(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6100799
(24)【登録日】2017年3月3日
(45)【発行日】2017年3月22日
(54)【発明の名称】改良されたエアロスタットシステム
(51)【国際特許分類】
B64F 1/14 20060101AFI20170313BHJP
B64B 1/50 20060101ALI20170313BHJP
【FI】
B64F1/14
B64B1/50
【請求項の数】12
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-552399(P2014-552399)
(86)(22)【出願日】2013年1月17日
(65)【公表番号】特表2015-506869(P2015-506869A)
(43)【公表日】2015年3月5日
(86)【国際出願番号】US2013021837
(87)【国際公開番号】WO2013109689
(87)【国際公開日】20130725
【審査請求日】2015年10月23日
(31)【優先権主張番号】61/587,338
(32)【優先日】2012年1月17日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】514179609
【氏名又は名称】アルタエロスエナジーズ,インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】ALTAEROS ENERGIES,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100119378
【弁理士】
【氏名又は名称】栗原 弘幸
(72)【発明者】
【氏名】ランフォード,エフライム,アール.
(72)【発明者】
【氏名】ヴァーミリオン,クリストファー,アール.
(72)【発明者】
【氏名】グラス,ベンジャミン,ダブリュー.
【審査官】
諸星 圭祐
(56)【参考文献】
【文献】
特表平09−511198(JP,A)
【文献】
米国特許第03972493(US,A)
【文献】
特開昭63−227499(JP,A)
【文献】
特開昭63−235198(JP,A)
【文献】
特開昭63−235197(JP,A)
【文献】
特開昭61−085297(JP,A)
【文献】
特開2003−137189(JP,A)
【文献】
米国特許第01845229(US,A)
【文献】
米国特許出願公開第2011/0315810(US,A1)
【文献】
米国特許第04470563(US,A)
【文献】
米国特許第06224015(US,B1)
【文献】
韓国公開特許第10−2010−0065856(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B64F 1/14
B64B 1/50− 1/56
B64B 1/66
B64F 3/00− 3/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多様な風状態における改善された制御、風との受動的整合、及び自律停泊を可能にするエアロスタットシステムであって、該システムは、
(1)シュラウドを含むエアロスタットと;
(2)縦(前/後)方向と横(左/右)方向の各々でテザー装着点間に所定の実質的な分離距離が存在するようにシュラウド上に配置され、各々がそれぞれのウィンチアセンブリによって独立に作動される多数のテザー群と;
(3)地表に対して位置決めされた、回転プラットフォームを含むベースステーションと;を有しており、該プラットフォームは多数のテザー群と相互に接続されており、エアロスタットを停泊構成において前記プラットフォームに対して選択的に係合させるレールアセンブリを含み、
上記ベースステーションは、1又は複数の前方テザー起始点間の横分離距離を複数又は1の後方テザー起始点間の横分離に対して相対的に変化させて、ベースステーションに対するエアロスタットの横移動に対するロール角の反応を機械的に抑制するように構成及び配置されている、エアロスタットシステム。
【請求項2】
前方テザー起始点は後方テザー起始点からシュラウド上のテザー装着点の前方/後方分離とほぼ同様の起始点分離距離で分離されており、これにより地面に対するエアロスタットのピッチ角を抑制する平行リンクを画定する、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
