(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は、圧縮成形と射出成形を併用したプロセスにより製造されるトリム部品を備える例示的な車両10を示す斜視図である。図示のように、車両10は、シート14とアームレスト16とセンターコンソール18とを有する室内12を備えている。以下に詳細に説明するが、シート14、アームレスト16、センターコンソール18、および/または、室内12の他の領域のトリム部品には、圧縮成形と射出成形を併用するプロセスにより製造されるものもある。例えば、いくつかの実施形態において、車両用トリム部品は、繊維パネルを型空洞部の第1の表面に配置し、型空洞部の第1の表面と第2の表面との間で繊維パネルを圧縮して、繊維パネルを所望の形状に成形するプロセスにより製造される。そして、型空洞部に樹脂を射出し、繊維パネルに隣接する第1の表面と第2の表面との間の空隙を埋める。いくつかの実施形態において、この空隙は、繊維パネルの周囲に延在している。このような実施形態では、射出された樹脂が空隙を埋め、樹脂硬化の際に繊維パネルに対する境界部を形成する。型空洞部の寸法精度があるため、得られるトリム部品の各エッジは所望の寸法にほぼ対応する。その結果、形成後の部品エッジのトリミングプロセスが不要となるため、製造プロセス時間が短縮され、ゴミ埋め立て地に廃棄されるゴミの量が低減される。
【0014】
また、いくつかの実施形態において、繊維パネルと第2の表面との間の少なくとも1つの二次空隙に樹脂を射出して、車両用トリム部品の補助部品を形成する。例えば、型空洞部は、繊維パネルの表面に沿ってリブを形成するように構成された複数の二次空隙を有してもよい。リブは、繊維パネルを支持することにより、より強度のある部品を得る、および/または、繊維パネルの厚さ低減を促進することにより部品の重量を低減するように構成される。繊維パネルと補助部品が単一の型空洞部にて形成されることから、圧縮型と射出型の間で部品を移動させるプロセスが不要となり、製造プロセス時間が短縮される。また、単一の型を用いることで、圧縮成形プロセス用の第1の型と射出成形プロセス用の第2の型を製造する場合と比較して、設計および製造コストが低減される。
【0015】
図2は、
図1の車両の室内の一部を示す斜視図である。図示のように、車両室内12は、図示のセンターコンソール18、フロアコンソール20、室内ドアパネル22、計器パネル24、天井内張り26、オーバーヘッドコンソール28、サンバイザー30等、種々の構成部材を備えている。以下に詳細に説明するが、車両室内12の各構成部材は、圧縮成形と射出成形の組み合わせにより製造される1以上のトリム部品を備えていてもよい。圧縮成形と射出成形を併用するプロセスにより、寸法精度が高いエッジを有するトリム部品の形成が容易になり、形成後のトリミングプロセスが不要になる。また、単一の型空洞部にて、繊維パネルの形成、および、いくつかの補助部品の成形を行うことにより、第1の圧縮型と第2の射出型を用いるプロセスと比較して、製造プロセス時間が大幅に短縮される。
【0016】
図3は、圧縮成形と射出成形の併用によりトリム部品を製造するように構成された成形組立体32の一実施形態の示す斜視図である。図示の実施形態において、成形組立体32は、第1の(すなわち、下側)型部材34と、第2の(すなわち、上側)型部材36とにより構成される。図示のように、第1の型部材34は、型空洞部40の第1の部分を画定する第1の表面38を備え、第2の型部材36は、型空洞部40の第2の部分を画定する第2の表面42を備えている。以下に詳細に説明するが、第1の表面38は、繊維パネル44を受け入れるように構成され、第2の表面42は、繊維パネル44を第1の表面38に対して圧縮し、繊維パネル44を所望の形状に成形するように構成されている。
【0017】
いくつかの実施形態において、繊維パネル44は、構造用繊維と熱可塑性樹脂との組み合わせにより構成される。構造用繊維は、麻、木、亜麻、ケナフ、サイザル麻等の天然繊維、および/または、グラスファイバ、カーボンファイバ、高分子ファイバ等の合成繊維により構成されてもよい。また、熱可塑性樹脂は、例えば、ポリプロピレン(PP)、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン(ABS)、および/または、ポリカーボーネート(PC)からなるバインダにより構成されてもよい。例として、繊維パネル44は、約50%が天然繊維で、約50%がPPで構成されてもよい。圧縮成形を促進するために、繊維パネル44を加熱し(例えば、約200℃)、熱可塑性樹脂を液化させる。そして、繊維パネル44を空洞部40の第1の表面38に配置し、第2の型部材36を方向46に沿って第1の型部材34側に移動させて、第1の表面38と第2の表面42の間で繊維パネル44を圧縮する。型組立体32内で繊維パネル44の温度が下がると、熱可塑性樹脂は固化して、型空洞部40の形状と一致した実質的に剛性のある複合パネルが形成される。
【0018】
他の実施形態において、繊維パネル44は、構造用繊維と熱硬化性樹脂との組み合わせにより構成される。上述の実施形態と同様、構造用繊維は、麻、木、亜麻、ケナフ、サイザル麻等の天然繊維、および/または、グラスファイバ、カーボンファイバ、高分子ファイバ等の合成繊維により構成されてもよい。また、熱硬化性樹脂は、例えば、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエステル樹脂、および/または、ビニルエステル樹脂により構成されてもよい。例として、繊維パネル44は、ミシガン州ホランド、ジョンソン・コントロールズ・テクノロジー・カンパニー製造のFibrowood(ファイブロウッド)により構成されてもよい。圧縮成形を促進するために、繊維パネル44を空洞部40の第1の表面38に配置し、第2の型部材36を方向46に沿って第1の型部材34側に移動させて、第1の表面38と第2の表面42の間で繊維パネル44を圧縮する。圧縮プロセスの間、パネル44を加熱すること(例えば、加熱した型組立体32を介して)により、熱硬化性樹脂を硬化させる。その結果、型空洞部40の形状と一致した実質的に剛性のある複合パネルが形成される。
【0019】
第1の表面38と第2の表面42の間で繊維パネル44を圧縮した後、型空洞部に樹脂を射出し(例えば、ポート48を介して)、繊維パネル44に隣接する第1の表面38と第2の表面42の間の少なくとも1つの空隙を埋める。例えば、いくつかの実施形態において、この空隙は、繊維パネル44の周囲50に延在する。このような実施形態では、射出された樹脂が空隙を埋め、樹脂硬化の際に繊維パネル44に対する境界部を形成する。型空洞部の寸法精度があることから、得られるトリム部品の各エッジは所望の寸法にほぼ対応する。その結果、形成後の部品エッジのトリミングプロセスが不要となることから、製造プロセス時間が短縮されるとともに、ゴミ埋め立て地に廃棄されるゴミの量が低減される。
【0020】
さらなる実施形態において、空隙は繊維パネル44内の間隙52に対応している。このような実施形態では、樹脂が間隙を埋め、ほぼ連続した構造を形成する。例えば、間隙52は、繊維パネル44と間隙52内の成形樹脂との境界面に沿って低強度ゾーンを形成するように構成されてもよい。以下に詳細に説明するが、低強度ゾーンは、成形樹脂が繊維パネル44から外れるのを容易にすることで、例えば、エアバッグ展開を可能にするように構成されてもよい。さらなる実施形態において、圧縮成形プロセス中に繊維パネル44が不用意に破れてしまった場合に形成される間隙52を樹脂によって埋め、これにより、ほぼ連続面を有するトリム部品を形成する。さらに、間隙52は、トリム部品の高曲率領域を形成するように構成されてもよい。例えば、型空洞部40は、繊維パネルを比較的低曲率の形状に成形するとともに、樹脂を高曲率の構成部材に成形するような形状とされてもよい。このようにして、所望の形状と構造特性を有するトリム部品が形成される。図示の実施形態では繊維パネル44が有する間隙52は1つだが、繊維パネル44は、さらに間隙を有して、例えば、低強度ゾーンの形成、繊維パネルの破れ領域の充填、および/または、トリム部品の高曲率領域の形成を行ってもよい。
【0021】
