(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0018】
〔表面処理剤〕
本発明の無機材料で構成される表面用の表面処理剤は、上記繰り返し単位(A)および(B)を有する重合体を含むものである。
【0019】
<繰り返し単位(A)>
繰り返し単位(A)は、下記式(1)で表されるカチオン性基を側鎖中に含むものである。
【0021】
〔式(1)中、R
1およびR
2は、それぞれ独立して、炭素数1〜10の有機基を示す。〕
【0022】
上記式(1)中のR
1およびR
2で示される有機基の炭素数としては、1〜6が好ましく、1〜3がより好ましく、1または2が更に好ましい。
【0023】
上記有機基としては、炭化水素基が挙げられ、好ましくは脂肪族炭化水素基である。該脂肪族炭化水素基は直鎖状でも分岐鎖状でもよく、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等のアルキル基が挙げられる。
【0024】
また、上記繰り返し単位(A)としては、非特異吸着抑制効果、基材への吸着性、耐剥離性及びコーティング性の観点から、下記式(3)で表される繰り返し単位が好ましい。
【0026】
〔式(3)中、R
5は、水素原子またはメチル基を示し、R
6は、基−O−、基*−(C=O)−O−、基*−(C=O)−NR
8−、基*−NR
8−(C=O)−(R
8は、水素原子または炭素数1〜10の有機基を示し、*は、式(3)中のR
5が結合している炭素原子と結合する位置を示す。)またはフェニレン基を示し、R
7は、炭素数1〜8の2価の有機基を示し、Xは、下記式(4−1)または(4−2)で表される1価の基を示す。
【0028】
[式(4−1)中、R
9は、アニオン性基を置換基として有する炭素数1〜10の有機基、または炭素数1〜10の有機基を示し、R
1およびR
2は前記と同義である。]
【0030】
[式(4−2)中、R
10は、炭素数1〜10の有機基を示し、R
11は、炭素数1〜8の2価の有機基を示し、R
1およびR
2は前記と同義である。]〕
【0031】
上記式(3)中、R
6は、基−O−、基*−(C=O)−O−、基*−(C=O)−NR
8−、基*−NR
8−(C=O)−またはフェニレン基を示す。斯かるフェニレン基としては、1,2−フェニレン基、1,3−フェニレン基、1,4−フェニレン基が挙げられる。
また、上記R
8は、水素原子または炭素数1〜10の有機基を示すが、斯かる炭素数1〜10の有機基は、上記R
1で示される炭素数1〜10の有機基と同様である。
【0032】
上記のようなR
6としては、基*−(C=O)−O−、基*−(C=O)−NR
8−が好ましく、基*−(C=O)−NR
8−がより好ましく、基*−(C=O)−NH−が更に好ましい。
【0033】
上記式(3)中、R
7で示される2価の有機基の炭素数としては、1〜6が好ましく、1〜4がより好ましく、2または3が更に好ましい。
【0034】
上記2価の有機基としては、2価の炭化水素基が挙げられ、好ましくは2価の脂肪族炭化水素基である。該2価の脂肪族炭化水素基は直鎖状でも分岐鎖状でもよく、例えば、メタン−1,1−ジイル基、エタン−1,1−ジイル基、エタン−1,2−ジイル基、プロパン−1,1−ジイル基、プロパン−1,2−ジイル基、プロパン−1,3−ジイル基、プロパン−2,2−ジイル基、ブタン−1,2−ジイル基、ブタン−1,3−ジイル基、ブタン−1,4−ジイル基、ペンタン−1,4−ジイル基、ペンタン−1,5−ジイル基、ヘキサン−1,5−ジイル基、ヘキサン−1,6−ジイル基等のアルカンジイル基が挙げられる。
【0035】
上記式(4−1)中、R
9は、アニオン性基を置換基として有する炭素数1〜10の有機基、または炭素数1〜10の有機基を示すが、非特異吸着抑制効果、耐剥離性の観点から、炭素数1〜10の有機基が好ましい。
【0036】
また、R
9における有機基の炭素数は1〜10であるが、好ましくは1〜7であり、より好ましくは1〜3であり、更に好ましくは1または2である。
また、上記有機基としては、炭化水素基が挙げられ、好ましくは脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、これらが連結した炭化水素基であり、より好ましくは脂肪族炭化水素基である。
【0037】
上記脂肪族炭化水素基は直鎖状でも分岐鎖状でもよいが、アルキル基が好ましい。具体的には、上記R
1におけるアルキル基と同様のものが挙げられる。
また、上記芳香族炭化水素基としては、フェニル基等の炭素数6〜10のアリール基が挙げられる。
また、脂肪族炭化水素基と芳香族炭化水素基とが連結した炭化水素基としては、ベンジル基等の炭素数7〜10のアラルキル基が挙げられる。
【0038】
また、上記有機基がアニオン性基を置換基として有する場合、そのアニオン性基としては、基−SO
3-、基−COO
-、基−OPO
32-等が挙げられるが、基−SO
3-が好ましい。
【0039】
一方、R
9がアニオン性基非置換の炭素数1〜10の有機基である場合、式(4−1)で表される1価の基には、対イオンが結合していてもよい。
上記対イオンとしては、負電荷を帯びていれば特に限定されないが、例えば、塩素イオン、臭素イオン、ヨウ素イオン等のハロゲノイオン;硫酸水素イオン;メチル硫酸イオン、エチル硫酸イオン等のアルキル硫酸イオン;アルキルスルホン酸イオン;ドデシルベンゼンスルホン酸イオン、パラトルエンスルホン酸イオン等のアリールスルホン酸イオン;2−メチル−2−プロペン−1−スルホン酸ナトリウム等のアルケニルスルホン酸イオン;酢酸イオン等のカルボン酸イオン等が挙げられる。
【0040】
上記式(4−2)中のR
10で示される炭素数1〜10の有機基は、上記R
1で示される炭素数1〜10の有機基と同様であり、R
11で示される炭素数1〜8の2価の有機基は、上記R
7で示される炭素数1〜8の2価の有機基と同様である。
【0041】
なお、上記Xとしては、非特異吸着抑制効果、耐剥離性の観点から、上記式(4−1)で表される1価の基が好ましい。
