特許第6100757号(P6100757)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許61007575−ヒドロキシメチルフルフラールの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6100757
(24)【登録日】2017年3月3日
(45)【発行日】2017年3月22日
(54)【発明の名称】5−ヒドロキシメチルフルフラールの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07D 307/46 20060101AFI20170313BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20170313BHJP
【FI】
   C07D307/46
   !C07B61/00 300
【請求項の数】14
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2014-510810(P2014-510810)
(86)(22)【出願日】2012年5月16日
(65)【公表番号】特表2014-515037(P2014-515037A)
(43)【公表日】2014年6月26日
(86)【国際出願番号】EP2012059193
(87)【国際公開番号】WO2012156479
(87)【国際公開日】20121122
【審査請求日】2015年4月16日
(31)【優先権主張番号】1154232
(32)【優先日】2011年5月16日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】501089863
【氏名又は名称】サントル ナシオナル ドゥ ラ ルシェルシェサイアンティフィク(セエヌエールエス)
(73)【特許権者】
【識別番号】511196870
【氏名又は名称】ユニベルシテ クロード ベルナール リヨン プルミエ
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100077517
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 敬
(74)【代理人】
【識別番号】100087413
【弁理士】
【氏名又は名称】古賀 哲次
(74)【代理人】
【識別番号】100093665
【弁理士】
【氏名又は名称】蛯谷 厚志
(74)【代理人】
【識別番号】100102990
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 良博
(74)【代理人】
【識別番号】100089901
【弁理士】
【氏名又は名称】吉井 一男
(72)【発明者】
【氏名】ナディーヌ エッサエム
(72)【発明者】
【氏名】ロドリゴ ロペス デ ソウザ
(72)【発明者】
【氏名】フランク ラタブール
【審査官】 榎本 佳予子
(56)【参考文献】
【文献】 特表2009−529551(JP,A)
【文献】 CHAREONLIMKUN A,REACTIONS OF C5 AND C6-SUGARS, CELLULOSE, AND LIGNOCELLULOSE 以下備考,FUEL,英国,IPC SCIENCE AND TECHNOLOGY PRESS,2010年10月 1日,V89 N10,P2873-2880,UNDER HOT COMPRESSED WATER(HCW) IN THE PRESENCE OF HETEROGENEOUS ACID CATALYSTS
【文献】 SHIMIZU K-I,ENHANCED PRODUCTION OF HYDROXYMETHYLFURFURAL FROM FRUCTOSE WITH SOLID ACID CATALYSTS 以下備考,CATALYSIS COMMUNICATIONS,NL,ELSEVIER,2009年 8月25日,V10 N14,P1849-1853,BY SIMPLE WATER REMOVAL METHODS
【文献】 CARNITI P,NIOBIC ACID AND NIOBIUM PHOSPHATE AS HIGHLY ACIDIC VIABLE CATALYSTS IN AQUEOUS MEDIUM: 以下備考,CATALYSIS TODAY,NL,ELSEVIER,2006年12月15日,V118 N3-4,P373-378,FRUCTOSE DEHYDRATION REACTION
【文献】 Laura Kupiainen, et al.,Kinetics of glucose decomposition in formic acid,Chemical Engineering Research and Design,2011年12月,Vol.89, No.12 ,pp.2706-2713
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D 307/46
