【課題を解決するための手段】
【0005】
第1の態様によると、異なるスペクトル感度を有するn個の計測を提供するセンサ構成を用いて光を測定するよう(ここでnは4以上の数である)、及びヒト標準的観察者に基づく色空間の3原色の形態で上記光を測定するよう(ここで3原色のうちの1つは無彩色原色である)配設された測色計を較正する方法が提供される。この方法は:
‐既知の3原色の値を有するm個の較正用発光体に対するn個の計測のm個の組を生成し、ここでmはnより大きい数である、ステップ;
‐上記n個の計測によって測定された信号に対して適用した場合に、色度が最適化された原色の値をもたらす、較正係数の第1の組を決定するステップ;及び
‐上記n個の計測によって測定された信号に対して適用した場合に、最適化された無彩色原色の値をもたらす、較正係数の第2の組を、(i)較正係数の第2の組をn個の計測によって測定された信号に適用することによって得られる無彩色原色の値と、(ii)既知の無彩色原色の値との間の、無彩色距離のノルムを最小化することによって、決定するステップ
を含み、
較正係数の第1の組は、(i)較正係数の第1の組をn個の計測によって測定された信号に適用することによって得られる色度値と、(ii)既知の色度値との間の、全ての較正用発光体の色度距離のノルムを最小化することによって決定され、
較正係数の第1の組をn個の計測によって測定された信号に適用して、色度が最適化された三刺激値を得ること、較正係数の第2の組をこれらの信号に適用して、最適化された無彩色三刺激値を得ること、及び色度が最適化された三刺激値の無彩色値で、最適化された無彩色三刺激値を除算した比である係数を用いて、色度が最適化された三刺激値をスケーリングすることによる較正の後に、測色計で光を測定する。
【0006】
第2の態様によると、ヒト標準的観察者に基づく色空間の原色に関する光の測定を提供するための測色計が提供され、上記測色計は、請求項1〜13のいずれか1項の方法によって得ることができる較正係数の組を備える。この測色計は:
異なるスペクトル感度を有するn個の計測を提供し、ここでnは4以上の数である、センサ構成;並びに
較正係数の第1の組を上記センサ構成が提供する信号に適用して、色度が最適化された三刺激値の読み取り値を得るステップ、及び
較正係数の第2の組を上記センサ構成が提供する信号に適用して、最適化された無彩色三刺激値の読み取り値を得るステップ
によって、上記n個の計測から、ヒト標準的観察者に基づく色空間の3原色に関して光を測定するよう配設された、処理システム
を備え、上記処理システムは、色度が最適化された三刺激値の無彩色値で、最適化された無彩色三刺激値を除算した比の係数を用いて、上記ステップで得られた色度が最適化された三刺激値をスケーリングするよう、配設される。
【0007】
第3の態様によると、第1、第2の態様の測色計は、撮像センサを備える。各ピクセルは独立した撮像センサとして処理できるが、これによって空間的に拡張された光分布の測定が得られる。
【0008】
他の特徴は、本開示の方法及びシステムに固有のものであり、当業者には、以下の実施例の説明及び添付の図面から明らかになるであろう。
【0009】
測色計を較正する方法に関する概論
第1の態様によると、測色計を較正する方法が提供される。用語「測色計(colorimeter)」は一般に、光で照明された特定のスポットの色及び光度を測定するデバイスを指す。特に本方法に関しては、ヒト標準的観察者に基づく色空間の原色の読み取り値を提供する、ヒト標準的観察者の色覚を模倣するよう配設された測色計について考える。
【0010】
測色計は、異なるスペクトル感度を有するn個の計測を提供するセンサ構成を用いて光を測定するよう配設される。センサ構成は、光ダイオード、CCD又はCMOSセンサ等の、光を電気信号に変換する素子(光センサ)を備える。これらの光センサは例えば、光源から光センサへのビーム経路内に配置されたフィルタを備える。例えば、6つの素子を、これらに繋がる別個のビーム経路と共に備える光ダイオードアレイが設けられる。この例示的なセンサ構成では、各光ダイオード素子のビーム経路内に、1つの特定のスペクトルフィルタが設けられる。センサ構成を実現するための別の例は、ビーム経路内の各光センサの前に、三刺激値フィルタを配置することである。測色計のセンサ構成は、測色計が測定する光のn個の計測を提供し、ここでnは4以上の数である。
【0011】
計測(sensing)は、測定された光の特定の品質の測定を指し、例えば計測は、センサ構成内のセンサの応答に対応する。例えば1つの計測は、センサ構成のX
1センサの応答、例えば光がX
1フィルタを透過した後の光ダイオードの応答に対応し、別の計測は、(X
2フィルタを有する)X
2センサの応答に対応する。X
1フィルタ及びX
2フィルタは、異なるスペクトル領域における、ヒト標準的観察者の眼の錐体細胞の応答を模倣する。
【0012】
原色のうち、測色計が値を生成する1つの原色は、無彩色原色である。ヒト標準的観察者に基づく色空間の無彩色原色は、光の色ではなく光の強度をもたらす原色である。ヒト標準的観察者に基づく色空間の例は、X,Y,Z色空間(X、Y、Z応答は、ヒト標準的観察者の三刺激値であり、Yは、輝度として定義される無彩色原色である)、xyY色空間(無彩色原色としてYを有する)、CIELAB L*a*b*色空間(L*は「明度(lightness)」とも呼ばれる無彩色原色である)、又はCIELUV L*u*v*色空間(同一の無彩色原色L*を有する)である。
【0013】
第1のアクティビティでは、既知の3原色の値を有するm個の較正用発光体に対して、n個の計測のm個の組を生成し、ここでmはnより大きい数である。従って、合計m個の較正用発光体のうちのそれぞれの較正用発光体に関して、n個の計測が得られる。用語「較正用発光体(calibration illuminant)」は例えば、実際の測色計を照明するために使用される実際の光源を意味する。しかしながら、実際の測色計のコンピュータモデルを用いてコンピュータによって較正をシミュレートする実施形態において使用される模擬光源もまた、用語「較正用発光体」によって包含されるものとする。較正用発光体の3つの原色の値は、測定されるか又は事前に決定されるため、既知である。3原色の値が事前に決定される場合、較正用発光体は例えば、これらの原色及び/又は色度値を有する光を放出する前に較正される。
