(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
圧縮空気を生成する圧縮機と、前記圧縮機で生成された圧縮空気と燃料とを燃焼させて燃焼ガスを生成する燃焼器と、前記燃焼器で生成された燃焼ガスにより回転軸を中心に回転駆動するタービンとを備えたガスタービンであって、
前記タービンが、静翼列と、
前記回転軸に取り付けられて、前記静翼列の燃焼ガス流れ方向上流側又は下流側に配置された動翼列と、
前記静翼列の前記回転軸側に配置されたダイアフラムと、
前記ダイアフラムに対向し、前記回転軸に連結しているスペーサと、
前記ダイアフラム内周面と前記スペーサ外周面との間に設けられた、流体流れを抑制或いは低減するシール構造とを備え、
前記ダイアフラムの内周面を通過して、前記動翼用の冷媒を供給する冷媒供給孔を備え、
前記スペーサの外周面側に、前記冷媒供給孔からの冷媒を受け取り前記回転軸内部に導く冷媒導入孔を備え、
前記冷媒供給孔の冷媒出口および前記冷媒導入孔の冷媒入口の半径位置が、前記シール構造のリーク部位の半径位置よりも前記回転軸中心側にある
ことを特徴とするガスタービン。
【発明を実施するための形態】
【0010】
1軸式ガスタービンと異なり、2軸式ガスタービンは低圧タービン軸と高圧タービン軸が分断されている。そのため、2軸式ガスタービンの低圧タービン軸側の翼に、第1段動翼や第2段動翼など高圧タービン側への冷却空気供給手法をそのまま適用するのは難しい。例えば、圧縮機吐出部からの冷却空気通路として、ロータ中心に設けた冷却空気通路をタービン後段動翼部へ直結させた通路を設けるのは困難である。
【0011】
また、1軸式ガスタービンには容易に適用可能な技術も、2軸式ガスタービンに採用するのが難しい場合も多い。例えば特許文献1に記載の発明では、1軸式ガスタービンにおいて第3段静翼部から第3段動翼部へと至る冷却空気通路を形成している。しかし2軸式ガスタービンでは、第3段静翼内周側に軸が存在しない。そのため、第3段動翼無冷却ガスタービンと比べ、軸の延長などの新たな設計変更や施工が必要となり、タービンの設計や製造に必要な時間や労力、コストが増大する。このような設計変更を行う際には通常、他の多くの箇所の設計変更も必要となる。従来機の運転実績で積み上げてきた信頼性を引き継げないと言うことになれば、信頼性担保のための試験等にもさらに多くの時間を要することとなる。この影響はガスタービンのような大型の発電設備では特に甚大である。
【0012】
そこで、以下、本発明の実施例として、2軸式ガスタービンの構造例について図面を用いて説明することとする。なお、以下に示す各実施例の冷媒供給構造は1軸式ガスタービンにも適用可能な構成であり、2軸式ガスタービンに限定された構造ではない点には留意されたい。
【実施例1】
【0013】
まず、本発明の実施例である2軸式ガスタービンの構成を
図7を用いて説明する。
【0014】
図7は2軸式ガスタービンの概略構成図である。2軸式ガスタービンは、主に、ガスジェネレータとパワータービンから構成される。ガスジェネレータは、主に、圧縮機1、燃焼器2及び高圧タービン3から構成される。パワータービンは低圧タービン4から構成される。圧縮機1は、大気空気11を圧縮して圧縮空気12を生成し、生成された圧縮空気12を燃焼器2へ送る。燃焼器2は、生成された圧縮空気12と燃料13とを混合燃焼させて燃焼ガス14を生成し、高圧タービン3へ送る。
【0015】
高圧タービン3は、燃焼器2から送られた、高いエネルギーを持つ燃焼ガス14により、高圧タービン軸6に回転力を生じさせる。低圧タービン4は、高圧タービン3より送られる燃焼ガス15のエネルギーを回収することで、低圧タービン軸4に回転力を生じさせる。低圧タービン軸の回転力によって、低圧タービン4に接続される負荷5を駆動させる。燃焼ガス15は、エネルギーを低圧タービン4で回収された後、排気16として排出される。