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水中、カルボン酸の存在下でヘキソースまたはヘキソース誘導体を反応させることにより、5−ヒドロキシメチルフルフラール(HMF)を製造する方法であって;
該カルボン酸が、(水+カルボン酸)の全(total)重量に対して、5〜70重量%の量で存在し、
該カルボン酸が、以下から選ばれ、
− 式R−COOHの酸であって、Rが水素原子、またはC1〜C5の線状(linear)または分枝のアルキル鎖であるもの;
− それらの混合物、
該ヘキソースが、フルクトース、グルコースから選ばれ、そして、
該ヘキソース誘導体が、セルロース、ヘミセルロース、澱粉、リグノセルロース性のバイオマスおよび紙からなる群から選ばれる、
方法。
【請求項2】
前記ヘキソースがフルクトースである請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記酸が、ギ酸、酢酸、乳酸、プロピオン酸またはそれらの混合物である請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記酸が、ギ酸、酢酸またはそれらの混合物である請求項1〜のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記カルボン酸が、(水+カルボン酸)の全重量に対して、10〜50重量%の量で存在する、請求項1〜のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記水が、水+カルボン酸の全重量に対して、30〜95重量%の量で存在する請求項1〜のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
リンタングステン酸;水酸化ニオブ;硫酸化ジルコニア;リンタングステン酸の酸性セシウム塩;二酸化チタン;スルホン化カーボン;カルボキシル基により官能基化されたカーボン、および酸化により官能基化されたカーボンからなる群から選ばれた官能基化カーボン;またはこれらの混合物から選ばれる不均一系酸触媒の存在下で行われる、請求項1〜のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記触媒の量が、ヘキソースまたはヘキソース誘導体の重量に対して、2〜100重量%の間である請求項に記載の方法。
【請求項9】
前記ヘキソースまたはヘキソース誘導体の量が、(水+カルボン酸)の全重量に対して、0.5%〜30%の間である請求項1〜のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記反応開始時のpHが、1〜3の間である請求項1〜のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
100〜200℃の間の温度において行われる、請求項1〜のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
有機溶媒の不存在下で行われる請求項1〜11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
連続的に(continuously)行われる請求項1〜12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
水中、カルボン酸の存在下でヘキソースまたはヘキソース誘導体を反応させることにより、HMFを含むカルボン酸溶液を製造する方法であって;該カルボン酸が、(水+カルボン酸)の全(total)重量に対して、5〜70重量%の量で存在し、
該カルボン酸が、以下から選ばれ、
− 式R−COOHの酸であって、Rが水素原子、またはC1〜C5の線状(linear)または分枝のアルキル鎖であるもの;
− それらの混合物、
該ヘキソースが、フルクトース、グルコースから選ばれ、そして、
該ヘキソース誘導体が、セルロース、ヘミセルロース、澱粉、リグノセルロース性のバイオマスおよび紙からなる群から選ばれる、
方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘキソースまたはその誘導体の脱水による5−ヒドロキシメチルフルフラール(HMF)の製造(preparation)、ないしヘキソースまたはヘキソース誘導体を含む生成物に関する。
【背景技術】
【0002】
HMF、およびその本質的(principle)誘導体、フランジカルボン酸(FDCA)は、通常使用されるモノマーたるテレフタル酸に対する、それらの構造的な類似性のため、特にポリマー類(特に、ポリアミド類またはポリエステル類)の製造の点から、非常に大きな潜在的可能性を有する分子である。
【0003】
水性媒体中の、炭水化物、特にフルクトース、グルコースまたはセルロース材料の脱水によって、HMFを得ることができる。しかしながら、特に純粋な水性(purely aqueous)媒体において、その収率および選択性は低い。
【0004】
炭水化物の脱水反応におけるHMF選択性の欠如は、純粋な水性媒体中における、反応中間体またはHMFの第2次(secondary)重合反応の迅速性(例えば、フミンの形成)によって説明される。
