(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献1,2では、前記漏水防止に用いる一対の半円筒形部材が硬質な物体であって、前記配管の外径側に固定されるために、当該配管の前記漏水防止対処部位で中心軸線方向または径方向の動きを許容できなくなる。
【0008】
このような事情に鑑み、本発明は、液体流通用の配管の中心軸線方向の途中に設置される可撓継手の外径側に緊急止水カバーを設置した止水構造において、緊急止水カバーを比較的簡易に設置可能にするとともに、緊急止水カバーを設置した状態において配管の中心軸線方向ならびに径方向の動きを許容可能にすることを目的としている。
【0009】
ところで、本発明の参考例として、例えば特開平9−144964号公報(参考例1)および特開平9−137694号公報(参考例2)を挙げる。
【0010】
参考例1には、地中もしくは水中に埋め込まれる管路、トンネルなどの管体の継ぎ目に、内外二重のゴムベローズを取り付けることが記載されている。詳しくは、前記内径側のゴムベローズの両端部分は、前記管路の大径部分の内周面に押え板を介してボルト留めされている。前記外径側のゴムベローズの両端部分は、前記管路の大径部分の外周面にボルト留めされている。これら内外2つのゴムベローズの外径側は、前記押え板の外周面に順次接着される不織布、鋼板、筒状のゴムベルトによって覆い隠されている。
【0011】
また、参考例2には、地下管路の継ぎ目に、内外2つの止水部材を取り付けることが記載されている。詳しくは、内径側の2次止水部材の両端部分は、前管部と後管部との端面に取り付けられている主桁に押え金具を介してボルト留めされている。外径側の1次止水部材の両端部分は、前管部と後管部とにそれぞれ取り付けられるカラーの内周面にボルト留めされている。そして、前記2つの止水部材の外径側は、前記2つのカラーの中心軸線方向での対向間に取り付けられるスキンプレートによって覆い隠されている。
【0012】
上記参考例1,2は、配管内部に水などの液体が流通するようになっていない。つまり、この参考例1,2に記載しているゴムベローズや止水部材は、配管の外部から内部への水分浸入を防止することを狙って、配管の設置時に取り付けられるものであって、上記特許文献1,2ならびに本発明に記載されているように配管の内部を流通する冷却水などの液体が外側へ漏れたときの対処として取り付けられるようなものではない。その関係より、前記ゴムベローズや止水部材は、前記配管の内径側から取り付けるようになっていて、それらの取り付け部分は外径側に露呈しないようになっている。
【0013】
このように、上記参考例1,2は、上記特許文献1,2ならびに本発明とは前提となる構成が相違していて、また、前記ゴムベローズや止水部材は本発明の緊急止水カバーと構成的に類似しているものの、使用用途としては全く異質なものである。このようなことから、この参考例1,2については、本発明の先行技術としてではなく、単なる参考例として提示しているのである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、液体流通用の配管の中心軸線方向の途中に設置される可撓継手の外径側に緊急止水カバーを設置した止水構造であって、前記可撓継手は、その幅方向両端が径方向外向きに突出する環状部を有し、この両方の環状部は前記配管の分離端それぞれに設けられる径方向外向きの環状部に個別に中心軸線方向から重ね合わされてボルトおよびナットにより締め付け固定されており、前記緊急止水カバーは、前記可撓継手の外径側に離隔して覆い被される弾性シール環体と、この弾性シール環体の中心軸線方向の一端側および他端側が個別に取り付けられる一対の支持環体および一対の押さえ環体とを含み、前記支持環体は、前記重ね合わせ部分にさらに重ね合わされてボルトおよびナットにより締め付け固定される環状板部と、当該環状板部の外周に設けられかつ外周面に前記弾性シール環体の幅方向一端側または他端側が引っ掛けられる円筒部とを含み、前記押さえ環体は、前記円筒部の外周面に外径側から重ね合わされて締結されることによって前記弾性シール環体の幅方向一端側または他端側を挟むものとされている、ことを特徴としている。
【0015】
この構成では、緊急止水カバーを弾性シール環体と一対の支持環体と一対の押さえ環体とを組み合わせた構成にしているから、前記配管内を流通する流体が前記可撓継手を通過して外部へ漏れる可能性が高いときなどに、それを防止するために当該可撓継手の外径側に緊急止水カバーを覆い被せるように設置した場合において、前記配管の中心軸線方向ならびに径方向の動きを前記弾性シール環体が許容するようになる。
【0016】
