(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
表面処理炭酸カルシウムをエタノール還流した時に、遊離物として溶出されないで炭酸カルシウム側に残される対イオンが2価以上の脂肪酸塩量の総表面処理剤量に対する割合:Crが55〜75重量%であることを特徴とする、請求項1記載の表面処理炭酸カルシウム填料。
硬化型樹脂が、シリコーン樹脂、変成シリコーン樹脂、アクリル樹脂、変成アクリル樹脂、ポリイソブチレン樹脂から選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項3記載の硬化型樹脂組成物。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明のフロック構造を有する表面処理炭酸カルシウム填料は、脂肪酸塩を含有する脂肪酸系有機物で表面処理された合成炭酸カルシウムであって、該表面処理炭酸カルシウムをエタノール還流した時に、遊離物として溶出される表面処理剤量であって、該表面処理剤量中の対イオンが1価の脂肪酸塩量が総表面処理剤量に対する割合:Srが10〜30重量%であり、表面処理炭酸カルシウムの圧密時の空隙率:Poが38〜45重量%であることを特徴とする。
本発明において、フロック構造とは、三次元網目状に炭酸カルシウム粒子を結合させることを特徴とするものである。このフロック構造の構築度合の指標となるものが圧密時の空隙率Poである。
【0016】
炭酸カルシウムには、天然炭酸カルシウム(重質炭酸カルシウム)及び合成炭酸カルシウム(軽質(膠質)炭酸カルシウム)がある。天然炭酸カルシウムは、石灰石原石から直接製造されるもので、例えば、石灰石原石を機械的に粉砕・分級することにより製造することができる。合成炭酸カルシウムは、水酸化カルシウムから製造されるもので、例えば、水酸化カルシウムを炭酸ガスと反応させることによって製造することができる。水酸化カルシウムは、例えば、酸化カルシウムと水と反応させることによって製造することができる。酸化カルシウムは、例えば、石灰石原石をコークス等で混焼することによって製造することができる。この場合、焼成時に炭酸ガスが発生するので、この炭酸ガスを水酸化カルシウムと反応させることによって炭酸カルシウムを製造することができる。
【0017】
本発明における炭酸カルシウムとしては、炭酸カルシウム粒子がフロック構造を構築する必要性から合成炭酸カルシウムが用いられる。合成炭酸カルシウムのBET比表面積Swは8〜30m
2 /gであることが好ましい。BET比表面積Swが8m
2 /g未満であると、十分なチキソ性を付与することが困難になる場合がある。また、BET比表面積Swが30m
2 /gを超えると、表面を被覆するために必要な表面処理剤量が多くなり、低モジュラス高伸び率は達成できるが、高強度が得られなくなる場合がある。BET比表面積Swのさらに好ましい値は12〜22m
2 /gである。
BET比表面積Swは、BET比表面積計(NOVA2000、ユアサアイオニクス社製)にて1点法にて測定される。
【0018】
本発明における表面処理剤としては、脂肪酸塩を含有する脂肪酸系有機物が用いられる。脂肪酸については特に制限はなく、飽和脂肪酸や不飽和脂肪酸、それらの誘導体、それらの塩などである。これらは単独で、又は必要に応じ2種以上組み合わせて用いられる。
【0019】
飽和脂肪酸は炭素数6〜31の飽和脂肪酸が好ましく、より好ましくは炭素数8〜27であり、さらに好ましくは9〜21である。飽和脂肪酸の具体例としては、カプロン酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ウンデカン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、ヘプタコサン酸、モンタン酸、メリシン酸などが挙げられる。これらの中でも、パルミチン酸、ステアリン酸及びラウリン酸が好ましい。
【0020】
不飽和脂肪酸は分子中に二重結合を持っている脂肪酸であり、例えば、飽和脂肪酸の脱水反応によって生体内で合成される。不飽和脂肪酸としては、炭素数6〜31の不飽和脂肪酸が好ましく、さらに好ましくは炭素数8〜26であり、さらに好ましくは9〜21である。不飽和脂肪酸の具体例としては、オブッシル酸、カプロレイン酸、ウンデシレン酸、リンデル酸、ツズ酸、フィゼテリン酸、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、ペトロセリン酸、オレイン酸、エライジン酸、アスクレピン酸、バクセン酸、ガドレイン酸、ゴンドイン酸、セトレイン酸、エルカ酸、ブラシジン酸、セラコレイン酸、キシメン酸、ルメクエン酸、ソルビン酸、リノール酸などが挙げられる。これらの中でも、オレイン酸、エルカ酸及びリノール酸が特に好ましく用いられる。
【0021】
また、これらが混合された、牛脂や豚脂などの動物原料由来の脂肪酸、パームやヤシなどの植物原料由来の脂肪酸なども好ましく用いられる。
