(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
互いに異種金属材料からなる又は同一金属材料からなる第1金属板と第2金属板を重ね合わせて25%〜85%の圧下率でクラッド圧延することにより、積層板を得る圧延工程と、
真空中において、前記積層板の少なくとも接合予定面および第3金属板の少なくとも接合予定面を表面活性化処理する表面活性化処理工程と、
前記表面活性化処理を行った後、真空中において、前記積層板の接合予定面と前記第3金属板の接合予定面とが当接するように前記積層板と前記第3金属板を重ね合わせてこれら両板を0.1%〜15%の圧下率になるように一対の圧接ロール間で冷間圧接する冷間圧接工程と、を含むことを特徴とする多層クラッド材の製造方法。
前記ニッケル板の厚さが10μm〜100μmであり、前記チタン板の厚さが5μm〜30μmであり、前記アルミニウム板の厚さが60μmを超えて10mm以下の範囲である請求項4に記載の多層クラッド材の製造方法。
互いに異種金属材料からなる又は同一金属材料からなる第1金属板と第2金属板を重ね合わせて25%〜85%の圧下率でクラッド圧延することにより、第1積層板を得る第1圧延工程と、
互いに異種金属材料からなる又は同一金属材料からなる第3金属板と第4金属板を重ね合わせて25%〜85%の圧下率でクラッド圧延することにより、第2積層板を得る第2圧延工程と、
真空中において、前記第1積層板の少なくとも接合予定面および前記第2積層板の少なくとも接合予定面を表面活性化処理する表面活性化処理工程と、
前記表面活性化処理を行った後、真空中において、前記第1積層板の接合予定面と前記第2積層板の接合予定面とが当接するように前記第1積層板と前記第2積層板を重ね合わせてこれら両板を0.1%〜15%の圧下率になるように一対の圧接ロール間で冷間圧接する冷間圧接工程と、を含むことを特徴とする多層クラッド材の製造方法。
前記ニッケル板の厚さが10μm〜100μmであり、前記チタン板の厚さが5μm〜30μmであり、前記アルミニウム板の厚さが60μmを超えて10mm以下の範囲であり、前記ろう材板の厚さが10μm〜60μmである請求項10に記載の多層クラッド材の製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、アルミニウム層は、はんだ接合性が悪い。そのため、半導体素子をはんだ付けにより接合できるように、アルミニウム層の表面にNiめっき層を形成することが行われるが、この場合には、アルミニウム層とNiめっき層との接合界面に強度の弱い合金層が形成されてしまう。その結果、冷熱サイクルに伴い発生する熱応力(熱歪み)によってこの合金層で割れや剥離が生じ易くなる上に、Niめっき層の表面に変形(凹凸)を生じ易いという問題があった。
【0010】
そこで、本発明者らは、表面に半導体素子が接合されるNi又はNi合金で形成されたニッケル層と、Ti又はTi合金で形成されたチタン層と、Al又はAl合金で形成されたアルミニウム層とがこの順でクラッド圧延や放電プラズマ焼結法によって積層された材料を配線層素材として使用する方策を着想した。
【0011】
しかし、放電プラズマ焼結法によって得られる上記多層クラッド材では、多層クラッドを行う際の各素材の厚さの構成比率に関係なく接合を行うことができるものの、少量バッチ式の方法であり、大量生産に向かず、製造コストが高いという問題がある。
【0012】
一方、クラッド圧延法により得られる上記多層クラッド材は、量産性に優れているものの、多層(3層以上)クラッド材を製造するに際し、中間に配置される層は、その外側に配置される材料との物性値(強度、伸び等)の違いによって許容できる構成厚さ比に限界があるという問題を抱えている。例えば、この限界を無視して設計すると中間に配置した層(上記多層クラッド材ではチタン層)が破断したり、破断しなくても厚さを所望の厚さに精度高く制御できないという問題があった。厚さを所望の厚さに精度高く制御できない場合には例えば所望の熱特性が得られないことになる。
【0013】
更に、クラッド圧延法では、接合界面の接合強度を増すために拡散熱処理を施す必要があるが、2層以上の異種金属材が接合されたクラッド材に熱処理を施すと、素材の伸びの違いによって、材料に反り、うねりが発生して(特に幅広の材料において反り、うねりが顕著に発生する)、コイル状に巻き取るのが容易でないという問題もあった。特に3層以上の多層クラッド材をクラッド圧延法で製造した場合、材料に反り、うねりが顕著に発生して、コイル状に巻き取ることができないので、実質上生産が困難であった。
【0014】
本発明は、かかる技術的背景に鑑みてなされたものであって、反りがなく、各構成層の厚さが精度高く制御されていると共に、冷熱が負荷されても構成層に割れや剥離が生じることのない3層以上の多層クラッド材を低コストで量産することのできる多層クラッド材の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
前記目的を達成するために、本発明は以下の手段を提供する。
【0016】
[1]互いに異種金属材料からなる又は同一金属材料からなる第1金属板と第2金属板を重ね合わせて25%〜85%の圧下率でクラッド圧延することにより、積層板を得る圧延工程と、
真空中において、前記積層板の少なくとも接合予定面および第3金属板の少なくとも接合予定面を表面活性化処理する表面活性化処理工程と、
前記表面活性化処理を行った後、真空中において、前記積層板の接合予定面と前記第3金属板の接合予定面とが当接するように前記積層板と前記第3金属板を重ね合わせてこれら両板を0.1%〜15%の圧下率になるように一対の圧接ロール間で冷間圧接する冷間圧接工程と、を含むことを特徴とする多層クラッド材の製造方法。
【0017】
[2]前記第1金属板の厚さは、前記第2金属板の厚さの0.5倍〜2.0倍であり、
前記第3金属板の厚さは、前記第2金属板の厚さの2.0倍を超える又は0.5倍未満である前項1に記載の多層クラッド材の製造方法。
【0018】
[3]前記第1金属板と前記第2金属板のうち、少なくともいずれか一方の金属板の厚さが100μm以下である前項1に記載の多層クラッド材の製造方法。
【0019】
[4]ニッケル板とチタン板を重ね合わせて25%〜85%の圧下率でクラッド圧延することにより、積層板を得る圧延工程と、
真空中において、前記積層板の少なくともチタン板の表面およびアルミニウム板の少なくとも接合予定面を表面活性化処理する表面活性化処理工程と、
前記表面活性化処理を行った後、真空中において、前記積層板のチタン板の表面と前記アルミニウム板の接合予定面とが当接するように前記積層板と前記アルミニウム板を重ね合わせてこれら両板を0.1%〜15%の圧下率になるように一対の圧接ロール間で冷間圧接する冷間圧接工程と、を含むことを特徴とする多層クラッド材の製造方法。
【0020】
[5]前記ニッケル板の厚さは、前記チタン板の厚さの0.5倍〜2.0倍であり、
前記アルミニウム板の厚さは、前記チタン板の厚さの2.0倍を超える又は0.5倍未満である前項4に記載の多層クラッド材の製造方法。
【0021】
[6]前記ニッケル板の厚さが10μm〜100μmであり、前記チタン板の厚さが5μm〜30μmであり、前記アルミニウム板の厚さが60μmを超えて10mm以下の範囲である前項4に記載の多層クラッド材の製造方法。
【0022】