図4は、閉位置における成形組立体32の一実施形態を示す断面図である。図示の実施形態において、型空洞部40は、繊維パネル44の周囲50に延在する空隙54を有している。前述のように、空隙54に樹脂を射出して、樹脂硬化の際に繊維パネル44に対する境界部を形成してもよい。図示の実施形態では、成形組立体32は、ポート48と空隙54の第1の部分との間に延在する第1の流体通路56と、ポート48と空隙54の第2の部分との間に延在する第2の流体通路58とを備えている。この構成では、液体樹脂がポート48に射出されると、樹脂は空隙54内を流れて、繊維パネル44を取り囲む境界部を形成する。また、成形組立体32は、ポート48と間隙52との間に延在する第3の流体通路60を備えることにより、間隙への樹脂の流れを促進する。
【0022】
図示の実施形態において、型空洞部40は、繊維パネル44と型空洞部40の第2の表面42との間に位置する二次空隙62を有している。二次空隙62は、例えば、支持リブやコネクタ等の、車両用トリム部品の補助部品を形成するように構成されている。図示のように、ポート48と二次空隙62との間に第4の流体通路64が延在している。この構成では、液体樹脂がポート48に射出されると、樹脂は空隙62内を流れて、樹脂硬化の際に補助部品を形成する。
【0023】
動作時において、繊維パネル44は、型空洞部40の第1の表面38に配置され、繊維パネル44は、型空洞部40の第1の表面38と第2の表面42との間で圧縮されて、所望の形状に成形される。型空洞部40内で繊維パネル44が固化すると、ポート48に樹脂が射出され、空隙52、54、62を埋める。樹脂が硬化すると、樹脂は繊維パネル44に結着し、これにより、所望の形状、構造特性および/または補助部品を有するトリム部品が形成される。いくつかの実施形態において、樹脂は、プリプロピレン(PP)、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン(ABS)またはポリカーボネート(PC)等の熱可塑性材料、あるいは、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエステル樹脂またはビニルエステル樹脂等の熱硬化性材料により構成されてもよい。このような実施形態では、樹脂は液体の状態で型に射出され、樹脂硬化時に固化する。その結果、型空洞部40内の各空隙の形状に対応した形状の樹脂部分が形成される。いくつかの実施形態において、射出された樹脂をセル状構造によって(例えば、化学的または機械的膨張剤を介して)成形し、トリム部品の嵩の低減、および/または、処理特性の向上を行ってもよい。
【0024】
図5は、圧縮成形と射出成形の併用により製造される車両用トリム部品66の一実施形態を示す正面図である。図示のように、トリム部品66は、繊維パネル44と、繊維パネル44の周囲50に配置された樹脂境界部68とを備えている。前述のように、型空洞部40の寸法精度によって、所望の寸法の樹脂境界部68の形成が容易になり、形成後のパネルのトリミングプロセスが不要となる。例えば、幅70および長さ72を有するトリム部品66を形成するには、繊維パネル44を、所望の幅70より小さい幅74で、所望の長さ72よりも短い長さ76にトリミングする。そして、所望寸法(すなわち、幅70および高さ72)を有する型空洞部40に繊維パネル44を配置する。繊維パネル44を第1の表面38と第2の表面42との間で圧縮した後、周囲50を取り囲む空隙54に樹脂を射出して、境界部68を形成するとともに、所望寸法のトリム部品66を形成する。
【0025】
圧縮成形プロセス前に繊維パネル44をトリミングすることから、ゴミ(すなわち、余分な材料)をリサイクルしてもよい。一方、形成後のゴミをリサイクルする場合、繊維パネル内の熱硬化性樹脂が硬化している、および/または、熱可塑性樹脂が構造用繊維に結着していることから、より困難となる。また、繊維パネル44の周囲50と型空洞部40のエッジを樹脂が埋めることから、繊維パネルのエッジにばらつきがあっても、トリム部品66のエッジは寸法精度が高くなる。その結果、繊維パネルのエッジは、圧縮成形プロセス前に大まかな寸法にトリミングすればよいので、繊維パネルのトリミングにかかる時間が大幅に短縮される。
【0026】
図示の実施形態において、トリム部品66は、繊維パネルの間隙52内に形成された樹脂特徴部78を備えている。図示のように、特徴部78は、寸法精度が高いエッジを有する開口部80を有している。開口部80を形成するため、型空洞部40は、開口部80の形状の突起を有している。間隙52に樹脂が射出されると、この突起が開口部80への樹脂の流れを遮断して、所望の特徴部78を形成する。説明からわかるように、特徴部78は、トリム部品66に対する他の部品の固定、および/または、車両室内12に対するトリム部品66の固定に利用することができる。さらに、図示の実施形態では、ほぼ六角形開口部80を用いているが、他の実施形態では、他の開口部構成(例えば、正方形、円形、楕円形等)であってもよい。また、さらに他の実施形態において、繊維パネル44全体に分散した、さらなる特徴部78を備えてもよい。特徴部78は圧縮成形と射出成形の併用プロセスにおいて形成されるので、形成後に繊維パネルに特徴部を取り付ける作業が不要となる。その結果、トリム部品の製造にかかる時間と費用が大幅に低減される。
【0027】
また、図示のトリム部品66は、繊維パネル44の表面に結合される補助部品を備えている。前述のように、このような補助部品は、繊維パネルと型空洞部の第2の表面との間の二次空隙に樹脂を射出することにより形成することができる。図示の実施形態において、補助部品は、リブ82とコネクタ84とを含む。なお、他の実施形態において、ピン、マウント等、他の補助部品を備えてもよい。コネクタ84は、トリム部品66と、車両10の室内12における他の表面(例えば、ドアフレーム、計器パネル支持構造等)との連結を容易にするように構成されている。リブ82は、繊維パネル44を支持して、より強度の高いトリム部品の提供する、および/または、繊維パネルの厚さ低減を促進することによりトリム部品の重量を低減するように構成されている。いくつかの実施形態において、リブ82は、繊維パネル44と境界部68との境界面にわたって、および/または、繊維パネル44と樹脂特徴部78との境界面にわたって延在してもよい。このような実施形態では、リブ82は、パネルと境界部との境界面、および/または、パネルと特徴部との境界面の強度を向上させることができる。繊維パネルと補助部品が単一の型空洞部で形成されることから、圧縮型と射出型との間で部品を移動させるプロセスが不要となり、製造プロセス時間が短縮される。また、単一の型を用いることにより、圧縮成形プロセス用の第1の型と射出成型プロセス用の第2の型を製造する場合と比較して、設計および製造コストが低減される。
【0028】
図6は、圧縮成形と射出成形の併用により製造される車両用トリム部品66の一実施形態であり、カバーストック86を取り付けるプロセスを示す概略図である。図示のように、繊維パネル44に対して(例えば、接着層を介して)カバーストック86を取り付け、装飾面88を形成する。カバーストック86は、例えば、不織布、アップリケ、ビニル層、発泡層、箔層、皮革カバーであってもよい。このようなカバーストック86は、車両室内12に合った装飾面88を形成し、トリム部品66の外観を向上させるものであってもよい。図示の実施形態では、トリム部品66の形成後にカバーストック86が繊維パネル44に取り付けられる。なお、いくつかの実施形態において、圧縮成形プロセス時にカバーストックを取り付けてもよい。例えば、圧縮形成前に、型空洞部40の第1の表面28と繊維パネル44との間にカバーストックを配置してもよい。型空洞部40内で繊維パネル44が固化すると、カバーストックが繊維パネルに結着し、所望の装飾面を形成することができる。説明からわかるように、繊維パネル44の少なくとも一部、および/または、樹脂部品の少なくとも一部にカバーストック86を取り付けて、所望の装飾面88を得てもよい。
【0029】
図7は、エアバッグの展開を容易にするように構成された低強度ゾーンを有し、圧縮成形と射出成形の併用により製造される車両用トリム部品の一実施形態を示す正面図である。図示の実施形態において、トリム部品66は、繊維パネル44の間隙52内に形成された樹脂特徴部90を備えている。図示のように、樹脂特徴部90は、ほぼH字形であり、特徴部90と繊維パネル44との間に長い境界面を形成する。この長い境界面により低強度ゾーンが得られ、トリム部品66に十分な力が加わると、この力によって樹脂特徴部90が繊維パネル44から外れる。例として、トリム部品66は、エアバッグを隠すように構成された室内ドアパネルであってもよい。エアバッグは展開時に、樹脂特徴部90が繊維パネル44から外れるのに十分な力をトリム部品66に加えるので、エアバッグの展開が容易になる。
【0030】