【0014】
第2のアクティビティでは、本明細書における較正係数の第1の組は更に、「色度が最適化された較正係数の組」を表し、これは上記計測によって測定された信号に対して適用した場合に、ヒト観察者に基づく色空間の、色度が最適化された原色の値をもたらす。用語「色度が最適化された較正係数の組(chromaticity‐optimized set of calibration factors)」及び用語「ヒト観察者に基づく色空間の、色度が最適化された原色の値(chromaticity‐optimized values of the primaries of the human‐observer‐based color space)」は、本文献において、測色計を較正するための方法から得られたこの較正係数の組が、上記計測によって測定された信号に対して適用した場合に、ヒト標準的観察者に基づく空間の原色の値を、全ての対応する較正用発光体に関する色度距離の最小のノルムを有する色度値と共にもたらすことを明確にするために使用される。
【0015】
色度が最適化された較正係数の組は、色度距離のノルムを最小化することによって決定される。色度距離とは、(i)較正係数の組をn個の計測によって測定された信号に適用することによって得られる色度値と、(ii)全ての較正用発光体に関する既知の色度値との間の距離である。特定の例を提供するために、色度距離のノルムは、例えば、較正用発光体に関して得られたこれらの色度距離の二乗平均平方根によって得られる、数学的ノルムである。このノルムは、測色計の測定誤差の絶対値と見做すことができる。
【0016】
色度距離のノルムを最小化する較正係数の組を選択することによって、上記較正係数を備える測色計の、色度値に関する測定誤差が低減される。例えば製造に関わる誤差により、複数のフィルタが不十分なフィルタ機能しか提供しない場合、このような不足を、色度が最適化された較正係数の組によって、上記最小化の結果として補償できる。
【0017】
この較正係数の組の選択は、例えば、非線形最適化アルゴリズム等の反復的数値演算法によって達成される。このような方法は、色度距離のノルムが最小となるまで可変較正係数の組を変化させる。あるいは、色度距離のノルムの最小化は、公知のラグランジュ法等の分析的数値演算法を用いて達成できる。
【0018】
較正係数の組の関数としてのこのような色度距離の決定の例を以下に挙げる。
【0019】
較正用発光体i(iは1〜mの数であり、mは較正用発光体の個数である)を測定することによって得られる6つの計測の組は、ベクトルs
iによって与えられ、各ベクトル成分は、発光体iが発生させた測定信号を表す。
【0020】
【数1】
【0021】
計測X
1i,LC、X
2i,LC、Y
i,LC、Z
i,LC、K
i,LC、L
i,LCはそれぞれ、特定の較正用発光体iに関する、(X三刺激値応答をもたらす)X
1フィルタ及びX
2フィルタ、Y、Z三刺激値フィルタ、並びに2つの追加の補償フィルタK、Lによって得られた計測を表す。M
x/yは較正係数の組であり、この例では較正係数a
11〜a
36を有する3×6行列である。
【0022】
【数2】
【0023】
較正係数の組M
x/yは、発光体iに関する原色の値、即ちX
i、Y
i、Z
iに変換される。
【0024】
【数3】
【0025】
色度値は、以下の式によってこれらの原色の値の関数として与えられる。
【0026】
【数4】
【0027】
ここでx
cami+y
cami+z
cami=1である。色度値z
camiは他の2つの色度値に左右され、この例ではx
cami、y
camiのみが考慮される。
【0028】
較正用発光体iに関する6つの例示的な計測s
iの変換によって生成される色度x
cami、y
camiと、較正用発光体iの既知の色度x
ref i、y
ref iとの間の色度距離D
i,chromは、x
cami、y
camiを含むベクトルとx
ref i、y
ref iを含むベクトルとの間の距離によって与えられる。
【0029】
【数5】
【0030】
この色度距離D
i,chromは、例えばL
1又はL
2ノルムによって定義される。
【0031】
色度距離D
i,chromを決定した後、色度が最適化された較正係数の組を、上述のように例えば、全ての対応する較正用発光体に関して色度距離のノルムを最小化する較正係数の組を選択することによって決定する。較正係数の組を選択する際に、色度距離のノルムの例として二乗平均平方根を最小化する特定の例を、以下において更に説明する。
【0032】
第3のアクティビティでは、較正係数の第2の組(本明細書では更に、無彩色原色に関して最適化された較正係数の組と呼ぶ)を決定する。この較正係数の第2の組は、計測によって測定された信号に適用すると、無彩色原色の最適化された強度値をもたらす。用語「無彩色原色に関して最適化された(optimized with respect to the achromatic primary)」及び「無彩色原色の最適化された強度値(optimized intensity value of the achromatic primary)」もまた、本文献において、本方法から得られたこの較正係数の組が、上記計測によって測定された信号に対して適用した場合に、ヒト標準的観察者に基づく空間の原色の値を、全ての較正用発光体に関する無彩色距離の最小のノルム(これは以下で更に説明する)を有する無彩色原色と共にもたらすことを明確にするために使用される。
【0033】
無彩色原色に関して最適化された較正係数の組は、無彩色距離のノルムを最小化することによって決定される。無彩色距離は、(i)較正係数の組をn個の計測によって測定された信号に適用することによって得られる無彩色原色の値と、(ii)全ての較正用発光体に関する既知の無彩色原色の値との間の距離として定義される。特定の例を提供するために、この無彩色距離のノルムもまた、較正用発光体に関して得られたこれらの無彩色距離の二乗平均平方根等の、数学的ノルムである。無彩色距離のノルムもまた、測色計の測定誤差の絶対値と見做すことができる。
【0034】
