(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
(第1実施形態)
以下、本発明の代表的な実施形態として、第1実施形態につき、
図1〜
図8を参照して説明する。第1実施形態においては、打ち込み工具の一例として電気−空気式釘打機を用いて説明する。
図1及び
図2に示すように、釘打機100は、概括的に見て、本体ハウジング101と、マガジン105を主体として構成される。本体ハウジング101は、工具本体として規定されており、釘打機100の外郭を形成している。マガジン105には、打ち込み具として被加工材に打ち込まれる釘(図示省略)が装填されている。本体ハウジング101は、ほぼ対称形の1対のハウジングを合わせて結合して形成されている。当該本体ハウジング101は、ハンドル103、打ち込み機構収容部101A、圧縮装置収容部101B、モータ収容部101Cを一体に備えている。
【0023】
ハンドル部103、打ち込み機構収容部101A、圧縮装置収容部101B及びモータ収容部101Cは、釘打機100の側面視において、概ね四角形を形成するように配置されている。ハンドル部103は、所定長さで延在する長尺状の部材であり、一端側が打ち込み機構収容部101Aに連接され、他端側がモータ収容部101Cに連接されている。一方、圧縮装置収容部101Bは、ハンドル部103に対して概ね並行状に延在され、一端側が打ち込み機構収容部101Aに連接され、他端側がモータ収容部101Cに連接されている。これにより、釘打機100は、ハンドル部103、打ち込み機構収容部101A、圧縮装置収容部101B及びモータ収容部101Cによって囲まれた空間Sを形成している。
【0024】
図1に示すように、釘打機100は、先端部(
図1の右端)にドライバガイド141とLED107が配置されている。
図1における右方向が釘の打ち出し方向である。なお、説明の便宜上、釘打機100の先端側(
図1の右側)を前側、その反対側(
図1の左側)を後側という。また、釘打機100におけるハンドル部103の打ち込み機構収容部101Aとの連接側(
図1の上側)を上側、ハンドル部103のモータ収容部101Cとの連接側(
図1の下側)を下側という。
【0025】
図3に示すように、打ち込み機構収容部101Aは、釘打ち込み機構120を収容している。釘打ち込み機構120は、打ち込みシリンダ121及び打ち込みピストン123を主体として構成される。この打ち込みシリンダ121が、本発明における「第2シリンダ」に対応し、打ち込みピストン123が、本発明における「第2ピストン」に対応する実施構成例である。
【0026】
打ち込みシリンダ121内には、釘を打込む打ち込みピストン123が前後方向(打ち込みシリンダ121の長軸方向)に摺動自在に収容されている。打ち込みピストン123は、打ち込みシリンダ121内に摺動自在に収容されたピストン本体部124と、当該ピストン本体部124に一体状に設けられて前方へと延在する釘打ち込み用の長尺状のドライバ125とから構成されている。ピストン本体部124とドライバ125は、シリンダ室121aに供給される圧縮空気によって打ち込みシリンダ121の長軸方向に直線状に移動可能に構成されている。これにより、ドライバ125がドライバガイド141の打ち込み通路141a内を前方に移動して釘を打ち出す。シリンダ室121aは、打ち込みシリンダ121の内壁面とピストン本体部124の後側の面とにより囲まれる空間として形成されている。ドライバガイド141は、打ち込みシリンダ121の先端部に配置され、先端に釘の射出口を有する打ち込み通路141aを備えている。
【0027】
図1に示すように、マガジン105は、本体ハウジング101の先端側、すなわち、圧縮装置収容部101Bの前方に配置されている。このマガジン105は、ドライバガイド141に連結されており、打ち込み通路141aに対して、釘を供給する。なお、
図3に示すように、マガジン105には、釘を供給方向(
図3の上方)に押すためのプッシャプレート105aが設けられている。このプッシャプレート105aによって釘がドライバガイド141の打ち込み通路141aに打ち込み方向と交差する方向から1本ずつ供給される。
【0028】
図3に示すように、圧縮装置収容部101Bは、圧縮装置130を収容している。圧縮装置130は、圧縮シリンダ131と、圧縮ピストン133と、クランク機構115を主体として構成される。圧縮ピストン133は、圧縮シリンダ131内を上下方向に摺動可能に配置されている。この圧縮シリンダ131が、本発明における「第1シリンダ」に対応し、圧縮ピストン133が、本発明における「第1ピストン」に対応する実施構成例である。
【0029】
