特許第6100584号(P6100584)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6100584
(24)【登録日】2017年3月3日
(45)【発行日】2017年3月22日
(54)【発明の名称】燃料噴射ノズル
(51)【国際特許分類】
   F02M 61/18 20060101AFI20170313BHJP
   F02M 61/10 20060101ALI20170313BHJP
【FI】
   F02M61/18 350C
   F02M61/18 350E
   F02M61/10 G
   F02M61/18 330A
   F02M61/18 330B
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-72610(P2013-72610)
(22)【出願日】2013年3月29日
(65)【公開番号】特開2014-196703(P2014-196703A)
(43)【公開日】2014年10月16日
【審査請求日】2015年5月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004695
【氏名又は名称】株式会社日本自動車部品総合研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100080045
【弁理士】
【氏名又は名称】石黒 健二
(74)【代理人】
【識別番号】100124752
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷 真司
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 裕樹
(72)【発明者】
【氏名】林 朋博
(72)【発明者】
【氏名】掛橋 展久
(72)【発明者】
【氏名】近藤 淳
(72)【発明者】
【氏名】芹澤 一史
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 真光
(72)【発明者】
【氏名】田名田 祐樹
【審査官】 今関 雅子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−227434(JP,A)
【文献】 特開2008−151060(JP,A)
【文献】 実開平07−038664(JP,U)
【文献】 実開昭56−041158(JP,U)
【文献】 実開昭51−015518(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 61/10, 61/18
F02B 1/00−23/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状のノズルボディ(3)と、このノズルボディ(3)の内周に軸方向に移動可能となるように収容されるニードル(2)とを備え、前記ニードル(2)が前記ノズルボディ(3)の内周で軸方向に移動することで燃料の噴射を開始または停止する燃料噴射ノズル(1)において、
前記ノズルボディ(3)の内壁の一部であり、前記ニードル(2)の軸方向の先端近傍に設けられたシート部(13)が離着するシート位置(10)と、
前記シート位置(10)よりも軸方向の先端側で前記ノズルボディ(3)の内壁に開口するとともに、前記ノズルボディ(3)の外壁に開口し、前記シート部(13)が前記シート位置(10)から離座することで前記ノズルボディ(3)の内周から外部に燃料を導く噴孔(11)と、
前記ニードル(2)の前記シート部(13)より先端側の形状であって、複数の異なる円錐面が先端から軸方向後端側に同軸に連続し、前記複数の円錐面(21a、21b)は、それぞれの母線と前記ニードル(2)の軸との間に形成される角度が先端側ほど小さい先端形状と、
前記内壁の前記シート位置(10)より先端側の形状であって、後端側から、前記シート位置(10)を有し軸方向先端側ほど小径である円錐面(15a)、この円錐面の先端と同径であって前記噴孔(11)の開口(11a)を有する円筒面(15b)、および、この円筒面の先端と同径の半球面(15c)が同軸に連続する先端形状と、
前記シート部(13)が前記シート位置(10)から離座して前記シート部(13)と前記シート位置(10)との距離が最大となる最大リフト時における配置関係であって、前記ニードル(2)の軸方向の先端(21d)がすべての前記噴孔(11)の前記内壁における開口(11a)よりも軸方向の先端側に位置する配置関係とを備える燃料噴射ノズル。
【請求項2】