また、それらの塩としては、対イオンが1価の脂肪酸塩であるNa、K等のアルカリ金属塩、対イオンが2価以上の脂肪酸塩であるCa、Ba、Mg、Sr、Al等の金属塩(以下、アルカリ土類等金属塩と記す)が挙げられるが、中でも1価の金属塩としてはNa塩、K 塩、2価の金属塩としてはCa塩が一般的に用いられる。
【0022】
このうち、表面処理炭酸カルシウムをエタノール還流した時に、遊離物として溶出される表面処理剤量のうち、対イオンが1価の脂肪酸塩は分子自体が柔軟なためモジュラスを低下させる作用があるが、対イオンが2価以上の脂肪酸塩より耐水性には劣るため、増やしすぎると耐水性や温水接着性に致命的な悪影響を及ぼす。従って、1価の脂肪酸塩量の総表面処理剤量に対する割合:Srは10〜30重量%であることが必要で、好ましくは13〜27重量%であり、より好ましくは15〜25重量%である。Srが10重量%未満ではモジュラスを低下させる作用が不十分である。
また、表面処理炭酸カルシウムをエタノール還流した時に、遊離物として溶出されないで炭酸カルシウム側に残される表面処理剤量としては、対イオンが2価以上の脂肪酸塩が該当するが、これらは、疎水性であるため耐水性には優れるが、分子自体が剛直なためモジュラスを上昇させる場合があり、従って、炭酸カルシウム側に残される2価以上の脂肪酸塩量の総表面処理剤量に対する割合:Crは、好ましくは55〜75重量%であり、より好ましくは60〜70重量%である。
【0023】
本発明において、総表面処理剤量Tg、1価の脂肪酸塩量の総表面処理剤量に対する割合:Sr、炭酸カルシウム側に残される2価以上の脂肪酸塩量の総表面処理剤量に対する割合:Crは、それぞれ下記の方法で測定される。
【0024】
総表面処理剤量Tg:
熱天秤(リガク社製TG−8110型)にて、直径10mmで0.5mlの白金製容器に表面処理した炭酸カルシウム粒子1gを入れ、15℃/分の昇温速度で昇温して200℃から500℃までの熱減量を測定し、表面処理した炭酸カルシウム粒子1g当りの熱減量率(mg/g)により求める。
【0025】
1価の脂肪酸塩量の総表面処理剤量に対する割合Sr、炭酸カルシウム側に残される2価以上の脂肪酸塩量の総表面処理剤量に対する割合Cr:
表面処理炭酸カルシウムをエタノール還流して求められる対イオンが1価の脂肪酸塩量の総表面処理剤量に対する割合:Srや、エタノール還流した時に、遊離物として溶出されないで炭酸カルシウム側に残される2価以上の脂肪酸塩量の総表面処理剤量に占める割合:Crの測定方法としては、一般的な抽出方法によって測定することが可能である。本発明では、下記の方法により測定される。
飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸及びそれらの1価のアルカリ金属塩、2価以上のアルカリ土類金属等塩で表面処理された炭酸カルシウムの表面処理剤において、脂肪酸のアルカリ土類金属等塩は、95%エタノール溶媒に不溶であるが、脂肪酸及びそのアルカリ金属塩は95%エタノール溶媒に可溶であるため、95%エタノール溶媒を用いた抽出法によって測定することが可能である。そして、抽出物(溶出物)を中和することによって、脂肪酸と脂肪酸のアルカリ金属等塩の割合を測定することができる。
以下に具体的な方法を示す。尚、以下の記載において、「量」は重量基準である。
【0026】
(1)300ml三角フラスコに、表面処理炭酸カルシウムの試料5.00g、95%エタノール80gを取る。
(2)90℃以上のウォーターバス上で、1時間還流させ表面処理剤を溶出する。
(3)20℃で十分冷却後、0.5μm以下のテフロン(登録商標)フィルターで吸引濾過する。
(4)(3)で得られた濾液を乾燥・定量済みの200mlビーカーに取り、90℃以上のウォーターバス上で、蒸発乾固させ溶剤を除去する。溶剤除去後の残存物が、表面処理炭酸カルシウムをエタノール還流した時に遊離物として溶出した表面処理剤量(A)であり、すなわち、対イオンが1価の脂肪酸塩と遊離脂肪酸の総量である。
(5)イソプロピルアルコールにフェノールフタレインを数滴入れ、KOHでピンクになる程度の微アルカリに調整したものを25mlと、(4)の表面処理剤量(A)をビーカーに取り、ウォーターバス上で乾固物を十分に溶解させる。
(6)(5)の溶液を0.1NのKOHでピンク色の微アルカリになるまで滴定する。この時の滴定量(B)(ml)から求められるものが、表面処理剤中の脂肪酸のmol数であり、更に脂肪酸の重量平均分子量(Mw)から、遊離脂肪酸量(C)を算出する。
遊離脂肪酸量:(C)=(B)×0.1/1000×脂肪酸の重量平均分子量×1000(mg)
ここで(A)−(C)によって、表面処理剤量(A)中の対イオンが1価の脂肪酸塩量(D)を求めることができる。
上記(A)、(D)、(C)の値は、いずれも表面処理炭酸カルシウム5.00g当たりの重量であるから、1/5倍することで、表面処理炭酸カルシウム1.0gあたりの量を算出する。さらに、別途測定した総表面処理剤量(Tg)の値から、該総表面処理剤量(Tg)に対する対イオンが1価の脂肪酸塩量(D)の割合、該総表面処理剤量(Tg)に対する遊離脂肪酸量(C)の割合を求める。
