(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6100797
(24)【登録日】2017年3月3日
(45)【発行日】2017年3月29日
(54)【発明の名称】高パワー金属クラッドモードアブソーバ
(51)【国際特許分類】
H01S 3/042 20060101AFI20170316BHJP
H01S 3/067 20060101ALI20170316BHJP
【FI】
H01S3/042
H01S3/067
【請求項の数】20
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-547562(P2014-547562)
(86)(22)【出願日】2012年12月19日
(65)【公表番号】特表2015-505162(P2015-505162A)
(43)【公表日】2015年2月16日
(86)【国際出願番号】US2012070454
(87)【国際公開番号】WO2013096363
(87)【国際公開日】20130627
【審査請求日】2015年11月11日
(31)【優先権主張番号】61/577,335
(32)【優先日】2011年12月19日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】501012517
【氏名又は名称】アイピージー フォトニクス コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100089037
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】ヴァレンティン・ガポンツェフ
(72)【発明者】
【氏名】ヴァレンティン・フォミン
(72)【発明者】
【氏名】ミカイル・アブラモフ
(72)【発明者】
【氏名】アントン・フェリン
【審査官】
吉野 三寛
(56)【参考文献】
【文献】
特開2007−271786(JP,A)
【文献】
特開昭55−140726(JP,A)
【文献】
特開2004−146819(JP,A)
【文献】
特開2008−187100(JP,A)
【文献】
特開平07−253517(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01S 3/00−3/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コア、前記コアを取り囲みかつ望ましくない多モード(「MM」)クラッド光を支持する能力があるクラッド、および前記クラッド上に被覆された高分子シース、を設けられたパッシブファイバであって、前記シースが、前記クラッドの面で終わる開口を画定する不連続面を有する、パッシブファイバと、
前記開口内の前記クラッドの露出した部分を覆い、液体金属および液体金属合金ならびにそれらの組み合わせから成る群から選択される組成物を有するアブソーバであって、前記組成物が、前記アブソーバが損傷を受けるしきい温度よりも低い温度に前記組成物を加熱する最適光パワーを有する前記MM光を除去するように構成される、アブソーバと
を含み、
前記MM光はkWレベルに達するパワーを有する、クラッドモードアブソーバ(「CMA」)ユニット。
【請求項2】
前記アブソーバは、ガリウム、インジウム、およびそれらの合金から成る材料から作られる請求項1に記載のCMAユニット。
【請求項3】
前記アブソーバは、Ga(ガリウム)、In(インジウム)およびSnの組成物を含むGalistan@合金から構成され、Ga、InおよびSnのそれぞれの質量分率は、所定の光パワーを除去するように制御可能に変えられる、請求項1に記載のCMAユニット。
【請求項4】
互いに取り外し可能に結合される第1および第2の部分を備えて構成されるヒートシンクをさらに含み、前記第1の部分は、前記アブソーバを備えた前記パッシブファイバのある長さを受け入れる溝を備えて構成され、前記アブソーバは、前記ヒートシンク内に包み込まれる、請求項1に記載のCMAユニット。
【請求項5】
前記ヒートシンクは、金属基部および前記金属基部に結合される上部を有し、前記上部は、1つまたは複数の可鍛性金属およびシリコーンゲルから成る群から選択される、請求項4に記載のCMAユニット。
