(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記窓側固定部が前記待機位置にあり、前記取得部が取得した走行速度が前記所定値以上の場合、前記移動機構は、前記窓側固定部を前記待機位置から前記後側位置の間の所定位置まで移動させるようにしてある
ことを特徴とする請求項7に記載のシートベルト装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述の2点式シートベルト装置は、シートに着座した直後に、シートベルトで動きを拘束するので、次のような不都合を生じる。ダッシュボードから物を取り出したり、ナビゲーション装置を操作したりする場合、シートベルトが煩わしいという問題が生じる。また、上述の2点式シートベルト装置は、3点式シートベルト装置と併用することは考慮されていない。
【0007】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、その目的は3点式シートベルト装置と2点式シートベルト装置とを併用した4点式シートベルト装置において、ユーザが両方のシートベルトを確実に装着するシートベルト装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るシートベルト装置は、2点式シートベルト及び3点式シートベルトを備える車両用シートベルト装置において、前記2点式シートベルトは、シートの窓側上方で、ウェビングの一端又は中途を固定し、前記シートの前側位置及び後側位置の間で移動が可能な窓側固定部と、前記ウェビングの他端を固定し、前記シートの車両中央側の側部に位置する第1中央側固定部とを有し、前記3点式シートベルトは、前記シートの車両中央側の上部からウェビングを送り出す送出部と、前記シートの窓側の側部に設けてある係合部と、前記ウェビングが挿通する挿通孔を有し、該係合部に係合して固定される被係合部と、前記シートの車両中央側の側部に設けてあり、前記ウェビングの一端を固定する第2中央側固定部とを有し、前記係合部は前記被係合部の係合を検知する検知部を有し、該検知部が前記3点式シートベルトの装着を示す前記被係合部の係合を検知した場合、前記2点式シートベルトは、前記窓側固定部を前記前側位置より前記後側位置へ移動させる移動機構を有
し、前記窓側固定部の下側にリトラクタを有し、前記第1中央側固定部は前記第2中央側固定部と一体としてあることを特徴とする。
【0009】
本発明にあっては、3点式シートベルトの係合部(バックル又はタング)は検知部を備え、当該検知部が被係合部(タング又はバックル)の係合を検知した場合に、2点式シートベルトの窓側固定部をシート前側からシート後側へ移動させる。それにより、乗員は3点式シートベルト及び2点式シートベルトを装着することになるので、4点式シートベルトと同様な拘束を得ることが可能となる。
また、本発明にあっては、2点式シートベルトの第1中央側固定部を第2中央側固定部と一体としたので、車両の中央側に設置する部品を減らすことが可能となる。
【0010】
本発明に係るシートベルト装置は、前記窓側固定部が前記シートの背もたれの側方からシート後側位置の間の所定位置に到着したことを検知する第2検知部と、前記所定位置に到着したことを前記第2検知部が検知した場合、前記窓側固定部の移動を拘束する拘束部とを備えることを特徴とする。
【0011】
本発明にあっては、2点式シートベルトの窓側固定部が所定の位置に到着したことを第2検知部が検知した場合、すなわち、2点式シートベルトが乗員を拘束する状態になった場合、窓側固定部の移動を拘束する拘束部を備える。それにより、2点式シートベルトにより適切に乗員を拘束することが可能となる。
【0012】
本発明に係るシートベルト装置は、前記検知部が前記被係合部の係合解除を検知した場合、前記窓側固定部の移動の拘束を解除し、前記窓側固定部を前記前側位置まで移動させる解除機構を備えることを特徴とする。
【0013】
本発明にあっては、3点式シートベルトの検知部が被係合部(タング又はバックル)の係合解除検知した場合、2点式シートベルトの窓側固定部の移動の拘束を解除し、窓側固定部をシートの前側位置まで移動させるので、3点式シートベルトの解除とほぼ同時に、2点式シートベルトを解除することが可能となる。
【0014】
本発明に係るシートベルト装置は、前記第1中央側固定部はリトラクタであることを特徴とする。
【0015】
本発明にあっては、第1中央側固定部をリトラクタとしたので、2点式シートベルトのウェビングを繰り出す長さを、シートの位置や乗員の体格に合わせて適切なものとすることが可能となる。
【0018】
本発明に係るシートベルト装置は、前記2点式シートベルトは前記窓側固定部の移動を案内する案内部を有し、該案内部の少なくとも一部は、窓上部に位置し車両の前後方向に亘る骨格部材に沿うように設けてあることを特徴とする。
【0019】
本発明にあっては、窓側固定部の移動を案内する案内部を、車両の前後方向に亘る骨格部材に沿うように設けてあるので、案内部を骨幹部材と一体とすることが可能となる。
【0020】
本発明に係るシートベルト装置は、前記係合部はバックル(又はタング)であり、前記被係合部はタング(又はバックル)であることを特徴とする。
【0021】
本発明にあっては、3点式シートベルトの係合部をバックル(又はタング)とし、被係合部はタング(又はバックル)としたので、従来の3点式シートベルトと同様に、乗員は確実に3点式シートベルトを装着することが可能となる。
【0022】
本発明に係るシートベルト装置は、
2点式シートベルト及び3点式シートベルトを備える車両用シートベルト装置において、前記2点式シートベルトは、シートの窓側上方で、ウェビングの一端又は中途を固定し、前記シートの前側位置及び後側位置の間で移動が可能な窓側固定部と、前記ウェビングの他端を固定し、前記シートの車両中央側の側部に位置する第1中央側固定部とを有し、前記3点式シートベルトは、前記シートの車両中央側の上部からウェビングを送り出す送出部と、前記シートの窓側の側部に設けてある係合部と、前記ウェビングが挿通する挿通孔を有し、該係合部に係合して固定される被係合部と、前記シートの車両中央側の側部に設けてあり、前記ウェビングの一端を固定する第2中央側固定部とを有し、前記係合部は前記被係合部の係合を検知する検知部を有し、該検知部が前記3点式シートベルトの装着を示す前記被係合部の係合を検知した場合、前記2点式シートベルトは、前記窓側固定部を前記前側位置より前記後側位置へ移動させる移動機構を有し、前記車両の走行速度を取得する取得部を備え、取得した走行速度が所定値未満の正値であり、前記検知部が前記被係合部の係合を検知していない場合、前記移動機構は、前記窓側固定部を前記前側位置及び前記後側位置の間に位置する待機位置に移動させるようにしてあることを特徴とする。
【0023】
本発明にあっては、走行速度が所定値未満の正値であり、3点式シートベルトが装着されていない場合、窓側固定部を待機位置に移動させるので、シートベルトを装着しないで走行している場合でも、2点式シートベルトが運転の邪魔となることがない。
【0024】
本発明に係るシートベルト装置は、前記窓側固定部が前記待機位置にあり、前記取得部が取得した走行速度が前記所定値以上の場合、前記移動機構は、前記窓側固定部を前記待機位置から前記後側位置の間の所定位置まで移動させるようにしてあることを特徴とする。
【0025】
本発明にあっては、車両の走行速度が所定値以上の場合、窓側固定部を所定位置まで移動させる。すなわち、2点式シートベルトが乗員を拘束する状態とするので、乗員が3点式シートベルトを装着しないで走行しても、シートベルトを全く装着しない状態で走行を続けることを防ぐことが可能となる。
【0026】
本発明に係るシートベルト装置は、前記窓側固定部を前記前側位置まで移動させる解除機構を備え、前記窓側固定部が前記所定位置にあり、前記検知部が前記被係合部の係合解除を検知し、前記取得部が取得した走行速度が所定値未満である場合、前記解除機構は、前記窓側固定部を前記待機位置まで移動させるようにしてあることを特徴とする。
【0027】
本発明にあっては、3点式シートベルトが解除され、車両の走行速度が所定値未満である場合、窓側固定部を前記待機位置まで移動させるので、シートベルトを装着しないで走行している場合でも、2点式シートベルトが運転の邪魔となることがない。
【0028】
本発明に係るシートベルト装置は、前記窓側固定部が前記待機位置にあり、前記取得部が取得した走行速度が0である場合、前記解除機構は、前記窓側固定部を前記前側位置に移動させるようにしてあることを特徴とする。
【0029】
本発明にあっては、3点式シートベルトが解除され、車両の走行速度が0、すなわち車両が停止している場合は、2点式シートベルトを解除状態とするので、乗員が車両を降りる際に、2点式シートベルトが邪魔になることがない。
【0030】
