(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6100549
(24)【登録日】2017年3月3日
(45)【発行日】2017年3月22日
(54)【発明の名称】車両用液圧マスタシリンダ
(51)【国際特許分類】
B60T 11/16 20060101AFI20170313BHJP
【FI】
B60T11/16 Z
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-23138(P2013-23138)
(22)【出願日】2013年2月8日
(65)【公開番号】特開2014-151768(P2014-151768A)
(43)【公開日】2014年8月25日
【審査請求日】2015年11月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】315019735
【氏名又は名称】オートリブ日信ブレーキシステムジャパン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100128358
【弁理士】
【氏名又は名称】木戸 良彦
(72)【発明者】
【氏名】小杉 一宏
(72)【発明者】
【氏名】酒井 剛
【審査官】
杉山 悟史
(56)【参考文献】
【文献】
特開2012−166586(JP,A)
【文献】
実開昭54−037788(JP,U)
【文献】
国際公開第2012/079900(WO,A1)
【文献】
特開昭56−113861(JP,A)
【文献】
特開2002−022026(JP,A)
【文献】
特開2010−143571(JP,A)
【文献】
特開2012−210905(JP,A)
【文献】
実公昭40−033929(JP,Y1)
【文献】
実開平02−018971(JP,U)
【文献】
実開昭62−174169(JP,U)
【文献】
実開昭50−079852(JP,U)
【文献】
特開2003−343736(JP,A)
【文献】
実開昭60−118005(JP,U)
【文献】
国際公開第2012/080253(WO,A1)
【文献】
特許第4406338(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60T 11/00 − 11/34
F16J 15/00 − 15/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダ本体に形成した有底のシリンダ孔と、該シリンダ孔の内周壁に形成される環状の複数のシール溝と、各シール溝にそれぞれ嵌着されるカップシールと、該カップシールを介して、シリンダ孔に摺動可能に内挿されるプランジャとを備え、前記シール溝は、シリンダ孔開口側壁と、シリンダ孔底部側壁と、該シリンダ孔底部側壁と前記シリンダ孔開口側壁とを繋ぐ外周側壁とを有する車両用液圧マスタシリンダにおいて、
シリンダ孔開口側に配置される前記カップシールは、シリンダ孔開口側に形成される前記シール溝の前記シリンダ孔開口側壁に沿って配置される基部と、該基部の内周側からシリンダ孔底部側に向けて延出し、内周面が前記プランジャの外周面に摺動可能に当接する内周リップ部と、前記基部の外周側からシリンダ孔底部側に向けて、前記外周側壁に沿って延出する外周リップ部とを備え、
該外周リップ部のシリンダ孔底部側外周部に、非作動状態で前記外周側壁に当接する第1当接部を、前記基部の外周部に、非作動状態で前記外周側壁に当接する第2当接部をそれぞれ設け、
シリンダ孔開口側に配置される前記カップシールは、作動時に、前記第2当接部が前記外周側壁に当接した状態を保持したまま、前記内周リップ部の先端部が前記シリンダ孔底部側壁に当接すること
を特徴とする車両用液圧マスタシリンダ。
【請求項2】
シリンダ孔開口側に配置される前記カップシールは、前記第1当接部と前記第2当接部との間に、前記第1当接部及び前記第2当接部よりも小径で、前記外周側壁との間に隙間を形成する環状の窪み部を備えていることを特徴とする請求項1記載の車両用液圧マスタシリンダ。
