特許第6100856号(P6100856)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6100856付着した切削液を検出する電子部品の筐体および該筐体を備えたモータ駆動装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6100856
(24)【登録日】2017年3月3日
(45)【発行日】2017年3月22日
(54)【発明の名称】付着した切削液を検出する電子部品の筐体および該筐体を備えたモータ駆動装置
(51)【国際特許分類】
   B23Q 11/08 20060101AFI20170313BHJP
   H05K 5/02 20060101ALI20170313BHJP
   B23Q 17/00 20060101ALI20170313BHJP
   B23Q 1/00 20060101ALN20170313BHJP
【FI】
   B23Q11/08 Z
   H05K5/02 L
   B23Q17/00 A
   !B23Q1/00 G
【請求項の数】7
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2015-193038(P2015-193038)
(22)【出願日】2015年9月30日
【審査請求日】2016年9月14日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】390008235
【氏名又は名称】ファナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100102819
【弁理士】
【氏名又は名称】島田 哲郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100159684
【弁理士】
【氏名又は名称】田原 正宏
(74)【代理人】
【識別番号】100112357
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 繁樹
(74)【代理人】
【識別番号】100157211
【弁理士】
【氏名又は名称】前島 一夫
(72)【発明者】
【氏名】松田 涼
(72)【発明者】
【氏名】松本 康之
(72)【発明者】
【氏名】益田 直樹
(72)【発明者】
【氏名】稲葉 樹一
【審査官】 山本 忠博
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−072211(JP,A)
【文献】 特開2015−145864(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q 11/08,
H05K 5/00− 7/20,
B23Q 17/00, 1/00,
G01R 31/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
工作機械を駆動するモータ駆動装置の電子部品を収容する筐体であって、
前記筐体の表面において切削液を誘導する少なくとも1つの誘導部と、
前記誘導部によって誘導された切削液を収集する少なくとも1つの貯留部と、
を備え
前記貯留部は、上方に向かって開口した箱状の容器である、筐体。
【請求項2】
前記表面が水平面に対して傾斜しており、
前記少なくとも1つの誘導部が、重力の作用により前記切削液を誘導するように構成される、請求項1に記載の筐体。
【請求項3】
前記少なくとも1つの貯留部に収集された前記切削液の量を測定できるように、前記貯留部に目盛が付与されている、請求項1または2に記載の筐体。
【請求項4】
前記少なくとも1つの貯留部が、前記筐体から取外し可能である、請求項1から3のいずれか1項に記載の筐体。
【請求項5】
前記誘導部および前記貯留部を複数個備えた、請求項1から4のいずれか1項に記載の筐体。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載の筐体と、
前記筐体に収容された電子部品と、
前記少なくとも1つの貯留部に収集された前記切削液の量を検出する検出部と、
を備えたモータ駆動装置。
【請求項7】
前記少なくとも1つの貯留部に収集された前記切削液の量が、予め定められる閾値を超えたときに、警告信号を発生する警告部をさらに備える、請求項6に記載のモータ駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品を収容する筐体および該筐体を備えたモータ駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
工作機械を駆動するモータ駆動装置は、粉塵または切削液などの異物が飛散する環境下で使用される。モータ駆動装置を構成する電子部品は、ロッカーの形態を有する制御盤に収容されていて、異物から保護されている。しかしながら、実際には、異物が制御盤の内部に進入することを完全に防止することは困難である。
【0003】
異物が制御盤の内部の電子部品に付着した場合、経年的に電子部品の腐食をもたらして、モータ駆動装置の動作不良を引き起こしうる。そのため、異物の付着を防止し、或いは異物の付着を早期に発見するための提案がなされている。
【0004】
特許文献1には、プリント配線板に付着した異物、例えば粉塵または切削油に起因して生じるプリント配線板の劣化ないし動作不良を検出する回路を備えたプリント配線板が開示されている。
【0005】