本発明に係るシートベルト装置は、前記第1中央側固定部はリトラクタであることを特徴とする。
【0031】
本発明にあっては、第1中央側固定部をリトラクタとしたので、2点式シートベルトのウェビングを繰り出す長さを、シートの位置や乗員の体格に合わせて適切なものとすることが可能となる。
【0032】
本発明に係るシートベルト装置は、前記窓側固定部の下側にリトラクタを有し、前記第1中央側固定部は前記第2中央側固定部と一体としてあることを特徴とする。
【0033】
本発明にあっては、2点式シートベルトの第1中央側固定部を第2中央側固定部と一体としたので、車両の中央側に設置する部品を減らすことが可能となる。
【0034】
本発明に係るシートベルト装置は、
2点式シートベルト及び3点式シートベルトを備える車両用シートベルト装置において、前記2点式シートベルトは、シートの窓側上方で、ウェビングの一端又は中途を固定し、前記シートの前側位置及び後側位置の間で移動が可能な窓側固定部と、前記ウェビングの他端を固定し、前記シートの車両中央側の側部に位置する第1中央側固定部とを有し、前記3点式シートベルトは、前記シートの車両中央側の上部からウェビングを送り出す送出部と、前記シートの窓側の側部に設けてある係合部と、前記ウェビングが挿通する挿通孔を有し、該係合部に係合して固定される被係合部と、前記シートの車両中央側の側部に設けてあり、前記ウェビングの一端を固定する第2中央側固定部とを有し、前記係合部は前記被係合部の係合を検知する検知部を有し、該検知部が前記3点式シートベルトの装着を示す前記被係合部の係合を検知した場合、前記2点式シートベルトは、前記窓側固定部を前記前側位置より前記後側位置へ移動させる移動機構を有し、前記検知部が前記被係合部の係合を検知した場合、前記移動機構は、前記窓側固定部を前記前側位置及び前記後側位置の間に位置する待機位置に移動させるようにしてあることを特徴とする。
【0035】
本発明にあっては、検知部が被係合部の係合を検知した場合、2点式シートベルトの窓側固定部を後側位置ではなく、待機位置に移動させる。それにより、被係合部を係合部に係合するために、被係合部方向に下げている乗員の頭部に、2点式シートベルトが当たるのを防ぐことが可能となる。
【0036】
本発明に係るシートベルト装置は、前記車両が走行しているか又は停止しているかを示す車両状態を取得する状態取得部を備え、取得した車両状態が走行状態である場合、前記移動機構は、前記窓側固定部を前記待機位置から前記後側位置の間の所定位置まで移動させるようにしてあることを特徴とする。
【0037】
本発明にあっては、車両が走行状態となった場合、待機位置に有る窓側固定部を後側の所定位置まで移動させる。それにより、乗員に2点式シートベルトを装着させることが可能となる。
【0038】
本発明に係るシートベルト装置は、前記検知部が前記被係合部の係合を検知していない場合、前記移動機構は、前記窓側固定部を前記前側位置に移動させるようにしてあることを特徴とする。
【0039】
本発明にあっては、検知部が被係合部の係合を検知していない場合、窓側固定部を前側位置に移動させるので、2点式シートベルトを適切に解除することが可能となる。
【0040】
本発明に係るシートベルト装置は、乗員が前記シートに着座した旨の通知を受信する着座受信部と、前記係合部の上昇又は下降させる昇降機構を備え、前記着座受信部が着座した旨の通知を受信し、前記検知部が前記被係合部の係合を検知していない場合、前記昇降機構は前記係合部を上昇させるようにしてあることを特徴とする。
【0041】
本発明にあっては、乗員がシートに着座した旨の通知を受信し、検知部が被係合部の係合を検知していない場合、昇降機構は前記係合を上昇させるので、乗員に3点式シートベルトの装置を促すと共に、被係合部を係合部に係合する動作が容易となる。
【0042】
本発明に係るシートベルト装置は、前記係合部は発光素子を有し、該発光素子の発光を制御する発光制御部を備え、前記着座受信部が着座した旨の通知を受信し、前記検知部が前記被係合部の係合を検知していない場合、前記発光制御部は前記発光素子を発光するようにしてあることを特徴とする。
【0043】
本発明にあっては、乗員がシートに着座した旨の通知を受信し、検知部が被係合部の係合を検知していない場合、発光素子を発光させるので、乗員は係合部の位置を容易に確認し、被係合部を係合部に係合させることが可能となる。
【0044】
本発明に係るシートベルト装置は、前記着座受信部が着座した旨の通知を受信し、前記検知部が前記被係合部の係合を検知している場合、前記昇降機構は前記係合部を下降させるようにしてあることを特徴とする。
【0045】
本発明にあっては、着座受信部が着座した旨の通知を受信、検知部が被係合部の係合を検知している場合、昇降機構は係合部を下降させるので、3点式シートベルトにたるみがあっても、それを改善することが可能となる。
【0046】
本発明に係るシートベルト装置は、前記着座受信部が着座した旨の通知を受信し、前記検知部が前記被係合部の係合を検知している場合、前記発光制御部は前記発光素子を消灯するようにしてあることを特徴とする。
本発明にあっては、着座検知部が乗員の着座を検知し、検知部が被係合部の係合を検知している場合、発光素子を消灯するので、不必要な電力の消費を防ぐことが可能となる。
【0047】
本発明に係るシートベルト装置は、前記係合部は発光素子を有し、該発光素子の発光を制御する発光制御部を備え、前記着座受信部が着座した旨の通知を受信し、前記検知部が前記被係合部の係合を検知していない場合、前記発光制御部は前記発光素子を発光するようにしてあり、前記着座受信部が着座した旨の通知を受信し、前記検知部が前記被係合部の係合を検知している場合、前記発光制御部は前記発光素子を消灯するようにしてあり、前記昇降機構は前記係合部を下降させるようにしてあることを特徴とする。
本発明にあっては、乗員がシートに着座した旨の通知を受信し、検知部が被係合部の係合を検知していない場合、発光素子を発光させるので、乗員は係合部の位置を容易に確認し、被係合部を係合部に係合させることが可能となる。
また、本発明にあっては、着座受信部が着座した旨の通知を受信、検知部が被係合部の係合を検知している場合、発光素子を消灯させ、昇降機構は係合部を下降させるので、不必要な電力の消費を防ぐとともに、3点式シートベルトにたるみがあっても、それを改善することが可能となる。
【発明の効果】
【0048】
本発明にあっては、
2点式シートベルトの第1中央側固定部を第2中央側固定部と一体とするとともに、3点式シートベルトの係合部(バックル又はタング)は検知部を備え、当該検知部が被係合部(タング又はバックル)の係合を検知した場合に、2点式シートベルトの窓側固定部をシート前側からシート後側へ移動させる。それにより、
車両の中央側に設置する部品を減らすことが可能となるとともに、乗員は3点式シートベルト及び2点式シートベルトを装着することになるので、4点式シートベルトと同様な拘束を得ることが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0050】
(実施の形態1)
以下本発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。
図1は実施の形態1に係るシートベルト装置100の構成を示す正面図である。
図2は乗員Mが3点式シートベルト10を装着した状態を示す正面図である。
図3は3点側タング14と3点側バックル16との係合を説明するための拡大図である。
図1に示すように、車室30にはシートクッション1及びシートバック2を含むシート、並びにシートベルト装置100が設置されている。シートベルト装置100は2点式シートベルト20及び3点式シートベルト10により構成される。
【0051】
3点式シートベルト10は、3点側リトラクタ11、ウェビング(以下、「3点側ベルト」と記す。)12、3点側アンカー(第2中央側固定部)15を含んで構成される。
【0052】
3点側リトラクタ11はシートバック2の内部に埋設してある。3点側リトラクタ11は3点側ベルト12の一端を内部で固定している。3点側アンカー15は、シートクッション1の車両中央側の側部のフレームに固定されている。3点側アンカー15は、3点側ベルト12の他端を固定している。シートバック2の車両中央側上部には、3点側ガイド部13が設けられている。なお、3点側アンカー15は車両中央側の床部31に設けても良い。
【0053】
3点側ガイド部13は、シートバック2内部へ巻き取られ又は外部へ引き出される3点側ベルト12を案内する矩形状の開口が着座方向に臨ませて、シートバック2上に設置されている。3点側リトラクタ11より繰り出された3点側ベルト12は、3点側ガイド部13により、シートバック2の前方に案内される。3点側ベルト12の中途には、3点側タング14が取り付けられている。3点側タング14はT字型のプレートである。3点側タング14の先端略中央部には、係合孔141が形成されている。また、3点側タング14の後端には3点側ベルト12が挿通する挿通孔142が設けてある。