図示の実施形態では特徴部90をほぼH字形としたが、他の実施形態において、他の低強度ゾーン形状(例えば、U字形、T字形、円形、正方形等)であってもよい。また、トリム部品66は、樹脂境界部68に取り囲まれた、ほぼ連続した繊維パネル44を備えて、繊維パネル44の周囲50に低強度ゾーンを形成してもよい。さらに、トリム部品は、エアバッグが展開するまでトリム部品がほぼ変わらない状態を保つように、低強度ゾーンの強度を個別に調整するように構成された種々の補強特徴部(例えば、リブ82、追加繊維パネル、肉厚の樹脂領域等)を備えてもよい。さらに、樹脂特徴部90と繊維パネル44との間の低強度ゾーンの強度を、スコアリング手法(例えば、型内スコアリング、レーザスコアリング等)によってさらに低下させ、エアバッグの力で樹脂特徴部90が繊維パネル44から確実に外れるようにしてもよい。
【0031】
いくつかの実施形態において、さらなる構成部材を用いて、エアバッグ展開時に低強度ゾーンの補強、および/または、テザー(つなぎ具)による各部品の保持を行ってもよい。例えば、トリム部品66の形成後に、繊維パネル44と樹脂特徴部90に可撓性パネル(例えば、カーボンファイバ、グラスファイバ、合成繊維等)を連結してもよい。このような実施形態では、エアバッグ展開時に、可撓性パネルが、繊維パネル44に対して樹脂特徴部90をつなぎとめて、低強度ゾーンにおいて樹脂特徴部90が繊維パネル44から外れる際に樹脂特徴部90を保持するようにしてもよい。他の実施形態において、圧縮成形/射出成形プロセスの際に、可撓性パネルをトリム部品66に連結してもよい。例えば、繊維パネルに隣接する型空洞部に可撓性パネルを配置してもよい。型空洞部内で繊維パネル44が固化すると、可撓性パネルが繊維パネルに結着し、エアバッグ展開時に樹脂特徴部90を保持するように構成されたトリム部品を形成する。
【0032】
図8は、繊維パネル44内に延在する補強部材92を有し、圧縮成形と射出成形の併用により製造される車両用トリム部品の一実施形態を示す断面図である。図示のように、繊維パネル44は、射出成形プロセス時における繊維パネル44内の樹脂の流れを可能にする間隙52を備えている。その結果、樹脂補強部材92部分が繊維パネル44の両側に形成され、部材92をパネル44に対してロックする。補強部材92は厚さがあるため、樹脂部品は、高い負荷を受けるトリム部品領域に対して構造的剛性を付加することができる。種々の樹脂および繊維部材を組み合わせることにより、所望の形状で所望の強度を有するトリム部品66を形成することができる。
【0033】
いくつかの実施形態において、補強部材92は、型空洞部における対向面の間で繊維パネル44を圧縮することにより形成される。繊維パネルが固化すると、これら対向面のうち少なくとも一方が部分的に後退し、補強部材92の形状の空隙を形成する。そして、この空隙に樹脂を射出して、部材92を形成する。他の実施形態では、間隙52に隣接する繊維パネル44の形状を、射出された樹脂の圧力によって形成する。このような実施形態では、圧縮成形プロセス後に型面を後退させるステップが不要となる。
【0034】
図9は、繊維パネル44の間隙52内に形成された高曲率部材94を有し、圧縮成形と射出成形の併用により製造される車両用トリム部品の一実施形態を示す断面図である。例として、型空洞部40は、繊維パネルを比較的低曲率の形状に成形するとともに、樹脂を高曲率の樹脂部材94に成形するような形状とされてもよい。繊維パネルの曲率は繊維の剛性によって限定されるので、このようにトリム部品66を形成することで、所望の構造的剛性を維持しつつ高曲率領域の形成が容易になる。前述のように、繊維パネル44の間隙52は、高曲率領域内に意図的に配置される、および/または、高曲率領域内の繊維の破れによって意図せずに形成されてもよい。
【0035】
図10は、樹脂部品と繊維パネルとの間に重ね継ぎ部を有し、圧縮成形と射出成形の併用により製造される車両用トリム部品の一実施形態を示す断面図である。図示のように、樹脂部材96が繊維パネル44の一部と重なり、重ね継ぎ部98を形成する。樹脂部品96と繊維パネル44との接触面積を大きくすることにより、境界面の構造維持性を向上させることができる。説明からわかるように、重なりの程度は、樹脂部品96と繊維パネル44との間に所望の結合強度が得られるように構成されればよい。なお、他の実施形態では、繊維パネル44が樹脂部品96の一部と重なるようにしてもよい。
【0036】
図11は、圧縮成形と射出成形の併用により車両用トリム部品を製造する例示的な方法100を示すフローチャートである。まず、ブロック102に示すように、繊維パネルの少なくとも1つのエッジを、所望の寸法にトリミングする。前述のように、圧縮成形プロセス前の繊維パネルのトリミングにより、ゴミのリサイクルが促進され、ゴミ埋め立て地に廃棄されるゴミが低減される。繊維パネルをトリミングしたら、ブロック104に示すように、パネルを加熱する。例えば、繊維パネルが熱可塑性樹脂を含む場合、樹脂が液化し、パネルの圧縮成形が容易になる。また、繊維パネルが熱硬化性樹脂を含む場合、型空洞部にパネルを配置する前に繊維パネルを加熱するステップが不要となる。
【0037】
そして、ブロック106に示すように、繊維パネルを型空洞部の第1の表面に配置する。次に、ブロック108に示すように、型空洞部の第1の表面と第2の表面との間で繊維パネルを圧縮して、繊維パネルを所望の形状に成形する。そして、ブロック110に示すように、型空洞部に樹脂を射出し、繊維パネルに隣接する第1の表面と第2の表面との間の少なくとも1つの空隙を埋める。例えば、繊維パネルの周囲の一部に延在する空隙を樹脂で埋めて、境界部を形成してもよい。また、繊維パネル内の間隙に対応する空隙を樹脂で埋めて、ほぼ連続した構造を得るようにしてもよい。いくつかの実施形態において、ブロック112に示すように、型空洞部に樹脂を射出して、繊維パネルと第2の表面との間の少なくとも1つの二次空隙を埋める。例えば、二次空隙は、支持リブやコネクタ等の補助部品を形成するような形状とされてもよい。説明からわかるように、一次空隙と二次空隙とに流動的に結合したポートに樹脂を射出することで、ステップ110とステップ112を同時に行ってもよい。室内用トリム部品を型空洞部から取り外した後、ブロック114に示すように、車両用トリム部品にカバーストックを配置する。
【0038】
いくつかの実施形態において、繊維パネル44および/または種々の樹脂部品は、特に、トリム部品66用の所望の装飾面が得られるように構成されてもよい。このような実施形態では、カバーストック86が不要となり、製造コストが低減される。また、上述の説明では、繊維パネル44は1つであるが、複数の繊維パネルを受け入れて、繊維パネルを圧縮成形して所望のトリム部品66を得るように型空洞部を構成してもよい。さらに、いくつかの実施形態において、複数の樹脂(例えば、樹脂ショット)を型空洞部に射出して、様々な審美的および/または構造的特性を有する樹脂部品を形成してもよい。例えば、追加的構造支持が望まれる領域にガラス充填樹脂を射出してもよく、装飾面の一部を形成する領域に純粋な樹脂を射出してもよい。また、より硬度の高い樹脂、および/または、より硬度の低い樹脂を種々の領域に射出して、所望の質感/構造特性を得るようにしてもよい。
【0039】
いくつかの実施形態において、型空洞部の第1の表面に延在する第1の流体通路と、型空洞部の第2の表面に延在する第2の流体通路とを介して樹脂を射出してもよい。このような実施形態では、繊維パネルの各面の一部を樹脂層で被覆してもよい。また、他の実施形態において、型空洞部の一表面に延在する流体通路を介して樹脂を射出してもよい。そして、樹脂は、繊維パネルの間隙を通って流れることにより、繊維パネルの各面の少なくとも一部を被覆することができる。さらに他の実施形態において、射出された樹脂の圧力により、繊維パネル44内の樹脂の流れを容易にする間隙を形成させることができる。
【0040】
さらに、エアバッグ組立体のいくつかの部品を、圧縮成形と射出成形の併用プロセスによって形成してもよい。例えば、いくつかの実施形態において、エアバッグドアが、圧縮成形された繊維パネルにより形成される第1のハーフ部と、射出成形された樹脂により形成される第2のハーフ部とにより構成されてもよい。エアバッグドアは、繊維パネルと樹脂部品との境界面に沿って外れるように構成されてもよい。さらに他の実施形態において、型空洞部は、エアバッグドアに隣接する射出成形エアバッグシュートを形成するように構成された空隙を有してもよい。また、圧縮成形/射出成形プロセスの前に、ヒンジ、補強部材および/またはテザー(つなぎ具)等、追加部品を型空洞部に配置してもよい。このような部品は、繊維パネルの圧縮および/または樹脂射出を行う際に、エアバッグに組み込まれてもよい。
