特許第6100742号(P6100742)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6100742
(24)【登録日】2017年3月3日
(45)【発行日】2017年3月22日
(54)【発明の名称】パリソン搬送装置
(51)【国際特許分類】
   B25J 15/08 20060101AFI20170313BHJP
   B29C 49/42 20060101ALI20170313BHJP
   B29C 49/04 20060101ALI20170313BHJP
   B25J 15/06 20060101ALI20170313BHJP
【FI】
   B25J15/08 P
   B29C49/42
   B29C49/04
   B25J15/06 M
【請求項の数】2
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-176187(P2014-176187)
(22)【出願日】2014年8月29日
(65)【公開番号】特開2016-49596(P2016-49596A)
(43)【公開日】2016年4月11日
【審査請求日】2016年6月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】390023917
【氏名又は名称】八千代工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】特許業務法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】新谷 智
(72)【発明者】
【氏名】伊澤 勉
(72)【発明者】
【氏名】得永 寛
【審査官】 中田 善邦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−318023(JP,A)
【文献】 特開2014−136367(JP,A)
【文献】 特開2012−045772(JP,A)
【文献】 実開昭58−40389(JP,U)
【文献】 特開2008−277029(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J1/00−21/02,
B29C49/00−49/46,49/58−49/68,
49/72−51/28,51/42,51/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状のパリソンを挟んで互いに対向し、同じ高さ位置に配設されるとともに同一構造からなる一対のパリソンハンドを備え、前記パリソンの外形に沿う形状を呈する前記一対のパリソンハンドを前記パリソンに向けて前進させて、前記パリソンを外側から吸引支持しつつ搬送するパリソン搬送装置であって、
前記一対のパリソンハンドは、進行方向右側に延設される右側ハンド及び進行方向左側に延設される左側ハンドを少なくとも含むとともに、互いに左右方向にずらして配設されており、
一の前記パリソンハンドの前記右側ハンド及び前記左側ハンドの長さが異なることを特徴とするパリソン搬送装置。
【請求項2】
前記パリソンの中心軸を通り、前記一対のパリソンハンドの進行方向と平行な線を基準線とした場合、
前記一対のパリソンハンドは、前記基準線を通るように配設される中央ハンドを含み、
前記右側ハンド及び前記左側ハンドは、前記中央ハンドの両端部にそれぞれ連結されていることを特徴とする請求項1に記載のパリソン搬送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パリソンを吸引支持しつつ搬送するパリソン搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
筒状のパリソンを外側から吸引支持する複数のパリソンハンドを備えるパリソン搬送装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。図6は、従来のパリソン搬送装置を示す平面図であって、(a)はパリソンの外径サイズが600φの場合を示し、(b)はパリソンの外径サイズが400φの場合を示す。