【0054】
シートクッション1の窓側の下部フレームには、3点側バックルプレート17が固設されており、3点側バックルプレート17の固設位置反対側には、3点側バックル16が連結されている。3点側バックルプレート17は固定部172及び連結部171を含んで構成される。3点側バックルプレート17は、下側略中央部に位置するボルト等の固定部172により、車両又はシートクッション1に固定されている。3点側バックルプレート17は固定部172を中心として所定角度間で回動する。連結部171は、3点側バックルプレート17上部と3点側バックル16との間に位置する。連結部171はウェビングのようにベルト状をなしている。
【0055】
図2を用いて乗員Mに3点式シートベルト10を装着する手順を説明する。乗員Mはシートバック2の車両中央側上部に吊り下げられる3点側タング14を把持する。続いて、乗員Mは、3点側シートベルトを右肩から左腰へ斜めに掛けるようにして、把持した3点側タング14を移動させる。そして、乗員Mは、シートバック2の窓側下部において、3点側バックルプレート17により固定される3点側バックル16へ、移動させた3点側タング14を係合させる。3点側タング14の係合は、係合孔141に3点側バックル16内部の図示しないロック部が噛み合うことより行われる。
【0056】
これにより、乗員Mの右肩から左腰を交差する3点側ベルト12は、ショルダベルト部6として機能し、乗員Mの上半身を拘束する。また、両足及び下腹部近傍を車両中央側から窓側へ横断する3点側ベルト12は、ラップベルト部5として機能し、乗員Mの下半身を拘束する。なお、3点側バックルプレート17は、連結部171を備えている。それにより、長手方向を軸として3点側バックル16が所定角度回転可能なので、3点側タング14を3点側バックル16に係合しやすくなっている。
【0057】
3点式シートベルト10が装着される場合、3点側リトラクタ11は、乗員Mの3点側タング14の引っ張りにより、3点側ベルト12を、3点側ガイド部13を介して車内へ送り込む。3点側ベルト12が送り込まれることにより、3点側ガイド部13から3点側タング14を経て、3点側アンカー15からに至る部分の3点側ベルト12の長さが増す。3点側タング14が3点側バックル16に当接した時点で、3点側ベルト12の送り込みを3点側リトラクタ11は停止する。これにより、3点側ガイド部13、3点側バックル16及び3点側アンカー15による3点支持により、乗員Mの拘束が実現される。
【0058】
3点式シートベルト10を解除する場合には、3点側バックル16に設けてある解除ボタン161を押す。解除ボタン161が押されると、3点側バックル16の図示しないロック部と係合孔141との噛み合いが解除され、3点側タング14と3点側バックル16との係合が解除される。係合が解除されると、3点側リトラクタ11が3点側ベルト12を内部に巻取る。3点側リトラクタ11は、3点側タング14が3点側ガイド部13に達するまで、3点側ベルト12を巻き取る。
【0059】
2点式シートベルト20は、2点側リトラクタ(第1中央側固定部)21、ウェビング(以下、「2点側ベルト」と記す。)22、2点側ショルダアンカー(窓側固定部)231を含んで構成される。
【0060】
2点側リトラクタ21はシートクッション1の車両中央側の側部のフレームに設けてある。2点側リトラクタ21は、3点側リトラクタ11よりも、車両の床部31に近い位置に設けてある。2点側リトラクタ21は2点側ベルト22の一端を内部で固定している。2点側ベルト22の他端には2点側ショルダアンカー231が設けられている。ガイドレール232は、後述するように、その少なくとも一部が窓上部のサイドルーフ(骨格部材)3に沿うように設けてある。このような構成により、2点側ベルト22は車両中央側下部から窓側上部に亘っている。
【0061】
2点側ショルダアンカー231は、ガイドレール232に沿って移動可能である。2点側ショルダアンカー231を移動する機構としては、公知の技術を用いて構成すれば良い。例えば、Bピラーに可逆転式モータ(図示しない)を設け、ガイドレール232に沿って移動する剛性を有するワイヤ又はテープにより、上記モータと2点側ショルダアンカー231とを接続する。上記モータにより、ワイヤ又はテープを巻き取り又は繰り出すことにより、2点側ショルダアンカー231をガイドレール232に沿って移動することが可能となる。2点式シートベルト20の移動機構23は、2点側ショルダアンカー231、ガイドレール232、2点側ショルダアンカー231を移動するモータを含んで構成される。
【0062】
図2に示す2点式シートベルト20は、2点側ベルト22が乗員Mを拘束してない状態である。この場合、2点側ベルト22はシートクッション1の前方に位置している。
【0063】
図4は実施の形態1に係るシートベルト装置100の構成を示す正面図である。
図5は実施の形態1に係るシートベルト装置100を車両中央側から見た場合の構成を示す側面図である。
図4及び
図5を用いて、
図2で示した3点式シートベルト10の装着後、2点式シートベルト20が乗員Mにどのように装着されるのか説明する。
【0064】
具体的に図示はされていないが、3点式シートベルト10の3点側バックル16は、3点側タング14との係合状態を検出する3点側バックルスイッチを内蔵している。この3点側バックルスイッチが検知部として機能する。
【0065】
乗員Mが3点式シートベルト10を装着したことを、3点側バックル16に内蔵された3点側バックルスイッチが検知すると、2点式シートベルト20の2点側ショルダアンカー231が、ガイドレール232に沿って車両前方から車両後方に移動する。図示されていないが、例えば2点側ショルダアンカー231にガイドレール232との間でロックされるロック機構を備えている。2点側ショルダアンカー231の車両後方への移動が完了すると、ガイドレール232に設けたロック機構により、2点側ショルダアンカー231の位置が固定される。すなわち、2点側ショルダアンカー231の移動が拘束される。当該ロック機構が、拘束部として機能する。
【0066】
上述のロック機構は、例えば、モータによってガイドレール232の後端まで移動した2点側ショルダアンカー231が、それ以上移動できないときに、モータが回転することで、ロック部材が2点側ショルダアンカー231より露出し、ガイドレール232と噛み合って、2点側ショルダアンカー231の移動が拘束されるように構成する。なお、モータを逆回転することで、ロック部材とガイドレール232との噛み合いが外れ、2点側ショルダアンカー231の移動の拘束が解除される。モータをさらに逆回転することで、2点側ショルダアンカー231はガイドレール232の前端に移動する。図示されていないが、ロックを解除し、2点側ショルダアンカー231を前端に移動するモータなどが、解除機構を構成している。
【0067】
また、図示はされていないが、ガイドレール232の位置を検知する検知部として、例えば、マイクロスイッチがガイドレール232の所定位置に設けられている。検知部は光センサで構成したり、2点側ショルダアンカー231を移動するためのモータの回転を検知するロータリーエンコーダで構成したりしてもよい。2点側ショルダアンカー231がガイドレール232の後端に達したことを検知するマイクロスイッチが、第2検知部を構成する。
【0068】
2点式シートベルト20が装着される前は、2点側ショルダアンカー231はシート前方の位置にある。2点側ベルト22は、2点側リトラクタ21と2点側ショルダアンカー231とを結ぶ最短距離に亘るよう略たるみなく、2点側リトラクタ21に巻き取られている。乗員Mが3点式シートベルト10を装着した後に、2点側ショルダアンカー231がガイドレール232に沿って、シートクッション1の後方上部に移動する。以上により、2点側ベルト22は乗員Mの上半身左肩から右腰へ向け交差してショルダベルト部7を形成する。ショルダベルト部7は、2点側リトラクタ21及び2点側ショルダアンカー231の2点により乗員Mを拘束する。なお、ガイドレール232の一端は、サイドルーフ3の車両前側方向又は、Aピラー(フロントピラー)の所定位置としてある。当該所定位置は、乗員Mが車両に乗り込む際に、2点式シートベルト20が邪魔にならない位置とすることが望ましい。ガイドレール232の他端は、Bピラー(センターピラー)4の所定位置としてある。当該所定位置は、シートの位置やシートバック2の傾きが変わった場合であっても、体格の異なる乗員Mが乗車しても、2点式シートベルト20で乗員Mを適切に拘束可能な位置とすることが望ましい。そのような条件を満たすのであれば、ガイドレール232の他端をBピラー4ではなく、サイドルーフ3の車両後側の位置としてもよい。
【0069】
次に2点式シートベルト20の動作制御について説明する。