そして、前記緊急止水カバーを設置するにあたっては、前記配管に前記可撓継手を取り付けるためのボルトおよびナットを取り外してから、一対の支持環体の各環状板部を前記配管と前記可撓継手とにおける重ね合わせ部分に新たな長いボルトおよびナットを用いて取り付ける作業と、この一対の支持環体の各円筒部の外周に前記弾性シール環体の幅方向一端側および他端側を引っ掛けて一対の押さえ環体で挟んで締結する作業とを行うだけでよくなる。このようなことから、前記緊急止水カバーの設置対象となる配管に特別な変更を加えることなく、前記緊急止水カバーを比較的簡易に設置できるようになるなど、当該設置に要するコストの上昇を抑制することが可能になる。
【0017】
好ましくは、前記支持環体、前記押さえ環体ならびに前記弾性シール環体は、円周方向で分離され、前記支持環体の分離端それぞれには、円周方向で重ね合わされて締結される連結片が設けられる、構成とすることができる。
【0018】
ここでは、前記緊急止水カバーの構成要素(前記支持環体、前記押さえ環体ならびに前記弾性シール環体)を前記可撓継手の外径側から設置する作業を比較的簡易に行えるようにしている。これにより、前記設置に要するコストの上昇を抑制することが可能になる。
【0019】
好ましくは、前記弾性シール環体の幅方向一端側および他端側には、その幅方向中間部分よりも厚肉とされる厚肉部が設けられ、前記支持環体の円筒部には、前記弾性シール環体の厚肉部の引っ掛かりとなる鍔状片が径方向外向きに突出するように設けられ、前記押さえ環体は、前記支持環体の円筒部の外径側に重ね合わされることによって前記鍔状片とで前記弾性シール環体の幅方向中間部分において前記幅方向一端側および他端側の厚肉部寄りを挟むものとされる、構成とすることができる。
【0020】
ここでは、前記支持環体に対する前記弾性シール環体の取り付け形態を特定している。これにより、前記緊急止水カバーの設置に要するコストの上昇を抑制することが可能になる。
【0021】
好ましくは、前記配管の分離端それぞれに設けられる径方向外向きの両環状部の間には、それらの中心軸線方向ならびに径方向の動き量を制限するための動き規制機構が設けられ、この動き規制機構は、長手方向両端にストッパが設けられるタイバーと、前記配管の前記両環状部の外側に付設されかつ前記タイバーが中心軸線方向ならびに径方向に変位可能な状態で挿入される貫通孔を有する取付片とを含み、前記支持環体の環状板部は、前記配管の前記両環状部の外側面(可撓継手の存在しない側の面)に重ね合され、この環状板部には、前記タイバーの長手方向両端および前記取付片との干渉を回避するための切り欠きが設けられるとともに、当該切り欠きの存在場所には前記タイバーの長手方向両端および前記取付片を覆い隠すためのボックス部が取り付けられる、構成とすることができる。
【0022】
この構成では、前記配管の分離端それぞれが中心軸線方向ならびに径方向に動くときの変位量を制限する動き規制機構を備えているから、前記可撓継手および前記弾性シール環体の中心軸線方向ならびに径方向の動きを制限することができる。これにより、前記可撓継手および前記弾性シール環体に過剰な負荷が作用することを抑制または防止することが可能になる。しかも、この動き規制機構を備える場合、それとの干渉を回避するような状態で緊急止水カバーを設置するように支持環体の取り付け場所などを特定するとともに、ボックス部を追加するように特定している。
【0023】
好ましくは、前記支持環体の環状板部は、前記可撓継手の両環状部の内側面(当該両環状部が対向する側の面)に重ね合される、構成とすることができる。
【0024】
ここでは、前記動き規制機構を備えていない場合に適した緊急止水カバーの支持環体の取り付け場所を特定している。
【発明の効果】
【0025】
本発明は、液体流通用の配管の中心軸線方向の途中に設置される可撓継手の外径側に緊急止水カバーを設置した止水構造において、緊急止水カバーを比較的簡易に設置することが可能になるとともに、緊急止水カバーを設置した状態において配管の中心軸線方向ならびに径方向の動きを許容することが可能になる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明を実施するための最良の実施形態について添付図面を参照して詳細に説明する。
【0028】
図1から
図12に、本発明の一実施形態を示している。
図1に示すように、冷却設備1とポンプ室2との間には冷却水などの液体が流通する配管3が設置されており、この配管3の中心軸線方向の複数ヶ所には、可撓継手4やバタフライバルブなどの弁装置5が設置されている。なお、6は配管ピットである。
【0029】
なお、配管3における可撓継手4の設置場所は中心軸線方向で分離されており、この分離端については、冷却設備1側に向いている側(
図1の左側)を「第1分離端」と言い、また、ポンプ室2側に向いている側(