【0003】
図6の(a)に示すように、従来のパリソン搬送装置100は、同等の構成からなるパリソンハンド101,102を備えている。パリソンハンド101,102は、筒状のパリソンPを挟んで対向する位置に配設されており、パリソンPに向けて前進又は後進するように構成されている。また、パリソンハンド101,102は同じ高さ位置に配設されている。
【0004】
パリソンハンド101は、中央ハンド110と、中央ハンド110の右側(進行方向右側)に連結される右側ハンド120と、中央ハンド110の左側(進行方向左側)に連結される左側ハンド130と、を有している。
【0005】
中央ハンド110、右側ハンド120及び左側ハンド130には、それぞれ複数の吸引孔111,121,131が形成されている。吸引孔111,121,131は、吸引手段(図示省略)に連結されており、吸引孔111,121,131の開口部周りに負圧を発生させてパリソンPを吸引する部位である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−318023号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
図6の(a)に示すように、パリソン搬送装置100は、パリソンPの外径サイズが600φである場合、パリソンハンド101,102を互いに近接させてパリソンPを的確に吸引支持することができる。
【0008】
ところが、図6の(b)に示すように、パリソンPの外径サイズが、例えば400φである場合、パリソンハンド101,102を互いに近接させると、対向する右側ハンド120と左側ハンド130とがそれぞれ接触する。このため、パリソンPにパリソンハンド101,102を近づけることができず、パリソンPを吸引支持することができないという問題がある。つまり、従来のパリソン搬送装置100では、外径サイズの異なるパリソンPを搬送することができないという問題がある。
【0009】
パリソンPの外径サイズに合わせてパリソン搬送装置100の大きさを変更すれば、このような問題を解決することができるが、設備コストが増大するという問題がある。
【0010】
本発明は、このような課題を解決するために創作されたものであり、外径サイズの異なるパリソンを吸引支持し、搬送することができるパリソン搬送装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、前記課題を解決するため、筒状のパリソンを挟んで互いに対向し、同じ高さ位置に配設されるとともに同一構造からなる一対のパリソンハンドを備え、前記パリソンの外形に沿う形状を呈する前記一対のパリソンハンドを前記パリソンに向けて前進させて、前記パリソンを外側から吸引支持しつつ搬送するパリソン搬送装置であって、前記一対のパリソンハンドは、進行方向右側に延設される右側ハンド及び進行方向左側に延設される左側ハンドを少なくとも含むとともに、互いに左右方向にずらして配設されており、一の前記パリソンハンドの前記右側ハンド及び前記左側ハンドの長さが異なることを特徴とする。
【0012】
かかる構成によれば、前記パリソンを吸引支持するときに、一対のパリソンハンドが互いに接触しないため、一対のパリソンハンドをパリソンに近づけることができる。これにより、外径サイズの異なるパリソンを吸引支持し、搬送することができる。
【0013】
また、前記パリソンの中心軸を通り、前記一対のパリソンハンドの進行方向と平行な線を基準線とした場合、前記一対のパリソンハンドは、前記基準線を通るように配設される中央ハンドを含み、前記右側ハンド及び前記左側ハンドは、前記中央ハンドの両端部にそれぞれ連結されていることが好ましい。
【0014】
