(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ポリスチレンポリマーが、ハイインパクトポリスチレン(HIPS)、汎用の多目的ポリスチレンポリマー(GPPS)、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)、又はスチレンアクリロニトリル(SAN)を含む、請求項5に記載のポリマー組成物。
【背景技術】
【0002】
ポリオレフィンおよび同族コポリマーフィルムの製造において、高分子製剤にスリップ剤を含有させることは一般的な方法である。ポリオレフィンフィルムあるいは層のスリップ特性は他の層を越えて1つの層を滑らせる能力の尺度であり、通常はフィルムの摩擦係数で示される。スリップ剤はポリマーフィルムの表面に移動しそしてフィルムとフィルムが通過するローラーとの間の摩擦係数を低減し、それ故フィルムの加工性を促進する。さらに、スリップ剤はフィルムがロールに巻かれるときにフィルムの層間の摩擦係数を低減し、それによってさらなる工程のためのロールの巻き戻しを促進する。製造されたポリオレフィンフィルムにおいてスリップ剤の存在は、例えば自動包装機械でのハンドリングを促進する。
【0003】
ポリオレフィンフィルムあるいは層のブロッキング特性は、ほんのわずかな圧力の適用によってフィルム又は層がそれ自体貼り付く傾向として定義され得る。フィルムがブロッキングする高い傾向を有していると、その結果それ自体貼り付く能力は製造の間にフィルムの変形および引き裂きを引き起こし得る。ブロッキングはシリカのような微粉化した無機フィラーの添加によって低減され得るが、フィラーの添加量が多過ぎるとフィルムの光学的特性に有害となり得る。
【0004】
複数の脂肪酸アミドは、ポリオレフィンおよび同族コポリマー製剤で使用される通常のスリップ剤および/又は抗ブロッキング剤としてプラスティック産業界でよく認められている。それらは16〜22個の炭素原子を有する脂肪族飽和および/又は不飽和脂肪酸から導かれる。そのような脂肪酸アミドの例は、典型的には次の範疇に分類される。
・ 飽和および不飽和いずれもの一般式R−CO−NH
2(但し、Rは直鎖である。)の第一脂肪酸アミド。モノ不飽和第一脂肪酸アミドの例として、エルカ酸アミドおよびオレイン酸アミドによって例示される直鎖不飽和酸から導かれるアミドが挙げられる。オレイン酸アミドの使用は先ずデュポンにより1956年に米国特許第2770609号で特許された。これらのモノ不飽和直鎖第一脂肪酸アミドは、典型的にはポリオレフィンフィルムにおいて、0.5より大きい摩擦係数を持つ飽和直鎖第一脂肪酸アミドと比較して0.2未満の摩擦係数を持ち、摩擦係数の大きな低減を提供するので、なお広く好適に市販されている。
飽和第一脂肪酸アミドの例としては、ステアリン酸アミドおよびベヘン酸アミドによって例示される直鎖飽和酸から導かれるアミドが挙げられる。実際、ステアリン酸アミド自体は例えばスリップ剤としてのモノ不飽和第一脂肪酸アミドと組み合わせて抗ブロッキング剤として選択的に用いられ得る。米国特許公開第6846863号は直鎖飽和脂肪酸、特にベヘン酸アミドをびんのポリエチレンねじぶたにスリップ剤として使用することを開示している。
【0005】
・ 一般構造式R−CO−NHR’(但し、RおよびR’は典型的には直鎖である。)の第2脂肪酸アミド。例として、ステアリルエルカ酸アミド、オレイルパルミチン酸アミド、エルシルエルカ酸アミドおよびステアリルステアリン酸アミドが挙げられる。これらは典型的には0.3〜0.5の摩擦係数を有する。これらのアミドは包装業界において、移動の調整速度が必要とされる中間スリップ用途のために一部スリップ剤として用いられる。また、これらのアミドは射出成形業界において離型剤として用いられる。
【0006】
・ 1968年出願の日本特許出願:特公昭48−13935号は唯一ポリオレフィンフィルム中でスリップ剤として使用するためいくつかの分岐脂肪酸アミド類を開示している。これらのアミドは3〜10のヨウ素価を有している。これらのアミドの化学構造は直接的開示されていないが、参照している先の米国特許出願:米国特許第6846863号はそれらが一般的化学構造:R−CO−NHR’(但し、R、R’は典型的には分岐鎖である。)の第二脂肪酸アミドであることを示唆している。特に、R−COはC18の分岐したモノカルボン酸から導かれている。このC18の分岐したモノカルボン酸はダイマー/トリマー酸を製造するために天然に存在する不飽和オレイン酸の重合の副生成物として作成される。特定の触媒の存在下でのオレイン酸の加熱はダイマー、トリマーおよび高次の生成物を生成させるが、重合の代わりに、酸の一部が転位して分岐単量体脂肪酸を与え、これは蒸留によって分離され、次いで水素化され得る。この飽和分岐単量体脂肪酸は、C18の分岐モノカルボン酸あるいはより一般的にはイソステアリン酸として知られる、さまざまな直鎖および主として分岐の、いずれもモノおよび多分岐飽和酸の混合物である。
