(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6100555
(24)【登録日】2017年3月3日
(45)【発行日】2017年3月22日
(54)【発明の名称】無線通信装置、無線通信方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
H04W 76/02 20090101AFI20170313BHJP
H04W 40/02 20090101ALI20170313BHJP
H04W 88/06 20090101ALI20170313BHJP
【FI】
H04W76/02
H04W40/02
H04W88/06
【請求項の数】14
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-35101(P2013-35101)
(22)【出願日】2013年2月25日
(65)【公開番号】特開2014-165674(P2014-165674A)
(43)【公開日】2014年9月8日
【審査請求日】2015年8月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000208891
【氏名又は名称】KDDI株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076428
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 康徳
(74)【代理人】
【識別番号】100112508
【弁理士】
【氏名又は名称】高柳 司郎
(74)【代理人】
【識別番号】100115071
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 康弘
(74)【代理人】
【識別番号】100116894
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 秀二
(74)【代理人】
【識別番号】100130409
【弁理士】
【氏名又は名称】下山 治
(74)【代理人】
【識別番号】100134175
【弁理士】
【氏名又は名称】永川 行光
(74)【代理人】
【識別番号】100131886
【弁理士】
【氏名又は名称】坂本 隆志
(74)【代理人】
【識別番号】100170667
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 浩次
(72)【発明者】
【氏名】小峯 敏彦
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 伸吾
(72)【発明者】
【氏名】藤本 貴
【審査官】
松野 吉宏
(56)【参考文献】
【文献】
特表2009−506680(JP,A)
【文献】
国際公開第2010/026799(WO,A1)
【文献】
特開2005−236807(JP,A)
【文献】
特開2005−026977(JP,A)
【文献】
特開2013−026710(JP,A)
【文献】
渡辺伸吾、藤本貴、柚木克夫,快適な通信環境を支えるコグニティブ無線通信技術,電子情報通信学会ソサイエティ大会講演論文集,日本,一般社団法人電子情報通信学会,2012年 8月28日,2012年_通信(2),"SS-24"-"SS-26"
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の通信手段と、信号の送信先の装置の情報とその装置へ信号を送信する際に用いられる通信手段とを対応付けて記憶する記憶手段と、を備え、前記複数の通信手段の少なくとも2つを並行して用いて、通信の相手方装置と通信を行うことができる通信装置であって、
前記相手方装置を特定する情報に基づいて、前記記憶手段において前記相手方装置と対応付けられて記憶されている第1の通信手段を特定し、さらに、当該第1の通信手段と異なる第2の通信手段であって、前記相手方装置と対応付けられておらず、かつ、前記相手方装置と異なる他の装置と対応付けられて記憶されている第2の通信手段とを特定する特定手段と、
前記相手方装置と、前記他の装置とを、送信する信号の宛先として設定する設定手段を有し、
前記通信装置は、前記相手方装置を宛先として前記第1の通信手段を用いて通信するとともに、並行して、前記他の装置を宛先として前記第2の通信手段を用いて通信し、
前記他の装置は、当該相手方装置が有するデータの前記通信装置への送信と、前記通信装置からの信号の前記相手方装置へのデータの送信との少なくともいずれかが可能な装置である、
ことを特徴とする通信装置。
【請求項2】
前記記憶手段は、信号の送信先の装置の情報とその装置へ信号を送信する際に用いられる通信手段とを対応付けたルーティングテーブルを記憶し、
前記ルーティングテーブルは、当該ルーティングテーブルに含まれない信号の送信先の装置の情報と所定の通信手段とを対応付けて保持し、
前記特定手段は、前記相手方装置の情報が前記ルーティングテーブルに含まれない場合であって、前記所定の通信手段とは別の通信手段が、前記他の装置の情報と対応付けられて前記ルーティングテーブルに含まれている場合、当該別の通信手段を前記第2の通信手段として特定する、
ことを特徴とする請求項1に記載の通信装置。
【請求項3】
前記記憶手段は、信号の送信先の装置の情報とその装置へ信号を送信する際に用いられる通信手段とを対応付けたルーティングテーブルを記憶し、