【請求項3】
前記外周リップ部と前記内周リップ部とは、シリンダ軸方向の長さが、同一又は近似した長さに形成され、作動時に、前記外周リップ部の先端部と前記内周リップ部の先端部が、前記シリンダ孔底部側壁にそれぞれ当接することを特徴とする請求項1又は2記載の車両用液圧マスタシリンダ。
【請求項4】
前記内周リップ部の先端に、該内周リップ部の内外を連通させる切欠き溝が形成されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の車両用液圧マスタシリンダ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のブレーキを液圧で作動させる車両用液圧マスタシリンダに係り、詳しくは、シリンダ孔の内周に設けたカップシールを介して、シリンダ孔にプランジャを摺動可能に内挿した車両用液圧マスタシリンダのシリンダ孔開口側に配置されるカップシールの構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用液圧マスタシリンダとして、プランジャを移動可能に内挿したシリンダ孔の内周面に環状のシール溝を形成し、該シール溝に、シリンダ孔とプランジャとの間を摺動可能にシールするカップシールを嵌着することが広く行われている。シリンダ孔開口側に配置されるカップシールは、シリンダ孔開口側壁とシリンダ孔底部側壁と該シリンダ孔底部側壁と前記シリンダ孔開口側壁とを繋ぐ外周側壁とを有する環状のシール溝に嵌着され、液圧室側に大気が浸入することを防止すると共に、防塵の役割を果たし、シール溝のシリンダ孔開口側壁に沿って配置される基部と、該基部の内周側からシリンダ孔底部側に向けて延出する内周リップ部と、基部の外周側からシリンダ孔底部側に向けて延出する外周リップ部とを備えたものが用いられている(例えば、特許文献1及び2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】WO2012/080253 A1
【特許文献2】特許第4406338号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上述のカップシールでは、カップシールの外周リップ部とシール溝の外周側壁との当接箇所が一箇所であることから、例えば、
図7に示すように、大気側から異物Bが侵入してカップシール21の外周リップ部21aとシール溝22の外周側壁22aとの当接箇所に付着すると、外周リップ部21aと外周側壁22aとの間に隙間が生じ、シール性が低下する虞があった。
【0005】
そこで本発明は、シリンダ孔開口側に配置されるカップシールのシール性を確保した車両用液圧マスタシリンダを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の車両用液圧マスタシリンダは、シリンダ本体に形成した有底のシリンダ孔と、該シリンダ孔の内周壁に形成される環状の複数のシール溝と、各シール溝にそれぞれ嵌着されるカップシールと、該カップシールを介して、シリンダ孔に摺動可能に内挿されるプランジャとを備え、前記シール溝は、シリンダ孔開口側壁と、シリンダ孔底部側壁と、該シリンダ孔底部側壁と前記シリンダ孔開口側壁とを繋ぐ外周側壁とを有する車両用液圧マスタシリンダにおいて、シリンダ孔開口側に配置される前記カップシールは、シリンダ孔開口側に形成される前記シール溝の前記シリンダ孔開口側壁に沿って配置される基部と、該基部の内周側からシリンダ孔底部側に向けて延出し、内周面が前記プランジャの外周面に摺動可能に当接する内周リップ部と、前記基部の外周側からシリンダ孔底部側に向けて、前記外周側壁に沿って延出する外周リップ部とを備え、該外周リップ部のシリンダ孔底部側外周部に、非作動状態で前記外周側壁に当接する第1当接部を、前記基部の外周部に、非作動状態で前記外周側壁に当接する第2当接部をそれぞれ設け