対イオンが1価の脂肪酸塩量(D)の総表面処理剤量(Tg)に対する割合:Sr=(D)/5/(Tg)×100%
遊離脂肪酸量(C)の総表面処理剤量(Tg)に対する割合:Ar=(C)/5/(Tg)×100%
その結果、遊離物として溶出されないで炭酸カルシウム側に残される2価以上の脂肪酸塩量が総表面処理剤量(Tg)に占める割合:Crは下記の式により求められる。
Cr=(100−Sr−Ar)%
【0027】
また、本発明における表面処理剤として、差し障りの無い範囲で、ナフテン酸に代表される脂環族カルボン酸、アビエチン酸、ピマル酸、パラストリン酸、ネオアビエチン酸に代表される樹脂酸及びこれらの不均化ロジン、水添ロジン、2量体ロジン、3量体ロジンに代表される変性ロジン、アルキルベンゼンスルホン酸に代表されるスルホン酸類およびそれらのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、アミン塩、さらにはアニオン性、カチオン性、ノニオン性の界面活性剤を単独であるいは2種類以上組み合わせて使用することも可能である。
上記表面処理剤を併用した場合、総表面処理剤量:(Tg)から該表面処理剤分を除外して算出する必要がある。
【0028】
一般的に合成炭酸カルシウムの表面処理(表面被覆)は、湿式処理で行われ、本発明においても好ましくは湿式処理で行われる。この際、表面処理剤として使用される脂肪酸の塩や脂肪酸誘導体の塩は、炭酸カルシウムスラリー中のカルシウムイオンと反応し、一部は炭酸カルシウムの表面以外で沈殿したり、炭酸カルシウム表面で置換反応が行われたりし、一部が、対イオンが2価の脂肪酸塩である脂肪酸Ca塩となり、また一部は対イオンが1価の脂肪酸塩である脂肪酸Na塩として残存し、残りは脂肪酸として残存することになる。
【0029】
また、本発明のフロック構造を有する表面処理炭酸カルシウムの、単位比表面積あたりの表面処理剤量Asは、1.9〜3.5mg/m
2 であることが好ましい。Asが1.9mg/m
2 未満になると、低モジュラス高伸び率を達成することが困難になる場合がある。また、Asが3.5mg/m
2 を超えると、表面処理剤が過多になり低モジュラス高伸び率は達成できるが、高強度を得られなくなる場合がある。単位比表面積あたりの処理量のさらに好ましい範囲は、2.1〜2.8mg/m
2 である。
単位比表面積当たりの表面処理剤量As[ mg/m
2 ] は、総表面処理剤量Tg/BET比表面積Swで求められる。
【0030】
本発明のフロック構造を有する表面処理炭酸カルシウムの圧密時の空隙率:Poは、38〜45%であることが必要である。ここでフロック構造とは、三次元網目状に炭酸カルシウム粒子を結合させることを特徴とするものであり、従来のより単分散に近い状態を狙ったものや、連鎖状あるいは塊状の凝集体とも異なるものである。フロック構造が存在することにより、本来一次粒子径が単分散している場合にとりうる
最密充填構造と比較して、空隙の割合が多くなる。本発明では、フロック構造の構築度合の指標として、空隙率:Poを採用する。
【0031】
最密充填構造をとった場合の空隙率は理論上26%であることが知られており、表面処理炭酸カルシウム粒子が単分散に近いほど空隙率Poは26% に近づく。ただし、26% はあくまでも理論値であり、フロック構造を有さない表面処理炭酸カルシウムの空隙率の数値は30% 前後である。本発明は、フロック構造を有することにより高い空隙率を有することを特徴とするものであり、Poは38〜45%であることが必要で、好ましくは40〜45%である。空隙率が38%未満では目的となる物性が得られず、45%を超えるものは現段階では得ることができていない。
【0032】
空隙率:Poは以下の方法により求められる。
炭酸カルシウムを直径rの円筒形の容器にAg投入し、70kgf/cm
2 の圧力で30秒間圧密し表面処理炭酸カルシウムのペレットを作成する。この時のペレットの圧密高さをH、表面処理炭酸カルシウムの比重をρとする。また理想的な
最密充填構造をとった場合の空隙率の理論値は26%であることが知られていることから、表面処理炭酸カルシウムの空隙率:Poは下記の式で求められる。
Po={1−[ (A/ρ)/26%] /(H×πr
2 )}×100%
本発明においては、島津製 恒圧通気式粉体比表面積測定装置用セル(直径r=1.35cm)を用いて、サンプル量をA=2.00gとして測定を行った。また表面処理炭酸カルシウムの比重ρは、Tgによって変わるが、炭酸カルシウムの真比重2.7 と、一般的な脂肪酸の比重0.9 から、次式によって求めることが可能である。
ρ=[ (1−Tg/1000)×2.7]+[(Tg/1000×0.9)]
空隙率や細孔径を測定するものとしては、水銀圧入式のポロシメーターがあるが、ポロシメーターは非常に高い圧力で水銀を圧入するため、フロックが破壊され数値上優位差が認められない。従って、フロックの構築度合の指標を判断する方法としては、この圧密時の空隙率を用いるのが簡便である。
上記の如き本発明のフロック構造を有する表面処理炭酸カルシウム填料を硬化型樹脂に配合することにより、チキソ性があり、低モジュラスで高伸び率を発揮し、かつ接着面にかかる負荷を低減させる復元率を有する硬化型樹脂組成物を提供することができる。