ピッチ角は、約5〜10度の非ゼロ値である請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
テザー群は3点係留構成と4点係留構成の何れか1を画定するように配置されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
テザー群はエアロスタットと回転プラットフォームの双方にモーメントを伝え、これにより両構成要素を卓越風向と受動的に整合させるように構成及び配置されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
停泊構成において回転プラットフォームの枢支点とエアロスタットの圧力中心の縦分離はエアロスタットシステムに卓越風向と受動的に整合させるように構成及び配置されており、停泊中のエアロスタットが高いヨー角で風に対面するのを妨げる、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
多様な風状態における改善された制御、風との受動的整合、及び自律停泊を可能にする、エアロスタットを係留するための方法であって、該方法は
(1)シュラウドを含むエアロスタットを提供するステップと;
(2)縦(前/後)方向と横(左/右)方向の各々でテザー装着点間に所定の実質的な分離距離が存在するようにシュラウドに多数のテザー群を装着して、多数のテザー群の各々がそれぞれのウィンチアセンブリによって独立に作動されるステップと;
(3)地表に対して位置決めされた、回転プラットフォームを含むベースステーションに多数のテザー群を装着し、プラットフォームは停泊構成においてエアロスタットをプラットフォームに対して選択的に係合させるレールアセンブリを含むステップと;
(4)1又は複数の前方テザー起始点間の横分離距離を複数又は1の後方テザー起始点間の横分離に対して相対的に変化させて、ベースステーションに対するエアロスタットの横移動に対するロール角の反応を機械的に抑制するステップと;を有する、エアロスタットを係留するための方法。
【請求項8】
更に、1又は複数の前方テザー起始点をシュラウド上のテザー装着点の前方/後方分離とほぼ同様の起始点分離距離で複数又は1の後方テザー起始点から分離し、これにより地面に対するエアロスタットのピッチ角を抑制する平行リンクを画定する、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記ピッチ角は約5〜10度の非ゼロ値である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記テザー群は3点係留構成と4点係留構成の何れか1つを画定するように配置されている、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
前記テザー群はエアロスタットと回転プラットフォームの双方にモーメントを伝え、これにより両構成要素を卓越風向と受動的に整合させる、請求項7に記載の方法。
【請求項12】
停泊構成において回転プラットフォームの枢支点とエアロスタットの圧力中心の縦分離は、エアロスタットシステムに卓越風向と受動的に整合させるように構成及び配置されており、停泊中のエアロスタットが高いヨー角で風に対面するのを妨げる、請求項7に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアロスタットシステムの構成及びこれらのシステムの飛行操作及び停泊操作に関する。
【背景技術】
【0002】
エアロスタット即ち係留気球は、監視、気象観測及び再生エネルギーなど種々の用途にますます多く使用されている。それらの固有の信頼性、低コスト及び最小限の保守又は燃料で長時間任務を遂行する能力のために、空気より重い航空機や衛星とは比較にならない諸能力のユニークな組み合わせを提供する。しかしながら、エアロスタットは稼働停止時間が長く、また不利な風状態で損傷しやすい。加えて、発進及び着陸操作中にエアロスタットを制御するために典型的にフルタイムの地上勤務員が必要とされるが、これはエアロスタットシステムの運転コストを著しく増大させる。
【0003】
典型的なエアロスタットシステムは、空気より軽い(LTA)ガスで満たされて浮遊する包囲体からなる。ベースステーションは搭載タワー及びウインチ又はアクチュエータを備えた回転プラットフォームからなり、単一のメインテザーが包囲体とベースステーションウインチを接続している。観測機器は包囲体の内部又は下方に吊り下げられている。