【0005】
炭水化物の転化率(conversion)、およびHMF選択性を改良するために、異なる方法が開発された。
【0006】
FR2670209公報から、水性媒体中の酸触媒および抽出溶媒の存在下におけるフルクトースの脱水により、その分解を制限するために、形成されたHMFが該水性媒体から抽出されことを可能とするHMFの製造は知られている。得られる最高の収率は32%であり、且つ、HMF選択性は低い。極端に酸性の反応媒体(より一般的には、極端に厳しい反応条件)の場合において、レブリン酸は、HMFの分解により形成されるフルクトースの脱水の重要な副産物であり得る。
【0007】
アンタル(Antal)ら(Carbohydrates Research、1990、199、91−109)から、低い有機酸の濃度(5重量%未満の触媒量)を含む水性媒体中で、HMFを製造する方法も知られている。HMF収率は、しかしながら、非常に低い。
【0008】
フルクトースまたはグルコースからのHMFの製造のために、水と、ジメチルスルホキシド(DMSO)と、酸触媒と;メチルイソブチルケトン(MIBK)と、ブタノールまたはジクロロメタンに基づく抽出相(その分解を制限するために、形成されたHMFが、水性媒体から抽出されることを可能にする)を含む反応水相からなる二相(biphasic)媒体の使用も、実行されている(WO 2007/146636;Dumesicら、Green Chem., 2007、9、342−350)。N−メチルピロリジン(NMP)等の高い沸点を有する溶媒と、酸触媒(US2006/0142599公報)の使用も提案されている。これらの方法においては、フルクトースとグルコースの転化率、およびHMF選択性は、高い。しかしながら、これらの方法は、有毒であり得る溶媒の使用を必要とし、したがって、得られるHMFの精製を必要として、それらの沸点が高いため、これらの方法が複雑且つ高コストになる。
【0009】
ホウ酸等の弱酸と、これに伴う塩の添加の使用、およびメチルイソブチルケトン等の抽出溶媒の使用も、知られている。フルクトースからのHMF収率は、60%である(トーマス.S.ハンセンら、Green Chem., 2010、13(1)、109〜114)。
【0010】
イオン液体の使用は、ランタニド・ベースの触媒とともに提案されている(Staehlbergら、Green Chem., 2010、12(2)、321−325)。
【0011】
最後に、アンバーリスト(Amberlyst)型の樹脂を含むカラム中、酢酸の存在下における、フルクトースから得られる、そのエステルの加水分解によるHMFの製造も、WO 2009/076627公報から知られている。しかしながら、フルクトースから直接にHMFを得ることを可能にする方法は、記述されていない。
【0012】
よって、炭水化物の転化率とHMF選択性を増大させるために、ますます複雑な技術が開発されている。
【0013】
HMFの選択的な製造は複雑であり、そして、その精製は、この分子の不安定性のために難しい。低コストでHMFを得ることも難しい。これらの理由から、産業的なスケールにおけるHMFの製造は、未だ知られていない。
【0014】
したがって、先行技術のプロセスの不利益に対して、HMFの製造方法を提供することに関する利益がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】FR2670209公報
【特許文献2】WO 2007/146636
【特許文献3】US2006/0142599公報
【特許文献4】WO 2009/076627公報
【非特許文献】
【0016】
【非特許文献1】アンタル(Antal)ら(Carbohydrates Research、1990、199、91−109)
【非特許文献2】Dumesicら、Green Chem., 2007、9、342−350)
【非特許文献3】トーマス.S.ハンセンら、Green Chem., 2010、13(1)、109〜114
【非特許文献4】Staehlbergら、Green Chem., 2010、12(2)、321−325
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明の目的は、産業的な展望から有利な、HMFの製造方法を提供することにある。
【0018】
本発明の他の目的は、高い転化率および選択性でHMFを有するHMFの製造方法を提供することにある。
【0019】
本発明の他の目的は、副生物(特にフミン・タイプのもの)の形成を低減するか、ないしは除去さえ可能とするHMFの製造方法を提供することにある。
【0020】
本発明の他の目的は、触媒有り、または触媒なしで、無毒性であり簡単に除去可能で、および/又はリサイクル可能な溶媒を使用する方法を提供することにある。
【0021】
他の目的は、本発明の以下の説明において記載されるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0022】
これらの目的の全ては、水中で、且つカルボン酸の存在下で、ヘキソースを反応させることにより5−ヒドロキシメチルフルフラール(HMF)を製造する本発明により満たされる。