【0007】
この日本特許公報に開示されるように作成される市販のイソステアリン酸は、典型的には14〜22個の炭素原子を有するモノカルボン酸と約3分の2が18個の炭素原子を有するこれらモノカルボン酸との混合物である。前記18個の炭素原子を有する酸は、短い、主としてメチル鎖、あるいはいくつかのエチルの、主として鎖の中間、典型的にはおよそ炭素9の位置、例えばおよそ炭素6〜12の位置に主鎖から分岐している側鎖を有している。典型的な市販のイソステアリン酸(前のクローダヨーロッパ社から入手できるプリゾリン3505)試料のガスクロマトグラフィー分析は、約40%の18個の炭素原子を有するモノ分岐飽和脂肪酸、および約31%の18個の炭素原子を有する多分岐飽和脂肪酸の存在を示す。この試料の核磁気共鳴分析(NMR)は分岐の74%がメチル分岐であって、分岐の12.2%がエチル分岐でありそして分岐の9%がプロピル分岐であることを示している。
【0008】
・ 典型的にはポリ塩化ビニル(PVC)およびアクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)における離型剤として用いられるエチレンビスステアリン酸アミドのような飽和ビスアミドおよび高酢酸ビニル含量のエチレン酢酸ビニル(EVA)コポリマーにおけるスリップ剤として用いられるエチレンビスオレイン酸アミド。
【0009】
スリップ剤の選択の主要な理由の1つは疑いもなくポリマーにおける摩擦係数を低減する能力であるが、特定の種類のポリマーにとってスリップ剤の選択に影響を与える他のいくつかの要因もある。これらの要因として摩擦係数を低減させるスピードおよびポリマーの摩擦係数の低減の効果、臭気、味覚および色彩の安定性およびポリマー中でのスリップ剤の酸化安定性が挙げられる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
Rは、好適には13〜23個、さらに好適には15〜21個、特に17〜21個の炭素原子を有する飽和、分岐炭化水素鎖である。
好適には、R-CO-NH
2分子の少なくとも70質量%、さらに好適には少なくとも75質量%、特に好適には少なくとも80質量%がモノアルキル分岐を有する。好適にはR-CO-NH
2分子の20質量%未満、さらに好適には15質量%未満、そして特に好適には10質量%未満が多アルキル分岐を有する。好適には、前記モノアルキル基はアミド基から離れている炭化水素鎖に位置していて、より好適にはモノアルキル基は炭化水素鎖の中間に位置している。
前記モノアルキル分岐はメチル、エチル、プロピル又はそれらの混合物であり得る。好適には、前記モノアルキル分岐は少なくとも80%のメチル、さらに好適には少なくとも90%のメチルそして特に95%のメチルであり得る。
【0013】
前記式Iの分岐第一脂肪酸アミド
混合物は、対応する分岐モノカルボキシル基を持つ脂肪酸RCOOH、対応する分岐酸塩化物RCOCl、又は対応する分岐脂肪酸エステルRCOOR’(但し、いずれの場合もRは式Iに規定されているものである。)から導くことができる。R’は典型的には飽和炭化水素鎖であり且つRと同じでも異なってもよい。R’は直鎖あるいは分岐であり得る。好適には、前記式Iの分岐第一脂肪酸アミド
混合物は対応する分岐モノカルボキシル基を持つ脂肪酸RCOOH
混合物を適した触媒の存在下にアンモニアを用いてアミド化することにより導かれる。適した触媒の例として、チタン酸ブチルイソプロピルが挙げられる。この方法で製造される粗アミドは、例えば薄膜蒸留、再結晶、例えばヘプタン再結晶、あるいは溶剤洗浄、例えばヘキサン洗浄によって精製される。
【0014】
好適には、前記式Iの分岐脂肪酸アミド