【0004】
飛行構成においては所定の長さのテザーが繰り出され、封入されたLTAガスの浮力が包囲体と観測機器を上昇させる。包囲体が受動的に風に向くようにするために、包囲体上の安定板を使用できるが、それ以外にはエアロスタットはテザーのみによって拘束される。強風ではエアロスタットに作用する抗力がエアロスタットを吹き下ろして飛行高度を下げる。飛行構成における典型的なエアロスタットは下降気流の影響を受けやすく、風速の下方垂直成分の結果として高度が急速に失われてテザーがたるむ。下降気流が通過して浮力が再び優勢になると、エアロスタットはテザーがぴんと張るまで急速に上昇する。この衝撃荷重はテザーとエアロスタット包囲体の損傷の主要な原因であり、そのため下降気流状態が発生すると思われる場合にはエアロスタットはしばしば地上に留め置かれる。
【0005】
停泊する際は典型的にウインチ又はアクチュエータがメインテザーを巻き取って、エアロスタットをベースステーションに向って引き寄せる。エアロスタットが実質的に近づいたら、地上勤務員が補助テザーをベースステーションにある補助ウインチに送り込む。典型的に少なくとも1本の補助ノーズテザーがあり、ベースステーションのプラットフォーム上の搭載タワーを通して送り込まれ、メインテザー及び他の補助テザーと組み合わせて、エアロスタットがベースステーションのプラットフォームと一緒に指定された軸中心に旋回できるようにする。地上勤務員は高度に熟練していなければならない。なぜなら、補助テザーが不適切に固定されるとエアロスタットは極めて不安定になり、その結果エアロスタット、観測機器及び/又はベースステーションの損傷を招く恐れがあるからである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
現在、天候が原因の稼働停止時間を最小限にするために、エアロスタットシステムの安全な飛行管理体制を強化することが強く求められている。加えて、主要な任務が発進及び着陸操作の監督を含む飛行班を全員又は一部不要にすることで、エアロスタットの運転コストを大幅に減らすことできる。本発明は、安定した飛行管理体制の強化と地上勤務員の要件の緩和の両方を実現するエアロスタットシステムについて記述する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、エアロスタット、多数のテザー群及びベースステーションを含む改良されたエアロスタットシステムを提供することにより先行技術の短所を克服する。空間的に異なるテザー群により広範な風状態で安定性及び可制御性が改善される。テザー群を独立に作動することにより、エアロスタットのピッチ角とロール角を制御できる。エアロスタットを休止させるレールを含む回転プラットフォームにより補助テザーを用いることなく停泊が可能であり、伝統的なエアロスタットシステムを停泊させるのに必要な地上勤務員を最小限にするか又は不要にする。随意のコントローラによりエアロスタットシステムの遠隔操作又は自律操作が可能となる。本発明は、エアロスタットシステムが安全に動作できる飛行エンベロープを拡大することを意図している。
【0008】
例示的な実施態様において、多様な風状態での改善された制御、風との受動的整合、及び自律停泊を可能にするエアロスタットシステムとこのシステムに対応する係留方法が提供される。このシステム及び方法はエアロスタットのシュラウド上に配置された多数のテザー群を含み、縦(前/後)方向と横(左/右)方向の各々でテザー装着点間に所定の実質的な分離距離が存在し、多数のテザー群の各々がそれぞれのウィンチアセンブリによって独立に作動されるようになっている。加えて、このシステム及び方法は、地表に対して位置決めされた、回転プラットフォームを含むベースステーションを備え、プラットフォームは多数のテザー群と相互に接続されており、エアロスタットを停泊構成において前記プラットフォームに対して選択的に係合させるレールアセンブリを含んでいる。このシステムは更にベースステーションに前方テザー起始点と後方テザー起始点を含む。前方テザー起始点は後方テザー起始点からシュラウド上のテザー装着点の前方/後方分離とほぼ同様の起始点分離距離で分離されており、これにより地面に対するエアロスタットのピッチ角を抑制する平行リンクを画定する。ピッチ角は、例えば約5〜10度の非ゼロ相対角度であるが、これに限らない。例示的に、ベースステーションは1又は複数(例えば1又は2)の前方テザー起始点間の横分離距離を複数又は1(例えば2又は1)の後方テザー起始点間の横分離に対して相対的に変化させるように構成及び配置されている。3点「トライシクル」又は4点テザーハーネスを画定し得るこの配置構成は、ベースステーションに対するエアロスタットの横移動に対するロール角の反応を機械的に抑制する。例示的に、テザー群はエアロスタットと回転プラットフォームの双方にモーメントを伝え、これにより両構成要素を卓越風向と受動的に整合させる。