【0033】
本発明のフロック構造を有する表面処理炭酸カルシウム填料により、この効果が発揮される理由は以下のように推察される。
対イオンが1価の脂肪酸塩量の総表面処理剤量に対する割合を特定することによって、耐水性が悪化しない範囲で低モジュラスを達成可能であり、またフロック構造を有することにより、樹脂成分がフロック構造の空隙に入り込み樹脂と表面処理炭酸カルシウムとの密着性を強固にする。その結果、低モジュラスで高伸び率を発揮するだけでなく、接着面にかかる負荷を低減させる復元率を付与することが可能となる。また、応力破断時には、フロック構造を破壊するためにもエネルギーが消費されるため、好適な強度の硬化物を得ることが可能となるものである。
【0034】
本発明のフロック構造を有する表面処理炭酸カルシウム填料は、特に、チキソ性や低モジュラスで高伸び等が要求されるシーリング材や接着剤の分野における樹脂組成物用に好適に用いられ、例えば、水分や硬化剤等により硬化する硬化型樹脂に好適に配合される。このような硬化型樹脂としては、シリコーン樹脂、変成シリコーン樹脂、アクリル樹脂、変成アクリル樹脂、ポリイソブチレン樹脂等が挙げられ、これらの中で、末端にシラノール基または反応性シリル基を持った、加水分解と縮合反応によってシロキサン結合を形成するシリコーン系樹脂や変成シリコーン系樹脂、ポリイソブチレン系樹脂が好ましい。
【0035】
シリコーン系樹脂としては、アセトキシ基、ケトオキシム基、アルケノキシ基、アミノキシ基およびアミノ基から選ばれる加水分解可能な基を1分子中に少なくとも2個以上有する有機ケイ素化合物又はその部分加水分解物は、上記オルガノポリシロキサンの架橋剤として作用するものであり、本発明の組成物が水分の存在下で室温硬化するための必須成分である。上記加水分解可能な基は、1分子中に3個以上有することが好ましい。また、この有機ケイ素化合物がケイ素原子に結合し得る加水分解性基以外の有機基を有する場合は、前記したポリオルガノシロキサンにおけるRと同様の置換又は非置換の1価炭化水素基が好ましく、特に合成が容易であるという面から炭素原子数が1〜8のアルキル基、炭素原子数が2〜10のアルケニル基及びフェニル基が好ましい。
【0036】
このような有機ケイ素化合物としては、具体的には、メチルトリスメチルエチルケトオキシシラン、ビニルトリスメチルエチルケトオキシシラン、メチルトリスアセトキシシラン、エチルトリスアセトキシシラン、ビニルトリスアセトキシシラン、メチルトリスメトトキシシラン、エチルトリスメトトキシシラン、ビチルトリスメトトキシシラン、アセトアミドシラン、アミノキシシロキサン、メチルトリスシクロヘキシルアミノシラン、メチルトリスイソプロペノキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、ジアセトキシメチルシラン、ジアセトキシジメチルシラン、ジアセトキシメチルビニルシラン、メチルトリアセトキシシラン、トリアセトキシビニルシラン、テトラアセトキシシラン、エチルトリアセトキシシラン、ジアセトキシメチルフェニルシラン、メチルトリ(ブタノキシム)シラン、ビニルトリ(ブタノキシム)シラン、フェニルトリ(ブタノキシム)シラン、プロピルトリ(ブタノキシム)シラン、メチルトリイソプロペノキシシラン、トリイソプロペノキシシラン、テトラプロペノキシシラン、フェニルトリアルケノキシシラン、イソプロピルプロペノキシシラン、ブチルトリプロペノキシシラン、ビニルトリプロペノキシシラン等が例示される。なお、これら有機ケイ素化合物は、単独で使用しても2種以上を混合して使用してもよいが、安定的に製造するには同一の加水分解性基を有する有機ケイ素化合物を単独で又は2種以上組み合わせて使用することが好ましい。
【0037】
上記架橋剤の有機ケイ素化合物又はその部分加水分解物の配合量は、オルガノポリシロキサン100重量部に対して1〜30重量部が好ましく、特に3〜10重量部とすることが好ましい。配合量が1重量部に満たないと組成物の硬化が不十分になり、貯蔵安定性が悪くなる場合があり、一方、30重量部を超えると得られる硬化物が硬く脆くなり、シール材等としての製品性能及びコストパフォーマンスが損なわれる場合がある。
【0038】
変成シリコーン系樹脂としては、ポリオキシアルキレンを主鎖骨格とし、かつ末端もしくは側鎖に加水分解性基(例えば水素原子、ハロゲン原子、アルコキシ基、アシルオキシ基、ケトキシメート基、アミノ基、アミド基、酸アミド基、アミノオキシ基、メルカプト基、アルケニルオキシ基など)を有するシリル基をもつ液状ポリマーを指称する。ポリオキシアルキレンとしては、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレンおよびポリオキシブチレン等が挙げられ、好ましくは、ポリオキシプロピレンである。本発明は、これらに限定されるものではなく、分子中に架橋性シリル基を有するものであれば、主骨格の構造は構わない。変成シリコーン系樹脂はそれ自体公知のものであり、例えば(株)カネカ製のMSポリマーシリーズ(「MSポリマーS−203」など)や旭硝子(株)製「エクセスター」(登録商標)シリーズがある。