混合物は全飽和である。適した分岐第一脂肪酸アミドとして、イソステアリン酸分子の少なくとも60質量%がモノアルキル分岐を有し且つイソステアリン酸分子の25質量%未満が多アルキル分岐を有するイソステアリン酸とアンモニアとから導かれるイソステアリン酸アミド、イソベヘン酸分子の少なくとも60質量%がモノアルキル分岐を有し且つイソベヘン酸分子の25質量%未満が多アルキル分岐を有するイソベヘン酸とアンモニアとから導かれるイソベヘン酸アミドが挙げられる。特に好適な式Iの分岐第一脂肪酸アミドはイソステアリン酸分子の少なくとも60質量%がモノアルキル分岐を有し且つイソステアリン酸分子の25質量%未満が多アルキル分岐を有するイソステアリン酸とアンモニアとから導かれる。
【0015】
前記対応する分岐モノカルボン酸にとって、モノカルボン酸分子の好適には少なくとも70質量%、より好適には少なくとも75質量%、特に少なくとも80質量%がモノアルキル分岐を有する。好適には、モノカルボン酸分子の20%未満、さらに好適には15%未満、そして特に10%未満が多分岐を有する。前記モノアルキル基は、好適には炭化水素鎖の中間に位置している。分岐モノカルボン酸RCOOHにとって、Rは、好適には13〜23個、さらに好適には15〜21個、特に17〜21個の炭素原子を有する。
【0016】
前記の飽和分岐脂肪酸RCOOHは、標準的な、市販の対応する飽和分岐脂肪酸R
2COOH[但し、R
2は11〜23個の炭素原子を有し且つ典型的にはR
2COOH分子の40質量%がモノアルキル分岐を有しそしてR
2COOHの31質量%が多アルキル分岐を有する(GC分析に基づく)]を精製することによって得ることができる。前記市販の飽和分岐脂肪酸R
2COOHは、好適にはダイマー酸/トリマー酸を製造するために天然に存在する対応する不飽和脂肪酸R
3COOHの重合の副生成物として製造される。前記天然に存在する不飽和脂肪酸R
3COOH(但し、R
3は11〜23個の炭素原子を有する)を特定の触媒の存在下に加熱すると、ダイマー、トリマーおよび高分子生成物を生成する。重合のかわりに、天然に存在する不飽和脂肪酸の一部は再配列して分岐、モノマー脂肪酸を与え、これは蒸留次いで水素化することによって単離され得る。前記の飽和分岐、モノマー脂肪酸生成物R
2COOHはさまざまな直鎖と主として分岐の、いずれもモノおよび多分岐、飽和酸類の混合物である。
【0017】
R
3COOHからR
2COOHへのさらなる可能性のある手段は、再配列反応に有利な、ダイマー、トリマーおよび高次のポリマー生成物の形成を制限する微細孔径のゼオライト触媒、例えばフェリエ沸石の使用であり、これは蒸留次いで水素化によって単離できる分岐モノマー脂肪酸をもたらす。
飽和分岐脂肪酸R
2COOHへの他の手段として、対応するアルケンのヒドロホルミル化、それに続く、得られたアルデヒドの酸化が挙げられる。また、特にR
2が17個の炭素原子の炭化水素鎖である場合、1つの商業的手段は対応するC9アルコールをイソステアリルアルコールに二量化することであり、イソステアリルアルコールは次いで対応するイソステアリン酸に酸化される。
【0018】
市販のR
2COOHは様々な方法、例えば包接化、蒸留、分別結晶およびクロマトグラフィーで精製することができる。精製法のうちで好適な1つの方法は、尿素と低級アルコールとを用いる包接化法である。この包接化法は以下の方法で実施し得る。市販の未精製の12〜24個の炭素原子を有する飽和、分岐脂肪酸を尿素と低級アルコールとの混合液に溶解し、そして65〜90℃、特に68〜70℃で1〜2時間還流する。前記の低級アルコールは、好適には1〜4個の炭素原子を有し、特に好適な例は次の反応混合物からの除去の容易さからメタノールおよびエタノールである。前記の市販の未精製の12〜24個の炭素原子を有する飽和、分岐脂肪酸の尿素に対する質量比は7:1〜1:7、好適には5:1〜1:5、そして特に5:1〜1:1であり得る。尿素の低級アルコールに対する質量比は1:1〜1:25、好適には1:3〜1:15、そして特に1:4〜1:10であり得る。還流の間に形成された透明な溶液は尿素包接化合物の結晶が形成されるまで冷却しそして冷蔵される。
【0019】