従って上述のように、及び以下に説明するように、このような無彩色に関して最適化された較正係数の組の決定は例えば、上記無彩色距離のノルムを最小化する較正係数の組を選択することを含む。
【0035】
色度が最適化された較正係数の組の決定に関連して既に説明したように、この較正係数の組を選択することによって、無彩色原色に関して最適化されたこれらの較正係数を備える測色計の測定誤差が低減される。較正係数の組(選択される最適化された較正係数の組の関数である)はまた、例えば、無彩色距離のノルムが最小化されるように選択される。複数の較正用発光体に関して得られるこれらの無彩色距離のノルムの例として二乗平均平方根を最小化する特定の例を、以下において更に説明する。
【0036】
この較正係数の組の選択は、例えば非線形最適化アルゴリズム等の反復的数値演算法によって達成される。これらの方法は、色度距離のノルム又は無彩色距離のノルムが最小となるまで可変較正係数の組を変化させる。
【0037】
あるいは、色度距離のノルムを最小化する較正係数の組の選択に関連して上述したものと同様に、無彩色距離のノルムを最小化するこの較正係数の組は、例えば分析的数値演算法を用いて達成される。
【0038】
無彩色距離の決定の例を以下に説明する。上述の例で既に導入した、計測s
iによって測定された6つの信号は、行列M
Yによって表される較正係数の組によって、以下のように無彩色原色Y
0iに変換される。
【0039】
【数6】
【0040】
M
Yは、b
11〜b
36のエントリ(較正係数)を有する3×6行列である。
【0041】
【数7】
【0042】
この例ではX
0i、Z
0iは重複しており、従って上記変換は、以下の式によって示されるように、較正係数b
11〜b
16を有する1×6行列によっても達成できる。
【0043】
【数8】
【0044】
無彩色距離D
i,achrom、即ちY
0iと、較正係数iの既知の無彩色原色、即ちY
ref iとの間の距離は、以下の式によって与えられる。
【0045】
【数9】
【0046】
この差D
i,achromは、例えばL
1又はL
2ノルムによって定義される。
【0047】
色度距離D
i,chromを決定した後、無彩色原色に関して最適化された較正係数の組を、上述のように例えば、対応する較正用発光体に関して無彩色距離のノルムを最小化する較正係数の組を選択することによって決定する。
【0048】
無彩色距離のノルムを最小化する較正係数の組を選択するアクティビティと、色度距離のノルムを最小化する較正係数の組を選択するアクティビティとは、互いに独立して実施される。
【0049】
結果として得られた、色度が最適化された較正係数の組は、全ての較正用発光体の色度距離のノルムを最小化する較正係数の組に対応し、その一方で、結果として得られた、無彩色原色に関して最適化された較正係数の組は、全ての較正用発光体の無彩色距離のノルムを最小化する較正係数の組に対応する。
【0050】
これら2つの選択アクティビティを分離することによる1つの結果は、n個の計測によって測定された信号に対して色度が最適化された較正係数の組を適用することによって得られる、無彩色原色の強度値が、上記信号に対して無彩色原色に関して最適化された較正係数の組を適用することによって得られる無彩色原色の強度値とは異なるというものである。前者は、最適化された色度値を有する原色の値の組の一部であり、後者は、最適化された強度値それ自体である。
【0051】
上記選択アクティビティの実施は同時に、色度が最適化された較正係数の組も、無彩色原色に関して最適化された較正係数の組ももたらさない。無彩色原色(ある時は色度距離のノルムを最小化するよう選択された較正係数の組の関数として表現され、ある時は無彩色距離のノルムを最小化するよう選択された較正係数の組の関数として表現される)は、第1の選択アクティビティの一部にも、第2の選択アクティビティの一部にもなる。その結果、第1及び第2の選択アクティビティが満たすべきこれらの対立する基準の間の妥協が、無彩色原色に影響を与える較正係数の組の一部分に関して見いだされる。従ってこれら2つの較正係数の組はいずれも最適とならない。
【0052】
これら両方の較正係数の組によって、較正後に光を測定する際に、測色計は、色度において及び無彩色原色に関しての両方が最適化された読み取り値を提供できる。
【0053】
用語「読み取り値(reading)」は、3原色に関する光の最終的な測定値を指す。
【0054】
本方法によって得られる較正係数の2つの組は、(i)色度が最適化された較正係数の組、(ii)無彩色原色に関して最適化された較正係数の組である。測色計は、較正後に光を測定するよう配設される。また、異なる複数のフィルタを備える光ダイオードアレイといった測色計の機能要素を用いて上述のようなn個の計測を得るカメラは、上述の意味において測色計として理解されるものとする。
【0055】
測色計は、較正係数の2つの組によって、色度において及び無彩色原色に関しての両方が最適化された読み取り値を提供する。色度が最適化された較正係数の組により、測色計は、xyYヒト観察者に基づく色空間内の色度値xyの最適化された読み取り値を提供できる。
【0056】
上述の例では、計測s
iによって測定された信号に対して適用した場合に、最適化されたx/y色度値を有する、色度が最適化された較正係数。最適化された色度の読み取り値x/yは、較正係数の組を適用することによって得られた三刺激値の関数であるため、これらの三刺激値から得ることができる。
【0057】
【数10】
【0058】
無彩色原色に関して最適化された較正係数の組により、測色計は、例えばxyY色空間における無彩色原色の値Y、又はCIELAB若しくはCIELUV色空間におけるL*の、最適化された読み取り値を提供できる。
【0059】
較正用発光体を用いた照明によるn×m個の計測の生成に関する解説
上述の第1のアクティビティにおいて、既知の3原色の値を有するm個の較正用発光体に関して、n個の計測のm個の組が生成される。
【0060】