前記特定手段は、前記相手方装置の情報が前記ルーティングテーブルに含まれる場合であって、当該相手方装置の情報に対応する通信手段とは別の通信手段であって、当該相手方装置の情報に対応しない別の通信手段が、前記他の装置の情報と対応付けられて前記ルーティングテーブルに含まれている場合、当該別の通信手段を前記第2の通信手段として特定する、
ことを特徴とする請求項1に記載の通信装置。
【請求項4】
前記設定手段は、前記相手方装置と、前記他の装置とが所定の割合で前記宛先となるように、前記宛先を設定する、
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の通信装置。
【請求項5】
前記設定手段は、送信する前記信号または取得するデータのサイズが第1の所定値より大きい場合、当該信号または当該データを分割した信号またはデータの単位で切り替えて、前記宛先を設定する、
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の通信装置。
【請求項6】
前記設定手段は、送信する前記信号または取得するデータのサイズが第2の所定値より小さい場合、セッション単位で切り替えて、前記宛先を選択する、
ことを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の通信装置。
【請求項7】
前記他の装置は、前記相手方装置が有するデータを前記通信装置へ中継すると共に、前記通信装置からの信号を前記相手方装置へ中継する中継装置を含む、
ことを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の通信装置。
【請求項8】
前記中継装置はプロキシサーバを含む、
ことを特徴とする請求項7に記載の通信装置。
【請求項9】
前記他の装置は、前記相手方装置と同じデータを保持し、前記相手方装置が有するデータの前記通信装置への送信が可能な装置を含む、
ことを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の通信装置。
【請求項10】
前記他の装置は、キャッシュサーバ又はミラーサーバを含む、
ことを特徴とする請求項9に記載の通信装置。
【請求項11】
前記信号は、前記相手方装置が有するデータの少なくとも一部の送信を、前記相手方装置または前記他の装置に要求する要求信号である、
ことを特徴とする請求項1から10のいずれか1項に記載の通信装置。
【請求項12】
前記要求信号に応じて、前記相手方装置または前記他の装置から送信される信号は、前記要求信号を送信した通信手段を介して受信される、
ことを特徴とする請求項11に記載の通信装置。
【請求項13】
複数の通信手段と、信号の送信先の装置の情報とその装置へ信号を送信する際に用いられる通信手段とを対応付けて記憶する記憶手段と、を備え、当該複数の通信手段のうち、宛先ごとに異なる少なくとも2つの通信手段を並行して用いて信号を送信することができる通信装置の宛先設定装置であって、
前記通信装置の通信の相手方装置を特定する情報に基づいて、前記記憶手段において前記相手方装置と対応付けられて記憶されている第1の通信手段を特定し、さらに、当該第1の通信手段と異なる第2の通信手段であって、前記相手方装置と対応付けられておらず、かつ、前記相手方装置と異なる他の装置と対応付けられて記憶されている第2の通信手段とを特定する特定手段と、
前記相手方装置と、前記他の装置とを、前記信号の宛先として設定する設定手段を有し、
前記通信装置は、前記相手方装置を宛先として前記第1の通信手段を用いて通信するとともに、並行して、前記他の装置を宛先として前記第2の通信手段を用いて通信し、
前記他の装置は、当該相手方装置が有するデータの前記通信装置への送信と、前記通信装置からの信号の前記相手方装置へのデータの送信との少なくともいずれかが可能な装置である、
ことを特徴とする宛先設定装置。
【請求項14】
複数の通信手段と、信号の送信先の装置の情報とその装置へ信号を送信する際に用いられる通信手段とを対応付けて記憶する記憶手段と、を備え、前記複数の通信手段の少なくとも2つを並行して用いて、通信の相手方装置と通信を行うことができる通信装置の通信方法であって、
特定手段が、前記相手方装置を特定する情報に基づいて、前記記憶手段において前記相手方装置と対応付けられて記憶されている第1の通信手段を特定し、さらに、当該第1の通信手段と異なる第2の通信手段であって、前記相手方装置と対応付けられておらず、かつ、前記相手方装置と異なる他の装置と対応付けられて記憶されている第2の通信手段とを特定する特定工程と、
設定手段が、前記相手方装置と、当該相手方装置と異なる他の装置とを、送信する信号の宛先として設定する設定工程を有し、
前記通信装置は、前記相手方装置を宛先として前記第1の通信手段を用いて通信するとともに、並行して、前記他の装置を宛先として前記第2の通信手段を用いて通信し、
前記他の装置は、当該相手方装置が有するデータの前記通信装置への送信と、前記通信装置からの信号の前記相手方装置へのデータの送信との少なくともいずれかが可能な装置である、
