特許第6100586号(P6100586)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 京セラクリスタルデバイス株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6100586-圧電発振器及び圧電デバイス 図000002
  • 特許6100586-圧電発振器及び圧電デバイス 図000003
  • 特許6100586-圧電発振器及び圧電デバイス 図000004
  • 特許6100586-圧電発振器及び圧電デバイス 図000005
  • 特許6100586-圧電発振器及び圧電デバイス 図000006
  • 特許6100586-圧電発振器及び圧電デバイス 図000007
  • 特許6100586-圧電発振器及び圧電デバイス 図000008
  • 特許6100586-圧電発振器及び圧電デバイス 図000009
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6100586
(24)【登録日】2017年3月3日
(45)【発行日】2017年3月22日
(54)【発明の名称】圧電発振器及び圧電デバイス
(51)【国際特許分類】
   H03B 5/32 20060101AFI20170313BHJP
【FI】
   H03B5/32 H
【請求項の数】8
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-76217(P2013-76217)
(22)【出願日】2013年4月1日
(65)【公開番号】特開2014-204162(P2014-204162A)
(43)【公開日】2014年10月27日
【審査請求日】2015年12月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000104722
【氏名又は名称】京セラクリスタルデバイス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094053
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 隆久
(74)【代理人】
【識別番号】100135828
【弁理士】
【氏名又は名称】飯島 康弘
(72)【発明者】
【氏名】後藤 正彦
(72)【発明者】
【氏名】奥田 芳久
【審査官】 橋本 和志
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−332844(JP,A)
【文献】 特開2006−129417(JP,A)
【文献】 特開平05−235191(JP,A)
【文献】 特開平10−335970(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03B 5/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
凹部を有する容器と、
前記凹部に収容された圧電振動片と、
前記凹部を塞ぐ集積回路素子と、
を有し、
前記集積回路素子は、ベアチップであり、
前記容器は、
当該容器の前記凹部が開口する面に設けられた複数の容器パッドと、
当該容器の外表面に設けられ、前記複数の容器パッドに接続された複数の外部端子と、を有し、
前記集積回路素子は、その主面に複数の素子パッド及び回路パターンを有し、前記主面を前記容器の前記凹部が開口する面に対向させて配置され、
前記複数の素子パッドと前記複数の容器パッドとは接合されるとともに電気的に接続されており、
前記回路パターンは、前記主面の、前記容器の前記凹部が開口する面に対向する領域にも位置している
圧電発振器。
【請求項2】
凹部を有する容器と、
前記凹部に収容された圧電振動片と、
前記凹部を塞ぐ集積回路素子と、
を有し、
前記容器は、
当該容器の前記凹部が開口する面に設けられた複数の容器パッドと、
当該容器の外表面に設けられ、前記複数の容器パッドに接続された複数の外部端子と、を有し、
前記集積回路素子は、その主面に複数の素子パッド及び1対の振動片パッドを有し、前記主面を前記容器の前記凹部が開口する面に対向させて配置され、
前記複数の素子パッドと前記複数の容器パッドとは接合されるとともに電気的に接続されており、
