(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記アミノ酸は、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、フェニルアラニン、トリプトファン、チロシン、アスパラギン酸、ヒスチジン、アスパラギン、グルタミン酸、リジン、グルタミン、メチオニン、アルギニン、セリン、スレオニン、システイン、及びプロリンから選ばれる1種又は2種以上を含む、
ことを特徴とする請求項2に記載の陽極アルミニウム均染緩染助剤。
前記カルボン酸基含有の化合物は、酢酸、グリコール酸、プロピオン酸、アクリル酸、ぎ酸酢酸無水物、酒石酸、リンゴ酸、マロン酸、乳酸、クロトン酸、マレイン酸、オキサロ酢酸、コハク酸、1,3−グルタル酸、α−ケトグルタル酸、1−ヘキサン酸、1,4−アジピン酸、クエン酸、ヘプタン酸、1,5−ピメリン酸、安息香酸、1,2−フタル酸、1,3−フタル酸、1,4−フタル酸、サリチル酸、及びモノカルボン酸ポリマー又はポリカルボン酸ポリマーから選ばれる1種又は2種以上を含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の陽極アルミニウム均染緩染助剤。
前記スルホン酸基含有の化合物は、メチルスルホン酸、スルファミン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、タウリン、メルカプトプロパンスルホン酸、及びトリフルオロメタンスルホン酸から選ばれる1種又は2種以上を含み、
前記スルホン酸塩は、スルホン酸ナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、又はカルシウム塩を含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の陽極アルミニウム均染緩染助剤。
前記陽極アルミニウム均染緩染助剤の処理液において、前記第1の活性成分の濃度は0.01g/L〜200g/Lであり、前記第2の活性成分の濃度は0.5g/L〜400g/Lであり、前記補助添加剤の濃度は0.5g/L〜400g/Lである、
ことを特徴とする請求項7に記載の陽極アルミニウム均染緩染助剤の処理液。
前記処理液において、前記第1の活性成分の濃度は0.5g/L〜50g/Lであり、前記第2の活性成分の濃度は5g/L〜100g/Lであり、前記補助添加剤の濃度は5g/L〜100g/Lである、
ことを特徴とする請求項8に記載の陽極アルミニウム均染緩染助剤の処理液。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記の事情に鑑み、従来技術において、陽極酸化アルミニウムが染色工程に生じる局部的な色差又は表面ムラを防止し、陽極酸化膜の優れる機械特性と化学特性を両立させながら色差のない薄色の染色仕上げ加工を円滑に実現しにくい問題を解決するために、陽極アルミニウム均染緩染助剤を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の態様では、本発明は、カルボン酸基含有の化合物、カルボン酸塩、置換カルボン酸塩、カルボン酸無水物、アミノ酸塩、及びアミノ酸無水物から選ばれる1種又は2種以上を含む第1の活性成分と、スルホン酸基含有の化合物及び/又はスルホン酸塩を含む第2の活性成分と、pH安定剤、ブロッキング防止剤、及びスケール防止剤から選ばれる1種又は2種以上を含む補助添加剤とを含む、陽極アルミニウム均染緩染助剤を提供する。
【0008】
上記第1の活性成分は、陽極酸化膜を染色するときに、染色を徐行させる効果がある。このようにして、陽極アルミニウム酸化膜の厚さ(陽極アルミニウム膜の厚さが薄すぎると製品の機械的強度が不十分になりやすい)、又は染色時間(染色時間が短すぎると染色が不均一になりやすい)を減少させる必要がない。
【0009】
好ましくは、上記カルボン酸基含有の化合物は、カルボン酸及び/又は置換カルボン酸を含む。
【0010】
上記カルボン酸は、トリカルボン酸、ジカルボン酸、モノカルボン酸を含み、ここで、トリカルボン酸、ジカルボン酸、モノカルボン酸の染色を徐行させる効果はこの順に弱くなる。
【0011】
好ましくは、上記置換カルボン酸は、アミノ酸、ヒドロキシ酸、ハロゲン化酸、及び/又はカルボニル酸を含む。
【0012】
好ましくは、上記アミノ酸は、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、フェニルアラニン、トリプトファン、チロシン、アスパラギン酸、ヒスチジン、アスパラギン、グルタミン酸、リジン、グルタミン、メチオニン、アルギニン、セリン、スレオニン、システイン、及びプロリンから選ばれる1種又は2種以上を含む。
【0013】
好ましくは、上記カルボン酸基含有の化合物は、酢酸、グリコール酸、プロピオン酸、アクリル酸、ぎ酸酢酸無水物、酒石酸(2,3−ジヒドロキシブタン二酸)、リンゴ酸(2−ヒドロキシブタン二酸)、マロン酸(プロパン二酸)、乳酸(ヒドロキシプロパン酸)、クロトン酸(2−ブテン酸)、マレイン酸(cis−ブテン二酸)、オキサロ酢酸、コハク酸(1,2−ブタン二酸)、1,3−グルタル酸、α−ケトグルタル酸、1−ヘキサン酸、1,4−アジピン酸、クエン酸(2−ヒドロキシプロパン−1,2,3−トリカルボン酸)、ヘプタン酸、1,5−ピメリン酸、安息香酸、1,2−フタル酸、1,3−フタル酸、1,4−フタル酸、サリチル酸(2−ヒドロキシ安息香酸)、及びモノカルボン酸ポリマー又はポリカルボン酸ポリマーから選ばれる1種又は2種以上を含む。