前記酸分子の少なくとも60質量%がモノアルキル分岐を有しそして酸分子の25質量%未満が多アルキル分岐を有するとの条件で、前記の尿素包接化合物はろ過あるいは遠心分離によって分離されそしてろ液は単離され得る。しかしながら、尿素包接化合物はさらに尿素および低級アルコールと混合し、第2の包接化工程で65〜90℃、特に68〜70℃で1〜2時間還流され得る。この第2の包接化工程のための尿素:低級アルコールの質量比は3:1〜1:8、好適には2:1〜1:5そして特に2:1〜1:2であり得る。還流の間に形成される透明な溶液は第2の尿素包接化合物の結晶が形成されるまで冷却し、そして冷蔵される。この第2の尿素包接化合物は分離されそして食塩水中に入れ、そして第2の尿素包接化合物の全てが溶解するまでオーブン内で加熱される。酸分子の少なくとも60質量%がモノアルキル分岐を有しそして酸分子の25質量%未満が多アルキル分岐を有し、12〜24個の炭素原子を有する精製された飽和、分岐脂肪酸は食塩水溶液から分離しそして単離され得る。あるいは、酸分子の少なくとも60質量%がモノアルキル分岐を有しそして酸分子の25質量%未満が多アルキル分岐を有し、12〜24個の炭素原子を有する精製された飽和、分岐脂肪酸が得られるまで、第2のろ液が尿素と混合されそして3度目の包接化工程が行われ得る。
【0020】
また、前記包接化工程は尿素がチオ尿素と置き換えて行われ得る。また、前記包接化工程は還流段階の間に、一部の低級アルコールを典型的には蒸留によって取り除いて行われ得る。
好適には、精製された飽和分岐脂肪酸RCOOHはRが13〜23個の炭素原子、さらには15〜21個の炭素原子、特に17〜21個の炭素原子を有する。
例として、精製イソステアリン酸および精製イソベヘン酸が挙げられる。
【0021】
それゆえ、本発明のさらなる態様において、式I:
R-CO-NH
2
(但し、Rは11〜23個の炭素原子を有する飽和、分岐炭素鎖で、R-CO-NH
2分子の少なくとも60質量%がモノアルキル分岐を有しそしてR-CO-NH
2分子の25質量%未満が多アルキル分岐を有する。)の分岐第一脂肪酸アミドの製造方法は、
a)RCOOHを形成するために式R
2COOH(但し、R
2は11〜23個の炭素原子を有する。)の飽和分岐脂肪酸を精製すること、続いて
b)触媒の存在下にRCOOHをアンモニアでアミド化すること、次いで
c)得られた式Iの分岐第一脂肪酸アミドを精製すること
を含む。
【0022】
前記式Iの分岐第一脂肪酸アミド
混合物は、好適には100g当たり2.8gヨウ素以下、さらには2.5gヨウ素以下、より好適には2.1gヨウ素以下、特に1.8gヨウ素以下のヨウ素価を有する。
前記式Iの分岐第一脂肪酸アミド
混合物はポリマー中でのスリップ剤および/又は抗ブロッキング剤として有用であることが見出された。
それゆえ、さらなる態様において、本発明は、式I:
R-CO-NH
2
(但し、Rは11〜23個の炭素原子を有する飽和、分岐炭化水素鎖で、R-CO-NH
2分子の少なくとも60質量%がモノアルキル分岐を有しそしてR-CO-NH
2分子の25質量%未満が多アルキル分岐を有する。)の分岐第一脂肪酸アミド
混合物のポリマー中でのスリップ剤および/又は抗ブロッキング剤としての利用法を提供する。
【0023】
さらなる態様において、本発明は、式I:
R-CO-NH
2
(但し、Rは11〜23個の炭素原子を有する飽和、分岐炭化水素鎖で、R-CO-NH
2分子の少なくとも60質量%がモノアルキル分岐を有しそしてR-CO-NH
2分子の25質量%未満が多アルキル分岐を有する。)の分岐第一脂肪酸アミド
混合物のポリマー中での離型剤としての利用法を提供する。
【0024】
適したポリマーとしては、フィルム又は成形品製造用のホモポリマーおよびコポリマーいずれものオレフィンポリマー組成物が挙げられる。オレフィンポリマー組成物としては、エチレンホモポリマーおよびエチレンと1種以上のコモノマーとのコポリマーが挙げられる。適したコモノマーの例としては、酢酸ビニル、ビニルアルコール、アクリル酸メチル、アクリル酸エチルおよびメタクリル酸およびそれらの混合物が挙げられ、これらは0〜50質量%のレベルでエチレンと存在し得る。本発明に係るポリエチレンは典型的には0.875〜0.96gcm
−3の密度を有する。また、前記ポリエチレンは典型的にはASTM D1238により2.16kgの荷重で190℃で測定した0.1g/10分〜30g/10分のメルトインデックスにより特徴付けられる。また、適したオレフィンポリマー組成物として、プロピレンホモポリマーおよびプロピレンと1種以上のコモノマーとのコポリマーが挙げられる。適したコモノマーとしてエチレン、1−ブテンおよび1−ヘキセンおよびこれらの混合物が挙げられ、これらはランダムおよびブロックコポリマーのいずれでも0〜30質量%のレベルで存在し得る。これらのコポリマーは熱可塑性オレフィンでの使用のための30質量%より多い水準で存在し得る。本発明に係るポリプロピレンは典型的には0.85〜0.95gcm
