(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記関心領域が、前記プローブ側から覗めたときに2次元的に広がる空間であって、前記演算部が、前記音源探査演算を、互いに異なる2方向それぞれについて独立に実行するものであることを特徴とする請求項1記載の音源探査装置。
前記関心領域が、前記プローブ側から覗めたときに2次元的に広がる空間であって、前記演算部が、2次元差分演算を用いて前記新たな測定点を設定するものであることを特徴とする請求項1記載の音源探査装置。
前記演算部は、前記複数の初期の測定点を、隣接する測定点どうしの間隔が関心周波数領域の最高周波数あるいは関心周波数の音波の波長の1/2以下の間隔となるように設定するものであることを特徴とする請求項1から3のうちいずれか1項記載の音源探査装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、音源探査のリアルタイム性の確保と音源位置同定の正確性を高度に両立させた音源探査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成する本発明の音源探査装置は、
配列された複数のマイクロホンを備えたプローブと、
上記プローブで受音して得た音信号に基づいて、空間上の関心領域内に離散的に設定した複数の初期の測定点の音圧を算出し隣接する測定点の音圧どうしの差分からなる差分音圧を算出してその差分音圧を閾値と比較し、さらに
閾値以上の差分音圧が得られた隣接する2つの測定点どうしの間に新たな測定点を設定してその新たな測定点の音圧を算出し、その新たな測定点を含む隣接する測定点の音圧どうしの差分からなる差分音圧を算出して閾値と比較する過程を、関心領域に関する全ての差分音圧が閾値以下となるまで繰り返す音源探査演算を実行する演算部とを有することを特徴とする。
【0008】
本発明の音源探査装置は、関心領域内の、閾値を越える差分音圧が得られた領域のみ新たな測定点が設定されて詳細な音圧分布が測定される。このため、少ない演算量で音源位置が正確に同定される。
【0009】
ここで、本発明の音源探査装置において、上記関心領域が、プローブ側から覗めたときに2次元的に広がる空間であって、上記演算部が、音源探査演算を、互いに異なる2方向それぞれについて独立に実行するものであってもよい。
【0010】
この場合、シンプルな演算で済む。
【0011】
あるいは、本発明の音源探査装置において、上記関心領域が、プローブ側から覗めたときに2次元的に広がる空間であって、上記演算部が、2次元差分演算を用いて新たな測定点を設定するものであってもよい。
【0012】
この場合、2次元的な差分音圧が得られる。
【0013】
また、本発明の音源探査装置において、上記演算部は、複数の初期の測定点を、隣接する測定点どうしの間隔が関心周波数領域の最高周波数あるいは関心周波数の音波の波長の1/2以下の間隔となるように設定するものであることが好ましい。
【0014】
この場合、小さな差分音圧が得られた2つの測定点どうしの間に存在する音圧のピークの見逃しが防止される。
【発明の効果】
【0015】
以上の本発明によれば、音源探査のリアルタイム性の確保と音源位置同定の正確性を高度に両立させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
【0018】
図1は、本発明の一実施形態としての音源探査装置のブロック図である。
【0019】
この音源探査装置1は、プローブ10と演算部20とを有する。
【0020】
プローブ10は、配列された複数のマイクロホン12(
図2参照)を備えている。詳細は後述する。
【0021】
演算部20は、プローブ10での受音により得られた音信号に基づいて、音源が含まれていると考えられる関心領域D内に離散的に設定された測定点Pの音圧を算出し、さらに音源探査のための演算を行なう。関心領域の測定点Pの設定は、初期的には、測定者や上位の装置等から設定される関心周波数f
0あるいは関心周波数領域f
1〜f
2(f
1<f
2)の最高周波数f
2の音波の波長の、例えば1/2の間隔となるように設定される。この演算部20による演算内容の詳細についても後述する。
【0022】
図2は、プローブを構成する複数のマイクロホンの配列の一例を示した図である。
【0023】
ここでは、中心点に、このプローブ10の向きを視認するためのカメラ11が配置されており、その中心点を取り巻くように36個のマイクロホン12が配列されている。本実施形態のプローブ10は、4個のマイクロホン12a,12b,12c,12dを、それらのマイクロホンどうしの間隔が不均等となるように配置し、それら4個のマイクロホン12a,12b,12c,12dからなる組を、円周方向に9等分した各領域それぞれに配置している。
【0024】
図3は、ビームフォーミングの原理説明図である。ビームフォーミング自体は広く知られた技術であり、ここではその概要を説明するにとどめる。