【0042】
また、繰り返し単位(A)の合計含有量としては、非特異吸着抑制効果、表面への吸着性、耐剥離性、コーティング性の観点から、全繰り返し単位中、0.01〜50質量%が好ましく、0.1〜20質量%がより好ましく、0.5〜15質量%が更に好ましく、1〜10質量%が更に好ましく、1.5〜5質量%が特に好ましい。
なお、繰り返し単位(A)の含有量は
1H−NMR、
13C−NMR等により測定可能である。
【0043】
<繰り返し単位(B)>
繰り返し単位(B)は、下記式(2)で表される基を側鎖中に含むものである。
【0045】
〔式(2)中、R
3は、炭素数2〜8のアルカンジイル基を示し、R
4は、水素原子または炭素数1〜40の有機基を示し、nは、平均値で1以上を示す。〕
【0046】
上記式(2)中、R
3で示されるアルカンジイル基の炭素数としては、2〜4が好ましく、2または3がより好ましく、2が更に好ましい。また、アルカンジイル基は直鎖状でも分岐鎖状でもよく、好適な具体例としては、エタン−1,1−ジイル基、プロパン−1,2−ジイル基が挙げられる。なお、R
3が複数存在する場合、斯かるn個のR
3は同一であっても異なっていてもよい。
【0047】
上記式(2)中、R
4で示される有機基としては、炭化水素基が挙げられ、好ましくは脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、これらが連結した炭化水素基であり、非特異吸着抑制効果の観点から、より好ましくは脂肪族炭化水素基である。上記脂肪族炭化水素基は、直鎖状でも分岐鎖状でもよい。
【0048】
上記脂肪族炭化水素基としては、アルキル基、アルケニル基が好ましい。
上記アルキル基の炭素数としては、好ましくは1〜25であり、より好ましくは1〜15であり、更に好ましくは1〜10であり、更に好ましくは1〜5であり、特に好ましくは1〜3である。具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、2−エチル−ヘキシル基、ドデシル基、ドコシル基等が挙げられる。
また、上記アルケニル基の炭素数は、好ましくは2〜25であり、より好ましくは2〜15であり、更に好ましくは2〜10であり、更に好ましくは2〜5であり、特に好ましくは2または3である。具体的には、ビニル基、プロペニル基、ブテニル基等が挙げられる。
【0049】
上記芳香族炭化水素基の炭素数としては、アリール基が好ましい。
上記アリール基の炭素数は、好ましくは6〜20であり、より好ましくは6〜16であり、更に好ましくは6〜12である。具体的には、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。
【0050】
上記脂肪族炭化水素基と芳香族炭化水素基とが連結した炭化水素基としては、炭素数7〜40のアラルキル基、炭素数7〜40のアルキルアリール基、炭素数13〜40のアラルキルアリール基等が挙げられる。上記アラルキル基としてはベンジル基等が挙げられ、上記アルキルアリール基としてはノニルフェニル基等が挙げられ、上記アラルキルアリール基としては2,4,6−トリス(1−フェニルエチル)フェニル基等が挙げられる。
【0051】
上記式(2)中、nは平均値で1以上を示すが、非特異吸着抑制効果の観点から、好ましくは平均値で2以上、より好ましくは平均値で3以上、更に好ましくは平均値で5以上、特に好ましくは平均値で7以上であり、また、好ましくは平均値で100以下、より好ましくは平均値で50以下、更に好ましくは平均値で45以下、更に好ましくは平均値で40以下、更に好ましくは平均値で35以下、更に好ましくは平均値で30以下、特に好ましくは平均値で25以下である。
なお、本明細書における「平均値」はNMRで測定可能である。
【0052】
また、上記繰り返し単位(B)の好適な具体例としては、下記式(5)で表されるものが挙げられる。
【0054】
〔式(5)中、R
12は、水素原子またはメチル基を示し、R
13は、基−O−、基**−(C=O)−O−、基**−(C=O)−NR
14−、基**−NR
14−(C=O)−(R
14は、水素原子または炭素数1〜10の有機基を示し、**は、式(5)中のR
12が結合している炭素原子と結合する位置を示す。)またはフェニレン基を示し、R
3、R
4およびnは前記と同義である。〕
【0055】
上記式(5)中、R
13は、基−O−、基**−(C=O)−O−、基**−(C=O)−NR
14−、基**−NR
14−(C=O)−またはフェニレン基を示す。斯かるフェニレン基は、R
6で示されるフェニレン基と同様であり、R
14で示される炭素数1〜10の有機基は、R
8で示される炭素数1〜10の有機基と同様である。
斯様なR
13の中でも、非特異吸着抑制効果、耐剥離性の観点から、基−O−、基**−(C=O)−O−が好ましく、基**−(C=O)−O−がより好ましい。
【0056】
また、繰り返し単位(B)の合計含有量としては、非特異吸着抑制効果、表面への吸着性、耐剥離性、コーティング性の観点から、全繰り返し単位中、好ましくは3質量%以上、より好ましくは30質量%以上、更に好ましくは35質量%以上、更に好ましくは40質量%以上、更に好ましくは45質量%以上、更に好ましくは50質量%以上、更に好ましくは55質量%以上、更に好ましくは57質量%以上、重合体が繰り返し単位(C)を含まない場合は、更に好ましくは80質量%以上、更に好ましくは85質量%以上、更に好ましくは90質量%以上、特に好ましくは95質量%以上である。また、上記と同様の観点から、全繰り返し単位中、好ましくは99.99質量%以下、より好ましくは99.9質量%以下、更に好ましくは99.5質量%以下、更に好ましくは99質量%以下、特に好ましくは98.5質量%以下である。
なお、繰り返し単位(B)の含有量は、繰り返し単位(A)の含有量と同様にして測定すればよい。
【0057】
