【実施例】
【0046】
以下、本発明を試験例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によりなんら限定されるものではない。なお、実施例中の「部」および「%」は、特に明示しない限り、それぞれ「重量部」および「重量%」を意味する。
【0047】
以下にポリウレタン水分散体の製造原料、ポリウレタン水分散体の製造例、該水分散体から製造したフィルムの評価方法について説明する。
【0048】
<ポリウレタン水分散体の製造原料>
成分(A):ポリイソシアネート
・ジフェニルメタンジイソシアネート(成分(a1))
(商品名「ミリオネートMT」、日本ポリウレタン工業社製、4,4’-MDIが99.5%以上で残りが2,4’-MDI、以下本製品と他の成分(a1)の製品とを特に区別する必要のない場合は「MDI」と略記する。)
(商品名「ミリオネートNM100」、日本ポリウレタン工業社製、4,4’-MDI:2,4’-MDI=5〜15%:95〜85%)
・脂環式ジイソシアネート(成分(a2))
(水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート(商品名「デスモジュールW」、住化バイエルウレタン社製、以下「H12MDI」と略記)
(イソホロンジイソシアネート(商品名「デスモジュールI」、住化バイエルウレタン社製、以下「IPDI」と略記)
【0049】
成分:ポリオール
・エチレンオキシドとテトラヒドロフランのランダム共重合体(成分(B))
商品名「ポリセリンDC3000E」、モル比(EO/THF)=50/50、数平均分子量3100、日油社製、以下「DC3000」と略記)
・ポリヘキサメチレンカーボネートジオール(成分(C))
商品名「UH−300」、数平均分子量3000、宇部興産社製、以下「UH300」と略記)
商品名「ニッポラン980N」、数平均分子量2000、日本ポリウレタン工業社製)
・ポリエチレングリコール
商品名「PEG2000」、数平均分子量2000、日油社製)
商品名「PEG4000」、数平均分子量4000、日油社製)
【0050】
成分(D):多価アルコール系鎖延長剤
・1,4−ブタンジオール
【0051】
成分(E):カルボキシル基を有するジオール化合物
・2,2−ジメチロールプロピオン酸(以下、「DMPA」と略記)
・2,2−ジメチロールブタン酸(以下、「DMBA」と略記)
【0052】
成分(F):アミン系鎖延長剤
・30% 6水和ピペラジン
【0053】
(その他の成分)
・水
・中和剤:トリエチルアミン
・溶剤:N−メチルピロリドン(NMP)、メチルエチルケトン(MEK)
・触媒:ジオクチル錫ジラウレート
【0054】
<フィルムの評価方法>
(フィルム作製方法)
後述する方法により得られたポリウレタン水分散体をガラス板上にキャストし、室温で24時間乾燥後、45℃で12時間および120℃で120分の熱処理を行い、約100μmの膜厚を有するフィルムを作製した。
【0055】
(柔軟性):100%モジュラスの測定
上記で得られたフィルム(厚み:約100μm)から、JIS 3号のダンベルを用いて試験片を切り出し、島津製作所製オートグラフを用い、チャック間隔60mm、標線20mm、引張速度200mm/分、温度23±2℃で、JIS K6301に準拠して評価した。
試験片が100%伸びた時の引張荷重を測定し、下記式によって引張強度を求めた。
100%モジュラス(MPa)=F
100%/A
ただし、F
100%は100%伸び時の引張荷重(N)、Aは試験片の断面積(mm
2)である。
100%モジュラスの判断基準は以下のとおりである。
◎:4.0MPa未満(良好)
○:4.0MPa以上、9.0MPa未満(やや良)
×:9.0MPa以上(不良)
*上記基準のうち、◎と○は実用性を有すると評価される。
【0056】
(耐エタノール水性能):破断強度の測定
上記で得られたフィルム(厚み:約100μm)から、JIS3号ダンベルを用いて試験片を切り出し、エチルアルコール70%水(23℃±2℃)に30分間浸漬させた後に取り出した。取り出した試験片を軽く拭いてから90秒後に、JIS K−6301に従い、破断強度試験を行い、以下の基準で耐エタノール水性能を評価した。
◎:破断強度が10MPa以上(良好)
○:破断強度が4MPa以上、10MPa未満(やや良)
×:破断強度が4MPa未満(不良)
*上記基準のうち、◎と○は実用性を有すると評価される。
【0057】
(耐エタノール水性能):面積膨潤率の測定
上記で得られたフィルム(厚み:約100μm)から50mm×50mmの試験片を切り出し、エチルアルコール70%水(23℃±2℃)に30分間浸漬させた後に取り出した。取り出した試験片を軽く拭いてから再度面積を測定し、下記式により面積膨潤率を求め、以下の基準で耐エタノール水性能を評価した。
面積膨潤率(%):{(浸漬後の面積−初期の面積)/初期の面積}×100
◎:10%未満(良好)
