(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6100637
(24)【登録日】2017年3月3日
(45)【発行日】2017年3月22日
(54)【発明の名称】信頼度判断装置
(51)【国際特許分類】
G08G 1/16 20060101AFI20170313BHJP
B60R 21/00 20060101ALI20170313BHJP
G01B 11/00 20060101ALI20170313BHJP
【FI】
G08G1/16 C
B60R21/00 624F
B60R21/00 624D
G01B11/00 Z
【請求項の数】7
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-143814(P2013-143814)
(22)【出願日】2013年7月9日
(65)【公開番号】特開2015-18333(P2015-18333A)
(43)【公開日】2015年1月29日
【審査請求日】2016年3月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004695
【氏名又は名称】株式会社日本自動車部品総合研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】高須賀 直一
(72)【発明者】
【氏名】磯貝 俊樹
(72)【発明者】
【氏名】松岡 久永
【審査官】
岩田 玲彦
(56)【参考文献】
【文献】
特開2011−210165(JP,A)
【文献】
特開2002−162468(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/16
B60R 21/00
G01B 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両(201)に備えられて、路面(203)、及び前記車両の一部であるリファレンス部(205)に電磁波を照射する発光部(3、5)と、
前記電磁波が前記路面で反射して形成された路面反射波、及び前記電磁波が前記リファレンス部で反射して形成されたリファレンス反射波を受光する受光部(9、11)と、
前記路面反射波に基き前記路面上の区画線を検知する区画線検知部(15)と、
前記リファレンス反射波の強度におけるばらつきを算出するばらつき算出部(15)と、
前記ばらつきに基き前記区画線検知部の検知結果に対する信頼度を判断する信頼度判断部(15)と、
を備えることを特徴とする信頼度判断装置(1)。
【請求項2】
前記リファレンス反射波の強度を算出する強度算出部(15)を備え、
前記信頼度判断部は、前記ばらつき及び前記強度に基き前記信頼度を判断することを特徴とする請求項1に記載の信頼度判断装置。
【請求項3】
前記発光部は下向きに前記電磁波を照射することを特徴とする請求項1又は2に記載の信頼度判断装置。
【請求項4】
前記リファレンス反射波の強度は、前記電磁波が雨滴で反射して形成された雨滴反射波の強度より低いことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の信頼度判断装置。
【請求項5】
前記リファレンス部は、前記車両の車体の一部、又は前記車体とは別体の部品であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の信頼度判断装置。
【請求項6】
前記電磁波はレーザ光であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の信頼度判断装置。
【請求項7】
前記路面は前記車両の側方の路面であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の信頼度判断装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は信頼度判断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の安全性の向上や自動運転のためには、車両が車線の中のどの位置を走行しているのかを知る必要がある。車線の中での車両の位置を知る方法として、車両の側方の路面をレーザ光で走査し、路面からの反射波をフォトダイオード等の受光素子で受光し、その反射波の強度分布に基き、区画線を検知する方法が提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−210165号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
天候が雨や霧の場合、雨滴や霧でレーザ光が反射し、その反射光が受光素子で検出される。雨滴や霧は、路面よりも受光素子に近いため、雨滴や霧で反射した反射波の強度に比べ、路面からの反射波の強度は相対的に小さくなる。その結果、路面からの反射波に基き検知した区画線に対する信頼度が低下する。
【0005】
本発明は以上の点に鑑みなされたものであり、区画線の検知結果に対する信頼度を判断できる信頼度判断装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の信頼度判断装置は、車両に備えられて、路面、及び車両の一部であるリファレンス部に電磁波を照射する発光部と、電磁波が路面で反射して形成された路面反射波、及び電磁波がリファレンス部で反射して形成されたリファレンス反射波を受光する受光部と、路面反射波に基き路面上の区画線を検知する区画線検知部と、リファレンス反射波の強度におけるばらつきを算出するばらつき算出部と、ばらつきに基き区画線検知部の検知結果に対する信頼度を判断する信頼度判断部とを備えることを特徴とする。
【0007】