−3の密度を有する。また、前記ポリプロピレンは典型的には2.16kgの荷重で230℃で測定した0.1g/10分〜30g/10分のメルトインデックスにより特徴付けられる。フィルムとしてはインフレーションフィルムおよびキャスト膜および単層膜および共押出しフィルムが挙げられる。成形品として、成形品を製造するための従来法、例えば押出し成形、押出しブロー成形、押出し熱成形および射出成形が挙げられる。成形品の例として閉じるもの、例えばビン用のスクリューキャップ、ビン、容器、バケツ/おけ、庭園家具、車内部品およびフード下コンポーネント、電気コンポーネント、燃料タンクおよび貯蔵タンクが挙げられる。
【0025】
また、適したポリマーとしてポリスチレンが挙げられる。適したタイプのポリスチレンおよびコモノマーとのポリスチレンとしてハイインパクトポリスチレン(HIPS)、汎用の多目的ポリスチレンポリマー(GPPS)、ABSおよび成形品製造用のスチレンアクリロニトリル(SAN)が挙げられる。成形品の例として食品容器および皿、家具および家庭用品、CDケース、化粧品容器が挙げられる。本発明の分岐第一脂肪酸アミドはスリップ剤および離型剤のいずれとしても作用され、そしてそのようなポリスチレン製品のためのポリスチレン工程の間に離型を助ける。
他の適したポリマーとしてPVCが挙げられる。製品の例として可塑化および非可塑化フィルム、シート、成形品および封止ガスケットが挙げられる。
好適なポリマーはオレフィンポリマー組成物である。さらに好適なポリマーはポリエチレンおよびポリプロピレンのホモポリマーおよびコポリマーである。
【0026】
本発明に係る分岐第一脂肪酸アミド
混合物は調製段階でポリマーに直接添加されるか、マスターバッチにより予備配合されるかあるいは含有され得る。ポリエチレンに基づくフィルム中での使用のためにポリマーに直接に添加される場合、本発明に係る分岐第一脂肪酸アミド混合物の割合は、好適には200〜1500ppm、さらに好適には400〜1000ppmそして特に500〜800ppmである。ポリプロピレンに基づくフィルム中での使用のためにポリマーに直接に添加される場合、コモノマーの有無に関らず、本発明に係る分岐第一脂肪酸アミド混合物の割合は、好適には500〜3500ppm、さらに好適には1000〜3000ppmそして特に1200〜1800ppmである。ポリエチレンに基づくおよびポリプロピレンに基づく成形品中での使用のためにポリマーに直接に添加される場合、本発明に係る分岐第一脂肪酸アミド
混合物の割合は、好適には0.1〜3質量%、さらに好適には0.2〜1.5質量%そして特に0.2〜0.9質量%である。
【0027】
本発明に係る分岐第一脂肪酸アミド
混合物のスリップ剤および/又は抗ブロッキング剤としての使用は、好適には0.50未満、さらに好適には0.40未満そして特に0.30未満の摩擦係数をもたらす。
本発明に係る分岐第一脂肪酸アミド
混合物が離型剤として用いられる場合、離型剤が存在しないポリマーと比較して離型力低減がポリマー中で好適には少なくとも10%、さらに好適には少なくとも30%そして特に少なくとも50%である。
必要であれば、他の公知の添加剤、例えば公知のスリリップ剤、追加的な抗ブロッキング剤、帯電防止剤、酸化防止剤、酸スカベンジャー、染料/顔料、充填材/補強材、紫外線吸収剤、光安定剤、防曇剤、核形成剤、非移動スリップ添加剤、例えば固体シリコーン又は架橋ポリメチルメタクリレート(PMM)がポリマー中に存在し得る。
【0028】
公知のスリップ剤の例として、飽和および不飽和のいずれもの酸アミドが挙げられる。具体例はエルカ酸アミドである。このスリップ剤は典型的にはポリマー中に0.1〜3質量%の濃度で存在する。
追加的な抗ブロッキング剤の例として天然および合成シリカ、炭酸カルシウムが挙げられる。これらの抗ブロッキング剤は典型的にはポリマー中に500〜5000ppmの濃度で存在する。
帯電防止剤の例としてグリセロールエステル、エトキシ化アミン、アルカンアミドおよびアルキルスルホン酸ナトリウムが挙げられる。これらの帯電防止剤は典型的にはポリマー中に0.05〜3質量%の濃度で存在する。
【0029】
さらなる態様において、本発明は、式I:
R-CO-NH
2
(但し、Rは11〜23個の炭素原子を有する飽和、分岐炭化水素鎖で、R-CO-NH
2分子の少なくとも60質量%がモノアルキル分岐を有しそしてR-CO-NH
2分子の
0質量%より多く25質量%未満が多アルキル分岐を有する。)の分岐
、飽和、第一脂肪酸アミド
混合物を含有するポリマー組成物からフィルムおよびシートを製造する工程を含む、単一層および共押し出しのいずれものポリオレフィンフィルムの滑りを増大させ且つブロッキングを低減させる方法を提供する。