【0014】
好ましくは、上記カルボン酸塩は、カルボン酸ナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、又はカルシウム塩を含み、上記置換カルボン酸塩は、置換カルボン酸ナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、又はカルシウム塩を含み、上記アミノ酸塩は、アミノ酸ナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、又はカルシウム塩を含む。
【0015】
上記第2の活性成分は、陽極アルミニウム製品の表面に残留した酸の除去に寄与し、陽極酸化槽における強酸の染料槽への混入を防止するとともに、レベリングにも寄与するため、その後染色の均一度を向上させ、かつ適当な酸性度を付与することができる。
【0016】
好ましくは、上記スルホン酸基含有の化合物は、メチルスルホン酸、スルファミン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、タウリン、メルカプトプロパンスルホン酸、及びトリフルオロメタンスルホン酸から選ばれる1種又は2種以上を含む。
【0017】
好ましくは、上記スルホン酸塩は、スルホン酸ナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、又はカルシウム塩を含む。
【0018】
第1の活性成分、第2の活性成分、及び補助添加剤によって、本発明に係る陽極アルミニウム均染緩染助剤は、粉末製剤又は液体製剤であってもよい。
【0019】
さらに、上記陽極アルミニウム均染緩染助剤は水を含む。すなわち、粉末製剤又は液体製剤を水と混合して混合系を形成することにより、処理液を得る。上記混合系において、上記第1の活性成分の濃度は0.01g/L〜200g/Lであり、上記第2の活性成分の濃度は0.5g/L〜400g/Lであり、上記補助添加剤の濃度は0.5g/L〜400g/Lである。
【0020】
好ましくは、上記混合系において、上記第1の活性成分の濃度は0.5g/L〜50g/Lであり、上記第2の活性成分の濃度は5g/L〜100g/Lであり、上記補助添加剤の濃度は5g/L〜100g/Lである。
【0021】
本発明の第1の態様に係る陽極アルミニウム均染緩染助剤は、第1の活性成分と、第2の活性成分と、補助添加剤との間の相乗効果により、良好な均染緩染効果が得られ、陽極アルミニウム膜の厚さ、染料濃度、又は染色時間を減少させる必要なく、陽極アルミニウム酸化膜の良好な機械的強度を保持しつつ、異なるバッチの製品間の色差を減少させ、さらに均一な染色の効果を達成することができる。
【0022】
第2の態様では、本発明は、本発明の第1の態様に係る陽極アルミニウム均染緩染助剤を水に加え、均一に混合して得られる陽極アルミニウム均染緩染助剤の処理液を提供する。
【0023】
好ましくは、上記処理液において、上記第1の活性成分の濃度は0.01g/L〜200g/Lであり、上記第2の活性成分の濃度は0.5g/L〜400g/Lであり、上記補助添加剤の濃度は0.5g/L〜400g/Lである。
【0024】
より好ましくは、上記処理液において、上記第1の活性成分の濃度は0.5g/L〜50g/Lであり、上記第2の活性成分の濃度は5g/L〜100g/Lであり、上記補助添加剤の濃度は5g/L〜100g/Lである。
【0025】
さらに好ましくは、上記処理液において、上記第1の活性成分の濃度は6g/Lであり、上記第2の活性成分の濃度は27g/Lであり、上記補助添加剤の濃度は27g/Lである。
【0026】
第3の態様では、本発明は、陽極酸化処理された陽極アルミニウムを本発明の第2の態様に係る陽極アルミニウム均染緩染助剤の処理液に投入して、5℃〜90℃で1分間〜60分間処理した後、処理液から取り出して洗浄するステップと、洗浄した陽極アルミニウムに対して染色及び封孔処理を行うステップと、を含む陽極アルミニウム均染緩染処理プロセスを提供する。
【0027】
上記陽極アルミニウム均染緩染助剤の処理液により上記陽極アルミニウムを処理するプロセスは、具体的に、20℃〜50℃で3分間〜8分間処理することが好ましく、25℃で5分間処理することはより好ましい。
【0028】
好ましくは、上記陽極アルミニウム均染緩染助剤の処理液は、pHが0.5〜7.0に調整され、より好ましくは、pHが0.5〜4.0に調整され、さらに好ましくは、pHが2.0〜2.5に調整される。
【0029】
陽極アルミニウム製品は、本発明に係る陽極アルミニウム均染緩染助剤で処理された後、染色活性度が100%未満になり、すなたち、緩染効果があることを示す。染色活性度の計算式は、下記に示される。
【発明の効果】
【0031】
本発明に係る陽極アルミニウム均染緩染助剤及びそれを使用する均染緩染処理プロセスにより、陽極酸化されたアルミニウム材に対して染色予備処理を行うことで、下記の(1)〜(5)に示すような有益な効果をもたらす。
【0032】
(1)アルミニウム製品の表面に付与する均染と緩染効果により、陽極アルミニウムの染色プロセスがコントロールしやすくなり、すなわち、下記の(1−1)〜(1−3)の効果をもたらす。