前記圧電振動片は、前記1対の振動片パッドに導電性接合材により接合されて前記集積回路素子の前記主面に実装されており、
前記容器は、前記集積回路素子との対向方向に見て、前記凹部が開口する面が、1対の長辺及び1対の短辺を有する形状であり、
前記複数の容器パッドは、前記容器の前記凹部が開口する面の4隅に位置し、一の前記短辺に前記4隅から離れている前記容器パッドは設けられておらず、
前記1対の振動片パッドは、前記一の短辺側において前記一の短辺に沿って並んでいる
圧電発振器。
【請求項3】
記集積回路素子の前記主面と前記容器の前記凹部が開口する面との間、且つ、前記複数の容器パッド及び前記複数の素子パッドの非配置位置には、絶縁材料が充填され、これにより前記凹部は密閉されている
請求項1又は2に記載の圧電発振器。
【請求項4】
凹部を有する容器と、
前記凹部に収容された圧電振動片と、
前記凹部を塞ぐ集積回路素子と、
を有し、
前記容器は、
前記凹部内且つ前記凹部の底面よりも高い位置にて前記凹部の開口側に面する台座面と、
前記台座面に設けられた複数の容器パッドと、
当該容器の外表面に設けられ、前記複数の容器パッドに接続された複数の外部端子と、を有し、
前記集積回路素子は、その主面に複数の素子パッドを有し、前記主面を前記台座面に対向させて前記凹部の開口側部分に収容されており、
前記圧電振動子片は、前記凹部に前記集積回路素子よりも底側にて収容されており、
前記複数の素子パッドと前記複数の容器パッドとは接合されるとともに電気的に接続されており、
前記集積回路素子の外周面と前記凹部の開口側部分の内周面との間には絶縁材料が充填され、これにより前記凹部は密閉されている
電発振器。
【請求項5】
記集積回路素子の前記主面と前記容器の前記凹部が開口する面との間には、これらの面の対向方向において導電性を有し、当該対向方向に直交する方向において絶縁性を有する異方性導電材料が充填され、これにより前記複数の素子パッドと前記複数の容器パッドとが接続されるとともに前記凹部が密閉されている
請求項1又は2に記載の圧電発振器。
【請求項6】
前記集積回路素子の半導体基板よりも単位厚み当たりの赤外線の透過率が低く、前記集積回路素子の前記凹部とは反対側の面を覆う赤外線遮断膜を更に有した
請求項1〜のいずれか1項に記載の圧電発振器。
【請求項7】
凹部を有する容器と、
前記凹部に収容された圧電素子と、
前記凹部を塞ぐ集積回路素子と、
を有し、
前記集積回路素子は、ベアチップであり、
前記容器は、
当該容器の前記凹部が開口する面に設けられた複数の容器パッドと、
当該容器の外表面に設けられ、前記複数の容器パッドに接続された複数の外部端子と、を有し、
前記集積回路素子は、その主面に複数の素子パッド及び回路パターンを有し、前記主面を前記容器の前記凹部が開口する面に対向させて配置され、
前記複数の素子パッドと前記複数の容器パッドとは接合されるとともに電気的に接続されており、
前記回路パターンは、前記主面の、前記容器の前記凹部が開口する面に対向する領域にも位置している
圧電デバイス。
【請求項8】
凹部を有する容器と、
前記凹部に収容された圧電素子と、
前記凹部を塞ぐ集積回路素子と、
を有し、
前記容器は、
前記凹部内且つ前記凹部の底面よりも高い位置にて前記凹部の開口側に面する台座面と、
前記台座面に設けられた複数の容器パッドと、
当該容器の外表面に設けられ、前記複数の容器パッドに接続された複数の外部端子と、を有し、
前記集積回路素子は、その主面に複数の素子パッドを有し、前記主面を前記台座面に対向させて前記凹部の開口側部分に収容されており、
前記圧電振動子片は、前記凹部に前記集積回路素子よりも底側にて収容されており、
前記複数の素子パッドと前記複数の容器パッドとは接合されるとともに電気的に接続されており、
前記集積回路素子の外周面と前記凹部の開口側部分の内周面との間には絶縁材料が充填され、これにより前記凹部は密閉されている
圧電デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水晶発振器等の圧電発振器及び圧電デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