ことを特徴とする通信方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は複数の無線通信機能を用いてリンクアグリゲーションを行う無線通信技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、複数の無線通信技術を同時に使用して、通信の高速化又は安定化を図るリンクアグリゲーション技術が検討されている。例えば、非特許文献1には、ネットワーク側の装置構成の変更なく、携帯端末側のソフトウェアの変更のみで、WiMAX、LTE、無線LAN、3G携帯電話網などの複数の無線通信技術を束ねて使用することで、通信速度を向上させることが記載されている。
【0003】
リンクアグリゲーション技術では、通信装置は、一例として、通信の相手方装置のIPアドレスとネットワーク(NW)インタフェースとを対応付けてルーティングテーブルとして記憶しておく。そして、通信装置は、ルーティングテーブルを参照することにより、相手方装置のIPアドレスに対応するNWインタフェースを使用して通信を行う。したがって、相手方装置に複数のIPアドレスが設定されている場合に、複数のNWインタフェースを同時に使用して通信を行うことが可能となる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】“ワイヤレスジャパン 2012:実効速度が2倍以上に−KDDIの「リンクアグリゲーション無線技術」”、[online]、平成24年5月30日、ITmedia+Dモバイル、[平成25年2月25日検索]、インターネット(URL:http://plusd.itmedia.co.jp/mobile/articles/1205/30/news066.html)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、携帯端末側で複数の無線通信技術を使用可能であっても、相手方装置(例えばサーバ)が複数のIPアドレスに対応していなければ、複数の無線通信方式を同時に使用することができない。すなわち、ルーティングテーブルには、1つのIPアドレスに対して1つのNWインタフェースが対応して記憶されるため、1つのIPアドレスにしか対応しない相手方装置に対しては、1つのNWインタフェースのみを用いることとなる。したがって、このような場合にはリンクアグリゲーションができないという課題があった。同様に、相手方装置が、同時に使用できるNWインタフェース数より少ないIPアドレスにしか対応していない場合は、使用可能なNWインタフェースの全てを利用できず、リンクアグリゲーションの能力を十分に得ることが困難であるという課題があった。
【0006】
本発明は上記課題に鑑みなされたものであり、リンクアグリゲーションの利用できる状況を増やすこと、及びリンクアグリゲーションの性能を向上させることの少なくともいずれかを達成することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明による通信装置は、複数の通信手段と、信号の送信先の装置の情報とその装置へ信号を送信する際に用いられる通信手段とを対応付けて記憶する記憶手段と、を備え、前記複数の通信手段の少なくとも
2つを並行して用いて、通信の相手方装置と通信を行うことができる通信装置であって、前記相手方装置を特定する情報に基づいて、前記記憶手段において前記相手方装置と対応付けられて記憶されている第1の通信手段を特定し、さらに、当該第1の通信手段と異なる第2の通信手段であって、前記相手方装置と対応付けられておらず、かつ、前記相手方装置と異なる他の装置と対応付けられて記憶されている第2の通信手段とを特定する特定手段と、前記相手方装置と、前記他の装置とを、送信する信号の宛先として設定する設定手段を有し、前記通信装置は、前記
相手方装置を宛先として前記第1の通信手段を用いて通信するとともに、
並行して、前記他の装置を宛先として前記第2の通信手段を用いて通信し、前記他の装置は、当該相手方装置が有するデータの前記通信装置への送信と、前記通信装置からの信号の前記相手方装置へのデータの送信との少なくともいずれかが可能な装置である、ことを特徴とする。
【0008】
また、本発明による宛先設定装置は、複複数の通信手段と、信号の送信先の装置の情報とその装置へ信号を送信する際に用いられる通信手段とを対応付けて記憶する記憶手段と、を備え、当該複数の通信手段のうち、宛先ごとに異なる
少なくとも2つの通信手段を
並行して用いて信号を送信することができる通信装置の宛先設定装置であって、前記通信装置の通信の相手方装置を特定する情報に基づいて、前記記憶手段において前記相手方装置と対応付けられて記憶されている第1の通信手段を特定し、さらに、当該第1の通信手段と異なる第2の通信手段であって、前記相手方装置と対応付けられておらず、かつ、前記相手方装置と異なる他の装置と対応付けられて記憶されている第2の通信手段とを特定する特定手段と、前記相手方装置と、前記他の装置とを、前記信号の宛先として設定する設定手段を有し、前記通信装置は、前記
相手方装置を宛先として前記第1の通信手段を用いて通信するとともに、
並行して、前記他の装置を宛先として前記第2の通信手段を用いて通信し、前記他の装置は、当該相手方装置が有するデータの前記通信装置への送信と、前記通信装置からの信号の前記相手方装置へのデータの送信との少なくともいずれかが可能な装置である、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、リンクアグリゲーションを利用できる状況を増やすことができることと、リンクアグリゲーションの性能を向上させることの少なくともいずれかを達成できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図2】携帯端末が有するルーティングテーブルを示す概念図。