【0030】
さらなる態様において、本発明は、
(A)50〜99.98質量%のポリオレフィンポリマー、および
(B)0.02〜3質量%の式I:
R-CO-NH
2
(但し、Rは11〜23個の炭素原子を有する飽和分岐炭化水素鎖で、R-CO-NH
2分子の少なくとも60質量%がモノアルキル分岐を有しそしてR-CO-NH
2分子の
0質量%より多く25質量%未満が多アルキル分岐を有する。)の分岐
、飽和、第一脂肪酸アミド
混合物
を含有するポリマー組成物を提供する。
【0031】
さらなる態様において、本発明は、
(A)50〜99.9質量%のポリスチレンポリマー、および
(B)0.1〜3質量%の式I:
R-CO-NH
2
(但し、Rは11〜23個の炭素原子を有する飽和分岐炭化水素鎖で、アミド分子の少なくとも60質量%がモノアルキル分岐を有しそしてアミド分子の
0質量%より多く25質量%未満が多アルキル分岐を有する。)の分岐
、飽和、第一脂肪酸アミド
混合物
を含有するポリマー組成物を提供する。
【実施例】
【0032】
以下の例は本発明を説明するものである。特に明記しない限り全ての部および割合は質量による。
【0033】
実施例1
酸分子の少なくとも60質量%がモノアルキル分岐を有しそして酸分子の25質量%未満が多アルキル分岐を有するイソステアリン酸を2段階包接化工程により調製
市販のイソステアリン酸(500g、Prisone 3505 前のクローダヨーロッパ社)と尿素顆粒(500g)とを、メタノール(2500mL)中で2時間還流させた。この溶液を冷却させ、次いで冷蔵庫(約4℃)中に一晩(約18時間)置いた。形成した尿素結晶をろ別しそして食塩水の入った三角フラスコ中に入れた。尿素結晶をオーブン(60℃)に置き、そして全ての尿素が溶解するまで時々攪拌した。得られた脂肪質物質を食塩水の最上部からピペットで取り、U1とラベル付けした。
尿素顆粒(500g)をろ液に加えそして冷却するまで再度2時間還流させ、そして一晩冷蔵庫に置いた。形成した尿素結晶を再度ろ別しそして尿素を前と同様に溶解させた。得られた脂肪質物質をU2とラベル付けした。
ろ液からメタノールを除き、そして得られた汚れを温食塩水で洗浄して残った尿素を除いた。得られた脂肪質物質をろ液とラベル付けした。3つの画分の全てを硫酸ナトリウム又は硫酸マグネシウムのいずれかを用いて乾燥させた。
以下の表1は各画分のおおよその質量と収率とを示す。
【0034】
【表1】
【0035】
以下の表2はガスクロマトグラフィー(GC)分析により測定した各画分での標準的な市販のイソステアリン酸の主要成分の各々の割合を示す。
【0036】
【表2】
【0037】
多アルキル分岐物質では、多アルキル分岐物質の量がいくらでそして他の種の量がいくらかは正確には明らかでない。引用符付の割合は明らかに多アルキル分岐物質である物質に対してのものである。
U2は酸分子の少なくとも60質量%がモノアルキル分岐を有しそして酸分子の25質量%未満が多アルキル分岐を有する、本発明に係る精製分岐飽和モノカルボン酸混合物である。
【0038】
実施例2
アミド分子の少なくとも60質量%がモノアルキル分岐を有しそしてアミド分子の25質量%未満が多アルキル分岐を有するイソステアリン酸アミドの調製
わずかな窒素圧下、実施例1で得られたU2の88.0gをミニクレーブに入れ、攪拌下に170℃まで加熱した。窒素を放出し、過剰の300psiアンモニアを加えた。周期的にアンモニアを放出し、新しいアンモニアを4+1/2時間にわたって加えた。酸価を測定(10.7mgKOH)し、ミニクレーブを120℃に冷却した。次いで、ミニクレーブを窒素でパージし、試料を空けた。次いで、試料を2つの異なる方法で精製した。1つの部分はヘキサンで洗浄し室温で乾燥した。第2部分はヘプタンで冷蔵庫中で一晩再結晶させた。
【0039】
実施例3
生成物がヘキサン洗浄又はヘプタン再結晶ではなく薄膜蒸留により精製されたことを除いて実施例2と同様にして調製されたイソステアリン酸アミド(U2のアミド化物精製物)のスリップ特性を低密度ポリエチレン(LDPE)フィルムで測定
ハーク2軸押出機を用いて、ルポレン2420H LDPE中の2%イソステアリン酸アミドのマスターバッチを約180℃で操作して調製した。また、比較の2%ステアリン酸アミド(クロードアミド社、商標SRV)、2%エルカ酸アミド(クロードアミド社、商標ER)および2%天然シリカの各マスターバッチをLDPE中で調製した。500ppmのスリップ剤および500ppmの天然シリカを抗ブロッキング剤として含むものと含まないもののインフレーションフィルムを35μmの口径で調製した。