圧縮シリンダ131は、マガジン105に沿って配置され、上端側が打ち込みシリンダ121の前端部に連接されている。そして、圧縮ピストン133がマガジン105に沿って上下方向に摺動するように配置されている。この圧縮ピストン133の動作方向は、打ち込みピストン123の動作方向と概ね直交している。圧縮ピストン133が上下方向に摺動することで、圧縮シリンダ131の内部空間である圧縮室131aの容積が変化する。すなわち、圧縮ピストン133が圧縮室131aの容積を減少する上方側へと移動することで圧縮室131aの空気を圧縮する。この圧縮室131aは、打ち込みシリンダ121と近接する上部側に形成されている。また、圧縮シリンダ131は、大気解放バルブ(図示省略)を備えており、圧縮室131aを大気に解放可能に構成されている。大気開放バルブは、打ち込み動作時には閉状態に保持されており、打ち込み動作時以外には、開状態に切り替えられる。
【0030】
図3に示すように、モータ収容部101Cは、電動モータ111を収容している。電動モータ111は、当該電動モータ111の回転軸線が打ち込みシリンダ121の長軸線に対して概ね平行となるように配置されている。従って、電動モータ111の回転軸線は、圧縮ピストン133の動作方向に対しては直交している。なお、モータ収容部101Cの下部側には、バッテリ装着領域が形成されており、電動モータ111に電力を供給する充電式のバッテリパック110が着脱可能に装着される。
【0031】
図3に示すように、電動モータ111の回転は、遊星歯車式の減速機構113によって減速された後、クランク機構115に伝達される。そして、電動モータ111の回転は、クランク機構115によって直線運動に変換されて圧縮ピストン133に伝達される。減速機構113及びクランク機構115は、圧縮装置収容部101Bの後方領域とモータ収容部101Cの前方領域にわたって配置された内側ハウジング102内に収容されている。
【0032】
クランク機構115は、クランク軸115aと偏心ピン115bと連接ロッド115cを主体として構成されている。クランク軸115aは、遊星歯車式の減速機構113に連接され、減速機構113によって回転駆動される。偏心ピン115bは、クランク軸115aの回転中心から偏心した位置に設けられている。連接ロッド115cは、一端が偏心ピン115bに相対回動自在に連接され、他端が圧縮ピストン133に相対回動自在に連接されている。このクランク機構115は、圧縮シリンダ131の下方に配置されている。以上の構成により、圧縮装置130として、圧縮シリンダ131、圧縮ピストン133及びクランク機構115を主体としたレシプロ式の圧縮装置が構成される。このクランク機構150および電動モータ111が、本発明における「駆動機構」に対応する実施構成例である。
【0033】
図3に示すように、ハンドル部103には、トリガ103aとトリガスイッチ103bが設けられている。また、クランク機構115の下方には制御装置109が配置されている。
図9に示すように、制御装置109は、電磁石138、コンタクトアームスイッチ143、トリガスイッチ103b、電動モータ111、磁気センサ150、およびバッテリパック110に接続されている。そして、電動モータ111は、ハンドル部103に設けられたトリガ103aと本体ハウジング101の先端領域に設けられたドライバガイド141の操作に応じて、制御装置109によって制御される。
【0034】
トリガスイッチ103bは、トリガ103aが引き操作されることでオン状態となり、トリガ103aの引き操作が解除されることでオフ状態となる。なお、トリガ103aは、ハンドル部103、打ち込み機構収容部101A、圧縮装置収容部101B及びモータ収容部101Cによって囲まれる空間Sに向かって突出して配置されている。ドライバガイド141は、コンタクトアームとして構成されており、釘打機100の前後方向に移動可能に本体ハウジング101の先端領域に配置されている。
図6に示すように、ドライバガイド141は、付勢ばね142により前方に向かって付勢されている。そして、ドライバガイド141が前方に位置するときには、コンタクトアームスイッチ143はオフ状態となり、ドライバガイド141が本体ハウジング107側に移動されたときには、コンタクトアームスイッチ143はオン状態となる。そして、電動モータ111は、トリガスイッチ103bとコンタクトアームスイッチ143が共にオン状態に切替えられたときに通電駆動され、いずれか一方がオフ状態に切替えられたときに停止される。
【0035】
図5に示すように、釘打機100は、圧縮シリンダ131の圧縮室131aと打ち込みシリンダ121のシリンダ室121aとを連通する空気通路135およびバルブ室137aを備えている。
【0036】
図5に示すように、空気通路135は、連通ポート135a、連通ポート135b、連通路135c、環状溝121cおよびバルブ室137aを主体として構成されている。
図4に示すように、連通ポート135aは、圧縮シリンダ131のシリンダヘッド131bに形成されている。この連通ポート135aは、圧縮室131aに連通している。また、