【0033】
(1−1)このような染色予備処理は、陽極酸化又は染色のプロセスフローを変更する必要がないことを最大の利点とし、このようにして、製品の設計時にアルミニウム陽極酸化膜の厚みに制限がないので、その後染色するときにアルミニウム陽極酸化膜厚の染色均一性への影響を心配する必要がない。この利点により、当該陽極アルミニウム均染緩染助剤は、製品が均一な薄色に染色されるとともに、酸化膜が十分な機械的特性を保持するための厚さに形成される必要がある場合に特に有用である。
【0034】
(1−2)生産ラインで本発明に係る陽極アルミニウム均染緩染助剤を使用して予備処理を行う場合、得られる異なるバッチの製品間の色差が小さくなる。
【0035】
(1−3)陽極酸化の過程中に、アルミニウム製品の表面に電流密度分布の不均一により陽極酸化膜厚の違いを生じさせる場合が多い。陽極酸化膜厚の違いによって染色時に起こる色差は大きすぎると表面ムラを発生させるが、本発明に係る陽極アルミニウム均染緩染助剤による染色仕上げ加工は、この問題を良好に解決することができる。
【0036】
(2)本発明に係る陽極アルミニウム均染緩染助剤の組成及びプロセスにより陽極酸化されたアルミニウム材に対して染色予備処理を行う場合、その後封孔処理に影響を与えない。
【0037】
(3)本発明に係る陽極アルミニウム均染緩染処理プロセスで処理された陽極アルミニウム製品の日光照射による退色度合は、処理されない陽極アルミニウム製品と比較して、大した差はなかった。
【0038】
(4)本発明に係る陽極アルミニウム均染緩染処理プロセスは、従来の生産ラインに容易に適用されるので、薄色に染色するとともに一定の酸化膜厚を保持する必要がある陽極アルミニウムの製造に特に有用である。
【0039】
(5)本発明に係る陽極アルミニウム均染緩染助剤の組成は、アルミニウム材の種類に制限がないので、様々な種類のアルミニウム材に適用でき、その組成は無リン組成であるため環境にも優しい。
【0040】
本発明の実施例の有意な効果について、以下に説明する。それらの効果は、明細書等の記載から自明又は本発明の実施例を実施することによって知られる。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下、本発明の好適な実施例について詳しく説明するが、本発明の思想を逸脱しないことを前提とする場合、当業者が、複数の変形及び変更をしても、本発明の保護範囲に属するものであると理解されるべきである。
【0042】
以下、いくつかの実施例により本発明の実施形態をさらに説明する。本発明は、下記の具体的な実施例に限定されるものではない。本発明の特許請求の範囲による保護範囲を逸脱しない範囲で、適当に変更して実施され得る。
【0043】
なお、本発明の下記実施例に使用されるすべてのアルミニウムシートは、サイズが50mm×30mm(長×幅)である。
【0044】
本発明の下記実施例に使用されるすべての染料は奥野製薬工業株式会社製のものであり、当該会社の製品に限定されるものではないことは当然である。
【0045】
本発明の下記実施例に係るすべての陽極酸化は以下のプロセスにより行い、本発明を実施する場合に陽極酸化プロセスは下記のプロセスに限定されるものではないことは当然である。
【0046】
アルミニウムシート→洗浄→スマット除去→陽極酸化
洗浄プロセス:「Ram Clean 105(品番)」、50g/L、60℃洗浄5分間。
【0047】
スマット除去プロセス:「Ram DSM30(品番)」、50mL/L、室温30秒。
【0048】
陽極酸化プロセス:「98%H
2SO
4」、220g/L、18℃、電圧14V、酸化時間10分間〜30分間、(酸化膜厚5μm〜20μm)。
【0049】
<実施例1>
陽極アルミニウム均染緩染助剤の調製方法は、下記に示される。
【0050】
クエン酸ナトリウム100g、スルファミン酸450g、及びpH安定剤450gを均一に混合し、陽極アルミニウム均染緩染助剤の粉末製剤1kgを調製した。
【0051】
<実施例2>
陽極アルミニウム均染緩染助剤の処理液の調製方法は、下記に示される。
【0052】
上記実施例1で調製される陽極アルミニウム均染緩染助剤の粉末製剤を脱イオン水に加え、濃度がそれぞれ0.5g/L、1.5g/L、3g/L、及び6g/L(第1の活性成分であるクエン酸ナトリウムの濃度を基準とする)である陽極アルミニウム均染緩染助剤の処理液を調製した。
【0053】
<実施例3>
陽極アルミニウム均染緩染処理プロセスは、下記のステップ(1)〜(3)を含む。
【0054】
(1)型番が5052のアルミニウム材試験片4枚を陽極酸化して水で洗浄した後、それぞれ本発明の実施例2で調製される異なる濃度の陽極アルミニウム均染緩染助剤の処理液(25℃)に5分間浸漬し、その後、処理液から取り出して脱イオン水で洗浄した。ここで、アルミニウム材試験片の陽極酸化時間は20分間であり、酸化膜厚は約15μmである。
【0055】
(2)続いて、異なる濃度の陽極アルミニウム均染緩染助剤の処理液で処理されたアルミニウムシートを染色液に投入して5分間染色した後、アルミニウムシートを取り出して洗浄した。ここで、使用される染料は、奥野製薬工業株式会社製の黒色染料「TAC Black SLH415AN」であり、濃度が10g/Lである。染料槽の温度は25℃に調整される。
【0056】
(3)最後に、洗浄したアルミニウムシートに対して、染色及び封孔処理を行った。