【0041】
いくつかの実施形態において、トリム部品66は、構造的に強度が低下した領域、および/または、構造的に強化された領域を有して、所望の剛性の実現および/または衝撃時のエネルギー吸収を行ってもよい。例えば、繊維パネル44は、刻み目(スコア)、継ぎ目(シーム)および/またはミシン目を有することにより、衝撃時につぶれて、衝撃エネルギーの一部を吸収するようにしてもよい。また、所望程度のエネルギー吸収を容易にするように、繊維パネルに結合された樹脂リブを配置してもよい(例えば、所望のつぶれ方向に対して垂直な向き)。いくつかの実施形態において、刻み目、継ぎ目および/またはミシン目に樹脂を充填して、衝撃時にトリム部品がつぶれるのを可能にしつつ、所望の装飾面を得るようにしてもよい。
【0042】
繊維パネルを型に固定するための後退可能なピン組立体
型組立体には、繊維パネルを受け入れるように構成された第1の型部材と、繊維パネルを貫通して第1の型部材に繊維パネルを固定するように構成された複数のピンとを備えるものがある。ピンは、繊維パネルを所望の位置および/または向きに保持することにより、第2の型部材が第1の型部材に対して繊維パネルを圧縮し、所望形状の部品を形成することができる。残念ながら、これらピンは繊維パネルに不規則な空隙を残すので、質感がでこぼこの部品が形成されてしまう。また、第2の型部材は、第1の型部材から延伸するピンを収容するように構成された窪みを備えてもよい。第2の型部材に窪みを形成することにより、型組立体のコストや複雑性が増してしまう。
【0043】
以下に説明する型組立体のいくつかの実施形態では、繊維パネルの圧縮前または圧縮時に保持ピンを後退させ、保持ピンによって形成される空隙を樹脂で埋めることができるように構成された後退可能ピン組立体を備える。その結果、部品の質感はほぼ平滑なものとなる。例えば、いくつかの実施形態において、車両用トリム部品を製造するための型組立体は、繊維パネルを受け入れるように構成された第1の型部材を備える。また、型組立体は、繊維パネルを貫通して、第1の型部材に繊維パネルを固定するように構成された複数の保持ピンを有する後退可能なピン組立体を備える。さらに、型組立体は、第1の型部材の第1の表面と第2の型部材の第2の表面との間で繊維パネルを圧縮して、繊維パネルを所望の形状に成形するように構成された第2の型部材を備える。後退可能なピン組立体は、第1および第2の表面間の繊維パネルの圧縮前または圧縮時に、繊維パネルから保持ピンを引き抜くように構成されている。さらに、型組立体は、保持ピンによって形成される繊維パネル内の空隙に樹脂を射出するように構成された流体通路を備えてもよい。その結果、樹脂硬化時に、ほぼ平滑な部品を形成することができる。
【0044】
図12は、型空洞部内に繊維パネルを固定するように構成された後退可能なピン組立体を有する型組立体116の一実施形態を示す概略図である。図示の実施形態では、型組立体116は、第1の(例えば、上側)型部材118と、第2の(例えば、下側)型部材120とを備えている。図示のように、第1の型部材118は、型空洞部124の第1の部分を画定する第1の表面122を有し、第2の型部材120は、型空洞部124の第2の部分を画定する第2の表面126を有している。第1の表面122は、繊維パネル128を受け入れるように構成され、第2の表面126は、第1の表面122に対して繊維パネル128を圧縮して、繊維パネル128を所望の形状に成形するように構成されている。
【0045】
いくつかの実施形態において、繊維パネル128は、構造用繊維と熱可塑性樹脂との組み合わせにより構成される。構造用繊維は、麻、木、亜麻、ケナフ、サイザル麻等の天然繊維、および/または、グラスファイバ、カーボンファイバ、高分子ファイバ等の合成繊維により構成されてもよい。また、熱可塑性樹脂は、例えば、ポリプロピレン(PP)、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン(ABS)、および/または、ポリカーボーネート(PC)からなるバインダにより構成されてもよい。例として、繊維パネル128は、約50%が天然繊維で、約50%がPPで構成されてもよい。圧縮成形を促進するために、繊維パネル128を加熱し(例えば、約200℃)、熱可塑性樹脂を液化させる。そして、繊維パネル128を空洞部124の第1の表面122に配置し、第2の型部材120を方向130に沿って第1の型部材118側に移動させて、第1の表面122と第2の表面126の間で繊維パネル128を圧縮する。型組立体116内で繊維パネル128の温度が下がると、熱可塑性樹脂は固化して、型空洞部124の形状と一致した実質的に剛性のある複合パネルが形成される。
【0046】
他の実施形態において、繊維パネル128は、構造用繊維と熱硬化性樹脂との組み合わせにより構成される。上述の実施形態と同様、構造用繊維は、麻、木、亜麻、ケナフ、サイザル麻等の天然繊維、および/または、グラスファイバ、カーボンファイバ、高分子ファイバ等の合成繊維により構成されてもよい。また、熱硬化性樹脂は、例えば、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエステル樹脂、および/または、ビニルエステル樹脂により構成されてもよい。例として、繊維パネル128は、ミシガン州ホランド、ジョンソン・コントロールズ・テクノロジー・カンパニー製造のFibrowood(ファイブロウッド)により構成されてもよい。圧縮成形を促進するために、繊維パネル128を空洞部124の第1の表面122に配置し、第2の型部材120を方向130に沿って第1の型部材118側に移動させて、第1の表面122と第2の表面126の間で繊維パネル128を圧縮する。圧縮プロセスの間、パネル128を加熱すること(例えば、加熱した型組立体116を介して)により、熱硬化性樹脂を硬化させる。その結果、型空洞部124の形状と一致した実質的に剛性のある複合パネルが形成される。
【0047】
図示の実施形態では、型組立体116は、第2の型部材120が第1の型部材118に近接するまで繊維パネル128を所望の位置に保持するように構成された後退可能なピン組立体132を備えている。図示のように、後退可能なピン組立体132は、繊維パネル128を貫通して、繊維パネル128を第1の型部材118に固定するように構成された複数の保持ピン134を有している。なお、図示の実施形態では、2本の保持ピン134を備えているが、他の実施形態では、保持ピン134はそれよりも多くても少なくてもよい。例えば、いくつかの実施形態では、保持ピン134は、1本、2本、3本、4本、6本、8本、10本、12本、または、それより多くてもよい。
【0048】
後退可能なピン組立体132は、 第1の表面122と第2の表面126との間の繊維パネルの圧縮前または圧縮時に、繊維パネル128から保持ピンを引き抜くように構成されている。例えば、後退可能なピン組立体132は、第1および第2の表面が十分に接近し、型空洞部124内の繊維パネル128の動きを実質的に阻止するようになったとき、保持ピン134を後退させるようにしてもよい。保持ピン134は圧縮成形プロセス前または圧縮成形プロセス時に繊維パネル128から引き抜かれるので、保持ピン134によって形成される空隙に樹脂を射出することで、ほぼ平滑な表面の車両用トリム部品を形成することができる。また、保持ピン134は第2の型部材120内の開口部に進入するのではなく後退するので、第2の型部材のコストおよび/または複雑性が低減される。
【0049】
図示の実施形態において、後退可能なピン組立体132は、繊維パネル128から保持ピン134を後退駆動するように構成されたリターンピン136を備えている。以下に詳細に説明するが、リターンピン136と第2の型部材120の表面との接触により、接続プレート138が第1の表面122から離間する。そして、接続プレート138が保持ピン134を後退させる。保持ピン134とリターンピン136は、例えば、溶接、機械的連結、固定具等、好適な接続手段によって接続プレート138に結合されている。なお、図示の実施形態では、リターンピン136は2本であるが、他の実施形態では、リターンピン136はそれより多くても少なくてもよい。例えば、いくつかの実施形態では、リターンピンは、1本、2本、3本、4本、6本、8本、10本、12本、または、それより多くてもよい。
【0050】