、シリンダ孔開口側に配置される前記カップシールは、作動時に、前記第2当接部が前記外周側壁に当接した状態を保持したまま、前記内周リップ部の先端部が前記シリンダ孔底部側壁に当接することを特徴としている。
【0007】
また、シリンダ孔開口側に配置される前記カップシールは、前記第1当接部と前記第2当接部との間に、前記第1当接部及び前記第2当接部よりも小径で、前記外周側壁との間に隙間を形成する環状の窪み部を備えていると好まし
い。
【0008】
また、前記外周リップ部と前記内周リップ部とは、シリンダ軸方向の長さが、同一又は近似した長さに形成され、作動時に、前記外周リップ部の先端部と前記内周リップ部の先端部が、前記シリンダ孔底部側壁にそれぞれ当接すると好ましく、さらに、前記内周リップ部の先端に、該内周リップ部の内外を連通させる切欠き溝が形成されていると好適である。
【発明の効果】
【0009】
本発明の車両用液圧マスタシリンダによれば、非作動状態で、カップシールはシール溝の外周側壁に、第1当接部と第2当接部の2箇所で当接していることから、第1当接部と第2当接部のいずれか一方に異物が付着することがあっても、他方の当接部でシール性を確保することができる。また、カップシールは、外周リップ部側に設けられる第1当接部及び第2当接部と、内周リップ部側に設けられるプランジャとの当接部との3点で保持されることから、カップシールをシール溝に安定して保持させることができシール性の向上を図ることができる。
【0010】
さらに、第1当接部と第2当接部との間に環状の窪み部を備けたことにより、第1当接部と第2当接部との間の距離を確保でき、外周リップ部の撓み力を向上させることができ、第1当接部と第2当接部と確実にシール溝の外周側壁に当接させることができる。また、作動時にシリンダ孔開口側に配置されるカップシールは、第2当接部が外周側壁に当接した状態を保持したまま、内周リップ部の先端部がシリンダ孔底部側壁に当接することにより、第2当接部が外周側壁から離れようとする力を抑えることができ、作動時のシール性を確保することができる。また、外周リップ部と内周リップ部のシリンダ軸方向の長さを、同一又は近似した長さに形成したことにより、作動時にカップシールの倒れを抑制し、シール性を確保することができる。さらに、内周リップ部の先端に、該内周リップ部の内外を連通させる切欠き溝を形成したことにより、内周リップ部がシリンダ孔底部側壁に当接した際に、シリンダ孔底部側壁に張り付くことを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一形態例を示す非作動時のカップシールの説明図である。
【
図2】同じく非作動時に異物が侵入した際のカップシールの説明図である。
【
図3】同じく作動時のカップシールの説明図である。
【
図5】同じくカップシールの一部断面斜視図である。
【
図6】同じく車両用液圧マスタシリンダの断面図である。
【
図7】非作動時に異物が侵入した際の従来のカップシールの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1乃至
図6は、本発明の一形態例を示すもので、
図6に示されるように、この液圧マスタシリンダ1は、シリンダ本体2に有底のシリンダ孔2aが形成され、シリンダ孔2aの底部2bの上部外側にはユニオンボス部2cが突設され、該ユニオンボス部2cにユニオン孔2dが形成されている。シリンダ本体2の上部には、シリンダ孔2aに連通する液通孔2eを備えたボス部2fが突設され、該ボス部2fには、シール材3を介してリザーバに連結されるコネクタ4が取り付けられる。さらに、シリンダ本体2の下部には、車体取付用の取付けブラケット2g,2gが突設されると共に、シリンダ孔開口側には、プッシュロッド5の先端側が挿入される大径筒部2hが連設されている。
【0013】