円筒状のノズルボディ(3)と、このノズルボディ(3)の内周に軸方向に移動可能となるように収容されるニードル(2)とを備え、前記ニードル(2)が前記ノズルボディ(3)の内周で軸方向に移動することで燃料の噴射を開始または停止する燃料噴射ノズル(1)において、
前記ノズルボディ(3)の内壁の一部であり、前記ニードル(2)の軸方向の先端近傍に設けられたシート部(13)が離着するシート位置(10)と、
前記シート位置(10)よりも軸方向の先端側で前記ノズルボディ(3)の内壁に開口するとともに、前記ノズルボディ(3)の外壁に開口し、前記シート部(13)が前記シート位置(10)から離座することで前記ノズルボディ(3)の内周から外部に燃料を導く噴孔(11)と、
前記ニードル(2)の前記シート部(13)より先端側の形状であって、前記シート部(13)より先端側が1つの円錐面(21e)により構成される先端形状と、
前記内壁の前記シート位置(10)より先端側の形状であって、後端側から、前記シート位置(10)を有し軸方向先端側ほど小径である円錐面(15a)、この円錐面の先端と同径であって前記噴孔(11)の開口(11a)を有する円筒面(15b)、および、この円筒面の先端と同径の半球面(15c)が同軸に連続する先端形状と、
前記シート部(13)が前記シート位置(10)から離座して前記シート部(13)と前記シート位置(10)との距離が最大となる最大リフト時における配置関係であって、前記ニードル(2)の軸方向の先端(21d)がすべての前記噴孔(11)の前記内壁における開口(11a)よりも軸方向の先端側に位置する配置関係とを備える燃料噴射ノズル。
【請求項3】
請求項1または2に記載の燃料噴射ノズルにおいて、
前記噴孔(11)は、前記内壁における開口(11a)から外側に向かって径が一定のストレート部(11c)と、前記ストレート部(11c)の外側に接続して前記外壁における開口(11b)に向かって拡径するテーパ部(11d)とを有することを特徴とする燃料噴射ノズル。








【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料を噴射する燃料噴射ノズル(以下、略してノズルと呼ぶことがある。)に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば、内燃機関に燃料を噴射して供給する燃料噴射弁では、燃料を噴射するノズルと、このノズルを開弁駆動または閉弁駆動するアクチュエータとを備えるものが周知である。また、燃料噴射弁に用いられるノズル(燃料噴射ノズル)では、円筒状のノズルボディと、ノズルボディの内周に軸方向に移動可能となるように収容されるニードルとを備えるものが公知である。そして、このノズルは、ニードルがノズルボディの内周で軸方向に移動することで燃料の噴射を開始または停止する。
【0003】
つまり、ノズルボディの内壁には、ニードルの軸方向の先端近傍に設けられたシート部が離着するシート位置が設けられ、さらに、シート位置よりも軸方向の先端側の内壁には、燃料の噴孔が複数開口している。そして、シート部がシート位置から離座することで、噴孔を通じてノズルボディの内周から外部に燃料が導かれて噴射される。
【0004】
ところで、燃料噴射弁では、噴射された噴霧の態様が変動しないことが理想的とされている。そして、特に、噴霧態様の中でも、噴霧が空間を貫徹する能力(噴霧貫徹力)や噴射量が同一噴射時に個々の噴孔間で変動せず、さらに、同一噴孔でも、同一噴射条件が現れるたびに経時的に変動しないことが理想的とされている。そこで、ノズルボディの内周において、シート位置よりも軸方向の先端側に適切な容量を形成する空間としてサック室を設け、噴孔をサック室に開口させている。これにより、燃料は、シート部とシート位置との間を通ってサック室に流入した後、噴孔から噴射される。
【0005】
ところで、ノズル閉弁後にサック室及び噴孔に残った燃料は未燃ガス(HC)の発生源となり得るため、サック室の容量はできるだけ小さい方が好ましい。
また、サック室の噴孔の開口よりも先端側の空間が大きい場合(例えば特許文献1参照)、シート部がシート位置から離座してシート部とシート位置との距離が最大となる最大リフト時において、サック室内で旋回流が生じて噴孔入口付近の燃料流れに旋回流の影響が及ぶことがわかった。噴孔入口付近の燃料流れに旋回流の影響が及ぶと、噴霧貫徹力が低下して、スモークの低減効果が薄れてしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平8−144895号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記の問題点を解決するためになされたものであり、その目的は、内燃機関に燃料を噴射する燃料噴射ノズルにおいて、サック室の容量低減と噴霧貫徹力の向上とを両立させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の燃料噴射ノズルは、円筒状のノズルボディと、このノズルボディの内周に軸方向に移動可能となるように収容されるニードルとを備え、ニードルがノズルボディの内周で軸方向に移動することで燃料の噴射を開始または停止する。