【請求項6】
前記クラッドの前記露出した部分は、前記クラッドへの前記アブソーバの接着性を改善するようにテクスチャ加工される、請求項1に記載のCMAユニット。
【請求項7】
前記アブソーバは、前記クラッドの熱膨張係数に実質的に整合するように選択される熱膨張係数を備えて構成される、請求項1に記載のCMAユニット。
【請求項8】
前記パッシブファイバは、前記クラッドに取り囲まれ、1kW以上に達するパワーを持つSM光を誘導するように構成されるコアを含む、請求項7に記載のCMAユニット。
【請求項9】
前記コアおよびクラッドはそれぞれ、均一な直径を持つ入力端部領域、前記端部領域の直径よりも大きい均一な直径を持つ中央領域ならびに前記端部領域と前記中央領域とを橋渡しする円錐台形移行領域を含むボトルネック形状の横断面を有し、前記アブソーバは、前記中央領域の少なくとも一部分の上に延びる、請求項8に記載のCMAユニット。
【請求項10】
前記コアおよびクラッドはそれぞれ、均一な直径を持つ間隔の空いた入力端部領域、前記端部領域の直径よりも大きい均一な直径を持つ中央領域ならびに前記中央領域の両端部とそれぞれの端部領域とを橋渡しする円錐台形領域を含む二重ボトルネック形状の横断面を有し、前記アブソーバは、前記中央領域の少なくとも一部分の上に延びる、請求項8に記載のCMAユニット。
【請求項11】
前記コアおよびクラッドはそれぞれ、均一な直径を持つ間隔の空いた入力端部領域、前記端部領域の直径よりも大きい均一な直径を持つ中央領域ならびに前記中央領域の両端部とそれぞれの端部領域とを橋渡しする円錐台形領域を含む二重ボトルネック形状の横断面を有し、移行領域の片方は、もう一方の移行領域よりも長く、前記アブソーバは、前記中央および最長円錐台形領域それぞれの一部分に重なる、請求項8に記載のCMAユニット。
【請求項12】
前記パッシブファイバはさらに、高分子化合物から作られ、前記金属アブソーバから間隔を空けられる少なくとも1つの追加のアブソーバを設けられる、請求項1に記載のCMAユニット。
【請求項13】
パッシブファイバのクラッドからkWレベルに達するパワーを有するMMクラッド光を除去するように構成されるクラッドモードアブソーバを製造する方法であって、前記クラッドは、コアと保護高分子シースとの間に挟まれ、前記方法は、
前記クラッドの所定の長さを露出させるように前記クラッドの所望の位置から前記シースのある長さを除去し、それによって前記シース中に開口を形成するステップと、
液体金属もしくは液体金属合金またはそれらの組み合わせを含む組成物で前記開口を充填し、それによって前記アブソーバが損傷を受ける臨界温度よりも低い所望の温度に前記組成物を加熱する所定の光エネルギーを有する前記MM光の最適量を除去するように前記クラッドの前記長さを覆うステップと
を含む、方法。
【請求項14】
前記アブソーバは、ガリウム、インジウム、およびそれらの合金から成り、前記クラッドの熱膨張係数に実質的に整合する熱膨張係数を有する材料から作られる、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記アブソーバは、約68%Ga(ガリウム)、約21.5%In(インジウム)および約10%Snの組成物を含むGalinstan@合金から構成され、前記組成物は、約−19°の凝固点を有する、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
可鍛性金属から作られた第1の筐体半分に溝を設けるステップと、
前記溝を前記モードアブソーバで充填するステップと、
前記開口を含む前記パッシブファイバのある長さを前記モードアブソーバ中に置き、それによって前記クラッドの前記露出した長さを覆うステップと、
可鍛性金属から作られた第2の筐体半分を前記第1の筐体半分に取り外し可能に結合し、それによって前記アブソーバを備えた前記パッシブファイバの前記長さを密封して包み込むステップと
をさらに含む、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