【0016】
図7に示したように、高圧タービン3を含むガスジェネレータと低圧タービン4を含むパワータービンは互いに独立した回転軸である。すなわち、高圧タービン軸と低圧タービン軸は互いに独立に回転する。
【0017】
図8に2軸式ガスタービンの部分断面図を示す。
図7と同一符号の要素は同一要素である。
図8には第1段静翼31n、第1段動翼31b、第2段静翼32n、第2段動翼32b、第3段静翼43n、第3段動翼43b、第4段静翼44n、第4段動翼44b、仕切り板41が示されている。
【0018】
圧縮機1と、高圧側中間回転軸6と、外周側に第1段動翼31bが組み付けられた第1段ホイール31wと、高圧側スペーサ32sと、外周側に第2段動翼32bが組み付けられた第2段ホイール32wとがスタッキングボルトにより連結され、高圧タービン軸を構成している。燃焼ガス14は高圧タービン3において仕事をし、高圧タービン軸に回転動力を発生させる。発生した動力は圧縮機1の駆動動力として消費される。
【0019】
同様に、外周側に第3段動翼43bが組み付けられた第3段ホイール43wと、低圧側スペーサ44sと、外周側に第4段動翼44bが組み付けられた第4段ホイール44wとがスタッキングボルトにより連結され、低圧タービン軸を構成している。燃焼ガス15は低圧タービン4において仕事をし、低圧タービン軸に回転動力を発生させる。発生した動力により負荷5が駆動される。
【0020】
第3段静翼43nは、ガスタービンケーシングに取り付けられ、第2段動翼32bと第3段動翼43bとの間に設置されている。高圧タービン3と低圧タービン4を分断する仕切り部材である仕切り板41は、高圧タービン3と低圧タービン4との間に配置され、第3段静翼ダイアフラム43dを介して第3段静翼43nに固定されている。
【0021】
第4段静翼44nは、タービンケーシングに取り付けられ、第3段動翼43bと第4段動翼44bとの間に設置されている。第4段静翼44nの内周側には、第4段静翼ダイアフラム44dが取り付けられている。
【0022】
図1及び
図2を用いて第3段動翼43bへの冷却空気供給構造を説明する。
図1は本実施例に係るガスタービンの第3段動翼43b、第4段静翼44n及び第4段動翼44bを含む部分断面図である。
図2は
図1中の断面A−Aを矢印の方向に見た図である。
図1、
図2、
図7及び
図8において、同符号の要素は同一要素である。
【0023】
第4段静翼44nの外周部にはキャビティが形成されており、ここへ圧縮機1の中間段から延びた抽気配管が接続されている。圧縮機1から一部の空気が冷却空気として抽気され、抽気配管を介してキャビティに導かれる。
【0024】
第4段静翼44nは中空構造となっており、前記外周キャビティと連通している。また、第4段静翼44nの内周側には第4段静翼ダイアフラム44dが取り付けられておりキャビティが形成されている。すなわち、外周キャビティに導かれた冷却空気は、第4段静翼44n内部を通過して内周キャビティへ44iへと導かれる。なお、冷却空気は、第4段静翼44n内部を通過する際に対流冷却を行う。
【0025】
第4段静翼ダイアフラム44dには、前側オリフィス44pと後側オリフィス44qが形成されている。内周キャビティ44iに導かれた冷却空気の一部が、前側オリフィス44pを通って、第3段動翼43bと第4段静翼44nの軸方向間隙であるホイールスペース44eに噴出される。噴出された冷却空気は主流ガスがホイールスペース44eに侵入してくるのを防止する。また、内周キャビティ44iに導かれた冷却空気の残りが、後側オリフィス44qを通って、第4段静翼44nと第4段動翼44bの軸方向間隙であるホイールスペース44fに噴出される。噴出された冷却空気は主流ガスがホイールスペース44fに侵入してくるのを防止する。