また、重合体に含まれる繰り返し単位(A)と繰り返し単位(B)との質量比〔(B)/(A)〕としては、非特異吸着抑制効果、表面への吸着性、耐剥離性、コーティング性の観点から、1〜80が好ましく、5〜80がより好ましく、7.5〜75が更に好ましく、10〜75が更に好ましく、10〜70が更に好ましく、10〜65が更に好ましく、13〜65が特に好ましい。
【0058】
<繰り返し単位(C)>
また、本発明で用いる重合体は、コーティングされた表面の親水性をコントロールする目的で、上記繰り返し単位(A)および(B)の他に、下記式(6)で表される基を側鎖中に含む繰り返し単位(以下、繰り返し単位(C)ともいう)を更に有していてもよい。
【0060】
〔式(6)中、R
15およびR
16は、それぞれ独立して、水素原子または炭素数1〜10の有機基を示し、R
15およびR
16がともに炭素数1〜10の有機基の場合、R
15およびR
16が一緒になって窒素原子以外のヘテロ原子を含有していてもよい複素環を形成していてもよい。〕
【0061】
上記式(6)中のR
15およびR
16で示される有機基の炭素数としては、1〜6が好ましく、1〜3がより好ましく、1または2が更に好ましい。
【0062】
上記有機基としては、炭化水素基、該炭化水素基の水素原子の一部がアルカノイル基またはアルコキシ基で置換された基が挙げられる。
炭化水素基としては、好ましくは脂肪族炭化水素基である。該脂肪族炭化水素基は直鎖状でも分岐鎖状でもよく、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等のアルキル基が挙げられる。
【0063】
また、上記アルカノイル基としては、炭素数2〜6のアルカノイル基が好ましく、炭素数2〜4のアルカノイル基がより好ましい。アルカノイル基は直鎖状でも分岐鎖状でもよく、例えば、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基が挙げられる。
また、炭化水素基の水素原子の一部がアルカノイル基で置換された基としては、例えば、1,1−ジメチル−2−アセチルエチル基等が挙げられる。
【0064】
また、上記アルコキシ基としては、炭素数1〜6のアルコキシ基が好ましく、炭素数1〜4のアルコキシ基がより好ましい。アルコキシ基は直鎖状でも分岐鎖状でもよく、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基等が挙げられる。
また、炭化水素基の水素原子の一部がアルコキシ基で置換された基としては、例えば、n−ブトキシメチル基等が挙げられる。
【0065】
また、上記式(6)中、R
15およびR
16としては、一緒になって窒素原子以外のヘテロ原子を含有していてもよい複素環を形成しているのが好ましい。この場合における窒素原子以外のヘテロ原子としては、酸素原子等が挙げられる。また、複素環としては、ピぺリジン環、モルホリン環等が挙げられる。
【0066】
また、繰り返し単位(C)の好適な具体例としては、下記式(7)で表されるものが挙げられる。
【0068】
〔式(7)中、R
17は、水素原子またはメチル基を示し、R
18は、水素原子またはジメチルアミノメチル基を示し、R
19は、基−(C=O)−、基−O−、基***−(C=O)−O−、基***−(C=O)−NR
20−、基***−NR
20−(C=O)−(R
20は、水素原子または炭素数1〜10の有機基を示し、***は、式(7)中のR
17が結合している炭素原子と結合する位置を示す。)または炭素数1〜10の2価の炭化水素基を示し、Yは、下記式(8)で表される1価の基を示す。
【0070】
[式(8)中、R
21は、単結合、または炭素数1〜6の2価の炭化水素基を示し、R
15およびR
16は前記と同義である。]〕
【0071】
式(7)中、R
18は、水素原子またはジメチルアミノメチル基を示すが、水素原子が好ましい。
【0072】
式(7)中、R
19は、基−(C=O)−、基−O−、基***−(C=O)−O−、基***−(C=O)−NR
20−、基***−NR
20−(C=O)−または炭素数1〜10の2価の炭化水素基を示す。上記R
20で示される炭素数1〜10の有機基は、上記R
1で示される炭素数1〜10の有機基と同様である。
【0073】
また、R
19で示される2価の炭化水素基としては、2価の脂肪族炭化水素基、2価の芳香族炭化水素基が好ましく、アルカンジイル基、アリーレン基がより好ましい。上記2価の脂肪族炭化水素基は直鎖状でも分岐鎖状でもよい。
上記2価の脂肪族炭化水素基の炭素数は、好ましくは1〜4である。具体的には、上記R
7におけるアルカンジイル基と同様のものが挙げられる。
また、上記2価の芳香族炭化水素基の炭素数は、好ましくは6〜10である。具体的には、フェニレン基が挙げられる。
【0074】
上記のようなR
19の中でも、非特異吸着抑制効果、耐剥離性の観点から、基−(C=O)−、2価の炭化水素基が好ましく、基−(C=O)−がより好ましい。
【0075】
式(8)中、R
21は、単結合、または炭素数1〜6の2価の炭化水素基を示すが、斯かる2価の炭化水素基の炭素数としては、1〜3が好ましい。
上記2価の炭化水素基としては、好ましくは2価の脂肪族炭化水素基である。該2価の脂肪族炭化水素基は直鎖状でも分岐鎖状でもよいが、好ましくはアルカンジイル基である。具体的には、上記R
7におけるアルカンジイル基と同様のものが挙げられる。
また、斯様なR
21の中でも、単結合が好ましい。
【0076】
また、本発明で用いる重合体が繰り返し単位(C)を有する場合、繰り返し単位(C)の合計含有量としては、非特異吸着抑制効果、表面への吸着性、耐剥離性、コーティング性の観点から、全繰り返し単位中、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは1質量%以上、更に好ましくは5質量%以上、特に好ましくは10質量%以上であり、また、好ましくは95質量%以下、より好ましくは90質量%以下、更に好ましくは85質量%以下、更に好ましくは80質量%以下、更に好ましくは50質量%以下、更に好ましくは45質量%以下、更に好ましくは43質量%以下、特に好ましくは42質量%以下である。