図5に示すように、連通ポート135bは、打ち込み用シリンダ121のシリンダヘッド121bに形成されている。この連通ポート135bは、バルブ室137aに連通している。連通路135cは、連通ポート135aと連通ポート135bを連通させている。この連通路135cは、パイプ状部材により形成され、打ち込みシリンダ121に沿って前後方向に直線状に延在している。この空気通路135が、本発明における「連通路」に対応する実施構成例である。
【0037】
図5に示すように、打ち込み連通ポート135bは、バルブ室137aの周面に形成された環状溝121cに連通している。この環状溝121cは、バルブ室137aに連通している。さらに、バルブ室137aは、シリンダ室121aに連通している。これにより、連通ポート135bは、環状溝121cおよびバルブ室137aを介してシリンダ室121aに連通している。バルブ室137aには、空気通路135を開放及び閉鎖する電磁バルブ137が収容されている。この電磁バルブ137が、本発明における「弁部材」に対応する実施構成例である。
【0038】
電磁バルブ137は、打ち込みピストン123のピストン本体部124とほぼ同じ直径を有する円柱状部材である。電磁バルブ137は、バルブ室137a内に配置されており、バルブ室137a内を前後方向に移動可能である。電磁バルブ137の後方には、電磁石138が配置されている。電磁石138に対する通電および通電の遮断を切り替えることで、電磁バルブ137が前後方向に移動される。電磁バルブ137の外周には、前後方向に所定間隔で2個のOリング139a,139bが配置されている。電磁バルブ137は、後方へ移動することで環状溝121cを開放し、前方へ移動することで環状溝121cを閉じる。
【0039】
具体的には、
図6に示すように、前側のOリング139aは、環状溝121cの前方においてバルブ室137aの内壁面の一部を形成するシリンダヘッド121bに当接することで、環状溝121cとシリンダ室121aとの連通を遮断する。一方、
図7に示すように、Oリング139aが、環状溝121cの領域内へ移動すると、環状溝121cがシリンダ室121aと連通する。なお、後側のOリング139bは、圧縮空気が連通ポート135bから外側へ漏れ出ることを防止するためものであり、環状溝121cの開閉には関与しない。このように、空気通路135を開閉する電磁バルブ137は、空気通路135のうち、打ち込みシリンダ121のシリンダ室121aとの接続側に設けられている。
【0040】
電磁バルブ137は、
図6に示すように、常時には電磁石138によって環状溝121cを閉じるように前方に配置されている。また、ストッパ136は、電磁バルブ137の前方に配置され、電磁バルブ137の前方への移動を規制している。このストッパ136は、シリンダ室121a内に径方向に突出するフランジ状の部材によって形成されている。さらに、ストッパ136は、後方へ移動する打ち込みピストン123の後端位置を規定している。
【0041】
また、
図3に示すように、釘打機100は、磁気センサ150を備えている。この磁気センサ150は、磁石151の磁界によってホール素子152に生じるホール効果に基づいて、クランク軸115aの位置を検出する。磁気センサ150は、磁石151、ホール素子152を主体として構成されている。磁石151は、クランク軸115aに設けられている。一方、ホール素子152は、圧縮装置収容部101Bの磁石151と対向する位置に設けられている。ホール素子152は、バッテリパック110と電気的に接続されており、さらに、制御装置109に接続されている。そして、磁石151の位置によって磁束密度が異なるため、磁束密度に応じたホール素子152の出力電圧に基づいて、制御装置109が磁気センサ150を介してクランク軸115aの位置を測定する。これにより、クランク軸115aに連接された圧縮ピストン133の位置が検出される。この磁気センサ150が、本発明における「センサ」に対応する実施構成例である。
【0042】
次に、釘打機100の作用および使用方法について説明する。釘打機100は、
図3に示すように、打ち込みピストン123が後端位置(
図3の左端位置)に位置し、かつ圧縮ピストン133が下端位置(下死点)に位置した状態が初期位置として定められている。すなわち、クランク角度が0度(下死点)のときが初期状態である。
【0043】
図3に示す初期状態において、ドライバガイド141が被加工材に押し当てられてコンタクトアームスイッチ143(
図6参照)がオン状態とされるとともに、トリガ103aが引き操作されてトリガスイッチ103bがオン状態に切替えられると、電動モータ111が通電駆動される。これにより、減速機構113を介してクランク機構115が駆動され、圧縮ピストン133が下死点から上方へ移動される。このとき、電磁バルブ137が空気通路135を閉鎖しているため、圧縮ピストン133の移動によって、圧縮室131a内の空気が圧縮される。
【0044】