【
図3】携帯端末のハードウェア構成例を示すブロック図。
【
図5】宛先アドレス候補決定部の動作を示すフローチャート。
【
図6】宛先アドレス変更部の動作を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。なお、以下の例では、データの宛先を示す宛先情報としてIPアドレスを用い、送信する信号としてIPパケットを用いる場合を説明するが、これに限られない。すなわち、宛先情報は、宛先又はデータの送信先の装置を特定できる情報であればどのようなものであってもよく、また、信号は、宛先情報が含まれるものであれば、IPパケットの形式でないどのような形式の信号であってもよい。
【0012】
(概要)
本実施形態に係るネットワーク構成例を
図1に示す。
図1の例では、ネットワークは、携帯端末100、第1のネットワークインタフェース(NW I/F)の基地局200及びそのバックボーンネットワーク201、第nのNW I/Fの基地局300及びそのバックボーンネットワーク301を含む。また、ネットワークは、IPアドレスDに対応する通信の相手方装置400と、IPアドレスP1に対応するプロキシサーバ500とを含む。複数のNW I/F(第1のNW I/F〜第nのNW I/F)は、例えば、3G携帯電話(例えばcdma2000)、LTE、WiMAX、IEEE802.11のいずれかの無線LAN通信方式などの無線通信方式を使用するインタフェースである。複数のNW I/Fは、例えば、互いに異なる通信方式を使用してもよいし、携帯端末100が同一の通信方式について複数の回線を同時使用できる場合、同じ通信方式を使用してもよい。
【0013】
携帯端末100は、例えば、
図2のようなルーティングテーブルを有し、例えば相手方装置にデータを送信する場合には、相手方装置のIPアドレス(宛先ルート)を確認し、それに対応するネットワークインタフェースを選択する。なお、ルーティングテーブルには、例えば、宛先のIPアドレスとネットワークインタフェース(NW I/F)、ネクストホップ(次にデータが転送されるIPアドレス)などが記録される。なお、ルーティングテーブルは、当該ルーティングテーブルに含まれないIPアドレスと所定のNW I/F(所定の通信方式)とを対応付けたデフォルトゲートウェイの項目(不図示)を保持する。宛先のIPアドレスがルーティングテーブルに含まれないIPパケットは、デフォルトゲートウェイに対応する所定のNW I/Fを用いて伝送される。なお、NW I/Fの情報は、
図2の例では、第1通信方式、第2通信方式、などのように通信方式の情報が記載されているが、例えば、各NW I/Fに対応する通信部を特定するポート番号などの情報であってもよい。ポート番号などの情報を用いることにより、例えば複数のNW I/Fが同一の通信方式を用いる場合に、そのいずれを用いるかを容易に特定することができる。ただし、以下では、各NW I/Fは互いに異なる通信方式を使用するものとし、通信方式を特定することによりNW I/Fを特定できるものとして説明する。
【0014】
携帯端末100は、例えば、IPアドレスDを有する相手方装置400に対しては、
図2のルーティングテーブルを参照して、第1通信方式に対応するネットワークインタフェースを使用する。なお、携帯端末100は、相手方装置からデータを受信する場合は、ルーティングテーブルにより相手方装置のIPアドレスを確認し、そのIPアドレスに対してデータの送信を要求することによりデータを取得する。携帯端末100が使用可能なNW I/Fの数以上のIPアドレスに相手方装置が対応すると共に、そのIPアドレスのそれぞれに対して異なるNW I/Fがルーティングテーブル上で対応する場合は、全てのNW I/Fを用いて同時にデータを送受信できる。なお、このとき、携帯端末100は、ダウンロードやストリーミングなどの対象となるデータについて、「Xバイト目からYバイト目までのデータ」のように、一部を指定してデータを要求することができる。したがって、これを用いることにより、携帯端末100は、1つのデータを複数の経路から重複なく受信することが可能となる。これにより、理想的には、携帯端末100の無線機能の全てを使い切って、通信の高速化や安定化を図ることが可能となる。
【0015】
しかしながら、従来は、相手方装置が1つのIPアドレスにしか対応しない場合は、ルーティングテーブルにおいて、1つのIPアドレスに対して1つのNW I/Fのみが対応するため、リンクアグリゲーションによる効果を得ることができなかった。同様に、相手方装置が、使用可能なNW I/Fの数より少ないIPアドレスにのみ対応する場合は、全ての使用可能なNW I/Fを使用することができないという問題があった。
【0016】
このため、本実施形態の携帯端末100は、
図1に示すように、相手方装置400を直接の宛先とする直接ルートに加え、中継装置を介する中継ルートを設定し、複数のNW I/Fを用いて1つのIPアドレスDを有する相手方装置400との通信を実行する。なお、中継装置は、例えば、プロキシサーバ500である。
【0017】