[7]互いに異種金属材料からなる又は同一金属材料からなる第1金属板と第2金属板を重ね合わせて25%〜85%の圧下率でクラッド圧延することにより、第1積層板を得る第1圧延工程と、
互いに異種金属材料からなる又は同一金属材料からなる第3金属板と第4金属板を重ね合わせて25%〜85%の圧下率でクラッド圧延することにより、第2積層板を得る第2圧延工程と、
真空中において、前記第1積層板の少なくとも接合予定面および前記第2積層板の少なくとも接合予定面を表面活性化処理する表面活性化処理工程と、
前記表面活性化処理を行った後、真空中において、前記第1積層板の接合予定面と前記第2積層板の接合予定面とが当接するように前記第1積層板と前記第2積層板を重ね合わせてこれら両板を0.1%〜15%の圧下率になるように一対の圧接ロール間で冷間圧接する冷間圧接工程と、を含むことを特徴とする多層クラッド材の製造方法。
【0023】
[8]前記第1金属板の厚さは、前記第2金属板の厚さの0.5倍〜2.0倍であり、
前記第4金属板の厚さは、前記第3金属板の厚さの0.5倍〜2.0倍であり、
前記第3金属板の厚さは、前記第2金属板の厚さの2.0倍を超える又は0.5倍未満である前項7に記載の多層クラッド材の製造方法。
【0024】
[9]前記第1〜4金属板のうち、少なくとも1つの金属板の厚さが100μm以下である前項7に記載の多層クラッド材の製造方法。
【0025】
[10]ニッケル板とチタン板を重ね合わせて25%〜85%の圧下率でクラッド圧延することにより、第1積層板を得る第1圧延工程と、
アルミニウム板とろう材板を重ね合わせて25%〜85%の圧下率でクラッド圧延することにより、第2積層板を得る第2圧延工程と、
真空中において、前記第1積層板の少なくともチタン板の表面および前記第2積層板の少なくともアルミニウム板の表面を表面活性化処理する表面活性化処理工程と、
前記表面活性化処理を行った後、真空中において、前記第1積層板のチタン板表面と前記第2積層板のアルミニウム板表面とが当接するように前記第1積層板と前記第2積層板を重ね合わせてこれら両板を0.1%〜15%の圧下率になるように一対の圧接ロール間で冷間圧接する冷間圧接工程と、を含むことを特徴とする多層クラッド材の製造方法。
【0026】
[11]前記ニッケル板の厚さは、前記チタン板の厚さの0.5倍〜2.0倍であり、
前記ろう材板の厚さは、前記アルミニウム板の厚さの0.5倍〜2.0倍であり、
前記アルミニウム板の厚さは、前記チタン板の厚さの2.0倍を超える又は0.5倍未満である前項10に記載の多層クラッド材の製造方法。
【0027】
[12]前記ニッケル板の厚さが10μm〜100μmであり、前記チタン板の厚さが5μm〜30μmであり、前記アルミニウム板の厚さが60μmを超えて10mm以下の範囲であり、前記ろう材板の厚さが10μm〜60μmである前項10に記載の多層クラッド材の製造方法。
【0028】
[13]前記表面活性化処理は、プラズマエッチング処理である前項1〜12のいずれか1項に記載の多層クラッド材の製造方法。
【0029】
[14]前記冷間圧接工程における冷間圧接の際の圧接ロールの温度が10℃〜80℃の範囲である前項1〜13のいずれか1項に記載の多層クラッド材の製造方法。
【0030】
[15]前記圧延工程におけるクラッド圧延の圧下率が45%〜65%である前項1〜14のいずれか1項に記載の多層クラッド材の製造方法。
【0031】
[16]前記多層クラッド材は、絶縁基板用の多層材である前項1〜15のいずれか1項に記載の多層クラッド材の製造方法。
【発明の効果】
【0032】
[1]の発明では、圧延工程において第1金属板と第2金属板を重ね合わせて25%〜85%の圧下率でクラッド圧延するので、低コストで第1金属板と第2金属板を積層した積層板を得ることができる。
【0033】
次いで、真空中において、積層板の少なくとも接合予定面(以下では、積層板における接合される方の金属板を「第2金属板」という)および第3金属板の少なくとも接合予定面を表面活性化処理するので、接合予定面における酸化物、吸着物等を除去して清浄な表面を露出させることができ、接合強度を向上させることができる。
【0034】
冷間圧接工程において、真空中で積層板と第3金属板を重ね合わせてこれら両板を0.1%〜15%の低圧下率になるように一対の圧接ロール間で冷間圧接するので、第3金属板の厚さと第2金属板の厚さが大きく異なる場合(例えば、第3金属板の厚さが第2金属板の厚さの2.0倍を超える又は0.5倍未満である場合)であっても、薄い方の金属板の厚さを精度高く制御した多層クラッド材を得ることができる。また、0.1%〜15%の低圧下率になるように冷間圧接するので、第3金属板と第2金属板の接合界面が平坦性に優れたものとなるし、第3金属板と第2金属板の接合界面において合金層(該合金層は、接合強度等の機械的特性、電気的特性に悪影響を及ぼす)が形成されないという利点がある。更に、0.1%〜15%の低圧下率になるように冷間圧接を行い、そのあとに拡散熱処理を要しない(行わなくて済む)ので、たとえ幅広の材料を使用した場合であっても反りのない多層クラッド材が得られる。
【0035】
[2]の発明では、第3金属板の厚さが第2金属板の厚さの2.0倍を超える又は0.5倍未満であって両板の厚さが大きく異なるにもかかわらず、薄い方の金属板の厚さを精度高く制御した多層クラッド材を得ることができる。
【0036】
[3]の発明では、第1金属板と前記第2金属板のうち、少なくともいずれか一方の金属板の厚さが100μm以下の薄い板であるにもかかわらず、薄い方の金属板の厚さを精度高く制御した多層クラッド材を得ることができる。
【0037】
[4]の発明では、圧延工程においてニッケル板とチタン板を重ね合わせて25%〜85%の圧下率でクラッド圧延するので、低コストでニッケル板とチタン板を積層した積層板を得ることができる。
【0038】
次いで、真空中において、積層板の少なくともチタン板の表面およびアルミニウム板の少なくとも接合予定面を表面活性化処理するので、これら接合予定面における酸化物、吸着物等を除去して清浄な表面を露出させることができ、接合強度を向上させることができる。
【0039】
冷間圧接工程において、真空中で積層板とアルミニウム板を重ね合わせてこれら両板を0.1%〜15%の低圧下率になるように一対の圧接ロール間で冷間圧接するので、例えば、アルミニウム板の厚さとチタン板の厚さが大きく異なる場合(例えば、アルミニウム板の厚さがチタン板の厚さの2.0倍を超える又は0.5倍未満である場合)であっても、薄い方の金属板の厚さを精度高く制御した多層クラッド材を得ることができる。また、0.1%〜15%の低圧下率になるように冷間圧接するので、アルミニウム板とチタン板の接合界面が平坦性に優れたものとなるし、アルミニウム板とチタン板の接合界面において合金層(該合金層は、接合強度等の機械的特性、電気的特性に悪影響を及ぼす)が形成されないという利点がある。更に、0.1%〜15%の低圧下率になるように冷間圧接を行い、そのあとに拡散熱処理を要しない(行わなくて済む)ので、たとえ幅広の材料を使用した場合であっても反りのない多層クラッド材が得られる。
【0040】
[5]の発明では、アルミニウム板の厚さがチタン板の厚さの2.0倍を超える又は0.5倍未満であって両板の厚さが大きく異なるにもかかわらず、薄い方の金属板の厚さを精度高く制御した多層クラッド材を得ることができる。
【0041】