図1の右側)を「第2分離端」と言うことにする。この第1、第2分離端には、例えば
図2に示すように、径方向外向きに突出する環状部3a,3bが設けられている。
【0030】
このような配管3において可撓継手4の設置形態について、
図8および
図9を参照して詳細に説明する。
図8には、
図1のポンプ室2の外側に設置される可撓継手4を示している。
【0031】
可撓継手4は、円筒形でかつその中心軸線方向の中間部分が径方向外向きに膨らむように湾曲されたアーチ形状、言い換えると前記中間部分の上半分の断面が「Ω」形状または半円形状になっている。この中間部分によって可撓継手4そのものの中心軸線方向ならびに径方向の動きを許容するようになっている。
【0032】
この可撓継手4は、例えば一枚の長尺シートとされ、それを円筒形に丸めて、その幅方向(中心軸線方向)の両端を接合した構成になっている。この可撓継手4は、詳細に図示していないが、例えば適宜の強化繊維を編み込んだ補強布とゴムなどの弾性体とを積層したような構造になっている。
【0033】
この可撓継手4の中心軸線方向の両端には、径方向外向きに突出する第1、第2環状部4a,4bが設けられている。この第1環状部4aが配管3における第1分離端の環状部3aに、また、第2環状部4bが配管3における第2分離端の環状部3bにそれぞれ中心軸線方向に重ね合わされてボルト7Aおよびナット7Bにより締め付け固定されることにより結合されるようになっている。
【0034】
可撓継手4の第1、第2環状部4a,4bとナット7Bとの間には、例えば金属などの硬質な材料からなるサイドプレート8が介在されている。このサイドプレート8は、ナット7Bの締め付け時に、可撓継手4の第1、第2環状部4a,4bが弾性的に捩れ変形しないようにするために用いられている。
【0035】
この実施形態では、配管3における第1分離端の環状部3aと第2分離端の環状部3bとの間に、動き規制機構10を設置している。
【0036】
動き規制機構10は、配管3における第1分離端の環状部3aと第2分離端の環状部3bとの中心軸線方向ならびに径方向に動くときの変位量を制限することにより、可撓継手4の中心軸線方向ならびに径方向の動きを制限するものである。つまり、この動き規制機構10は、可撓継手4に過剰な負荷が作用することを抑制または防止するために設けられている。
【0037】
具体的に、動き規制機構10は、配管3の円周数ヶ所(この実施形態では4ヶ所)に設けられており、単一のタイバー11、第1外側ストッパ12A、第1内側ストッパ12B、第2外側ストッパ13A、第2内側ストッパ13B、第1取付片14(
図8の左側)、第2取付片15(
図8の右側)、第1緩衝環体16(
図8の左側)、第2緩衝環体17(
図8の右側)などを備えている。
【0038】
タイバー11は、丸棒形状とされていて、その中心軸線方向の両端の所定長さ範囲には、雄ねじが形成されている。
【0039】
第1、第2外側ストッパ12A,13Aは、タイバー11において第1、第2取付片14,15よりも外側の雄ねじ(符号省略)に2つのナットを隣り合わせに螺合されるようになっており、そのダブルナット効果によってタイバー11に対する取り付け位置が不動とされている。
【0040】
第1、第2内側ストッパ12B,13Bは、タイバー11において第1、第2取付片14,15よりも内側の雄ねじ(符号省略)に2つのナットを隣り合わせに螺合されるようになっており、そのダブルナット効果によってタイバー11に対する取り付け位置が不動とされている。
【0041】
第1、第2取付片14,15は、配管3における第1分離端の環状部3aおよび第2分離端の環状部3bの外側面(可撓継手4の存在していない側の面)にボルト7Aおよびナット7Bを利用して留められている。第1、第2取付片14,15には、タイバー11の外径寸法よりも適宜大きく設定された貫通孔14a,15aが設けられている(
図2、
図8参照)。第1、第2取付片14,15の貫通孔14a,15aには、タイバー11が中心軸線方向ならびに径方向に変位可能な状態で挿入される。
【0042】
第1、第2緩衝環体16,17は、配管3における第1分離端の環状部3aまたは前記第2分離端の環状部3bに衝突したときに衝撃を減衰するために設けられる。
【0043】
第1、第2緩衝環体16,17は、共に、ゴムなどの弾性リング16a,17aと、その中心軸線方向の両側に配置される金属製ワッシャ16b,16c,17b,17cとを組み合わせた構成とされている。第1、第2緩衝環体16,17は、タイバー11において第1、第2外側ストッパ12A,13Aよりも中心軸線方向の内側の位置に組み込まれている。第1、第2緩衝環体16,17と第1、第2内側ストッパ12B,13Bとの離隔寸法を調整することによって、配管3における第1分離端の環状部3aと第2分離端の環状部3bとの中心軸線方向の動き量を適宜に変更できるようになっている。