いくつかの実施形態では、測色計は、(上述の模擬較正用発光体とは対照的に)異なるスペクトルを有する実際の較正用発光体を用いて、別個に照明される。異なるスペクトルを有するこのような実際の較正用発光体は例えば、発光ダイオード(LED)、タングステンランプ、ハロゲンランプ、蛍光光源等である。しかしながら、用語「較正用発光体(calibration illuminant)」は、異なるスペクトルを有する光源全般に関する。従って、例えばその温度、又は発光体の発光構成部品の化学組成を調整することによって、異なるスペクトルの光を放出するように駆動される、単一の光源も、用語「較正用発光体」に包含される。複数の光源の異なる群が同時に光を放出する場合、これもまた「較正用発光体」と見做される。ここで測色計は複数の光源の異なる群によって別個に照明され、上記異なる群はそれぞれ、1つの較正用発光体に相当する。
【0061】
計算によるn個の計測のm個の組の生成に関する解説
いくつかの実施形態では、n個のセンサのスペクトル感度及び較正用発光体のスペクトル放出を測定することによって、n個の計測のm個の組を生成する。n個の計測が計算される。n個の計測は例えば、n個のセンサの測定されたスペクトル感度及び較正用発光体の測定されたスペクトル放出を用いて、センサ構成のコンピュータモデルを適用することによって計算される。
【0062】
基準分光計によって得られる較正用発光体の原色の既知の値に関する解説
上述のように、較正用発光体のヒト標準的観察者に基づく色空間の3原色の既知の値は、測定されるか又は事前に決定される。対応する無彩色原色の値及び/又はこれらの原色の色度値は例えば、色合わせ機能を用いて、測色計と、高品質分光計等の極めて精密な基準分光計とを照明して、原色の値を得ること、及び同時に同一の較正用発光体を測定することによって測定される。
【0063】
従って、測色計及び基準分光計は、同一の較正用発光体で照明され、これらの較正用発光体の既知の原色の値は、上記基準分光計を用いた各較正用発光体の光の測定によって得られる。
【0064】
較正後に光を測定してXYZ読み取り値を生成することに関する解説
上述のように、測色計で光を測定する際、色度が最適化された較正係数の組を、センサ構成が提供する、上記光から発生する信号に適用して、色度が最適化された原色の値を得る。無彩色原色に関して最適化された較正係数の組もこれら信号に適用して、最適化された無彩色原色の値を得る。
【0065】
これは例えば、色度が最適化された較正係数の組を表す上述の例の行列M
x/yに、計測によって測定された信号のベクトルsを乗算し、無彩色原色に関して最適化された較正係数の組を表す上述の例の行列M
yに、同一のベクトルsを乗算することによって実施される。
【0066】
【数11】
【0067】
【数12】
【0068】
計測によって測定された信号に対して、色度が最適化された較正係数の組M
x/yを適用することによって、色度について最適化された読み取り値x/yと共に原色の値が得られ、その一方で、無彩色原色M
Yに関して最適化された較正係数の組を適用することによって、無彩色原色に関して最適化された読み取り値Yが得られる。xyY色空間における最適化された読み取り値を得ることになり、かつx/y読み取り値が最適化された(X’,Y’,Z’)読み取り値に由来するものであった場合、これらx/y読み取り値とX読み取り値との組み合わせは既に、xyY色空間における所望の読み取り値となっている。
【0069】
例えば、最適化された色度値x/y及び最適化された無彩色原色Y(ここで、最適化された無彩色原色Yは「最適化された無彩色三刺激値(the optimized value of the achromatic tristimulus)も呼ばれる)を有する三刺激値(X,Y,Z)が、所望の読み取り値である場合、これら2つの読み取り値及び対応する較正係数を例えば以下のように用いて、これらX,Y,Z読み取り値を提供する。色度において及び無彩色原色に関しての両方が最適化された読み取り値を提供する。
【0070】
色度の最適化された読み取り値x/yは、無彩色原色の最適化された強度値Y
0及び色度が最適化された原色のうちの無彩色原色の強度値Y’を含む係数を用いてスケーリングされる。
【0071】
このスケーリングを実施することによって、色度が最適化されたこれら原色の値の色度値は不変のままとなり、これにより、色度が最適化された原色の値の色度値は、較正用発光体の既知の色度値に対して最小の色度距離を有したままとなる。従って、例えば三刺激色度値は、スケーリングに関わらず最適なままである。これは、3つの原色の値全てに等しく適用される、色度によって乗算される全ての係数、例えば以下に示す係数3が約分され、従って色度に何ら影響を及ぼさないという事実によって説明される。これは、三刺激値原色X、Y、Z及びこれらそれぞれの色度値x、yの例によって実証できる。
【0072】
【数13】
【0073】
このスケーリング係数は例えば、これら2つの原色の値f(Y
0,Y’)(色度が最適化された原色の読み取り値のうちの無彩色原色の読み取り値、及び最適化された無彩色原色の読み取り値)の関数である。このような例示的なスケーリング操作は数学的には以下のように表現される。
【0074】
【数14】
【0075】
この表現において、色度が最適化された原色の読み取り値X’、Y’、Z’を表すベクトルに、係数f(Y
0,Y’)を乗算して、測色計が生成する原色の最終的な読み取り値、即ちX
final、Y
final、Z
finalを得る。
【0076】
係数f(Y
0,Y’)は例えば、色度が最適化された原色の読み取り値(X’,Y’,Z’)と、最適化された無彩色原色Y
0の読み取り値との間の比、例えばY
0/Y’によって与えられ、これにより原色の最終的な読み取り値は以下によって与えられる。
【0077】
【数15】
【0078】
この例示的な比を用いてスケーリングを実施することによって、色度が最適化された無彩色原色Y’は、最適化された無彩色原色Y
0に変換され、ここで色度が最適化された原色の色度値X’、Y’、Z’は不変のままである。
【0079】
このスケーリングの結果は、色度において及び無彩色原色Yに関しての両方が最適化された、原色の最終的な読み取り値X、Y、Z(三刺激値)である。
【0080】
色度が最適化された較正係数の組を適用するだけでは、色度が最適化された較正係数の組が無彩色原色もシフトさせるため、無彩色原色Yの読み取り値は結果として最適でないものとなる。
【0081】
色度距離及び/又は無彩色距離に関する解説