[6]の発明では、ニッケル板の厚さが10μm〜100μmであり、チタン板の厚さが5μm〜30μmであり、アルミニウム板の厚さが60μmを超えて10mm以下の範囲であって、このように少なくともチタン板の厚さが薄いにもかかわらず、これらチタン板、ニッケル板、アルミニウム板の厚さを精度高く制御した多層クラッド材を得ることができる。
【0042】
[7]の発明では、第1圧延工程において第1金属板と第2金属板を重ね合わせて25%〜85%の圧下率でクラッド圧延するので、低コストで第1金属板と第2金属板を積層した第1積層板を得ることができる。
【0043】
第2圧延工程において第3金属板と第4金属板を重ね合わせて25%〜85%の圧下率でクラッド圧延するので、低コストで第3金属板と第4金属板を積層した第2積層板を得ることができる。
【0044】
次いで、真空中において、第1積層板の少なくとも接合予定面(以下では、第1積層板における接合される方の金属板を「第2金属板」という)および第2積層板の少なくとも接合予定面(以下では、第2積層板における接合される方の金属板を「第3金属板」という)を表面活性化処理するので、これらの接合予定面における酸化物、吸着物等を除去して清浄な表面を露出させることができ、接合強度を向上させることができる。
【0045】
冷間圧接工程において、真空中で第1積層板と第2積層板を重ね合わせてこれら両板を0.1%〜15%の低圧下率になるように一対の圧接ロール間で冷間圧接するので、第3金属板の厚さと第2金属板の厚さが大きく異なる場合(例えば、第3金属板の厚さが第2金属板の厚さの2.0倍を超える又は0.5倍未満である場合)であっても、薄い方の金属板の厚さを精度高く制御した多層クラッド材を得ることができる。また、0.1%〜15%の低圧下率になるように冷間圧接するので、第3金属板と第2金属板の接合界面が平坦性に優れたものとなるし、第3金属板と第2金属板の接合界面において合金層(該合金層は、接合強度等の機械的特性、電気的特性に悪影響を及ぼす)が形成されないという利点がある。更に、0.1%〜15%の低圧下率になるように冷間圧接を行い、そのあとに拡散熱処理を要しない(行わなくて済む)ので、たとえ幅広の材料を使用した場合であっても反りのない多層クラッド材が得られる。
【0046】
[8]の発明では、第3金属板の厚さが第2金属板の厚さの2.0倍を超える又は0.5倍未満であって両板の厚さが大きく異なるにもかかわらず、薄い方の金属板の厚さを精度高く制御した多層クラッド材を得ることができる。
【0047】
[9]の発明では、第1〜4金属板のうち、少なくとも1つの金属板の厚さが100μm以下であって薄い板を含むにもかかわらず、この薄い金属板の厚さをも精度高く制御した多層クラッド材を得ることができる。
【0048】
[10]の発明では、第1圧延工程においてニッケル板とチタン板を重ね合わせて25%〜85%の圧下率でクラッド圧延するので、低コストでニッケル板とチタン板を積層した第1積層板を得ることができる。
【0049】
また、第2圧延工程においてアルミニウム板とろう材板を重ね合わせて25%〜85%の圧下率でクラッド圧延するので、低コストでアルミニウム板とろう材板を積層した第2積層板を得ることができる。
【0050】
次いで、真空中において、第1積層板の少なくともチタン板の表面および第2積層板の少なくともアルミニウム板の表面を表面活性化処理するので、これらの接合予定面における酸化物、吸着物等を除去して清浄な表面を露出させることができ、接合強度を向上させることができる。
【0051】
冷間圧接工程において、真空中で第1積層板と第2積層板を重ね合わせてこれら両板を0.1%〜15%の低圧下率になるように一対の圧接ロール間で冷間圧接するので、例えば、アルミニウム板の厚さとチタン板の厚さが大きく異なる場合(例えば、アルミニウム板の厚さがチタン板の厚さの2.0倍を超える又は0.5倍未満である場合)であっても、薄い方の金属板の厚さを精度高く制御した多層クラッド材を得ることができる。また、0.1%〜15%の低圧下率になるように冷間圧接するので、アルミニウム板とチタン板の接合界面が平坦性に優れたものとなるし、アルミニウム板とチタン板の接合界面において合金層(該合金層は、接合強度等の機械的特性、電気的特性に悪影響を及ぼす)が形成されないという利点がある。更に、0.1%〜15%の低圧下率になるように冷間圧接を行い、そのあとに拡散熱処理を要しない(行わなくて済む)ので、たとえ幅広の材料を使用した場合であっても反りのない多層クラッド材が得られる。
【0052】
[11]の発明では、アルミニウム板の厚さがチタン板の厚さの2.0倍を超える又は0.5倍未満であって両板の厚さが大きく異なるにもかかわらず、薄い方の金属板の厚さも精度高く制御した多層クラッド材を得ることができる。
【0053】
[12]の発明では、ニッケル板の厚さが10μm〜100μmであり、チタン板の厚さが5μm〜30μmであり、アルミニウム板の厚さが60μmを超えて10mm以下の範囲であり、ろう材板の厚さが10μm〜60μmであって、このように少なくともチタン板の厚さが薄いにもかかわらず、これらチタン板、ニッケル板、アルミニウム板及びろう材板の厚さを精度高く制御した多層クラッド材を得ることができる。
【0054】
[13]の発明では、表面活性化処理をプラズマエッチング処理で行うので、接合予定面における酸化物、吸着物等を十分に除去してより清浄な表面を露出させることができて、接合強度をより向上させることができる。
【0055】
[14]の発明では、冷間圧接工程における冷間圧接の際の圧接ロールの温度を10℃〜80℃の範囲に設定するので、薄い方の金属板の厚さもより精度高く制御した多層クラッド材を得ることができる。
【0056】
[15]の発明では、圧延工程において45%〜65%の圧下率でクラッド圧延するので、設備への過剰な負荷をかけることなく(大きな設備能力を要することがなく設備コストを抑制しつつ)、安定して多層クラッド材を製造できる。
【0057】
[16]の発明では、薄い方の金属板の厚さも精度高く制御した且つ反りのない絶縁基板用の多層クラッド材を製造できる。
【発明を実施するための形態】
【0059】
[第1製造方法]
本発明に係る、多層クラッド材の第1製造方法について
図3を参照しつつ説明する。
【0060】
(圧延工程)
互いに異種金属材料からなる又は同一金属材料からなる第1金属板1と第2金属板2を重ね合わせて25%〜85%の圧下率でクラッド圧延することにより、積層板20を得る。例えば、第1金属板1としてニッケル板を用い、第2金属板2としてチタン板を用いる。即ち、例えば、ニッケル板1とチタン板2を重ね合わせて25%〜85%の圧下率でクラッド圧延することにより、積層板20を得る。得られた積層板20を第1供給ロール51に巻き取る。
【0061】
この圧延工程では、第1金属板1と第2金属板2を重ね合わせてクラッド圧延するので、低コストで第1金属板1と第2金属板2を積層した積層板20を得ることができる。
【0062】
前記圧延工程におけるクラッド圧延は、冷間クラッド圧延により行うのが好ましい。この場合には、特に材料(金属板)の加熱を要しないから、生産性を向上できる。前記冷間クラッド圧延の際の圧延ロールの温度は、10℃〜120℃の範囲に設定するのが好ましい。
【0063】
前記「圧下率」は、クラッド圧延する前の第1金属板の厚さと第2金属板の厚さの合計を「M」(μm)とし、クラッド圧延により得られた積層板20の厚さを「N」(μm)としたとき、