【0044】
ところで、仮に、前記したような可撓継手4が過負荷または経年劣化によって破損すると、配管3の内部を流通する冷却水が外側へ漏れるおそれがある。そのような場合、この実施形態では、配管3において可撓継手4の存在する領域の外径側に緊急止水カバー20を設置することにより、前記漏水を防止するように対処することができる。
【0045】
この緊急止水カバー20の詳細について、
図2から
図7を参照して説明する。
【0046】
緊急止水カバー20は、第1支持環体21(
図2の左側)、第2支持環体22(
図2の右側)、単一の弾性シール環体23、第1押さえ環体24(
図2の左側)、第2押さえ環体25(
図2の右側)などを備えている。
【0047】
第1、第2支持環体21,22は、環状板部21a,22aの内側面の外径側に円筒部21b,22bを一体に設け、円筒部21b,22bの突出先端側に鍔状片21c,22cを径方向外向きに突出するように一体に設けたような形状になっている。
【0048】
第1、第2支持環体21,22は、
図4および
図5に示すように、円周方向で複数(この実施形態では4つ)に分離されており、それぞれの分離体の円周方向両端が連結されることにより円筒形に形成されるようになっている。
【0049】
具体的に、第1、第2支持環体21,22の各環状板部21a,22aの円周方向の分離部分には、それぞれ第1、第2連結片21d,22d,21e,22eが直交するように一体に設けられている。この複数に分離された第1、第2支持環体21,22を連結するには、各環状板部21a,22aの第1、第2連結片21d,22d,21e,22eをそれぞれ円周方向に重ね合わせて、当該各重ね合わせ部分をボルト26およびナット27により締め付け固定するようにしている。第1、第2連結片21d,22d,21e,22eの重ね合わせ部分には、シールパッキン28が介装されている。
【0050】
また、各環状板部21a,22aの外側面には、動き規制機構10の両端部分を覆い隠すためのボックス部21f,22fが設けられている。この各環状板部21a,22aにおいてボックス部21f,22fに対応する領域には切り欠き21h,22hが設けられている(
図2、
図7参照)。さらに、各環状板部21a,22aの内側面の数ヶ所(図では3ヶ所)には、補強リブ21g,22gが設けられている(
図2、
図4参照)。
【0051】
なお、前記第1、第2支持環体21,22を構成する環状板部21a,22a、円筒部21b,22bならびに鍔状片21c,22cは、例えば金属(例えば炭素鋼またはステンレス鋼など)により形成されており、環状板部21a,22aに対する円筒部21b,22bの取り付けおよび円筒部21b,22bに対する鍔状片21c,22cの取り付けは、例えば溶接による接合とされている。
【0052】
また、ボックス部21f,22fも、例えば金属(例えば炭素鋼またはステンレス鋼など)により形成されており、環状板部21a,22aに対するボックス部21f,22fの取り付けは、例えば溶接による接合とされている。
【0053】
弾性シール環体23は、例えば一枚の帯状のシートとされ、それを円筒形に丸めて、その長手方向の両端を連結した構成になっている。この円筒形とされた弾性シール環体23の幅方向(中心軸線方向)の両端には、第1、第2支持環体21,22への取り付け用の第1、第2厚肉部23a,23bが設けられている。この第1、第2厚肉部23a,23bの内周面には、シール用突条部23cが設けられている(
図12参照)。
【0054】
なお、弾性シール環体23の幅方向両端の第1、第2厚肉部23a,23bに設けてあるシール用突条部23cは、第1、第2支持環体21,22の各円筒部21b,22bと第1、第2押さえ環体24,25とで挟まれることによって弾性変形して潰されるようになるので、弾性シール環体23の中心軸線方向両端の取り付け部分における密封性が確保されるようになっている。なお、シール用突条部23cは、前記のように潰されるので、
図2では見えていない。
【0055】
この弾性シール環体23は、詳細に図示していないが、適宜の補強布(例えばポリアミド、ポリエステルなどの強化繊維)を芯材として適宜のゴム材(シリコンゴム、ニトリルブタジエンラバー、クロロプレンゴム、エチレンプロピレンジエンゴムなど)などを被覆した構成とされている。この弾性シール環体23の中心軸線方向の両端の連結形態としては、長手方向両端を重ねて、当該重ねた部分をゴム系接着剤などにより接着してから、当該接着部分の両面から補強用パッチシートを接着するようにしている。
【0056】
第1、第2押さえ環体24,25は、
図4および