シリンダ孔2aには、プランジャ6が、シリンダ孔底部側に配置された第1カップシール7とシリンダ孔開口部側に配置された第2カップシール8(本発明のシリンダ孔開口側に配置されるカップシール)とを介して摺動可能に内挿され、第1カップシール7は、前記液通孔2eよりもシリンダ孔底部側のシリンダ孔2aの内周面に形成される第1シール溝2iに、第2カップシール8は、液通孔2eよりもシリンダ孔開口側のシリンダ孔2aの内周面に形成される第2シール溝9にそれぞれ嵌着されている。また、第1シール溝2iと第2シール溝9との間のシリンダ孔2aの内周面には、前記液通孔2eに連通する補給油室2kが形成されている。
【0014】
プランジャ6は、シリンダ孔底部側に開口する凹部6aを有する有底円筒状に形成され、前記凹部6aとシリンダ孔2aの底部2bとの間に液圧室10が画成されている。また、凹部6aの底面とシリンダ孔2aの底面との間には、非作動状態のプランジャ6を初期位置に復帰させるリターンスプリング11が配置されている。また、プランジャ6のシリンダ孔開口側の外面には、プランジャ6を押動させる前記プッシュロッド5が当接する球状凹部6bが形成されている。さらに、凹部6aの周壁には、該周壁の内外を貫通し、非作動状態の初期位置で、液圧室10と補給油室2kとを連通する小径の連通ポート6cが周方向に複数形成されている。プッシュロッド5は、前記球状凹部6bに当接する半球状の大径頭部5aが、シリンダ孔2a内へ差し込まれ、大径筒部2hの内周に形成した係着溝に係着した止め輪12とリテーナ13とで抜け止めされている。
【0015】
シリンダ孔開口側の前記第2シール溝9は、シリンダ孔開口側壁9aと、シリンダ孔底部側壁9bと、シリンダ孔底部側壁9bとシリンダ孔開口側壁9aとを繋ぐ外周側壁9cとを有する環状に形成されている。シリンダ孔開口側壁9aは、シリンダ孔2aの中心軸に対して略直角となるように形成され、シリンダ孔底部側壁9bは、外周側壁9c側からシール溝開口側に向けてシリンダ孔底部側に漸次傾斜した円錐面に形成され、外周側壁9cは、シリンダ孔内周面に対して略平行となるように形成されている。
【0016】
第2カップシール8は、第2シール溝9のシリンダ孔開口側壁9aに沿って配置される基部8aと、基部8aの内周側からシリンダ孔底部側に向けて延出し、内周面がプランジャ6の外周面に摺動可能に当接する内周リップ部8bと、基部8aの外周側からシリンダ孔底部側に向けて、外周側壁9cに沿って延出する外周リップ部8cとを備えている。内周リップ部8bと外周リップ部8cのシリンダ軸方向の長さは、同一の長さに形成されるとともに、作動時に、外周リップ部8cの先端部と内周リップ部8bの先端部が、シリンダ孔底部側壁9bにそれぞれ当接可能な長さに形成されている。また、外周リップ部8cのシリンダ軸方向中間部には、外周側壁9cとの間に隙間を形成する環状の窪み部8dが設けられ、外周リップ部8cの、窪み部8dよりもシリンダ孔底部側外周部には、非作動状態で外周側壁9cに当接する第1当接部E1が、窪み部8dよりもシリンダ孔開口側に配置される基部8aの外周部には、非作動状態で外周側壁9cに当接する第2当接部E2がそれぞれ設けられ、内周リップ部8bのシリンダ孔底部側内周部には、非作動状態でプランジャ6に当接する第3当接部E3が設けられている。さらに、内周リップ部8bと外周リップ部8cの先端には、内周リップ部8bと外周リップ部8cの内外を連通させる切欠き溝8eが複数箇所にそれぞれ形成されると共に、基部8aのシリンダ孔開口側端面にも切欠き溝8fが複数箇所に形成されている。
【0017】
なお、第1カップシール7及び第1シール溝2iは、周知のカップシール及びシール溝であり、その詳細な説明は省略する。
【0018】
上述のように形成された車両用液圧マスタシリンダ1は、非作動時には、リターンスプリング11の弾発力によって、プランジャ6の連通ポート6cが第1カップシール7よりもシリンダ孔開口側に位置する初期位置に保持され、連通ポート6cを介して液圧室10と補給油室2kとが連通し、リザーバと液圧室10との間を、液通孔2e,補給油室2k及び複数の連通ポート6cを介して作動液が流通可能な状態となっている。
【0019】