【0025】
ここでは、マイクロホン12として無指向性のマイクロホンが使われている。
【0026】
図3(A)は、プローブ10の正面に音源が存在する場合の模式図である。
【0027】
音源がプローブ10の正面に存在すると、音源から各マイクロホン12までの距離は互いに等しく、それら複数のマイクロホン12での受音で得られた音信号を互いに加算すると位相が等しいために大きな振幅の信号が得られることになる。
【0028】
図3(B)は、プローブ10が向いた方向に対する斜めの方向に音源が存在する場合の模式図である。
【0029】
音源がプローブ10に対し斜めの位置にあると、音源と各マイクロホン12との間の音伝播路の長さがそれぞれ異なる。すなわち、ある1つの時刻に音源から発せられた音が各マイクロホンに到達する時刻が異なる。言い換えると、各マイクロホン12で同時に受音された音信号は位相が異なっている。したがってそれら複数のマイクロホンでの受音で得られた音信号を互いに加算すると、互いに打ち消し合って小さな信号となってしまう。すなわち、複数のマイクロホン12で得られた音信号を互いに加算すると
図3(C)に示すように、全体として指向性を待つことになる。
【0030】
ところで、今度は複数のマイクロホンでの受音で得られた音信号を互いの位相を調整して加算すると、複数の測定点P(
図1参照)のうちの、その位相の調整の仕方に応じた測定点Pに指向の方向を合わせることができる。
【0031】
ここで、音源から発せられる音が高周波になると経路差と周期が合致し音源が存在しない位置に音源が存在するかのような信号(いわゆるゴースト)が得られることが知られている。
図2に示すマイクロホン12どうしの間隔を不均等にするのは、このゴーストの発生を抑えるためである。例えば、マイクロホン12を等間隔に配置した場合の測定可能周波数が500Hz〜3000Hzである場合に、
図2に示すように不均等に配置することにより、測定可能周波数を500Hz〜10kHzとすることができる。
【0032】
図4は、演算部で実行される音源探査演算の演算内容を示すフローチャートである。
【0033】
図5は、音圧分布および測定点の1次元断面を示した模式図である。
図5の横軸は関心領域内の座標位置[m]、縦軸は音圧[Pa]を表わしている。
【0034】
さらに、
図6は、差分音圧の配列を示した図である。
【0035】
この
図6の横軸は、
図5の横軸と同じ座標位置[m]、縦軸は差分の音圧[Pa]を表わしている。
【0036】
音源探査にあたっては、先ず、初期測定点が設定される(ステップS01)。ここでは
図1に示すように、演算部20に、関心のある周波数f
0あるいは関心のある周波数帯域(f
1〜f
2)のうちの最高周波数f
2が設定され、演算部20は隣接する測定点どうしの間隔がその関心周波数f
0あるいは、最高周波数f
2の音の波長の1/2の間隔となるように、初期の測定点が設定される。
【0037】
図5には、この初期の測定点P1,P2,・・・,P15の音圧が四角形の記号で示されている。
【0038】
次にプローブ10を構成する複数のマイクロホン12での受音で得られた音信号を取得し(ステップS02)、その音信号に基づいて、ステップS01で設定された初期測定点それぞれについての音圧を算出し(ステップS03)、さらに隣接する測定点の音圧どうしの差分からなる差分音圧を算出する(ステップS04)。
【0039】
図6(A)は、この1回目の計算における差分音圧を示している。
【0040】
次にこの差分音圧と閾値とを比較する(ステップS05)。そして閾値以上の差分音圧が存在していたら(ステップS06)、その閾値を越える差分音圧が得られた、隣接する2つの測定点どうしの間に、新たな測定点を設定する(ステップS07)。
【0041】
本実施形態では、隣接する2つの測定点の中点に新たな測定点が設定される。
図5では、この新たな測定点は、○印で示される「2回目の測定点」P2.5,P4.5,P5.5,P6.5,P7.5,P9.5,P10.5,P11.5である。
【0042】
次にそれらの新たな測定点についての音圧が算出され(ステップS08)。さらに、それらの新たな測定点を含む隣接する測定点の音圧どうしの差分からなる差分音圧が算出され(ステップS09)、閾値と比較される(ステップS10)。
【0043】
図6(B)には、1回目の計算における差分音圧(
図6(A))に重ねて、この2回目の計算における差分音圧が示されている。
【0044】
次にステップS06に戻り、ここでは、
図6(B)に示すように、未だ閾値を越える差分音圧が存在するため、さらに新たな測定点(
図5に示す例では、P5.25,P6.25)が設定され(ステップS07)、それらの新たな測定点(P5.25,P6.25)の音圧が算出され(ステップS08)、さらに、それらの新たな測定点(P5.25,P6.25)を含む隣接する測定点の音圧どうしの差分からなる差分音圧が算出されて(ステップS09)、閾値と比較される(ステップS10)。
【0045】