【0026】
第3段動翼43bが植え込まれている第3段ホイール43wと、第4段動翼44bが植え込まれている第4段ホイール44wとの間には、第3第4段間スペーサ44sが組み込まれている。このスペーサ44sの外周面と第4段静翼ダイアフラム44dの内周面は対向しており、両面間にはハニカムシール44hが形成されている。前述したホイールスペース44eとホイールスペース44fの静圧を比べると、ホイールスペース44eの方が高い。ハニカムシール44hは、静圧差によって生じるホイールスペース44eからホイールスペース44fへのガスの流れ、すなわちリークを抑制或いは低減している。
【0027】
次に静翼を経由した動翼への冷媒供給構造について説明する。本実施例では、冷媒供給管81Aが前述した第4段静翼44nの外周部キャビティに接続している。この冷媒供給管81Aは、第4段静翼44nと第4段静翼ダイアフラム44dの内部を通ってダイアフラムの内周面を通過し、第4段静翼ダイアフラム44dの内周面から第3第4段間スペーサ44sの外周面に向かって伸びた構造となっている。冷媒供給管81Aの噴出口は、噴出した冷媒の速度が、半径内側成分とスペーサ44sの回転方向と同じ向きの周方向成分とを有するように形成されている。このような構成により、冷媒供給管81Aから噴出した冷媒が冷媒導入孔82に流入し易くなるため、リークの低減が可能である。
【0028】
一方、スペーサ44sには周方向全周に亘って溝が形成されており、その溝の底面からスペーサ44sの内周面に向かって周方向断続的にスペーサ冷媒導入孔82が形成されている。導入孔の大きさは,冷媒供給管の噴出口と同程度である。本実施例では、スペーサ冷媒導入孔82は、冷媒がこの冷媒導入孔82を通過する際の相対速度の周方向成分の向きが、スペーサ44sの回転方向と逆向きとなるように形成されている。このような構成によっても、冷媒が冷媒導入孔82に流入し易くなるため、リークの低減が可能である。
【0029】
第4段静翼44nの外周側キャビティに導かれた冷却空気は、冷媒供給管81Aを流れ噴出される。噴出した冷媒(冷却空気)は、半径内側成分とスペーサ44sの回転方向と同じ向きの周方向成分とを有しており、スペーサ冷媒導入孔82と周方向位相が一致しない時には、一旦、溝に沿って周方向に流れて、冷媒導入孔82に流入し、第3第4ホイールキャビティ44cに導かれる。この場合、冷媒から流路を見ると、冷媒供給管81Aから噴出し溝に流れ込む際に急拡大し、スペーサ冷媒導入孔82に流入する際に急縮小する。
【0030】
一方、スペーサ冷媒導入孔82と周方向位相が一致した時には、直接的に冷媒導入孔82に流入し、第3第4ホイールキャビティ44cに導かれる。この場合、冷媒から流路を見ると、冷媒供給管81Aから噴出した後、すぐにスペーサ冷媒導入孔82に流入するので、位相が一致しない時に見られた流路の急拡大及び急縮小がない。
【0031】
第3第4ホイールキャビティ44cに導かれた冷媒は、第3段動翼43bの底面に形成されたスリット43jを経由し、動翼内部に形成された冷媒流路43kに導かれ、動翼43bを冷却する。
【0032】
このように本実施例においては、冷媒供給管81Aの冷媒噴出口および冷媒導入孔82の冷媒入口の半径位置は、スペーサ44s外周面に形成されたハニカムシール44hのリーク部位にあたる歯先端の半径位置よりも回転軸中心側に設定される。ホイールスペース44eからホイールスペース44fへのリーク流れが通過するハニカムシール44hの歯先端と、冷媒供給管81Aの冷媒噴出口の半径位置を異ならしめた本実施例の構成によれば、冷媒噴出口から噴出された冷却媒体がリーク部位である歯先端の外周側へ直接的に流れるのを防止することができるため、動翼用冷媒の供給経路途中の減少を抑制或いは低減することが可能となる。