前記長さの両端部を前記第1の筐体半分に高分子化合物で接着するステップをさらに含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記モードアブソーバの適用の前に前記露出したクラッドの表面をテクスチャ加工するステップをさらに含む、請求項13に記載の方法。
【請求項19】
前記パッシブファイバは、ボトルネック形状の横断面または二重ボトルネック形状の横断面を有する構成を有する、請求項13に記載の方法。
【請求項20】
光路に沿って間隔を空けられ、アクティブファイバをそれぞれ有する複数の利得ブロックと、
多モードポンプ光を放出して前記アクティブファイバに結合するように動作する少なくとも1つのポンプユニットであって、前記MMポンプ光の一部分が、前記アクティブファイバのコアで吸収されない、少なくとも1つのポンプユニットと、
前記それぞれのアクティブファイバに光学的に結合され、コアと高分子シースとの間に挟まれたクラッドをそれぞれ有する複数のパッシブファイバであって、少なくとも1つのパッシブファイバの前記高分子シースが、前記クラッドの所定の長さを露出させる開口を画定する不連続面を有する、複数のパッシブファイバと、
前記開口中に提供され、液体金属もしくは液体金属合金またはそれらの組み合わせから選択される組成物を有するクラッドモードアブソーバであって、前記組成物が、前記アブソーバが損傷を受けるしきい温度よりも低い温度に前記所定の長さに沿って前記組成物を加熱する所定の光パワーを有する吸収されない光の少なくとも一部分を除去するように構成される、クラッドモードアブソーバと
を含み、
前記MMポンプ光はkWレベルに達するパワーを有する、高パワーファイバレーザシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、高パワーファイバレーザシステムに関する。特に、本開示は、パッシブファイバでの望ましくないクラッド誘導光を捕捉して除去するように動作するクラッドモードストリッパ/アブソーバに関する。
【背景技術】
【0002】
高パワー単一モードファイバレーザシステム(「HPSMFLS」)は典型的には、多モード(MM)ポンプ光によって側面励起かまたは端面励起されるアクティブ二重クラッドファイバをそれぞれ含む1つまたは複数の増幅カスケードを備えて構成される。導光導波路クラッドに沿って伝搬するポンプ光は、しばしばアクティブファイバの長さに沿って完全に吸収されず、最終的にSMパッシブファイバのクラッドに結合される。加えて、接合部におけるパワー損失はまた、高分子保護シースの下の導波クラッド中を伝搬する多モード光にも関与している。その上、レーザ処理すべき表面からの後方反射光がまた、クラッドに結合されることもある。10〜12dBの間で変化する適度なポンプ光吸収速度においてさえ、クラッド誘導光は、最終増幅段で容易に300〜600Wに達する可能性がある。クラッド誘導光は、次の理由により望ましくない。
【0003】
典型的には、HPSMFLSのSMパッシブファイバは、クラッド領域の屈折率よりも低い屈折率を有する柔軟な高分子保護シースによって取り囲まれる。ファイバ屈曲部または接合された接続部において、クラッド領域の全反射は、妨害されて、保護シースへのクラッド誘導光の漏れにつながることもある。結果として、保護シースは、過熱されて破壊されることもある。さらに、クラッド中を運ばれるMM放射は、典型的には2つの利得ブロック間に結合されるパッシブSM伝送ファイバまたはSMパッシブファイバであるファイバの端部領域に損傷を与えることもあり、その利得ブロックの1つは、例えば、信号伝搬と反対の方向に励起される。最後に、もしクラッド誘導MM放射が、伝送ファイバの端部に達するならば、送信される光信号のビーム品質は、悪化することもあり、そのことが、他の光学部品および処理品質に悪影響を及ぼす可能性がある。
【0004】
クラッド光を除去し、その光エネルギーを熱エネルギーに変換するように構成されるデバイスは、クラッドモードアブソーバ(「CMA」)として周知である。典型的には、CMAは、クラッドを覆う保護シースからはがし取られたファイバの長さに沿って提供され、クラッドの屈折率よりも高い屈折率を持つ導光高分子化合物として構成される。高分子化合物アブソーバは典型的には、約100から約400Wに至るまでのパワーを持つクラッド光を切り離すことを可能にする。