また、後退可能なピン組立体132は、各型部材が互いに離間し、繊維パネルが型空洞部から外れた後、保持ピン134を延伸させるように構成されたアクチュエータ140を備えている。例えば、アクチュエータ140は、保持ピン134に次の繊維パネル128を貫通させる初期位置に、接続プレート138を移動させるように構成された空気圧シリンダを備えていてもよい。なお、アクチュエータ140は、他の実施形態において、油圧シリンダ、電気機械式駆動ユニット、あるいは、機械式アクチュエータにより構成されてもよい。
【0051】
第1の型部材118に繊維パネル128を固定するために、各保持ピン134の先端144が繊維パネル128を貫通するような方向142に、繊維パネル128を移動させる。例えば、操作者は、型空洞部124内の所望の位置/向きに繊維パネル128を配置した後、保持ピン134が繊維パネルを貫通するような方向142に繊維パネル128を移動させればよい。保持ピン134と繊維パネル128との接触により、所望の位置/向きに繊維パネル128を固定する。
【0052】
図13は、繊維パネル128が保持ピン134を介して第1の型部材118に固定された状態の、
図12の型組立体116を示す概略図である。前述のように、保持ピン134は、第1および第2の表面が十分に接近し、型空洞部124内の繊維パネル128の動きを実質的に阻止するようになるまで、繊維パネル128を所望の位置/向きに固定するように構成されている。繊維パネル128が第1の型部材118に固定されると、第2の型部材120が方向130に移動する。第2の型部材120が第1の型部材118に近接すると、各リターンピン136の先端146が第2の型部材120の支持表面148に接触する。第2の型部材120が方向130に移動し続けると、支持表面148と各リターンピン136の先端146との接触により、接続プレート138が方向150に移動する。したがって、保持ピン134は方向150に移動することにより、繊維パネル128から引き抜かれる。型部材が互いに近接している間に保持ピン134が引き抜かれるので、第1の表面122および第2の表面126によって、繊維パネル128の動きが実質的に阻止される。
【0053】
説明からわかるように、保持ピン134および/またはリターンピン136の長さを調整して、繊維パネル128からの保持ピン134の引き抜きを制御すればよい。例えば、長めの保持ピン134であれば、型部材が互いに近接するまで、繊維パネル128を第1の型部材118に固定することができる。逆に、短めの保持ピン134であれば、型部材が離間しているうちに、繊維パネル128を第1の型部材118から解放することができる。同様に、長めのリターンピン136であれば、型部材が離間しているうちに、保持ピン134を繊維パネル128から後退させ、短めのリターンピン136であれば、型部材が互いに近接するまで、保持ピン134により繊維パネル128を第1の型部材118に固定させることができる。説明からわかるように、保持ピン134の引き抜きの制御により、型空洞部において繊維パネルを正確に配置することが容易となり、圧縮成形プロセス前または圧縮成形プロセス時に繊維パネル内の張力を制御することができる。
【0054】
図14は、保持ピン134が後退した状態の、
図12の型組立体を示す概略図である。前述のように、各リターンピン136の先端146と第2の型部材の支持表面148との接触により、リターンピン136は方向150に移動する。したがって、リターンピン136に連結されている接続プレート138は、保持ピン134を方向150に移動させることにより、保持ピン134を繊維パネルから引き抜く。図示のように、保持ピン134が繊維パネル128から引き抜かれ、繊維パネル128は、第1の型部材118の第1の表面122と第2の型部材120の第2の表面126との間で圧縮される。
【0055】
繊維パネル128を所望の形状に圧縮成形した後、第2の型部材120が、第1の型部材118から離間する方向152に移動する。そして、繊維パネル128が(例えば、排出システムを介して)型空洞部124から外される。次に、アクチュエータ140が接続プレート138を方向154に移動させることにより、保持ピン134およびリターンピン136を延伸位置に移動させる。保持ピン134が延伸位置にある状態では、次の繊維パネル128に保持ピン134を貫通させることにより、繊維パネル128を第1の型部材118に固定することができる。
【0056】
上述の実施形態では、繊維パネル128を型空洞部124から外した後、アクチュエータを用いて保持ピン134を延伸させているが、他の実施形態では他の作動用組立体を用いることもできる。例えば、第2の型部材と保持ピンとの間の機械的連係部により、第2の型部材が第1の型部材から離間するときに保持ピンを延伸させてもよい。さらに他の実施形態では、第2の型部材が第1の型部材から離間したときに、バネによって保持ピンを付勢し、延伸させてもよい。また、各リターンピンの先端を、第2の型部材の支持表面に機械的に連結してもよい。このような構成では、第2の型部材が第1の型部材から離間することにより、リターンピンおよび保持ピンが延伸位置移動する。なお、第2の型部材がさらに第1の型部材から離間すると、この動きがリターンピンと第2の型部材との磁気結合にまさり、第2の型部材は第1の型部材からの離間を続けることが可能となる。さらに他の実施形態において、型組立体は、排出用ピンを備えて、型空洞部からの繊維パネルの取り出しを容易にしてもよい。このような実施形態では、排出用ピンの動きが接続プレートを方向154に移動させることにより、保持ピン134を延伸位置に移動させる。
【0057】
また、上述の実施形態では、リターンピン136と接続プレート138を用いて、保持ピン134を後退させるようにしたが、他の実施形態では他の作動組立体を用いてもよい。例えば、いくつかの実施形態において、アクチュエータ(例えば、油圧シリンダ、空気圧シリンダ、電気機械式アクチュエータ等)を用いて、保持ピンを延伸位置と引き込み位置との間で移動させてもよい。このような実施形態では、センサを用いて、第1の型部材に対する第2の型部材の位置を判断してもよい。そして、このセンサに通信可能に接続されるコントローラによって、第2の型部材の検出位置に基づき、保持ピンの位置を制御してもよい。例えば、コントローラは、第2の型部材が第1の型部材に近接したときに保持ピンを後退させるように指示してもよい。また、コントローラは、第2の型部材が第1の型部材から離間するときに保持ピンを延伸させるように指示してもよい。
【0058】
図15は、保持ピンによって形成される空隙に樹脂を射出するように構成された流体通路を有する、型組立体116の一実施形態を示す概略図である。前述のように、保持ピン134の先端144が繊維パネル128を貫通するように、繊維パネル128を方向142に移動させることにより、繊維パネル128が第1の型部材118に固定される。そして、第2の型部材120を方向130に移動させることにより、後退可能なピン組立体132が、保持ピン134を繊維パネル128から引き抜く。なお、保持ピン134が繊維パネル128に空隙を形成することもある。したがって、型組立体116は、この空隙に樹脂を流入させて、車両用トリム部品の平滑性を高めるように構成される。
【0059】
図示の実施形態において、第1の型部材118は、樹脂マニホルド156と、樹脂マニホルド156から後退可能ピン134まで延在する流体通路158とを備えている。以下に詳細に説明するが、樹脂マニホルド156と流体通路158は、保持ピン134によって形成される空隙に樹脂を供給するように構成されている。その結果、空隙に樹脂が充填され、ほぼ平滑な質感を有する車両用トリム部品が形成される。
【0060】
図16は、保持ピン134を介して繊維パネル128が第1の型部材118に固定された状態の、
図15の型組立体116を示す概略図である。図示のように、保持ピン134は、繊維パネル128を貫通すると、材料を変位させる。その結果、繊維パネル128に空隙が形成される。以下に詳細に説明するが、この空隙に樹脂を充填して、ほぼ平滑な質感を有する車両用トリム部品を形成する。
【0061】
図17は、保持ピン134が後退した状態の、
図15の型組立体116を示す概略図である。図示のように、保持ピン134を繊維パネル128から引き抜くことにより、空隙160が形成される。しかし、樹脂マニホルド156から空隙160に樹脂を流入させるように流体通路158が配置されている。したがって、マニホルド156および流体通路158を介して樹脂を射出し、空隙160をほぼ埋めて、車両用トリム部品の平滑性を高めることができる。
【0062】
図18は、保持ピン134によって形成された空隙160に樹脂が射出された状態の、