具体的には、携帯端末100のルーティングテーブルには、例えば、相手方装置400のIPアドレスDに対して第1通信方式が対応付けられて記憶されると共に、中継装置のIPアドレスP1に対して第n通信方式が対応付けられて記憶されているものとする。そして、携帯端末100は、相手方装置400のIPアドレスが1つしかない場合は、ルーティングテーブル内に、相手方装置400のIPアドレスに対応するNW I/F以外のNW I/Fと対応付けられた中継装置のIPアドレスがあるかを判定する。そして、そのようなNW I/Fと中継装置のIPアドレスとの組み合わせがルーティングテーブル内に存在する場合は、その中継装置にもデータを送信するように、データの送信先を変更するように宛先を制御する。
【0018】
なお中継装置(プロキシサーバ500)を宛先とされたデータは、最終的な宛先IPアドレスDの情報を含み、中継装置は、受信したデータの宛先をIPアドレスDに変更して、相手方装置400へ転送する。このように、中継ルートを積極的に用いるようにデータの宛先を変更することで、複数のNW I/Fを同時に使用することが可能となり、リンクアグリゲーションの利用シーンを増やすことができる。なお、相手方装置400からのデータのダウンロードの場合も同様に、直接ルートの他に中継ルートを通じて相手方装置400に対して、データ取得要求を送信することにより、複数のNW I/Fを用いて通信の高速性又は安定性を高めることが可能となる。
【0019】
以下、携帯端末100の具体的な構成及び動作について説明する。なお、以下の説明では、携帯端末100が相手方装置400へデータを送信する例を説明するが、上述の如く、データのダウンロードを要求する信号を以下の方法によって送信することで、相手方装置400からデータを受信することができるのは明らかである。
【0020】
(携帯端末のハードウェア構成)
図3は、携帯端末100のハードウェア構成例を示すブロック図である。携帯端末100は、
図3に示すように、例えば、CPU101、ROM102、RAM103、外部記憶装置104、及び複数の通信装置(例えば、第1通信装置105、第2通信装置106、第n通信装置107)を有する。携帯端末100では、例えばROM102、RAM103及び外部記憶装置104のいずれかに記録された、以下に示す携帯端末100の各機能を実現するプログラムをCPU101により実行する。そして、携帯端末100は、複数(n個)の通信装置(第1通信装置105〜第n通信装置107)の少なくともいずれかを用いて、CPU101で処理されたデータを送信すると共に、受信したデータをCPU101によって処理する。
【0021】
なお、携帯端末は、以下に説明する各機能を実行する専用のハードウェアを備えてもよいし、一部をハードウェアで実行し、その他の部分をプログラムを動作させるコンピュータで実行してもよい。また、以下の全機能をコンピュータとプログラムにより実行させてもよい。
【0022】
(携帯端末の機能構成)
図4は、携帯端末100の機能構成例を示すブロック図である。
図4の例では、携帯端末100は、機能ブロックとして、宛先アドレス候補決定部111、切替タイミング指示部112、宛先アドレス変更部113、ルーティングテーブル取得部114、ルーティング部115、及び複数の通信部を有する。複数の通信部は、例えば、第1通信部116、第2通信部117、及び第n通信部118のように、n個の通信部(NW I/F)を有し、それぞれが異なる通信方式、又は一部若しくは全部が同一の通信方式を利用して通信を行う。なお、以下では、第1通信部116、第2通信部117、及び第n通信部118は、それぞれが第1通信方式、第2通信方式、及び第n通信方式に対応するものとし、通信方式を特定することによりNW I/Fを特定できるものとする。なお、宛先アドレス候補決定部111、切替タイミング指示部112、宛先アドレス変更部113、ルーティングテーブル取得部114及びルーティング部115又はこれらの一部は、例えば、
図3のCPU101によって実行されるプログラムとして実装される。
【0023】
宛先アドレス候補決定部111、切替タイミング指示部112、及び宛先アドレス変更部113は、相手方装置へ送信するデータの一部を中継ルートに流すための宛先設定処理を行う機能部である。なお、以下では、宛先アドレス変更部113に入力されたIPパケットの宛先IPアドレスを変更するものとして説明するが、これに限られない。例えば、送信すべきデータと宛先の情報とが取得された場合に、その宛先に対して、直接ルート以外に、直接ルートでは使用されないNW I/Fと関連する中継装置があるかを判定し、その結果に応じて宛先が設定されたパケットを生成してもよい。すなわち、IPパケットの宛先を変更するのではなく、最初から中継ルートに流すように中継装置を宛先として設定されたパケットを生成してもよい。いずれにせよ、これらの機能部は、パケットの宛先が相手方装置のIPアドレスであるものと、中継装置のIPアドレスであるものとを生成する。また、これらの機能部は、全てのパケットの宛先が中継装置のIPアドレスとなるように機能してもよい。これらの機能の詳細については後述する。
【0024】