【0057】
異なる濃度に調製される陽極アルミニウム均染緩染助剤の処理液による均染、緩染効果(同じ染料を使用して、pH、処理時間、温度などの操作条件も同様である)を調査するために、上記実施例3のステップ(2)で染色したアルミニウムシートの中央位置の色調Lab値を測定した。各濃度の均染緩染助剤で処理された試料のLab値を空試料のLab値と比較して計算した差ΔEは、試料間の色の濃淡の相違を示す。ΔE値の計算式は、下記に示される。
【0059】
式中、L
1、a
1、b
1はそれぞれ空試料のL、a、b値を示し、L
i、a
i、b
iはそれぞれ試料のL、a、b値を示す。
【0060】
その後、染色活性度を測定した。染色活性度は、染色した陽極アルミニウム試験片の色合いを示し、その数値が大きいほど、色合いが濃くなる。また、染色活性度数値の大きさは、均染緩染助剤による染色予備処理が染色速度を効果的に緩めるか否かを判定するためにも使用され得る。
【0061】
染色活性度の測定方法は下記に示される。
【0062】
ビーカーに濃度50g/LのNaOH50mLを加え50℃まで加熱した後、染色した試験片を入れて、その皮膜を取り除いた。皮膜が完全に取り除かれた後、ペンチで試験片を取り出した。試験片、ペンチ、温度計に付着される液体をイオン交換水で洗浄してビーカーに収集した。ビーカー内の液体を撹拌しながら恒温(50℃)状態で10分間放置した後。その後、5分間以内に25℃まで冷却し、100mLのメスフラスコに移し入れ定容とし、30分間放置した後、2時間以内に吸光度(波長約568nm)を測定した。
【0063】
実験の測定結果は表1に示される。表1における均染緩染助剤の濃度が0g/Lの試料を空試料とする。空試料は、均染緩染助剤溶液に浸漬されない以外に、他の実験プロセスが同様に行われた陽極アルミニウム試料であり、染色された後、その色差、活性度などを測定した。
【0065】
表1の結果によると、濃度が0.5g/L〜6g/Lの陽極アルミニウム均染緩染助剤で染色予備処理された試料は、濃度の増加とともに空試料との差ΔEが増大し、同様の染色条件において均染緩染助剤の予備処理により明らかな緩染効果を示すことが分かる。同様の結論は染色活性度の測定結果によっても確認された。すなわち、均染緩染助剤で予備処理されない試料は、染色した色が最も濃いため活性度も最も高い一方、均染緩染助剤の濃度の増加とともに、染色した試料の色が薄くなり、活性度も低くなる。しかしながら、均染緩染助剤の濃度が3g/L〜6g/Lになると、色の薄くなる傾向が弱くなるので、均染緩染助剤はこの濃度範囲で緩染効果が最大値に達することが示される。
【0066】
<実施例4>
本実施例は、陽極アルミニウム均染緩染助剤の組成における第1の活性成分が異なる種類の単一の有機カルボン酸である場合の均染、緩染効果を調査した。
【0067】
陽極アルミニウム均染緩染助剤の処理液の調製方法は、下記に示される。
【0068】
クエン酸100g、スルファミン酸450g、及びpH安定剤450gを均一に混合し、陽極アルミニウム均染緩染助剤の粉末製剤1kgを調製した。その後、得られる粉末製剤を脱イオン水に加え、濃度が6g/L(第1の活性成分であるクエン酸の濃度を基準とする)である陽極アルミニウム均染緩染助剤の処理液を調製した。
【0069】
リンゴ酸、酒石酸、クロトン酸、乳酸のそれぞれを第1の活性成分として、上記と同様にして第1の活性成分がそれぞれリンゴ酸、酒石酸、クロトン酸、乳酸であり、濃度が6g/L(第1の活性成分の濃度を基準とする)である陽極アルミニウム均染緩染助剤の処理液を調製した。
【0070】
本実施例で調製されたリンゴ酸、酒石酸、クロトン酸、乳酸をそれぞれ第1の活性成分とする陽極アルミニウム均染緩染助剤の処理液で、上記と同様の操作条件(25℃で5分間浸漬する)において、陽極アルミニウム試験片(アルミニウム材型番5052)に対して染色予備処理を行った後、濃度が10g/Lの黒色染料「TAC Black SLH415AN」で上記と同様の条件(55℃)において15分間染色した。完成品の色調Lab値を測定した。本実施例で使用される陽極アルミニウム試験片の酸化膜厚は約15μmである。実験結果は表2に示される。表2における「空白」とは、空試料のことを指す。空試料は、均染緩染助剤溶液に浸漬されない以外に、他の実験プロセスが同様に行われた陽極アルミニウム試料であり、染色された後、その色差などを測定した。
【0072】
表2の結果によると、本実施例で測定される5種類の有機カルボン酸は、いずれも緩染効果を持つことが示される。また、異なる有機カルボン酸を同様の濃度で均染緩染助剤に添加して染色した後、空試料の色調と比較して異なるΔEを得る。そのΔEは、大きいほど色の濃淡の相違も大きくなる。実験結果によると、カルボン酸の緩染効果はそのカルボン酸の種類によって明らかに異なるが示される。そのうち、クエン酸を第1の活性成分とする組成で染色された試料は、色が最も薄く、測定したLab値と空試料との色差ΔEも最も大きいため、緩染効果は、クエン酸が最も強く、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、クロトン酸、乳酸の順に弱くなる。すなわちトリカルボン酸、ジカルボン酸、モノカルボン酸の染色徐行の効果がこの順に弱くなる。
【0073】
<実施例5>
本実施例は、陽極アルミニウム均染緩染助剤の組成における第1の活性成分が二成分混合物である場合の均染、緩染効果を調査した。