○:10%以上、60%未満(やや良)
×:60%以上(不良)
*上記基準のうち、◎と○は実用性を有すると評価される。
【0058】
(耐水性能):破断強度の測定
上記で得られたフィルム(厚み:約100μm)から、JIS3号ダンベルを試験片として切り出し、水道水(23℃±2℃)に30分間浸漬させた後に取り出した。取り出した試験片を軽く拭いてから90秒後に、JIS K−6301に従い、破断強度試験を行い、以下の基準で耐エタノール水性能を評価した。
◎:破断強度が10MPa以上(良好)
○:破断強度が4MPa以上、10MPa未満(やや良)
×:破断強度が4MPa未満(不良)
*上記基準のうち、◎と○は実用性を有すると評価される。
【0059】
(耐水性能):面積膨潤率の測定
上記で得られたフィルム(厚み:約100μm)から50mm×50mmの試験片を切り出し、水道水(23℃±2℃)に30分間浸漬させた後に取り出した。取り出した試験片を軽く拭いてから再度面積を測定し、下記式により面積膨潤率を求め、以下の基準で耐エタノール水性能を評価した。
面積膨潤率(%):{(浸漬後の面積−初期の面積)/初期の面積}×100
◎:10%未満(良好)
○:10%以上、60%未満(やや良)
×:60%以上(不良)
*上記基準のうち、◎と○は実用性を有すると評価される。
【0060】
(透湿性能):透湿度の測定
JIS L 1099A−1法(塩化カルシウム法)に準じ、上記で得られたフィルム(厚み:約100μm)の透湿度を測定し、以下の基準で透湿性能を評価した。
◎:800 g/m
2−24hrs 以上
○:500 g/m
2-24hrs 以上、800 g/m
2-24hrs 未満
×:500 g/m
2-24hrs 未満
*上記基準のうち、◎と○は実用性を有すると評価される。
【0061】
1.MDIと脂環式ジイソシアネートを併用したポリウレタン水分散体の特徴
(ポリウレタン水分散体No.1の製造)
反応器に、DC3000(成分(B)) 12.8部、UH300(成分(C))170.9部、ジオクチル錫ジラウレート 0.01部を仕込み、十分撹拌溶解し、MDI(成分(A)) 33.6部、H12MDI(成分(A))17.6部を加えて85℃で3時間反応させた。次に、60℃まで冷却した後、DMPA(成分(E))5.0部、1,4−ブタンジオール(成分(D))5.3部、NMP 61.3部、MEK 188.7部を加え、十分撹拌溶解し、ジオクチル錫ジラウレート 0.04部を加え、80℃で8時間反応させた。その後、イソシアネート値(固形分に対する残存イソシアネート基の重量含有量)が0.8%のプレポリマーを得た。このプレポリマーを50℃まで冷却し、トリエチルアミン 3.7部を加えて中和し、次いで水470.9部を加えて転相乳化した。この乳化分散液に30% 6水和ピペラジン(成分(F))19.1部(残存イソシアネート基に対してアミン基として100当量%)を加えて乳化分散した。得られた乳化液を脱溶剤することにより、不揮発分25%、pH7.3のポリウレタン水分散体No.1を得た。得られた水分散体は、粒子径が0.09μmと微細で、安定していた。
【0062】
(ポリウレタン水分散体No.2〜No.10の製造)
表1に示す原材料、配合処方を用いてポリウレタン水分散体No.1と同様の方法でポリウレタン水分散体No.2〜No.10を製造した。
【0063】
ポリウレタン水分散体No.1〜No.10からフィルムを作製し、柔軟性、耐エタノール水性能、耐水性能および透湿性能を評価した。表2に結果を示す。なお、表2における仕込み原料の数値は、製造原料のうち、成分(A)〜(F)の合計重量を100%としたときの各成分の含有量(重量%)を示したものである。
【0064】
【表1】
【0065】
【表2】
【0066】
本試験は、ポリオールとして成分(B)と成分(C)を併用することを前提として、成分(A)の種類、組合せを種々変えて製造したポリウレタン水分散体から得られたフィルムについて、特に耐エタノール水性能と透湿性能の関係を検討したものである。
表2より、ポリイソシアネートとしてMDI(a1)のみを用いた場合(No.6)は、ポリウレタン水分散体自体が製造できないこと、ポリイソシアネートとしてH12MDI(a2)またはIPDI(a2)のみを用いた場合(No.7,No.9)は、透湿性能はともに実用性を有するが、耐エタノール水性能は破断強度の点で実用性を有さないことが分かった。一方、ポリイソシアネートとして成分(a1)と成分(a2)を併用すると、耐エタノール水性能と透湿性能はともに実用性を有することが分かった。成分(a1)と成分(a2)のモル比としては、本試験例で用いた範囲であれば、耐エタノール水性能と透湿性能はともに実用性を有し、フィルム評価として特に違いはないといえる。
【0067】
2.耐エタノール水性能、透湿性能に優れた処方の検討
(ポリウレタン水分散体No.11の製造)