【0039】
ポリイソブチレン系樹脂としては、末端に反応性シリル基を導入したシリル基末端ポリエーテルを主成分とし、これと水分との反応でシロキサン結合を形成して硬化するものであり、一般にも市販されているものを使用することができる。例えば、株式会社カネカ製のEP−505S、EP−303S等が例示される。これらは単独で又は必要に応じ2種以上組み合わせて用いられる。更に、必要に応じ、シリコーン系樹脂とポリイソブチレン系樹脂とを組み合わせることも可能である。
【0040】
本発明の硬化型樹脂組成物には、通常、可塑剤、充填剤、硬化剤等が配合され、更に必要に応じ、各種添加剤が配合される。
可塑剤としては、フタル酸ジメチル(DMP)、フタル酸ジエチル(DEP)、フタル酸ジ−n−ブチル(DBP)、フタル酸ジヘプチル(DHP)、フタル酸ジオクチル(DOP)、フタル酸ジイソノニル(DINP)、フタル酸ジイソデシル(DIDP)、フタル酸ジトリデシル(DTDP)、フタル酸ブチルベンジル(BBP)、フタル酸ジシクロヘキシル(DCHP)、テトラヒドロフタル酸エステル、アジピン酸ジオクチル(DOA)、アジピン酸ジイソノニル(DINA)、アジピン酸ジイソデシル(DIDA)、アジピン酸ジ−n−アルキル、ジブチルジグリコールアジペート(BXA)、アゼライン酸ビス(2−エチルヘキシル)(DOZ)、セバシン酸ジブチル(DBS)、セバシン酸ジオクチル(DOS)、マレイン酸ジブチル(DBM)、マレイン酸ジ−2−エチルヘキシル(DOM)、フマル酸ジブチル(DBF)、リン酸トリクレシル(TCP)、トリエチルホスフェート(TEP)トリブチルホスフェート(TBP)、トリス・(2−エチルヘキシル)ホスフェート(TOP)、トリ(クロロエチル)ホスフェート(TCEP)、トリスジクロロプロピルホスフェート(CRP)、トリブトキシエチルホスフェート(TBXP)、トリス(β−クロロプロピル)ホスフェート(TMCPP)、トリフェニルホスフェート(TPP)、オクチルジフェニルホスフェート(CDP)、クエン酸アセチルトリエチル、アセチルクエン酸トリブチルなどがあり、その他にはトリメリット酸系可塑剤、ポリエステル系可塑剤、塩素化パラフィン、ステアリン酸系可塑剤など、さらにジメチルポリシロキサンなどが挙げられる。
【0041】
充填剤としては、無機系のものと有機系のものが挙げられる。無機系のものとしては、炭酸カルシウム(天然品、合成品)、カルシウム・マグネシウム炭酸塩(天然品、合成品)、塩基性炭酸マグネシウム、石英粉、珪石粉、微粉珪酸(乾式品、湿式品、ゲル法品)、微粉末珪酸カルシウム、微粉珪酸アルミニウム、カオリンクレー、パイ
ロフィライトクレー、タルク、セリサイト、雲母、ベントナイト、ネフェリンサイアナイト、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、硫酸バリウム、カーボンブラック(ファーネス、サーマル、アセチレン)、グラファイト、針状・繊維状では、セピオライト、ワラストナイト、ゾノトライト、チタン酸カリウム、カーボン繊維、ミネラル繊維、ガラス繊維、バルーン・ビーズ状では、シラスバルーン、フライアッシュバールン、ガラスバルーン、シリカビーズ、アルミナビーズ、ガラスビーズなどが挙げられる。有機系のものとしては、木粉、クルミ粉、コルク粉、小麦粉、澱粉、エボナイト粉末、ゴム粉末、リグニン、フェノール樹脂、ハイスチレン樹脂、ポリエチレン樹脂、シリコーン樹脂、尿素樹脂繊維状ではセルロース粉末、パルプ粉末、合成繊維粉末などが挙げられる。
【0042】
その他の添加剤としては、硬化触媒や、粘性その他の物性を調整するための溶剤、アマイドワックス、カストル油ワックスなどのワックスが挙げられる。
硬化触媒としては、錫系化合物やアミン化合物等が一般的に使用される。具体的には有機錫化合物として、ジブチル錫ラウレート、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジオクトエート、ジブチル錫アセテート、ジオクチル錫ステアレート、ジオクチル錫ラウレート、ジオクチル錫ジバーサテート、ジブチル錫ビストリエトキシシリケート、ジブチル錫ビスイソノニル・3−メルカプトプロピオネート、ジブチル錫ビスアセチルアセトネート、ジブチル錫ビス(O−フェニルフェノキサイド)、ジブチル錫ビスイソオクチルチオグリコレート、ジブチル錫オキサイド、ジオクチル錫オキサイドなどが例示され、これらは単独又は2種以上組み合わせて用いられる。
【0043】