図5に示すように、円周方向で複数(この実施形態では4つ)に分離されており、それぞれの分離体が第1、第2支持環体21,22の各円筒部21b,22bに取り付けられることにより円筒形に形成されるようになっている。
【0057】
第1、第2押さえ環体24,25は、長尺の帯状プレートとされ、部分円筒形に湾曲されている。第1、第2押さえ環体24,25は、例えば金属(例えば炭素鋼またはステンレス鋼など)により形成されている。
【0058】
第1、第2押さえ環体24,25は、第1、第2支持環体21,22の各円筒部21b,22bの外径側に弾性シール環体23の幅方向両端の第1、第2厚肉部23a,23bを介して重ね合わされていて、締結部材29(スタッドボルトとナット)により締め付け固定される。
【0059】
第1、第2押さえ環体24,25の内周面において幅方向外側には、径方向内向きに張り出すような厚肉部(符号省略)が設けられている。この厚肉部には、前記締結部材29のスタッドボルトが固定される。
【0060】
このような第1、第2押さえ環体24,25の場合には、第1、第2支持環体21,22の各円筒部21b,22bの外径側に取り付けると、第1、第2押さえ環体24,25の前記厚肉部(符号省略)の内周面が各円筒部21b,22bの外周面に当接することになって、第1、第2押さえ環体24,25の薄肉部分と第1、第2支持環体21,22の各鍔状片21c,22cとで弾性シール環体23の幅方向中間部分において第1、第2厚肉部23a,23b寄りを挟むようになっている。つまり、第1、第2押さえ環体24,25の前記厚肉部(符号省略)の内周面が、弾性シール環体23の幅方向両端の第1、第2厚肉部23a,23bを弾性変形させ過ぎないような働きをする。
【0061】
このように緊急止水カバー20の第1、第2支持環体21,22を配管3における第1分離端の環状部3aおよび第2分離端の環状部3bのそれぞれ外側面(可撓継手4が存在していない側の面)に設置するような形態を「外側設置形態」と言う。
【0062】
次に、
図8に示す状態の配管3に緊急止水カバー20を外側設置する方法について、
図10から
図12を参照して詳細に説明する。
【0063】
まず、第1段階として、
図10(a)に示すように、
図8に示す状態の配管3における第1分離端の環状部3aと可撓継手4の第1環状部4aとを締め付け固定するためのボルト7Aおよびナット7Bを取り外す。
【0064】
第2段階としては、
図10(b)に示すように、配管3における第1分離端の環状部3aの外側面(可撓継手4が存在していない側の面)に例えばゴム製のシールパッキン31を接着などにより仮留めする。
【0065】
第3段階としては、
図11(a),(b)に示すように、配管3における第1分離端の環状部3aと可撓継手4の第1環状部4aとの重ね合わせ部分のうち第1分離端の環状部3aの前記外側面に第1支持環体21の環状板部21aをさらに重ね合わせてから、前記3つの重ね合わせ部分全体を前記取り外したボルト7Aよりも長い新たなボルト7Cおよびナット7Dを用いて締め付け固定する。これにより、第1分離端の環状部3aと第1支持環体21の環状板部21aとの間に前記シールパッキン31が挟まれることになる。
【0066】
図示していないが、配管3における第1分離端の環状部3aに第1支持環体21の分離体すべてを新たな長いボルト7Cおよびナット7Dを用いて順次取り付けるようにする。なお、ボルト7Cには、そのねじ溝から流体が漏洩することを防止するために、シールワッシャ9を新たに組み付ける。このシールワッシャ9は、例えば金属製のワッシャの外表面にゴムなどの弾性体を被覆したような構成になっている。
【0067】
その後、第1支持環体21の分離体すべての第1、第2連結片21d,22d,21e,22eの重ね合わせ部分をボルト26およびナット27で連結する。前記重ね合わせ部分にはシールパッキン28を挟むようにする(
図6参照)。
【0068】
ところで、前記した第1支持環体21の分離体を配管3における第1分離端の環状部3aに取り付ける際には、
図2の下半分および
図7に示しているように環状板部21aにおいてボックス部21f,22fに対応する領域に切り欠き21h,22hを設けているので、この切り欠き21h,22hを動き規制機構10の両端部分に軸方向から通すことによって、この動き規制機構10の両端部分をボックス部21f,22fで覆い隠すようにできる。そのため、緊急止水カバー20を設置する際に、動き規制機構10を取り外す必要がない。
【0069】
第4段階として、前記第2段階および第3段階の手順と同様にして、
図12(a)に示すように、配管3における第2分離端の環状部3bにシールパッキン31を挟むようにして第2支持環体22の環状板部22aを重ね合わせてから、この重ね合わせ部分をボルト7Cおよびナット7Dにより締め付け固定する。ボルト7Aには前記同様にシールワッシャ9を組み付ける。