かかる構成によれば、少なくとも3つ以上のハンドでパリソンハンドが構成されるため、より確実にパリソンを吸引支持することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明のパリソン搬送装置によれば、外径サイズの異なるパリソンを吸引支持し、搬送することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施形態に係るパリソン搬送装置を示す斜視図である。
図2】(a)は第一実施形態に係るパリソンハンドを示す斜視図であり、(b)は(a)のI−I断面図である。
図3】第一実施形態においてパリソンの外径サイズが600φの場合を示す平面図であって、(a)は準備工程を示し、(b)は前進工程を示す。
図4】第一実施形態においてパリソンの外径サイズが350φの場合を示す平面図であって、(a)は準備工程を示し、(b)は前進工程を示す。
図5】第二実施形態に係る前進工程を示す模式平面図であって、(a)はパリソンの外径サイズが600φの場合を示し、(b)はパリソンの外径サイズが350φの場合を示す。
図6】従来のパリソン搬送装置を示す平面図であって、(a)はパリソンの外径サイズが600φの場合を示し、(b)はパリソンの外径サイズが400φの場合を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[第一実施形態]
本発明の第一実施形態に係るパリソン搬送装置について図面を参照して説明する。図1に示すように、本実施形態に係るパリソン搬送装置1は、押出し機MからドローダウンされたパリソンPを外側から吸引支持しつつ所定位置まで搬送する装置である。パリソン搬送装置1は、例えば、吸引支持したパリソンPを金型(図示省略)まで搬送する。
【0018】
押出し機Mは、溶融された熱可塑性樹脂をドローダウンさせる装置である。押出し機Mからドローダウンされる熱可塑性樹脂(パリソンP)は筒状を呈する。
【0019】
パリソン搬送装置1は、第一パリソンハンド2及び第二パリソンハンド3を含んで構成されている。第一パリソンハンド2及び第二パリソンハンド3は、パリソンPを挟んで互いに対向する位置に配設されるとともに、同じ高さ位置に配設されている。また、第一パリソンハンド2及び第二パリソンハンド3は、例えば、それぞれロボットアーム等の移動手段(図示省略)に接続されており、パリソンPに対して前進、後進又は昇降し、吸引支持した状態で所定の位置までパリソンPを搬送するように構成されている。
【0020】
図2の(a)に示すように、第一パリソンハンド2は、中央ハンド10と、右側ハンド20と、左側ハンド30とで主に構成されている。第一パリソンハンド2は、パリソンPの外形に概ね沿う形状に屈曲形成されている。中央ハンド10は、第一パリソンハンド2の中央に配設される部材である。中央ハンド10は、本体部11と、複数の吸引孔12と、軸部13,14とを含んで構成されている。
【0021】
本体部11は、略直方体を呈する。本体部11には、前方に開口する吸引孔12が形成されている。吸引孔12の数は特に制限されないが、本実施形態では3つ形成されている。図2の(b)に示すように、吸引孔12は、前後方向に連通しており、後部側は吸引手段(図示省略)に接続されている。吸引手段によって吸引することにより吸引孔12の開口部回りに負圧が発生し、パリソンPを吸引することができる。各吸引孔12の吸引のON・OFFは個別に制御できるように構成されている。
【0022】
軸部13は、本体部11の一端部(進行方向右側の端部)に形成されている。軸部14は、本体部11の他端部(進行方向左側の端部)に形成されている。軸部13,14は、いずれも軸方向が鉛直方向となるように配設されている。
【0023】
右側ハンド(一方側ハンド)20は、第一パリソンハンド2の進行方向(前進方向)右側に配設される部材である。右側ハンド20は、中央ハンド10と同じ高さ位置に配設されており、軸部13を介して中央ハンド10に連結されている。右側ハンド20は、パリソンPに近接する方向に中央ハンド10に対して所定の角度で屈曲している。右側ハンド20は、中央ハンド10に対して回動可能に形成されていてもよいが、本実施形態では、中央ハンド10に対して回動不能になっている。
【0024】