【0033】
さらに本実施例の構成では、冷媒供給管81Aがスペーサ44sの周方向に延びる溝に挿入されると共に、冷媒導入孔82が溝に形成されているため、冷媒がリーク部位に直接的に流入することをより顕著に防止できる。
【0034】
ガスタービン設計においては、供給経路途中の減少率を考慮して圧縮機から抽出する冷媒流量が決定される。減少率が小さくなれば圧縮機から抽出する量を減じることが可能となる。したがって、冷媒の減少を抑制する本実施例の構成によれば、ガスタービン出力と熱効率を向上させることができる。
【0035】
また、本実施例では、冷媒供給管81Aの噴出口が溝の底面に対向するよう配置されると共に、冷媒導入孔82の冷媒入口が溝の底面に形成されている。これにより、冷媒供給管81Aの噴出口とスペーサ冷媒導入孔82の位相が一致した時には、冷媒から見て流路の急拡大と急縮小がないために、第3第4ホイールキャビティ44cまで到達するまでの圧力損失を低減することができる。
【0036】
ガスタービン設計においては、供給経路途中の圧力損失を考慮して圧縮機から抽出する冷媒圧力が決定される。圧力損失が小さくなれば圧縮機から抽出する冷媒の圧力を減じることが可能となる。したがって、本実施例の構成によれば、冷媒供給管81Aの噴出口とスペーサ冷媒導入孔82の位相が定期的に一致することで平均的な圧力損失が低減するため、ガスタービン出力と熱効率を向上させることができる。
【実施例2】
【0037】
次に
図3及び
図4を用いて第2実施例について説明する。
図3は本実施例に係るガスタービンの第3段動翼43b、第4段静翼44n及び第4段動翼44bを含む部分断面図である。
図4は
図3中の断面A−Aを矢印の方向に見た図である。
図1から
図4、
図7及び
図8において、同符号の要素は同一要素である。以下、実施例1と同様の構造についての説明は省略し、異なる構造について重点的に説明する。
【0038】
本実施例では、第4段静翼ダイアフラム44dの内周面側には、冷媒噴出孔81Bが形成されている。この冷媒供給管81Bは、第4段静翼ダイアフラム44dの内周面から第3第4段間スペーサ44sの外周面に向かって伸びた構造となっている。冷媒供給管81Bの噴出口は、噴出した冷媒の速度が、半径内側成分とスペーサ44sの回転方向と同じ向きの周方向成分とを有するように形成されている。
【0039】
一方、スペーサ44sには周方向全周に亘って溝が形成されており、その溝の底面からスペーサ44sの内周面に向かって周方向断続的にスペーサ冷媒導入孔82が形成されている。導入孔の大きさは,冷媒供給管の噴出口と同程度である。本実施例では、スペーサ冷媒導入孔82は、冷媒がこの冷媒導入孔82を通過する際の相対速度の周方向成分の向きが、スペーサ44sの回転方向と逆向きとなるように形成されている。
【0040】
第4段静翼ダイアフラムキャビティ44iに導かれた冷却空気は、冷媒供給管81Bを流れ噴出される。噴出した冷媒は、半径内側成分とスペーサ44sの回転方向と同じ向きの周方向成分とを有しており、スペーサ冷媒導入孔82と周方向位相が一致しない時には、一旦、溝に沿って周方向に流れて、冷媒導入孔82に流入し、第3第4ホイールキャビティ44cに導かれる。この場合、冷媒から流路を見ると、冷媒供給管81Bから噴出し溝に流れ込む際に急拡大し、スペーサ冷媒導入孔82に流入する際に急縮小する。
【0041】
一方、スペーサ冷媒導入孔82と周方向位相が一致した時には、直接的に冷媒導入孔82に流入し、第3第4ホイールキャビティ44cに導かれる。この場合、冷媒から流路を見ると、冷媒供給管81Bから噴出した後、すぐにスペーサ冷媒導入孔82を流れるので、位相が一致しない場合に見られた流路の急拡大及び急縮小がない。
【0042】