磁気センサ150によって計測されたクランク軸115aのクランク角度が180度に対応する圧縮ピストン133が上端位置(上死点)に達したときに、圧縮室131a内の圧縮空気が最大圧縮状態となる。このとき、電磁石138によって電磁バルブ137が後方へ移動される。これにより、環状溝121cがシリンダ室121aに連通して、圧縮室131a内の圧縮空気が空気通路135を経てシリンダ室121aに供給される。シリンダ室121aに圧縮空気が供給されると、当該圧縮空気による空気ばねの作用によって、
図7に示すように、打ち込みピストン123が前方へ移動される。そして、前方へと移動された打ち込みピストン123のドライバ125がドライバガイド141の打ち込み通路141aに待機している釘を打撃する。これにより、釘が打ち出され、打ち出された釘が被加工材に打込まれる。
【0045】
打ち出し動作後、圧縮ピストン133は上死点から下死点へ向かって移動する。すると、圧縮室131aの容積が増加されて当該圧縮室131a内の空気が大気圧よりも低い負圧となる。圧縮室131a内に生じた負圧は、空気通路135及びシリンダ室121aを通じて打ち込みピストン123に作用する。これにより、
図8に示すように、打ち込みピストン123が吸引されて後方へと移動される。そして、打ち込みピストン123は、ストッパ136と当接して初期位置に位置する。電磁バルブ137は、打ち込みピストン123が初期位置に移動されるまでは、空気通路135の開放状態を維持する。打ち込みピストン123が初期位置に位置すると、電磁バルブ137が前方に移動され、空気通路135を閉じる。なお、磁気センサ150によって、例えば、クランク軸115aのクランク角度が310度であることが検出されると、制御装置109は、圧縮ピストン133を減速させて圧縮ピストン133を停止させる。すなわち、制御装置109が圧縮ピストン133にブレーキを掛ける。また、圧縮ピストン133が初期位置(下死点)に位置すると、トリガスイッチ103b及びコンタクトアームスイッチ143がオン状態に維持されていても、電動モータ111に対する通電が遮断され、電動モータ111が停止される。このように、打ち出し動作の1サイクルが終了する。なお、打ち出し動作中には、LED107が、ドライバガイド141の先端領域を照射している。
【0046】
以上の釘打機100においては、釘の打ち出し動作中に、バッテリパック110の充電切れやバッテリパック110が意図せず外れること等により電動モータ111に対して通電が停止されることがある。また、その他の打ち出し動作時のトラブルなどが生じる可能性がある。上記の場合において、打ち出し動作開始前に、圧縮ピストン133が下死点に停止していない場合がある。圧縮ピストン133が下死点に停止していない場合において、打ち出し動作が開始されると、打ち出し動作開始時の圧縮ピストン133の位置によって、圧縮ピストン133が生成する圧縮空気の圧縮量が異なる。そのため、打ち出し動作毎に打ち出される釘のスピードが一定とならず、被加工材に対する釘の打ち込み量が異なってしまう。そのため、第1実施形態においては、打ち出し動作開始前に、圧縮ピストン133が下死点に位置してない場合には、圧縮ピストン133を下死点に移動させる復帰動作が行われる。なお、復帰動作は、圧縮シリンダ131に形成された大気解放バルブを開いて、圧縮室131aを大気に解放した状態で行われる。
【0047】
そのため、磁気センサ150は、打ち出し動作開始前に、圧縮ピストン133の位置を検出する。具体的には、以下の各タイミングで、磁気センサ150がクランク軸115aの位置を測定する。
タイミング1:バッテリパック110がバッテリ装着領域に装着された時
タイミング2:トリガ103aが操作された時
タイミング3:ドライバガイド141が被加工材に押し当てられた時
【0048】
磁気センサ150は、タイミング1〜3の少なくとも1つのタイミングにおいて、クランク軸115aの位置を測定する。すなわち、タイミング1〜3のうち選択されたタイミングにおいて、磁気センサ150がクランク軸115aの位置を測定するように構成されている。磁気センサ150がクランク軸115aの位置を測定するタイミングは、制御装置109に予め設定されている。
【0049】
例えば、打ち込み具の打ち出し動作中に、バッテリパック110の充電切れや、意図せずバッテリパック110が外れることによって、圧縮ピストン133が下死点以外の位置で停止してしまうことがある。そこで、タイミング1において、磁気センサ150がクランク軸115aの位置を測定することで、圧縮ピストン133の位置を検出する。そして、圧縮ピストン133が下死点以外の位置に位置している場合には、制御装置109が電動モータ111を駆動して、圧縮ピストン133を下死点に移動させる。
【0050】