圧下率(%)={(M−N)/M}×100
上記計算式で求められる値である。
【0064】
なお、前記圧延工程の前に、予め、第1金属板1の接合予定面及び第2金属板2の接合予定面を機械的に研磨するのが好ましい。前記機械的研磨としては、例えば、ワイヤーブラシで研磨する等の手法が挙げられるが、前記接合予定面の表面の酸化層を機械的に除去できる手法であれば特に限定されない。このような機械的研磨を行う(機械的研磨工程を設ける)ことにより、例えば、25%〜70%の圧下率でのクラッド圧延でも十分な接合強度でもって接合できる。
【0065】
また、前記圧延工程の後であって、次の表面活性化処理工程の前に、上記クラッド圧延により得られた積層板20に熱処理温度500℃〜700℃で拡散熱処理を行ってもよい。このような拡散熱処理を行うことによって、第1金属板1と第2金属板2の接合の接合強度をより向上させることができる。
【0066】
(表面活性化処理工程)
次に、
図3に示すように、前記積層板20が捲回されている第1供給ロール51を製造装置40の真空槽49内に配置すると共に、第3金属板3が捲回されている他方の第2供給ロール52を真空槽49内に配置する。前記第3金属板3として、例えばアルミニウム板を用いる。
【0067】
前記真空槽49は、図示しない真空装置により内部空間を真空状態にすることができるものとなされている。前記真空槽49内には、第1電極ロール53と、該第1電極ロール53の近接位置に該第1電極ロール53と離間して配置された表面活性化処理装置42Aと、第2電極ロール54と、該第2電極ロール54の近接位置に該第2電極ロール54と離間して配置された表面活性化処理装置42Bと、一対の圧接ロール44、44と、巻き取りロール55が配置されている。前記表面活性化処理装置42Aは、該装置42A内の電極と、前記第1電極ロール53との間に10MHz〜50MHzの周波数の高周波電圧を印加して、該第1電極ロール53の外周面に沿接されている金属板の表面にプラズマを照射することによって、該金属板の表面をプラズマエッチング処理できる。同様に、前記表面活性化処理装置42Bは、該装置42B内の電極と、第2電極ロール54との間に10MHz〜50MHzの周波数の高周波電圧を印加して、該第2電極ロール54の外周面に沿接されている金属板の表面にプラズマを照射することによって、該金属板の表面をプラズマエッチング処理できる。
【0068】
次に、前記真空槽49内を真空状態に保持する。前記真空槽49内の真空度は、1×10
-4Pa〜1Paに設定するのが好ましい。また、前記真空槽49内を窒素、アルゴン等の不活性ガスで満たして不活性ガス雰囲気にした後に、真空度を上げていって1×10
-4Pa〜1Paに設定するのがよい。
【0069】
前記真空状態の真空槽49内において、第1供給ロール51から引き出された積層板20を第1電極ロール53の外周面に沿わせて接触させ、該第1電極ロール53に沿接されている積層板20の第2金属板(例えばチタン板)2の表面に、表面活性化処理装置42Aからプラズマを照射することによって、第2金属板(例えばチタン板)2の表面をプラズマエッチング処理した後、積層板20を一対の圧接ロール44、44間に送り込む(
図3参照)。前記プラズマエッチング処理により、積層板20の接合予定面である第2金属板(例えばチタン板)2の表面における酸化物、吸着物等を除去して清浄な表面を露出させることができる。
【0070】
同時に、前記真空状態の真空槽49内において、第2供給ロール52から引き出された第3金属板(例えばアルミニウム板)3を第2電極ロール54の外周面に沿わせて接触させ、該第2電極ロール54に沿接されている第3金属板3の片面に、表面活性化処理装置42Bからプラズマを照射することによって、第3金属板(例えばアルミニウム板)3の表面(接合予定面)をプラズマエッチング処理した後、第3金属板(例えばアルミニウム板)3を一対の圧接ロール44、44間に送り込む(
図3参照)。前記プラズマエッチング処理により、第3金属板(例えばアルミニウム板)3の接合予定面における酸化物、吸着物等を除去して清浄な表面を露出させることができる。
【0071】
(冷間圧接工程)
続いて、前記真空状態の真空槽49内において、前記積層板20の接合予定面である第2金属板(例えばチタン板)2の表面と、前記第3金属板(例えばアルミニウム板)3の接合予定面の表面(片面)とが当接するように積層板20と第3金属板3を重ね合わせてこれら両板20、3を0.1%〜15%の低圧下率になるように一対の圧接ロール44、44間で冷間圧接する(
図3参照)。
【0072】
次いで、前記真空状態の真空槽49内において、冷間圧接により得られた多層クラッド材10を巻き取りロール55に巻き取る(
図3参照)。
【0073】
得られた多層クラッド材10は、
図1に示すように、第2金属板(例えばチタン板)2の一方の面に第1金属板(例えばニッケル板)1が積層され、前記第2金属板(例えばチタン板)2の他方の面に第3金属板(例えばアルミニウム板)3が積層された3層積層構造を備えている。
【0074】
前記ニッケル板1/チタン板2/アルミニウム板3の3層積層構造の多層クラッド材10は、DBA基板(冷却器一体型絶縁基板)95の半導体素子接合面側に、ろう材箔99でろう付けして使用することもできるし(
図6参照)、或いはセラミック板に直接にろう材箔でろう付けして使用することもできる。
図6は、冷却器一体型絶縁基板の一例を積層前の分離状態で示した模式図であり、
図6において、91は、放熱部材としてのアルミニウム板、92は、アルミニウムろう材箔、93は、アルミニウムパンチング板、94は、アルミニウムろう材箔、95は、DBA板(Al層96/AlN層(窒化アルミニウム層)97/Al層98)、アルミニウムろう材箔99である。
【0075】
なお、上記のように別途ろう材箔を用いて接合する場合には、ろう材は、硬く、圧延しにくい材料であり、ろう材を250μm以下の箔にするためには、箔圧延用の特殊な装置が必要となる上に、歩留まりも十分良好ではない。また、ろう材箔は、ハンドリング性も十分に良好ではない。そこで、後述する第2製造方法を適用して、ニッケル板1/チタン板2/アルミニウム板3/アルミニウムろう材板4の4層積層構造の多層クラッド材10を得るのがより好ましい。
【0076】
前記冷間圧接工程において、前記圧下率は、0.1%〜15%に設定する。圧下率をこのような範囲に設定することにより、第3金属板と第2金属板の接合界面での平坦性がより向上すると共に、第3金属板と第2金属板の接合界面において合金層が形成されない、かつ薄い方の金属板の厚さをより精度高く制御した多層クラッド材10を得ることができる。圧下率が0.1%未満では、第3金属板と第2金属板との間で十分な接合強度が得られない。また、圧下率が15%を超えると、接合界面の平坦性が得られなくなるし、脆弱な合金層を形成する組み合わせの金属素材の場合に接合界面において割れが発生するという問題を生じる。中でも、前記圧下率は、0.1%〜10%に設定するのが好ましく、0.1%〜5.0%に設定するのが特に好ましい。
【0077】
前記「圧下率」は、圧接ロール44、44間で冷間圧接する前の冷間圧接対象の金属板の合計厚さ(積層板の厚さと第3金属板の厚さの合計)を「X」(μm)とし、冷間圧接により得られた多層クラッド材10の厚さを「Y」(μm)としたとき、
圧下率(%)={(X−Y)/X}×100
上記計算式で求められる値である。