圧電素子と、集積回路素子(以下、「IC:Integrated Circuit」ということがある。)とをパッケージングした圧電デバイスが知られている。例えば、特許文献1では、凹部を有する容器と、凹部の奥側に実装されるICと、凹部の開口側に実装される水晶振動片(圧電振動片、圧電素子)と、凹部を塞ぐ蓋とを有する水晶発振器が開示されている。そして、容器及び蓋がパッケージとして機能している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−258947号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、携帯電話やPDAなどの情報端末の小型化に伴い、圧電発振器やトランジスタなど電子部品も更なる小型化が求められている。
【0005】
そのため、圧電発振器も、その構成部品の一つである圧電振動片をフォトリソグラフィーを用いて製造することにより小型化されるなど、その製造技術の発達により小型化されている。しかし、圧電振動片と共にパッケージされるICは、圧電振動片の小型化に比較して小型化が十分になされないことがある。その結果、圧電振動片が小型化されても、圧電発振器を小型化することができないことがある。
【0006】
従って、小型化が可能な圧電発振器及び圧電デバイスが提供されることが望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る圧電発振器は、凹部を有する容器と、前記凹部に収容された圧電振動片と、前記凹部を塞ぐ集積回路素子と、を有している。
【0008】
好適には、前記圧電振動片は、前記集積回路素子の前記凹部側の面に実装されている。
【0009】
好適には、前記集積回路素子は、ベアチップである。
【0010】
好適には、前記容器は、当該容器の前記凹部が開口する面に設けられた複数の容器パッドと、当該容器の外表面に設けられ、前記複数の容器パッドに接続された複数の外部端子と、を有し、前記集積回路素子は、その主面に複数の素子パッドを有し、前記主面を前記容器の前記凹部が開口する面に対向させて配置され、前記複数の素子パッドと前記複数の容器パッドとは接合されるとともに電気的に接続されており、前記集積回路素子の前記主面と前記容器の前記凹部が開口する面との間、且つ、前記複数の容器パッド及び前記複数の素子パッドの非配置位置には、絶縁材料が充填され、これにより前記凹部は密閉されている。
【0011】
好適には、前記容器は、前記凹部内且つ前記凹部の底面よりも高い位置にて前記凹部の開口側に面する台座面と、前記台座面に設けられた複数の容器パッドと、当該容器の外表面に設けられ、前記複数の容器パッドに接続された複数の外部端子と、を有し、前記集積回路素子は、その主面に複数の素子パッドを有し、前記主面を前記台座面に対向させて前記凹部の開口側部分に収容されており、前記圧電振動子片は、前記凹部に前記集積回路素子よりも底側にて収容されており、前記複数の素子パッドと前記複数の容器パッドとは接合されるとともに電気的に接続されており、前記集積回路素子の外周面と前記凹部の開口側部分の内周面との間には絶縁材料が充填され、これにより前記凹部は密閉されている。
【0012】
好適には、前記容器は、当該容器の前記凹部が開口する面に設けられた複数の容器パッドと、当該容器の外表面に設けられ、前記複数の容器パッドに接続された複数の外部端子と、を有し、前記集積回路素子は、その主面に複数の素子パッドを有し、前記主面を前記容器の前記凹部が開口する面に対向させて配置され、前記集積回路素子の前記主面と前記容器の前記凹部が開口する面との間には、これらの面の対向方向において導電性を有し、当該対向方向に直交する方向において絶縁性を有する異方性導電材料が充填され、これにより前記複数の素子パッドと前記複数の容器パッドとが接続されるとともに前記凹部が密閉されている。
【0013】
好適には、前記集積回路素子の半導体基板よりも単位厚み当たりの赤外線の透過率が低く、前記集積回路素子の前記凹部とは反対側の面を覆う赤外線遮断膜を更に有した。
【0014】
本発明の一態様に係る圧電デバイスは、凹部を有する容器と、前記凹部に収容された圧電素子と、前記凹部を塞ぐ集積回路素子と、を有している。
【発明の効果】
【0015】
上記の構成によれば、圧電発振器又は圧電デバイスを小型化できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の第1の実施形態に係る水晶発振器の概略構成を示す分解斜視図。