また一方で、釘打機100は、1回の打ち出し動作が終了すると、圧縮ピストン133は上死点から下死点に移動し、下死点に停止するよう構成されている。しかしながら、圧縮ピストン133の移動によって生じる慣性力等によって、圧縮ピストン133が正確に下死点に停止しない場合がある。また、打ち出し動作開始後に、トリガ103aの操作を中止したり、ドライバガイド141の押し当てが解除されたりした場合には、打ち出し動作を途中で圧縮ピストン133が停止することになる。そこで、タイミング2において、打ち出し動作を開始しようとして、ユーザがトリガ103aを操作した際に、磁気センサ150がクランク軸115aの位置を測定する。この場合は、タイミング2において磁気センサ150がクランク軸115aの位置を測定することなく、タイミング3において、磁気センサ150がクランク軸115aの位置を測定してもよい。クランク軸115aの位置を測定することで、圧縮ピストン133の位置を検出する。そして、圧縮ピストン133が下死点以外の位置に位置している場合には、制御装置109が電動111モータを駆動して、圧縮ピストン133を下死点に移動させる。
【0051】
また、釘打機100においては、複数の釘を任意の時間間隔で連続して打ち出す連発動作が行われることがある。すなわち、1回の打ち出し動作の後、トリガ103aを引いた状態で、被加工材に押し当てられたドライバガイド141の押し当てを解除し、被加工材における他の部分に再度ドライバガイド141を押し当てることによって、次の釘の打ち出し動作を行う連発動作が行われる。換言すると、通常の打ち出し動作においては、トリガ103aに対する1度の操作毎に1つの釘が打ち出されるが、連発動作においては、トリガ103aが1度操作された状態で、複数の釘が打ち出される。この連発動作においては、タイミング2において、最初に打ち出し動作を開始しようとして、ユーザがトリガ103aを操作した際に、磁気センサ150がクランク軸115aの位置を測定する。これにより、複数の打ち出し動作のうち、最初の打ち出し動作の開始前にのみ、磁気センサ150がクランク軸115aの位置を測定する。なお、連発動作を行う場合に、各打ち出し動作の前のドライバガイド141が押し当てられたタイミング3において、磁気センサ150がクランク軸115aの位置を測定してもよい。また、連発動作においては、タイミング2とタイミング3において、磁気センサ150がクランク軸115aの位置を測定してもよい。クランク軸115aの位置を測定することで、圧縮ピストン133の位置を検出する。そして、圧縮ピストン133が下死点以外の位置に位置している場合には、制御装置109が電動モータ111を駆動して、圧縮ピストン133を下死点に移動させる。
【0052】
圧縮ピストン133を下死点に移動させる復帰動作においては、圧縮室131a内の空気を圧縮しないように、制御装置109は、圧縮ピストン133を移動させる。すなわち、圧縮ピストン133は、上死点を通過することなく、下死点まで移動される。
【0053】
具体的には、磁気センサ150が、クランク軸115aがクランク角度0度から180度の間に位置していることを測定した場合、すなわち、打ち出し動作における下死点から上死点に向かう途中の位置に圧縮ピストン133が位置していると検出された場合には、制御装置109は、電動モータ111を逆回転させて圧縮ピストン133を下死点に移動させる。
【0054】
一方、磁気センサ150が、クランク軸115aがクランク角度180度から360度の間に位置していることを測定した場合、すなわち、打ち出し動作における上死点から下死点に向かう途中の位置に圧縮ピストン133が位置していると検出された場合には、制御装置109は、電動モータ111を正回転させて圧縮ピストン133を下死点に移動させる。以上のように電動モータ111を制御することで、圧縮ピストン133は、上死点を通過することなく、下死点まで移動される。
【0055】
なお、LED107は、打ち出し動作の際には、ドライバガイド141の先端領域を照射している。一方、復帰動作の際には、制御装置109は、LED107を点滅させる。これにより、ユーザに対して、復帰動作が行われていることを報知する。なお、LED107が点滅する構成に限られず、LED107が照射する光の色を打ち出し動作と復帰動作とで変えるように構成してもよい。
【0056】
さらに、第1実施形態においては、所定の打ち出し動作後、圧縮ピストン133が下死点に停止しなかった場合には、所定の打ち出し動作に続く次の打ち出し動作の際に、制御装置109が圧縮ピストン133に対するブレーキ制御を変更する。なお、説明の便宜上、所定の打ち出し動作を1回目の打ち出し動作と称し、次の打ち出し動作を2回目の打ち出し動作と称する。
【0057】
釘打機100においては、バッテリパック110の電圧変動、あるいは、電動モータ111の駆動に伴う発熱による電動モータ111の特性変化等の要因によって、釘打機100の駆動状態が変化し、圧縮ピストン133が下死点に停止しない場合がある。そのため、所定の1回目の打ち出し動作後の圧縮ピストン133の停止位置を磁気センサ150が検出し、圧縮ピストン133が下死点に停止していない場合には、制御装置109が圧縮ピストン133を下死点に移動させるとともに、1回目の打ち出し動作に続く2回目の打ち出し動作の際のブレーキ開始タイミングを変更する。この1回目の打ち出し動作および2回目の打ち出し動作がそれぞれ、本発明における「第1の打ち出し動作」および「第2の打ち出し動作」に対応する実施構成例である。