なお、繰り返し単位(C)の含有量は、繰り返し単位(A)の含有量と同様にして測定すればよい。
【0077】
また、本発明で用いる重合体が繰り返し単位(C)を有する場合、重合体に含まれる繰り返し単位(A)と繰り返し単位(C)との質量比〔(C)/(A)〕としては、非特異吸着抑制効果、表面への吸着性、耐剥離性、コーティング性の観点から、0.5〜1000が好ましく、1〜100がより好ましく、3〜50が更に好ましく、5〜30が更に好ましく、5〜20が特に好ましい。
【0078】
<繰り返し単位(D)>
なお、本発明で用いる重合体は、上記繰り返し単位(A)〜(C)以外の繰り返し単位(D)を有していてもよい。斯様な繰り返し単位(D)としては、繰り返し単位(A)〜(C)を誘導するモノマー以外のアニオン性の単量体(アニオン性モノマー)やノニオン性の単量体(ノニオン性モノマー)から誘導されるものが挙げられ、これらを1種または2種以上含んでいてもよい。
【0079】
繰り返し単位(D)を誘導するモノマーとしては、特に限定されないが、スチレン類および(メタ)アクリレート類から選ばれる1種以上のモノマーが好ましい。
【0080】
上記アニオン性モノマーとしては、ビニル安息香酸、(メタ)アクリル酸等の不飽和カルボン酸モノマー;スチレンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、イソプレンスルホン酸等の不飽和スルホン酸モノマーが挙げられる。
【0081】
また、上記ノニオン性モノマーとしては、スチレン類の具体例として、スチレン、4−メチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、2,4,6−トリメチルスチレン、4−エチルスチレン、4−イソプロピルスチレン、4−tert−ブチルスチレン、α―メチルスチレンが挙げられる。
【0082】
また、上記(メタ)アクリレート類としては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル等の(メタ)アクリル酸C
1-10アルキル;(メタ)アクリル酸シクロヘキシル等の(メタ)アクリル酸C
6-10シクロアルキル;(メタ)アクリル酸1−アダマンチル、(メタ)アクリル酸1−メチル−(1−アダマンチルエチル)、(メタ)アクリル酸トリシクロ[5.2.1.0
2,6]デカン−8−イル等の炭素数8〜16の橋かけ環炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステル等が挙げられる。また、これら(メタ)アクリレート類において、上記C
1-10アルキル基としてはC
1-8アルキル基が好ましく、上記C
6-10シクロアルキル基としてはC
6-8シクロアルキル基が好ましく、炭素数8〜16の橋かけ環炭化水素基としては、炭素数8〜12の橋かけ環炭化水素基が好ましい。
また、(メタ)アクリレート類として、末端に(メタ)アクリロイルオキシ基を有するポリスチレンのマクロモノマー、末端に(メタ)アクリロイルオキシ基を有するポリメチル(メタ)アクリレートのマクロモノマー(東亜合成株式会社製 マクロモノマーAA−6等)、末端に(メタ)アクリロイルオキシ基を有するポリブチル(メタ)アクリレートのマクロモノマー(東亜合成株式会社製 マクロモノマーAB−6等)、末端に(メタ)アクリロイルオキシ基を有するポリジメチルシロキサンのマクロモノマー(信越化学工業株式会社製 変性シリコーンオイルX−22−2475等)等の末端に(メタ)アクリロイルオキシ基を有するマクロモノマーを使用してもよい。これらマクロモノマーを使用することによりグラフト共重合体が得られる。
【0083】
上記繰り返し単位(D)の合計含有量としては、全繰り返し単位中、0〜50質量%が好ましく、0〜40質量%がより好ましく、0〜30質量%が更に好ましく、0〜20質量%が更に好ましく、0〜18質量%が更に好ましく、0〜10質量%が更に好ましく、0〜1質量%が特に好ましい。
【0084】
また、本発明で用いる重合体の繰り返し単位の配列の態様は特に限定されず、ブロック共重合体、グラフト共重合体、ランダム共重合体、交互共重合体のいずれであってもよい。
【0085】
また、本発明で用いる重合体の数平均分子量(M
n)としては、5000〜50万が好ましく、10000〜20万がより好ましく、10000〜10万が更に好ましい。
また、本発明で用いる重合体の重量平均分子量(M
w)としては、20000〜200万が好ましく、40000〜80万がより好ましく、50000〜40万が更に好ましい。
また、分子量分布(M
w/M
n)としては、1〜10が好ましく、1〜5がより好ましい。
なお、上記数平均分子量、重量平均分子量および分子量分布は、後述する実施例に記載の方法に従い測定すればよい。
【0086】
また、本発明で用いる重合体としては、非特異吸着抑制効果の観点から、水溶性のものが好ましい。ここで、本明細書において、水溶性とは、1質量%のポリマー固形分となるように重合体を水(25℃)に添加・混合したときに、目視で透明となることをいう。
【0087】
本発明で用いる重合体は、繰り返し単位(A)を誘導するモノマーと繰り返し単位(B)を誘導するモノマーとを、必要に応じて繰り返し単位(C)や繰り返し単位(D)を誘導するモノマーとともに共重合することで合成できる。共重合は常法を適宜組み合わせて行えばよい。
【0088】
上記繰り返し単位(A)を誘導するモノマーとしては、4級アンモニウムカチオン含有カチオンモノマー、4級アンモニウムカチオン含有ベタインモノマーが挙げられ、これらを単独で用いてもよく2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0089】
