 被検体
21 ボア
81 検出手段
82 ずれ量算出手段
83 補正手段
84 変換手段
85 合成手段
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図8
図9
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図16
図17