【0058】
具体的には、1回目の打ち出し動作後の圧縮ピストン133の停止位置として、クランク軸115aがクランク角度0度から180度の間に位置していることを磁気センサ150が測定した場合には、制御装置109は、2回目の打ち出し動作におけるブレーキ開始タイミングが1回目の打ち出し動作におけるブレーキ開始タイミングよりも早くなるように、ブレーキ開始タイミングを変更する。すなわち、1回目の打ち出し動作において、圧縮ピストン133が下死点を超えて停止した場合には、2回目の打ち出し動作においては、クランク軸115aのクランク角度が305度のときに、圧縮ピストン133に対するブレーキを開始するように変更する。これにより、2回目の打ち出し動作において、圧縮ピストン133が下死点から動き始めてからの経過時間が、1回目の打ち出し動作における当該経過時間に対して短くなる。
【0059】
一方、1回目の打ち出し動作後の圧縮ピストン133の停止位置として、クランク軸115aがクランク角度180度から360度の間に位置していることを磁気センサ150が測定した場合、制御装置109は、制御装置109は、2回目の打ち出し動作におけるブレーキ開始タイミングが1回目の打ち出し動作におけるブレーキ開始タイミングよりも遅くなるように、ブレーキ開始タイミングを変更する。すなわち、1回目の打ち出し動作において、圧縮ピストン133が下死点より手前に停止した場合には、2回目の打ち出し動作においては、クランク軸115aのクランク角度が315度のときに、圧縮ピストン133に対するブレーキを開始するように変更する。これにより、2回目の打ち出し動作において、圧縮ピストン133が下死点から動き始めてからの経過時間が、1回目の打ち出し動作における当該経過時間に対して長くなる。
【0060】
以上のブレーキ開始タイミングの変更により、2回目の打ち出し動作後の圧縮ピストン133の停止位置を1回目の打ち出し動作後の圧縮ピストン133の停止位置よりも下死点に近づける。したがって、打ち出し動作が連続する場合に、N回目以降の打ち出し動作においては、(N−1)回目の打ち出し動作後における圧縮ピストン133の停止位置に基づいて、N回目の打ち出し動作におけるブレーキ開始タイミングが設定される。なお、N回目の打ち出し動作と(N−1)回目の打ち出し動作におけるブレーキ開始タイミングとしてのクランク角度の差としての5度は一例を示すものであり、ブレーキ開始タイミングの変更は、クランク角度5度には限られない。
【0061】
例えば、圧縮ピストン133の停止位置と下死点との距離に応じて、変更するクランク角度を設定してもよい。すなわち、圧縮ピストン133の停止位置が下死点近傍の位置としてクランク角度0度〜15度(あるいはクランク角度345度〜360度)である場合には、N回目の打ち出し動作において、(N−1)回目の打ち出し動作におけるブレーキ開始タイミングのクランク角度に対して5度マイナス(5度プラス)する。一方、圧縮ピストン133の停止位置が下死点から離れた位置としてクランク角度15度〜30度(クランク角度330度〜345度)である場合には、N回目の打ち出し動作において、(N−1)回目の打ち出し動作におけるブレーキ開始タイミングのクランク角度に対して10度マイナス(10度プラス)する。
【0062】
圧縮ピストン133に対するブレーキは、制御装置109が電動モータ111に対する通電を遮断することで遂行される。一方で、制御装置109が電動モータ111の駆動を制御することで、圧縮ピストン133にブレーキをかけてもよい。例えば、制御装置109は、電動モータ111を短絡制御あるいはPWM(Pulse Width Modulation)制御して、電動モータ111の回転数を低減することで、圧縮ピストン133にブレーキをかけてもよい。
【0063】
1回目の打ち出し動作におけるブレーキ制御に対する、2回目の打ち出し動作におけるブレーキ制御の変更は、特に、連発動作を行う場合に有用である。すなわち、複数の釘を所定の時間内に連続して打ち出す連発動作においては、バッテリパック110のバッテリ残量の変化、あるいは電動モータ111の発熱が大きい。したがって、予め設定されているブレーキ制御だけでは、圧縮ピストン133の停止位置が変動しやすい。そのため、各打ち出し動作終了後の圧縮ピストン133の位置を検出して、ブレーキ制御を変更することで、圧縮ピストン133が下死点に適切に停止される。なお、連発動作においては、各打ち出し動作が1回目の打ち出し動作に対応し、各打ち出し動作に続く打ち出し動作が2回目の打ち出し動作に対応する。なお、1回目の打ち出し動作におけるブレーキ制御に対する、2回目の打ち出し動作におけるブレーキ制御の変更は、トリガ103aに対する1度の操作毎に1つの釘が打ち出される単発打ち出し動作に関して、複数の単発打ち出し動作に対して適用してもよい。