【0009】
以下に本発明を添付の図面を参照して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】吹き下ろし中にエアロスタットのピッチ角を維持する平行棒リンクの2部分からなる模式的な図解である。
【0011】
【
図2(a)】異なる起始点の左右分離距離に基づく横移動中のエアロスタットのロール方向の模式的な図解である。
【
図2(b)】異なる起始点の左右分離距離に基づく横移動中のエアロスタットのロール方向の模式的な図解である。
【
図2(c)】異なる起始点の左右分離距離に基づく横移動中のエアロスタットのロール方向の模式的な図解である。
【
図2(d)】異なる起始点の左右分離距離に基づく横移動中のエアロスタットのロール方向の模式的な図解である。
【0012】
【
図3(a)】卓越風向に基づくエアロスタットの風及びベースステーションプラットフォームとの受動的整合の模式的な図解である。
【
図3(b)】卓越風向に基づくエアロスタットの風及びベースステーションプラットフォームとの受動的整合の模式的な図解である。
【0013】
【
図4(a)】停泊構成においてエアロスタットに作用する合力をそれぞれ正面図(軸方向)及び側面図で模式的に示した図解である。
【
図4(b)】停泊構成においてエアロスタットに作用する合力をそれぞれ正面図(軸方向)及び側面図で模式的に示した図解である。
【0014】
【
図5(a)】ベースステーションプラットフォームを枢支点中心に駆動する際に枢支点と圧力中心との分離がどのように空気力学的な力を増大させるかを模式的に示した図解である。
【
図5(b)】ベースステーションプラットフォームを枢支点中心に駆動する際に枢支点と圧力中心との分離がどのように空気力学的な力を増大させるかを模式的に示した図解である。
【
図5(c)】ベースステーションプラットフォームを枢支点中心に駆動する際に枢支点と圧力中心との分離がどのように空気力学的な力を増大させるかを模式的に示した図解である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、エアロスタット、3以上の耐力メインテザー群、及びベースステーションからなる改良されたエアロスタットシステム(以下「本発明」と呼ぶ)に関する。本発明は従来技術によるエアロスタットと比べて安定性が増した飛行管理体制を提供する。補助地上アンカなしでエアロスタットを安全に停泊させる手段は、遠隔コントローラ又は自律コントローラと併せて、発進及び着陸操作を行う地上勤務員の必要性を減らすか又はなくする。
【0016】
エアロスタットとテザー
本発明は、任意の形状又はデザインのエアロスタットを包含することを意図している。
図1に示す例示的な実施態様を参照すると、各々のメインテザー群はエアロスタット100上の空間的に異なる装着点104/108及びベースステーション110の起始点102/106で終結している。各テザー群はベースステーションのウインチシステム又は他のアクチュエータにより独立に作動されてよい。テザー装着点は、メインテザーが包囲体と接する位置として、又はマルチラインハーネスを使用してテザーをエアロスタットに装着する場合は各テザー群に対するハーネスライン装着の中間位置として定義される。平均テザー装着点は個々のテザー装着点の張力加重平均位置として定義される。テザー装着点は、前/後即ち縦方向及び左/右方向の双方において装着点間に実質的な分離が存在するように配置されている。各々のメインテザー群はプラットフォーム112上の空間的に異なる起始点102/106を経由しており、プラットフォーム上のウインチシステム又は他のアクチュエータ(「ウインチ」)が起源であり、その間に任意の数の中間テザー経路ステップを有する。平均起始位置は多数のテザー群起始位置の張力加重平均位置として定義される。
【0017】