【0023】
本発明において、「ヘキソース」とは、グルコースまたはフルクトース、およびそれらの混合物等に加えて、化学式C12の環状化合物、またはヘキソースまたはその誘導体を含む、ヘキソース誘導体および生成物を言う。ヘキソースを含む組成物も、本発明の方法によりカバーされる。
【0024】
本発明は、例えば、以下の態様を含むことができる。
【0025】
[1] 水中、カルボン酸の存在下でヘキソースを反応させることにより、5−ヒドロキシメチルフルフラール(HMF)を製造する方法であって;該カルボン酸が、(水+カルボン酸)の全(total)重量に対して、5〜70重量%の量で存在する方法。
【0026】
[2] 前記酸が以下から選ばれる[1]に記載の方法:
−式R−COOHの酸であって、Rが水素原子、または1以上のOH基により置換されていてもよい、C〜C、好ましくはC〜Cの線状(linear)または分枝のアルキル鎖;
−それらの混合物。
【0027】
[3] 前記ヘキソースが、フルクトース、グルコース;セルロース、ヘミセルロースまたは澱粉等のヘキソース誘導体;またはリグノセルロース性のバイオマス、紙等のこれらの誘導体を含む化合物である[1]または[2]に記載の方法。
【0028】
[4] 前記ヘキソースがフルクトースである[1]〜[3]のいずれか1項に記載の方法。
【0029】
[5] 前記酸が、ギ酸、酢酸、乳酸、プロピオン酸またはそれらの混合物である[1]〜[4]のいずれか1項に記載の方法。
【0030】
[6] 前記酸が、ギ酸、酢酸またはそれらの混合物である[1]〜[5]のいずれか1項に記載の方法。
【0031】
[7] 前記カルボン酸がが、(水+カルボン酸)の全重量に対して、10〜50重量%、例えば20重量%の量で存在する、[1]〜[6]のいずれか1項に記載の方法。
【0032】
[8] 前記水が、水+カルボン酸の全体重量に対して、30〜95重量%、例えば50〜90%、例えば80または90重量%の量で存在する[1]〜[7]のいずれか1項に記載の方法。
【0033】
[9] 不均一系酸触媒の存在下で行われる、[1]〜[7]のいずれか1項に記載の方法。
【0034】
[10] 前記酸触媒が、リンタングステン酸、好ましくは水酸化ニオブ上に分散された(dispersed)もの;水酸化ニオブ;硫酸化ジルコニア;リンタングステン酸の酸性セシウム塩;二酸化チタン;スルホン化カーボン;官能基化カーボン、例えばカルボキシル基により、例えば酸化後の、例えばジャベル水による酸化後のもの;およびこれらの混合物から選ばれる[9]に記載の方法。
【0035】
[11] 前記触媒の量が、ヘキソースの重量に対して、2〜100重量%の間、好ましくはヘキソースの重量に対して2〜10重量%の間、例えば5重量%である[9]または[10]のいずれか1項に記載の方法。
【0036】
[12] 前記ヘキソースの量が、(水+カルボン酸)の全重量に対して、0.5%]〜[30%の間、好ましくは1%〜15%の間、例えば1重量%である[1]〜[11]のいずれか1項に記載の方法。
【0037】
[13] 前記反応開始時のpHが、1〜3の間、好ましくは1.5〜2.5の間(例えば1.7)である[1]〜[10]のいずれか1項に記載の方法。
【0038】
[14] 100〜200℃の間、好ましくは120〜180℃の間、例えば150〜180℃の間の温度において行われる、[1]〜[11]のいずれか1項に記載の方法。
【0039】
[15] 有機溶媒の不存在下で行われる[1]〜[14]のいずれか1項に記載の方法。
【0040】
[16] 連続的に(continuously)行われる[1]〜[15]のいずれか1項に記載の方法。
【0041】
[17] [1]〜[16]のいずれか1項に記載の方法により得ることができるHMF、好ましくは0.1〜15重量%のHMFを含むカルボン酸溶液。
【図面の簡単な説明】
【0042】
図1図1は150℃におけるフルクトース転化率に関して、水性媒体に加えられたカルボン酸の性質の影響を示す(Ac=酸性;AcAc=酢酸)。
図2図2は、150℃におけるフルクトース転化率およびHMF収率に関して、水性酢酸溶液に加えられた不均一系触媒の性質の影響を示す。
図3図3は、150℃において、不均一系触媒添加の不存在下、フルクトースのHMFへの転化率に関して、水性反応媒体中の酢酸含有量の影響を示す(Yield=収率;Cata=触媒)。
図4図4は、150℃において、不均一系触媒添加の不存在下、フルクトースのHMFへの転化率に関して、水性反応媒体中のギ酸含有量の影響を示す。
図5図5は、150℃において、5%水酸化ニオブの存在下、フルクトースのHMFへの転化率に関して、水性反応媒体中の酢酸含有量の影響を示す。
図6図6は、HClを水性媒体に加えることにより、酸性pH範囲内に精細に調節された150℃において、フルクトースのHMFへの転化率に関するpHの影響を示す。
図7図7は、純水(pH=6.7);水中の20%酢酸;水中20%酢酸(pH=1.71)にpHが等価な媒体に、HClを加えることにより酸性化された水中の媒体中における、HMF転化率の影響を示す。