いくつかの実施形態では、色度距離及び/又は無彩色距離は、ユークリッド距離である。一般的な表現では、上述の例から得られる色度差D
i,chromは以下によって与えられる。
【0082】
【数16】
【0083】
この色度距離は本実施形態ではユークリッド距離であり、以下の式によって与えられる。
【0084】
【数17】
【0085】
一般的な表現では、上述の例から得られる無彩色差D
i,achromは以下によって与えられる。
【0086】
【数18】
【0087】
この色度距離は本実施形態ではユークリッド距離であり、以下の式によって与えられる。
【0088】
【数19】
【0089】
色度距離及び/又は無彩色距離としてユークリッド距離を用いることにより、これらの距離はユークリッド空間内の距離に対応する。ユークリッド距離は正定値であり、即ち距離D
i,achrom及びD
i,chromに関して正の値しか発生しない。従って、無彩色距離又は色度距離のノルムとして二乗平均平方根を用いてこれらの距離を最小化する場合、二乗平均平方根は、色度距離又は無彩色距離を最小化することによってのみ最小化できる。全ての被加数が常に正であり、互いに相殺できないため、これは常に成り立つ。
【0090】
二乗平均平方根を最小化することによって色度距離及び無彩色距離を得ることに関する解説
いくつかの実施形態では、色度距離のノルムは、m個の較正用発光体に関して得られる色度距離の二乗平均平方根であり、及び/又は無彩色距離のノルムは、m個の較正用発光体に関して得られる無彩色距離の二乗平均平方根である。
【0091】
従って、この例における色度距離のノルムは、色度差D
i,chromの二乗平均平方根F
chromによって与えられ、これは以下のように表される:
【0092】
【数20】
【0093】
ここでmは、色度差D
i,chromが決定される較正用発光体の個数である。
【0094】
色度距離のノルムは、以下のように最小化される。
【0095】
【数21】
【0096】
この最小化は例えば、上述の反復的数値演算法を用いて実施される。このような反復的数値演算法は、二乗平均平方根の最小値が見られるまで、可変較正係数の組を反復的に変化させることを含む。適用可能な数値演算法の例は、ネルダー‐ミードアルゴリズム、又はパウエルアルゴリズム等のその他の非線形プログラミングアルゴリズムである。
【0097】
可変較正係数の上記変化のための開始値として、例えば過去に記憶された較正係数を使用できる。
【0098】
あるいは、較正係数の組に関する分析的解は、測定される計測の個数nが較正用発光体の個数mと等しい場合に決定できるため、選択される較正に関する問題の解である較正係数の組を、上記変化の開始値として使用できる。有利には、これらの開始値を決定する際、幅広いスペクトルを包含するn個の較正用発光体を選択する。
【0099】
計測によって測定された信号に色度が最適化された較正係数を適用することによって得られた、原色の色度値は、(i)較正係数を適用することによって得られた、原色の色度ではなく原色(X
cam i,Y
cam i,Z
cam i)そのものと、(ii)較正用発光体の既知の原色(X
ref i,Y
ref i,Z
ref i)との間の差を最小化することによって決定された原色の色度値からよりも、較正用発光体の既知の色度値からの残留偏差が小さい。
【0100】
このような差は、較正用発光体iに関して以下のように与えられる。
【0101】
【数22】
【0102】
従ってこれらの差の二乗平均平方根F
colorは、以下によって与えられる。
【0103】
【数23】
【0104】
色度が最適化された較正係数の組が、この二乗平均平方根F
colorによって決定されるとすると、計測によって測定された信号にこの組を適用することによって得られた原色に関する色度の読み取り値は一般に最適なものではない。
【0105】
あるいは、又は更に、無彩色距離のノルムは、m個の較正用発光体(mはnより大きい数である)に関して得られた無彩色距離の二乗平均平方根である。
【0106】
この無彩色距離D
i achromの二乗平均平方根F
achromは以下によって与えられる。
【0107】
【数24】
【0108】
ここでmは、無彩色差D
i achromが決定される較正用発光体の個数である。
【0109】
従って、上述のようにノルムを最小化することによって、無彩色原色に関して最適化された較正係数の組を得るための基準は、以下のように表される。
【0110】
【数25】
【0111】
この最小化は、例えば上述のような反復的数値演算法を用いて実施される。
【0112】
「限界及びペナルティ(limit and penalty)」に関する解説
いくつかの実施形態では、色度距離の二乗平均平方根の被加数は均一の重みを有するか、又は均一でない重みを有する、即ち被加数のうちの少なくとも1つが、別の被加数の重みよりも高い若しくは低い重みで重み付けされる。
【0113】
各被加数に関する重みを含む、色度距離の例示的な二乗平均平方根は、以下によって与えられる。
【0114】
【数26】
【0115】
ここでw
iは較正用発光体iの重みであり、D
i,chromはこの較正用発光体に関する色度距離である。
【0116】
重量が均一でない場合、重み付け係数が高くなればなるほど、特定の較正用発光体に関する色度距離が高くなり、反復的数値演算法又は変動法によってこの色度距離が優先される。従って、特定の較正用発光体に関する色度距離、又は複数の較正用発光体の特定の群に関する色度距離は、例えば、他の較正用発光体に関する色度距離を犠牲にして最小化されることになる。
【0117】
あるいは、又は更に、いくつかの実施形態では、無彩色距離の二乗平均平方根の被加数は、均一の重みを有するか、又は均一でない重みを有する、即ち被加数のうちの少なくとも1つが、他の被加数の重みよりも高い若しくは低い重みで重み付けされる。
【0118】
重み付けされた被加数による無彩色距離の例示的な二乗平均平方根は、以下によって与えられる。
【0119】
【数27】
【0120】
ここでw
iは較正用発光体iの重み付け係数であり、D
i,chromはこの較正用発光体に関する無彩色距離である
【0121】
均一な重み又は均一でない重みを有する被加数に対する反復的数値演算法又は変動法の挙動を合わせた、色度距離の二乗平均平方根に関する上述の考察は、無彩色距離の二乗平均平方根に関しても当てはまる。