そして、燃料噴射ノズルは、以下のシート位置、噴孔、ニードルの先端形状、および配置関係を備える。
【0009】
シート位置は、ノズルボディの内壁の一部であり、ニードルの軸方向の先端近傍に設けられたシート部が離着する。
噴孔は、シート位置よりも軸方向の先端側でノズルボディの内壁に開口するとともに、ノズルボディの外壁に開口し、シート部がシート位置から離座することでノズルボディの内周から外部に燃料を導く。
【0010】
ニードルのシート部より先端側の形状は、複数の異なる円錐面が先端から軸方向後端側に同軸に連続し、複数の円錐面は、それぞれの母線とニードルの軸との間に形成される角度が先端側ほど小さい。
また、内壁のシート位置より先端側の形状は、後端側から、シート位置を有し軸方向先端側ほど小径である円錐面、円錐面の先端と同径であって噴孔の開口を有する円筒面、および、円筒面の先端と同径の半球面が同軸に連続している。
【0011】
また、燃料噴射ノズルは、シート部がシート位置から離座してシート部とシート位置との距離が最大となる最大リフト時において、ニードルの軸方向の先端がすべての噴孔の内壁における開口よりも軸方向の先端側に位置する配置関係を有する。
【0012】
これによれば、ニードル先端部が噴孔よりも先端側の空間に大きく突き出す構成となるため、サック室の容量が低減できる。また、サック室の入口よりも先端側の空間を小さくできるため、空間での旋回流の発生を抑制できる。
また、本発明のニードル先端部の形状によれば、サック室を形成するノズルボディの内壁(サック壁面)にニードルの円錐面を近づけることが可能となるため、ニードルとサック壁面との間で燃料流れを整流して噴孔入口に燃料流れを導くことができる。したがって、サック室内で旋回流が生じても噴孔入口付近の燃料流れに旋回流の影響が及ばなくなり、噴霧貫徹力が向上する。
【0013】
すなわち、燃料噴射ノズルにおいて、サック室の容量低減と噴霧貫徹力の向上とを両立させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】燃料噴射ノズルの全体を示す断面図である(実施例1)。
図2】燃料噴射ノズルの要部を示す特定断面における部分断面図である(実施例1)。
図3】従来例の問題点を説明する説明図である(従来例)。
図4】本実施例の作用効果を説明する説明図である(実施例1)。
図5】本実施例と従来例の噴霧貫徹力を比較する図である(従来例、実施例1)。
図6】燃料噴射ノズルの要部を示す特定断面における部分断面図である(実施例1)。
図7】燃料噴射ノズルの要部を示す特定断面における部分断面図である(比較例)。
図8】本実施例と比較例の燃料噴射ノズルの作用効果について説明する説明図である(実施例1、比較例)。
図9】燃料噴射ノズルの要部を示す特定断面における部分断面図である(実施例2)。
図10】燃料噴射ノズルの要部を示す特定断面における部分断面図である(変形例)。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明を実施するための形態を以下の実施例により詳細に説明する。
【実施例】
【0016】
〔実施例1の構成〕
実施例1の燃料噴射ノズル1(以下、ノズル1と呼ぶ。)の構成を、図1図8を用いて説明する。
ノズル1は、開弁して燃料を噴射するものであり、ノズル1を開弁駆動または閉弁駆動するアクチュエータ(図示せず。)とともに燃料噴射弁を構成する。そして、燃料噴射弁は、例えば、内燃機関(図示せず。)に搭載され、100MPaを超える高圧の燃料を気筒内に直接噴射するために用いられる。
【0017】
なお、アクチュエータは、例えば、ノズル1の弁体(後記するニードル2)に作用する背圧を増減して弁体を駆動するものであり、コイル(図示せず。)への通電により発生する磁気力を利用して背圧室(図示せず。)を開閉することで背圧を増減する。
そして、燃料噴射弁は、例えば、燃料を高圧化して吐出する燃料供給ポンプ(図示せず。)、および、燃料供給ポンプから吐出された燃料を高圧状態で蓄圧する蓄圧容器(図示せず。)とともに蓄圧式の燃料供給装置を構成し、蓄圧容器から高圧の燃料を分配されて気筒内に噴射する。
【0018】