図2図1とは異なる方向から見た図1の水晶発振器の概略構成を示す分解斜視図。
図3図1のIII−III線における断面図。
図4図1の水晶発振器のパッド周辺を拡大して示す分解斜視図。
図5図5(a)〜図5(c)は図1の水晶発振器の製造方法を説明する図。
図6図6(a)及び図6(b)は図5の続きを説明する図。
図7】第2の実施形態に係る水晶発振器を示す断面図。
図8】第3の実施形態に係る水晶発振器の特徴部を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る圧電発振器又は圧電デバイスの実施形態について、図面を参照して説明する。なお、第2の実施形態以降において、既に説明した実施形態の構成と同様又は類似の構成については、既に説明した実施形態の構成に付した符号と同一の符号を付し、また、説明を省略することがある。
【0018】
圧電発振器又は圧電デバイスは、いずれの方向が上方または下方とされてもよいものであるが、以下では、便宜的に、直交座標系xyzを定義するとともにz方向の正側を上方として、上面、下面などの用語を用いるものとする。
【0019】
<第1の実施形態>
図1は、本発明の第1の実施形態に係る水晶発振器1の概略構成を示す分解斜視図であり、図2は、図1とは異なる方向から見た水晶発振器1の概略構成を示す分解斜視図である。図3は、図1のIII−III線における断面図である。
【0020】
水晶発振器1は、凹部11a(図1及び図3)を有する容器3と、凹部11aに収容された水晶振動片5と、凹部11aを塞ぐIC7とを有している。従って、水晶発振器1では、容器3及びIC7により水晶振動片5がパッケージングされている。このように、水晶発振器1では、IC7がパッケージングに利用されていることを一つの特徴としている。
【0021】
水晶発振器1は、上記の各部材が互いに接合された状態においては、例えば概ね直方体状にパッケージングされた電子部品となる。その寸法は適宜に設定されてよい。例えば、比較的小さいものでは、x方向又はy方向においては1辺の長さが1〜2mmであり、z方向においては1辺の長さが0.2〜0.4mmである。
【0022】
また、パッケージの外表面には、不図示の回路基板等に水晶発振器1を実装するための複数(本実施形態では4つ)の外部端子9(図2及び図3)が露出している。水晶発振器1は、例えば、外部端子9と不図示の回路基板のパッドとが半田等により接合されることにより回路基板に実装される。
【0023】
複数の外部端子9は、例えば、薄型直方体状のパッケージの一方の主面(下面11c)に設けられている。より具体的には、例えば、4つの外部端子9は、矩形の下面11cの4隅に設けられている。各外部端子9は、例えば、層状(板状含む。以下同じ。)に形成された導電性材料(例えば金属)からなる。その平面形状は適宜に設定されてよい。外部端子9は、2種以上の金属層が積層されて構成されていてもよい。後述する各種の端子乃至はパッドも同様である。
【0024】
4つの外部端子9は、例えば、水晶発振器1を駆動するための電圧(駆動電圧、電源電圧)が付与される端子、基準電位(グランド電位)が付与される端子、発振信号を出力する端子、その発振信号の周波数を調整するための制御信号が入力される端子である。
【0025】
容器3は、容器3の主体となる容器基体11と、上述の複数の外部端子9とを有している。また、容器3は、IC7を実装するための複数の容器パッド13(図1及び図3)と、複数の容器パッド13と複数の外部端子9とを接続するための複数の接続導体15(図3)を有している。
【0026】
容器基体11は、絶縁材料から構成されている。絶縁材料は、例えば、セラミック又は樹脂である。容器基体11は、上面側が開放された概ね直方体の箱形状に形成されており、上述の凹部11aを有している。
【0027】
容器パッド13は、本実施形態では、容器基体11の凹部11aが開口する面(頂面11b)に設けられている。より具体的には、例えば、4つの容器パッド13は、矩形の枠状の頂面11bの4隅に配置されている。容器パッド13は、例えば、層状に形成された導電性材料(例えば金属)からなる。その平面形状は適宜に設定されてよい。
【0028】