右側ハンド20は、本体部21と、複数の吸引孔22とを含んで構成されている。本体部21は、略直方体を呈する。本体部21は、中央ハンド10の本体部11と略同じ厚さで形成されている。本体部21には、前方に開口する吸引孔22が形成されている。吸引孔22の数は特に制限されないが、本実施形態では2つ形成されている。
【0025】
吸引孔22は、吸引孔12と同等の構成になっている。各吸引孔22の吸引のON・OFFは個別に制御できるように構成されている。
【0026】
左側ハンド(他方側ハンド)30は、第一パリソンハンド2の進行方向(前進方向)左側に配設される部材である。左側ハンド30は、中央ハンド10と同じ高さ位置に配設されており、軸部14を介して中央ハンド10に連結されている。左側ハンド30は、パリソンPに近接する方向に中央ハンド10に対して所定の角度で屈曲している。左側ハンド30の屈曲角度は、右側ハンド20の屈曲角度と同一になっている。左側ハンド30は、中央ハンド10に対して回動可能に形成されていてもよいが、本実施形態では、中央ハンド10に対して回動不能になっている。
【0027】
左側ハンド30は、本体部31と、複数の吸引孔32とを含んで構成されている。本体部31は、略直方体を呈する。本体部31は、中央ハンド10の本体部11と略同じ厚さで形成されている。本体部11、本体部21及び本体部31の長さは、本体部21が最も短くなっており、本体部31が最も長くなっている。本体部31には、前方に開口する吸引孔32が形成されている。吸引孔32の数は特に制限されないが、本実施形態では5つ形成されている。吸引孔32は、内側から順番にそれぞれ32a,32b,32c,32d,32eの符号を付して適宜区別する。
【0028】
吸引孔32は、吸引孔12と同等の構成になっている。また、吸引孔32a〜32eの吸引のON・OFFは個別に制御できるように構成されている。
【0029】
図1に示すように、第二パリソンハンド3は、パリソンPを挟んで第一パリソンハンド2と対向するように配設されている。第二パリソンハンド3は、中央ハンド10と、右側ハンド20と、左側ハンド30とを含んで構成されている。右側ハンド20及び左側ハンド30は、中央ハンド10の端部にそれぞれ連結されている。右側ハンド20は第二パリソンハンド3の進行方向(前進方向)右側に連結され、左側ハンド30は第二パリソンハンド3の進行方向(前進方向)左側に連結されている。
【0030】
これにより、第一パリソンハンド2の右側ハンド20と、第二パリソンハンド3の左側ハンド30とが対向する。また、第一パリソンハンド2の左側ハンド30と、第二パリソンハンド3の右側ハンド20とが対向する。第二パリソンハンド3の構成は、第一パリソンハンド2の構成と略同一であるため詳細な説明は省略する。なお、第一パリソンハンド2及び第二パリソンハンド3の各ハンド(中央ハンド10、右側ハンド20及び左側ハンド30)の長さや、屈曲角度は、後記する吸引支持工程において、互いに接触しないように適宜設定される。
【0031】
また、パリソン搬送装置1は、各部材の動作を制御する制御部(図示省略)を含んで構成されている。制御部は、前記移動手段、前記吸引手段等と電気的に接続されている。パリソン搬送装置1は、制御部から送信される各信号に基づいて、前記移動手段、前記吸引手段等が所定のタイミングで作動し、パリソンPの吸引支持及び搬送を行うことができる。
【0032】
次に、パリソンの搬送方法(パリソン搬送装置1の動作)について説明する。まずは外径サイズが600φのパリソンPを搬送する場合を例示する。600φのパリソンPの搬送方法を、以下、単に「第一搬送方法」と言う。第一搬送方法では、準備工程と、前進工程と、吸引支持工程と、搬送工程とを行う。なお、図3に示すように、パリソンPの中心軸を通り第一パリソンハンド2及び第二パリソンハンド3の進行方向(前後方向)と平行となる軸を前後方向基準線XCLとし、パリソンPの中心軸を通り左右方向と平行となる軸を左右方向基準線YCLとする。
【0033】