図6(C)には、1回目および2回目の計算における差分音圧に重ねて、この3回目の計算による差分音圧が示されている。
【0046】
閾値と比較した結果(ステップS10)、今度は閾値を越える差分音圧は存在しなくなり(ステップS06)、この音源探査を終了する。
【0047】
ここでは、簡単に示すため1次元的な演算について説明したが、例えば2次元的に広がる関心領域内の互いに直交するx方向とy方向とのそれぞれについて上記の演算が行なわれて、その関心領域内の音圧分布が算出される。
【0048】
図7は、2次元的な関心領域内の音圧分布を可視化して示した図である。
【0049】
この
図7におけるハッチングの違いは、例えば色の違いとして表現される。上記のようにして算出した音圧は、例えばこの
図7に示すように表示することにより、ユーザにその情報が提供される。この
図7には、音源を表わす音圧のピークPKが3箇所にあらわれている。
図2に示すプローブ10にはカメラ11が備えられており、関心領域の画像を重ね合わせて表示することで、音源位置の情報が一層分かり易く提供される。
【0050】
ここでは、上記の通り、差分音圧が大きい領域についてのみ細かな間隔で音圧を算出しているため、演算量の低減、すなわちリアルタイム性の向上と、音源位置固定の正確性が高い次元で両立する。
【0051】
図8は、関心領域内の差分音圧計算の他の例を示した図である。
【0052】
ここに示す例では、前述のようにして2次元的に離散している各測定点P(
図1参照)についての音圧を算出した後、以下に説明するようにして差分音圧が算出される。
【0053】
図8(A)は、x方向の差分演算を行なうフィルタを示す図である。
【0054】
関心領域内の任意の測定点(x,y)において、その測定点と、その測定点に対しx方向、y方向の前後に隣接する各測定点の音圧に
図8(A)の各係数を掛けてその合計値を算出する。ここでは、この合計値をLxとする。
【0055】
図8(B)は、y方向の差分演算を行なうフィルタを示す図である。
【0056】
関心領域内の任意の測定点(x,y)において、その測定点と、その測定点に対しx方向、y方向の前後に隣接する各測定点の音圧に
図8(B)の係数を掛けて、その合計値を算出する。ここでは、この合計値をLyとする。
【0059】
を計算する(
図8(C))。この差分音圧Δと閾値との大小を比較して、閾値を越える差分音圧Δが得られたときは、さらにx方向、y方向双方に2分割することにより新たな測定点を設定して、その新たな測定点について音圧を計算する。この場合、1回につき新たな測定点は4点設定されることになる。
【0060】
ここでは、測定点を矩形の升目で表現しており、1回目の測定点をP
i,j(i,j=0,1,2)とし、新たに設定された4つの測定点をP
x,y、P
x+1,y、P
x,y+1、P
x+1,y+1とする。これら4つの新たな測定点P
x,y、P
x+1,y、P
x,y+1、P
x+1,y+1について音圧が計算される。
【0061】
上記の
図8(A),(B)の計算を行なうにあたっては、x方向、y方向に隣接する8つの測定点の音圧と、中央にある自分自身の音圧との合計9つの測定点の音圧が必要となる。
【0062】
ここでは、P
x,yの測定点について、
図8(A),(B)の計算を行なうものとして説明する。このとき、測定点P
x,y、その周囲の8つの測定点とを含む、
図8(D)に斜線を付した9つの測定点P
x−1,y−1、P
x,y−1、P
x+1,y−1、P
x−1,y、P
x,y、P
x+1,y、P
x−1,y+1、P
x,y+1、P
x+1,y+1の音圧が計算に使われる。
【0063】
ここでは、4つの新たな測定点P
x,y、P
x+1,y、P
x,y+1P
x+1,y+1の音圧は計算済であるが、残りの5つの測定点P
x−1,y−1、P
x,y−1、P
x+1,y−1、P
x−1,y、P
x−1,y+1の音圧のデータは存在しない。そこでここでは、それら5つの測定点P
x−1,y−1、P
x,y−1、P
x+1,y−1、P
x−1,y、P
x−1,y+1の音圧として、それぞれ、1回目の測定点P
0,0、P
1,0、P
1,0、P
0,1、P
0,1の音圧が計算に使われる。このような音圧データの代用を行なっても、P
x−1,y−1、P
x,y−1、P
x+1,y−1、P
x−1,y、P
x−1,y+1の音圧を計算してその計算した音圧を使った場合と最終的にほとんど同じ精度の計算結果が得られている。
【0064】
本発明では、このように2次元的な差分演算を採用して差分音圧を算出することによって新たな測定点を設定してもよい。
【0065】
以上の通り、本実施形態によれば、音源探査のリアルタイム性の確保と音源位置の正確性を高度に両立させることができる。
【0066】
尚、上述の説明では、関心周波数f
0あるいは、最高周波数f
2の音の波長の1/2の間隔となるように、初期の測定点を設定する旨、説明したが、必ずしも1/2の間隔に設定する必要はなく、それよりも狭い間隔に設定してもよい。