アミン化合物としては、アミノ基含有シラン化合物が好ましく、例えば、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N,N’−ビス−〔3−(トリメトキシシリル)プロピル〕エチレンジアミン、N,N’−ビス−〔3−(トリエトキシシリル)プロピル〕エチレンジアミン、N,N’−ビス−〔3−(メチルジメトキシシリル)プロピル〕エチレンジアミン、N,N’−ビス−〔3−(トリメトキシシリル)プロピル〕ヘキサメチレンジアミン、N,N’−ビス−〔3−(トリエトキシシリル)プロピル〕ヘキサメチレンジアミン、N,N’−ビス−〔3−(メチルジメトキシシリル)プロピル〕ヘキサメチレンジアミン、N,N−ビス−〔3−(トリメトキシシリル)プロピル〕エチレンジアミン、N,N−ビス−〔3−(メチルジメトキシシリル)プロピル〕エチレンジアミン、N,N−ビス−〔3−(トリエトキシシリル)プロピル〕エチレンジアミン、N,N−ビス−〔3−(トリメトキシシリル)プロピル〕ヘキサメチレンジアミン、N,N−ビス−〔3−(メチルジメトキシシリル)プロピル〕ヘキサメチレンジアミン、N,N−ビス−〔3−(トリエトキシシリル)プロピル〕ヘキサメチレンジアミン、N,N−ビス−〔3−(トリメトキシシリル)プロピル〕アミン、N,N−ビス−〔3−(トリエトキシシリル)プロピル〕アミン、N,N−ビス−〔3−(メチルジメトキシシリル)プロピル〕アミン等が挙げられ、これらは単独又は2種以上組み合わせて用いられる。
また、溶剤としては、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、ヘキサン、ブタン等の脂肪族炭化水素、ガソリン他の石油系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、セロソルブアセテート等のエーテルエステルなどがあり、他にもシリコーンオイル、脂肪酸エステル変性シリコーンオイル等の添加剤、その他必要に応じて種々の添加剤、着色剤等を1種又は2種以上組み合わせて添加することができる。本発明の表面処理炭酸カルシウム填料をシリコーン系樹脂組成物、ポリイソブチレン系樹脂組成物に使用する場合においては、その性能の許す範囲で従来より使用されている填料と組み合わせて使用しても良い。
【0044】
本発明の表面処理炭酸カルシウム填料の樹脂への配合量は、樹脂の種類や用途によって異なり一概には規定しにくいが、通常、樹脂100重量部に対して通常5〜200重量部が適当で、好ましくは20〜150重量部程度である。表面処理炭酸カルシウム填料が5重量部より少ないと十分な温水接着性を付与することは出来ず、また200重量部より多いと粘度が高くなりすぎ、作業性が悪くなる。可塑剤の配合量は適宜選択され特に限定されないが、一般には、樹脂100重量部に対し10〜80重量部が用いられる。充填剤の配合量は適宜選択され特に限定されないが、一般に樹脂100重量部に対し10〜80重量部が用いられる。
【実施例】
【0045】
以下、実施例、比較例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらにより何ら制約を受けるものではない。
【0046】
実施例1
固形分濃度10.0重量%、温度14℃に調整した水酸化カルシウムスラリー10kgに、水酸化カルシウムスラリー1kg当たり、500L/ hrの濃度30%の炭酸ガスを導入し、炭酸カルシウムを合成した。合成した炭酸カルシウムを、攪拌熟成により一次粒子を成長・分散させ、さらに吐出量が20kg/ hrとなるように炭酸カルシウムスラリーを循環させることでフロック構造を有する炭酸カルシウムを製造した。この炭酸カルシウムスラリー10kgに、10重量%になるように温水に溶解させた51gのパーム石鹸(PALM-OLEO(KLANG)SDN.BHD 社製 PALMOSALT 9225)を加えて1時間撹拌し、表面処理を行った。その後、固形分60重量%まで脱水、乾燥、粉砕し、フロック構造を有する表面処理炭酸カルシウム填料を得た。
得られたフロック構造を有する表面処理炭酸カルシウム填料の詳細は表1、表2に記載した。
【0047】
実施例2
60gの牛脂脂肪酸(日本油脂(株)社製 混合脂肪酸)を用い、これをケン化率100%になるようにNaOHを適宜加え調整した、牛脂脂肪酸石鹸を用いる以外は、実施例1と同様にして、フロック構造を有する表面処理炭酸カルシウム填料を得た。
得られたフロック構造を有する表面処理炭酸カルシウム填料の詳細は表1、表2に記載した。
【0048】
実施例3
12.0gのラウリン酸(Oleochemicals社製 C12−98/100MY)、18.0gのミリスチン酸(Oleochemicals社製 C14−98/100MY)、12.0gのステアリン酸(Oleochemicals社製 C18−98/100MY)、18.0gのオレイン酸(Oleochemicals社製 Edenor OL72MY)、これらをケン化率100%になるようにNaOHを適宜加え調整した脂肪酸石鹸を用いる以外は、実施例1と同様にして、フロック構造を有する表面処理炭酸カルシウム填料を得た。
得られたフロック構造を有する表面処理炭酸カルシウム填料の詳細は表1、表2に記載した。
【0049】
実施例4
9.0gのパルミチン酸(Oleochemicals社製 C16−98/100MY)、9.0gのステアリン酸(Oleochemicals社製 C18−98/100MY)、42.0gのオレイン酸(Oleochemicals社製 Edenor OL72MY)、これらをケン化率100%になるようにNaOHを適宜加え調整した、脂肪酸石鹸を用いる以外は、実施例1と同様にして、フロック構造を有する表面処理炭酸カルシウム填料を得た。