上記4級アンモニウムカチオン含有カチオンモノマーとしては、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド塩化メチル4級塩、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート塩化メチル4級塩、(メタ)アクリロイルオキシエチルジメチルエチルアンモニウムエチルサルフェート、(メタ)アクリロイルオキシエチルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド、(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムメチルサルフェート、(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムp−トルエンスルホネート、(メタ)アクリロイルアミノプロピルジメチルエチルアンモニウムエチルサルフェート、(メタ)アクリロイルアミノプロピルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、(メタ)アクリロイルアミノプロピルトリメチルアンモニウムクロライド、(メタ)アクリロイルアミノプロピルトリメチルアンモニウムメチルサルフェート、(メタ)アクリロイルアミノプロピルトリメチルアンモニウムp−トルエンスルホネート、(ビニルベンジル)トリメチルアンモニウムクロリド等が挙げられる。
【0090】
上記4級アンモニウムカチオン含有ベタインモノマーとしては、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルホスホリルコリン、[3−((メタ)アクリロイルアミノ)プロピル]ジメチル(3−スルホプロピル)アンモニウムヒドロキシド、[2−((メタ)アクリロイルオキシ)エチル]ジメチル−(3−スルホプロピル)アンモニウムヒドロキシド等が挙げられる。
【0091】
上記繰り返し単位(B)を誘導するモノマーとしては、(メタ)アクリレート系モノマー、ビニルエーテル系モノマーが挙げられ、これらを単独で用いてもよく2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0092】
上記(メタ)アクリレート系モノマーとしては、(ポリ)エチレングリコールメチルエーテル(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールエチルエーテル(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールブチルエーテル(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールビヘニルエーテル(メタ)アクリレート、オクトキシ(ポリ)エチレングリコール−(ポリ)プロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ラウロキシ(ポリ)エチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、(ポリ)(エチレングリコール−プロピレングリコール)モノ(メタ)アクリレート、(ポリ)(エチレングリコール−テトラメチレングリコール)モノ(メタ)アクリレート、(ポリ)(プロピレングリコール−テトラメチレングリコール)モノ(メタ)アクリレート、アリロキシ(ポリ)エチレングリコール−(ポリ)プロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、フェノキシ(ポリ)エチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシ(ポリ)エチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシ(ポリ)エチレングリコール−(ポリ)プロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシ(ポリ)プロピレングリコール−(ポリ)エチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコール2,4,6−トリス(1−フェニルエチル)フェニルエーテル(メタ)アクリレート、1−メトキシエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0093】
上記ビニルエーテル系モノマーとしては、(ポリ)エチレングリコールビニルエーテル等が挙げられる。
【0094】
上記繰り返し単位(C)を誘導するモノマーとしては、1級アミノ基含有モノマー、2級アミノ基含有モノマー、3級アミノ基含有モノマー、アミド基含有モノマーが挙げられ、これらを単独で用いてもよく2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0095】
上記1級アミノ基含有モノマーとしては、アリルアミン塩酸塩、二水素アリルアミンリン酸塩、2−イソプロペニルアニリン、3−ビニルアニリン、4−ビニルアニリン等が挙げられる。
【0096】
上記2級アミノ基含有モノマーとしては、t−ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0097】
上記3級アミノ基含有モノマーとしては、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、2−(ジメチルアミノ)エチル(メタ)アクリレート、3−(ジメチルアミノ)プロピル(メタ)アクリレート、2−(ジエチルアミノ)エチル(メタ)アクリレート、2−(ジイソプロピルアミノ)エチル(メタ)アクリレート、2−N−モルホリノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルビニルベンジルアミン、N,N,N’,N’−テトラメチル−2−ブテン−1,4−ジアミン等が挙げられる。
【0098】