ルーティングテーブル取得部114は、例えば、RAM103及び外部記憶装置104のいずれかに記録された、宛先IPアドレスとNW I/Fとが対応付けられたルーティングテーブルを取得する。ルーティングテーブル取得部114は、取得したルーティングテーブルを、宛先アドレス候補決定部111及びルーティング部115へ出力する。ルーティングテーブル取得部114は、相手方装置との通信に先立って、外部のサーバ等の情報提供装置から、例えばデフォルトのNW I/Fを用いてルーティングテーブルを取得してもよい。なお、本実施形態では、IPアドレスとNW I/Fとが対応付けられたルーティングテーブルが取得されるが、これに限られない。すなわち、データの宛先を示す宛先情報とその宛先へのデータ伝送に使用されるNW I/Fとが対応付けられた対応付け情報であれば、どのような情報が取得されてもよい。
【0025】
ルーティング部115は、宛先アドレス変更部113から出力されたIPパケットを、その宛先IPアドレスとルーティングテーブルとに従って、複数の通信部(NW I/F)のいずれかに転送する。通信部に転送されたIPパケットは、その通信部に対応する通信方式でサービスを展開する基地局等に無線で転送され、最終的に相手方装置又は中継装置へ到達する。中継装置に到達したIPパケットは、そのIPパケットに含まれる相手方装置のIPアドレスに従って、相手方装置へ転送される。
【0026】
(宛先アドレス候補決定部の動作)
宛先アドレス候補決定部111は、宛先アドレス変更部113に入力されたIPパケットの宛先IPアドレスから、ルーティングテーブルに基づいて、宛先候補を決定して宛先アドレス変更部113へ出力する。例えば、宛先アドレス候補決定部111は、相手方装置のIPアドレスに対応するNW I/F以外のNW I/Fについて、対応する宛先IPアドレスの中に、中継装置のIPアドレスが含まれているかを判定する。
【0027】
宛先アドレス候補決定部111の処理の一例を、
図5のフローチャートを用いて説明する。まず、宛先アドレス候補決定部111は、宛先アドレス変更部113に入力されたIPパケットの宛先IPアドレスを取得する(S501)と共に、ルーティングテーブル取得部114からルーティングテーブルを取得する(S502)。そして、宛先アドレス候補決定部111は、IPパケットの宛先IPアドレスがルーティングテーブル内に存在するかを判定する(S503)。
【0028】
宛先IPアドレスがルーティングテーブル内に存在する場合(S503でYES)、宛先アドレス候補決定部111は、ルーティングテーブルにおいて、その宛先IPアドレスに対応するNW I/Fを特定する(S504)。一方、宛先IPアドレスがルーティングテーブル内に存在しない場合(S503でNO)、宛先アドレス候補決定部111は、デフォルトゲートウェイとして登録されているNW I/Fを特定する(S505)。そして、S504又はS505で特定されたNW I/F以外のNW I/Fに対応する中継装置(例えばプロキシサーバ)のIPアドレスを探索して取得する(S506)。なお、携帯端末100は、中継装置のIPアドレスを予め知っているものとする。これにより、例えば、複数のプロキシサーバのIPアドレスと対応するNW I/Fとをルーティングテーブルに含めておくだけで、相手方装置のIPアドレスがルーティングテーブルに含まれるかによらずリンクアグリゲーションを活用できる確率が高まる。
【0029】
なお、ルーティングテーブル内にS504又はS505で特定されたNW I/F以外のNW I/Fに対応する中継装置が複数存在する場合は、それぞれ異なるNW I/Fに対応する中継装置のIPアドレスを探索する。例えば、1つのNW I/Fが複数の中継装置に対応する場合は、その複数の中継装置のうちの1つのみのIPアドレスを取得し、2つ以上のNW I/Fがそれぞれ異なる複数の中継装置に対応する場合は、その複数の中継装置のIPアドレスを全て取得する。そして、宛先アドレス候補決定部111は、取得した中継装置のIPアドレスを、宛先候補の情報として宛先アドレス変更部113へ通知する(S507)。なお、宛先候補の情報は、切替タイミング指示部112にも通知される。
【0030】
なお、複数の中継装置のIPアドレスを取得できた場合は、それらのうち、例えば所定数のIPアドレスのみが通知されてもよい。また、このとき、例えば、対応するNW I/Fの通信速度や消費電力等によって複数のIPアドレスに優先順位を付け、優先順位が上位から所定数のIPアドレスが通知されてもよい。また、ランダムに所定数のIPアドレスが通知されてもよい。なお、所定数は、携帯端末100が有するNW I/Fの数、又はそれ以下の数であってもよい。
【0031】
なお、ルーティングテーブル上で宛先IPアドレスに対応するNW I/Fがない場合(S503でNO)は、S505において、中継装置のIPアドレスに対応するNW I/F以外のNW I/Fを取得してもよい。これにより、S506において、中継装置のIPアドレスを取得できる可能性を高めることができる。ただし、この場合、S505で取得されたNW I/Fについて、ルーティングテーブルには何ら情報がないこととなる。このため、この場合は、例えば、ルーティングテーブル取得部114に、このNW I/Fの情報を通知して、デフォルトゲートウェイとして登録されているNW I/Fを一時的に変更させることが必要となる。
【0032】
(切替タイミング指示部の動作)
切替タイミング指示部112は、宛先アドレス候補決定部111からの宛先候補の情報に基づいて、宛先IPアドレスを変更するべきIPパケットを特定する指示情報を、宛先アドレス変更部113に通知する。例えば、切替タイミング指示部112は、宛先を変更すべきIPパケットを特定する情報と、変更後の宛先を特定する情報とを宛先アドレス変更部113に通知する。また、IPパケットに初期的な宛先IPアドレスが設定されていない場合などは、切替タイミング指示部112は、全てのIPパケットについて、その宛先IPアドレスを通知する指示情報を出力してもよい。