図15の型組立体116を示す概略図である。図示のように、樹脂が空隙160をほぼ埋めることにより、実質的に平滑な質感を有する車両用トリム部品を形成する樹脂特徴部162が形成される。また、樹脂が流体通路158をほぼ埋めることにより、車両用トリム部品の後部表面におけるランナーまたはリッジ(隆起部)164が形成される。説明からわかるように、繊維パネル内の各空隙は同様に埋めることができる。保持ピンにより形成される空隙に樹脂が充填されることから、保持ピンは、車両用トリム部品の平滑性を損ねることなく、繊維パネルと第1の型部材との連結が強くなるように配置することができる。
【0063】
図19は、後退可能なピン組立体を備えた型空洞部に形成される車両用トリム部品166の一実施形態を示す上面図である。図示のように、繊維パネル128内の各空隙に樹脂特徴部162が充填されることにより、実質的に平滑な表面を有する車両用トリム部品を形成が形成される。例えば、繊維パネルの一表面にカバーストックを配置して、所望の装飾面を形成してもよい。繊維パネルの空隙に樹脂が充填されることから、カバーストックの外観は実質的に平滑であり、このため、車両室内の視覚的美観が向上する。
【0064】
図20は、後退可能なピン組立体を有する型組立体において車両用トリム部品を成形する方法168の一実施形態を示すフローチャートである。まず、ブロック170に示すように、後退可能なピン組立体を介して、繊維パネルを第1の型部材に固定する。前述のように、後退可能なピン組立体は、繊維パネルを貫通して、繊維パネルを第1の型部材に固定するように構成された複数の保持ピンを備えている。次に、ブロック172に示すように、第2の型部材を第1の型部材側に移動させる。第2の型部材が第1の型部材に近接したときに、ブロック174に示すように、後退可能なピン組立体の保持ピンを後退させる。例えば、後退可能なピン組立体は、リターンピンと第2の型部材との接触により、繊維パネルから保持ピンを引き抜くように構成されるリターンピンを備えていてもよい。
【0065】
そして、ブロック176に示すように、第1の型部材と第2の型部材との間で繊維パネルを圧縮する。前述のように、型部材間で繊維パネルを圧縮することにより、繊維パネルを所望の形状に成形する。いくつかの実施形態において、第1の型部材を第2の型部材との間で繊維パネルを圧縮するときに保持ピンを後退させる(例えば、繊維パネルから引き抜く)。そして、ブロック178に示すように、保持ピンによって形成された繊維パネル内の空隙に樹脂を射出する。空隙を埋めることにより、実質的に平滑な表面を有する車両室内部品を形成し、車両室内の見た目を良くすることができる。
【0066】
圧縮成形/射出成形プロセスの完了後、ブロック180に示すように、第2の型部材を第1の型部材から離間させる。そして、ブロック182に示すように、繊維パネルを第1の型部材から排出する(例えば、排出用ピンを介して)。次に、ブロック184に示すように、後退可能なピン組立体の保持ピンを延伸させる。例えば、後退可能なピン組立体は、保持ピンを延伸位置側に移動させて、次の繊維パネルへの保持ピンの貫通を可能にするように構成されたアクチュエータを備えていてもよい。
【0067】
繊維パネルの屈曲エッジを支持するための樹脂特徴部
型組立体には、互いに合わせられて繊維パネルを所望の形状に圧縮するように構成された第1の型部材および第2の型部材を備えるものがある。また、このような型組立体は、第1および第2の型部材が互いに合わせられて繊維パネルを所望の寸法にトリミングする際に、繊維パネルを貫通するように構成されたトリムブレードを備えてもよい。残念ながら、型内トリムブレードを用いて繊維パネルを成形すると、パネルのエッジが弱くなり、寿命が短くなってしまう。
【0068】
以下に説明する型組立体の実施形態は、繊維パネルの屈曲エッジの隣接内表面に樹脂を射出して、エッジの強度を高めるように構成されている。例えば、いくつかの実施形態において、車両用トリム部品を製造するための型組立体は、繊維パネルを受け入れるように構成された第1の型部材を備えている。また、型組立体は、第1の型部材の第1の表面と第2の型部材の第2の表面との間で繊維パネルを圧縮して、繊維パネルを所望の形状に成形するように構成された第2の型部材を備えている。また、型組立体は、繊維パネルの屈曲エッジの先端に樹脂が広がるように、この屈曲エッジの隣接内表面に樹脂を射出するように構成された流体通路を備えている。屈曲エッジの内表面に樹脂を射出することにより、屈曲エッジを支持する樹脂特徴部が形成され、これにより、繊維パネルの強度が上がり、寿命が長くなる。
【0069】
図21は、繊維パネルの屈曲エッジの隣接内表面に樹脂を射出するように構成された流体通路を備える型組立体186の一実施形態を示す概略図である。図示の実施形態において、型組立体186は、第1の(例えば、下側)型部材188と、第2の(例えば、上側)型部材190とを備えている。図示のように、第1の型部材188は、型空洞部194の第1の部分を画定する第1の表面192を備え、第2の型部材190は、型空洞部194の第2の部分を画定する第2の表面196を備えている。第1の表面192は、繊維パネル198を受け入れるように構成されており、第2の表面196は、第1の表面192に対して繊維パネル198を圧縮して、繊維パネル198を所望の形状に成形するように構成されている。
【0070】
いくつかの実施形態において、繊維パネル198は、構造用繊維と熱可塑性樹脂との組み合わせにより構成される。構造用繊維は、麻、木、亜麻、ケナフ、サイザル麻等の天然繊維、および/または、グラスファイバ、カーボンファイバ、高分子ファイバ等の合成繊維により構成されてもよい。また、熱可塑性樹脂は、例えば、ポリプロピレン(PP)、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン(ABS)、および/または、ポリカーボーネート(PC)からなるバインダにより構成されてもよい。例として、繊維パネル198は、約50%が天然繊維で、約50%がPPで構成されてもよい。圧縮成形を促進するために、繊維パネル198を加熱し(例えば、約200℃)、熱可塑性樹脂を液化させる。そして、繊維パネル198を空洞部194の第1の表面192に配置し、第2の型部材190を方向200に沿って第1の型部材188側に移動させて、第1の表面192と第2の表面196の間で繊維パネル198を圧縮する。型組立体186内で繊維パネル198の温度が下がると、熱可塑性樹脂は固化して、型空洞部194の形状と一致した実質的に剛性のある複合パネルが形成される。
【0071】
他の実施形態において、繊維パネル198は、構造用繊維と熱硬化性樹脂との組み合わせにより構成される。上述の実施形態と同様、構造用繊維は、麻、木、亜麻、ケナフ、サイザル麻等の天然繊維、および/または、グラスファイバ、カーボンファイバ、高分子ファイバ等の合成繊維により構成されてもよい。また、熱硬化性樹脂は、例えば、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエステル樹脂、および/または、ビニルエステル樹脂により構成されてもよい。例として、繊維パネル198は、ミシガン州ホランド、ジョンソン・コントロールズ・テクノロジー・カンパニー製造のFibrowood(ファイブロウッド)により構成されてもよい。圧縮成形を促進するために、繊維パネル198を空洞部194の第1の表面192に配置し、第2の型部材190を方向200に沿って第1の型部材188側に移動させて、第1の表面192と第2の表面196の間で繊維パネル198を圧縮する。圧縮プロセスの間、パネル198を加熱すること(例えば、加熱した型組立体186を介して)により、熱硬化性樹脂を硬化させる。その結果、型空洞部194の形状と一致した実質的に剛性のある複合パネルが形成される。
【0072】
図示の実施形態において、第1の型部材188は、繊維パネル198を型空洞部194内で圧縮するときに繊維パネル198を所望の寸法にトリミングするように構成されたトリムブレード202を備えている。第2の型部材190が方向200に移動すると、第2の型部材190と繊維パネル198との接触により、繊維パネル198のエッジがトリムブレード202に接触する。第2の型部材190をさらに方向200に移動させると、この動きにより、トリムブレード202が繊維パネル198を貫通し、繊維パネル198を所望の寸法にトリミングする。図示の実施形態では2本のトリムブレード202を用いているが、他の実施形態では、トリムブレード202はそれより多くても少なくてもよい(例えば、1本、2本、3本、4本、5本、6本、またはそれ以上)。さらに、図示の実施形態では、トリムブレード202は第1の型部材188に連結しているが、他の実施形態では、トリムブレード202の少なくとも一部が第2の型部材190に連結してもよい。