図6は2点式シートベルト20の動作制御処理を行うシートベルト装置100のハードウェア構成を示すブロック図である。2点式シートベルト20の動作制御は制御部71、RAM(Random Access Memory)75、3点側バックルスイッチ162、2点側ショルダアンカー移動部72、及び2点側ショルダアンカー位置固定部73、2点側ショルダアンカー位置検知部(第2検知部)74等により実行される。ECU(Electronic Control Unit)等の制御部71は、CAN(Controller Area Network)により伝送線を介してハードウェア各部と接続されており、それらを制御すると共に、RAM75に格納された制御プログラム75Pに従って、種々のソフトウェア的機能を実行する。2点側ショルダアンカー移動部72は2点側ショルダアンカー231をガイドレール232に沿って移動させる機構であり、その構成は上述したとおりである。2点側ショルダアンカー位置固定部73は、2点側ショルダアンカー231の移動を拘束し位置を固定させる機構であり、その構成は上述したとおりである。2点側ショルダアンカー位置検知部74は、2点側ショルダアンカー231のガイドレール232での位置を検知する。2点側ショルダアンカー位置検知部74は、2点側ショルダアンカー移動部72が備えるモータやギアに取り付けたロータリーエンコーダなどの回転センサの出力より、2点側ショルダアンカー231の位置を検知する。または、ガイドレール232の複数箇所にマイクロスイッチなどの位置検出スイッチを取り付け、位置検出スイッチの出力により、2点側ショルダアンカー231の位置を検知する。
【0070】
3点側バックルスイッチ162(検知部)は3点側バックル16と3点側タング14との係合状態を検出するものであり、例えば、特開2006−12504号公報に開示されたホールIC等の磁気センサを備えたスイッチが用いられる。3点側バックル16と3点側タング14とが係合した場合は、3点側バックルスイッチ162から3点式シートベルト10が装着状態であることを示すロー信号(又はハイ信号)が制御部71に出力される。一方、3点側バックル16と3点側タング14とが係合していない場合は、3点側バックルスイッチ162から3点式シートベルト10が装着状態でないことを示すハイ信号(ロー信号)が制御部71へ出力される。
【0071】
以上のハードウェア構成において2点式シートベルト20の動作制御の処理手順を、フローチャートを用いて説明する。
図7及び
図8は、2点式シートベルト20の動作制御の処理手順を示すフローチャートである。制御部71は3点側バックルスイッチ162の出力読み込み、3点側タング14が3点側バックル16に係合されているか否かを判定する(ステップS81)。制御部71は3点側タング14が3点側バックル16に係合されていると判定した場合(ステップS81でYES)、制御部71は、2点側ショルダアンカー位置検知部74により、2点側ショルダアンカー231が後端に到達した否かを判定する(ステップS82)。2点側ショルダアンカー231が後端に到達していると判定した場合(ステップS82でYES)、制御部71は2点側ショルダアンカー移動部72のモータの駆動を停止する(ステップS83)。続いて、制御部71は2点側ショルダアンカー位置固定部73により、2点側ショルダアンカー231の位置を固定し(ステップS84)、処理を終了する。
【0072】
2点側ショルダアンカー231が後端に到達していないと判定した場合(ステップS82でNO)、制御部71は2点側ショルダアンカー移動部72のモータの正転駆動を開始し、2点側ショルダアンカー231を後端に移動させる(ステップS85)。既にモータが正転駆動されている場合は、駆動を継続する。次に、制御部71は2点側ショルダアンカー移動部72のモータ駆動電流値が規定値以下であるか否かを判定する(ステップS86)。モータ駆動電流が規定値以下である場合(ステップ86でYES)、制御部71は、処理をステップS81へ戻す。
【0073】
モータ駆動電流が規定値を越えている場合(ステップS86でNO)、制御部71は2点側ショルダアンカー移動部72のモータの駆動を停止する(ステップS87)。続いて、制御部71はエラー処理を行い(ステップS88)、処理を終了する。
【0074】
3点側タング14が3点側バックル16に係合されていないと判定した場合(ステップS81でNO)、制御部71は、2点側ショルダアンカー位置検知部74により、2点側ショルダアンカー231が前端に到達した否かを判定する(ステップS89)。2点側ショルダアンカー231が前端に到達している判定した場合(ステップS89でYES)、制御部71は2点側ショルダアンカー移動部72のモータの駆動を停止する(ステップS90)。続いて、制御部71は2点側ショルダアンカー位置固定部73により、2点側ショルダアンカー231の位置を固定し(ステップS91)、処理を終了する。
【0075】
2点側ショルダアンカー231が前端に到達していないと判定した場合(ステップS89でNO)、制御部71は2点側ショルダアンカー移動部72のモータの逆転駆動を開始し、2点側ショルダアンカー231を前端に移動させる(ステップS92)。既にモータが逆転駆動されている場合は、駆動を継続する。次に、制御部71は2点側ショルダアンカー移動部72のモータ駆動電流値が規定値以下であるか否かを判定する(ステップS93)。モータ駆動電流が規定値以下である場合(ステップS93でYES)、制御部71は、処理をステップS81に戻す。
【0076】
モータ駆動電流が規定値を越えている場合(ステップS93でNO)、制御部71は2点側ショルダアンカー移動部72のモータの駆動を停止する(ステップS94)。制御部71はエラー処理を行い(ステップS95)、処理を終了する。制御部71は
図7及び
図8に示した処理を所定時間毎に行う。
【0077】
図7及び
図8において、モータの駆動電流値が規定値を超えた場合、モータの駆動を停止するのは危険防止のためである。2点側ショルダアンカー231が通常に移動をしている場合は、モータにはある一定範囲の負荷しか掛からないはずであるから、モータの駆動電流値は規定値を超えることはない。しかしながら、2点側ベルト22が、乗員Mや車両内の備品など引っかかっている場合や、2点側ショルダアンカー231やガイドレール232に乗員Mが指を挟んでしまった場合は、モータに対する負荷が増大するから、駆動電流値が増加する。そのようなことから、駆動電流値が規定値を超えた場合は、モータの駆動を停止し、エラー処理を行う。ここで、エラー処理とは、2点式シートベルト20に異常がないかの確認を促す表示を、制御部71は表示装置(図示しない)に表示させたり、ブザー(図示しない)を鳴動させたりする。エラー発生後、乗員Mは安全を確認した後、図示しない復帰スイッチを操作すると、通常動作に復帰させることとする。
【0078】
上述の規定値は、ガイドレール232の位置により変化させるようにする。ガイドレール232はドアに沿った形としてあるため、一直線状ではなく屈曲部分を有するからである。当該屈曲部分では機械抵抗が直線部分よりも大きくなるため、規定値を高くする必要がある。具体的には、2点側ショルダアンカー位置検知部74により、2点側ショルダアンカー231のガイドレール232上での位置を検出し、検出した位置により、規定値を変化させる。
図9は規定値の変化の一例を示す説明図である。
図9の上部にはガイドレール232の一例を示している。星印を付したのはガイドレール232の屈曲部分である。
図9の下部に示しているのは、ガイドレール232の位置と既定値との対応関係を示すグラフである。縦軸は電流値であり、単位は例えばmAである。横軸はガイドレール232の後方からの位置を距離で示したものであり、単位は例えばcmである。グラフで示しているように距離L1からL2の間及びL3からL4の間は、ガイドレール232の屈曲部分であるため、規定値を通常のI1からI2に高く設定することを示している。
【0079】
次に、2点側ショルダアンカー231の移動速度の設定について説明する。2点式シートベルト20が解除される時の2点側ショルダアンカー231の速度は、装着される時よりも速くなるように設定する。2点式シートベルト20が装着される場合は、2点側ベルト22が近づいてくるため、乗員Mに恐怖感を与えないように、遅めの移動速度とする。一方、解除する場合は、2点側ベルト22は遠ざかるため、早めの移動速度としても乗員Mには恐怖感を与えないからである。
【0080】
ここでは、2点側ショルダアンカー移動部72のモータはDCモータであり、PWM(Pulse Width Modulation)制御するものとして説明する。
図10は装着時の速度と解除時の速度との違いを示すグラフである。縦軸はDuty比であり、無次元量である。横軸はガイドレール232の後方からの距離である。単位は例えばcmである。