【0033】
切替タイミング指示部112は、相手方装置との間で送受信するデータサイズに応じて切替タイミングを制御してもよい。例えば、サイズが第1の所定値より大きいデータを送信する場合は当該データを分割した分割データ単位で宛先変更させ、サイズ第2の所定値より小さい複数のデータを送信する場合はセッション単位で宛先変更させるような指示情報を出力してもよい。なお、第1の所定値と第2の所定値とは同じ値であってもよいし、異なる値であってもよい。ただし、第1の所定値は第2の所定値以上の値である。なお、第1の所定値と第2の所定値とが異なる値である場合、第1の所定値と第2の所定値との間のサイズを有するデータについては、分割データ単位又はセッション単位で宛先変更させてもよいし、別の方法で宛先変更させてもよい。
【0034】
同様に、相手方装置からサイズが第1の所定値より大きいデータを受信する場合は、それぞれが当該データの部分を要求する複数の要求信号について、宛先を相手方装置と中継装置とで切り替えるように切替指示を出力してもよい。また、相手方装置からサイズが第2の所定値より小さい複数のデータを受信する場合は、セッション単位で、相手方装置と中継装置との間で要求信号の宛先を切り替えるように切替指示を出力してもよい。このようにすることにより、大きいサイズのデータを高速に送受信することができると共に、小さいサイズのデータは1つの通信方式で送受信することで、複数の通信方式に分割して送受信するより容易にオリジナルのデータを復元することが可能となる。
【0035】
また、切替タイミング指示部112は、例えば、使用する通信方式の通信速度に応じて、宛先IPアドレスを変更するIPパケットを定めてもよい。例えば、第1通信方式と第1通信方式より通信速度が2倍高速な第2通信方式とが使用される場合、第2通信方式に対応する宛先へのパケットが、第1通信方式に対応する宛先へのパケットより2倍程度多く発生するように切替タイミングを指示してもよい。これにより、高速にデータの送受信をすることが可能となる。また、各通信方式に対して均等にIPパケットを割り振るように切替タイミングを指示してもよい。これにより、1つの通信方式の品質が劣化した場合でも、全体の通信に与える影響を低く抑えることが可能となる。さらに、切替タイミング指示部112は、電力消費の少ない通信方式に優先してパケットを割り当てるように、切替タイミングを制御してもよい。これにより、例えば携帯端末100は、消費電力を十分に低く抑えながら、リンクアグリゲーションの効果を得ることが可能となる。
【0036】
(宛先アドレス変更部の動作)
宛先アドレス変更部113は、宛先アドレス候補決定部111が決定した宛先候補を用いて、切替タイミング指示部112が指示したタイミングで、一部のIPパケットについて、宛先アドレスを変更してルーティング部115へ出力する。宛先アドレス変更部113の動作の一例を、
図6のフローチャートを用いて説明する。
【0037】
宛先アドレス変更部113は、まず、宛先アドレス候補決定部111から宛先候補の情報を取得する(S601)。そして、宛先アドレス変更部113は、切替タイミング指示部112から指示情報を取得すると(S602)、その指示情報に従って、IPパケットの宛先を選択して設定する(S603)。具体的には、IPパケットに初期的に相手方装置のIPアドレスが含まれている場合は、指示情報によって特定されるIPパケットの宛先IPアドレスを、指示情報によって同様に特定されるIPアドレスに置き換える。また、IPパケットに初期的な宛先IPアドレスが設定されていない場合、宛先アドレス変更部113は、相手方装置のIPアドレスと中継装置のIPアドレスとから、指示情報に応じて1つのIPアドレスを選択し、各IPパケットの宛先として設定してもよい。
【0038】
その後、中継装置のIPアドレスを宛先とするIPパケットについて、そのIPパケットを中継装置が相手方装置へ転送できるように、所定の付加情報をIPパケットに付して(S604)、IPパケットをルーティング部115へ出力する。なお、S604の処理は、宛先IPアドレスの設定の前に行われてもよい。すなわち、S603で宛先IPアドレスが選択された後、設定される前に、S604の処理が実行されてもよい。
【0039】
以上の宛先アドレス候補決定部111、切替タイミング指示部112、及び宛先アドレス変更部113の処理により、IPパケットの宛先を適応的に変更することができ、リンクアグリゲーションが行われる機会を増やすことができる。また、より多くのNW I/Fを同時に使用することが可能となるため、リンクアグリゲーションの性能を向上させることができる。また、上述の手法では、ルーティング部115は、ルーティングテーブルに従ってデータを振り分けるのみであるため、簡易な構成で携帯端末100を構成することが可能となる。
【0040】
(動作例)
続いて、