図8図8は、150℃において、フルクトースのHMFへの転化率に関して、20%の酢酸を含む水性反応媒体中のフルクトース含有量の影響を示す。
図9図9は、フルクトース転化率およびHMF収率に関する温度の影響を示す。
図10図10は、水−ギ酸反応媒体において、フルクトース転化率およびHMF収率に関する温度の影響を示す。
【発明を実施するための形態】
【0043】
「ヘキソース誘導体」は、それらの構造において、少なくとも1つのヘキソース単位を含む化合物を言い、そして、それらは特にヘキソースの重合により得ることが可能である。本発明に従うヘキソース誘導体は、特にグルコースのポリマーであり、特に澱粉、セルロース、または、少なくとも1つのヘキソース単位含むヘミセルロース)である。
【0044】
本発明によれば、ヘキソースまたはその誘導体を含む生成物は、セルロース、ヘミセルロースおよびリグニンのブレンド;または、セルロースを含む紙(特にリサイクル紙)に対応する、リグノセルロース性のバイオマスにより代表することができる。
【0045】
本発明中におけるように、セルロース、ヘミセルロース、リグノセルロース性のバイオマス、および紙を使用することができる。それらは、本発明のカルボン酸の存在下のステップに供される前に、(特に、幾分(more or less)広範囲な加水分解により)前処理されていてもよい。
【0046】
前記ヘキソースは、好ましくはフルクトースである。
【0047】
前記カルボン酸は、一酸塩基、二塩基酸または三酸基酸でありえる。それらは、特に以下から選ぶことができる:
【0048】
式R−COOHの酸(式中、Rは水素原子;または1以上のOH基により置換されていてもよい、線状または分枝したC〜C(好ましくはC〜C)のアルキル鎖を表す);
【0049】
式HOOC−L−℃OOHの酸(式中、Lは結合;または1以上のOHおよび/又はCOOH基により置換されていてもよい、線状または分枝したC〜C(好ましくはC〜C)のアルキル鎖を表す);またはそれらの混合物。
【0050】
前記カルボン酸は、好ましくは、ギ酸、酢酸、リンゴ酸、クエン酸、シュウ酸、乳酸、プロピオン酸またはそれらの混合物である。
【0051】
特に好ましくは、前記酸は、式R−COOHの酸(式中、Rは水素;または1以上のOH基により置換されていてもよい、線状または分枝したC〜C(好ましくはC〜C)のアルキル鎖を表す);およびそれらの混合物である。好ましくは、該カルボン酸は、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、乳酸またはそれらの混合物である。より好ましくは、該カルボン酸は、ギ酸、酢酸、乳酸またはそれらの混合物である。
【0052】
より好ましくは、カルボン酸は、ギ酸、酢酸またはその混合物である。これらの2つの酸は、反応媒体中において安定なこと、および、簡単に除去できる(特に真空蒸発により)という長所がある。
【0053】
好ましくは、カルボン酸がギ酸であるとき、出発物質たる(starting)ヘキソース(例えばフルクトース)の転化率は、完全(complete)である場合がある。従って、ポリマー(例えばポリアミド類またはポリエステル類)の製造のために、特に、直接に使用可能な、HMFが豊富なギ酸組成物を得ることが可能である。
【0054】
好ましくは、カルボン酸が酢酸であるとき、出発物質たるヘキソース(例えばフルクトース)の転化率、および得られるHMFの精製は、酢酸の揮発性のため、容易化される。従って、ポリマー(例えばポリアミド類またはポリエステル類)の製造のために、特に、直接に使用可能な、HMFが豊富な酢酸組成物を得ること;またはHMFを得るためにこの溶液を精製することが可能である。
【0055】
本発明に従う酸の存在は、水の存在下のみで行われる同じ方法と比較すると、ヘキソース(例えばフルクトース)の転化率、およびHMF選択性を、顕著に増大ができる。
【0056】
当業者は、ヘキソース(例えばフルクトース)、またはHMF選択性の転化率を促進するか、またはこれらの2つの特徴の間の良好な折衷(compromise)をすることが好ましいかどうかに従って、反応媒体と統合されるように、酸の割合および性質を決定することができる。副生物、特にフミンの産生を増大させるリスクのために、酸の量は、あまりに大きくすべきではない。
【0057】
酸の濃度の制御が、特に有利に且つ驚くべき方法で、高いHMF収率および選択性を得ることを可能にすることを、本発明者は示した。低い酸の濃度において、HMF収率は非常に低く、存在しない場合さえあり、そして、高い酸の濃度において、HMF収率は低く、そして、レブリン酸が大量の副生物として得られる。
【0058】
よって、トータルの水+カルボン酸重量に対して、酸の量は好ましくは5〜80重量%の間であり、特に5〜70重量%の間であり、より好ましくは10〜50重量%の間であり、例えば20または10重量%である。
【0059】
驚くべきことに、カルボン酸(特にギ酸および酢酸、特に酢酸)が、水性媒体において形成されたHMFを安定させることを可能とすることも、本発明者によりも示された。
【0060】