【0070】
第5段階として、
図12(b)に示すように、第1、第2支持環体21,22の各円筒部21b,22bの外径側に弾性シール環体23の幅方向一端および他端の第1、第2厚肉部23a,23bを載せて、その外径側からさらに第1、第2押さえ環体24,25を載せてから、締結部材29で締め付け固定する。このとき、弾性シール環体23の幅方向中間部分は、
図2に示すように撓むように緩く張られている。これにより、
図2の上半分に示すような状態になって、緊急止水カバー20の設置が完了する。
【0071】
なお、この実施形態では、緊急止水カバー20における第2支持環体22の外径が第1支持環体21の外径よりも大きく設定されている。このようにしている理由を説明する。
【0072】
このような緊急止水カバー20を設置した後において、緊急止水カバー20の内径側に隠蔽されている可撓継手4の様子を点検することがある。その点検時には、緊急止水カバー20の弾性シール環体23を捲る必要があるので、その捲り作業を比較的簡単に行えるようにするためである。
【0073】
このように捲る形態としては、まず、弾性シール環体23の中心軸線方向の両端のうち一端側つまり外径の大きい第2支持環体22の方から取り外し、この弾性シール環体23の一端側を捲って前記残り他端側の上に載せるようにする。このようにすれば、弾性シール環体23の取り外した側を捲って外径の小さい第1支持環体21の上に載せる作業を比較的簡単に行うことが可能になると言える。但し、第1、第2支持環体21,22の外径は、同じに設定するようにしてもよい。
【0074】
また、この実施形態では、第1、第2支持環体21,22、弾性シール環体23、第1、第2押さえ環体24,25を円周方向で分離したものにしているので、それぞれの各分離体の各連結部位を円周方向に所定角度ずつずらすように配置することが可能である。その場合には、緊急止水カバー20による密封性をさらに高めることが可能になる。
【0075】
このように、
図8に示す配管の可撓継手4に緊急止水カバー20を設置する場合には、配管3における環状部3a,3bと可撓継手4の第1、第2環状部4a,4bと第1、第2支持環体21,22の環状板部21a,22aとの3つの重ね合わせ部分の締結部分(ボルト7Aおよびナット7B)の密封対策としてシールパッキン28,31を追加するようにしているものの、緊急止水カバー20の設置前の配管3および可撓継手4に特別な変更を加えずに済むようになっている。
【0076】
以上説明したように本発明を適用した実施形態では、緊急止水カバー20の設置対象となる配管3に特別な変更を加えることなく、当該配管3の可撓継手4の外径側に緊急止水カバー20を比較的簡易に設置できるようにしているとともに、この緊急止水カバー20を設置した状態において配管3の中心軸線方向ならびに径方向の動きを許容するようにしている。
【0077】
これにより、配管3の可撓継手4からの漏水を緊急止水カバー20で防止するように対処した後は、配管3の可撓継手4の設置場所における密封性が可及的に高められることになる。しかも、配管3の可撓継手4の設置場所における中心軸線方向ならびに径方向の動きを緊急止水カバー20の弾性シール環体23が許容するようになっているので、弾性シール環体23が可撓継手4の動きを許容以上に設定することができ、過負荷がかかるときに対しても対応が可能で安全である。その結果、緊急止水カバー20が破損しにくくなるなど、緊急止水カバー20による漏水防止構造を比較的長期にわたって維持することが可能になる。
【0078】
そして、この実施形態では、緊急止水カバー20を配管3の可撓継手4の外径側に設置するにあたって、配管3に可撓継手4を取り付けるためのボルト7Aおよびナット7Bを取り外してから、新たな長いボルト7Cおよびナット7Dを用いて第1、第2支持環体21,22の各環状板部21a,22aを配管3と可撓継手4とにおける重ね合わせ部分に取り付ける作業と、第1、第2支持環体21,22の各円筒部21b,22bの外周に弾性シール環体23の一端側および他端側を引っ掛けて第1、第2押さえ環体24,25で挟んで締結部材29(スタッドボルトとナット)で締結する作業とを行うだけでよくなるから、この緊急止水カバー20の設置に要する作業を比較的簡易にすることが可能になるなど、緊急止水カバー20の設置コストの上昇を可及的に抑制することが可能になる。
【0079】
さらに、前記しているように、緊急止水カバー20の弾性シール環体23の片側を取り外して捲ることによって、その内側の点検を比較的簡易に行えるようになるとともに、弾性シール環体23の取り替えをも比較的簡易に行えるようになる。
【0080】
なお、本発明は、上記実施形態のみに限定されるものではなく、特許請求の範囲内および当該範囲と均等の範囲内で適宜に変更することが可能である。