【0122】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの色度距離及び/又は少なくとも1つの無彩色距離が、可変較正係数の組を変化させる際の標的値を所定のペナルティ距離だけ超過したことに応答して、上記少なくとも1つの超過した色度距離及び/又は少なくとも1つの超過した無彩色距離は、可変較正係数の組の後続の変動において、可変較正係数の組の以前の変動よりも高い重み付けを与えられ、ここで上記超過した色度距離及び/又は超過した無彩色距離は、このペナルティ距離を超過していない色度距離及び/又は無彩色距離よりも高い重み付けを与えられる。
【0123】
このペナルティ距離は、標的値からの所定の距離である。標的値は任意に選択できる(事前に決定できる)か、又は色度距離の二乗平均平方根若しくは無彩色距離の二乗平均平方根といった、色度距離若しくは無彩色距離の対応するノルムの瞬間値であってよい。
【0124】
早い段階において、多数の色度距離/無彩色距離に対してペナルティを与えると、標準的な非線形プログラミングアルゴリズムの数理的に不安定な挙動に繋がり得るため、この「限界及びペナルティ」機構は例えば、反復的数値演算法の複数回の「ウォームアップラン(warm up runs)」の後に適用される。
【0125】
無彩色又は色度距離のノルム、例えばこれらの距離の二乗平均平方根において、超過した色度距離/無彩色距離の重みを増加させることにより、上記超過した色度距離/無彩色距離は、最小化されるべき他の色度距離/無彩色距離を犠牲にして最小化される。
【0126】
しかしながら、この機能を適用した場合、色度距離/無彩色距離に関する全体として結果はより均一なものとなり、即ちペナルティ距離によって定義される標的値周辺の範囲内に収まる。
【0127】
同時に得られるn個の計測に関する解説
いくつかの実施形態では、センサ構成は、n個の計測を同時に提供するために、対応するn個の光センサに結合された、異なるスペクトル感度を有するn個のフィルタを備えるn個のフィルタ‐光センサを備える。
【0128】
フィルタ光センサは、光を電気信号に変換する、光ダイオード、電荷結合素子(CCD)又は相補型金属酸化膜半導体(CMOS)光センサといった光センサと、対応するフィルタとを備える。フィルタは例えば、X
1、X
2、Y又はZフィルタ等の色フィルタである。この実施形態では、少なくとも4つのフィルタを用いて少なくとも4個の計測を得る。
【0129】
これらn個のフィルタは例えば、測定される光に対面するよう、対応する光センサ上、即ち上記光のビーム経路内に配置される。例えば、6つのサブアレイを、これらに繋がる別個のビーム経路と共に備える光センサのアレイが設けられる。この例示的なセンサ構成では、各サブアレイのビーム経路内に異なるフィルタが設けられる。
【0130】
これらのフィルタは異なるスペクトル感度を有する。上述の効果に加えて、例えば、特定のスペクトル範囲において正確なフィルタ機能を提供するものの、他のスペクトル範囲においてはやや不正確である、フィルタの第1の組を使用できる。このフィルタの第1の組は例えば、第1のフィルタの組が不正確であるスペクトル範囲において正確なフィルタ機能を提供し、かつ第1のフィルタの組が正確なフィルタ機能を提供するスペクトル範囲においてやや不正確である、第2のフィルタの組によってサポートされる。
【0131】
CCD要素、CMOS要素又は光ダイオード等のn個の光センサに対面するn個の異なるフィルタを備えるセンサ構成によって、同一の光が測定されるため、少なくとも4つの計測、従って上記計測によって測定される対応する少なくとも4つの信号が同時に得られる。
【0132】
n個の計測の順次取得に関する解説
いくつかの実施形態では、センサ構成は、異なるスペクトル感度を有するn個の可動フィルタと、1つの光センサとを備え、これらフィルタはフィルタリング位置に順次移動して、n個の計測を順次提供する。
【0133】
センサ構成は例えば、CMOSセンサ等の1つの光センサと、この光センサへのビーム経路内に移動できるフィルタ構成とを備える。フィルタ構成は例えば10個のフィルタを有し、これらはフィルタリング位置へ、例えば光センサに繋がるビーム経路内へと移動する。従って、10個の計測を得るために、異なるフィルタがフィルタリング位置へと移動する10回の測定サイクルを実施しなければならない。
【0134】
単色カメラ
いくつかの実施形態では、空間的に拡張された光分布を測定するために配設された単色カメラの光センサを、光センサとして用いる。単色カメラは、例えば数百万のピクセルの光を同時に測定できる。使用される光センサは例えば、CCD又はCMOSセンサを備える。
【0135】
CCD又はCMOSセンサを光センサとして使用すると、これらは例えば光ダイオードアレイに比べて、暗電流等のノイズが少ない傾向があるため、有利である。
【0136】
例えばn個のフィルタをフィルタリング位置に順次移動させ、数百万のピクセルそれぞれに関して計測を測定することによって、n個の計測が得られる。本明細書に記載の方法によると、色度が最適化された較正係数の組及び無彩色原色に関して最適化された較正係数の組を、特定のスポット、例えばカメラ及び各フィルタが測定する光分布の中央のピクセルに関して決定できる。
【0137】
この特定のスポットに関して得られた、色度が最適化された較正係数及び無彩色原色に関して最適化された較正係数、並びにXYZ原色の値は、測色計によって生成される所望の読み取り値である。というのは、空間的光分布の各ピクセルは、色度が最適化された原色のセットを、最適化された無彩色原色と、色度が最適化された原色の無彩色原色とを含む係数によってスケーリングすることによって得られるためである。従って、光分布の特定のスポット、例えば光分布の中央の特定のピクセルに関して得られる較正係数を適用することによって、測定された空間的に拡張された光分布の各ピクセルのXYZ原色が得られる。
【0138】
あるいは、測定された拡張された光分布の各ピクセルに関して、較正係数の両方の組を得て、これを用いて、空間的に拡張された光分布の各ピクセルに関して、測色計によって生成された原色が得られる。
【0139】