【0074】
陽極アルミニウム均染緩染助剤の処理液の調製方法は、下記に示される。
【0075】
合計質量100gのクエン酸及び酒石酸をクエン酸:酒石酸=100:0、70:30、30:70、0:100の質量比で、それぞれスルファミン酸450g及びpH安定剤450gと均一に混合し、陽極アルミニウム均染緩染助剤の粉末製剤を調製した。その後、得られる粉末製剤をそれぞれ脱イオン水に加え、クエン酸、クエン酸:酒石酸(70:30)、クエン酸:酒石酸(30:70)、酒石酸をそれぞれ第1の活性成分とし、濃度が6g/L(第1の活性成分の濃度を基準とする)である陽極アルミニウム均染緩染助剤の処理液をそれぞれ調製した。
【0076】
本実施例において異なる比率でクエン酸及び酒石酸を添加した陽極アルミニウム均染緩染助剤の処理液で、上記と同様の操作条件(25℃で5分間浸漬する)において陽極アルミニウム試験片(アルミニウム材型番5052)に対して染色予備処理(すなわち、染色仕上げ加工)を行った後、濃度が10g/Lの黒色染料「TAC Black SLH415AN」で上記と同様の条件(55℃)において5分間染色した。完成品の色調Lab値及び染色活性度を測定した。本実施例の空試料は、染色予備処理されない陽極アルミニウム試験片(アルミニウム材型番5052)を、濃度が10g/Lの黒色染料「TAC Black SLH415AN」で上記と同様の条件(55℃)において5分間直接染色して得られたものである。その空試料の色調Lab値及び染色活性度を測定した。本実施例で使用される陽極アルミニウム試験片の酸化膜厚は約15μmである。実験結果は表3に示される。
【0078】
表3の結果によると、2種類の有機カルボン酸(クエン酸及び酒石酸)を活性成分として添加した場合、緩染効率が有機カルボン酸の濃度と直線関係を示す。また、クエン酸の比例が比較的高い場合、空試料に対するΔEがより大きく活性度がより低いことから、緩染効果が比較的強いことを示す。この結論は実施例4の結果と同様である。
【0079】
<実施例6>
本実施例は、陽極アルミニウム均染緩染助剤の組成における第2の活性成分が異なる化合物である場合、又は第1の活性成分と第2の活性成分と補助添加剤の比率が異なる場合の均染、緩染効果を調査した。
【0080】
陽極アルミニウム均染緩染助剤の処理液の調製方法は、下記に示される。
【0081】
組成A:合計質量100gのクエン酸ナトリウムを、スルファミン酸450g及びpH安定剤450gと均一に混合し、陽極アルミニウム均染緩染助剤の粉末製剤を調製した。その後、得られる粉末製剤を脱イオン水に加え、濃度が6g/L(第1の活性成分の濃度を基準とする)である陽極アルミニウム均染緩染助剤の処理液を調製した。
【0082】
組成B:合計質量100gのクエン酸ナトリウムを、ベンゼンスルホン酸ナトリウム450g及びpH安定剤450gと均一に混合し、陽極アルミニウム均染緩染助剤の粉末製剤を調製した。その後、得られる粉末製剤を脱イオン水に加え、濃度が6g/L(第1の活性成分の濃度を基準とする)である陽極アルミニウム均染緩染助剤の処理液を調製した。
【0083】
組成C:合計質量100gのクエン酸ナトリウムを、スルファミン酸550g及びpH安定剤350gと均一に混合し、陽極アルミニウム均染緩染助剤の粉末製剤を調製した。その後、得られる粉末製剤を脱イオン水に加え、濃度が6g/L(第1の活性成分の濃度を基準とする)である陽極アルミニウム均染緩染助剤の処理液を調製した。
【0084】
上記組成A〜組成Cで調製される均染緩染助剤の処理液のpHは、約2.0である。
【0085】
本実施例で調製された組成A〜組成Cの陽極アルミニウム均染緩染助剤の処理液で、上記と同様の操作条件(25℃で5分間浸漬する)において陽極アルミニウム試験片(アルミニウム材型番5052)に対して染色予備処理(すなわち、染色仕上げ加工)を行った後、濃度が10g/Lの黒色染料「TAC Black SLH415AN」で上記と同様の条件(55℃)において5分間染色した。完成品の色調Lab値及び染色活性度を測定した。本実施例の空試料は、染色予備処理されない陽極アルミニウム試験片(アルミニウム材型番5052)を、濃度が10g/Lの黒色染料「TAC Black SLH415AN」で上記と同様の条件(25℃、5分間)において直接染色して得られたものである。その空試料の色調Lab値及び染色活性度を測定した。本実施例で使用される陽極アルミニウム試験片の酸化膜厚は約18μmである。実験結果は表4に示される。
【0087】
表4の結果によると、異なる第2の活性成分の使用は、緩染効果に一定の影響を与える。組成AはΔEが比較的大きく活性度がより低いことから、スルファミン酸はベンゼンスルホン酸ナトリウムより優れる緩染効果を持つことを示す。一方、第2の活性成分がスルファミン酸である場合、その添加量を微調整しても緩染効果に大きな影響を与えない。
【0088】
<実施例7>
本実施例は、染色予備処理が異なる種類の染料に適用される場合の均染、緩染効果を調査した。
【0089】
陽極アルミニウム均染緩染処理プロセスは、下記のステップ(1)〜(3)を含む。
【0090】
(1)型番が5052のアルミニウム材試験片4枚を陽極酸化して水で洗浄した後、それぞれ本発明の実施例2で調製される濃度6g/Lの陽極アルミニウム均染緩染助剤の処理液(25℃)に5分間浸漬し、その後、処理液から取り出して脱イオン水で洗浄した。ここで、アルミニウム材試験片の陽極酸化時間は20分間であり、酸化膜厚は約15μmである。