準備工程は、図3の(a)及び(b)に示すように、パリソンP(若しくは、パリソンPがドローダウンされる予定位置)を挟んで対向する位置に第一パリソンハンド2及び第二パリソンハンド3を配置させる工程である。第一パリソンハンド2及び第二パリソンハンド3の高さ位置は、同一となるように配置させる。また、中央ハンド10,10の左右方向の中心が、前後方向基準線XCLと重なるように配置させる。つまり、第二パリソンハンド3は、パリソンPの中心軸に対して第一パリソンハンド2の点対称となる位置に配置される。
【0034】
準備工程によって、第一パリソンハンド2及び第二パリソンハンド3は、左右方向基準線YCL方向に互いにずれるように配置される。より詳しくは、第一パリソンハンド2の右側ハンド20の端部は、左右方向基準線YCL方向において、第二パリソンハンド3と重なる位置に配置され、かつ、第一パリソンハンド2の左側ハンド30の端部は、左右方向基準線YCL方向において、第二パリソンハンド3と重ならない位置に配置される。
【0035】
前進工程は、図3(b)に示すように、前記ロボットアーム等の移動手段を作動させて第一パリソンハンド2及び第二パリソンハンド3をパリソンPに対して互いに前進させる工程である。前進工程では、パリソンPの軸方向に対して直交する方向(水平方向)に第一パリソンハンド2及び第二パリソンハンド3を前進させる。
【0036】
図3の(b)に示すように、第一パリソンハンド2及び第二パリソンハンド3は、パリソンPの外周面に第一パリソンハンド2及び第二パリソンハンド3が接触するか、又は、パリソンPと微差な隙間をあけて対向する位置まで前進させる。前進工程で第一パリソンハンド2及び第二パリソンハンド3を前進させると、パリソンPの外径サイズが大きいため、第一パリソンハンド2及び第二パリソンハンド3同士は接触しない。
【0037】
吸引支持工程は、第一パリソンハンド2及び第二パリソンハンド3でパリソンPを吸着支持する工程である。吸引支持工程では、前記吸引手段を作動させて、吸引孔12,22,32の開口部周りに負圧を発生させてパリソンPを吸着させる。具体的な図示は省略するが、図3の(b)を参照するように、吸引手段を作動させると中央ハンド10,10、右側ハンド20,20及び左側ハンド30,30の各前面にパリソンPが吸着され、パリソンPは略多角形を呈するように吸引される。
【0038】
左側ハンド30,30の先端側は、パリソンPから離間しているためパリソンPの吸引が困難となる。そのため、本実施形態の吸引支持工程では、左側ハンド30,30の吸引孔32e,32eは吸引しないように構成している。これにより、吸引手段の出力を低減することができるため、製造コストを低減することができる。吸引支持工程が終了したら、パリソンPを吸引支持した状態で、カッター装置(図示省略)を用いてパリソンPの基端側(パリソン搬送装置1と押出し機Mとの間)を切断する。
【0039】
搬送工程は、第一パリソンハンド2及び第二パリソンハンド3でパリソンPを吸引支持した状態で、所定の位置までパリソンPを搬送する工程である。具体的な図示は省略するが、本実施形態では前記アームロボット等の移動手段を作動させて、パリソンPを金型まで搬送させる。
【0040】
次に、外径サイズが350φのパリソンPを搬送する場合を例示する。350φのパリソンPの搬送方法を、以下、単に「第二搬送方法」と言う。第二搬送方法では、準備工程と、前進工程と、吸引支持工程と、搬送工程とを行う。第二搬送方法は、第一搬送方法と基本的には同等であるが、異なる部分を中心に説明する。
【0041】
準備工程では、図4の(a)及び(b)に示すように、第一実施形態と同じ要領でパリソンP(若しくは、パリソンPがドローダウンされる予定位置)を挟んで対向する位置に第一パリソンハンド2及び第二パリソンハンド3を配置させる。
【0042】
前進工程では、前記ロボットアーム等の移動手段を作動させて第一パリソンハンド2及び第二パリソンハンド3をパリソンPに対して互いに前進させる。図4の(a)及び(b)に示すように、第二搬送方法では、第一パリソンハンド2及び第二パリソンハンド3が左右方向基準線YCL方向に互いにずれるように配置されているため、前進工程を行ってパリソンPを吸引支持可能な位置まで第一パリソンハンド2及び第二パリソンハンド3を近接させても第一パリソンハンド2及び第二パリソンハンド3は接触しない。