【0078】
前記冷間圧接工程における冷間圧接の際の圧接ロール44の温度は10℃〜80℃の範囲に設定するのが好ましく、この場合には、薄い方の金属板の厚さをより精度高く制御した多層クラッド材10を得ることができる。
【0079】
上記第1製造方法において、第1金属板、第2金属板および第3金属板は、後述する実施例1のように、これら3つの板が互いに異種金属材料からなる場合が代表的な例であるが、特にこのような構成に限定されるものではない。
【0080】
上記第1製造方法によれば、冷間圧接工程の前に表面活性化処理を行っており、この表面活性化処理により、接合予定面における酸化物、吸着物等を除去して清浄な表面を露出させることができているので、次の冷間圧接工程では低圧下率(0.1%〜15%)でも十分な接合強度を確保できる。従って、第1製造方法において、冷間圧接工程の後に(接合強度向上のための)拡散熱処理を要しないのであって、冷間圧接工程の後に拡散熱処理(通常は、300℃以上での熱処理)を行わない。従って、第1製造方法によれば、たとえ幅広の材料を使用した場合であっても、反りのない多層クラッド材を得ることができる。
【0081】
[第2製造方法]
次に、本発明に係る、多層クラッド材の第2製造方法について
図4を参照しつつ説明する。
【0082】
(第1圧延工程)
互いに異種金属材料からなる又は同一金属材料からなる第1金属板1と第2金属板2を重ね合わせて25%〜85%の圧下率でクラッド圧延することにより、第1積層板21を得る。例えば、第1金属板1としてニッケル板を用い、第2金属板2としてチタン板を用いる。即ち、例えば、ニッケル板1とチタン板2を重ね合わせて25%〜85%の圧下率でクラッド圧延することにより、第1積層板21を得る。得られた第1積層板21を第1供給ロール51に巻き取る。
【0083】
この第1圧延工程では、第1金属板1と第2金属板2を重ね合わせてクラッド圧延するので、低コストで第1金属板1と第2金属板2を積層した第1積層板21を得ることができる。
【0084】
前記第1圧延工程におけるクラッド圧延は、冷間クラッド圧延により行うのが好ましい。この場合には、特に材料(金属板)の加熱を要しないから、生産性を向上できる。前記冷間クラッド圧延の際の圧延ロールの温度は、10℃〜120℃の範囲に設定するのが好ましい。
【0085】
前記「圧下率」は、クラッド圧延する前の第1金属板の厚さと第2金属板の厚さの合計を「C」(μm)とし、クラッド圧延により得られた第1積層板21の厚さを「D」(μm)としたとき、
圧下率(%)={(C−D)/C}×100
上記計算式で求められる値である。
【0086】
なお、前記第1圧延工程の前に、予め、第1金属板1の接合予定面及び第2金属板2の接合予定面を機械的に研磨するのが好ましい。前記機械的研磨としては、例えば、ワイヤーブラシで研磨する等の手法が挙げられるが、前記接合予定面の表面の酸化層を機械的に除去できる手法であれば特に限定されない。このような機械的研磨を行う(機械的研磨工程を設ける)ことにより、例えば、25%〜70%の圧下率でのクラッド圧延でも十分な接合強度でもって接合できる。
【0087】
また、前記第1圧延工程の後であって、次の表面活性化処理工程の前に、上記クラッド圧延により得られた第1積層板21に熱処理温度500℃〜700℃で拡散熱処理を行ってもよい。このような拡散熱処理を行うことによって、第1金属板1と第2金属板2の接合の接合強度をより向上させることができる。
【0088】
(第2圧延工程)
互いに異種金属材料からなる又は同一金属材料からなる第3金属板1と第4金属板4を重ね合わせて25%〜85%の圧下率でクラッド圧延することにより、第2積層板22を得る。例えば、第3金属板3としてアルミニウム板を用い、第4金属板4としてアルミニウムろう材板を用いる。即ち、例えば、アルミニウム板3とアルミニウムろう材板4を重ね合わせて25%〜85%の圧下率でクラッド圧延することにより、第2積層板22を得る。得られた第2積層板22を第2供給ロール52に巻き取る。
【0089】
この第2圧延工程では、第3金属板3と第4金属板4を重ね合わせてクラッド圧延するので、低コストで第3金属板3と第4金属板4を積層した第2積層板22を得ることができる。
【0090】
前記第2圧延工程におけるクラッド圧延は、冷間クラッド圧延により行うのが好ましい。この場合には、特に材料(金属板)の加熱を要しないから、生産性を向上できる。前記冷間クラッド圧延の際の圧延ロールの温度は、10℃〜120℃の範囲に設定するのが好ましい。
【0091】
前記「圧下率」は、クラッド圧延する前の第3金属板の厚さと第4金属板の厚さの合計を「E」(μm)とし、クラッド圧延により得られた第2積層板22の厚さを「F」(μm)としたとき、
圧下率(%)={(E−F)/E}×100
上記計算式で求められる値である。
【0092】
なお、前記第2圧延工程の前に、予め、第3金属板3の接合予定面及び第4金属板4の接合予定面を機械的に研磨するのが好ましい。前記機械的研磨としては、例えば、ワイヤーブラシで研磨する等の手法が挙げられるが、前記接合予定面の表面の酸化層を機械的に除去できる手法であれば特に限定されない。このような機械的研磨を行う(機械的研磨工程を設ける)ことにより、例えば、25%〜70%の圧下率でのクラッド圧延でも十分な接合強度でもって接合できる。
【0093】
また、前記第2圧延工程の後であって、次の表面活性化処理工程の前に、上記クラッド圧延により得られた第2積層板22に熱処理温度500℃〜700℃で拡散熱処理を行ってもよい。このような拡散熱処理を行うことによって、第3金属板3と第4金属板4の接合の接合強度をより向上させることができる。
【0094】
なお、第1圧延工程と第2圧延工程の実施順序は、特に限定されず、第1圧延工程を先に実施してもよいし、或いは第2圧延工程を先に実施してもよいし、或いはまた第1圧延工程と第2圧延工程を同時並行で実施してもよい。
【0095】
(表面活性化処理工程)
前記第1圧延工程と前記第2圧延工程の両方を実施した後、表面活性化処理工程を実施する。
図4に示すように、前記第1積層板21が捲回されている第1供給ロール51を製造装置40の真空槽49内に配置すると共に、第2積層板22が捲回されている他方の第2供給ロール52を真空槽49内に配置する。
【0096】
前記真空槽49は、図示しない真空装置により内部空間を真空状態にすることができるものとなされている。前記真空槽49内には、第1電極ロール53と、該第1電極ロール53の近接位置に該第1電極ロール53と離間して配置された表面活性化処理装置42Aと、第2電極ロール54と、該第2電極ロール54の近接位置に該第2電極ロール54と離間して配置された表面活性化処理装置42Bと、一対の圧接ロール44、44と、巻き取りロール55が配置されている。前記表面活性化処理装置42Aは、該装置42A内の電極と、前記第1電極ロール53との間に10MHz〜50MHzの周波数の高周波電圧を印加して、該第1電極ロール53の外周面に沿接されている金属板の表面にプラズマを照射することによって、該金属板の表面をプラズマエッチング処理できる。同様に、前記表面活性化処理装置42Bは、該装置42B内の電極と、第2電極ロール54との間に10MHz〜50MHzの周波数の高周波電圧を印加して、該第2電極ロール54の外周面に沿接されている金属板の表面にプラズマを照射することによって、該金属板の表面をプラズマエッチング処理できる。