【0091】
(2)続いて、処理されたアルミニウムシートをそれぞれ赤色、黄色、青色、黒色染料の染料槽に投入して5分間染色した後、アルミニウムシートを取り出して洗浄した。ここで、使用される染料は、奥野製薬工業株式会社製の染料であり、濃度が10g/Lである。染料槽の温度は25℃に調整される。
【0092】
(3)最後に、洗浄したアルミニウムシートに対して、染色及び封孔処理を行った。
【0093】
同時に、本実施例の陽極アルミニウム均染緩染助剤の処理液で染色予備処理されない酸化アルミニウムシートを空試料として試験を行った。
【0094】
染色した完成品の色調Lab値及び染色活性度を測定した。実験結果は表5に示される。表5における「空白」とは、空試料(合計4枚、異なる染料にそれぞれ対応する)のことを指す。空試料は、均染緩染助剤溶液に浸漬されない以外に、他の実験プロセスが同様に行われた陽極アルミニウム試料であり、4種類の染料(赤/黄/青/黒)のいずれかで染色された後、その色差、活性度などを測定した。
【0096】
表5の結果によると、均染緩染助剤の組成は、4種類の色の染料による陽極アルミニウム試験片の染色に緩染効果がある。しかしながら、均染緩染助剤の使用濃度が6g/Lである場合、染料の種類によって活性度の減少量が異なることから、色によって緩染効果が異なることを示す。そのうち、黒色顔料(TAC Black SLH415AN)の活性度が最も低いので、均染緩染助剤の黒色顔料に対する緩染効果は最も明らかであることを示す。
【0097】
<実施例8>
本実施例は、陽極アルミニウム均染緩染助剤の処理液により異なるpHで行う染色仕上げ予備処理の染色への影響を調査した。
【0098】
本発明の実施例1で調製された陽極アルミニウム均染緩染助剤の粉末製剤を、濃度6g/Lと15g/L(第1の活性成分の濃度を基準とする)の処理液になるように希釈した。希釈された処理液のpHをそれぞれ1.5と2.5に調整した後、25℃で陽極酸化されたアルミニウムシート(型番5052、酸化膜厚約15μm)を上記処理液に5分間浸漬し、その後、処理液から取り出して脱イオン水で洗浄した。続いて、アルミニウムシートを濃度10g/Lの黒色染料(TAC Black SLH415AN)に浸漬し、上記と同様な条件(55℃、15分間染色)で染色した。最後に、完成品の色調Lab値及び染色活性度を測定した。実験結果は表6に示される。表6における「空白」とは、空試料のことを指す。空試料は、均染緩染助剤溶液に浸漬されない以外に、他の実験プロセスが同様に行われた陽極アルミニウム試料であり、染色された後、その色差、活性度などを測定した。
【0100】
表6の結果によると、処理液のpH値は染色に大きな影響を与える。pHが1.5である場合、処理液の濃度(6g/L又は15g/L)を問わず、活性度が40%〜44%程度まで低下するが、pHが2.5まで増大すると、両濃度の処理液は、いずれも活性度が26%〜28%程度まで低下するので、緩染効果が類似する。その結果によると、pHが比較的高い場合、均染緩染助剤の緩染効果はより明らかであることを示す。
【0101】
<実施例9>
本実施例は、陽極アルミニウム均染緩染助剤の処理液により異なる浸漬時間で陽極アルミニウムワークに対して行う染色仕上げ予備処理の染色への影響を調査した。
【0102】
本発明の実施例1で調製された陽極アルミニウム均染緩染助剤の粉末製剤を濃度6g/L(第1の活性成分の濃度を基準とする)の処理液になるように希釈した。希釈された処理液のpHを2.0に調整した後、45℃で陽極酸化されたアルミニウムシート(品番5052、酸化膜厚約15μm)を上記処理液にそれぞれ2分間、5分間、8分間浸漬し、その後、処理液から取り出して脱イオン水で洗浄した。続いて、アルミニウムシートを濃度10g/Lの黒色染料(TAC Black SLH415AN)に浸漬し、上記と同様な条件(55℃、15分間染色)で染色した。最後に、完成品の色調Lab値及び染色活性度を測定した。実験結果は表7に示される。表7における「空白」とは、空試料のことを指す。空試料は、均染緩染助剤溶液に浸漬されない以外に、他の実験プロセスが同様に行われた陽極アルミニウム試料であり、染色された後、その色差、活性度などを測定した。
【0104】
表7の結果によると、浸漬時間の増加とともにΔEが大きくなるが、活性度が小さくなることから、均染緩染助剤に浸漬される時間が長いほど、染色予備処理による陽極酸化されたアルミニウムシートの緩染効果が強くなることを示す。
【0105】
<実施例10>
本実施例は、陽極アルミニウム均染緩染助剤の処理液により異なる温度で行う染色仕上げ予備処理の染色への影響を調査した。
【0106】
本発明の実施例1で調製された陽極アルミニウム均染緩染助剤の粉末製剤を濃度15g/L(第1の活性成分の濃度を基準とする)の処理液になるように希釈した。希釈された処理液のpHを2.0に調整した後、それぞれ25℃、45℃の温度で、陽極酸化されたアルミニウムシート(型番5052、酸化膜厚約15μm)を上記処理液にそれぞれ5分間浸漬し、その後、処理液から取り出して脱イオン水で洗浄した。続いて、アルミニウムシートを濃度10g/Lの黒色染料(TAC Black SLH415AN)に浸漬し、上記と同様な条件(55℃、15分間染色)で染色した。最後に、完成品の色調Lab値及び染色活性度を測定した。実験結果は表8に示される。表8における「空白」とは、空試料のことを指す。空試料は、均染緩染助剤溶液に浸漬されない以外に、他の実験プロセスが同様に行われた陽極アルミニウム試料であり、染色された後、その色差、活性度などを測定した。