他の従来技術によれば、異物が電子部品に付着するのを防止するために、切削液を、電子部品の筐体から離れるよう誘導する機構が設けられたり、または切削液が付着しにくい箇所に電子部品が配置される。或いは、切削液が飛散するのを防止するために、冷却用ファンモータを使用しないようにすることが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−019405号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
誘導機構を設けた筐体によって電子部品を保護する前述した従来技術によれば、切削液の付着防止効果をある程度期待できる。しかしながら、誘導機構によって筐体から離れて移動した切削液は、モータ駆動装置の設置箇所に滴下するので、制御盤の内部に進入した切削液の量を把握することは困難である。したがって、制御盤の内部に進入した切削液を検出し、モータ駆動装置の動作不良が発生する前に予防処置を施せるようにしたモータ駆動装置が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願の1番目の発明によれば、工作機械を駆動するモータ駆動装置の電子部品を収容する筐体であって、前記筐体の表面において切削液を誘導する少なくとも1つの誘導部と、前記誘導部によって誘導された切削液を収集する少なくとも1つの貯留部と、を備え、前記貯留部は、上方に向かって開口した箱状の容器である、筐体が提供される。
本願の2番目の発明によれば、1番目の発明に係る筐体において、前記表面が水平面に対して傾斜しており、前記少なくとも1つの誘導部が、重力の作用により前記切削液を誘導するように構成される。
本願の3番目の発明によれば、1番目または2番目の発明に係る筐体において、前記少なくとも1つの貯留部に収集された前記切削液の量を測定できるように、前記貯留部に目盛が付与されている。
本願の4番目の発明によれば、1番目から3番目のいずれかの発明に係る筐体において、前記少なくとも1つの貯留部が、前記筐体から取外し可能である。
本願の5番目の発明によれば、1番目から4番目のいずれかの発明に係る筐体が、前記誘導部および前記貯留部を複数個備えている。
本願の6番目の発明によれば、1番目から5番目のいずれかの発明に係る筐体と、前記筐体に収容された電子部品と、前記少なくとも1つの貯留部に収集された前記切削液の量を検出する検出部と、を備えたモータ駆動装置が提供される。
本願の7番目の発明によれば、6番目の発明に係るモータ駆動装置が、前記少なくとも1つの貯留部に収集された前記切削液の量が、予め定められる閾値を超えたときに、警告信号を発生する警告部をさらに備える。
【0009】
これら並びに他の本発明の目的、特徴および利点は、添付図面に示される本発明の例示的な実施形態に係る詳細な説明を参照することによって、より明らかになるであろう。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る筐体および該筐体を備えたモータ駆動装置によれば、制御盤の内部に進入した切削液が、誘導部の作用によって筐体の表面に沿って移動し、貯留部に収集されるようになる。それにより、オペレータは、進入した切削液を視覚的に検出することができるようになり、モータ駆動装置に不具合が生じる前に、必要に応じた予防処置を施せるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】モータ駆動装置を示す概念図である。
図2】一実施形態に係るモータ駆動装置の電子部品を収容する筐体を示す斜視図である。
図3図2の筐体を線III,III’を通る平面で切った断面図である。
図4】別の実施形態に係る筐体を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態を説明する。図示される実施形態の構成要素は、本発明の理解を助けるために縮尺が適宜変更されている。同一または対応する構成要素には、同一の参照符号が使用される。
【0013】
図1は、モータ駆動装置10を示す概念図である。モータ駆動装置10は、複数の電子部品14から構成される。電子部品14は、プリント板およびプリント板に実装された部品およびその他の任意の部品を含んでいる。電子部品14は、それぞれロッカーの形態を有する制御盤12に収容されている。制御盤12は、開放可能な扉を有していて、必要に応じて外部からアクセスできるように構成されている。制御盤12は、扉が閉鎖された状態において概ね密閉された内部空間を形成する。
【0014】
モータ駆動装置10は、工作機械の軸を駆動するために使用されるモータ(図示せず)を制御する。工作機械を用いて切削加工を行う際に、摩耗抑制および冷却の目的で切削液が使用される。モータ駆動装置10は、切削液に加えて、ワークから生じる切りくずなどが飛散する環境下で使用される。前述したように、制御盤12は、密閉された内部空間を形成しているものの、扉の隙間などから切削液が内部空間に進入する場合がある。
【0015】
そこで、本実施形態に係るモータ駆動装置10においては、電子部品14を収容する筐体20を設け、切削液、塵埃などの異物が電子部品14に付着するのを防止する構成を採用している。
【0016】
図2および図3を参照して、モータ駆動装置10の電子部品14を収容する筐体20について説明する。図2は、筐体20を示す斜視図であり、図3は、図2の筐体20を線IIIおよび線III’を通って鉛直方向に広がる平面で切った断面図である。
【0017】
筐体20は、概ね直方体の形状を有する中空の本体22を有している。本体22は、矩形の底壁22aと、底壁22aの周囲から鉛直方向上向きに広がる側壁22bと、側壁22bによって形成される上方に向けられた開口を閉塞する頂壁22cと、を有している。