反応器に、DC3000(成分(B)) 24.9部、UH−300(成分(C))158.4部、ジオクチル錫ジラウレート 0.01部を仕込み、十分撹拌溶解し、MDI(成分(A)) 25.2部、H12MDI(成分(A))26.4部を加えて85℃で3時間反応させた。次に、60℃まで冷却した後、DMPA(成分(E))5.0部、1,4−ブタンジオール(成分(D))5.2部、NMP 61.3部、MEK 188.7部を加え、十分撹拌溶解し、ジオクチル錫ジラウレート 0.04部を加え、80℃で8時間反応させた。その後、イソシアネート値(固形分に対する残存イソシアネート基の重量含有量)が0.8%のプレポリマーを得た。このプレポリマーを、50℃まで冷却し、トリエチルアミン 3.8部を加えて中和し、次いで水470.8部を加えて転相乳化した。この乳化分散液に30% 6水和ピペラジン(成分(F))18.9部(残存イソシアネート基に対してアミン基として100当量%)を加えて乳化分散した。得られた乳化液を脱溶剤することにより、不揮発分25%、pH7.3のポリウレタン水分散体No.11を得た。
【0068】
(ポリウレタン水分散体No.12〜No.22の製造)
表3に示す原材料、配合処方を用いてポリウレタン水分散体No.11と同様の方法でポリウレタン水分散体No.12〜No.22を製造した。
【0069】
ポリウレタン水分散体No.11〜No.22からフィルムを作製し、柔軟性、耐エタノール水性能、耐水性能および透湿性能を評価した。表4に結果を示す。なお、表4における仕込み原料の数値は、製造原料のうち、成分(A)〜(F)の合計重量を100%としたときの各成分の含有量(重量%)を示したものである。
【0070】
【表3】
【0071】
【表4】
【0072】
本試験は、ポリウレタン水分散体中のポリウレタン(樹脂固形分)に対するエチレンオキシド単位(EO)の含有量(単位:重量%)(以下、単に「EO含有量」と略記)と、得られたフィルムについての特に耐エタノール水性能、透湿性能の関係を検討したものである。
表4から、EO含有量がおよそ1.5重量%以上になると、透湿性能が実用性を有すると評価され、さらにEO含有量が7重量%を超えると、実用性に優れた透湿性能を示すことが分かった。
また、耐エタノール水性能は、通常は実用性を有すると評価されるが、EO含有量が増え過ぎて18重量%を超えると、実用性を有しなくなることが分かった。
さらに、本発明品(No.3,No.11,No.13〜No.15,No.17〜No.20)と比較品(No.21,No.22)との比較から、本発明品は、EO含有量が約20重量%近くまでは、安定したポリウレタン水分散体を製造することができるといえる。
【0073】
3.柔軟性、耐エタノール水性能に優れた処方の検討
(ポリウレタン水分散体No.23の製造)
反応器に、DC3000(成分(B))180.5部、UH−300(成分(C))12.8部、ジオクチル錫ジラウレート 0.01部を仕込み、十分撹拌溶解し、ミリオネートNM100(成分(A))29.0部、H12MDI(成分(A))15.3部を加えて85℃で3時間反応させた。次に、60℃まで冷却した後、DMPA(成分(E))5.0部、1,4−ブタンジオール(成分(D))3.1部、NMP 61.4部、MEK 313.6部を加え、十分撹拌溶解し、ジオクチル錫ジラウレート 0.04部を加え、80℃で8時間反応させた。その後、イソシアネート値(固形分に対する残存イソシアネート基の重量含有量)が0.9%のプレポリマーを得た。このプレポリマーを、50℃まで冷却し、トリエチルアミン 3.7部を加えて中和し、次いで水474.7部を加えて転相乳化した。この乳化分散液に30% 6水和ピペラジン(成分(F))19.9部(残存イソシアネート基に対してアミン基として100当量%)を加えて乳化分散した。得られた乳化液を脱溶剤することにより、不揮発分25%、pH7.3のポリウレタン水分散体No.23を得た。
【0074】
(ポリウレタン水分散体No.24,No.25の製造)
表5に示す原材料、配合処方を用いてポリウレタン水分散体No.23と同様の方法でポリウレタン水分散体No.24とNo.25を製造した。
【0075】
ポリウレタン水分散体No.23〜No.25からフィルムを作製し、柔軟性、耐エタノール水性能、耐水性能および透湿性能を評価した。表6に結果を示す。なお、表6における仕込み原料の数値は、製造原料のうち、成分(A)〜(F)の合計重量を100%としたときの各成分の含有量(重量%)を示したものである。
【0076】
【表5】
【0077】
【表6】
【0078】
本試験は、ポリウレタン水分散体中のEO含有量を、表2で用いたNo.1〜No.10と同程度(2.0%)にして、成分(a1)として、異性体成分として2,4’-MDIの含有量が多いミリオネートNM100を用いた場合の効果を検討したものである。表6から、2,4’-MDIの含有量が約90%であるミリオネートNM100を用いた場合、柔軟性について実用性が向上し、耐エタノール水性能について、破断強度および面積膨潤率ともに実用性が向上すると評価された。