第3第4ホイールキャビティ44cに導かれた冷媒は、第3段動翼43bの底面に形成されたスリット43jを経由し、動翼内部に形成された冷媒流路43kに導かれ、動翼43bを冷却する。
【0043】
このように本実施例においては、冷媒供給管81Bの冷媒噴出口および冷媒導入孔82の冷媒入口の半径位置は、スペーサ44s外周面に形成されたハニカムシール44hのリーク部位にあたる歯先端の半径位置よりも回転軸中心側に設定される。ホイールスペース44eからホイールスペース44fへのリーク流れが通過するハニカムシール44hの歯先端と、冷媒供給管81Bの冷媒噴出口の半径位置を異ならしめることによって、冷媒噴出口から噴出された冷却媒体がリーク部位である歯先端の外周側へ直接的に流れるのを防止することができ、動翼用冷媒の供給経路途中の減少を抑制或いは低減することが可能となる。
【0044】
さらに、本実施例ではより具体的な構成として、冷媒供給管81Bがスペーサ44sの周方向に延びる溝に挿入されると共に、冷媒導入孔82が溝に形成されているため、冷媒がリーク部位に直接的に流入することをより顕著に防止できる。なお、静翼ダイアフラムとロータにより形成される環状空間を流れる冷媒の流速あるいは圧力を一様にするために、環状空間にせり出す冷媒供給管を設ける部位は可能な限り小さい方がよい。また、
図4に示すように、せり出す部位を半径方向に対して傾斜させることにより、冷媒の流れが乱れるのを低減することができ、流速あるいは圧力が一様となりやすい。
【0045】
ガスタービン設計においては、供給経路途中の減少率を考慮して圧縮機から抽出する冷媒流量が決定される。減少率が小さくなれば圧縮機から抽出する量を減じることが可能となる。したがって、冷媒の減少を抑制する本実施例の構成によれば、ガスタービン出力と熱効率を向上させることができる。
【0046】
また、本実施例では、冷媒供給管81Bの噴出口が溝の底面に対向するよう配置されると共に、冷媒導入孔82の冷媒入口が溝の底面に形成されている。これにより、冷媒供給管81Bの噴出口とスペーサ冷媒導入孔82の位相が一致した時には、冷媒から見て流路の急拡大と急縮小がないために、第3第4ホイールキャビティ44cまで到達するまでの圧力損失を低減することができる。
【0047】
ガスタービン設計においては、供給経路途中の圧力損失を考慮して圧縮機から抽出する冷媒圧力が決定される。圧力損失が小さくなれば圧縮機から抽出する冷媒の圧力を減じることが可能となる。したがって、本実施例の構成によれば、冷媒供給管81Bの噴出口とスペーサ冷媒導入孔82の位相が定期的に一致することで平均的な圧力損失が低減するため、ガスタービン出力と熱効率を向上させることができる。
【0048】
なお、本実施例では冷媒噴出孔81Bを第4段静翼ダイアフラム44dと一体構造としたが、冷媒噴出孔81Bを別部品とし、第4段静翼ダイアフラム44dに組み付ける構造としてもよい。
【実施例3】
【0049】
次に
図5及び
図6を用いて第3実施例について説明する。
図5は本実施例に係るガスタービンの第3段動翼43b、第4段静翼44n及び第4段動翼44bを含む部分断面図である。
図6は
図5中の断面A−Aを矢印の方向に見た図である。
図1から
図8において、同符号の要素は同一要素である。実施例1及び実施例2と同様の構造についての説明は省略し、異なる構造について重点的に説明する。
【0050】
本実施例では、実施例2と同様に第4段静翼ダイアフラム44dの内周面側に、冷媒噴出孔81Bが形成されている。この冷媒供給管81Bは、第4段静翼ダイアフラム44dの内周面から第3第4段間スペーサ44sの外周面に向かって伸びた構造となっている。冷媒供給管81Bの噴出口は、噴出した冷媒の速度が、半径内側成分とスペーサ44sの回転方向と同じ向きの周方向成分とを有するように形成されている。
【0051】