本発明の例示的な実施態様において、エアロスタットのジオメトリは高い風速で空気力学的揚力を生み出して吹き下ろしを制限して操作高度を維持するように設計されている。空気力学的揚力及び空気力学的揚抗比がエアロスタットのピッチ角の関数であるような実施態様において、エアロスタットのピッチ角及び結果として起こる空気力学的特性を修正するなどのために、前方及び後方テザー長さはそれらの独立のウインチを介して調整されてよい。このことは任意の理由で、例えばピッチ角を増して下降気流中のテザー張力の損失を防ぎ、又はピッチ角を減らして高い風速でテザー張力を制限するために行われてよいが、これに限らない。
【0018】
ベースステーション
図3を参照すると、ベースステーションの実施態様は、ベースと、このベースに旋回軸受又は他の回転機構によって接続された回転プラットフォーム(以下「プラットフォーム」と呼ぶ)112とからなる。回転機構は、プラットフォームがそれを中心に回転できる枢軸Pを画定する。枢軸を中心としたプラットフォームの回転は自由であってよく、又はプラットフォームを特定の方位と整合させるために駆動されてもよい。
図4を参照すると、プラットフォーム112はエアロスタットが停泊構成で載るための1以上のレール又はその他の構造(以下「レール」と呼ぶ)402を有する。
【0019】
枢軸位置を平均起始位置に対して適切に位置決めすることにより、テザーはプラットフォームを特定の方向に整合させる作用モーメントをプラットフォームに伝えることができる。
図3に示す本発明の例示的な実施態様では、枢軸Pの位置は平均起始位置の実質的に前方にあり、好ましくは起始点102(a)及び102(b)と一致しているか又はこれらの前方にある。このようにするとテザー内の平均張力がモーメントをプラットフォームに伝えて、テザー方向の水平成分を、平均起始位置から枢軸に延びる線によって画定されるプラットフォーム縦方向と整合させることが確保される。
【0020】
更に、
図3の例示的な実施態様では
図1におけると同様、前方起始点102と後方起始点106は、分離距離がシュラウド上のテザーの前方装着点104と後方装着点108の分離と実質的に同様となるように配置されており、その結果対応する起始点とテザー装着点との間には実質的に平行リンクが生じる。
【0021】
このような実質的な平行リンクの結果、
図1に例示されているように、エアロスタットの吹き下ろしによるピッチ角αの変化が最小になる。空気力学的揚力を含む構成を有するどんなエアロスタットにとっても、このことは風速の変化に伴い一定の空気力学的揚抗比を維持するために極めて重要である。
【0022】
加えて、
図3に例示されているように、エアロスタット縦軸がプラットフォーム縦軸と整合されていないときは、この前方/後方分離の結果としてモーメントが回復されてエアロスタット縦軸をそれ自身プラットフォーム縦軸と整合させる。
【0023】
最後に、
図2を参照すると、ベースステーション中心線からの距離を変えることにより、左右の起始点102(a)及び(b)は、与えられた用途の必要に応じて、ベースステーションに対するエアロスタット横移動に対するロール角の反応を機械的に抑制するように配置できる。
【0024】
正のロール角反応は、空気力学的揚力を有する実施態様において揚力ベクトルを再整合して風向変化の間に並進変位を制限する回復力を提供するため有利である。横移動に対する正のロール角反応を実現するためには、プラットフォーム上の左右起始点102/106間の分離距離は、エアロスタット上の側方テザー装着点104/108の分離距離より大きくなければならない。
【0025】
横移動に対する負のロール角反応を実現するためには、左右起始点間の分離距離はエアロスタット上の側方テザー装着点の分離距離より小さくなければならない。分離距離が等しければ、横移動に対するニュートラルなロール角反応が生じる。
【0026】
コントローラ
随意に、所望の操作を行う目的で、エアロスタットシステムの種々のアクチュエータを遠隔操作及び/又は自律操作するためのコントローラが提供される。このような操作として、例えば発進、停泊、高度変更、ピッチ角変更及びベースステーション方位の変更などがあるが、これに限らない。プラットフォーム、テザー及びエアロスタットの状態、並びに天候及び任務目標などの外部要因を監視するための手段が提供され、一連の行動及び適切な制御命令を決定するためにコントローラによって使用されてよい。
【0027】
停泊構成:
図4に示す停泊構成において、エアロスタットはエアロスタット縦軸とプラットフォーム縦軸が水平面上で実質的に整合しているように、実質的に剛性的にプラットフォームに固定されている。停泊構成においてエアロスタットはレール402に下降して固定されている。エアロスタット上のテザー装着点104/108とテザー起始点102/106は、エアロスタットに実質的に下向きのテザー張力Tを提供するように構成されている。エアロスタットはレールによってエアロスタットに伝えられる実質的に下向きのテザー張力Tと垂直力Nと摩擦力Fとの組み合わせによって固定されている。テザー群の他に、停泊構成においてエアロスタットがベースステーションに接触する箇所で、エアロスタットを確動的に固定する手段が設けられてよい。
【0028】
図5を参照すると、停泊構成においてエアロスタットの圧力中心CPとプラットフォーム枢軸Pとの間の距離を変えることにより、停泊中のエアロスタット100とプラットフォーム112にモーメントを伝えるエアロスタット上の空気力は、それらの対向風向に伴って縦軸に働く作用が変化する。この距離の変化は、与えられた用途に適合する目的でモーメントを伝える空気力の作用を調整するのに利用できる。
図5(c)に示す例示的な1実施態様において、停泊構成におけるエアロスタットの圧力中心CPは実質的にプラットフォーム枢軸Pの後方にあって、エアロスタット上の空気力は停泊中のエアロスタットとプラットフォームにモーメントを伝え、このモーメントが縦軸を対向風向と整合させるように作用する。
図5(a)に示す例示的な実施態様では、停泊構成におけるエアロスタットの圧力中心CPは実質的にプラットフォーム枢軸Pと共通位置にあるため、エアロスタット上の空気力は停泊中のエアロスタットとプラットフォームにモーメントを伝えず、回転アクチュエータは停泊中のエアロスタットとプラットフォームを容易に特定の方位に整合させる。
【0029】
飛行構成:
飛行構成においてエアロスタットはテザーによってベースステーションに実質的に非剛性的に固定されており、レールによってエアロスタットに伝えられる垂直力又は摩擦力はほとんどないか全くない。飛行構成において、エアロスタットの動きはテザーによって抑制され、テザーはエアロスタットとプラットフォームとの唯一の機械的リンクを提供し、エアロスタットはプラットフォームから独立に動くことができる。
【0030】
操作
飛行構成:
飛行構成において、エアロスタットとテザーとプラットフォームは、
図1に示すように機能的に平行棒リンクと類似の機械的システムを形成する。側面から見ると、前方テザー若しくはテザー群と後方テザー又は側方テザー群は、2本の平行棒のように作用する。テザー群は水平に対して任意の角度であってよい。エアロスタットとプラットフォームはリンクにおける水平棒のように作用し、水平に対して特定の比較的小さい角度を取る。前方テザー装着点と後方テザー装着点との間のスパン水平成分がある限り、エアロスタットは水平である必要はない。この記述の目的のために、前方又は後方テザー「群」は単一のテザーを含んでよく、3点「トライシクル」ハーネスを提供する。代替的に前方及び/又は後方テザー群は2本以上のテザーからなってよく、少なくとも1つの4点ハーネスを提供する。
【0031】
高度制御
エアロスタットのジオメトリが実質的に浮力を上回る空気力学的揚力を生み出すように設計されている実施態様において、揚抗比は迎角によって決定される。一方が知られるか制御されるならば、他方は黙示的に知られるか制御される。
【0032】
そのような実施態様において、
図1に示されているように、テザー群の与えられた平均長さに対してエアロスタットの揚抗比が変わると、吹き下ろし及び高度の変化を引き起こす。平行棒リンクはエアロスタットを地面に対して同じピッチ角αに留める。更に
図1を参照すると、実効的なリンクはこうして側面から見て平均テザー長さに等しい半径の半円を画定し、その上でエアロスタットはすべての揚抗比に対して抑制される。
【0033】
エアロスタットが地面に対して同じピッチ角αを保つことにより、迎角は著しく長時間続く上昇気流又は下降気流のないほぼ水平風で受動的に抑制される。逆に、ピッチ角αはテザー長さを調整することによって制御でき、その結果、半径が平均テザー長さである半円上のエアロスタットの位置が制御される。エアロスタットはこの円に沿った位置に制約されているので、当該位置の制御はテザー群の与えられた平均長さに対するエアロスタットの高度を制御することを含意する。
【0034】