よって、水性酢酸媒体において150℃、3hの後に得られるHMFは、最高で25%しか分解せず、他方、HClを加えることにより同じpH(1.71)に酸性化された媒体においては、60%のHMFが分解する。
【0061】
本発明に従う方法において、トータルの水+カルボン酸重量に対して、水は、好ましくは20〜95重量%の間であり、例えば50〜90重量%の間であり、好ましくは30〜95重量%の間であり、例えば80または90重量%の量で存在する。
【0062】
本発明の方法において、ヘキソース(例えばフルクトース)の量は、水とカルボン酸との混合物における、その溶解性に依存している。それは、トータルの水+カルボン酸重量に対して、通常、0.5〜35%の間にあり、好ましくは1%〜30%の間にあり、好ましくは1〜15%にあり、特に0.5〜25%の間(例えば1%)にある。
【0063】
本発明者は、pHも、反応に対する影響がある可能性があることを示した。よってに、pHがあまりに酸性であるならば、大量の副生物(特にフミン)が形成されるかもしれない。
【0064】
好ましくは、反応の開始における反応媒体のpHは、1〜3の間であり、好ましくは1.5〜2.5の間である。それは、例えば、1.7である。
【0065】
本発明に従う方法は、100〜200℃の間で、好ましくは120〜180の間で、例えば150〜180℃の間の温度において実行することができる。
【0066】
本発明に従う方法は、大気圧で、または3.5MPa(すなわち35バール)の圧力までの不活性ガス(例えばヘリウム)の圧力下で、実行することができる。
【0067】
本発明の方法は、不均一系酸触媒の存在下で、好ましくは実行することができる。好ましくは、該触媒はリンタングステン酸(tungstophosphoric)酸(好ましくは水酸化(NbOH)ニオブ上に分散された);水酸化ニオブ;硫酸化された(sulfated)ジルコニア;リンタングステン酸(℃sHPW1240)の酸性セシウム塩類;二酸化チタン;スルホン化されたカーボン;官能基化(例えばカルボキシル基により)されたカーボン、例えば酸化(例えばジャベル(Javel)水による酸化)の後;またはそれらの混合物から選ばれる。
【0068】
これらの触媒の添加は、ヘキソース(例えばフルクトース)の転化率、およびHMF選択性を好適に増大させることを、特に可能にする。
【0069】
特に好ましくは、前記触媒は、スルホン化されたカーボンまたは官能基化されたカーボンである。
【0070】
それが存在する場合には、触媒の量は、ヘキソース(例えばフルクトース)の重量に対して、好ましくは2〜100重量%の間、好ましくは2〜10重量%の間(例えば5重量%)である。
【0071】
好ましくは、本発明の方法は、水以外の溶媒の使用を必要としない。よて、そして、好ましくは、本発明の方法は、有機溶媒の不存在下で行われる。
【0072】
本発明に従う方法は、バッチで、または、連続的に実行することができる。それは、好ましくは連続的に行われる。不均一系酸触媒が使用されるならば、該方法は固定床触媒上で連続的に好ましく行われる。
【0073】
好ましくは、本発明の方法は、50%より大きい、より好ましく90%より大きい転化率で、ヘキソース(特にフルクトース)を得ることができる。
【0074】
好ましくは、本発明の方法は、50%より大きい、好ましくは75%より大きいHMF選択性を得ることができる。
【0075】
本発明は、好ましくは0.1〜10重量%のHMF、例えば0.3〜6重量%のHMFを含み、且つ、例えば0〜5重量%のヘキソース(例えばフルクトース)、例えば0〜0.5重量%のヘキソース(例えばフルクトース)を含むことができる水性カルボン酸溶液にも関する。これらの溶液は、本発明の方法により、および、本発明の方法に基づき(owing to)得ることができる。
【0076】
より詳しくは、本発明は、好ましくは0.1〜15%のHMF、より好ましくは0.1〜10重量%のHMFを含み、且つ、好ましくは0〜5重量%のヘキソース(例えばフルクトース)を含むことができる、水性ギ酸または酢酸溶液に関する。好ましくは、該溶液はキソース(例えばフルクトース)を含まず、特に好ましくはポリマー(例えばポリアミド類とポリエステル類)の製造のために、この溶液を直接使用することができる。
【0077】
ここに非限定的な例を用いて、本発明を記述する。
【実施例】
【0078】
例1:カルボン酸の影響
HMFの合成を、100mlのオートクレーブ中で行う。以下の量を、反応器内に導入する:
60gの水溶液、0.6gのフルクトース。
【0079】
使用する水溶液は、純粋なもの(pure)、またはカルボン酸を含むものである。カルボン酸水溶液は、以下の組成を有している:
−48gの蒸留水に加えた12gの乳酸;または
−48gの蒸留水に加えた12gの酢酸;または
−48gの蒸留水に加えた12gのギ酸。
【0080】
2MPa(20バール(bar))のヘリウムを、オートクレーブ内に導入する。反応媒体を、磁気スターラで攪拌する。150℃にセットされた電気抵抗により、反応媒体を反応温度に至らせる。150℃、2時間の反応の後、オートクレーブを氷浴により冷却する。フルクトース転化率およびHMF選択性を、HPLCRID分析により測定する(カラム:コレゲル(COREGEL)87C)。