本発明の信頼度判断装置は、リファレンス反射波の強度におけるばらつきに基き、区画線の検知結果に対する信頼度を判断することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】信頼度判断装置1の構成を表すブロック図である。
【
図2】LD3、ミラー5、受光レンズ9、及びPD11の構成を表す斜視図である。
【
図3】信頼度判断装置1、車両201、路面203、リファレンス部205、及び白線207の位置関係を表す斜視図である。
【
図4】信頼度判断装置1が実行する白線検知処理を表すフローチャートである。
【
図5】路面のうち、白線が存在する部分をレーザ光で走査したときにおけるミラー5のスキャン角度と、路面反射波の強度との相関関係を表すグラフである。
【
図6】信頼度判断装置1が実行する信頼度判断処理を表すフローチャートである。
【
図7】リファレンス反射波の反射強度の平均値、及び分散と、天候及び信頼度との関係を表す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の実施形態を図面に基き説明する。
1.信頼度判断装置1の構成
信頼度判断装置1の構成を、
図1〜
図3に基き説明する。信頼度判断装置1は、車両に搭載される車載装置である。信頼度判断装置1は、レーザダイオード(LD)3と、ミラー5と、駆動部7と、受光レンズ9と、フォトダイオード(PD)11とインターフェース(I/F)13と、制御部15とを備える。
【0010】
LD3は、電力の供給を受けて所定波長のレーザ光を出力する。ミラー5は複数のミラー面を備えるポリゴンミラーであって、LD3が出力するレーザ光を反射することによって、レーザ光を所定の方向に照射することができる。また、ミラー5は、駆動部7により回転駆動されつつ、LD3が出力するレーザ光を反射することにより、レーザ光の照射方向を走査することができる。
【0011】
後述する白線検知処理のとき、
図3に示すように、レーザ光200の照射は、車両201の側方の路面203に向けて行われ、路面の幅方向に沿って走査される。路面203上に白線(区画線の一実施形態)207がある場合、その白線207は、レーザ光200の走査範囲に含まれる。
【0012】
また、後述する信頼度判断処理のとき、レーザ光は、
図3に示すように、車両201における車体の一部(以下、リファレンス部205とする)に照射される。
レーザ光が路面203で反射して形成された反射波(以下、路面反射波とする)と、レーザ光がリファレンス部205で反射して形成された反射波(以下、リファレンス反射波とする)とは、受光レンズ9で集光され、PD11で受光される。PD11の出力により、路面反射波及びリファレンス反射波の反射強度が計測できる。同じ条件(レーザ光の出力が同じであり、反射の位置からPD11までの距離が同じ条件)で比べたとき、リファレンス反射波の強度は、レーザ光が雨滴で反射して形成された反射波(雨滴反射波)の強度より低い。リファレンス反射波の強度は、リファレンス部205の色、材質等により調整できる。
【0013】
図3に示すように、LD3、ミラー5、駆動部7、受光レンズ9、及びPD11は一体のユニットとされており、車両201の側面に取り付けられている。また、ミラー5で反射されたレーザ光の照射方向は、路面203を照射するとき、及びリファレンス部205を照射するときのいずれにおいても、下方向(斜め下方向も含む)である。
【0014】
I/F13は、後述する白線検知の結果と、信頼度判断の結果とを、車両操作ECU301、及び報知部303に出力する。
なお、車両操作ECU301は、白線検知の結果に基き、車両201の車速やステアリングを自動で調節して自動運転を実行するECUである。また、報知部303は、車両201が車線の白線に近づき過ぎているような場合に、車両201のドライバにその旨をディスプレイの画像やスピーカの音声で報知する。
【0015】
制御部15はCPU、ROM、RAM等を備える周知のコンピュータであり、後述する処理を実行する。
なお、LD3及びミラー5は発光部の一実施形態であり、受光レンズ9及びPD11は受光部の一実施形態であり、制御部15は区画線検知部、ばらつき算出部、信頼度判断部、及び強度算出部の一実施形態である。また、レーザ光は電磁波の一実施形態である。
【0016】
2.信頼度判断装置1が実行する処理
(2−1)白線検知処理
信頼度判断装置1が所定時間ごとに繰り返し実行する白線検知処理を、
図3〜
図5に基き説明する。
図4のステップ1では、LD3からパルス状のレーザ光を出力し、ミラー5で反射させ、車両201の側方の路面203に向けて照射する。このとき、ミラー5をスキャン(回動)させておき、照射したレーザ光200を、路面203の幅方向に沿って走査する(
図3参照)。
【0017】
ステップ2では、受光レンズ9及びPD11により、路面反射波を受光する。
ステップ3では、前記ステップ1でレーザ光を照射したときのミラー5のスキャン角度(すなわち、路面203の幅方向におけるレーザ光の照射位置)と、前記ステップ2で受光した路面反射波との相関関係(
図5参照)を取得する。そして、反射強度が特異的に高い部分を、路面203上の白線として検知する。この白線の検知は、路面203のうち、白線における反射強度が、その他の部分の反射強度より高いことに基く。
【0018】
なお、白線の検知結果は、車両操作ECU301、及び報知部303に出力する。車両操作ECU301は、白線の検知結果を自動運転に使用する。また、報知部303は、車両201が検知した白線に近づき過ぎているような場合に、車両201のドライバにその旨をディスプレイの画像やスピーカの音声で報知する。
(2−2)信頼度判断処理
信頼度判断装置1が所定時間ごとに繰り返し実行する信頼度判断処理を、
図6、
図7に基き説明する。
【0019】