【0018】
頂壁22cは、上方に向かって凸状の四角錐の形状を有している。換言すれば、頂壁22cの各面は、水平面に対して所定の角度を形成するように傾斜している。
【0019】
頂壁22cには、その周囲に沿って4つの貯留部26が設けられている。貯留部26は、上方に向かって開口した箱状の容器である。図3を参照すると明確に分かるように、貯留部26と頂壁22cとの間には段部が形成されておらず、互いに概ね円滑に接続されている。
【0020】
前述した構成を有する筐体20によれば、筐体20の頂壁22cに滴下した切削液Xは、重力の作用を受けて頂壁22cの表面に沿って下方に移動し(図3の矢印参照)、貯留部26に収集される。図3においてハッチングを施された箇所は、貯留部26内の切削液Xを表している。
【0021】
このように、本実施形態によれば、頂壁22cによって形成される傾斜面が、切削液Xを貯留部26まで誘導する誘導部として機能する。それにより、オペレータは、貯留部26に収集された切削液Xの量を視覚的に検出できるようになる。したがって、オペレータは、必要に応じて制御盤12の密閉性を向上させたり、或いはモータ駆動装置10の設置箇所を変更することによって、モータ駆動装置10の不具合発生を防止するための予防処置を実行できるようになる。
【0022】
また、本実施形態に係るモータ駆動装置10によれば、切削液Xの付着に起因するモータ駆動装置10の不具合の発生を防止できるので、冷却ファンモータを使用することができるようになり、結果的に熱設計の自由度が高まる。
【0023】
また、貯留部26が筐体20の頂壁22cの各辺に設けられているので、オペレータは、切削液Xの進入経路を推定できる。それにより、オペレータは、切削液Xの進入を防止する効果的な処置を選択できるようになる。
【0024】
一実施形態において、貯留部26に目盛が形成されていてもよい。その場合、オペレータは、貯留部26の目盛を読取ることによって、貯留部26内の切削液Xの量を定量的に測定できるようになる。
【0025】
一実施形態において、貯留部26は、筐体20から着脱可能な構成を有していてもよい。その場合、オペレータは、貯留部26を制御盤12から取出して切削液Xを廃棄するとともに、貯留部26を洗浄できるようになるので、保守作業が容易になる。また、貯留部26が破損した場合に、低コストで貯留部26を交換できるようになる。
【0026】
図示された実施形態においては、頂壁22cの周囲に4つの貯留部26が設けられている。しかしながら、別の実施形態においては、3つ以下の貯留部が形成されていてもよいし、或いは5つ以上の貯留部が形成されていてもよい。
【0027】
別の実施形態において、筐体が、錐台形状の頂面を有していてもよい。また別の実施形態において、切削液を貯留部まで誘導する誘導部が、筐体の表面に形成されていて水平面に対して傾斜して延びる溝であってもよい。
【0028】
図4は、別の実施形態に係る筐体20を示している。本実施形態において、筐体20には、重量検出器30が設けられている。また、電子部品14は、検出部32と、警告部34と、を備えている。
【0029】
重量検出器30は、貯留部26の重量、ひいては貯留部26内の切削液Xの重量を検出するように構成されている。
【0030】
検出部32は、重量検出器30の出力値から、貯留部26に収集された切削液Xの量を求める用に構成される。
【0031】
警告部34は、検出部32によって求められた切削液Xの量が、予め定められた閾値を超えたときに、警告信号を発信するように構成される。モータ駆動装置10は、警告信号に応答して、音または光などを通じてオペレータに警告を通知する。
【0032】
本実施形態によれば、オペレータが貯留部26を直接確認しなくても、貯留部26に収集された切削液Xの量が所定量を超えたことをオペレータは認識できるようになる。オペレータは、警告を受けて必要に応じた処置を実行できるので、モータ駆動装置10の不具合の発生を防止できるようになる。
【0033】
別の実施形態において、モータ駆動装置は、重量検出器30の代わりに光学的検出器を用いて切削液Xの量を取得するように構成されてもよい。
【0034】
以上、本発明の種々の実施形態について説明したが、当業者であれば、他の実施形態によっても本発明の意図する作用効果を実現できることを認識するであろう。特に、本発明の範囲を逸脱することなく、前述した実施形態の構成要素を削除または置換することができるし、或いは公知の手段をさらに付加することができる。また、本明細書において明示的または暗示的に開示される複数の実施形態の特徴を任意に組合せることによっても本発明を実施できることは当業者に自明である。
【符号の説明】
【0035】
10 モータ駆動装置
12 制御盤
14 電子部品
20 筐体
22 本体
22a 底壁
22b 側壁
22c 頂壁(誘導部)
26 貯留部
30 重量検出器
32 検出部
34 警告部
【要約】
【課題】電子部品の筐体に付着した切削液を検出できるモータ駆動装置を提供する。
【解決手段】モータ駆動装置10の電子部品14を収容する筐体20は、付着した切削液Xを誘導するように水平面に対して傾斜した頂面22cを有している。筐体20は、頂面22cに沿って誘導された切削液Xを収集する貯留部26をさらに備えている。貯留部26には、収集された切削液Xの量を測定できるように、目盛が付与されていてもよい。貯留部26は、筐体20から取外し可能であるように構成されていてもよい。
【選択図】図2
図1
図2
図3
図4