加えて、本発明は下降気流状態における急速な高度低下とそれに続く急反発に対してエアロスタットシステムの復元力を改善する。風速の実質的な下方垂直成分の存在は、エアロスタットに作用する風の迎角を減らす働きをする。慣用的なエアロスタットではこれはエアロスタットに働く抗力の下向きの成分、及びそれに続く高度の急速な低下となって現れる。本発明において、迎角の減少は揚力ベクトルと抗力ベクトルを変化させるが、揚力ベクトルは作用し続けてテザー張力を維持し、高度の急速な低下とそれに続くテザーの急反発によって損傷を引き起こすのを防ぐ。極端な又は長引く下降気流状態では、更に高度の低下及び吹き下ろしを制限するために、前方及び後方テザー群の長さを種々変化させることによりエアロスタットのピッチ角を能動的に制御できる。
【0035】
ロール角
図2を参照すると、エアロスタット上の前方テザー装着点104(a)と104(b)(及び同様に後方テザー装着点108−
図2には図示されておらず
図1参照)の左右分離が、ベースステーションのプラットフォーム上の起始点102(a)と102(b)(及び同様に後方起始点106−
図2には図示されておらず
図1参照)の左右分離と実質的に異なる場合は、エアロスタットが横方向に移動するのに連れてエアロスタットのロール角は変化するであろう。
【0036】
図2(a)及び2(b)は、エアロスタット上の分離より小さいプラットフォーム上の分離を示す。この例では、長さが固定したテザーはエアロスタットを外方に回転させる傾向があり、その垂直軸点はエアロスタットが移動する方向に向く。
【0037】
図2(c)及び2(d)は、エアロスタット上の分離より大きいプラットフォーム上の分離を示す。テザーの長さは固定しており、エアロスタットの横方向の移動はエアロスタットの垂直軸点を内方に回転させる傾向があり、プラットフォームの真上にあるエアロスタットの初期位置に戻そうとする。テザー装着点と起始点の配置は、所望のエアロスタット挙動を生み出すようにできる。
【0038】
エアロスタットとプラットフォームシステムの受動的整合
図3を参照すると、プラットフォーム112の枢軸Pの位置は、テザー起始点の分離と組み合わせて、エアロスタット100を受動的にそれ自身風と整合させる受動的整合モーメントを生み出す。
【0039】
第1に、
図3(a)に示されているように、プラットフォーム枢軸の後方に位置する平均起始点の位置は、プラットフォーム縦軸が水平面上でエアロスタット位置に向けられていないときに整合モーメントを生み出す。エアロスタットは水平面上で常に吹き下ろされているので、枢軸位置からの整合モーメントの存在は、プラットフォームもプラットフォーム縦軸がそれ自身風と整合させるような方位に向けさせる。
【0040】
第2に、
図3(b)にも示されているように、エアロスタット縦軸の水平成分がプラットフォームに向けられていないときはいつでも、空間的に分離した前/後及び左/右テザー装着点が存在する結果として、エアロスタットをそれ自身プラットフォーム縦軸と整合させるモーメントが生じる。
【0041】
(a)枢軸位置の結果としてプラットフォーム縦軸が受動的に駆動されてそれ自身風と整合すると考え、及び(b)エアロスタットが受動的に駆動されてそれ自身プラットフォームと整合すると考えるなら、前述したように起始点を適切に選択することにより、エアロスタットが受動的にそれ自身風と整合する傾向を生じ、及び逆にプラットフォームがそれ自身風と整合する傾向が生じ、こうして回転プラットフォームとエアロスタットシステムの組み合わせが受動的にそれ自身風と整合することは明白である。
【0042】
停泊
本発明によって、テザー群の種々異なる長さ制御によりエアロスタットをより容易に停泊させることが可能となり、手動で補助ウインチに送り込む必要のある補助テザーを用いることなくエアロスタットをベースステーションに格納できる。
【0043】
空間的に異なるテザー装着点及び起始点は、種々の張力に耐える個々のテザーの能力と併せて、空気力学的なピッチングモーメントとローリングモーメントの可能な不安定化に対する反応モーメントを提供するが、これは単一のメインテザー群によっては可能ではない。
【0044】
停泊中、空気力学的なヨー運動及びヨー方位はプラットフォームによって実質的に整合されて、変化する風向において停泊を可能にする。プラットフォームのヨー運動は起始点に作用するテザー張力によって受動的に作動されてプラットフォームをエアロスタットと整合させることができ、又はプラットフォームの運動は旋回駆動装置などのシステムによって機械的に作動されてよいが、これに限らない。飛行構成の部で説明され、