数週間にわたって、静および動摩擦係数(CoF)をASTM D1894により測定した。結果を以下の表3に示す。
【0040】
【表3】
【0041】
実施例4
精製法が薄膜蒸留であることを除いて実施例2と同様にして調製されたイソステアリン酸アミド(U2のアミド化物精製物)のスリップ特性をポリプロピレンホモポリマー(hPP)およびポリプロピレンコポリマー(cPP)で測定
ハーク2軸押出機を用いて、hPP(Borealis HD204)中および別にcPP(RD208)中の2%精製イソステアリン酸アミド(U2のアミド化物精製物:薄膜蒸留で精製した他は実施例2と同様にして調製)のマスターバッチを約180℃で操作して調製した。また、比較の2%ステアリン酸アミド(クロードアミド社、商標SRV)、2%エルカ酸アミド(クロードアミド社、商標ER)、および2%天然シリカの各マスターバッチをhPPおよびcPP中で調製した。抗ブロッキング剤としての1500ppmの天然シリカとともに1500ppmのスリップ剤を含有するキャスト膜を50μmの口径で調製した。
数週間にわたって、静および動摩擦係数(CoF)をASTM D1894の修正版により測定した。結果を以下の表4および5に示す。
【0042】
【表4】
【0043】
【表5】
【0044】
実施例5
PETボトルへのGD4744HDPE(前のLyondelBasellから購入)閉包に対してトルクの適用とトルクの放出を測定
ボトルをUCPトルク試験器に設置した。トルク適用のために、試験器がしっかりつかみ始めるまで閉包を手動でボトルに適用した。次いで、RS575−633トルクねじりを用いて5lb(ポンド) in(インチ)のトルクをすばやく適用した。次いで、90°時計回りのトルクを一定の適用速度で適用し、そして10秒間保持した。次いで、閉包に適用された最大トルクの読み取りを行った。
次いで、7日後に、あたかも手で除かれるようにトルクねじりを用いて、閉包の除去によるトルクの放出を測定した。UCPトルク試験器で読む最大トルクを書き留めた。
結果を以下の表6に示す。各々の結果は10個の値の平均から得られている。
【0045】
【表6】
【0046】
実施例6
酸化安定性試験
酸化誘導時間の測定
実施例2で調製したイソステアリン酸アミドの12個の5g試料を溶融させ、そしてシャーレー中に置いた。10個の試料を120℃に設定されたサーモスタット制御のファンオーブン中に置いた。他の2個の試料を制御しながら室温に置いた。2個の試料を、それぞれ20、30、40、50および60時間後にオーブンから取り出した。各試料を95mLのエタノールに溶解しそしてUV/VIS分光光度計で420nmの吸光度を測定した(A1)。次いで、エタノール自体の420nmでの吸光度を記録した(A2)。各試料の吸光度はA1−A2として計算した。各試料対の平均吸光度を時間に対してプロットし、そして420nmでの吸光度が測定された時点で酸化誘導時間が顕著に増加することが示された。
次いで、2種類の市販のオレイン酸アミド製品である、クロードアミドERとクロードアミドVRXの12個の試料を用いて実験を繰り返した。
結果を表7に示す。
【0047】
【表7】
【0048】
データは、本発明の生成物が現在市販されて用いられている不飽和アミドよりもずっと酸化安定性であることを明確に示している。
【0049】
実施例7
酸分子の少なくとも60質量%がモノアルキル分岐を有しそして酸分子の25質量%未満が多アルキル分岐を有するイソステアリン酸を1段階包接工程により調製
市販のイソステアリン酸(300g)と尿素顆粒(500g)とを、工業用変性アルコール(770g、水との95/5質量比混合物)中で1時間還流させた。この溶液を20℃に冷却させた。形成した結晶をろ別しそして2%食塩水の入った三角フラスコ中に入れた。水性層を排水し、そして工程を食塩水を加えて繰り返し、そして水性層を排水した。得られた精製脂肪質酸はモノアルキル分岐を有する69.3質量%の酸分子を有していることが分った。
【0050】
実施例8
実施例7の精製脂肪酸を、実施例2の方法を用いて相当する精製脂肪酸アミドに変化させた。
【0051】
実施例9
LDPE中の、750ppmの異なるモノメチル分岐濃度%を有するさまざまなアミドに対して、3000時間の範囲にわたって動摩擦係数を測定した。