【0108】
表8の結果によると、他の条件を変更しない場合、温度の増加とともにΔEが大きくなるが、活性度が小さくなることから、均染緩染助剤の処理液の温度が高いほど、染色仕上げ予備処理による陽極酸化されたアルミニウムシートの緩染効果が強くなることを示す。
【0109】
<実施例11>
陽極酸化の過程中に、アルミニウム製品の表面に電流密度分布の不均一により陽極酸化膜厚の違いを生じさせる場合が多い。陽極酸化膜厚の違いによって染色時に引き起こる色差は大きすぎると表面ムラを発生させる。均染緩染助剤による染色仕上げ加工は、この問題を良好に解決することができる。
【0110】
実施例1で調製された均染緩染助剤の粉末製剤を、濃度0g/L〜15g/L(第1の活性成分の濃度を基準とする)の処理液になるように希釈した。上記と同様の操作条件(25℃で5分間浸漬する)において、陽極アルミニウム試験片(アルミニウム材品番5052、酸化膜厚5μm〜20μm)に対して染色予備処理を行った後、処理液から取り出して脱イオン水で洗浄した。続いて、アルミニウムシートを2つの濃度(0.5g/L、2g/L)の黒色染料(TAC Black GBLH 413)に浸漬し、上記と同様な条件(25℃、pH5.0)で染色した。染色時間の長さは、各試料に対して均染緩染助剤による染色仕上げ加工の有無、及び処理液の濃度に依存するので、各製品に対して均染緩染助剤による染色仕上げ加工を行うか否かにを問わず、なるべく染色後で色の濃淡に大差がないようにする。例えば、均染緩染助剤で予備処理されない試料は深く染色しやすいため、染色時間を短く(6分間30秒〜8分間)制御する必要がある一方、均染緩染助剤で予備処理された試料は同程度の濃淡に染色するために必要な時間が長いため、実験で比較的長い染色時間(9分間〜11分間)で染色する必要がある。最後に、完成品の色調Lab値及び色差ΔEを測定した。色差ΔEは酸化膜厚10μmのLab値を基準とする。また、異なる濃度の均染緩染助剤で処理された陽極アルミニウム試料の間の標準偏差、及び均染緩染助剤で処理されない陽極アルミニウム試料の間の標準偏差σを計算した。標準偏差σの計算式は下記に示される。
【0114】
実験結果は表9に示される。表9における「0g/L」とは、空試料(合計8枚、異なる酸化膜厚及び染色時間にそれぞれ対応する)のことを指す。空試料は、均染緩染助剤溶液に浸漬されない以外に、他の実験プロセスが同様に行われた異なる膜厚の4枚の陽極アルミニウム試料であり、2つの濃度(それぞれ0.5g/L、2g/L)の黒色染料で染色された後、色差などを測定した。
【0116】
表9の結果によると、染色時に染料の濃度(0.5g/L又は2g/L)を問わず、均染緩染助剤で染色予備処理された試料は、酸化膜厚5μm、15μm、20μmの試料と膜厚10μmの試料との間の色差ΔEが比較的小さく、標準偏差の数値も同じ傾向に沿うから、均染緩染助剤が均一に染色させる効果を有することが証明される。全体のデータから見ると、均染緩染助剤の濃度が15g/Lである場合の色差は、濃度が6g/Lである場合の色差より小さいので、均染緩染助剤の濃度が6g/Lから15g/Lまで増加すると、さらなる均一な染色に有利であることが示される。
【0117】
<実施例12>
本実施例は、均染緩染助剤による染色予備処理が均一な染色に対する効果を調査した。実施例1で調製された均染緩染助剤の粉末製剤を濃度6g/Lと15g/L(第1の活性成分の濃度を基準とする)の処理液になるように希釈した。希釈された処理液のpHを2.0に調整した後、それぞれ異なる温度(25℃、45℃)条件で、アルミニウムシート(型番5052、酸化膜厚10.6μm〜11.2μm)を上記溶液に5分間浸漬し、その後、処理液から取り出して脱イオン水で洗浄した。続いて、アルミニウムシートを濃度0.5g/Lの黒色染料(TAC Black GBLH 413黒色染料)に浸漬し、上記と同様な条件(25℃、8分間染色、pH5.0)で染色した。最後に、完成品に対して5点(試料の4つの角及び中間点)の色調Lab値、及び色差ΔEを測定した。色差ΔEは中間点のLab値を基準とする。実験結果は表10に示される。表10における「空白」とは、空試料のことを指す。空試料は、均染緩染助剤溶液に浸漬されない以外に、他の実験プロセスが同様に行われた陽極アルミニウム試料であり、染色された後、色差などを測定した。
【0119】
表10の結果によると、均染緩染助剤の濃度(6g/L又は15g/L)を問わず、均染緩染助剤で染色予備処理された試料は、4つの角と中間点との色差ΔEが空試料より小さいことから、均染緩染助剤がそれに対応する条件で均一に染色させる効果を有することが証明される。全体のデータから見ると、均染緩染助剤の濃度が15g/Lである場合の色差ΔEは濃度が6g/Lである場合の色差ΔEよりやや小さいので、均染緩染助剤の濃度が6g/Lから15g/Lまで増加すると、さらなる均一な染色に有利であることが示される。
【0120】
<実施例13>
本実施例は、均染緩染助剤による染色予備処理が異なる品番のアルミニウム材に対する効果を調査した。
【0121】