上記アミド基含有モノマーとしては、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−(1,1−ジメチル−2−アセチルエチル)(メタ)アクリルアミド、N−n−ブトキシメチルアクリルアミド、ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロイルピペリジン、(メタ)アクリロイルモルホリン等が挙げられる。
【0099】
また、本発明の表面処理剤中の上記重合体の含有量は、好ましくは0.001〜15質量%であり、より好ましくは0.01〜10質量%であり、更に好ましくは0.05〜1質量%である。斯様な低濃度でも無機材料で構成される表面に対する非特異吸着抑制効果が十分に得られる。
【0100】
また、本発明の表面処理剤は溶剤を含んでいてもよく、溶剤としては、水;メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール系溶剤等が挙げられ、これら溶剤は1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて含まれていてもよい。斯かる溶剤の含有量は特に限定されないが、好ましくは85〜99.999質量%であり、より好ましくは90〜99.99質量%であり、更に好ましくは99〜99.95質量%である。
また、本発明の表面処理剤は、上記重合体と溶剤の他に、殺菌剤、防腐剤、塩、緩衝液等を含んでいてもよい。
【0101】
そして、後記実施例に示すように、本発明の無機材料で構成される表面用の表面処理剤は、無機材料で構成される表面に対する非特異吸着を抑制する効果に優れ、しかも、優れた耐剥離性を有する。また、細胞毒性が低く、タンパク活性維持効果を有する。
ここで、本明細書において、非特異吸着抑制とは、タンパク質、脂質、核酸、細胞等の生体試料が無機材料で構成される表面に非特異的に吸着・接着するのを抑制することをいう。
本発明の表面処理剤によって上記非特異吸着抑制効果が奏される理由は必ずしも明らかではないが、繰り返し単位(A)によって、器具、装置等の無機材料で構成される表面に重合体が吸着し、その一方で、繰り返し単位(B)による表面親水化作用やポリマーの排除体積効果によって、上記生体試料の吸着・接着を抑制することができるものと推察される。繰り返し単位(A)のような電荷をもったポリマーが表面に吸着した場合、一般的には表面が電荷をもち、タンパクのような生体試料はむしろその表面に吸着しやすくなる場合が多いが、繰り返し単位(A)とともに繰り返し単位(B)を組み合わせることによって、ポリマーが吸着した表面への生体試料の非特異吸着が抑制される。すなわち、繰り返し単位(A)と繰り返し単位(B)を組み合わせることで、非特異吸着防止と無機材料表面へのポリマーの吸着という、相反する性能を両立することを可能にしている。
【0102】
したがって、本発明の表面処理剤は、臨床検査や診断薬、種々の研究等で広く利用することができ、ガラスビーズ等のガラス製の固相や、臨床診断装置、細胞培養基材のうちガラス製のもの(ガラス製のマイクロアレイ基盤等)のコーティング剤;血液検査等の診断に使用される全自動分析機用測定セルの汚染防止剤、洗浄剤、リンス液等として特に有用である。
【0103】
また、上記無機材料としては、二酸化ケイ素を主成分とするホウケイ酸ガラス等の酸化物ガラス、カルコゲン化物、ハロゲン化物等の無機ガラス、金属合金ガラス、石英等のガラス材料;金、銀、銅、ステンレススチール、Ni−Ti合金、Cu−Al−Mn合金、タンタリウム、Co−Cr合金、イリジウム、イリジウムオキサイド、ニオブ、シリコン、アルミニウム、タンタル、チタン、鉄等の金属材料;二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化銀等の金属酸化物;窒化ケイ素、窒化アルミニウム等の金属窒化物;酸化物系セラミック、窒化物系セラミック、炭化物系セラミック、ケイ化物系セラミック、ホウ化物系セラミック等のセラミック材料;セメント材料;またはこれらを主成分とする無機材料等が挙げられる。特に、本発明で用いる重合体は、ガラス用表面処理剤に適する。
【0104】
なお、上記細胞としては、足場依存性細胞、浮遊細胞(例えば、白血球、赤血球、血小板等の血液細胞)が挙げられる。足場依存性細胞としては、HeLa細胞、F9細胞等のガン細胞;3T3細胞等の線維芽細胞;ES細胞、iPS細胞、間葉系幹細胞等の幹細胞;HEK293細胞等の腎細胞;NT2細胞等の神経細胞;UV♀2細胞、HMEC−1細胞等の内皮細胞;H9c2細胞等の心筋細胞;Caco−2細胞等の上皮細胞等が挙げられる。
【0105】
また、無機材料で構成される表面を有する基材と上記表面処理剤とを接触させることにより、上記繰り返し単位(A)および(B)を有する重合体を、無機材料で構成される表面の少なくとも一部に有する、表面が改質された基材が得られる。
ここで、表面が改質された基材を得るには、基材に対する表面処理剤の通常のコーティングと同様に行えばよいが、具体的な方法としては、(1)表面処理剤の溶液を基材に接触させ、溶媒を残したまま溶液中で本発明で用いる重合体を基材表面に物理吸着させる方法、(2)表面処理剤の溶液を基材に接触させ、乾燥により溶媒を揮発させ、本発明で用いる重合体の乾燥膜を基材表面に形成させる方法等が挙げられる。
上記方法(1)においては、溶液中で本発明で用いる重合体を基材表面に物理吸着させたのち、通常、溶液が流れ出るように基材を傾ける、基材を溶液から引き上げる、基材上の溶液を吹き飛ばす、溶媒を多量に注ぎ込むなどの方法により、溶液を取り除く工程を経て、本発明で用いる重合体が吸着した基材を得る。本発明においては、低環境負荷の観点や、処理した基材を使用している最中に本発明で用いる重合体が溶け出さないという点から、方法(1)が好ましい。
上記のような表面が改質された基材としては、表面が改質された器具および装置が挙げられる。
【0106】
〔表面が改質された器具および装置〕