【0081】
(1)上記実施形態では、緊急止水カバー20の設置対象となる場所に動き規制機構10を設置している場合の止水構造を例に挙げているが、本発明はこれのみに限定されるものではなく、前記動き規制機構10を設置していない場合の止水構造も本発明の実施形態として含まれる。
【0082】
例えば
図14に示すように前記動き規制機構(
図2、
図8の符号10参照)を設置していない場合の止水構造は、
図13に示すように、
図2に示す止水構造とほぼ同じになっている。つまり、この場合の緊急止水カバー20の設置形態は、
図2と同様に「外側設置形態」にすることができる。
【0083】
但し、
図13に示す止水構造では、緊急止水カバー20にボックス部21f,22f(
図2、
図7参照)を設ける必要がないので、緊急止水カバー20の製造コストを低減することが可能になる。また、
図13に示す止水構造の場合には、前記動き規制機構(
図2、
図8の符号10参照)を設置している場合の止水構造に比べると、緊急止水カバー20の外径寸法を可及的に小さくできる。
【0084】
(2)上記実施形態では、緊急止水カバー20の設置対象となる場所に動き規制機構10を設置している場合の止水構造を例に挙げているが、本発明はこれのみに限定されるものではなく、前記動き規制機構10を設置していない場合の止水構造も本発明の実施形態として含まれる。
【0085】
例えば
図14に示すように前記動き規制機構(
図2、
図8の符号10参照)を設置していない場合の止水構造としては、例えば
図15から
図18に示すように、緊急止水カバー20における第1、第2支持環体21,22を配管3における第1分離端の環状部3aおよび第2分離端の環状部3bのそれぞれ内側(可撓継手4が存在する側)に設置した形態にすることができる。この設置形態を「内側設置形態」と言う。
【0086】
具体的に、緊急止水カバー20を内側設置形態にする場合、
図2や
図13に示す外側設置形態にする場合との相違点を説明する。
【0087】
第1相違点としては、配管3における第1分離端の環状部3aおよび第2分離端の環状部3bに第1、第2支持環体21,22を取り付けるために用いるボルト7Aおよびナット7Bのうち、ナット7Bの方にシールワッシャ9を組み付けるようにしている。これにより、配管3における第1分離端の環状部3aと第1支持環体21の環状板部21aとの間、および配管3における第2分離端の環状部3bと第2支持環体22の環状板部22aとの間に
図2に示しているようなシールパッキン31を介装する必要が無くなる。そのため、この実施形態ではシールパッキン31を排除している。
【0088】
第2相違点としては、可撓継手4の第1、第2環状部4a,4bに第1、第2支持環体21,22の各環状板部21a,22aを重ね合わせるようにするから、サイドプレート8を設置する必要がなくなる。そのため、この実施形態ではサイドプレート8を排除している。
【0089】
第3相違点としては、第1、第2押さえ環体24,25に
図6および
図7に示すような厚肉部(符号省略)を設けずに、
図15に示すように第1、第2支持環体21,22の各円筒部21b,22bに径方向外向きに隆起するような厚肉部(符号省略)を設けるようにしている。
【0090】
第4相違点としては、第1、第2押さえ環体24,25の取り付けに用いる締結部材29をボルトのみにしている。
【0091】
第5相違点としては、
図15の下半分、ならびに
図18に示すように、第1、第2支持環体21,22の複数の分離体それぞれを連結する形態として、各環状板部21a,22aの分離体の円周方向両端に設けられる第1、第2連結片21d,22d,21e,22eを重ね合わせて、この重ね合わせ部分をボルト26およびナット27で連結する他、各円筒部21b,22bの分離体の円周方向両端に径方向外向きに突出するように設けられる第1、第2連結片21i,22i,21j,22jを重ね合わせて、この重ね合わせ部分をボルト26およびナット27で連結するようにしている。
【0092】
第6相違点としては、第1、第2支持環体21,22の各環状板部21a,22aにボックス部21f,22f(
図2、
図7参照)を設ける必要がないので、このボックス部21f,22fおよび切り欠き21h,22h(
図2、
図7参照)を無くしている。これにより、緊急止水カバー20の製造コストを低減することが可能になる。
【0093】
このように、
図14に示す配管の可撓継手4に緊急止水カバー20を内側設置にする場合には、配管3における環状部3a,3bと可撓継手4の第1、第2環状部4a,4bと第1、第2支持環体21,22の環状板部21a,22aとの3つの重ね合わせ部分の締結部分(ボルト7Aおよびナット7B)の密封対策としてシールワッシャ9の設置場所をナット7B側に変更するだけで済むようになっていて、緊急止水カバー20を外側設置にする場合に追加していた部品(シールパッキン31)が不要になる。これにより、緊急止水カバー20を内側設置にする場合には外側設置にする場合に比べて設備コストを低減することが可能になる。