【0097】
次に、前記真空槽49内を真空状態に保持する。前記真空槽49内の真空度は、1×10
-4Pa〜1Paに設定するのが好ましい。また、前記真空槽49内を窒素、アルゴン等の不活性ガスで満たして不活性ガス雰囲気にした後に、真空度を上げていって1×10
-4Pa〜1Paに設定するのがよい。
【0098】
前記真空状態の真空槽49内において、第1供給ロール51から引き出された第1積層板21を第1電極ロール53の外周面に沿わせて接触させ、該第1電極ロール53に沿接されている第1積層板21の第2金属板(例えばチタン板)2の表面に、表面活性化処理装置42Aからプラズマを照射することによって、第2金属板(例えばチタン板)2の表面をプラズマエッチング処理した後、第1積層板21を一対の圧接ロール44、44間に送り込む(
図4参照)。前記プラズマエッチング処理により、第1積層板21の接合予定面である第2金属板(例えばチタン板)2の表面における酸化物、吸着物等を除去して清浄な表面を露出させることができる。
【0099】
同時に、前記真空状態の真空槽49内において、第2供給ロール52から引き出された第2積層板22を第2電極ロール54の外周面に沿わせて接触させ、該第2電極ロール54に沿接されている第2積層板22の第3金属板(例えばアルミニウム板)2の表面(接合予定面)に、表面活性化処理装置42Bからプラズマを照射することによって、第3金属板(例えばアルミニウム板)3の表面をプラズマエッチング処理した後、第2積層板22を一対の圧接ロール44、44間に送り込む(
図4参照)。前記プラズマエッチング処理により、第2積層板22の接合予定面である第3金属板(例えばアルミニウム板)3の表面における酸化物、吸着物等を除去して清浄な表面を露出させることができる。
【0100】
(冷間圧接工程)
続いて、前記真空状態の真空槽49内において、前記第1積層板21の接合予定面である第2金属板(例えばチタン板)2の表面と、前記第2積層板22の接合予定面である第3金属板(例えばアルミニウム板)2の表面とが当接するように第1積層板21と第2積層板22を重ね合わせてこれら両板21、22を0.1%〜15%の低圧下率になるように一対の圧接ロール44、44間で冷間圧接する(
図4参照)。
【0101】
次いで、前記真空状態の真空槽49内において、冷間圧接により得られた多層クラッド材10を巻き取りロール55に巻き取る(
図4参照)。
【0102】
得られた多層クラッド材10は、
図2に示すように、第2金属板(例えばチタン板)2の上面に第1金属板(例えばニッケル板)1が積層され、前記第2金属板(例えばチタン板)2の下面に第3金属板(例えばアルミニウム板)3が積層され、該第3金属板(例えばアルミニウム板)3の下面に第4金属板(例えばアルミニウムろう材板)4が積層された4層積層構造を備えている。
【0103】
前記ニッケル板1/チタン板2/アルミニウム板3/アルミニウムろう材板4の4層積層構造の多層クラッド材10は、例えば、DBA基板(冷却器一体型絶縁基板)95の半導体素子接合面側に直接にろう付けして使用することもできるし(
図7参照)、或いは、セラミック板61に直接にろう付けして使用することもできる(
図8参照)。なお、
図7は、冷却器一体型絶縁基板の一例を積層前の分離状態で示した模式図であり、
図7において、91は、放熱部材としてのアルミニウム板、92は、アルミニウムろう材箔、93は、アルミニウムパンチング板、94は、アルミニウムろう材箔、95は、DBA板(Al層96/AlN層(窒化アルミニウム層)97/Al層98)である。また、
図8は、冷却器一体型絶縁基板の他の例を積層前の分離状態で示した模式図であり、
図8において、91は、放熱部材としてのアルミニウム板、100は、両面にろう材が同時にクラッド圧延されてなるクラッド材(アルミニウムろう材92/アルミニウム板93Z/アルミニウムろう材94)、97は、セラミック板(窒化アルミニウム層)である。前記チタン板2は、ニッケル板1とアルミニウム板3が接触することによる脆弱合金層の生成を防止するバリヤー層として機能する。Tiは熱伝導率が21.9W/m・Kであり、熱伝導率が90.7W/m・KのNiや、熱伝導率が236W/m・KのAlと比較して著しく低いので、高い放熱特性が要求される絶縁基板用途においては、チタン板2は、薄く設定するのが好ましく、中でも3μm〜30μmに設定するのが特に好ましい。また、前記アルミニウム板3については、DBA・ヒートシンク・冷却器に接合する場合と、セラミック板に直接に接合して配線層として使用する場合とで厚さの設計は大きく相違する。セラミック板61に直接に接合して配線層として使用する場合(
図5参照)には、4層積層構造の多層クラッド材10におけるアルミニウム板3の厚さは、電気抵抗の増大を抑制するべく、200μm〜800μmに設定されるのが好ましい。一方、DBA板にろう付けする用途として使用する場合には、ろう付け時にTi層2とろう材層4との接触を防止するために、4層積層構造の多層クラッド材10におけるアルミニウム板3の厚さとして40μm以上であるのが好ましい。
【0104】
前記冷間圧接工程において、前記圧下率は、0.1%〜15%に設定する。圧下率をこのような範囲に設定することにより、第3金属板と第2金属板の接合界面での平坦性がより向上すると共に、第3金属板と第2金属板の接合界面において合金層が形成されない、かつ薄い方の金属板の厚さをより精度高く制御した多層クラッド材10を得ることができる。圧下率が0.1%未満では、第3金属板と第2金属板との間で十分な接合強度が得られない。また、圧下率が15%を超えると、接合界面の平坦性が得られなくなるし、脆弱な合金層を形成する組み合わせの金属素材の場合に接合界面において割れが発生するという問題を生じる。中でも、前記圧下率は、0.1%〜10%に設定するのが好ましく、0.1%〜5.0%に設定するのが特に好ましい。
【0105】
前記「圧下率」は、圧接ロール44、44間で冷間圧接する前の冷間圧接対象の金属板の合計厚さ(第1積層板の厚さと第2積層板の厚さの合計)を「X」(μm)とし、冷間圧接により得られた多層クラッド材10の厚さを「Y」(μm)としたとき、
圧下率(%)={(X−Y)/X}×100
上記計算式で求められる値である。
【0106】
前記冷間圧接工程における冷間圧接の際の圧接ロール44の温度は10℃〜80℃の範囲に設定するのが好ましく、この場合には、薄い方の金属板の厚さをより精度高く制御した多層クラッド材10を得ることができる。
【0107】
上記第2製造方法において、第1金属板、第2金属板、第3金属板および第4金属板は、後述する実施例3のように、これら4つの板が互いに異種金属材料からなる場合が代表的な例であるが、特にこのような構成に限定されるものではない。
【0108】
上記第2製造方法によれば、冷間圧接工程の前に表面活性化処理を行っており、この表面活性化処理により、接合予定面における酸化物、吸着物等を除去して清浄な表面を露出させることができているので、次の冷間圧接工程では低圧下率(0.1%〜15%)でも十分な接合強度を確保できる。従って、第2製造方法においては、冷間圧接工程の後に(接合強度向上のための)拡散熱処理を要しないのであって、冷間圧接工程の後に拡散熱処理(通常、300℃以上での熱処理)を行わない。従って、第2製造方法によれば、たとえ幅広の材料を使用した場合であっても、反りのない多層クラッド材を得ることができる。
【0109】