接続導体15は、例えば、容器基体11の内部に設けられている。より具体的には、例えば、接続導体15は、いわゆるビア導体により構成されており、頂面11bから下面11cへ容器基体11を直線的に貫通している。そして、その一端は容器パッド13に接続され、他端は外部端子9に接続されている。
【0029】
水晶振動片5の構成は、公知のものと同様でよい。例えば、水晶振動片5は、水晶片17と、水晶片17に電圧を印加するための1対の励振電極19と、励振電極19とIC7とを接続するための引出電極21とを有している。
【0030】
水晶片17は、概ね矩形の板状に形成されている。励振電極19は、水晶片17の両主面に層状に設けられている。引出電極21は、励振電極19から引き出されて水晶片17の主面の端部に設けられている。
【0031】
IC7は、樹脂又はセラミックによってパッケージングがなされていない、いわゆるベアチップである。IC7は、半導体基板23と、IC7の表面にある、半導体基板23の回路形成面23a(図2及び図3)に形成された不図示の集積回路と、集積回路と水晶振動片5とを接続するための1対の振動片パッド25(図2及び図3)と、集積回路と容器3とを接続するための複数の素子パッド27(図2及び図3)とを有している。
【0032】
半導体基板23は、シリコン等の半導体からなる。その形状は、例えば、矩形の板状である。半導体基板23は、回路形成面23aのみに回路及びパッドが形成されており、その裏面には、回路やパッドは設けられていない。半導体基板23は、回路形成面23aを凹部11aに向けて凹部11aを塞いでいる。
【0033】
不図示の集積回路は、特に図示しないが、発振回路を含んでいる。その構成は、公知のものと同様でよく、説明は省略する。なお、集積回路は、発振回路に加えて温度補償回路を有していてもよい。また、集積回路の回路パターンは、回路形成面23aのうち、容器3の凹部11a上に位置する領域だけでなく、容器3の頂面11bと重なる領域にも設けられていてもよい。
【0034】
振動片パッド25及び素子パッド27は、回路形成面23aに形成されている。換言すれば、これらパッドは、IC7の凹部11a側の面に設けられている。これらパッドは、例えば、層状に形成された導電性材料(例えば金属)からなる。これらパッドの平面形状は、適宜に設定されてよい。
【0035】
図3に示すように、水晶振動片5の引出電極21とIC7の振動片パッド25とは第1導電性接合材29により接合されている。これにより、水晶振動片5は、IC7に保持されるとともにIC7と電気的に接続されている。すなわち、水晶振動片5は、IC7の凹部11a側の面に実装されている。
【0036】
第1導電性接合材29は、水晶振動片の実装に利用されている公知のもの又はその他電子素子の実装に利用されている公知のものとされてよい。例えば、第1導電性接合材29は、半田(鉛フリー半田を含む)、導電性接着剤、GGI(Gold to Gold Interconnection)接合用の金である。
【0037】
また、同じく図3に示すように、IC7の素子パッド27と容器3の容器パッド13とは第2導電性接合材31により接合されている。これにより、IC7と容器3とは、互いに固定されるとともに電気的に接続されている。
【0038】
第2導電性接合材31は、第1導電性接合材29と同様に、公知のものとされてよい。例えば、第2導電性接合材31は、半田(鉛フリー半田を含む)、導電性接着剤、GGI接合用の金である。Au−Sn合金等のろう材も利用されてよい。なお、第2導電性接合材31を設けずに、素子パッド27と容器パッド13とを原子拡散接合により接合するなどしてもよい(後述の実施形態も同様)。
【0039】
IC7の、回路形成面23aの裏面は、その略全面が赤外線遮断膜33により覆われている。赤外線遮断膜33は、半導体基板23よりも単位厚み(z方向)当たりの赤外線の透過率が低い。なお、赤外線遮断膜33は、赤外線を反射してもよいし、赤外線を吸収してもよく、好ましくは反射する。
【0040】
赤外線遮断膜33の構成及び材料は、適宜に選択されてよい。例えば、赤外線遮断膜33は、低屈折率の絶縁材料及び高屈折率の絶縁材料を積層して構成されている。絶縁材料は、有機材料でもよいし、無機材料でもよい。積層される絶縁層の組み合わせとしては、例えば、酸化シリコン及び酸化チタン、酸化シリコン及び酸化タンタル、酸化シリコン及び硫化亜鉛、又は、酸化シリコン及び酸化ニオブが挙げられる。また、例えば、赤外線遮断膜33は、金属とされてもよい。なお、この場合、赤外線遮断膜33は、シールドとして利用されてもよい。