得られたフロック構造を有する表面処理炭酸カルシウム填料の詳細は表1、表2に記載した。
【0050】
実施例5
60gの牛脂脂肪酸(日本油脂(株)社製 混合脂肪酸)を用い、これをケン化率75%になるようにNaOHを適宜加え調整した、部分ケン化した牛脂脂肪酸石鹸を用いる以外は、実施例1と同様にして、フロック構造を有する表面処理炭酸カルシウム填料を得た。
得られたフロック構造を有する表面処理炭酸カルシウム填料の詳細は表1、表2に記載した。
【0051】
実施例6
60gの牛脂脂肪酸(日本油脂(株)社製 混合脂肪酸)を用い、これをケン化率150%になるようにNaOHを適宜加え調整した、過剰にケン化した牛脂脂肪酸石鹸を用いる以外は、実施例1と同様にして、フロック構造を有する表面処理炭酸カルシウム填料を得た。
得られたフロック構造を有する表面処理炭酸カルシウム填料の詳細は表1、表2に記載した。
【0052】
実施例7
固形分濃度12.0重量%、温度14℃に調整した水酸化カルシウムスラリー10kgに、水酸化カルシウムスラリー1kg当たり、500L/ hrの濃度30%の炭酸ガスを導入し、炭酸カルシウムを合成した。合成した炭酸カルシウムを、36時間攪拌熟成により一次粒子を成長・分散させ、さらに吐出量が30kg/ hrとなるように炭酸カルシウムスラリーを循環させることでフロック構造を有する炭酸カルシウムを製造した。この炭酸カルシウムスラリー10kgに、10重量%の濃度になるように温水に溶解させた、42gの牛脂脂肪酸(日本油脂(株)社製 混合脂肪酸)と、この脂肪酸のケン化率が100%になるようにNaOHを適宜加え調整した、脂肪酸石鹸を加えて1時間撹拌し、表面処理を行った。その後、固形分60重量%まで脱水、乾燥、粉砕し、フロック構造を有する表面処理炭酸カルシウム填料を得た。
得られたフロック構造を有する表面処理炭酸カルシウム填料の詳細は表1、表2に記載した。
【0053】
実施例8
固形分濃度9.0重量%、温度14℃に調整した水酸化カルシウムスラリー10kgに、水酸化カルシウムスラリー1kg当たり、500L/ hrの濃度30%の炭酸ガスを導入し、炭酸カルシウムを合成した。合成した炭酸カルシウムを、6時間 攪拌熟成により一次粒子を成長・分散させ、さらに吐出量が5kg/ hrとなるように炭酸カルシウムスラリーを循環させることでフロック構造を有する炭酸カルシウムを製造した。この炭酸カルシウムスラリー10kgに、10重量%の濃度になるように温水に溶解させた、温水に溶解させた80gのパーム石鹸(PALM-OLEO(KLANG)SDN.BHD 社製 PALMOSALT 9225)を加えて1時間撹拌し、表面処理を行った。その後、固形分60重量%まで脱水、乾燥、粉砕し、フロック構造を有する表面処理炭酸カルシウム填料を得た。
得られたフロック構造を有する表面処理炭酸カルシウム填料の詳細は表1、表2に記載した。
【0054】
比較例1
60gの牛脂脂肪酸(日本油脂(株)社製 混合脂肪酸)を用い、これをケン化率50%になるようにNaOHを適宜加え調整した、部分ケン化した牛脂脂肪酸石鹸を用いる以外は、実施例1と同様にして、フロック構造を有する表面処理炭酸カルシウム填料を得た。
得られたフロック構造を有する表面処理炭酸カルシウム填料の詳細は表1、表2に記載した。
【0055】
比較例2
56gの牛脂脂肪酸(日本油脂(株)社製 混合脂肪酸)を用い、これをケン化率300%になるようにNaOHを適宜加え調整した、過剰にケン化した牛脂脂肪酸石鹸を用いる以外は、実施例7と同様にして、フロック構造を有する表面処理炭酸カルシウム填料を得た。
得られたフロック構造を有する表面処理炭酸カルシウム填料の詳細は表1、表2に記載した。
【0056】
比較例3
固形分濃度9.0重量%、温度14℃に調整した水酸化カルシウムスラリー10kgに、水酸化カルシウムスラリー1kg当たり、500L/ hrの濃度30%の炭酸ガスを導入し、炭酸カルシウムを合成した。合成した炭酸カルシウムを、60℃で12時間放置熟成し一次粒子を成長・分散させた炭酸カルシウムを製造した。この炭酸カルシウムスラリー10kgに、10%の濃度になるように温水に溶解させた46gのパーム石鹸(PALM-OLEO(KLANG)SDN.BHD 社製 PALMOSALT 9225)を加えて1時間撹拌し、表面処理を行った。その後、固形分60重量%まで脱水、乾燥、粉砕し、表面処理炭酸カルシウム填料を得た。
得られた表面処理炭酸カルシウム填料の詳細は表1、表2に記載した。
【0057】
【表1】
【0058】
【表2】
【0059】
実施例9〜16、比較例4〜6
実施例1〜8、比較例1〜3で得られた表面処理炭酸カルシウム填料を、下記試験方法(1)にて1成分形変成シリコーン系シーラントを作成し、その物性を下記の方法で評価した。シーラントの硬化前の粘度結果を表3、硬化後の物性結果を表4に示す。
【0060】
(試験方法(1)1成分形変成シリコーン系シーラント)
[配合]