[第1、2製造方法]
本発明の製造方法において、前記第1金属板、前記第2金属板、前記第3金属板としては、特に限定されるものではないが、例えば、ニッケル板、チタン板、アルミニウム板等が挙げられる。また、前記第4金属板としては、特に限定されるものではないが、例えば、ニッケル板、チタン板、アルミニウム板、アルミニウムろう材板等が挙げられる。
【0110】
本発明の製造方法において、上記に記載した以外の他の工程を追加して、5層積層構成、6層積層構成、7層以上の積層構成の多層クラッド材を製造するようにしても良く、本発明の製造方法は、このような製造方法も包含するものである。
【0111】
本発明の製造方法により製造された多層クラッド材10が構成材料の一部に使用されて製作された半導体モジュール70の一例を
図8に示す。この半導体モジュール70は、
図5に示す構成からなる絶縁基板60のニッケル層(ニッケル板)1の上面に半導体素子71が接合され、前記絶縁基板60のセラミック層61の下面に放熱部材72が接合されてなる。前記半導体素子71は、絶縁基板60のニッケル層1に、はんだ付けにより接合されている。
【0112】
前記半導体素子71としては、特に限定されるものではないが、例えば、IGBTチップ、MOSFETチップ、サイリスタチップ、ダイオードチップ等が挙げられる。前記放熱部材72としては、特に限定されるものではないが、例えば、ヒートシンク、冷却器等が挙げられる。
【0113】
前記絶縁基板60は、半導体素子71の動作に伴って半導体素子71から発生する熱を放熱部材72に伝達するためのものであり、熱的には伝導体であるが、電気的には絶縁体として機能する。
【実施例】
【0114】
次に、本発明の具体的実施例について説明するが、本発明はこれら実施例のものに特に限定されるものではない。
【0115】
<実施例1>
厚さ60μmのニッケル板1と厚さ40μmのチタン板2のそれぞれの接合予定面をワイヤーブラシで研磨した後、ニッケル板1とチタン板2を重ね合わせて圧下率50%で冷間クラッド圧延(圧延ロールの温度:25℃)することにより、ニッケル板1とチタン板2が積層されてなる厚さ50μm、幅200mmの積層板20を得た(圧延工程)。次いで、積層板20に対し600℃で拡散熱処理を施した。
【0116】
図3に示す装置40を用いて1×10
-3Paに設定された真空槽49内において、積層板20のチタン板2の表面(接合予定面)および厚さ85μm、幅200mmのアルミニウム板3の表面(接合予定面)にプラズマを照射することによってこれらの表面をプラズマエッチング処理した(表面活性化処理工程)。
【0117】
続いて、
図3に示すように、1×10
-3Paに設定された真空槽49内において、積層板20のチタン板2の表面(エッチング処理面)とアルミニウム板3の表面(エッチング処理面)とが当接するように積層板20とアルミニウム板3を重ね合わせてこれら両板を25℃(室温)の一対の圧接ロール44、44間で冷間圧接することによって、厚さ130μm、幅200mmの多層クラッド材10を得た(冷間圧接工程)。
【0118】
得られた多層クラッド材10は、
図1に示すように、厚さ30μmのニッケル板1/厚さ20μmのチタン板2/厚さ80μmのアルミニウム板3がこの順に積層一体化された3層積層構成である。従って、前記冷間圧接工程における圧下率は、
100×{(50+85)−130}/(50+85)=3.7
上記計算式より3.7%である。
【0119】
<実施例2>
厚さ60μmのニッケル板1と厚さ40μmのチタン板2のそれぞれの接合予定面をワイヤーブラシで研磨した後、ニッケル板1とチタン板2を重ね合わせて圧下率50%で冷間クラッド圧延(圧延ロールの温度:25℃)することにより、ニッケル板1とチタン板2が積層されてなる厚さ50μm、幅200mmの積層板20を得た(圧延工程)。次いで、積層板20に対し600℃で拡散熱処理を施した。
【0120】
図3に示す装置40を用いて1×10
-3Paに設定された真空槽49内において、積層板20のチタン板2の表面(接合予定面)および厚さ610μm、幅200mmのアルミニウム板3の表面(接合予定面)にプラズマを照射することによってこれらの表面をプラズマエッチング処理した(表面活性化処理工程)。
【0121】
続いて、
図3に示すように、1×10
-3Paに設定された真空槽49内において、積層板20のチタン板2の表面(エッチング処理面)とアルミニウム板3の表面(エッチング処理面)とが当接するように積層板20とアルミニウム板3を重ね合わせてこれら両板を25℃(室温)の一対の圧接ロール44、44間で冷間圧接することによって、厚さ650μm、幅200mmの多層クラッド材10を得た(冷間圧接工程)。
【0122】
得られた多層クラッド材10は、
図1に示すように、厚さ30μmのニッケル板1/厚さ20μmのチタン板2/厚さ600μmのアルミニウム板3がこの順に積層一体化された3層積層構成である。従って、前記冷間圧接工程における圧下率は、
100×{(50+610)−650}/(50+610)=1.5
上記計算式より1.5%である。
【0123】
<実施例3>
厚さ60μmのニッケル板1と厚さ40μmのチタン板2のそれぞれの接合予定面をワイヤーブラシで研磨した後、ニッケル板1とチタン板2を重ね合わせて圧下率50%で冷間クラッド圧延(圧延ロールの温度:25℃)することにより、ニッケル板1とチタン板2が積層されてなる厚さ50μm、幅200mmの第1積層板21を得た(第1圧延工程)。次いで、第1積層板21に対し600℃で拡散熱処理を施した。
【0124】
厚さ180μmのアルミニウム板3と厚さ50μmのアルミニウムろう材板(Si含有率が10質量%、Al含有率が90質量%のAl−Si合金板)4のそれぞれの接合予定面をワイヤーブラシで研磨した後、アルミニウム板3とアルミニウムろう材板4を重ね合わせて圧下率54%で冷間クラッド圧延(圧延ロールの温度:25℃)することにより、アルミニウム板3とアルミニウムろう材板4が積層されてなる厚さ105μm、幅200mmの第2積層板22を得た(第2圧延工程)。
【0125】
図4に示す装置40を用いて1×10
-3Paに設定された真空槽49内において、第1積層板21のチタン板2の表面(接合予定面)および第2積層板22のアルミニウム板3の表面(接合予定面)にプラズマを照射することによってこれらの表面をプラズマエッチング処理した(表面活性化処理工程)。
【0126】
続いて、
図4に示すように、1×10
-3Paに設定された真空槽49内において、第1積層板21のチタン板2の表面(エッチング処理面)と第2積層板22のアルミニウム板3の表面(エッチング処理面)とが当接するように第1積層板21と第2積層板22を重ね合わせてこれら両板を25℃(室温)の一対の圧接ロール44、44間で冷間圧接することによって、厚さ150μm、幅200mmの多層クラッド材10を得た(冷間圧接工程)。
【0127】
得られた多層クラッド材10は、
図2に示すように、厚さ30μmのニッケル板1/厚さ20μmのチタン板2/厚さ80μmのアルミニウム板3/厚さ20μmのアルミニウムろう材板4がこの順に積層一体化された4層積層構成である。従って、前記冷間圧接工程における圧下率は、
100×{(50+105)−150}/(50+105)=3.2
上記計算式より3.2%である。
【0128】
<実施例4>