【0005】
周知のCMAの構造的制限のいくつかは、ファイバおよびCMAの不均一な熱依存性膨張/収縮によって引き起こされる機械的応力に対する低い抵抗力を含む。典型的には、機械的応力は、単一モード(「SM」)大モード面積(「LMA」)ファイバでの微小屈曲損失および高次モード(「HOM」)の励起につながる。
【0006】
なおさらなる制限は、高分子化合物の比較的低い熱伝導率と関連し、それの高い温度につながる。110℃の温度は一般に、臨界的と考えられ、より高い温度は、CMAの破壊につながる。この臨界温度は、ファイバレーザシステムにエネルギーを与えるときに起こる急激な温度変化の間はさらに低い可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許出願第12/559,284号
【特許文献2】米国特許出願第12/630,545号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、高温および機械的応力に抵抗力のある構造を特徴とするCMAを備えて構成されるHPSMFLSの必要性が存在する。
【0009】
改善されたCMAを製造する方法のさらなる必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
これらの必要性は、高温に耐えながら光を吸収し、応力抵抗性構造を提供するように構成される、開示される金属光クラッドエネルギーアブソーバ(「MLCA」)によって満たされる。
【0011】
本開示の一態様は、周知の高分子化合物に基づくアブソーバと対照的に、保護被覆物のはぎ取られた領域に沿って提供される液体金属およびそれらの合金の充填物を含むMLCAに関する。充填物は、光を吸収し、低溶融温度、高熱伝導率、所望の密度および露出したクラッド(石英)への良好な接着性を有するように選択される。以下で論じることになるように、開示されるアブソーバは、周知のシリコンに基づくアブソーバよりもかなり高い入力パワーに耐えることができる。
【0012】
本開示のさらなる態様は、開示されるMLCAの応力抵抗性を改善することに関する。特に、アブソーバを備えたファイバはさらに、充填物を取り囲み、それに接着されるスリーブとして構成されるヒートシンク中に置かれる。高い熱伝導特性に起因して、アブソーバは、石英と金属ヒートシンクとの間の効果的な熱排出媒体として動作する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
開示されるMLCECを設けられた変更SM出力ファイバの概略図である。
【
図2】
ヒートシンクに取り付けられた開示されるMLCAの分解図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
開示されるエネルギーアブソーバ、そのアブソーバを組み込む高パワーファイバレーザシステムおよびアブソーバを製造するための方法について、今から詳細に言及されることになる。可能な限り、同じまたは同様の参照数字が、同じもしくは同様の部分またはステップを参照するために図面および説明で使用される。図面は、単純化された形であり、正確なスケールからは程遠い。便利さおよび明瞭さだけのために、方向を示す用語が、描画用紙の平面に関して使用されてもよく、範囲を制限すると解釈されなくてもよい。具体的に述べられない限り、明細書および請求項での単語および語句は、ファイバレーザ技術分野での当業者に普通の慣習的意味を与えることを目的としている。
【0015】
典型的な利得ブロッ
クは、単独であるかまたは同様に構成された利得ブロックと組み合わせてkWレベルに達する実質的にSMの出力ビームを放出するように動作する。出力ビームは次いで、伝送単一モード(「SM」)パッシブファイ
バによって目的地点に伝送される。パッシブファイ
バは、液体金属、すなわち低温溶融点を持つ金属、または液体金属およびそれらの合金の組み合わせから作られたクラッドモードアブソー
バを設けられている。それ故に、アブソー
バは、ファイ
バのクラッドに沿って誘導される不要なモードを捕捉して吸収するように動作する。