【0064】
以上の第1実施形態においては、磁気センサ150によって検出されるクランク軸115aの位置(クランク角度)に基づいて、ブレーキ開始タイミングを設定していたが、これには限られない。例えば、制御装置109がタイマーを有しており、各打ち出し動作において、圧縮ピストン133が下死点から移動開始してからの経過時間を計測してもよい。すなわち、クランク軸115aのクランク角度は、タイマーによって計測される経過時間と電動モータ111の回転数によって算出される。したがって、クランク軸115aのクランク角度に対応する経過時間に基づいて、各打ち出し動作におけるブレーキ開始タイミングが設定される。なお、タイマーによる計測時間は、打ち出し動作終了後、圧縮ピストン133が下死点(クランク軸115aのクランク角度0度)に位置するとリセットされる。
【0065】
(第2実施形態)
以上の第1実施形態においては、制御装置109が、1回目の打ち出し動作と2回目の打ち出し動作において、ブレーキ開始タイミングを変更するように構成されていた。そこで、第2実施形態においては、ブレーキ開始タイミングを変更することなく、ブレーキ制動力を変更することで、1回目の打ち出し動作後の圧縮ピストン133の停止位置に比べて、2回目の打ち出し動作後の圧縮ピストン133の停止位置を下死点に近づける。なお、釘打機100のブレーキ制御以外の構成については、第1実施形態と同様であり、同じ符号を付して説明を省略する。
【0066】
ブレーキ制御として、具体的には、電動モータ111の短絡制御と、電動モータ111のPWM制御では、電動モータ111の単位時間当たりの回転数の低下率が異なる。すなわち、ブレーキ制動力が異なる。また、PWM制御においては、パルス波のデューティ比に基づいて、ブレーキ制動力が決定される。釘打機100においては、電動モータ111に対するブレーキ制御として、予め所定のデューティ比のPWM制御が設定されている。
【0067】
そして、1回目の打ち出し動作後の圧縮ピストン133の停止位置を磁気センサ150が検出し、圧縮ピストン133が下死点に停止していない場合には、制御装置109が圧縮ピストン133を下死点に移動させるとともに、2回目の打ち出し動作の際のブレーキ制動力を変更する。2回目の打ち出し動作においては、PWM制御のデューティ比を変更する、あるいは、短絡制御に切り替えることで、ブレーキ制動力が変更される。その結果、制御装置109は、1回目の打ち出し動作と2回目の打ち出し動作において、ブレーキ開始タイミングを変更することなく、ブレーキ制動力を変更される。なお、2回目の打ち出し動作におけるブレーキ制動力は、1回目の打ち出し動作後の圧縮ピストン133の停止位置と下死点との距離に基づいて決定される。なお、圧縮ピストン133が停止するまでの時間(ブレーキ制動時間)は、ブレーキ制動力に基づいて決まる。換言すると、第2実施形態においては、ブレーキ開始タイミングを変更することなく、ブレーキ制動時間が変更される。
【0068】
以上の各実施形態によれば、打ち出し動作を開始する前に、圧縮ピストン133を下死点に移動させているため、打ち出し動作において、圧縮ピストン133が圧縮する空気の圧縮量を一定にすることができる。これにより、打ち出し動作毎における、打ち出される打ち込み具が所定のスピードで打ち出される。
【0069】
また、各実施形態によれば、連続する複数の打ち出し動作において、圧縮ピストン133が下死点に停止するようにブレーキ制御が各打ち出し動作において変更される。したがって、複数の打ち出し動作が円滑に行われる。また、圧縮ピストン133が下死点に停止するように調整されるため、打ち出し動作前に圧縮ピストン133を下死点に移動させるための時間が削減される。特に、連発動作において、釘の打ち出し時間間隔が短縮される。
【0070】
また、各実施形態によれば、磁気センサ150は、圧縮ピストン133を直接測定する必要がない。すなわち、圧縮ピストン133のように圧縮シリンダ131などで囲まれた部材の位置を直接測定する必要がない。したがって、クランク軸115aや電動モータ111のモータ軸の位置を測定することで、圧縮ピストン133の位置が容易に検出される。
【0071】
また、各実施形態によれば、圧縮ピストン133が上死点を通過することなく、圧縮ピストン133が下死点に移動される。これにより、圧縮ピストン133を移動させる際に、圧縮シリンダ131内の空気を圧縮することがない。したがって、圧縮ピストン133を下死点に移動させる際に、意図せず釘が打ち出されることが防止される。
【0072】