較正用発光体としての狭帯域光源に関する解説
いくつかの実施形態では、較正用発光体のうちの少なくとも1つは、10nm〜50nmの範囲の半値全幅を有する波長分布を有する。
【0140】
このような較正用発光体の例は、発光ダイオード(LED)である。この範囲の半値全幅を有する較正用発光体を用いることによって、連続した半値全幅を有する複数の較正用発光体を測定でき、ここで波長分布の全てのピークは可視光の範囲、即ち360〜830nmの範囲内にある。可視光は、ヒト標準的観察者が知覚する光であり、従って、ヒト標準的観察者に基づく色空間の原色の値を生成する測色計を較正するために特に適している。これらの比較的狭帯域の光源に加えて、タングステンランプ等の広帯域光源も較正用発光体として使用できる。
【0141】
いくつかの実施形態では、較正用発光体の大半、又は場合によっては全ては、10nm〜50nmの範囲の半値全幅を有する。このような(比較的狭帯域の)波長分布を有する光を測定する場合、一般的な三刺激値フィルタは、正確でないフィルタ信号を生成する場合が多い。このような一般的な三刺激値が、較正対象の測色計のセンサ構成に実装されている場合、このような較正用発光体を較正用発光体として使用すると有利である。というのは、本明細書に記載の較正方法によって、色度が最適化された較正係数の組及び/又は無彩色原色に関して最適化された較正係数の組を、三刺激値フィルタを備えるセンサ構成によって得られた計測信号に事前に適用することによって、上記一般的な三刺激値フィルタの不正確なフィルタ信号が補償されるように、較正係数の組が選択されるためである。
【0142】
異なる複数の、ヒト標準的観察者に基づく色空間に対する、方法の適用に関する解説
いくつかの実施形態では、xyY、CIELAB又はCIELUV色空間に関して、色度において及び無彩色原色に関して最適化された読み取り値が得られる。
【0143】
色度が最適化された較正係数の組及び無彩色原色に関して最適化された較正係数の組を決定することによって、測色計は、ヒト標準的観察者に基づく色空間の色度において及び原色の無彩色原色に関して、最適化された読み取り値を生成できる。上述の例では、色空間xyYに関するこのような較正係数の決定について詳細に説明した。(i)xy及び(ii)Yに関する値は、(i)計測によって測定された信号に色度が最適化された較正係数の組を適用して、得られた三刺激値原色の関数として最適化された色度読み取り値を決定すること、及び(ii)計測によって測定された上記信号に、無彩色原色に関して最適化された較正係数の組を適用して、得られた無彩色原色を、上記無彩色原色に関する最適化された読み取り値として使用することによって得られた。
【0144】
更に、計測によって測定された信号に較正係数の組を適用することによって、色度において最適な読み取り値を有する三刺激値原色、及び無彩色原色に関する最適な読み取り値を、一括して得る方法、即ち上述のスケーリング操作について、説明した。
【0145】
しかしながら、較正係数によって測色計が、CIELAB原色L*a*b*又はCIELUV原色L*u*v*の最適化された読み取り値を生成できるようにする実施形態では、これらの原色に関連する色度値に関して色度距離が得られ、またこれらの色空間の無彩色原色に関して無彩色距離が得られる。
【0146】
測色計を較正する方法を適用することによって、CIELAB又はCIELUV原色に関する上述のような最適化された読み取り値を得る場合、計測によって測定された信号を、XYZ色空間の読み取り値からL*a*b*色空間又はL*u*v*色空間への変換において使用される基準白点、例えばXn、Yn、Znの光に対して、標準化しなければならない。
【0147】
色度距離は例えば、L*u*v*色空間の原色の値に関連する色度値を用いて決定する。L*u*v*‐色度が最適化された較正係数の組M
u'/V'によるX
i、Y
i、Z
iへの変換は例えばこの場合、以下によって与えられる。
【0148】
【数28】
【0149】
X
i、Y
i、Z
i関連色度値x
cam i、y
cam iから、L*、u*、v*関連色度値u’
cam i、v’
cam iへの、及びX
i、Y
i、Z
iからu’
cam i、v’
cam iへの数学的変換は、以下によって与えられる。
【0150】
【数29】
【0151】
【数30】
【0152】
L*、u*、v*関連色度値u’
ref i、v’
ref iへの各発光体iに関する色度距離は、以下によって与えられる。
【0153】
【数31】
【0154】
例えばこれらの色度距離の二乗平均平方根を最小化することによって得られた、色度が最適化された較正係数を、計測によって測定された信号に適用することによって、色度が最適化された三刺激値原色X’、Y’、Z’が得られる。この文脈において、「色度が最適化された(chromaticity‐optimized)」は、これら三刺激値X’、Y’、Z’のCIELUV色度値u’、v’の色度距離の二乗平均平方根が最小であるものの、これらの原色の三刺激値色度値x、yの色度距離の二乗平均平方根は最小でない場合があることを意味する。
【0155】
L*u*v*色空間の無彩色原色L*に関して最適化された較正係数の組を得るために、Y
0iを例えば、各数学的変換及び無彩色差:
【0156】
【数32】
【0157】
を適用することによって、L*
0iの関数として表現できる。
【0158】
これら無彩色差のノルム、例えばこれらの距離の二乗平均平方根を最小化することによって、無彩色原色に関して最適化された較正係数の組を決定する。
【0159】
2つの較正係数の組を決定した後、計測によって測定された信号に各較正係数の組を適用することによる較正の後に光を測定する際に、色空間L*u*v*の色度及び無彩色原色に関して最適化された読み取り値を得ることができ、これにより、色度値u*v*に関して最適化された三刺激値と、無彩色原色L*に関して最適化された三刺激値とを得られる。これらの三刺激値をL*、u*、v*読み取り値に変換することによって、色度値u*、v*及び無彩色原色値L*が最適であるL*u*v*読み取り値が得られる。
【0160】