ノズル1は、図1に示すように、円筒状のノズルボディ3と、ノズルボディ3の内周に軸方向に移動可能となるように収容される弁体としてのニードル2とを備える。そして、ノズル1は、ニードル2がノズルボディ3の内周で軸方向に移動することで燃料の噴射を開始または停止する。
【0019】
ここで、ニードル2は、ノズルボディ3により軸方向に摺動自在に支持される摺動軸部2a、および、実質的に弁部として機能する円錐状の先端部2bを有し、摺動軸部2aと先端部2bとの間は軸方向に長い円柱部2cをなす。
ノズルボディ3の内周は、軸方向に長い円筒状をなし先端が閉じられている。また、ノズルボディ3の内周の一部は、局部的に径方向に拡大され、噴射すべき燃料が一時的に溜まる燃料溜まり4をなす。
【0020】
そして、ノズルボディ3の内周の内、燃料溜まり4の軸方向後端側の領域は、摺動軸部2aを摺動自在に支持するための摺動孔5をなし、燃料溜まり4の軸方向先端側の領域は、先端部2bおよび円柱部2cを収容して円環筒状の燃料通路6を形成する。なお、ノズルボディ3には、蓄圧容器から受け入れた燃料を燃料溜まり4に導くための燃料通路7が、別途、燃料溜まり4に接続している。
【0021】
また、ノズル1は、以下に示すシート位置10と噴孔11を備える。
まず、シート位置10は、ノズルボディ3の内壁の一部であり、ニードル2の軸方向の先端近傍に設けられたシート部13が離着する部分である。
【0022】
ノズルボディ3の内壁は、以下の円錐面15a、円筒面15bおよび半球面15cを有し、ノズルボディ3の内周先端を袋状に閉じている。
円錐面15aは、ノズルボディ3の軸βと同軸に設けられ、軸方向先端側ほど小径であって先端が円17である。そして、円錐面15a上のシート位置10が存在している。
【0023】
また、円筒面15bは、軸βと同軸に設けられ、円17と同径であって円17から軸方向先端側に連続する。さらに、半球面15cは、円筒面15bと同径であり、軸方向先端側に凸を形成するように円筒面15bに連続する。そして、シート位置10よりも軸方向先端側の内周領域はサック室19を形成している。
【0024】
ここで、ニードル2の先端部2bの外周面は、3つの異なる円錐面21a、21b、21cが先端から軸方向後端側に同軸に連続するものである。そして、円錐面21bは円錐面21cよりも母線とニードル2の軸αとの間に形成される角度が大きい。そして、円錐面21b、21c同士の交線23は軸αに垂直な円であり、交線23がシート部13として機能し、シート位置10は円形である。
【0025】
噴孔11は、シート位置10よりも軸方向の先端側でノズルボディ3の内壁に開口するとともに、ノズルボディ3の外壁に開口し、シート部13がシート位置10から離座することでノズルボディ3の内周から外部に燃料を導く。つまり、シート部13がシート位置10から離座することで、シート部13とシート位置10との間に隙間が形成され、この隙間を通って燃料通路6から噴孔11に燃料が導入されてノズルボディ3の外部に噴射される。
【0026】
噴孔11の入口11aはサック室19を形成するノズルボディ3の内壁に開口している。具体的には、円筒面15bに噴孔11の入口11aが開口している。この噴孔11の入口11aが開口した円筒面15bをサック壁面25と呼ぶ。そして、噴孔11の出口11bは、サック室16を形成するノズルボディ3の外壁に開口している。
【0027】
〔本実施例の特徴〕
本実施例のノズル1は、以下に説明するニードル2の先端形状と、最大リフト時の配置関係とを備える。
【0028】
ニードル2の先端部2bのシート部13より先端側の形状は、2つの異なる円錐面21a、21bが先端から軸方向後端側に同軸に連続し、円錐面21a、21bはそれぞれの母線とニードル2の軸αとの間に形成される角度が先端側ほど小さい。すなわち、円錐面21bの母線とニードル2の軸αとの間に形成される角度θ1とし、円錐面21aの母線とニードル2の軸αとの間に形成される角度θ2とすると、
θ1>θ2
の関係が成り立つ。
【0029】
なお、円錐面21aを有するニードル2の先端は円錐台形状をしており、先端が平面21dとなっている。
【0030】
そして、燃料噴射ノズルは、シート部がシート位置から離座してシート部とシート位置との距離が最大となる最大リフト時において、ニードル2の軸方向の先端がすべての入口11aよりも軸方向の先端側に位置する配置関係を備える。
すなわち、ノズルボディ3の軸β上において、最大リフト時の平面21dの位置がすべての入口11aよりも先端側に位置している。
【0031】
〔本実施例の作用効果〕
本実施例の作用効果を図3〜8を用いて説明する。
まず、従来例のノズルJついて、図3を用いて説明する。