図10に示すように、解除時のDuty比は装着時のDuty比よりも25%程度大きく設定する。PWM制御ではDuty比が大きいほど、モータの回転数が大きくなるので、解除時のほうが、速度が大きくなる。
【0081】
以上のようにすることにより、2点式シートベルト20の装着時の質感向上と、解除時の降車の邪魔にならないという効果を奏する。
【0082】
上述したように、実施の形態1のシートベルト装置100では、乗員Mが3点式シートベルト10を装着するために、3点側タング14を3点側バックル16に係合したら、2点式シートベルト20が装着される。また、乗員Mが3点式シートベルト10を解除状態にするために、3点側タング14を3点側バックル16より取り外したら、2点式シートベルト20は乗員Mへの拘束が解かれる。
【0083】
実施の形態1のシートベルト装置100は以下の様な効果を奏する。乗員Mが3点側バックル16を操作することを契機(トリガ)にして、2点式シートベルト20を動作させる。これにより、乗員Mは1つの動作(ワンアクション)で、3点式シートベルト10及び2点式シートベルト20を装着することが可能となる。そのことにより、実施の形態1のシートベルト装置100は4点式シートベルトとして機能するので、肩はずれの防止、胸部荷重の低減をという効果を奏する。
【0084】
また、乗員Mが着座しても3点式シートベルト10が装着されなければ、2点式シートベルト20も装着されないので、乗員Mがダッシュボードから物を取り出したり、ナビゲーション装置を操作したりする際に、シートベルトが煩わしく感じることがない。加えて、乗員Mから見て、2点式シートベルト20が必ず3点式シートベルト10よりも表側(上側)になるように装着される。逆の配置となった場合、3点式シートベルト10が外されていないのに、ドア連動や着座連動により2点式シートベルト20を外したとき、3点式シートベルト10が2点式シートベルト20の解除を妨げてしまうという不具合が生じる。しかし、実施の形態1のシートベルト装置100は、そのような不具合が発生しない。さらにまた、乗員Mが3点式シートベルト10の3点側タング14を3点側バックル16より取り外したら、2点式シートベルト20は速やかに解除される。それにより、3点側ベルト12が3点側リトラクタ11に巻き取られることにより、移動する3点側タング14と、2点式シートベルト20とが絡んでしまうという不具合の発生を防止することが可能となる。
【0085】
一方、2点側ショルダアンカー231を移動させる際、2点側ショルダアンカー移動部72のモータの駆動電流値が規定値以上になった場合は、モータの駆動を停止するので、乗員Mの指が、2点側ショルダアンカー231やガイドレール232に挟まれた場合であっても重大な事故の発生を防止することが可能となる。また、ガイドレール232に異物が挟まった場合であっても、モータに過剰な負荷が掛かることを防ぐことが可能となる。
【0086】
(実施の形態2)
実施の形態2のシートベルト装置100では、乗員Mがシートベルトを装着し忘れて車両を発進させた場合の危険防止機能を備える。実施の形態1と実施の形態2との相違は、2点式シートベルト20の動作制御である。シートベルト装置100のハードウェア構成は同様であるので、以下で説明を省略する。
【0087】
図11及び
図12は2点式シートベルト20の動作制御の処理手順を示すフローチャートである。
図11及び
図12において、
図7及び
図8と同様な処理については、同じステップ番号を振り、説明を省略する。実施の形態2では、ステップS81において、制御部71が、3点側タング14は3点側バックル16に係合されていないと判定した後の動作が異なる。以下に説明する。
【0088】
制御部71が、3点側タング14は3点側バックル16に係合されていないと判定した場合(ステップS81でNO)、制御部71は、車両速度が規定値以上であるか否かを判定する(ステップS96)。車両速度は、例えば速度計より取得する。車両速度が規定値未満である場合(ステップS96でNO)、車両は規定値未満の速度で走行又は停止しており、3点式シートベルト10が解除されている状態であるので、制御部71はステップS89以降の処理で、2点式シートベルト20の解除を行う。これらの処理は、実施の形態1と同様であるので、説明を省略する。
【0089】
車両速度が規定値以上である場合(ステップS96でYES)、制御部71は処理をステップS82に移し、2点式シートベルト20を装着する動作を2点側ショルダアンカー移動部72に行わせる。ステップS82以降の処理は、実施の形態1と同様であるので、説明を省略する。
【0090】
以上の動作により、実施の形態2のシートベルト装置100は、実施の形態1のシートベルト装置100が奏する効果に加えて、次のような効果を奏する。3点式シートベルト10が装着されていない状態で、車両が走行し始めた場合、走行速度が規定値以上に達したら、2点式シートベルト20の2点側ショルダアンカー移動部72を後方に移動させ、乗員Mを2点式シートベルト20で拘束する。そのことにより、乗員Mが、シートベルトを一切装着していない状態で車両を走行させても、2点式シートベルト20は装着されるので、乗員Mが拘束されていない状態で、車両が走行し続けることを防ぐことができる。なお、この場合、3点式シートベルト10を装着していないことを、乗員Mに警告するようにしても良い。
【0091】
(実施の形態3)
実施の形態3では、2点式シートベルト20の2点側リトラクタ21を実施の形態1及び2とは異なる位置とする。
図13は実施の形態3に係るシートベルト装置100の構成を示す正面図である。3点式シートベルト10は実施の形態1と同様であるので、同じ符号を付し、説明を省略する。2点式シートベルト20については、実施の形態1と同様な構成については、同じ符号を付している。
【0092】
2点式シートベルト20は、2点側アンカー26、2点側ベルト(ウェビング)22、2点側スルー233、2点側リトラクタ21を含んで構成される。
【0093】
2点側アンカー26は、3点式シートベルト10の3点側アンカー15と共通化されている。2点側アンカー26は、シートクッション1の車両中央側の側部のフレームに設けられている。2点側アンカー26は2点側ベルト22の一端を固定している。2点側リトラクタ21は内部で2点側ベルト22の他端を固定している。2点側ベルト22の中途には、2点側スルー233(窓側固定部)が設けられている。2点側スルー233は幅広の孔が設けられており、当該孔に2点側ベルト22が通されている。2点側スルー233は、少なくとも一部が窓上部のサイドルーフ3に沿うように設けてあるガイドレール232に案内されて移動可能となっている。2点側スルー233の移動機構23は、実施の形態1と同様に公知の技術で実現可能であるから、説明を省略する。実施の形態3において、2点式シートベルト20の移動機構23は、2点側スルー233、ガイドレール232、2点側スルー233を移動するモータを含んで構成される。
【0094】
図13に示す2点式シートベルト20は、2点側ベルト22が乗員Mを拘束していない状態である。この場合、2点側スルー233は、ガイドレール232の車両前側の一端に位置している。
【0095】
図14は実施の形態3に係るシートベルト装置100の構成を示す正面図である。
図15は実施の形態3に係るシートベルト装置100を車両中央側から見た場合の構成を示す側面図である。実施の形態3の3点式シートベルト10の装着方法は、実施の形態1と同様であるから、説明を省略する。ここでは、
図14及び
図15を用いて、3点式シートベルト10の装着後、2点式シートベルト20が乗員Mにどのように装着されるのか説明する。
【0096】
乗員Mが3点式シートベルト10を装着したことを、3点側バックル16の3点側バックルスイッチ162が検知すると、2点式シートベルト20の2点側スルー233が、ガイドレール232に沿って車両前方から車両後方に移動する。2点側スルー233の車両後方への移動が完了すると、ガイドレール232に設けたロック機構により、2点側スルー233の位置が固定される。2点側スルー233の固定手段の構成は、実施の形態1と同様に公知の技術で実現可能であるので、説明を省略する。
【0097】
2点式シートベルト20が装着される前は、2点側スルー233はシート前方の位置にある。2点側ベルト22は、2点側アンカー26から、2点側スルー233を経由し、2点側リトラクタ21に至るまでの距離が最短となるように略たるみなく、2点側リトラクタ21に巻き取られている。乗員Mが3点式シートベルト10を装着した後に、2点側スルー233がガイドレール232に沿って、シートクッション1の後方上部に移動する。以上により、2点側ベルト22は乗員Mの上半身左肩から右腰へ向け交差してショルダベルト部7を形成する。ショルダベルト部7は、2点側アンカー26及び2点側スルー233の2点により乗員Mを拘束する。この場合において、2点側スルー233はショルダベルト部7を摩擦力により、固定している。
【0098】