【0041】
図4は、素子パッド27及び容器パッド13の周辺を拡大して示す分解斜視図である。
【0042】
半導体基板23の回路形成面23aには、パッシベーション膜35が形成されている。パッシベーション膜35は、SiO等の絶縁膜からなり、回路形成面23aに形成された集積回路の回路パターンを覆う一方で、振動片パッド25及び素子パッド27を露出させている。これにより、振動片パッド25と引出電極21とを接合したり、容器パッド13と素子パッド27とを接合したときに、回路パターン等が短絡されるおそれが低減される。
【0043】
IC7の回路形成面23aと容器3の頂面11bとの間においては、上述のように、素子パッド27と容器パッド13とが第2導電性接合材31により接合されている。一方、これらパッドの非配置位置においては、これらパッド及び第2導電性接合材31の厚みと同等の大きさで、回路形成面23aと頂面11bとの間に隙間が生じる。
【0044】
この隙間には、絶縁材料からなる封止材37が充填されている。これにより、凹部11aは密閉されることになる。なお、絶縁材料は、例えば、樹脂であり、より具体的には、例えば、熱硬化性樹脂である。
【0045】
図5及び図6は、水晶発振器1の製造方法を説明する図である。
【0046】
まず、複数の半導体基板23が切り出されるウェハ41(図5(a))に対してフォトリソグラフィーなどが行われ、集積回路、振動片パッド25、素子パッド27及びパッシベーション膜35が形成される。すなわち、ダイシングされる前の複数のIC7が形成される。
【0047】
そして、図5(a)に示すように、ウェハ状態のまま、複数のIC7に複数の水晶振動片5が実装される。また、適宜な薄膜形成法によって赤外線遮断膜33も成膜される。なお、水晶振動片5の実装及び赤外線遮断膜33の成膜は、いずれが先であってもよい。
【0048】
次に、図5(b)に示すように、ウェハ41はダイシングされ、これにより、複数のIC7及び水晶振動片5の組み合わせが切り出される。
【0049】
次に、図5(c)及び図6(a)に示すように、切り出されたIC7及び水晶振動片5は、第2導電性接合材31により容器3に接合される。
【0050】
このとき、既に述べたように、IC7と容器3の頂面11bとの間には、第2導電性接合材31の非配置位置において隙間が生じている。そして、図6(b)に示すように、当該隙間には、封止材37が充填される。
【0051】
封止材37は、例えば、熱硬化性樹脂であり、液状で充填された後、赤外線が照射されて硬化する。この際、赤外線は、赤外線遮断膜33により、IC7を透過して水晶振動片5へ到達することが阻止される。
【0052】
なお、水晶振動片5は、IC7がウェハ41から切り出された後に実装されてもよい。逆に、水晶振動片5だけでなく、容器3もウェハ状態のIC7と接合されてもよい。赤外線遮断膜33はIC7が切り出された後に形成されてもよい。
【0053】
以上のとおり、本実施形態では、水晶発振器1は、凹部11aを有する容器3と、凹部11aに収容された水晶振動片5と、凹部11aを塞ぐIC7とを有している。
【0054】
従って、IC7を容器3に収容する必要が無く、且つ、IC7をパッケージングの一部として利用できることから、水晶発振器1の大幅な小型化を図ることができる。例えば、水晶発振器1は、IC7を有さない水晶振動子と同等の大きさとされ得る。
【0055】
また、本実施形態では、水晶振動片5は、IC7の凹部11a側の面(回路形成面23a)に実装されている。
【0056】
従って、水晶振動片5を容器3に実装して、容器3に設けられた配線を介して水晶振動片5とIC7とを接続する場合(この場合も本発明に含まれる)に比較して、配線を省略することができ、ひいては、容器3の小型化が期待される。配線が省略されることにより、ノイズが混入するおそれも低減され、電気的特性の向上も期待される。さらには、ウェハ状態のIC7に対して水晶振動片5を実装することが可能であり、製造工程を簡素化できる。
【0057】
また、本実施形態では、IC7は、ベアチップである。
【0058】