【0073】
トリムブレード202による繊維パネル198のトリミングプロセスにより、繊維パネル198のエッジが弱くなる場合がある。したがって、図示の型組立体186は、繊維パネル198の屈曲エッジの隣接内表面に樹脂を射出して、エッジの強度を高めるように構成されている。図示のように、第2の型部材190は、型組立体186を閉じたときに型空洞部194内に空隙を形成するように構成された窪み204を備えている。以下に詳細に説明するが、型組立体186を閉じたときに、空隙は、繊維パネル198の屈曲エッジの隣接内表面に近接した位置となる。図示の実施形態では、第2の型部材は、入口206と、入口206から空隙まで延在する流体通路208とを備えている。流体通路208は、繊維パネルの屈曲エッジの隣接内表面に樹脂が流れるように空隙に樹脂を射出するように構成されている。
【0074】
図22は、閉位置における
図21の型組立体186を示す概略図である。型組立体が閉位置にある状態で、トリムブレード202が繊維パネル198を貫通し、繊維パネルを所望の寸法にトリミングする。また、窪み204が、繊維パネル198の1つ屈曲エッジの隣接内表面に近接配置された空隙210を形成する。空隙210に樹脂が射出されると(例えば、入口206および流体通路208を介して)、樹脂は屈曲エッジの隣接内表面に流れる。空隙が屈曲エッジの先端に延在しているので、樹脂は繊維パネル198の横方向の長さにわたって流れる(例えば、トリムブレード202が繊維パネル198を切断する位置)。樹脂が硬化すると、繊維パネルの屈曲エッジを支持する樹脂特徴部が形成され、これにより、車両用トリム部品の強度が上がり、寿命が長くなる。いくつかの実施形態において、空隙210は繊維パネル198の周囲全体に延在してもよい。なお、他の実施形態では、空隙210は周囲の一部に延在してもよい。
【0075】
図23は、繊維パネル198の屈曲エッジを支持するように構成された樹脂特徴部214を備える車両用トリム部品212の一実施形態を示す断面図である。図示のように樹脂特徴部214は、繊維パネル198の内表面216に射出成形される(例えば、空隙210を有する型組立体186により)。トリム部品212を車両内に設置したときに、内表面216は車両室内から離間して対向する。本実施形態では、樹脂特徴部214により、実質的に平滑な装飾面(例えば、内表面216に対向する面)を実現しつつ、繊維パネル198の屈曲エッジ218を支持する。
【0076】
図示の実施形態において、樹脂特徴部214は、屈曲エッジ218の第1の内表面220と屈曲エッジ218の第2の内表面222の間に延在する。また、樹脂特徴部214は、屈曲エッジ218の先端に延在する。したがって、樹脂特徴部214は、屈曲エッジ218を支持することにより、繊維パネル198の強度を高めるとともに、車両用トリム部品212の寿命を長くする。説明からわかるように、繊維パネル198の長さ224は、所望の用途に応じて選択すればよい。例えば、車両用トリム部品212をドアパネル内に用いる場合、樹脂特徴部214は、想定される負荷(例えば、乗客が車両ドアを閉めるために屈曲エッジ218を引っ張ったり、修理担当者がドアパネルを取り外すために屈曲エッジ218をドアから引き離したりする場合に生じる負荷)を許容できるように長さ226を長くすればよい。さらに、屈曲エッジ218の高さ228と樹脂特徴部214の高さ230は、特に屈曲エッジ218に対して所望の支持を行えるように選択すればよい。例えば、高さ228および230が高ければ、エッジの強度を高めることができ、車両用トリム部品212は、より高い負荷を許容できるようになる。
【0077】
いくつかの実施形態において、樹脂特徴部214は、車両用トリム部品212の周囲全体に延在してもよい。なお、他の実施形態では、周囲の一部に延在する樹脂特徴部214を備えてもよい。また、屈曲エッジ218の内表面220および222の間の角度は、図示の実施形態では約90度であるが、他の実施形態では、内表面間の角度はそれよい大きくても小さくてもよい。さらに他の実施形態では、屈曲エッジが曲線状であってもよく、あるいは、複数の角度を持つ部分により構成されていてもよい。
【0078】
図24は、繊維パネルの屈曲エッジの隣接内表面に樹脂を射出することにより、車両用トリム部品を形成する方法232の一実施形態を示すフローチャートである。まず、ブロック234に示すように、繊維パネルを加熱する。例えば、繊維パネルが熱可塑性樹脂を含む場合、パネルの加熱により樹脂が液化し、パネルの圧縮成形が容易になる。また、繊維パネルが熱硬化性樹脂を含む場合、圧縮プロセス時にパネルを加熱すればよい。そして、ブロック236に示すように、繊維パネルを型空洞部の第1の表面に配置する。次に、ブロック238に示すように、型空洞部の第1の表面と第2の表面との間で繊維パネルを圧縮して、繊維パネルを所望の形状に成形する。
【0079】
そして、ブロック240に示すように、繊維パネルの屈曲エッジの隣接内表面に樹脂を射出する。例えば、屈曲エッジの隣接内表面に近接する空隙に樹脂を射出してもよい。このような構成では、空隙が、繊維パネルの屈曲エッジを支持する樹脂特徴部を形成することにより、パネルの強度が高くなる。室内トリム部品を型空洞部から取り外した後、ブロック242に示すように、車両用トリム部品にカバーストックを配置する。いくつかの実施形態において、特にトリム部品に所望の装飾面を付与するように繊維パネルおよび/または種々の樹脂部品を構成してもよい。このような実施形態では、カバーストックが不要となり、製造コストを低減することができる。
【0080】
型表面に対して繊維パネルを付勢するための浮遊コア組立体
型組立体には、互に合わせられて繊維パネルを所望の形状に圧縮するように構成された第1の型部材と第2の型部材とを備えるものがある。例えば、第2の型部材は、繊維パネルを移動させて、第1の型部材に接触させてもよい。第1の型部材に対して第2の型部材がさらに移動すると、この動きが繊維パネルを所望の形状に圧縮する。また、第1の型部材にトリムブレードが取り付けられてもよく、第1および第2の型部材が繊維パネルを圧縮するときに繊維パネルを所望の寸法にトリミングするように構成されてもよい。残念ながら、第2の型部材が繊維パネルを移動させて第1の型部材に接触させると、トリムブレードが繊維パネルの一部を引き裂いてしまい、繊維パネルの強度が低下したり、外観/質感が望ましくない車両用トリム部品が形成されたりする場合がある。また、繊維パネルがトリムブレードに引っかかっている間、第2の型部材が第1の型部材側に移動し続けると、繊維パネル内の張力が大きくなる場合がある。繊維パネルがトリムブレードから解放されると、解放された張力によって、繊維パネルが型組立体内で移動し、所望の位置/方向からずれてしまうことがある。
【0081】
以下に説明する型組立体の実施形態では、トリムブレードが繊維パネルを貫通する前に型部材の表面に対して繊維パネルを付勢するように構成された浮遊コア組立体を備える。例えば、いくつかの実施形態において、車両用トリム部品を製造するための型組立体は、互に合わせられて繊維パネルを所望の形状に圧縮するように構成された第1の型部材と第2の型部材とを備えている。また、この型組立体は、第1および第2の型部材が合わせられるときに繊維パネルを貫通して、繊維パネルを所望の寸法にトリミングするように構成されたトリムブレードを備えている。また、型組立体は、第2の型部材に連結され、トリムブレードが繊維パネルを貫通する前に第1の型部材の表面に対して繊維パネルを付勢するように構成された浮遊コア組立体を備えている。トリムブレードが繊維パネルを貫通する前に第1の型部材の表面に対して繊維パネルを配置するので、繊維パネルがトリムブレードに引っかかる可能性は大幅に低減されるか、排除される。したがって、この型組立体は、強度の高い、および/または、美観の優れたトリム部品を形成することができる。
【0082】
図25は、型部材の表面に対して繊維パネルを付勢するように構成された浮遊コア組立体を備える型組立体244の一実施形態を示す概略図である。図示の実施形態において、型組立体244は、第1の(例えば、下側)型部材246と、第2の(例えば、上側)型部材248とを備えている。図示のように、第1の型部材246は、型空洞部252の第1の部分を画定する第1の表面250を有し、第2の型部材248は、型空洞部250の第2の部分を画定する第2の表面254を有している。第1の表面250は、繊維パネル256を受け入れるように構成され、第2の表面254は、第1の表面250に対して繊維パネル256を圧縮して、繊維パネル256を所望の形状に成形するように構成されている。