なお、ガイドレール232の一端は、サイドルーフ3の車両前側方向又は、Aピラー(フロントピラー)の所定位置としてある。ガイドレール232の他端は、サイドルーフ3の車両後側方向又は、Bピラー(センターピラー)4の所定位置としてある。2点側リトラクタ21はBピラー4の内部に固定されている。
【0099】
実施の形態3において、2点式シートベルト20の動作制御、及び動作制御の処理手順は実施の形態1と同様であるので、省略する。また、実施の形態3において、実施の形態2と同様な2点式シートベルト20の動作制御を採用してもよい。
【0100】
実施の形態3のシートベルト装置100は、実施の形態1及び2が奏する効果に加えて、次のような効果を奏する。2点側アンカー26を3点側アンカー15と共通化したので、部品点数を減らすことが可能となる。2点側リトラクタ21をBピラー4の内部に設置したので、シート周りに設置される部品が減り、車室内の環境が改善される。また、2点側リトラクタ21に、埃や塵が侵入しにくくなり、埃や塵が溜まることによる故障の確率を低減することが可能となる。
【0101】
(実施の形態4)
実施の形態4では2点式シートベルト20の状態を3つとする。従来の2点式シートベルト20は、解除状態、装着状態の2つの状態を持つが、さらに待機状態を加える。実施の形態4と実施の形態1との違いは、主として2点式シートベルト20の動作制御である。実施の形態4の3点式シートベルト10、2点式シートベルト20の構成は、実施の形態1と同様であるから、以下の説明では実施の形態1との相違である制御について主に述べる。なお、実施の形態4においては、シートベルト装置100は、車両の進行方向右側のシートに用いられるものとしているので、実施の形態1のシートベルト装置100とは車両の前後方向を結ぶ線を対称軸として線対称となっている。
【0102】
まず、待機状態を加える背景について説明する。車両走行時に乗員Mはシートベルトを装着することが義務付けられているが、それは公道上のみであり、駐車場内といった公道ではない場所では、シートベルトの装着は義務付けられていない。そういったことから、駐車場内では、周囲を確認しやすい、バック走行時に後方を確認しやすいなどの理由から、乗員Mがシートベルトを装着しない可能性がある。
【0103】
一方、乗員Mが車両に乗り込みシートベルト非装着のまま走行する場合、上述のシートベルト装置100においては、規定速度に達するまでは2点式シートベルト20は解除状態にある。また、公道から駐車場に乗り入れ、シートベルトを解除した場合、3点式シートベルト10を解除したときは、2点式シートベルト20は解除状態となる。その後、車両が規定速度に達したら、2点式シートベルト20は装着状態となる。
【0104】
ここで、2点式シートベルト20が解除状態の時のステアリングと2点側ベルト22との位置関係について説明する。
図16は2点側ベルト22の位置を示す説明図である。
図16はルーフ側から見た図となっている。
図17及び
図18はステアリングSと2点側ベルト22との位置関係を示す説明図である。
図17は乗員Mの視点で眺めた図である。
図18は車両中央側から見た図である。2点側ベルト22はステアリングSの時計7時及び2時方向を通るように、ステアリングSを横切っている。そのため、例えば乗員Mが左手HLを6時方向に回そうとした場合に、2点側ベルト22が邪魔になり、ステアリングSの操作に難がある。そこで、上述した2点式シートベルト20を装着状態に移行する規定速度を極めて小さい値に設定すると、ステアリングS操作の問題は解消されるが、シートベルトを装着しないという乗員の意思に反しており、2点式シートベルト20の動作は、乗員Mが違和感を覚えるものとなってしまう。そこで、待機状態を設ける。
【0105】
図19及び
図20は2点式シートベルト20の待機状態を示す説明図である。
図19はルーフ側から乗員Mを見下ろした場合の図である。
図20は車両中央側からドア側を見た場合の図である。
図19及び
図20に示す解除位置P1は、2点式シートベルト20が解除状態であるときに、2点側ショルダアンカー231が停止している位置である。装着位置P2は、2点式シートベルト20が装着状態であるときに、2点側ショルダアンカー231が停止している位置である。待機状態が追加されたことに伴い、
図19及び
図20に示すように解除位置P1と装着位置P2との間に、待機位置P3を設ける。待機位置P3は2点式シートベルト20が待機状態であるときに、2点側ショルダアンカー231が停止している位置である。待機位置P3は2点側ベルト22がステアリングS近傍から離れ、乗員Mの一方の腕の肘と他方の腕の肘との間を通過する位置である。そして、車両の走行状態と3点式シートベルト10の3点側バックル16の状態より、最適な位置を判定して、2点側ベルト22を移動させる。
【0106】
次に、本実施の形態における2点式シートベルト20の動作について説明する。
図21は2点式シートベルト20の状態遷移図である。状態遷移の起こすイベントに記載されている「停車」、「低速」及び「中速」は、車両の走行状態である。「停車」とは車両が停止している状態である。「低速」とは車速が規定速度(例えば20km/h)未満である状態である。「中速」とは車速が規定速度以上である状態である。
図21では、走行状態が変化したことが、状態遷移の起こすイベントとなっている。なお、規定速度はシートベルト未装着の警報が出力される速度を基準として設定する。また、中速であるか否かの判定を速度ではなく、シートベルト未装着の警報の有無を用いて判定しても良い。
【0107】
2点式シートベルト20が解除状態である場合、車両が停車状態から低速状態に変化すると、2点式シートベルト20は待機状態に遷移する。待機状態で車両が停車状態に変化すると、2点式シートベルト20は解除状態に遷移する。2点式シートベルト20が待機状態の場合、車両が低速状態から中速状態に変化すると、2点式シートベルト20は装着状態に遷移する。装着状態で、3点式シートベルト10の3点側タング14が解除されると、2点式シートベルト20は待機状態に遷移する。
【0108】
2点式シートベルト20が解除状態で3点側タング14が係合されると、装着状態に遷移する。装着状態で、3点側タング14が解除され、かつ車両が停車状態に変化したら、2点式シートベルト20は解除状態に遷移する。なお、
図21では解除状態と装着状態とは直接遷移しているように記載しているが、解除から装着に遷移する場合、装着から解除に遷移する場合、共に中間の遷移状態を経由する。
【0109】
図22は2点式シートベルト20に関わるハードウェアの構成を示す説明図である。ECU8は、2点式シートベルト20の制御を行う。ECU8はCPU(Central Processing Unit)81、ROM(Read Only Memory)82、RAM83、I/O84、モータドライバ85を含む。CPU81はROM82に記憶された制御プログラムに従い、2点式シートベルト20を制御する。RAM83はCPU81によるプログラムの実行時に発生するデータを一時的に記憶する。I/O84はセンサや他のECUからの信号を受け付ける。モータドライバ85はCPU81の指示に従い、移動用モータM1に駆動電流を供給する。移動用モータM1は2点側ショルダアンカー231を移動する際に用いるモータである。
【0110】
CPU81はI/O84を介して、2点式シートベルト20の動作のために、信号を受信する。
図22に示す、ギアポジション信号は車両のエンジンギアの位置を示す信号である。イグニッション信号はイグニッション(点火装置)がONかOFFを示す信号である。イグニッション信号により、車両のエンジンが掛かっているか停止しているかを判定することが可能である。速度信号は車両の速度を示す信号である。バックルスイッチ信号は、3点側タング14が係合状態であるか、または解除状態であるかを示す信号である。ショルダアンカー位置信号は、2点側ショルダアンカー231の位置を示す信号である。
【0111】
図23は2点式シートベルト20の制御処理の手順を示すフローチャートである。ECU8のCPU81は2点側ショルダアンカー231が解除位置にあるか否かを判定する(ステップS11)。CPU81は2点側ショルダアンカー231が解除位置にあると判定した場合(ステップS11でYES)、解除状態処理を行う(ステップS12)。CPU81は2点側ショルダアンカー231が解除位置にないと判定した場合(ステップS11でNO)、2点側ショルダアンカー231が装着位置にあるか否かを判定する(ステップS13)。CPU81は2点側ショルダアンカー231が装着位置にあると判定した場合(ステップS13でYES)、装着状態処理を行う(ステップS14)。CPU81は2点側ショルダアンカー231が装着位置にないと判定した場合(ステップS13でNO)、待機状態処理を行う(ステップS15)。
【0112】