図3に示された受動的整合モーメントは、エアロスタットが地面に最も接近したときにその作用は最大となる。なぜなら有効テザーばね定数はリリースされたテザーの長さと反比例するからである。こうしてテザーは、エアロスタットとプラットフォームとの非常に僅かな方位差で、非常に強い安定化ヨーイングモーメントを伝える。
【0045】
以下に述べるように、停泊中に自律的な適応制御を可能にするために、エアロスタット、テザー及びプラットフォームの状態を測定するための設備、並びにエアロスタットシステムを制御するためのコントローラが本発明に含まれてよい。
【0046】
図4を参照すると、プラットフォーム112はエアロスタットを多様な高度で停泊させる。このことはエアロスタットをその意図されたプラットフォーム上の休止構成に案内するためにレール402を曲げるなど成形することによって達成される。レールはテザーとの望ましくない干渉を不可能にするように設計されている。
【0047】
停泊構成
停泊構成においてエアロスタットは、多数のテザー群によりプラットフォームに固定されている。テザー群はそれぞれのウインチ又は他のロック機構によりロック又は制動される。プラットフォームは、この構成でエアロスタットを支持するように設計されたレールを含んでいる。
図4に示されているように、レール402とテザーは、エアロスタット100を固定するように配置されている。合力はテザー張力(T)、レール垂直力(N)及びレール摩擦力(F)の間で分散される。
【0048】
エアロスタットを安全に停泊させることができる風状態の範囲は、風向と整合させるためにプラットフォーム112を回転できるようにすると更に拡大できる。プラットフォームの回転は風がエアロスタットに高いヨー角で作用しないことを保証する。プラットフォームの回転は、プラットフォームの電動作動と、エアロスタットの軸周りの空気力学的モーメントとを何らかの形で組み合せることによって達成できる。エアロスタットシステムが受動的に風向と整合する実施態様において、停泊構成ではエアロスタットの圧力中心(CP)は実質的にプラットフォームの枢軸(P)の後方にある。
図5(b)及び5(c)に示されているように、CPとPが離れていればいるほど受動的整合モーメントは強くなる。
【0049】
システムは停泊後にエアロスタットを地面に接続する補助アンカを含んでよい。操作者はエアロスタットが停泊したらこれらのアンカを整備する。アンカはプラットフォームの枢軸周りの回転を防ぎ、非常に強い風状態で大量の荷重からベースステーションとテザーを守る。
【0050】
発進構成
発進操作音間、多数のテザー群がウインチによって繰り出される。浮力及び/又は空気力学的揚力はエアロスタットを所望された高度に上昇させる。レールによりエアロスタットに伝えられる実質的な垂直力又は摩擦力がなくなれば、エアロスタットの高度が増しても飛行構成の場合と同じ操作原理が働く。
【0051】
自律操作と遠隔操作
制御システムは1以上の人及び/又はコンピュータを含んでよい。そのような制御システムは、自律操作又は遠隔操作のためのすべての動作モードでテザーの繰り出し、巻き取り及び張力を監視及び制御する。制御システムにより操作者はエアロスタットシステム遠隔的に命令を出すことができる。代替的に、制御システムは様々な状態に自律的に、即ちインテリジェントに反応し、人が耐えず指示することなくエアロスタットシステムに命令できる。
【0052】
上述したことは、本発明の例示的な実施態様の詳細な説明である。本発明の精神と範囲を逸脱することなく種々の修正及び追加を行うことができる。上記の種々の実施態様の各々は他の説明した実施態様と組み合わせて多数の特徴の組み合わせを提供できる。更に、上述したことは本発明の装置と方法の若干の別個の実施態様を説明したものであり、本明細書においては本発明の原理の例示的な応用を示したに過ぎない。例えば本明細書の教示は本発明の範囲を逸脱することなく、広範なサイズ及びタイプのエアロスタットに適用できる。エアロスタットの形状及び輪郭は、本明細書に既述した制御システムと方法を含んでいる限り、非常に多様であり得る。加えて、方向及び位置を示す言葉、例えば「頂部」、「底部」、「中心」、「前」、「後」、「上」、「下」は、相対的な規定であり、絶対的な規定として理解されるべきではない。最後に、アクチュエータとテザーの位置及び配置は、本明細書に図示及び説明された教示に従っている限り非常に多様であってよい。従ってこの説明は例示の方法によるものであり、本発明の範囲を別途制限することを意味するものではない。