従って、パッケージングされたICを用いる場合(この場合も本発明に含まれる)に比較して、一層の小型化が期待される。また、凹部11aは、水晶振動片5だけでなくIC7の集積回路も保護する空間として有効利用し、且つ、集積回路を形成するための半導体基板23をパッケージングのための部材として有効利用することができる。
【0059】
また、本実施形態では、容器3は、容器3の凹部11aが開口する面(頂面11b)に設けられた複数の容器パッド13と、当該容器3の外表面に設けられ、複数の容器パッド13に接続された複数の外部端子9とを有している。IC7は、その主面(回路形成面23a)に複数の素子パッド27を有し、回路形成面23aを頂面11bに対向されて配置されている。複数の素子パッド27と複数の容器パッド13とは接合されるとともに電気的に接続されている。回路形成面23aと頂面11bとの間、且つ、複数の容器パッド13及び複数の素子パッド27の非配置位置には、絶縁材料(封止材37)が充填され、これにより凹部11aは密閉されている。
【0060】
従って、後述する第2の実施形態(図7)との比較から理解されるように、容器3の平面視における大きさは、IC7の平面視における大きさと同じ大きさとすることができる。また、容器3とIC7との電気的接続は、凹部11aの密閉に寄与している。また、封止材37が隙間に充填されることにより、確実に密閉が行われるとともに、IC7の回路の短絡のおそれが低減される。
【0061】
また、本実施形態では、水晶発振器1は、IC7の半導体基板23よりも単位厚み当たりの赤外線の透過率が低く、IC7の凹部11aとは反対側の面を覆う赤外線遮断膜33を有している。
【0062】
ここで、半導体基板23は、セラミックパッケージ等に比較して赤外線の透過率が高い。そして、赤外線が水晶振動片5に到達すると、その特性が変化し、所望の発振信号が得られないおそれがある。しかし、赤外線遮断膜33が設けられていることにより、そのようなおそれが低減される。
【0063】
<第2の実施形態>
図7は、第2の実施形態に係る水晶発振器201を示す、図3と同様の断面図である。
【0064】
水晶発振器201は、容器の構成及び封止材37の配置のみが第1の実施形態と相違する。具体的には、以下のとおりである。
【0065】
水晶発振器201の容器203(容器基体211)は、凹部211a内且つ凹部211aの底面よりも高い位置に、凹部211aの開口側に面する台座面211eを有している。台座面211eには、複数の容器パッド13が設けられている。
【0066】
台座面211eは、例えば、凹部211aの底側部分211aaが開口側部分211abよりも小径にされることにより形成されており、凹部211aの全周に亘って形成されている。なお、台座面211eは、凹部211aの底面の4隅のみが隆起されて4隅にのみ形成されるなど、凹部211aの適宜な位置に形成されてもよい。
【0067】
水晶振動片5及びIC7の構成は、第1の実施形態と同様である。ただし、IC7は、回路形成面23aを台座面211eに対向させて配置されている。そして、IC7は、開口側部分211abに収容されつつ、凹部211a(底側部分211aa)を塞いでいる。水晶振動片5は、凹部211aにIC7よりも底側にて収容されている。
【0068】
複数の容器パッド13及び複数の素子パッド27は、第1の実施形態と同様に第2導電性接合材31により接合されるとともに電気的に接続されている。これらの平面視における配置は、第1の実施形態と同様でよい。
【0069】
台座面211eとIC7との間においては、第1の実施形態の頂面11bとIC7との間と同様に、複数の容器パッド13及び複数の素子パッド27の非配置位置において隙間が生じている。
【0070】
しかし、凹部211aは、IC7の外周面と開口側部分211abの内周面との間に封止材37が充填されることにより密閉される。封止材37は、例えば、開口側部分211abの全周に亘って充填されている。なお、台座面211eとIC7との間の隙間には、封止材37が充填されていなくてもよいし、IC7の外周面と開口側部分211abの内周面との間の封止材37が流れ込むことにより充填されていてもよい。
【0071】
以上のとおり、第2の実施形態では、水晶発振器201は、凹部211aを有する容器203と、凹部211aに収容された水晶振動片5と、凹部211aを塞ぐIC7とを有している。従って、第2の実施形態においても、第1の実施形態と同様の効果が奏される。
【0072】