図24は解除状態処理の処理手順を示すフローチャートである。CPU81は3点側タング14が係合されているか否かを判定する(ステップS21)。CPU81は3点側タング14が係合されていると判定した場合(ステップS21でYES)、2点式シートベルト20を装着状態に遷移させる(ステップS22)。すなわち、移動用モータM1を駆動し、2点側ショルダアンカー231を装着位置まで移動させる。CPU81は3点側タング14が係合されていないと判定した場合(ステップS21でNO)、CPU81は走行状態が低速であるか否かを判定する(ステップS23)。CPU81は走行状態が低速と判定した場合(ステップS23でYES)、2点式シートベルト20を待機状態に遷移させる(ステップS24)。すなわち、移動用モータM1を駆動し、2点側ショルダアンカー231を待機位置まで移動させる。CPU81は処理を呼び出し元に戻す。CPU81は走行状態が低速でないと判定した場合(ステップS23でNO)、走行状態が中速であるか否かを判定する(ステップS25)。CPU81は走行状態が中速であると判定した場合(ステップS25でYES)、2点式シートベルト20を装着状態に遷移させる(ステップS22)。CPU81は処理を呼び出し元に戻す。CPU81は走行状態が中速でないと判定した場合(ステップS25でNO)、状態遷移の必要はないので、処理を呼び出し元に戻す。
【0113】
図25は装着状態処理の処理手順を示すフローチャートである。CPU81は3点側タング14が解除されているか否かを判定する(ステップS31)。CPU81は3点側タング14が解除されていないと判定した場合(ステップS31でNO)、判定を繰り返し行う。CPU81は3点側タング14が解除されていると判定した場合(ステップS31でYES)、走行状態が停車か否かを判定する(ステップS32)。CPU81は走行状態が停車であると判定した場合(ステップS32でYES)、2点式シートベルト20を解除状態に遷移させる(ステップS33)。すなわち、移動用モータM1を駆動し、2点側ショルダアンカー231を解除位置まで移動させる。CPU81は処理を呼び出し元に戻す。CPU81は走行状態が停車でないと判定した場合(ステップS32でNO)、走行状態が低速であるか否かを判定する(ステップS34)。CPU81は走行状態が低速であると判定した場合(ステップS34でYES)、2点式シートベルト20を待機状態に遷移させる(ステップS35)。すなわち、移動用モータM1を駆動し、2点側ショルダアンカー231を待機位置まで移動させる。CPU81は処理を呼び出し元に戻す。CPU81は走行状態が低速でないと判定した場合(ステップS34でNO)、状態遷移の必要はないので、処理を呼び出し元に戻す。
【0114】
図26は待機状態処理の処理手順を示すフローチャートである。CPU81は3点側タング14が係合しているか否かを判定する(ステップS41)。CPU81は3点側タング14が係合していると判定した場合(ステップS41でYES)、2点式シートベルト20を装着状態に遷移させる(ステップS42)。すなわち、移動用モータM1を駆動し、2点側ショルダアンカー231を装着位置まで移動させる。CPU81は処理を呼び出し元に戻す。CPU81は3点側タング14が係合していないと判定した場合(ステップS41でNO)、走行状態が中速であるか否かを判定する(ステップS43)。CPU81は走行状態が中速であると判定した場合(ステップS43でYES)、2点式シートベルト20を装着状態に遷移させる(ステップS42)。すなわち、移動用モータM1を駆動し、2点側ショルダアンカー231を装着位置まで移動させる。CPU81は処理を呼び出し元に戻す。CPU81は走行状態が中速でないと判定した場合(ステップS43でNO)、走行状態が停車であるか否か判定する(ステップS44)。CPU81は走行状態が停車であると判定した場合(ステップS44でYES)、2点式シートベルト20を解除状態に遷移させる(ステップS45)。すなわち、移動用モータM1を駆動し、2点側ショルダアンカー231を解除位置まで移動させる。CPU81は処理を呼び出し元に戻す。CPU81は走行状態が停車でないと判定した場合(ステップS44でNO)、状態遷移の必要はないので、処理を呼び出し元に戻す。
【0115】
図27は走行状態判定処理の処理手順を示すフローチャートである。CPU81は停車カウンタ、中速カウンタ、低速カウンタをすべて0にリセットする(ステップS51)。CPU81はギアポジションがパーキングであるか、またはイグニッションがOFFであるかを判定する(ステップS52)。CPU81はギアポジションがパーキングであるか、またはイグニッションがOFFであると判定した場合(ステップS52でYES)、次の処理を行う。停車カウンタを1増加させる。中速カウンタ及び低速カウンタを0にリセットする(ステップS53)。CPU81はギアポジションがパーキングでもなく、イグニッションがOFFでもない判定した場合(ステップS52でNO)、車両速度が中速(規定速度)以上であるか否かを判定する(ステップS54)。CPU81は車両速度が中速以上であると判定した場合(ステップS54でYES)、次の処理を行う。中速カウンタを1増加させる。低速カウンタ、停車カウンタは0にリセットする(ステップS55)。CPU81は車両速度が中速以上でないと判定した場合(ステップS54でNO)、CPU81は低速カウンタを1増加させ、停車カウンタ、中速カウンタを0にリセットする(ステップS56)。ステップS53、ステップS55、ステップS56の後、CPU81は閾値以上の値をカウンタがあるか否かを判定する(ステップS57)。CPU81は閾値以上の値をカウンタがあると判定した場合(ステップS57でYES)、閾値以上の値を持つカウンタに対応した状態を走行状態であると確定する(ステップS58)。CPU81は処理を呼び出し元に戻す。CPU81は閾値以上の値をカウンタがないと判定した場合(ステップS57でNO)、処理をステップS52に戻す。なお、停車、低速、中速それぞれに対応するカウンタを設けて、カウンタ値が閾値を以上となった場合に、状態を確定することとしたのは、車庫入れのように停車と発進とを繰り返すような場合において、2点式シートベルト20が頻繁に動作することを回避するためである。
【0116】
図27で示す走行状態判定処理は、インターバルタイマにより所定時間毎に実行される。判定結果である走行状態はグローバル変数として、RAM83に記憶し、上述の解除状態処理、装着状態処理、待機状態処理において、参照される。
【0117】
または、上述の解除状態処理、装着状態処理、待機状態処理において、必要に応じて、
図27で示す走行状態判定処理を実行してもよい。その場合、解除状態処理ではステップS23の前に、装着状態処理ではステップS32の前に、待機状態処理ではステップS43の前に、それぞれ走行状態判定処理を実行する。
【0118】
上述のように、実施の形態4のシートベルト装置100は、2点式シートベルト20の状態として待機状態を設けることにより、乗員が2点式シートベルト20を装着していない場合であっても、2点側ベルト22がステアリング操作の邪魔にはならず、操作性を確保することが可能となる。また、2点式シートベルト20の状態変化を、3点式シートベルト10の装着状況及び車両の走行速度により行うので、乗員の意志に沿ったベルト制御ができ、ベルトの動作に対する乗員の違和感を低減することが可能となる。
【0119】
なお、実施の形態4において、2点式シートベルト装置を実施の形態3と同様な構成にしても良い(
図13参照)。すなわち、2点側アンカー26を3点式シートベルト10の3点側アンカー15と共通化する。2点側ショルダアンカー231をスルー(2点側スルー233)とする。2点側リトラクタ21を窓側に配置する。
【0120】
(実施の形態5)
実施の形態5は、実施の形態4と同様に2点式シートベルト20に待機状態を加えた構成である。実施の形態5の3点式シートベルト10、2点式シートベルト20の構成は、実施の形態4と同様であるから、以下の説明では主に実施の形態4と相違する点について述べる。
【0121】
実施の形態5において待機状態を設ける意義について説明する。上述のシートベルト装置100では、3点式シートベルト10の3点側タング14が3点側バックル16に係合すると、その直後に2点側ベルト22が装着位置に移動する。この場合、乗員Mは3点側バックル16を見ながら3点側タング14を係合すると考えられる。このとき、乗員Mは3点側バックル16側にかがんだ状態になるため、2点側ベルト22の移動線上に乗員Mの頭部が位置し、2点側ベルト22と干渉する可能性がある。
【0122】
実施の形態5では、実施の形態4と同様に待機状態を設ける。待機状態であるとき、2点側ベルト22の2点側ショルダアンカー231は待機位置P3にある(
図19、
図20参照)。待機位置P3は実施の形態4と同様に、2点側ベルト22がステアリングS近傍から離れ、乗員Mの一方の腕の肘と他方の腕の肘との間を通過する位置である。
【0123】