本発明の表面が改質された器具および装置は、上記繰り返し単位(A)および(B)を有する重合体を、無機材料で構成される表面の少なくとも一部に有するもの(例えば、上記重合体でコーティングされているもの)である。具体的には、上記重合体が少なくとも一部に塗布され、その表面上に非特異吸着抑制層が形成されることによって、器具、装置の表面(内壁表面、外壁表面のいずれであってもよい)が改質されたものである。器具および装置の表面を構成する無機材料としては上記無機材料と同様のものが挙げられる。また、器具や装置としては、医療用、培養用のものが好ましい。
【0107】
また、改質させる器具は、表面の少なくとも一部が無機材料で構成されるものであればよいが、例えば、ビーズ、マイクロアレイ基盤、マイクロプレート、セル等が挙げられる。
また、改質させる装置は、表面の少なくとも一部が無機材料で構成されるものであればよいが、例えば、医療用デバイス(臨床診断装置、バイオセンサー、心臓ペースメーカー、埋入型バイオチップ)、発酵用ユニット、バイオリアクター等が挙げられる。
【0108】
また、本発明の表面が改質された器具および装置は、上記繰り返し単位(A)および(B)を有する重合体を、無機材料で構成される表面の少なくとも一部にコーティングする工程を含む方法により製造できる。
具体的には、上記重合体と器具または装置とを準備し、該器具または装置の少なくとも一部(好ましくは、その器具や装置を使用するときに該器具や装置とタンパク質等とが接触する部位)に上記重合体を塗布させればよい。斯かる塗布は、上記重合体を含むポリマー溶液(表面処理剤)をコーティングしたい部位に接触させればよい。
上記接触時間は、通常1秒〜48時間であり、好ましくは15秒〜24時間である。また、接触温度は通常、0〜50℃であるが、常温(25℃)でよい。なお、架橋剤、架橋モノマーを使用してポリマーを硬化してもよい。また、架橋剤、架橋モノマーを使用して、ポリマーを無機材料表面に化学的に結合させてもよい。
【0109】
また、本発明の表面処理剤を器具または装置に接触させた後、必要に応じて、溶液の除去や乾燥を行ってもよい。該除去・乾燥手段は、乾燥により溶媒を揮発させる、溶液が流れ出るように器具または装置を傾ける、器具または装置を溶液から引き上げる、器具または装置上の溶液を吹き飛ばす、溶媒を多量に注ぎ込む等の処理を適宜組み合わせて行えばよい。これによって、本発明の表面処理剤の乾燥膜が器具または装置の表面に形成される。
なお、上記と同様の方法で無機材料に本発明の表面処理剤をコーティングし、斯かる無機材料を用いて器具や装置を作製する方法でも、上記器具および装置を製造することができる。
【0110】
また、上記器具や装置の一例として、生体内医療構造体、マイクロ流路デバイスが挙げられる。
【0111】
<生体内医療構造体>
上記生体内医療構造体は、上記繰り返し単位(A)および(B)を有する重合体を、無機材料で構成される表面の少なくとも一部に有するものである。
ここで、生体内医療構造体とは、生体内で使用される医療用の構造体のことをいい、斯様な構造体は、体内へ埋め込んで使用するものと、体内で使用するものとに大別される。なお、生体内医療構造体の大きさや長さは特に限定されるものではなく、微細な回路を有するものや、微量の試料を検出するものも包含される。なお、コーティングに関しては吸着の他、重合体をフィルムコーティングさせてもよく、また、吸着させた重合体を架橋することで水に不溶化することや重合体を化学的に材料表面へ結合させることで、耐久性をもたせてもよい。
【0112】
上記体内へ埋め込んで使用する構造体としては、例えば、心臓ペースメーカー等の疾患が生じている生体の機能を補うための機能補助装置;埋入型バイオチップ等の生体の異常を検出するための装置;インプラント、骨固定材、縫合糸、人工血管等の医療用器具が挙げられる。
また、体内で使用する構造体としては、小胞、マイクロ粒子、ナノ粒子等の薬物送達媒体の他、カテーテル、胃カメラ、マイクロファイバー、ナノファイバー等が挙げられる。
【0113】
また、重合体のコーティングは、重合体を必要に応じて表面処理剤で使用される溶剤と混合し、これを構造体表面(内壁および外壁を含む)の少なくとも一部に公知の方法でコーティングすればよい。具体的には、スプレーコーティング法、ディップコーティング法、フローコーティング法、刷毛塗り、スポンジ塗り等の方法が挙げられる。加えて、重合体溶液中に構造体表面を浸漬させ、重合体と構造体を接触させるだけでコーティングすることもできる。
上記塗布は、体内において、生体内医療構造体と生体組織とが接触する部位に行うのが好ましい。
【0114】
<マイクロ流路デバイス>
本発明のマイクロ流路デバイスは、上記繰り返し単位(A)および(B)を有する重合体を、無機材料で構成されるマイクロ流路内表面の少なくとも一部に有するものである。
【0115】
上記マイクロ流路デバイスとしては、例えば、微小反応デバイス(具体的にはマイクロリアクターやマイクロプラント等)、集積型核酸分析デバイス、微小電気泳動デバイス、微小クロマトグラフィーデバイス等の微小分析デバイス;質量スペクトルや液体クロマトグラフィー等の分析試料調製用微小デバイス;抽出、膜分離、透析等に用いる物理化学的処理デバイス;環境分析チップ、臨床分析チップ、遺伝子分析チップ(DNAチップ)、タンパク質分析チップ(プロテオームチップ)、糖鎖チップ、クロマトグラフチップ、細胞解析チップ、製薬スクリーニングチップ等のマイクロ流路チップが挙げられる。
【0116】
また、上記デバイスに設けられているマイクロ流路は微量の試料(好ましくは液体試料)が流れる部位であり、その流路幅および深さは特に限定されないが、いずれも、通常、0.1μm〜1mm程度であり、好ましくは10μm〜800μmである。
なお、マイクロ流路の流路幅や深さは、流路全長にわたって同じであってもよく、部分的に異なる大きさや形状であってもよい。
【0117】
なお、重合体のコーティングは、生体内医療構造体への重合体のコーティングと同様に行えばよい。コーティングは、流路の略全面(全面を含む)に行うのが好ましい。
【実施例】
【0118】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