【0081】
得られた結果を、図1に示す。該結果は、カルボン酸の添加がフルクトース転化率およびHMF選択性を増大できることを示す。該結果は、ギ酸によりフルクトース転化率が完全(complete)であり、そして、酢酸により、転化率およびHMF選択性の間における最高の折衷(compromise)が得られることを示す。
【0082】
例2:不均一系酸触媒の添加の影響
HMFの合成を、100mlのオートクレーブ中で行う。以下の量を、反応器に導入する:
48gの蒸留水、12gの酢酸、0.6gのフルクトース、30mgの触媒。
ヘリウムの2MPa(20バール)を、反応媒体に導入する。反応媒体は、磁気スターラにより攪拌する。150℃にセットされた電気抵抗により、反応媒体を反応温度に至らせる。2時間の反応の後、オートクレーブを氷浴により冷却する。触媒を、濾過により分離する。フルクトース転化率およびHMF選択性を、HPLC−RID分析により測定する(カラム:コレゲル 87C)。
【0083】
上記方法を、触媒の不存在下において、異なる触媒、すなわちタングステン酸(tungstated)ジルコニア(ZrW)、リンタングステン酸の酸性セシウム塩(CsH:CsHPW1240)、二酸化チタン(TiO)、スルホン化されたカーボン(C/Sulfonated)、ニオブ水酸化物(NbOH)、およびジャベル(Javel)水で酸化した後、カルボキシル基により官能基化したカーボンの存在下で行う。
【0084】
得られた結果を、図2に示す。該結果は、触媒の添加がフルクトース転化率を増大できることを示す。該結果は、転化率およびHMF選択性の間で最高の折衷が、特にスルホン化されたカーボンまたは官能基化されたカーボンにより得られることを示す。
【0085】
例3:カルボン酸含有量の影響
HMFの合成を、100mlのオートクレーブ中で行う。以下の量を、反応器に導入する:
60gの蒸留水、または5%、10%、20%、30%〜50重量%のカルボン酸を含むことができる60gの水溶液、または60gの純粋なカルボン酸、および0.6gのフルクトース。
ヘリウムの2MPa(20バール)を、オートクレーブ内に導入する。反応媒体を、磁気スターラにより攪拌する。150℃にセットされた電気抵抗により、反応媒体を反応温度に至らせる。150℃、2時間の反応の後、オートクレーブを氷浴により冷却する。フルクトース転化率およびHMF選択性を、HPLC−RID分析により測定する(カラム:コレゲル 87C)。
【0086】
上記方法を、カルボン酸を異なる割合(proportions)で含むもの、すなわち、フルクトースを含み、5%、10%、20%、30%および50重量%のカルボン酸を含む水性反応媒体、およびカルボン酸を含まないものにより行った。該方法を、カルボン酸およびフルクトースのみを含むだけ反応媒体によっても行った。
【0087】
得られた結果を、酢酸およびギ酸含有量の影響を示すために、それぞれ図3図4に示す。これらの結果は、大量のカルボン酸に対して、フルクトース転化率が増加するが、HMF選択性が減少することを示す。このように、反応を100%のカルボン酸により行うとき、HMFの非常に少ない量しか得られない。
【0088】
フルクトース転化率およびHMF選択性の間の最高の折衷は、20%のカルボン酸、酢酸および10%ギ酸に対して得られる。
【0089】
同じ方法を、フルクトースの量に関して、5%の水酸化ニオブで行った。得られた結果を、図5で表す。これらの結果は、大量のカルボン酸に対して、フルクトース転化率が増加するが、HMF選択性が減少することを示す。このように、反応が80%を超えるカルボン酸により行うとき、少量のHMFしか得られない。
【0090】
フルクトース転化率およびHMF選択性の間の最高の折衷は、20%の酢酸に対して得られる。
【0091】
例4:開始時(starting)反応媒体のpHの影響
HMFの合成を、100mlのオートクレーブ中で行う。以下の量を、反応器に導入する:
pHを3と1の間で精細に調節するためのHClと0.6gのフルクトースを加えた60gの蒸留水。ヘリウムの2MPa(20バール)を、オートクレーブ内に導入する。反応媒体を、磁気スターラにより攪拌する。150℃にセットされた電気抵抗により、反応媒体を反応温度に至らせる。50℃、2時間の反応の後、オートクレーブを氷浴により冷却する。フルクトース転化率およびHMF選択性を、HPLC−RID分析により測定する(カラム:コレゲル 87C)。
【0092】
反応開始時のpHの影響を検討した。このために、開始時のpHを、HClを加えることにより調節した。
【0093】
結果を図6に示す。これらの結果は、低いpHにおいて、フルクトース転化率が増加するが、HMF選択性が減少することを示す。これらの結果は、1.5〜2.15のpH範囲で、特に20%の酢酸を含む媒体に対応する1.71のpHにおいて、フルクトース転化率およびHMF選択性の間の良好な折衷が得られることを示す。
【0094】
例5:HMFの安定性
水性媒体の組成の関数(function)としての150℃におけるHMF安定性を、100mlのオートクレーブ中で行う。以下の量を、反応器に導入する:
60gの蒸留水、またはHClを加えることによりpH1.71に調整した60gの蒸留水、または12gの酢酸を加えた48gの蒸留水。
これらの溶液に対して、0.6gのフルクトースを加える。ヘリウムの2MPa(20バール)を、オートクレーブ内に導入する。反応媒体を磁気スターラにより攪拌する。150℃にセットされた電気抵抗により、反応媒体を反応温度に至らせれ。反応媒体のサンプルを、反応の開始時、次いで毎時(for every hour)、分析のために採取する。フルクトースの転化率およびHMF選択性を、HPLC−RID分析により測定する(カラム:コレゲル 87C)。
【0095】
水中、20%酢酸を含む水性媒体中、水中20%酢酸にpHが等価になるようにHClを加えることにより酸性化された水中で(すなわち、pH=1.71で)、HMF安定性を検討した。
【0096】
結果を図7に示し、時間の関数に換算した(converted)HMFパーセンテージを示す。
【0097】
これらの結果は、HCl無機酸により酸性化された水性媒体に対する、水性酢酸媒体におけるHMFの安定化を示す。よって、これらの結果は、HMFの製造のためのカルボン酸の使用が、得られるHMFを安定させる一方で、高いヘキソース転化率およびフルクトース収率が得られることを示す。
【0098】
例6:開始時反応媒体中のフルクトース含有量の影響
HMFの合成を、100mlのオートクレーブ中で行う。以下の量を、反応器に導入する:
48gの蒸留水および12gの酢酸に、0.6gのフルクトース(1%)または3gのフルクトース(5%)または6gのフルクトース(10%)または9gのフルクトース(15%)または18gのフルクトース(30%)を加える。
該反応は、48gの蒸留水および0.48gの酢酸(1%)に、18gのフルクトース(30%)を加えたものでも行った。ヘリウムの2MPa(20バール)を、オートクレーブ内に導入する。反応媒体を、磁気スターラにより攪拌する。150℃にセットされた電気抵抗により、反応媒体を反応温度に至らせる。150℃、2時間の反応の後、オートクレーブを氷浴により冷却する。フルクトース転化率およびHMF選択性を、HPLC−RID分析により測定する(カラム:コレゲル 87C)。
【0099】
結果を、図8に示す。該結果は、フルクトース転化率およびHMF収率がフルクトース濃度には顕著に影響されないことを示す。該結果は、濃いフルクトース溶液(特に、15%)、から得られるHMF収率が40%(該収率に近い値が、1%のフルクトース溶液から得られる)に達することを示す。フルクトース濃度は、カルボン酸水溶液中のフルクトースの溶解性により制限される。
【0100】
例7:水−酢酸媒体中のHMF製造に関する温度の影響
HMFの合成を、100mlのオートクレーブ中で行う。以下の量を、反応器に導入する:
48gの蒸留水と、これに12gの酢酸と0.6gのフルクトース(1%)を加えたもの。
ヘリウムの2MPa(20バール)を、オートクレーブ内に導入する。反応媒体を、磁気スターラにより攪拌する。反応媒体を、制御された電気抵抗により反応温度に至らせる。以下の温度が検討される:100℃、120℃、150℃、および180℃。2時間の反応の後、オートクレーブを氷浴により冷却する。フルクトース転化率およびHMF選択性を、HPLC−RID分析により測定する(カラム:コレゲル 87C)。
【0101】
結果を、図9に示す。該結果は、フルクトース転化率およびHMF収率が、100℃および120℃の反応温度において低いことを示す.図9は、フルクトース転化率およびHMF収率が、温度の上昇により増加することを表す。フルクトース転化率およびHMF収率の間で最高の折衷は、150℃の温度において得られ。180℃の温度において、フルクトース転化率は完全であり、HMF選択性も54%に達することが観察された。
【0102】
例8:水−ギ酸媒体中のHMF製造に関する温度の影響
HMFの合成を、100mlのオートクレーブ中で行う。以下の量を、反応器に導入する:
48gの蒸留水に、12gのギ酸と0.6gのフルクトース(1%)を加えたもの。
ヘリウムの2MPa(20バール)を、オートクレーブ内に導入する。反応媒体を、磁気スターラにより攪拌する。反応媒体を、制御された電気抵抗により反応温度に至らせる。以下の温度を検討する:100℃、120℃、150℃、および180℃2時間の反応の後、オートクレーブを氷浴により冷却する。フルクトース転化率およびHMF選択性を、HPLC−RID分析により測定する(カラム:コレゲル 87C)。
【0103】
結果を、図10に示す。該結果は、フルクトース転化率およびHMF収率が100の反応温度において低いことを示す。図10は、150℃まで温度上昇により、フルクトース転化率およびHMF収率の増加を示し、該温度において、転化率が完全であることを示す。180℃の反応温度において、フルクトース転化率は完全であるが、HMF選択性が低く10%である。最高のHMF収率(54%)が、150℃の反応温度において、完全なフルクトース転化率で得られる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10