【0083】
図示の実施形態において、第2の型部材248は、コア262と付勢部材264(例えば、バネ等)とを有する浮遊コア組立体260を備えている。図示のように、第2の型部材248の第2の表面254は、浮遊コア組立体260のコア262により形成されている。型空洞部252における繊維パネル256の圧縮前に、第2の型部材248が方向258に移動する際にコア262が第1の型部材246の第1の表面250に対して繊維パネルを付勢する。第2の表面254が繊維パネル256に接触し、繊維パネル256が第1の表面250に接触したとき、第2の型部材248がさらに方向258に移動すると、この移動によりコアが図示の延伸位置から後退位置に移動する。コア262が後退位置にある状態で、付勢部材264が、型空洞部252において繊維パネル256を圧縮するのに十分な力を付与する。
【0084】
いくつかの実施形態において、繊維パネル256は、構造用繊維と熱可塑性樹脂との組み合わせにより構成される。構造用繊維は、麻、木、亜麻、ケナフ、サイザル麻等の天然繊維、および/または、グラスファイバ、カーボンファイバ、高分子ファイバ等の合成繊維により構成されてもよい。また、熱可塑性樹脂は、例えば、ポリプロピレン(PP)、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン(ABS)、および/または、ポリカーボーネート(PC)からなるバインダにより構成されてもよい。例として、繊維パネル128は、約50%が天然繊維で、約50%がPPで構成されてもよい。圧縮成形を促進するために、繊維パネル256を加熱し(例えば、約200℃)、熱可塑性樹脂を液化させる。そして、繊維パネル256を空洞部252の第1の表面250に配置し、第2の型部材248を方向258に沿って第1の型部材246側に移動させて、第1の表面250と第2の表面254の間で繊維パネル256を圧縮する。型組立体244内で繊維パネル256の温度が下がると、熱可塑性樹脂は固化して、型空洞部252の形状と一致した実質的に剛性のある複合パネルが形成される。
【0085】
他の実施形態において、繊維パネル256は、構造用繊維と熱硬化性樹脂との組み合わせにより構成される。上述の実施形態と同様、構造用繊維は、麻、木、亜麻、ケナフ、サイザル麻等の天然繊維、および/または、グラスファイバ、カーボンファイバ、高分子ファイバ等の合成繊維により構成されてもよい。また、熱硬化性樹脂は、例えば、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエステル樹脂、および/または、ビニルエステル樹脂により構成されてもよい。例として、繊維パネル256は、ミシガン州ホランド、ジョンソン・コントロールズ・テクノロジー・カンパニー製造のFibrowood(ファイブロウッド)により構成されてもよい。圧縮成形を促進するために、繊維パネル256を空洞部252の第1の表面250に対して付勢し、第2の型部材248を方向258に沿って第1の型部材246側に移動させて、第1の表面250と第2の表面254の間で繊維パネル256を圧縮する。圧縮プロセスの間、パネル256を加熱すること(例えば、加熱した型組立体244を介して)により、熱硬化性樹脂を硬化させる。その結果、型空洞部252の形状と一致した実質的に剛性のある複合パネルが形成される。
【0086】
図示の実施形態において、第1の型部材246は、繊維パネル256を型空洞部252内で圧縮するときに繊維パネル256を所望の寸法にトリミングするように構成されたトリムブレード266を備えている。前述のように、第2の型部材248が方向258に移動すると、コア262と繊維パネル256と第1の表面250との接触により、コア262が後退する。第2の型部材248の本体は方向258に移動し続ける。第2の型部材248本体と繊維パネル256が接触することによって、繊維パネル256のエッジがトリムブレード266に接触する。第2の型部材248がさらに方向258に移動すると、この動きにより、トリムブレード266が繊維パネル256を貫通し、繊維パネル256を所望の寸法にトリミングする。図示の実施形態では2本のトリムブレード266を用いているが、他の実施形態では、トリムブレード266はそれより多くても少なくてもよい(例えば、1本、2本、3本、4本、5本、6本、またはそれ以上)。さらに、図示の実施形態では、トリムブレード266は第1の型部材246に連結しているが、他の実施形態では、トリムブレード266の少なくとも一部が第2の型部材248に連結してもよい。トリムブレード262が繊維パネル256を貫通する前に繊維パネルを第1の型部材246の第1の表面250に対して配置するので、繊維パネルがトリムブレード262に引っかかる可能性が大幅に低減されるか、排除される。したがって、繊維パネル256は、成形プロセスの際、実質的に平滑で適切な向き/位置を維持することができることから、強度の高い、および/または、美観の優れたトリム部品を形成することができる。
【0087】
図26は、浮遊コア組立体260のコア262が延伸位置にあり、繊維パネル256が第1の型部材246の第1の表面250に対して配置されている状態の、
図25の型組立体244を示す概略図である。前述のように、第2の型部材248が方向258に移動すると、コア262が第1の型部材246の第1の表面250に対して繊維パネル256を付勢する。第2の表面254が繊維パネル256に接触し、繊維パネル256が第1の表面250に接触したとき、第2の型部材248がさらに方向258に移動すると、コア262は後退位置側の方向268に移動する。コア262が後退すると、付勢部材264が圧縮されることにより、コア262に加わる力が大きくなる。いくつかの実施形態において、圧縮状態の付勢部材264によって加えられる力は、繊維パネル256を型空洞部252において所望の形状に圧縮するのに十分である。また、第2の型部材の本体が方向258に移動すると、この本体と繊維パネル256との接触により、繊維パネル256のエッジがトリムブレード266に接触する。第2の型部材248がさらに方向258に移動すると、この動きによりブレード266が繊維パネル256を貫通して、繊維パネル256を所望の寸法にトリミングする。
【0088】
図27は、浮遊コア組立体260のコア262が後退位置にある状態の、
図25の型組立体244を示す概略図である。コア262が後退位置にある状態では、圧縮された付勢部材264が、繊維パネル256を所望の形状に圧縮するのに十分な力でもって、コア262を第1の型部材246の第1の表面250側に付勢する。また、トリムブレード266が繊維パネル256を貫通して、繊維パネル256を所望の寸法にトリミングするように、第2の型部材248の支持表面270が、繊維パネル256を第1の型部材246側に移動させる。トリムブレード266が繊維パネル256を貫通する前に繊維パネルが第1の型部材246の第1の表面250に対して配置されるので、繊維パネルがトリムブレード266に引っかかる可能性が大幅に低減されるか、排除される。したがって、成形プロセス時に、繊維パネル256は実質的に平滑で、適切な向き/位置を維持することができることから、強度の高い、および/または、美観の優れたトリム部品を形成することができる。
【0089】
本発明のいくつかの特徴および実施形態について図示とともに説明してきたが、当該分野の技術者にとっては、特許請求の範囲に記載される主題の新規な教示および利点から実質的に逸脱することなく、多くの変形や変更(例えば、サイズ、寸法、構造、形状、種々の構成要素の比率、パラメータの値(例えば、温度、圧力等)、取り付け位置、材料、色、方向等の使用における変更)が考えられるであろう。いずれのプロセスまたは方法ステップの順序についても、他の実施形態において変更や並べ替えが可能である。したがって、添付の特許請求の範囲は、そのような変形や変更はすべて本発明の趣旨に含まれるものとして解釈されるべきである。さらに、例示的な実施形態を簡潔に説明するために、実際の実施形態にかかわるすべての特徴について説明したわけではない(例えば、ここで考えている本発明の最良の実施形態とは無関係の部分や、請求の範囲に記載される発明を可能にすることとは無関係の部分)。なお、このような実際の実施形態の開発においては、いかなるエンジニアリングプロジェクトまたは設計プロジェクトと同様に、多数の実施上の具体的決定を行うことができる。このような開発努力は複雑で時間がかかるが、不要な実験を行わずに本開示の利点を得られる通常の技術者にとっては、その開発努力は設計、作成、製造に関する通常の作業であると思われる。