【0043】
吸引支持工程では、第一パリソンハンド2及び第二パリソンハンド3でパリソンPを吸着支持する工程である。図4の(b)に示すように、左側ハンド30,30の先端側は、パリソンPと離間しているため吸引が困難となる。そのため、本実施形態の吸引支持工程では、左側ハンド30,30の吸引孔32d,32eは吸引しないように構成している。これにより、吸引手段の出力を低減することができるため、製造コストを低減することができる。吸引支持工程が終了したら、パリソンPを吸引支持した状態で、カッター装置(図示省略)を用いてパリソンPの基端側(パリソン搬送装置1と押出し機Mとの間)を切断する。
【0044】
搬送工程は、第一パリソンハンド2及び第二パリソンハンド3でパリソンPを吸引支持した状態で、所定の位置までパリソンPを搬送する工程である。具体的な図示は省略するが、本実施形態では前記アームロボット等の移動手段を作動させて、パリソンPを金型まで搬送させる。
【0045】
以上説明した本実施形態に係るパリソン搬送装置1によれば、第一パリソンハンド2及び第二パリソンハンド3はパリソンPの左右方向基準線YCL方向においてずらして配置されているため、第一パリソンハンド2及び第二パリソンハンド3を前進させたときに、第一パリソンハンド2及び第二パリソンハンド3が互いに接触しない。
【0046】
より詳しくは、第一パリソンハンド2及び第二パリソンハンド3はパリソンPの左右方向基準線YCL方向においてずらして配置されるとともに、対向する第一パリソンハンド2の右側ハンド20と、第二パリソンハンド3の左側ハンド30との長さが異なる。これにより、第一パリソンハンド2及び第二パリソンハンド3を前進させたときに、第一パリソンハンド2及び第二パリソンハンド3が互いに接触しない。このため、パリソンPの外径サイズに関わらず第一パリソンハンド2及び第二パリソンハンド3をパリソンPに近づけることができる。よって、外径サイズの異なるパリソンPを吸引支持し、搬送することができる。
【0047】
また、同一の構成からなる第一パリソンハンド2及び第二パリソンハンド3をパリソンPの中心軸に対して点対称となる位置に配置し、対向するハンドの長さを補完し合うようにすることで、パリソンPの吸引支持領域を大きく確保できるとともに、バランス良く吸引支持することができる。
【0048】
また、パリソン搬送装置1であれば、第一パリソンハンド2及び第二パリソンハンド3を左右方向基準線YCLに対してずらして配設するだけであるため、簡易な構成とすることができる。また、パリソンPの外径サイズに合わせてパリソン搬送装置1の大きさを変更する必要がないため、設備コストを低減することができる。
【0049】
また、本実施形態のように、中央ハンド10に対して右側ハンド20及び左側ハンド30が回動不能な構成であっても、外径サイズの異なるパリソンPを吸引支持し、搬送することができる。本実施形態のように、右側ハンド20及び左側ハンド30を回動不能な構成とすると、これらを回動させるためのアクチュエータ等の駆動手段を省略できるため、パリソン搬送装置1の重量を小さくすることができる。また、パリソン搬送装置1が高温になるとパリソンPに悪影響を与えるおそれがあるが、アクチュエータ等の駆動手段を省略できるため、パリソン搬送装置1の発熱を抑制することができる。
【0050】
以上本実施形態につい説明したが、本発明の趣旨に反しない範囲において適宜設計変更が可能である。例えば、第一パリソンハンド2及び第二パリソンハンド3は、それぞれ3つのハンド(中央ハンド10、右側ハンド20及び左側ハンド30)で構成したが、2つ又は4つ以上のハンドで構成してもよい。また、第一パリソンハンド2及び第二パリソンハンド3は、関節の無い単一のハンドで構成してもよい。
【0051】