なお、以上の各実施形態においては、1回目の打ち出し動作後の圧縮ピストン133の位置が、下死点付近の所定領域である場合には、2回目の打ち出し動作におけるブレーキ制御を変更しないように構成されていてもよい。具体的には、例えば、1回目の打ち出し動作後の圧縮ピストン133が、クランク軸115aのクランク角度が330度から360度に対応する範囲に停止していることが検知された場合には、2回目の打ち出し動作におけるブレーキ制御を変更しないように構成されていてもよい。
【0073】
また、各実施形態においては、制御装置109が電動モータ111の駆動を制御することで、圧縮ピストン133にブレーキをかけていたが、これには限られない。例えば、クランク軸115aに当接するブレーキシューを備えたブレーキ装置を設けてもよい。
【0074】
また、各実施形態においては、空気通路135を開閉させるための弁部材として、電磁バルブ137を用いて説明したが、機械的に動作するメカニカルバルブを用いてもよい。
【0075】
また、各実施形態においては、磁気センサ150は、クランク軸115aの位置を測定していたが、これには限られない。例えば、電動モータ111のモータ軸に磁石151が取り付けられており、磁気センサ150は、当該モータ軸の回転位置を測定することで、圧縮ピストン133の位置を検出してもよい。モータ軸の位置を測定する場合には、圧縮ピストン133が下死点から移動を開始してからのモータ軸の総回転数とモータ軸の回転位置(角度)によって、クランク軸115aのクランク角度が算出される。なお、モータ軸の総回転数は、1回の打ち込み動作が終了するとリセットされる。また、磁気センサ150が圧縮ピストン133の位置を測定するように構成されていてもよい。また、センサとしては、磁気センサの他に、受光部と発光部を備えたフォトインタラプタなどを用いてもよい。
【0076】
なお、各実施形態は、打ち込み工具として釘打機100を例にして説明したが、釘打機以外のタッカー、ステープラーと呼ばれる打ち込み工具に本発明を適用してもよい。また、打ち込み工具としてバッテリパック110が装着される工具に限られず、電源コードから電力が供給される工具であってもよい。また、駆動機構として、電動モータ111以外にもエンジン等を用いてもよい。
【0077】
以上の発明の趣旨に鑑み、本発明に係る打ち込み工具は、下記の態様が構成可能である。
(態様1)
請求項1に記載の打ち込み工具であって、
前記コントローラは、タイマーを有しており、
前記タイマーは、各打ち出し動作において、前記第1ピストンが前記下死点から移動を開始後の経過時間を計測し、
前記コントローラは、前記第1の打ち出し動作において、前記タイマーに計測された前記経過時間が第1の時間になったときに、前記第1ピストンに対してブレーキを掛けるように構成されており、
前記第1の打ち出し動作終了後の前記第1ピストンの停止位置が、前記下死点以外の位置である場合に、
前記コントローラは、前記第2の打ち出し動作において、前記タイマーに計測された前記計測時間が前記第1の時間とは異なる第2の時間になったときに、前記第1ピストンに対してブレーキを掛けるように構成されていることを特徴とする打ち込み工具。
(態様2)
請求項1または態様1に記載の打ち込み工具であって、
前記第1の打ち出し動作終了後の前記第1ピストンの停止位置が、前記下死点を含む所定の範囲内である場合には、前記コントローラは、前記第2の打ち出し動作におけるブレーキ制御を変更せず、
前記第2の打ち出し動作終了後の前記第1ピストンの停止位置が、前記所定の範囲以外である場合には、前記コントローラは、前記第2の打ち出し動作終了後の前記第1ピストンの停止位置が、前記第1の打ち出し動作終了後の前記第1ピストンの停止位置に比べて、前記下死点に近づくように、前記第1ピストンに対するブレーキ制御を変更するように構成されていることを特徴とする打ち込み工具。
【0078】
(本実施形態の各構成要素と本発明の各構成要素の対応関係)
本実施形態の各構成要素と本発明の各構成要素の対応関係を以下の通りである。なお、本実施形態は、本発明を実施するための形態の一例を示すものであり、本発明は、本実施形態の構成に限定されるものではない。
圧縮シリンダ131は、本発明の「第1シリンダ」に対応する構成の一例である。
圧縮ピストン133は、本発明の「第1ピストン」に対応する構成の一例である。
打ち込みシリンダ121は、本発明の「第2シリンダ」に対応する構成の一例である。
打ち込みピストン123は、本発明の「第2ピストン」に対応する構成の一例である。
空気通路135は、本発明の「連通路」に対応する構成の一例である。
電磁バルブ137は、本発明の「弁部材」に対応する構成の一例である。
磁気センサ150は、本発明の「センサ」に対応する構成の一例である。
クランク機構115は、本発明の「駆動機構」に対応する構成の一例である。
クランク軸115aは、本発明の「クランク部材」に対応する構成の一例である。
電動モータ111は、本発明の「駆動機構」に対応する構成の一例である。
電動モータ111は、本発明の「モータ」に対応する構成の一例である。