厚さ60μmのニッケル板1と厚さ40μmのチタン板2のそれぞれの接合予定面をワイヤーブラシで研磨した後、ニッケル板1とチタン板2を重ね合わせて圧下率50%で冷間クラッド圧延(圧延ロールの温度:25℃)することにより、ニッケル板1とチタン板2が積層されてなる厚さ50μm、幅200mmの第1積層板21を得た(第1圧延工程)。次いで、第1積層板21に対し600℃で拡散熱処理を施した。
【0129】
厚さ1400μmのアルミニウム板3と厚さ50μmのアルミニウムろう材板(Si含有率が10質量%、Al含有率が90質量%のAl−Si合金板)4のそれぞれの接合予定面をワイヤーブラシで研磨した後、アルミニウム板3とアルミニウムろう材板4を重ね合わせて圧下率57%で冷間クラッド圧延(圧延ロールの温度:25℃)することにより、アルミニウム板3とアルミニウムろう材板4が積層されてなる厚さ630μm、幅200mmの第2積層板22を得た(第2圧延工程)。
【0130】
図4に示す装置40を用いて1×10
-3Paに設定された真空槽49内において、第1積層板21のチタン板2の表面(接合予定面)および第2積層板22のアルミニウム板3の表面(接合予定面)にプラズマを照射することによってこれらの表面をプラズマエッチング処理した(表面活性化処理工程)。
【0131】
続いて、
図4に示すように、1×10
-3Paに設定された真空槽49内において、第1積層板21のチタン板2の表面(エッチング処理面)と第2積層板22のアルミニウム板3の表面(エッチング処理面)とが当接するように第1積層板21と第2積層板22を重ね合わせてこれら両板を25℃(室温)の一対の圧接ロール44、44間で冷間圧接することによって、厚さ670μm、幅200mmの多層クラッド材10を得た(冷間圧接工程)。
【0132】
得られた多層クラッド材10は、
図2に示すように、厚さ30μmのニッケル板1/厚さ20μmのチタン板2/厚さ600μmのアルミニウム板3/厚さ20μmのアルミニウムろう材板4がこの順に積層一体化された4層積層構成である。従って、前記冷間圧接工程における圧下率は、
100×{(50+630)−670}/(50+630)=1.5
上記計算式より1.5%である。
【0133】
<比較例1>
厚さ120μmのニッケル板と厚さ80μmのチタン板のそれぞれの接合予定面をワイヤーブラシで研磨した後、ニッケル板とチタン板を重ね合わせて圧下率50%で冷間クラッド圧延(圧延ロールの温度:25℃)することにより、ニッケル板とチタン板が積層されてなる厚さ100μm、幅200mmの積層板を得た(第1圧延工程)。次いで、積層板に対し600℃で拡散熱処理を施した。
【0134】
次いで、前記積層板のチタン板の表面(接合予定面)および厚さ160μm、幅200mmのアルミニウム板の表面(接合予定面)のそれぞれの接合予定面をワイヤーブラシで研磨した後、積層板とアルミニウム板を重ね合わせて圧下率50%で冷間クラッド圧延(圧延ロールの温度:25℃)することにより、3層積層構成の多層クラッド材10を得た(第2圧延工程)。
【0135】
次に、接合界面の接合強度を向上させるために、300℃で10分間の拡散熱処理を行ったところ、幅200mmの幅広であるために、積層板に反り、うねりが発生したために巻き取りロールに巻き取ることが困難であった(実生産できない)。
【0136】
<比較例2>
厚さ120μmのニッケル板と厚さ80μmのチタン板のそれぞれの接合予定面をワイヤーブラシで研磨した後、ニッケル板とチタン板を重ね合わせて圧下率50%で冷間クラッド圧延(圧延ロールの温度:25℃)することにより、ニッケル板とチタン板が積層されてなる厚さ100μm、幅30mmの積層板を得た(第1圧延工程)。次いで、積層板に対し600℃で拡散熱処理を施した。
【0137】
次いで、前記積層板(幅30mm)のチタン板の表面(接合予定面)および厚さ600μm、幅30mmのアルミニウム板の表面(接合予定面)のそれぞれの接合予定面をワイヤーブラシで研磨した後、積層板とアルミニウム板を重ね合わせて圧下率50%で冷間クラッド圧延(圧延ロールの温度:25℃)することにより、3層積層構成の多層クラッド材10を得た(第2圧延工程)。
【0138】
得られた多層クラッド材の断面を電子顕微鏡で観察したところ、チタン板(チタン層)が破断していた。
【0139】
<比較例3>
厚さ60μmのニッケル板と厚さ40μmのチタン板のそれぞれの接合予定面をワイヤーブラシで研磨した後、ニッケル板とチタン板を重ね合わせて圧下率50%で冷間クラッド圧延(圧延ロールの温度:25℃)することにより、ニッケル板とチタン板が積層されてなる厚さ50μm、幅200mmの積層板を得た(第1圧延工程)。次いで、積層板に対し600℃で拡散熱処理を施した。
【0140】
次いで、前記積層板のチタン板の表面(接合予定面)および厚さ133μm、幅200mmのアルミニウム板の表面(接合予定面)のそれぞれの接合予定面をワイヤーブラシで研磨した後、積層板とアルミニウム板を重ね合わせて圧下率2%で冷間クラッド圧延(圧延ロールの温度:25℃)することにより(第2圧延工程)、多層クラッド材の製造を試みたが、積層板とアルミニウム板は接合しなかった。
【0141】
<比較例4>
冷間圧接工程における圧下率が0.05%になるように設定した以外は、実施例1と同様にして、多層クラッド材の製造を試みたが、積層板とアルミニウム板を良好に接合することができなかった。
【0142】
<比較例5>
冷間圧接工程における圧下率が25%になるように設定した以外は、実施例1と同様にして、厚さ130μm、幅200mmの多層クラッド材を得た。
【0143】
上記のようにして得られた各多層クラッド材について下記の評価法に基づいて評価を行った。これらの評価結果を表1に示す。
【0144】
<多層クラッド材における反り、うねり発生の有無の評価法>
得られた多層クラッド材の表面(Ni層表面)における反り、うねりの有無をレーザ式形状測定器を用いて調べた。
【0145】
<多層クラッド材の構成層の破断の有無の評価法>
得られた多層クラッド材の断面を電子顕微鏡で観察して、各構成層の破断の有無を調べた。
【0146】
【表1】
【0147】
表1から明らかなように、本発明の製造方法で製造された実施例1〜4の多層クラッド材は、冷間圧接工程における積層対象の一方の金属板の厚さが他方の金属板の厚さに対し大きく異なる(2.0倍を超える又は0.5倍未満)にもかかわらず、薄い方の金属板の厚さも精度高く制御されていた上に、反り、うねりの発生が無く、構成層の破断も無かった。更に、実施例1〜4の多層クラッド材は、幅200mmで幅広であるにもかかわらず、反り、うねりの発生はなかった。
【0148】
これに対し、比較例1では、接合界面の接合強度を向上させるための拡散熱処理により、反り、うねりが発生したために、巻き取りが困難であり、実生産はできない。また、比較例2では、第2圧延工程において、重ね合わされる板同士の厚さの相違が顕著である(一方が100μm、他方が600μm)ために、薄いチタン層(チタン板)が破断していた。比較例3では、第2圧延工程において圧下率2%で冷間クラッド圧延を行うので、積層板とアルミニウム板を接合することができなかった。
【0149】
また、比較例4では、冷間圧接工程での圧下率が本発明で規定する範囲より小さいので、積層板とアルミニウム板を良好に接合することができなかった。また、比較例5では、冷間圧接工程での圧下率が本発明で規定する範囲より大きいので、積層板とアルミニウム板の界面で割れが生じていた。