なお、本実施形態では、第一パリソンハンド2及び第二パリソンハンド3は、中央ハンド10に対して右側ハンド20及び左側ハンド30が回動不能な構成としたが、回動可能な構成としてもよい。この場合は、例えば、右側ハンド20及び左側ハンド30にアクチュエータ等の駆動手段を接続することで、軸部13,14を支点に右側ハンド20及び左側ハンド30の屈曲角度を所望の角度に調節することができる。
【0052】
右側ハンド20及び左側ハンド30が回動可能であると、外径サイズの異なるパリソンPに合わせて右側ハンド20及び左側ハンド30をパリソンPに近接又は離間させることができるため、パリソンPをより確実に支持することができる。また、ブロー成形時にパリソンPの上端を封止(チャック)する場合に、第一パリソンハンド2及び第二パリソンハンド3をそれぞれ直線状に変形させることで、パリソンPの上端を好適に封止することができる。
【0053】
[第二実施形態]
次に、本発明の第二実施形態に係るパリソン搬送装置について図面を参照して説明する。図5は、第二実施形態に係る前進工程を示す模式平面図であって、(a)はパリソンの外径サイズが600φの場合を示し、(b)はパリソンの外径サイズが350φの場合を示す。
【0054】
図5に示すように、第二実施形態に係るパリソン搬送装置1Aは、第一パリソンハンド2A及び第二パリソンハンド3Bがそれぞれ4つのハンドで構成されている点で第一実施形態と相違する。第二実施形態では、第一実施形態と異なる部分を中心に説明する。
【0055】
図5の(a)に示すように、パリソン搬送装置1Aは、第一パリソンハンド2A及び第二パリソンハンド3Bを含んで構成されている。第一パリソンハンド2Aは、中央ハンド10Aと、右側ハンド20Aと、第一左側ハンド30Aと、第二左側ハンド40Aとで構成されている。第一パリソンハンド2Aは、パリソンPの外形に概ね沿う形状に屈曲形成されている。
【0056】
右側ハンド20Aは、中央ハンド10Aに対して第一パリソンハンド2Aの進行方向右側に配設されており、第一左側ハンド30A及び第二左側ハンド40Aは、中央ハンド10Aに対して第一パリソンハンド2Aの進行方向左側に配設されている。中央ハンド10Aは、その中心が前後方向基準線XCLと重なる位置に配置されている。第一左側ハンド30Aは、中央ハンド10Aの左端に連結されており、第二左側ハンド40Aは、第一左側ハンド30Aの左端部に連結されている。第一左側ハンド30A及び第二左側ハンド40Aの長さは、それぞれ同一になっている。
【0057】
中央ハンド10A、右側ハンド20A、第一左側ハンド30Aに設けられた吸引孔(図示省略)の構成は第一実施形態と同等である。また、第二左側ハンド40Aにも、第一左側ハンド30Aと同様に吸引孔(図示省略)が形成されている。
【0058】
第二パリソンハンド3Bは、中央ハンド10Bと、右側ハンド20Bと、第一左側ハンド30Bと、第二左側ハンド40Bとで構成されている。第二パリソンハンド3Bは、パリソンPの外形に概ね沿う形状に屈曲形成されている。
【0059】
右側ハンド20Bは、中央ハンド10Bに対して第一パリソンハンド3Aの進行方向右側に配設されており、第一左側ハンド30B及び第二左側ハンド40Bは、中央ハンド10Bに対して第二パリソンハンド3Bの進行方向左側に配設されている。第二パリソンハンド3Bの構成は、第一パリソンハンド2Aと同一である。
【0060】
次に、パリソンの搬送方法(パリソン搬送装置1Aの動作)について説明する。まず、外径サイズが600φのパリソンPを搬送する場合を例示する。第二実施形態に係るパリソンの搬送方法では、準備工程と、前進工程と、吸引支持工程と、搬送工程とを行う。
【0061】
準備工程は、図5の(a)を参照するように、パリソンP(若しくは、パリソンPがドローダウンされる予定位置)を挟んで対向する位置に第一パリソンハンド2A及び第二パリソンハンド3Bを配置させる。第一パリソンハンド2Aと第二パリソンハンド3Bの高さ位置は同じ位置に配置させる。また、準備工程では、中央ハンド10A,10Bの左右方向の中心が、前後方向基準線XCLと重なるように配置させる。つまり、第二パリソンハンド3Bは、パリソンPの中心軸に対して第一パリソンハンド2Aの点対称となる位置に配置させる。