このとき、第2カップシール8は、第1当接部E1が第2シール溝9の外周側壁9cのシリンダ孔底部側に、第2当接部E2が外周側壁9cのシリンダ孔開口部側にそれぞれ当接し、大気がシリンダ孔内に浸入したり、作動液が外部に漏れ出すことを防止している。また、第3当接部E3がプランジャ6の外周面に当接していることにより、第1当接部E1と第2当接部E2と第3当接部E3の三点で第2カップシール8が支持されていることから、第2カップシール8を安定した状態で第2シール溝9に保持させることができる。
【0020】
また、
図2a及び
図2bに示されるように、非作動状態で大気側(シリンダ孔開口側)から第2シール溝9内に異物Bが侵入することがあっても、
図2aに示されるように、第1当接部E1に異物が付着した際には、第2当接部E2が、
図2bに示されるように、第2当接部E2に異物が付着した際には、第1当接部E1がそれぞれ外周側壁9cに当接し、シール状態を確保していることから、従来のように、外周リップ部8cと外周側壁9cとの間に隙間が形成されることがなく、大気がシリンダ孔内に浸入したり、作動液が外部に漏れ出すことを確実に防止できる。
【0021】
制動時にプッシュロッド5がプランジャ6をシリンダ孔底部側に押動すると、プランジャ6がリターンスプリング11を圧縮しながらシリンダ孔2a内をシリンダ孔底部方向へ前進し、連通ポート6cが第1カップシール7を通過し、液圧室10と補給油室2kとの連通状態が遮断された時点から液圧室10に液圧が発生し始め、昇圧された作動液は、ユニオン孔2dを通ってブレーキ系統へ供給される。
【0022】
このとき、第2カップシール8は、内周リップ部8bがプランジャ6に引き摺られてシリンダ孔底部側に移動し、第2当接部E2が外周側壁9cに当接した状態を保持したまま、内周リップ部8bの先端部がシリンダ孔底部側壁9bに当接する。これにより、第2当接部E2が外周側壁9cから離れようとする力を抑えることができ、作動時のシール性を確保することができる。また、外周リップ部8cと内周リップ部8bのシリンダ軸方向の長さを、同一又は近似した長さに形成すると共に、第2シール溝9のシリンダ軸方向の長さよりも僅かに短く形成したことにより、作動時に外周リップ部8cと内周リップ部8bの先端部が、シール溝9のシリンダ孔底部側壁9bに当接することにより、第2カップシール8の倒れを抑制し、シール性を確保することができる。尚、近似した長さとは、本形態例のようなシール溝の場合、外周リップ部が内周リップ部の95%以上100%未満の長さであることが望ましい。さらに、内周リップ部8bの先端と外周リップ部8cの先端及び基部8aのシリンダ孔開口側端面に切欠き溝8e,8fが形成されていることにより、第2カップシール8が第2シール溝9に張り付くことを防止できる。
【0023】
尚、本発明は上述の形態例に限るものではなく、タンデムタイプの車両用液圧マスタシリンダの、最もシリンダ孔開口側に配置されるカップシールを、上述の形態例の第2カップシールの構造としたものでも良い。また、内周リップ部のシリンダ軸方向の長さが、外周リップ部のシリンダ軸方向の長さよりも短くても差し支えない。さらに、切欠き溝は、少なくとも内周リップ部の先端に設けていれば良く、外周リップ部や基部に切り欠き溝を設けていなくても良い。また、シール溝の形状が変われば、外周リップ部と内周リップ部との近似した長さの範囲も適宜変更される。この場合、制動時に、内周リップ部と外周リップ部とがシリンダ孔底部側壁に当接するような長さとすることが望ましい。
【符号の説明】
【0024】
1…液圧マスタシリンダ、2…シリンダ本体、2a…シリンダ孔、2b…底部、2c…ユニオンボス部、2d…ユニオン孔、2e…液通孔、2f…ボス部、2g…取付けブラケット、2h…大径筒部、2i…第1シール溝、2k…補給油室、3…シール材、4…コネクタ、5…プッシュロッド、6…プランジャ、6a…凹部、6b…球状凹部、6c…連通ポート、7…第1カップシール、8…第2カップシール、8a…基部、8b…内周リップ部、8c…外周リップ部、8d…窪み部、8e,8f…切欠き溝、9…第2シール溝、9a…シリンダ孔開口側壁、9b…シリンダ孔底部側壁、9c…外周側壁、10…液圧室、11…リターンスプリング、12…止め輪、13…リテーナ