【0094】
次に、
図14に示す状態の配管3に緊急止水カバー20を内側設置する方法について、
図19から
図21を参照して詳細に説明する。
【0095】
まず、第1段階として、
図19(a)に示すように、
図14に示す状態の配管3における第1分離端の環状部3aと可撓継手4の第1環状部4aとを締め付け固定するためのボルト7Aおよびナット7Bを一旦取り外す。
【0096】
第2段階としては、
図19(b)に示すように、配管3における第1分離端の環状部3aの内側のサイドプレート8を取り外す。
【0097】
第3段階としては、
図20(a),(b)に示すように、配管3における第1分離端の環状部3aと可撓継手4の第1環状部4aとの重ね合わせ部分のうち可撓継手4の第1環状部4aの内側面(第2環状部4bと対向する側の面)に第1支持環体21の環状板部21aをさらに重ね合わせて、前記3つの重ね合わせ部分全体を前記取り外したボルト7Aおよびナット7Bを再利用して締め付け固定する。このとき、シールワッシャ9をナット7Bと第1支持環体21の環状板部21aとの間に組み付けるようにする。
【0098】
図示していないが、配管3における第1分離端の環状部3aに第1支持環体21の分離体すべてを新たなボルト7Cおよびナット7Dを用いて順次取り付けるようにする。
【0099】
その後、第1支持環体21の分離体すべての第1、第2連結片21d,22d,21e,22eの重ね合わせ部分をボルト26およびナット27で連結する(
図18参照)。
【0100】
第4段階として、前記第2段階および第3段階の手順と同様にして、
図21(a)に示すように、配管3における第2分離端の環状部3bと可撓継手4の第2環状部4bとの重ね合わせ部分において可撓継手4の第2環状部4bの内側面(第1環状部4c側の面)に第2支持環体22の環状板部22aをさらに重ね合わせてから、これらの重ね合わせ部分をボルト7Aおよびナット7Bで締め付け固定する。このとき、シールワッシャ9をナット7Bと第2支持環体22の環状板部22aとの間に組み付けるようにする。
【0101】
第5段階として、
図21(b)に示すように、第1、第2支持環体21,22の各円筒部21b,22bの外径側に弾性シール環体23の幅方向一端および他端の第1、第2厚肉部23a,23bを載せて、その外径側からさらに第1、第2押さえ環体24,25を載せてから、締結部材29で締め付け固定する。これにより、
図15の上半分に示すような状態になって、緊急止水カバー20の設置が完了する。
【0102】
以上説明したように緊急止水カバー20を内側設置形態にする場合には、例えば
図1の配管ピット6内に示しているように可撓継手4の側方に弁装置5を軸方向に隣り合うように設置している場合であっても、緊急止水カバー20の設置が可能になる。
【0103】
その理由を説明する。前記したように可撓継手4の側方に弁装置5が設置されている場合だと、当該弁装置5の弁軸ボックス(図示省略)が配管3における第1分離端の環状部3aの外側に軸方向で隣り合うように接近して配置されるようになる。
【0104】
このような状況において、
図2に示すように緊急止水カバー20を外側設置形態にしようとすると、第1支持環体21の環状板部21aを配管3における第1分離端の環状部3aの外側に取り付けるときに、弁装置5の弁軸ボックスが邪魔になるので、緊急止水カバー20を設置することが不可能になる。しかしながら、緊急止水カバー20を内側設置形態にすれば、第1支持環体21の環状板部21aを配管3における第1分離端の環状部3aの内側に取り付けるときに、弁装置5の弁軸ボックスが邪魔にならないので、緊急止水カバー20を設置することが可能になるのである。
【0105】
(3)
図2に示す実施形態では、緊急止水カバー20の弾性シール環体23として平坦な帯状のシートを用いて製作した例を挙げているが、本発明はこれのみに限定されるものではなく、例えば
図15に示す実施形態のように、弾性シール環体23を円筒形でかつその中心軸線方向の中間部分が径方向外向きに膨らむように湾曲されたアーチ形状、言い換えると前記中間部分の上半分の断面が「Ω」形状または半円形状になったものとすることが可能である。
【0106】
(4)上記実施形態では、緊急止水カバー20の第1、第2支持環体21,22の鍔状片21c,22cを円筒部21b,22bと別体にした例を挙げているが、本発明はこれのみに限定されるものではなく、例えば鍔状片21c,22cを円筒部21b,22bと一体に形成することが可能である。