【0062】
前進工程は、図5の(a)に示すように、第一パリソンハンド2A及び第二パリソンハンド3BをパリソンPに対いて互いに前進させる工程である。前進工程では、パリソンPの軸方向に対して直交する方向(水平方向)に第一パリソンハンド2A及び第二パリソンハンド3Bを前進させる。第一パリソンハンド2A及び第二パリソンハンド3Bは、パリソンPの外周面に第一パリソンハンド2A及び第二パリソンハンド3Bが接触するか、又は、パリソンPと微差な隙間をあけて対向する位置まで前進させる。
【0063】
これにより、パリソンPの周囲は第一パリソンハンド2A及び第二パリソンハンド3Bで覆われる。ここでは、パリソンPの外径サイズが600φと大きいため、第一パリソンハンド2Aと第二パリソンハンド3Bとは接触しない。吸引支持工程及び搬送工程は、前記した第一搬送方法と同等であるため、説明を省略する。
【0064】
次に、図5の(b)に示すように、パリソン搬送装置1Aを用いて外径サイズが350φのパリソンPを搬送する場合を例示する。第二実施形態に係るパリソンの搬送方法では、準備工程と、前進工程と、吸引支持工程と、搬送工程とを行う。
【0065】
準備工程は、外径サイズが600φのパリソンPを搬送する場合と同等である。前進工程では、第一パリソンハンド2A及び第二パリソンハンド3BをパリソンPに対いて互いに前進させる工程である。第一パリソンハンド2A及び第二パリソンハンド3Bは、パリソンPの外周面に第一パリソンハンド2A及び第二パリソンハンド3Bが接触するか、又は、パリソンPと微差な隙間をあけて対向する位置まで前進させる。
【0066】
ここでは、パリソンPの外径サイズが350φと小さいが、第一パリソンハンド2A及び第二パリソンハンド3BはパリソンPの左右方向基準線YCL方向においてずらして配置されるとともに、対向する第一パリソンハンド2Aの右側ハンド20Aと、第二パリソンハンド3Bの左側ハンドとの長さ(第一左側ハンド30B及び第二左側ハンド40Bの長さの和)が異なる。また、対向する第一パリソンハンド2Aの左側ハンドの長さ(第一左側ハンド30A及び第二左側ハンド40Aの長さの和)と、第二パリソンハンド3Bの右側ハンド20Bとの長さが異なる。これにより、第一パリソンハンド2及び第二パリソンハンド3を前進させたときに、第一パリソンハンド2A及び第二パリソンハンド3Bが互いに接触しない。
【0067】
吸引支持工程では、第一パリソンハンド2A及び第二パリソンハンド3BでパリソンPを吸着支持する工程である。ここでは、第一左側ハンド30A,30Bの先端側に形成された吸引孔及び第二左側ハンド40A,40Bに形成された全ての吸引孔は、パリソンPから大きく離間しているため、吸引させない。搬送工程は、前記した第二搬送方法と同等であるため、説明を省略する。
【0068】
以上説明した第二実施形態に係るパリソン搬送装置1Aのように、第一パリソンハンド2A及び第二パリソンハンド3Bが4つのハンドで構成される場合でも、第一実施形態と略同等の効果を奏することができる。第一パリソンハンド2A及び第二パリソンハンド3Bのハンドの数(関節数)を多くすると、各ハンドをパリソンPに近接させることが可能となるため、より確実にパリソンPを吸引支持することができる。
【0069】
また、第一パリソンハンド2A及び第二パリソンハンド3Bの右側ハンド20A,20B、第一左側ハンド30A,30B及び第二左側ハンド40A,40Bは隣り合うハンドに対して回動可能な構成としてもよいし、回動不能な構成としてもよい。
【符号の説明】
【0070】
1 パリソン搬送装置
2 第一パリソンハンド
2A 第一パリソンハンド
3 第二パリソンハンド
3B 第二パリソンハンド
10 中央ハンド
10A 中央ハンド
10B 中央ハンド
20 右側ハンド
20A 右側ハンド
20B 右側ハンド
30 左側ハンド
30A 左側ハンド
30B 左側ハンド
40A 第一左側ハンド
40B 第二左側ハンド
M 押出し機
P パリソン
XCL 前後方向基準線(基準線)
YCL 左右方向基準線
図1
図2
図3
図4
図5
図6