得られた結果を表8に示す。モノメチル分岐濃度%が増加すると動摩擦係数が顕著に低減することが明確に示されている。
【0052】
【表8】
【0053】
実施例10
異なる濃度%のモノメチル分岐を有するさまざまなアミドの色彩安定性を以下のようにして測定した。各アミドの試料をLICO管中に入れ、そして120℃のオーブンに設置した。80時間までさまざまな時間にて管をオーブンから取り出し、そしてその色彩をLICO比色計を用いて測定した。得られた結果を表9に示す。
【0054】
【表9】
【0055】
表9での結果から、本発明による精製アミドは比較製品に比べて安定性が増大していることが明らかである。
【0056】
実施例11
100g当たりのヨウ素gであるヨウ素価を、さまざまな精製脂肪酸に対して測定した。結果を表10に示す。
【0057】
【表10】
【0058】
全ての精製酸およびこの精製酸から導かれた本発明に係る精製アミドは先行日本特許:特公昭48−13935号公報の3〜10よりも大幅に低いヨウ素価を有している。
本発明の実施態様の一部を以下の項目1−12に列記する。
[1]
式I:
R-CO-NH2
(但し、Rは11〜23個の炭素原子を有する飽和分岐炭化水素鎖で、R-CO-NH2分子の少なくとも60質量%がモノアルキル分岐を有し且つR-CO-NH2分子の25質量%未満が多アルキル分岐を有する。)
の分岐第一脂肪酸アミド混合物であって、前記分岐第一脂肪酸アミド混合物がゼオライト触媒を使用することを含む方法によって得られる分岐第一脂肪酸混合物から導かれる、前記脂肪酸アミド混合物。
[2]
前記R-CO-NH2分子の少なくとも70質量%がモノアルキル分岐を有する項目1に記載の分岐第一脂肪酸アミド。
[3]
前記R-CO-NH2分子の20質量%未満が多アルキル分岐を有する項目1又は2に記載の分岐第一脂肪酸アミド。
[4]
Rが13〜23個の炭素原子を有する項目1〜3のいずれか1項に記載の分岐第一脂肪酸アミド。
[5]
前記モノアルキル分岐が、メチル、エチル、プロピル又はそれらの混合物である項目1〜4のいずれか1項に記載の分岐第一脂肪酸アミド。
[6]
前記モノアルキル分岐が、少なくとも80%がメチルである項目5に記載の分岐第一脂肪酸アミド。
[7]
100g当たり2.8gヨウ素以下のヨウ素価を有する項目1〜7のいずれか1項に記載の分岐第一脂肪酸アミド。
[8]
式I:
R-CO-NH2
(但し、Rは11〜23個の炭素原子を有する飽和、分岐炭化水素鎖で、R-CO-NH2分子の少なくとも60質量%がモノアルキル分岐を有しそしてR-CO-NH2分子の25質量%未満が多アルキル分岐を有する。)の分岐第一脂肪酸アミドのポリマー中でのスリップ剤および/又は抗ブロッキング剤としての利用法。
[9]
式I:
R-CO-NH2
(但し、Rは11〜23個の炭素原子を有する飽和、分岐炭化水素鎖で、R-CO-NH2分子の少なくとも60質量%がモノアルキル分岐を有しそしてR-CO-NH2分子の25質量%未満が多アルキル分岐を有する。)の分岐第一脂肪酸アミドのポリマー中での離型剤としての利用法。
[10]
単層および共押出しのポリオレフィンフィルムのスリップ性を増大させそしてブロッキングを低減させる方法であって、式I:
R-CO-NH2
(但し、Rは11〜23個の炭素原子を有する飽和、分岐炭化水素鎖で、R-CO-NH2分子の少なくとも60質量%がモノアルキル分岐を有しそしてR-CO-NH2分子の25質量%未満が多アルキル分岐を有する。)の分岐第一脂肪酸アミを含有するポリマー組成物から前記フィルムおよびシートを製造する工程を含む、前記方法。
[11]
ポリマー組成物であって、
(A)50〜99.98質量%のポリオレフィンポリマー、および
(B)0.02〜3質量%の式I:
R-CO-NH2
(但し、Rは11〜23個の炭素原子を有する飽和、分岐炭化水素鎖で、R-CO-NH2分子の少なくとも60質量%がモノアルキル分岐を有しそしてR-CO-NH2分子の25質量%未満が多アルキル分岐を有する。)の分岐第一脂肪酸アミド
を含有する、前記組成物。
[12]
ポリマー組成物であって、
(A)50〜99.9質量%のポリスチレンポリマー、および
(B)0.1〜3質量%の式I:
R-CO-NH2
(但し、Rは11〜23個の炭素原子を有する飽和、分岐炭化水素鎖で、R-CO-NH2分子の少なくとも60質量%がモノアルキル分岐を有しそしてR-CO-NH2分子の25質量%未満が多アルキル分岐を有する。)
の分岐第一脂肪酸アミド
を含有する、前記組成物。