ステップ11では、LD3からパルス状のレーザ光を出力し、ミラー5で反射させ、リファレンス部205に向けてレーザ光を照射する。
ステップ12では、受光レンズ9及びPD11により、前記ステップ11で照射したレーザ光に対するリファレンス反射波を受光する。
【0020】
ステップ13では、n回分のデータを取得したか否かを判断する。なお、前記ステップ12の処理を1回実行したときに受光するリファレンス反射波のデータが1回分のデータである。n回分のデータを取得した場合(すなわち、前記ステップ12の処理をn回実行した場合)はステップ14に進み、未だn回分のデータを取得していない場合はステップ11に戻る。
【0021】
ステップ14では、n回分のデータにおける反射強度の平均値を算出する。
ステップ15では、n回分のデータにおける反射強度の分散(ばらつきの一実施形態)を算出する。
【0022】
ステップ16では、前記ステップ14で算出した反射強度の平均値と、前記ステップ15で算出した反射強度の分散とを、
図7に示すマップに当てはめ、その時点での天候と、白線の検知結果に対する信頼度とを判断する。
図7に示すマップは、制御部15に予め記憶されている。
図7に示すマップにおいて、X、Yは予め設定された閾値である。
【0023】
反射強度の平均値がX未満であり、反射強度の分散がY未満である場合は、雨滴や霧による反射波が弱い場合であるから、天候を「晴れ」と判断する。また、この場合は、雨滴や霧による反射波の影響を受け難いので、白線の検知結果に対する信頼度を大と判断する。
【0024】
また、反射強度の分散がY以上である場合は、不均一に存在する雨滴からの反射波が存在する場合であるから、天候を「雨」と判断する。また、この場合は、雨滴による反射波の影響を受け易いので、白線の検知結果に対する信頼度を小と判断する。
【0025】
また、反射強度の平均値がX以上であり、反射強度の分散がY未満である場合は、雨滴は存在しないが、均一に存在する霧による反射波が強い場合であるから、天候を「霧」と判断する。また、この場合は、霧による反射波の影響を受け難いので、白線の検知結果に対する信頼度を小と判断する。
【0026】
なお、信頼度の判断結果は、車両操作ECU301、及び報知部303に出力する。車両操作ECU301は、信頼度が大の場合、自動運転の開始及び継続が可能である。一方、信頼度が小の場合、ドライバの操作があっても自動運転を開始しない。また、自動運転の実行中に信頼度が小である旨の入力があった場合、マニュアル運転又は運転支援状態に移行する。
【0027】
報知部303は、信頼度が小である旨の入力があった場合は、ディスプレイの画像やスピーカの音声による報知を実行する。
3.信頼度判断装置1が奏する効果
(1)信頼度判断装置1は、白線の検知結果に対する信頼度を判断することができる。その信頼度を用いて、車両操作ECU301及び報知部303は適切な処理を実行することができる。
【0028】
(2)信頼度判断装置1は、リファレンス反射波の強度における分散だけでなく、リファレンス反射波の強度における平均値も用いて白線の検知結果に対する信頼度を判断する。その結果、白線の検知結果に対する信頼度を一層正確に判断することができる。
【0029】
(3)信頼度判断装置1のLD3及びミラー5は、下向きにレーザ光を照射する。そのため、雨滴の影響を受け難く、白線の検知結果に対する信頼度を一層正確に判断することができる。
【0030】
(4)同じ条件で比べたとき、リファレンス反射波の強度は、レーザ光が雨滴で反射して形成された雨滴反射波の強度より低い。そのことにより、雨滴や霧が存在する場合のリファレンス反射波の強度と、雨滴や霧が存在しない場合のリファレンス反射波の強度との差が大きくなるので、白線の検知結果に対する信頼度を一層正確に判断することができる。
【0031】
(5)信頼度判断装置1は、車両201の車体の一部をリファレンス部205としている。そのため、別部品のリファレンス部205を車両201に別途取り付ける必要が無い。
【0032】
4.その他の実施形態
(1)信頼度判断装置1は、レーザ光の代わりに、その他の電磁波(例えば、赤外線、可視光、レーダー波等)を用いてもよい。
【0033】
(2)リファレンス部は、車両201の車体とは別体の部品であってもよい。例えば、車両201の車体色が黒色であり、車体がレーザ光を反射し難い場合でも、別体のリファレンス部(例えば白色等、レーザ光を反射し易い色のリファレンス部)を取り付ければ、リファレンス反射波の強度を十分な大きさにすることができる。
【0034】
(3)信頼度判断装置1は、リファレンス反射波の強度における分散だけを用いて、白線の検知結果に対する信頼度を判断してもよい。
(4)リファレンス反射波の強度におけるばらつきを表すパラメータとして、分散以外の統計値(例えば、標準偏差、最大値と最小との差等)を用いてもよい。
【0035】
(5)信頼度判断装置1は、車両の側方に代えて、あるいは、車両の側方に加えて、車両の前方や後方の白線を検出するものであってもよい。
(6)信頼度判断装置1は、白線以外の区画線を検知するものであってもよい。
【0036】
(7)信頼度判断装置1の判断結果を、車両が備えるその他の検知手段(例えば前方監視用レーザレーダ、ミリ波センサ等)の検知結果における信頼度の判断に用いることができる。
【0037】
尚、本発明は前記実施の形態になんら限定されるものではなく、本発明を逸脱しない範囲において種々の態様で実施しうることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0038】
1…信頼度判断装置、3…LD、5…ミラー、7…駆動部、9…受光レンズ、11…PD、13…I/F、15…制御部、200…レーザ光、201…車両、203…路面、205…リファレンス部、207…白線、301…車両操作ECU、303…報知部