実施例1で調製された均染緩染助剤の粉末製剤を濃度6g/L(第1の活性成分の濃度を基準とする)の処理液になるように希釈した。上記と同様の操作条件、すなわち、25℃で5分間浸漬する条件において、陽極アルミニウム試験片(アルミニウム材品番7018、酸化膜厚約15μm)に対して染色予備処理を行った後、処理液から取り出して脱イオン水で洗浄した。続いて、アルミニウムシートを黒色染料(TAC Black SLH 415AN、10g/L)に浸漬し、一定の条件(55℃、15min)で染色した。さらに、完成品の色調Lab値及び染色活性度を測定して、測定結果を均染緩染助剤で染色予備処理されない試料(空試料)と比較した。実験結果は表11に示される。表11における「空白」とは、空試料のことを指す。空試料は、均染緩染助剤溶液に浸漬されない以外に、他の実験プロセスが同様に行われた陽極アルミニウム試料(アルミニウム材品番7018)であり、染色後、その色差を測定した。
【0123】
表11の結果によると、均染緩染助剤で染色予備処理された試料は、色差ΔE及び活性度が低くなるので、品番7018のアルミニウムシートに対しても同様に緩染効果を有することが示され、陽極アルミニウム均染緩染助剤が異なる品番のアルミニウム材に適用できることを証明した。
【0124】
<実施例14>
本実施例は、均染緩染助剤による染色予備処理が異なる膜厚の陽極酸化アルミニウムシートに適用される場合、日光照射(日照)された後、色の変化を調査した。
【0125】
実施例1で調製された陽極アルミニウム均染緩染助剤の粉末製剤を、濃度6g/Lと15g/L(第1の活性成分の濃度を基準とする)の処理液になるように希釈した。陽極酸化されたアルミニウムシート(アルミニウム材品番5052、膜厚それぞれ5μmと10μm)を、上記と同様の操作条件、すなわち、25℃で上記処理液に5分間浸漬した後、処理液から取り出して脱イオン水で洗浄した。続いて、アルミニウムシートを赤色染料(TAC Red BLH102、10g/L)に浸漬し、一定の条件(25℃、5min)で染色した。さらに、完成品の色調Lab値を測定した。染色したアルミニウムシートを光退色試験機(アトラス社製、Atlas Suntest CPS+)で照射して、一定の時間間隔で光退色試験機から取り出して色調Lab値を調査した。同時に、日光照射前後の色差を比較した。実験結果は表12に示される。表12における「空白」とは、空試料(合計2枚、異なる酸化膜厚にそれぞれ対応する)のことを指す。空試料は、均染緩染助剤溶液に浸漬されない以外に、他の実験プロセスが同様に行われた陽極アルミニウム試料であり、日光照射後の色差などを測定した。
【0127】
表12の結果によると、2つの濃度の均染緩染助剤の処理液で予備処理されたアルミニウムシートは、陽極膜厚が5μm又は10μmのいずれを問わず、染色して日光照射5か月後、均染緩染助剤で予備処理されない試料(空試料)と比較して、色差ΔEに差を示さないので、染色仕上げ加工を行った試料は、色の変化が空試料と比較して大した差はなかったことが分かった。
【0128】
<実施例15>
本実施例は、陽極アルミニウム均染緩染助剤による染色予備処理が陽極酸化アルミニウム表面の自由エネルギーに対する効果を調査した。
【0129】
実施例1で調製された均染緩染助剤の粉末製剤を、濃度6g/Lと15g/L(第1の活性成分の濃度を基準とする)の処理液になるように希釈した。陽極酸化されたアルミニウムシート(アルミニウム材型番5052、酸化膜厚約15μm)を、上記と同様の操作条件、すなわち、25℃で上記処理液に5分間浸漬した後、処理液から取り出して脱イオン水で洗浄した。その後、室温で30分間自然乾燥した後、陽極アルミニウム表面の接触角を測定した。実験結果は表13に示される。表13における「空白」とは、空試料のことを指す。空試料は、同様の温度及び浸漬時間などの条件で、均染緩染助剤を含有しない脱イオン水に浸漬された試料であり、その後、接触角を測定した。
【0131】
なお、接触角が大きいほど、表面の自由エネルギーが低くなる。表13の結果によると、均染緩染助剤で染色予備処理されたアルミニウムシートは、均染緩染助剤の濃度が6g/L又は15g/Lのいずれを問わず、アルミニウムシート表面の接触角を増大する効果を有することが示され、均染緩染助剤がアルミニウムシート表面の自由エネルギーを低下させ、他の物質をアルミニウムシート表面に吸着しにくくなり得ることが証明される。これは、均染緩染助剤が緩染効果を発揮する根本原因であると考えられる。
【0132】
本発明に係る陽極アルミニウム均染緩染助剤及びその処理液、並びに陽極アルミニウム均染緩染処理プロセスは、緩染効果を有し、陽極アルミニウム酸化膜厚(陽極アルミニウム膜の厚さが薄すぎると製品の機械的強度が不十分になりやすい)、又は染色時間(染色時間が短すぎると染色が不均一になりやすい)を減少させる必要がない。当該助剤で処理されたアルミニウム製品は、異なるバッチの製品間の色差が小さいとともに、アルミニウム製品表面の複雑な構造に起因する酸化膜厚の相違により染色ムラ又は不均一を引き起こさず、均一な染色の効果を達成することができる。また、当該助剤が無リン組成であり、染色後の封孔への影響がないので、従来の陽極アルミニウムプロセスに適用でき、各種類及び品番のアルミニウム材にも適用できる。また、当該助剤を使用した後、アルミニウム製品の日光照射による退色は、処理されない陽極アルミニウム製品と比較して、大した差はなかった。