変成シリコーン樹脂(MSポリマーS203 (株)カネカ製) 300重量部
可塑剤DINP((株)ジェイプラス社製) 180重量部
重質炭酸カルシウム(スーパーS 丸尾カルシウム(株)製) 90重量部
表面処理炭酸カルシウム填料 420重量部
脱水剤KBM-1003(信越化学工業株式会社製) 18重量部
スズ触媒ネオスタンU220H (日東化成株式会社製) 6重量部
アミノシランKBM-603(信越化学工業株式会社製) 6重量部
合計 1020重量部
【0061】
[混練方法]
5L万能混合撹拌機((株)ダルトン製)に変成シリコーン樹脂、可塑剤を投入し、あらかじめ105℃×2時間以上乾燥させた表面処理炭酸カルシウム填料及び重質炭酸カルシウムとともに投入し、低速15分予備撹拌を行った。その後、混合撹拌機内に付着した填料を掻き落とした後、ただちに真空雰囲気下で高速30分混練を行った。その後に脱水剤、スズ触媒、アミノシランを投入し真空雰囲気下で低速15分混合した。これをアルミ箔ラミネートコーティングされたカートリッジ内に充填、金属プランジャーで密栓し、1成分形変成シリコーンシーラントを作成した。
【0062】
[粘度測定方法]
23℃で1日静置したシーラントをカートリッジガンにて100mlのPPカップへ詰め、BS型粘度計(VISCOMETER TV−20、トキメック(株)製)を用いて(ローターNO.7)測定した。
1rpm粘度は3分後の値を、10rpmは1分後の値をそれぞれ粘度値とした。また、TI値は、1rpm粘度値を10rpm粘度値で割った値で表した。
【0063】
[粘度判定基準]
TI値(1rpm粘度/10rpm粘度)は、以下の基準にて判定を行った。
◎:7.0以上
○:6.5以上7.0未満
△:6.0以上6.5未満
×:6.0未満
【0064】
[引張試験方法]
アルミニウム板(50mm×50mm×3mm )表面に、プライマー(NO.40 横浜ゴム(株)製)を塗布し、60分乾燥させた後、上記シーラントを充填(形状12mm×12mm×50mm)し、JIS A 1439 建築用シーリング材 5.17.2 耐久性、引張試験体の作製に準拠して、H型試験体を作成した。
この試験体を23℃×14日+35℃×14日養生し、23℃×1 日後に引張試験機(オートグラフAG−1 (株)島津製作所製)を用いて測定した。
50%モジュラス:1分間に50mmの速度で引張り、伸び率50%(6mm)伸長させた時の荷重をシーラントの断面積(600mm
2 )で割った値
最大強度:1分間に50mmの速度で引張り、最も大きい荷重をシーラントの断面積で割った値
伸び率:最大強度測定時の変位量を、充填時の形状(12mm)で割って、100 倍した値
接着性(初期) :23℃×14日+35℃×14日養生し、23℃×1 日後 引張試験を行った時に破壊したアルミ接着面に残っているシーラントの割合で判定
接着性(温水) :初期養生後、50℃温水×7 日浸せき後に引張試験を行い、破壊したアルミ接着面に残っているシーラントの割合で判定
【0065】
[ 引張試験判定基準]
50%モジュラス:
◎:0.15N/mm
2 未満
○:0.15 N/mm
2以上0.18 N/mm
2未満
△:0.18 N/mm
2以上0.20 N/mm
2未満
×:0.20N/mm
2 以上
最大強度:
○:0.3 N/mm
2 以上0.6 N/mm
2 未満
△:0.6 N/mm
2 以上
×:0.3 N/mm
2 未満
伸び率:
◎:700%以上
○:600%以上700%未満
△:500%以上600%未満
×:500%未満
接着性: アルミ接着面にシーラントが残った状態を凝集破壊(CF)であらわし、下記の基準にて評価した。
○:シーラントが100%残った状態で破壊(CF100%)
△:シーラントが50% 以上100%未満残った状態で破壊(CF50% 〜CF99% )
×:シーラントが50% 未満残った状態(CF <50%)、もしくは剥がれた状態(AF)
【0066】
[弾性復元性]
アルミニウム板(75mm×12mm×6mm )表面に、プライマー(NO.40 横浜ゴム(株)製)を塗布し、60分乾燥させた後、上記シーラントを充填(形状12mm×12mm×50mm)し、JIS A 1439 建築用シーリング材 5.3.2 引張特性の試験体の作製に準拠して、弾性復元性試験体を作製した。この試験体を23℃×28日+70℃×3 日+23℃水中×1 日+70℃×2 日+23℃水中×1 日養生し、24mm伸長1 時間行う。伸長開放後の幅を測定し、充填時の形状(12mm)で割って100 倍した値を算出した。
【0067】
[弾性復元性判定基準]
◎:60%以上〜65%未満
○:65%以上〜70%未満
△:70%以上〜80%未満
×:60%未満又は80%以上
【0068】
【表3】
【0069】
【表4】
【0070】
表3、表4から明らかなように、実施例1〜8の表面処理炭酸カルシウム填料を配合した実施例9〜16の変成シリコーン系シーラントは、チキソ性に優れ、かつ低モジュラスで、伸び率が大きく、耐水接着性も良好で、接着面に負荷がかかりにくい適度な弾性復元性をもった性能を示していることがわかる。