【0016】
2つの利得ブロック、すなわちMOPAの構成要素
において、当業者に周知のようなMOPAは、主発振器MOおよびパワー増幅器PAを含む
。アブソー
バは、伝送ファイバに加えてまたは伝送ファイバの代わりに
、MOおよびPAを光学的に結合するパッシブファイ
バ上に提供されてもよい。ファイ
バは、例えば光信号の前方伝搬方向と反対の方向でPAに結合されるポン
プからの吸収されないポンプ信号を受け取ってもよい。
【0017】
利得ブロッ
ク、例えばパワー増幅器PAは、アクティブファイ
バ、すなわちイッテルビウム、エルビウム、ツリウムおよびその他などの、1つまたは複数の希土類元素のイオンをドープされたファイバ、ならびに単一SM入力および出力パッシブファイ
バをそれぞれ含む。アクティブファイ
バは、1つまたは複数のクラッドおよび多モードコアを備えて構成され、多モードコアは、もし望むならば、所望の波長での基本モードを実質的に支持するように構成される。ポンプユニッ
トによって放出される、多モード(「MM」)ポンプ光は、導波路クラッドに結合され、それに沿って伝搬するにつれて、コアによって徐々に吸収される。すべてのポンプ光が、吸収されるとは限らず、そのいくらかは、クラッド中にとどまる。吸収されないポンプ光および他の異なる起源の不要なモードは、パッシブ出力ファイ
バのクラッドを通ってさらに誘導され、伝送ファイ
バのクラッドに沿ってさらに伝搬する。クラッド光の存在は、前に論じた様々な理由により極めて望ましくなく、最小限にされ、望ましくは完全に除去されるべきである。上記では単一モードシステムおよびファイバを論じるが、開示されるアブソーバは、多モードファイバと併せて使用されてもよいことに留意されたい。
【0018】
ファイ
バは、コ
アおよびクラッ
ドの他に、クラッドの屈折率よりも低い屈折率を持つ高分子保護膜(はぎ取られ
る)をさらに備えて構成される。クラッド伝搬モードを吸収するための条件を創出するために、膜は、ファイ
バの所望の軸方向領域に沿ってはぎ取られて、液体ベースの金属および/またはその合
金でできたアブソー
バに浸されてもよいクラッ
ドのある長さ(stretch)を露出させる。金属は、高分子化合物と対照的に、優れた反射特性を有する。金属被覆物と石英との間の境界に沿って伝搬するクラッド光および特にそれらのモードは、金属被覆物に周期的に衝突する。金
属に入射する光の大部分は、吸収され、残りは、その伝搬を続け、最終的に大きく低減されるまたは完全に除去される。金属アブソー
バは、高い機械的応力、より高い温度に耐えることができ、吸収は、なお制限されるが、伝統的な高分子加工物でよりもよく分配される。全ファイバシステムの周知のパラメータおよび所望の位置に基づいてアブソー
バの最適組成を選択することで、アブソー
バおよびシステムの他の光学部品に損傷を与えることが周知のしきい温度よりも低い温度にその組成物を加熱することができる最大可能光パワーを持つクラッド光が、除去される。
【0019】
液体金属を石英に単に塗布して接着させることは、可能であるが、表面応力はなお、石英への液体金属の不完全な接着のためにかなりある。それ故に、石英の表面は、滑らかではなく、石英/クラッドと金属アブソーバとの間の接合を改善する微視的形成物を有するようにテクスチャ加工される。また、金属アブソーバは、シリコンの熱膨張係数に近い熱膨張係数を有するようにも選択され、そのことはまた、機械的応力も低減する。
【0020】
液体金属およびそれらのそれぞれの合金は、室温または室温近傍では液相で存在し、とりわけガリウム(「Ga」)およびGalinstanなどのその合金を含んでもよい。Galinstanは、68%Ga(ガリウム)、21.5%In(インジウム)および10%Sn(スズ)の組成物であり、約−19°の凝固点を有し、その凝固点の後この材料は、膨張する傾向がある。Galinstanは、他の液体金属および合金と同様に、高分子化合物よりも優れた高度な熱伝導性を有し、それ故に優れた熱伝導および熱放散特性を有する。試験は、この合金でできたエネルギーアブソーバが、600ワットよりも高いクラッド誘導光の光パワーを安全に放散させることができることを示す。合金の組成は、1kWレベルに達するより高いパワーに耐えるように変更されてもよい。特に、合金成分の質量分率は、合金に損傷を与えることが周知のしきい温度よりも低い温度に合金を加熱する最大可能光パワーを持つMM光が、クラッドから除去されるように、制御可能に調節される。