一方、スペーサ44sには周方向全周に亘って溝が形成されており、その溝の底面からスペーサ44sの内周面に向かって周方向断続的にスペーサ冷媒導入孔82が形成されている。導入孔の大きさは,冷媒供給管の噴出口と同程度である。また、溝の軸方向側面にはラビリンスシール83が形成されている。本実施例では、スペーサ冷媒導入孔82は、冷媒がこの冷媒導入孔82を通過する際の相対速度の周方向成分の向きが、スペーサ44sの回転方向と逆向きとなるように形成されている。
【0052】
第4段静翼ダイアフラムキャビティ44iに導かれた冷却空気は、冷媒供給管81Bを流れ噴出される。噴出した冷媒は、半径内側成分とスペーサ44sの回転方向と同じ向きの周方向成分とを有しており、スペーサ冷媒導入孔82と周方向位相が一致しない時には、一旦、溝に沿って周方向に流れて、冷媒導入孔82に流入し、第3第4ホイールキャビティ44cに導かれる。この場合、冷媒から流路を見ると、冷媒供給管81Bから噴出し溝に流れ込む際に急拡大し、スペーサ冷媒導入孔82に流入する際に急縮小する。
【0053】
一方、スペーサ冷媒導入孔82と周方向位相が一致した時には、直接的に冷媒導入孔82に流入し、第3第4ホイールキャビティ44cに導かれる。この場合、冷媒から流路を見ると、冷媒供給管81Bから噴出した後、すぐにスペーサ冷媒導入孔82を流れるので、位相が一致しない場合に見られた流路の急拡大及び急縮小がない。
【0054】
第3第4ホイールキャビティ44cに導かれた冷媒は、第3段動翼43bの底面に形成されたスリット43jを経由し、動翼内部に形成された冷媒流路43kに導かれ、動翼43bを冷却する。
【0055】
このように本実施例においては、冷媒供給管81Bの冷媒噴出口および冷媒導入孔82の冷媒入口の半径位置は、スペーサ44s外周面に形成されたハニカムシール44hのリーク部位にあたる歯先端の半径位置よりも回転軸中心側に設定される。ホイールスペース44eからホイールスペース44fへのリーク流れが通過するハニカムシール44hの歯先端と、冷媒供給管81Bの冷媒噴出口の半径位置を異ならしめることによって、冷媒噴出口から噴出された冷却媒体がリーク部位である歯先端の外周側へ直接的に流れるのを防止することができ、動翼用冷媒の供給経路途中の減少を抑制或いは低減することが可能となる。
【0056】
さらに、本実施例では、溝の側面に設けられたラビリンスシール83によっても、冷媒噴出口から噴出された冷却媒体がハニカムシール44hのリーク部位である歯先端の外周側へ直接的に流れるのを防止することができ、動翼用冷媒の供給経路途中の減少をより顕著に抑制或いは低減することが可能となる。
【0057】
ガスタービン設計においては、供給経路途中の減少率を考慮して圧縮機から抽出する冷媒流量が決定される。減少率が小さくなれば圧縮機から抽出する量を減じることが可能となる。したがって、ラビリンスシール83の作用によって冷媒の減少をより一層抑制する本実施例の構成によれば、ガスタービン出力と熱効率をより一層向上させることができる。
【0058】
また、本実施例では、冷媒供給管81Bの噴出口が溝の底面に対向するよう配置されると共に、冷媒導入孔82の冷媒入口が溝の底面に形成されている。これにより、冷媒供給管81Bの噴出口とスペーサ冷媒導入孔82の位相が一致した時には、冷媒から見て流路の急拡大と急縮小がないために、第3第4ホイールキャビティ44cまで到達するまでの圧力損失を低減することができる。
【0059】
ガスタービン設計においては、供給経路途中の圧力損失を考慮して圧縮機から抽出する冷媒圧力が決定される。圧力損失が小さくなれば圧縮機から抽出する冷媒の圧力を減じることが可能となる。したがって、本実施例の構成によれば、冷媒供給管81Bの噴出口とスペーサ冷媒導入孔82の位相が定期的に一致することで平均的な圧力損失が低減するため、ガスタービン出力と熱効率を向上させることができる。