2点側ショルダアンカー231を待機位置P3で停止させる方法は、例えば、次のようなものがある。待機位置P3に対応するガイドレール232の位置にスイッチを設け、2点側ショルダアンカー231によりスイッチがONとなることにより、待機位置P3に達したことを検出する。2点側ショルダアンカー231を移動させる移動用モータM1の回転運動を検出する回転センサを設け、移動用モータM1の回転数により、2点側ショルダアンカー231が待機位置P3に達したことを推定する。移動用モータM1の駆動時間と駆動電圧・電流より、2点側ショルダアンカー231が待機位置P3に達したことを推定する。
【0124】
次に、本実施の形態における2点式シートベルト20の制御処理について説明する。
図28は、2点式シーベルト20の制御処理の手順を示すフローチャートである。ECU8のCPU81は3点式シートベルト10の3点側タング14が3点側バックル16に係合しているか否かを判定する(ステップS61)。CPU81は係合していると判定した場合(ステップS61でYES)、2点式シートベルト20を待機状態へ遷移させる。すなわち、2点側ショルダアンカー231を待機位置P3に移動させる(ステップS62)。CPU81は車両が走行状態か否かを判定する(ステップS63)。この判定については後述する。CPU81は車両が走行状態でないと判定した場合(ステップS63でNO)、ステップS63を繰り返し実行する。CPU81は車両が走行状態であると判定した場合(ステップS63でYES)、2点式シートベルト20を装着状態へ遷移させる(ステップS64)。すなわち、CPU81は、2点側ショルダアンカー231を装着位置P2まで移動させる。CPU81は処理を終了する。なお、
図28に示す処理は繰り返し実行される。
【0125】
CPU81は3点側タング14が3点側バックル16に係合していないと判定した場合(ステップS61でNO)、2点式シートベルト20を解除状態へ遷移させる(ステップS65)。すなわち、CPU81は2点側ショルダアンカー231を解除位置P1まで移動させる。CPU81は処理をステップS61に戻す。
【0126】
図29は、走行状態判定処理の処理手順を示すフローチャートである。
図29は、上述のステップS63の処理手順を示している。CPU81はギアポジションがパーキングか否かを判定する(ステップS71)。CPU81はギアポジションがパーキングであると判定した場合(ステップS71でYES)、車両は停止状態であると判定し(ステップS72)、処理を終了する。
【0127】
CPU81はギアポジションがパーキングではないと判定した場合(ステップS71でNO)、車両速度が20km/h以上であるか否かを判定する(ステップS73)。CPU81は車両速度が20km/h以上であると判定した場合(ステップS73でYES)、車両は走行状態であると判定して(ステップS74)、処理を終了する。CPU81は車両速度が20km/h未満であると判定した場合(ステップS73でNO)、車両は停止状態であると判定して(ステップS72)、処理を終了する。
【0128】
上述のように、実施の形態4のシートベルト装置100は、2点式シートベルト20の状態として待機状態を設けることにより、乗員Mの頭部との干渉を防止することが可能となる。その結果、シートベルト装置100の快適性を向上する。
【0129】
(実施の形態6)
実施の形態6は、3点式シートベルト10の装着をより容易にする構成に関する。
図30は実施の形態6に係るシートベルト装置100の構成を示す正面図である。
図31は昇降機構18近傍の部分拡大図である。実施の形態6のシートベルト装置100の構成において、実施の形態1と同様なものは同一の符号を付し説明を省略する。以下の説明では、主に実施の形態1と相違する点について述べる。
【0130】
実施の形態6において、3点式シートベルト10の3点側バックル16は昇降機構18に固定されている。昇降機構18はラック18a、ピニオン18b、回転モータ18cを含む。回転モータ18cはシートクッション1の側方に床部31から所定の距離をおいて固定されている。回転モータ18cの回転軸は車両の前後方向に沿うようにしてある。回転モータ18cの軸にはピニオン18bが取り付けられている。ピニオン18bはラック18aと噛み合っている。回転モータ18cにピニオン18bを回転させることにより、ラック18aが上下に動く。それに伴い、3点側バックル16も上下に動く構造となっている。昇降機構18は制御部71により制御される。なお、
図30、
図31では昇降機構18の内部構造が視認できるようにしてあるが、実際には動作に支障がない形態で、ラック18a、ピニオン18b、回転モータ18cは筐体に覆われている。なお、昇降機構は、上述の構成に限らない。軸方向を垂直としたボールねじにより、3点側バックル16を上下動するようにしても良い。軸方向が水平のボールねじにカムを取り付け、カムにより3点側バックル16を上下動するようにしても良い。
【0131】
シートクッション1には乗員Mの着座を検知する着座検知センサ1aが備えられている。着座検知センサ1aは制御部71と接続されている。着座検知センサ1aは乗員Mの着座を検知すると、着座した旨を制御部71に通知するようにしてある。なお、着座検知センサ1aはシートクッション1だけでなく、シートバック2にも備えるようにしても良い。また、シートバック2のみが着座検知センサ1aを備えても良い。
【0132】
3点側バックル16には発光素子16aが内蔵されている。発光素子16aは例えば、LED(Light Emitting Diode)や小型電球である。発光素子16aの発する光は、3点側タング14が挿入される挿入口から視認可能としてある。発光素子16aを発光させるか、消灯させるかについては、制御部71により制御される。
【0133】
次に、3点式シートベルト10の動作制御の処理手順について説明する。
図32は3点式シートベルト10の動作制御の処理手順を示すフローチャートである。制御部71は着座検知センサ1aの出力をもとに、乗員Mがシートに着座したか否かを判定する(ステップS101)。制御部71は着座を検知しない場合(ステップS101でNO)、ステップS101を繰り返し実行する。制御部71は着座を検知した場合(ステップS101でYES)、3点側タング14が3点側バックル16に係合されているか否かを判定する(ステップS102)。制御部71は、3点側タング14が3点側バックル16に係合されていないと判定した場合(ステップS102でNO)、3点側バックル16に内蔵されている発光素子16aを点灯する(ステップS103)。制御部71は、昇降機構18を駆動し、3点側バックル16を上昇させる(ステップS104)。制御部71は処理をステップS101に戻す。
【0134】
制御部71は、3点側タング14が3点側バックル16に係合されていると判定した場合(ステップS102でYES)、3点側バックル16に内蔵されている発光素子16aを消灯する(ステップS105)。制御部71は、昇降機構18を駆動し、3点側バックル16を下降させる(ステップS106)。制御部71は処理を終了する。
【0135】
本実施の形態においては、乗員Mの着座を検知すると、3点側バックル16に内蔵されている発光素子16aを点灯するともに3点側バックル16を上昇させる。それにより、乗員Mは3点側タング14を3点側バックル16に係合させることが容易となるという効果を奏する。なお、3点式シートベルト10の動作制御を着座センサによる着座の検知を契機に行うのではなく、車両のドアが閉められたことを検知し、それを契機に行ってもよい。
【0136】
実施の形態1から実施の形態3及び実施の形態6において、シートベルト装置100は、車両の進行方向左側のシートに用いられることを前提として記載しているが、車両の進行方向右側のシートに用いることも可能である。その場合、シートベルト装置100の各構成を車両中央に対して、対称に配置すれば良い。また、3点式シートベルト10の3点側タング14と3点側バックル16の配置を逆にしてもよい。すなわち、3点側ベルト12の中途にバックルを設け、シートクッション1の側部フレーム又は車室30の床部31にタングを設けても良い。この場合、タング側にバックルが係合された否かの検出スイッチを設ければ良い。同様に実施の形態4及び5のシートベルト装置100を車両の進行方向左側のシートに用いることも可能である。
【0137】
各実施例で記載されている技術的特徴(構成要件)はお互いに組合せ可能であり、組み合わせすることにより、新しい技術的特徴を形成することができる。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって、制限的なものでは無いと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した意味では無く、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。