【0021】
図
1を参照すると、クラッド誘導MM光の高パワー密度を低減し、アブソーバ20への熱負荷をいくらか緩和するために、好ましくは、パッシブファイ
バ21は、二重ボトルネック形状の横断面を有してもよく、それはまた、ツインボトル(「TB」)ファイバとも呼ばれる。TBの幾何学的形状は、本出願と同一出願人による、参照により本明細書に完全に組み込まれる同時係属の米国特許出願第12/559,284号および米国特許出願第12/630,545号で詳細に開示される。それ故に、TBファイ
バ21の構成は、間隔を空けられた比較的均一な小径端部領域28、比較的均一な大径中央領域34およびそれぞれの端部領域と中央領域との間の移行領域32を含み、それらは、誘導光の断熱膨張を可能にする。前述の考察に基づいて、アブソーバ20は好ましくは、しかし必ずしもではなく、パワー密度が比較的低い中央領域34に沿って提供される。アブソーバ20の直径は、高分子シースまたは膜
30の外径と同じまたはそれよりも大きくてもよい。TBファイ
バ21はさらに、アブソーバ20から下流に位置する高分子化合物でできた別のアブソーバ36を有してもよい。ファイバ
21の中央領域34は、約300ミクロンの直径を備えて構成されてもよい。
【0022】
図
2を参照すると、高光パワーは、銅、銅とのウォルフラム合金ならびに良好な熱伝導率およびファイバ応力を防止する最小熱膨張を備えて構成される他のものなどの延性材料から作られたヒートシンクを必要とすることもある。好ましい筐体材料は、金属合金と反応しない。ヒートシンクは、締結具42によって互いに取り外し可能に結合される第1の部分38および第2の部分40を含み、そのうちの1つだけが、図示され、ヒートシンクは、パッシブファイ
バ21のある長さを包み込むように構成される。パッシブファイ
バ21のその長さは、アブソーバ20で充填されかつ部分38に提供される溝44の中に置かれる。溝44内のファイバの長さの両端部は、シリコーンゲルなどの接着剤によって部分38に結合される。接着剤はまた、その構造物を密封した状態にするために、アブソーバ20および溝44の中にまた位置してもよいファイバ
21に提供された任意の他のストリッパにも塗布される。ユニット全体を覆う筐体部分40の過熱を防止し、ユニットの気密性をさらに改善さえするために、例えばAlから作られてもよい箔46が、ファイバのその長さと部分40との間に詰め込まれる。別法として、シリコーンゲル、UV接着剤またはエポキシ樹脂が、部分40を使用することなくアブソーバ20を完全に覆ってもよい。これらの材料は、柔軟であり、金属の熱膨張を効果的に補償する。
【0023】
800Wに達するパワーについてさえ、アブソーバは、その構造的完全性を保つ。
【0024】
開示されるアブソーバは、高パワーファイバレーザシステムとの関連で特に有利である。上記ではほとんど、前方伝搬光のアブソーバ20の除去能力に言及したが、アブソーバ20はまた、後方反射光のフィルタとしての役割も果たす。また、上で開示される構成は、SMシステムとの関連で説明されるが、開示されるアブソーバは、MMシステムで同様に効果的に使用されてもよい。例えば、アブソーバは、後方反射を最小限にするようにMM伝送ファイバ上に提供されてもよい。さらに、開示される構成は、連続波およびパルスレーザの両方の構成で使用されてもよい。
【0025】
開示される構造の様々な変形が、その趣旨および本質的特徴から逸脱することなくなされてもよい。それ故に、上記の説明に含まれるすべての事柄は、例示的なだけと解釈されるべきであり、限定する意味では、本開示の範囲は、添付の特許請求の範囲によって規定されるものとする。
【符号の説明】
【0026】
20 アブソーバ
21 パッシブファイ
バ
24 クラッド
28 端部領域
30
高分子シースまたは膜
32 移行領域
34 中央領域
36 アブソーバ
38 ヒートシンクの第1の部分
40 ヒートシンクの第2の部分、筐体部分
42 締結具
44 溝
46 箔