図2のルーティングテーブルを用いた場合であって、相手方装置のIPアドレスがDである場合の具体的な動作例を示す。IPアドレスDに対応するNW I/Fは第1通信方式であるため、宛先IPアドレスを変更しなければ、このIPパケットは第1通信部116から送信されることとなる。これに対し、IPアドレスP1は、相手方装置へデータ中継可能な中継装置(例えばプロキシサーバ)であるとする。なおIPアドレスP1に対応するNW I/Fは第n通信方式である。この場合、宛先アドレス候補決定部111は、入力された宛先IPアドレスDに対応する第1通信方式以外のNW I/Fで、相手方装置へデータ中継可能な中継装置のIPアドレスに対応するNW I/Fがあるかを、ルーティングテーブル上で検索する。その結果、宛先アドレス候補決定部111は、第n通信方式が、中継装置のIPアドレスP1に対応すると判定する。このため、宛先アドレス候補決定部111は、宛先候補として、P1を、切替タイミング指示部112と宛先アドレス変更部113とへ通知する。
【0041】
ここで、宛先アドレス変更部113が、入力されたIPパケットの宛先を全てP1に変更してしまうと、結果として、全てのIPパケットが第n通信部118から送信されることとなり、リンクアグリゲーションができなくなる。このため、切替タイミング指示部112は、宛先アドレス変更部113が、入力されたIPパケットの一部についてのみ、宛先アドレス候補決定部111から取得した宛先候補を宛先に設定(宛先を変更)すべきことを示す指示情報を出力する。これにより宛先アドレス変更部113が出力するIPパケットの宛先IPアドレスは、一部がP1に設定され、残りはDのままとなる。すなわち、一部のIPパケットについてのみ、宛先が変更される。
【0042】
宛先アドレス変更部113が、IPパケットの宛先Dを、通知されたIPアドレスP1に変更すると、その変更後のIPパケットの宛先IPアドレスは第n通信方式に対応することとなる。このため、ルーティング部115は、ルーティングテーブルに従って、そのIPパケットを第n通信方式で伝送するために、第n通信部118へ転送する。すなわち、宛先IPアドレスの変更により、IPパケットが送信される通信方式を変更することができる。ここで、上述のように、IPパケットの一部についてのみ宛先IPアドレスを変更することにより、ルーティング部115は、第1通信部116と第n通信部118とに、IPパケットを振り分けることとなる。したがって、携帯端末100は、2つの通信部を同時に使用してデータを相手方装置へ送信することが可能となる。
【0043】
また、
図2のルーティングテーブルの例において、さらにIPアドレスXが相手方装置へデータ中継可能な中継装置のIPアドレスである場合は、宛先アドレス候補決定部111は、P1とXとを、宛先候補として宛先アドレス変更部113へ通知する。そして、切替タイミング指示部112が、例えば所定の単位ごとに3つのアドレスを切り替えるように、宛先アドレス変更部113へ指示情報を出力する。これにより、携帯端末100は、1つのIPアドレスに対応する相手方装置との間で、3つのNW I/Fを同時に使用してデータを相手方装置へ送信することが可能となる。同様にして、4つ以上のNW I/Fを同時に使用することもできる。
【0044】
なお、相手方装置のIPアドレスがDとXの2種類ある場合、宛先アドレス候補決定部111は、それぞれIPアドレスDとXとに対応するNW I/F以外のNW I/Fで、中継装置のIPアドレスに対応するNW I/Fが存在するかを判定する。その結果、第n通信方式が中継装置のIPアドレスP1に対応するため、宛先アドレス候補決定部111は、P1を宛先アドレス変更部113へ出力する。そして、切替タイミング指示部112は、例えば、変更後の宛先IPアドレスにおいてDとXとP1とが所定の割合で出現するように、指示情報を出力する。これにより、2つのIPアドレスに対応する相手方装置に対して、3つのNW I/Fを同時に使用して通信することが可能となる。このようにして、相手方装置のIPアドレスの数以上のNW I/Fを利用可能な場合、中継ルートを利用して、リンクアグリゲーションの性能をより向上させることが可能となる。
【0045】
また、上述の説明では、常に相手方装置の宛先IPアドレスに直接送信されるパケットがあることを前提として説明していたが、これに限られない。すなわち、全てのパケットの宛先を中継装置のIPアドレスとしてもよい。この場合、例えば、
図5のS503において相手方装置の宛先IPアドレスがルーティングテーブルに存在するかを判定せず、各NW I/Fが中継装置のIPアドレスに対応するかを判定してもよい。そして、全てまたは所定数以上のNW I/Fが中継装置のIPアドレスに対応する場合は、全てのパケットの宛先を中継装置のIPアドレスとしてもよい。また、相手方装置の宛先IPアドレスがルーティングテーブルにない場合に、全てのパケットの宛先を中継装置のIPアドレスとしてもよい。
【0046】
なお、上述の説明では、相手方装置との通信のために、宛先を相手方装置とするIPパケットと宛先を相手方装置へデータ中継可能な中継装置とするIPパケットとを生成して、それぞれ異なるNW I/Fを用いて通信を行うとしたが、これに限られない。例えば、相手方装置からデータをダウンロードする場合、中継装置に代えて、キャッシュサーバやミラーサーバなど、相手方装置と同じデータを保持する装置に対して要求を送るようにしてもよい。すなわち、中継装置を用いる必要は必ずしもなく、相手方装置が有するデータの取得と当該相手方装置へのデータの送信(転送)の少なくともいずれかが可能な装置であれば、宛先候補となり得る。この場合、相手方装置に対しては第1のNW I/Fを使用し、キャッシュサーバ等に対しては第2のNW I/Fを使用して通信することにより、上述の手法と同様の効果を得ることが可能となる。