従来例のノズルJによれば、図3に示すように、ニードル2の先端部を形成する円錐面21aj、21bjは、それぞれの母線とニードルの軸αとの間に形成される角度が先端側ほど大きい。
そして、最大リフト時において、ニードル2の軸方向の先端がすべての入口11aよりも端側に位置している。
【0032】
このため、従来例のノズルJでは、サック室19の容量が大きい。特に、サック室19の入口11aよりも先端側の空間Sが大きくなっている。このため、サック室内に流入する燃料が空間Sに回り込んでから噴孔11へ流入しようとする旋回流が生じやすくなる。噴孔入口付近の燃料流れに旋回流の影響が及ぶと、噴霧貫徹力が低下して、スモークの低減効果が薄れてしまう。
【0033】
これに対して、本実施例のノズル1では、ニードル2の先端部2bが噴孔11よりも先端側の空間に大きく突き出す構成となるため、サック室19の容量が低減できる。また、サック室19の入口11aよりも先端側の空間Sを小さくできるため、旋回流の発生を抑制できる。
【0034】
また、円錐面21aをサック壁面25に近づけて、円錐面21aと入口11aとの間の距離を狭くすることが可能となるため、ニードル2とサック壁面25との間で燃料流れを整流して噴孔入口に燃料流れを導くことができる(図4参照)。
したがって、サック室内で旋回流が生じても噴孔入口付近の燃料流れに旋回流の影響が及ばなくなり、噴霧貫徹力が向上する。
【0035】
すなわち、燃料噴射ノズルにおいて、サック室19の容量低減と噴霧貫徹力の向上とを両立させることができる。
【0036】
図5は、噴射開始からの時間と噴霧貫徹力との相関図であるが、本実施例は従来例と比較して噴霧貫徹力が向上していることがわかる。
【0037】
噴霧貫徹力を向上させる方法として、噴孔長Lと噴孔径Dとの比であるL/Dを大きくする方法がある。しかし、L/Dを大きくすると、その背反事象として、噴孔に生成されたコーキングの分解排出がされにくくなる。つまり、コーキング耐性が低下する。しかし、本実施例では、ニードル形状によって噴霧貫徹力を向上させるものであり、L/Dを大きくすることなく噴霧貫徹力を維持できるため、コーキング耐性を低下させることがない。また、L/Dを小さくしても噴霧貫徹力を維持でき、コーキング耐性を向上させることもできる。
【0038】
なお、ここで本実施例のノズル1と、ニードル先端が半球状を呈する比較例のノズルH(図7参照)とを対比する。
図6及び図7に示すように、軸αに垂直で且つ入口11aを通過する切断面でのニードル2と入口11aとの間の断面積Aとする。
そして、図8は、ニードル2のリフト量と断面積Aとの相関図である。断面積Aが小さいほど、ニードル2と入口11aとの間の距離が狭く、上述の整流効果が高いことになる。
【0039】
図8に示すように、比較例でも従来例と比べて、ニードル2のリフト初期は断面積Aが小さく整流の効果がある。しかしながら、リフト量の増加に伴って指数関数的に断面積Aが増加すするため、整流効果は著しく低下する。
これに対して、本実施例では、リフト量の増加に伴う断面積Aの変化は小さく、最大リフトに到るまで整流効果を維持することができる。
【0040】
〔実施例2〕
実施例2のノズル1を実施例1とは異なる点を中心に図9を用いて説明する。なお、実施例1と同じ符号は、同一の構成を示すものであって、先行する説明を参照する。
実施例2によれば、噴孔11は、入口11aから外側に向かって径が一定のストレート部11cと、ストレート部11cの外側に接続して出口11bに向かって拡径するテーパ部11dとを有する。
【0041】
これによれば、実施例1と比較して、燃焼室内での噴霧の拡散が大きくなり、安定した燃焼を得ることができる。またストレート部11cの長さを短くすることによって、コーキング耐性を向上させることもできる。
【0042】
〔変形例〕
ノズル1の態様は実施例に限定されず、種々の変形例を考えることができる。
例えば、実施例1のノズル1によれば、ニードル2のシート部13より先端側が円錐面21a及び円錐面21bから成っていたが、実施例1においてθ1=θ2として、1つの円錐面21eから成るようにしてもよい(図10参照)。この場合でも、図3に示すような従来例と比較して、ニードル2と入口11aとの間の距離を狭くすることができるため、整流効果を得ることができる。
また、シート部13は、円錐面21b上にあってもよい。
【符号の説明】
【0043】
1 ノズル(燃料噴射ノズル)、2 ニードル、3 ノズルボディ、10 シート位置、11 噴孔 、11a 入口、11b 出口、21a 円錐面、21b 円錐面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10