また、第2の実施形態では、上記のように、凹部211a内に台座面211eを構成し、IC7を配置している。この構成では、例えば、IC7の半導体基板23の端部が容器203により保護され、構造的な強度が向上する。また、凹部211aの全周に亘って上方から(同一方向から)封止材37を充填できる。
【0073】
<第3の実施形態>
図8は、第3の実施形態に係る水晶発振器301の特徴部を示す、図4と同様の分解斜視図である。
【0074】
水晶発振器301は、IC7と容器3との接合方法のみが第1の実施形態と相違する。具体的には、以下のとおりである。
【0075】
IC7と容器3との接合は、これらの間に介在する異方性導電材料331によりなされる。異方性導電材料331は、凹部11a(図1参照)の全周に亘ってIC7の回路形成面23aと容器3の頂面11bとの間に配置されている。
【0076】
異方性導電材料331は、容器パッド13と素子パッド27との対向方向(z方向)において導電性を有し、当該対向方向に直交する方向(xy方向)においては絶縁性を有している。例えば、異方性導電材料331は、金属等により形成された導電性フィラーを含む絶縁性の樹脂によって構成されており、z方向においては導電性フィラーが互いに当接するとともに素子パッド27及び容器パッド13に当接することによって導電性を示し、xy方向においては、導電性フィラー同士が離間していることによって絶縁性を示す。若しくは、異方性導電材料331は、導電性高分子によって構成され、z方向においては導電性を示し、xy方向においては絶縁性を示してもよい。
【0077】
上記のような構成においては、異方性導電材料331により、凹部11aの全周に亘ってIC7と容器3とが接合され、ひいては、凹部11aが密閉される。異方性導電材料331は、z方向においてのみ導電性を示すことから、素子パッド27と容器パッド13とが電気的に接続される一方で、素子パッド27同士又は容器パッド13同士は電気的に接続されない。
【0078】
以上のとおり、第3の実施形態では、水晶発振器301は、凹部11aを有する容器3と、凹部11aに収容された水晶振動片5と、凹部11aを塞ぐIC7とを有している。従って、第3の実施形態においても、第1の実施形態と同様の効果が奏される。
【0079】
また、第3の実施形態では、異方性導電材料331により接合を行うことにより、第2導電性接合材31及び絶縁性の封止材37とを別個に設ける必要が無く、製造工程が簡素化される。
【0080】
なお、以上の実施形態において、水晶発振器1は本発明の圧電発振器及び圧電デバイスの一例であり、水晶振動片5は本発明の圧電振動片及び圧電素子の一例であり、封止材37は本発明の絶縁材料の一例である。
【0081】
本発明は、以上の実施形態に限定されず、種々の態様で実施されてよい。
【0082】
圧電デバイスは、圧電体の圧電効果(逆圧電効果を含む)を利用した処理を行うものであればよく、発振器に限定されない。例えば、圧電デバイスは、加速度センサ、共振器若しくはフィルタであってもよい。圧電体は、水晶に限定されず、セラミックであってもよい。
【0083】
既に述べたように、圧電素子(圧電振動片)は、集積回路素子に実装されなくてもよく、容器の凹部底面等に実装されてもよい。また、圧電振動片は、一端において実装(支持)されるものに限定されず、対角線上の2点において実装されるものであってもよい。
【0084】
外部端子の配置位置は、集積回路素子の反対側でなくてもよい。例えば、第2の実施形態において、容器203のIC7側の面(開口側部分211abの周囲の面)に外部端子9を設けてもよい。
【0085】
また、外部端子は、4隅に設けられるものに限定されない。例えば、発振器は、同一又は互いに異なる2つの発振信号を出力したり、温度情報を出力したりするために、5つ又は6つの外部端子を有していてもよい。
【0086】
容器は、その側面に、外部端子として機能する、又は、容器パッドと外部端子とを接続する導体層が設けられてもよい。また、容器の内部に導体層が設けられてもよい。
【符号の説明】
【0087】
1…水晶発振器(圧電発振器、圧電デバイス)、3…容器、5…水晶振動片(圧電振動片、圧電素子)、7…IC(集積回路素子)、11a…凹部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8