L*及びu*v*の両方に関する最適値に対応する三刺激値を得なければならない場合、例えば上述のように、色度が最適化された三刺激値の無彩色原色を、最適化された無彩色原色Yを含有する係数を用いてスケーリングすることによって、複数の較正係数の組を併用できる。
【0161】
CIELUV色空間の原色L*、u*、v*と併せた上述のアクティビティはまた、同様の様式で原色L*、a*、b*に関する較正係数の組を決定するために適用できる。アクティビティは同一であるが、原色L*、a*、b*からその色度値a、bへの数学的変換は異なる。
【0162】
較正係数の組を備える測色計に関する解説
第2の態様によると、ヒト標準的観察者に基づく色空間の原色に関して光の値を測定するための測色計が提供される。この測色計は、上述のような測色計を較正するための方法によって得ることができる較正係数の組を備える。これは、上述の方法と数学的に同等の方法によって得られる較正係数が、保護が必要とされる目的物によって包含されることを意味する。例を提供するために、1を2で除算する方法によって得ることができる結果は0.5であり、2を4で除算する、数学的に同等の方法は、同一の結果をもたらす。較正係数の組は例えば、測色計の物理メモリ、例えば測色計のフラッシュメモリ等の不揮発性メモリに記憶され、篩較正係数を置換する。
【0163】
測色計は例えば、異なるスペクトル感度を有する光のn個の計測を提供するセンサ構成を備え、nは4以上の数である。
【0164】
センサ構成は例えば、n個の計測によって光を同時に測定するよう配設された、異なるスペクトル感度を有するn個の光センサ及びn個のフィルタの組み合わせを備える。これらのフィルタ光センサは例えば、光ダイオード、電荷結合デバイス(CCD)又は相補型金属酸化膜半導体(CMOS)センサといった、光を電気信号に変換する光センサと、フィルタとを含む。フィルタは例えば、測定される光に対面するよう、光センサ上、即ち上記光のビーム経路内に配置される。例えば、このようなCMOS又はCCDセンサのアレイ(ここで各CMOS又はCCDセンサは対応するフィルタに連結されている)を、センサ構成として設ける。
【0165】
他の例では、光センサ構成は、1つ又は複数の光センサのビーム経路内へと移動できるフィルタ構成を備え、ここで、フィルタを通過する光を測定するために設けられる光センサの個数は、フィルタ構成のフィルタの個数よりも少ない。フィルタ構成は例えば10個のフィルタを有し、これらはフィルタリング位置へ、例えばCCDセンサに繋がるビーム経路内へと移動する。このような例示的なセンサ構成を設ける場合、10個の計測を得るために、異なるフィルタがフィルタリング位置へと移動する10回の測定サイクルが必要となる。
【0166】
測色計は更に、n個の計測から、ヒト標準的観察者に基づく色空間の3原色に関する光の値を決定するよう配設された、処理システムを備える。従ってこの処理システムは、少なくとも4つの計測によって測定された信号を、色度が最適化された較正係数の組及び無彩色原色に関して最適化された較正係数の組等の、三刺激値に対してマッピングするよう配設される。
【0167】
処理システム自体は例えば、計測によって測定された信号を提供する少なくとも1つのインタフェースに接続された中央演算処理装置(CPU)と、上記CPUに接続された、較正係数が記憶された中央メモリとを備える。CPUは、以下において更に説明される方法を実施するようプログラムされる。あるいは処理ユニットは、行列操作を実施できる加算器及び乗算器回路のアレイ等の複数の集積回路、並びに除算器等の他の集積回路で置換される。
【0168】
処理システムは、以下のアクティビティ(i)、(ii)によって、ヒト標準的観察者に基づく色空間の3原色に関する光の値を決定するよう配設される。
【0169】
(i)色度が最適化された較正係数の組を、センサ構成が提供する、上記光から発生する信号に適用して、色度が最適化された原色の値を得ること。
【0170】
このアクティビティ(i)は例えば、色度が最適化された較正係数の組を表す行列M
x/yに、計測によって測定された信号のベクトルsを乗算することによって実施される。
【0171】
【数33】
【0172】
(ii)無彩色原色に関して最適化された較正係数の組を、センサ構成が提供する、上記光から発生する信号に適用して、無彩色原色の最適化された強度値を得ること。このアクティビティ(ii)は例えば、無彩色原色に関して最適化された較正係数の組を表す行列M
Yに、同一のベクトルsを乗算することによって実施される。
【0173】
【数34】
【0174】
ヒト標準的観察者に基づく色空間xyYの原色が、測色計によって得られる最適化された読み取り値として望まれる場合、x/yにおける最適化された読み取り値は、計測によって測定された信号に色度が最適化された較正係数の組を適用して、得られた色度が最適化された三刺激値(X’,Y’,Z’)の色度値を決定することによって得ることができる。Yにおける最適化された読み取り値はY
0である。従って読み取り値を、計測によって測定された信号sに、無彩色原色に関して最適化された較正係数の組を適用することによって、直接得ることができる。
【0175】
処理システムは、計測によって測定された信号に、これら2つの較正係数の組を一括して適用するよう配設してよい。
【0176】
従って処理システムは更に:(i)色度が最適化された値(X’,Y’,Z’)を、最適化された無彩色原色の読み取り値Y
0及び色度が最適化された原色(X’,Y’,Z’)の読み取り値のうちの無彩色原色の読み取り値Y’を含む係数でスケーリングすることによって、色度x/yにおいて及び無彩色原色Yに関しての両方が最適化された、原色の読み取り値を得るよう配設される。この係数は例えば上述のように、上述の無彩色原色Y’で除算した最適化された無彩色原色の読み取り値Y
0である。
【0177】
このスケーリングを実施することによって、第1の態様に関連して上述したように、色度が最適化されたこれら原色の読み取り値の色度値は不変のままとなる。このような例示的なスケーリング操作は、数学的に以下のように表現される。
【0178】
【数35】
【0179】
この例では、得られた読み取り値X
final、Y
final、Z
finalは、測色計が生成した原色X、Y、Zの読み取り値である。
【0180】
これより、添付の図面も参照しながら、本発明の例示的実施形態について説明する。