なお、実施例5および22は参考例である。
【0119】
実施例における各分析条件は以下に示すとおりである。
<分子量測定(溶出溶媒:水−エタノール混合溶媒)>
東ソー社製 TSKgel G6000PWXL−CPカラムを用い、流量:0.3ミリリットル/分、溶出溶媒:水−エタノール混合溶媒(NaNO
3:0.1M、エタノール:20(v/v)%)、カラム温度:25℃の分析条件で、ポリエチレングリコールを標準とするゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)を測定した。
【0120】
<
1H−NMRスペクトル>
1H−NMRスペクトルは、溶媒としてD
2Oを、内部標準物質として3−(トリメチルシリル)−2,2',3,3'−テトラジュウテロプロピオン酸ナトリウム(TMSP−d4)を、それぞれ用いて、BRUKER社製モデルAVANCE500(500MHz)により測定した。
【0121】
<
13C−NMRスペクトル>
13C−NMRスペクトルは、溶媒としてD
2Oを、内部標準物質として3−(トリメチルシリル)−2,2',3,3'−テトラジュウテロプロピオン酸ナトリウム(TMSP−d4)を、それぞれ用いて、BRUKER社製モデルAVANCE500(500MHz)により測定した。
【0122】
<吸光度測定>
吸光度は、日本バイオ・ラッドラボラトリーズ社製モデル680マイクロプレートリーダーにより450nmの吸光度を測定した。
【0123】
実施例1 共重合体(N−1−1)の合成
以下の合成経路に従い、共重合体(N−1−1)を得た。
【0124】
【化12】
【0125】
N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド塩化メチル4級塩(興人フィルム&ケミカルズ社製、以下、DMAPAA−Qと称する。)75%水溶液4.00gと、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート(M−90G(1分子あたりオキシエチレン単位を平均9個含有) 新中村化学工業社製、以下、MPEGMと称する。)47.0gと、重合開始剤として2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]二塩酸塩2.00gと、連鎖移動剤として2−アミノエタンチオール塩酸塩0.250gと、イオン交換水992gとを混合しフラスコに入れた。これに窒素を吹き込み、60℃まで昇温して6時間重合させ、その後室温に冷却した。得られた水溶液を透析することで、共重合体(N−1−1)を得た(収率:74%)。
得られた共重合体(N−1−1)について水−エタノール混合溶媒を溶出液とした分子量測定を行ったところ、数平均分子量は29000であり、分子量分布は3.3であった。
また、共重合体(N−1−1)の構造およびDMAPAA−Q/MPEGM比を
1H−NMRにより確認した。共重合体(N−1−1)において、DMAPAA−Qに由来する繰り返し単位の含有量は2.4質量%であり、MPEGMに由来する繰り返し単位の含有量は97.6質量%であった。
なお、共重合体(N−1−1)と水を混合し、濃度を1質量%に調整したところ、共重合体(N−1−1)は水に溶解していた。
【0126】
実施例2 共重合体(N−1−2)の合成
上記実施例1と同様の合成経路に従い、共重合体(N−1−2)を得た。
すなわち、DMAPAA−Q 75%水溶液0.133gと、MPEGM 9.90gと、重合開始剤として2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]二塩酸塩0.400gと、連鎖移動剤として2−アミノエタンチオール塩酸塩0.0100gと、イオン交換水93.7gとを混合しフラスコに入れた。これに窒素を吹き込み、60℃まで昇温して3時間重合させ、その後室温に冷却した。得られた水溶液を透析することで、共重合体(N−1−2)を得た(収率:83%)。
得られた共重合体(N−1−2)について水−エタノール混合溶媒を溶出液とした分子量測定を行ったところ、数平均分子量は33000であり、分子量分布は3.7であった。
また、共重合体(N−1−2)の構造およびDMAPAA−Q/MPEGM比を
1H−NMRにより確認した。共重合体(N−1−2)において、DMAPAA−Qに由来する繰り返し単位の含有量は1.6質量%であり、MPEGMに由来する繰り返し単位の含有量は98.4質量%であった。
なお、共重合体(N−1−2)と水を混合し、濃度を1質量%に調整したところ、共重合体(N−1−2)は水に溶解していた。
【0127】
実施例3 共重合体(N−1−3)の合成
上記実施例1と同様の合成経路に従い、共重合体(N−1−3)を得た。
すなわち、DMAPAA−Q 75%水溶液0.400gと、MPEGM 4.70gと、重合開始剤として2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]二塩酸塩0.200gと、連鎖移動剤として2−アミノエタンチオール塩酸塩0.0250gと、イオン交換水99.2gとを混合しフラスコに入れた。これに窒素を吹き込み、60℃まで昇温して3時間重合させ、その後室温に冷却した。得られた水溶液を透析することで、共重合体(N−1−3)を得た(収率:62%)。
得られた共重合体(N−1−3)について水−エタノール混合溶媒を溶出液とした分子量測定を行ったところ、数平均分子量は27000であり、分子量分布は3.3であった。
また、共重合体(N−1−3)の構造およびDMAPAA−Q/MPEGM比を
1H−NMRにより確認した。共重合体(N−1−3)において、DMAPAA−Qに由来する繰り返し単位の含有量は2.1質量%であり、MPEGMに由来する繰り返し単位の含有量は97.9質量%であった。
なお、共重合体(N−1−3)と水を混合し、濃度を1質量%に調整したところ、共重合体(N−1−3)は水に溶解していた。
【0128】
実施例4 共重合体(N−1−4)の合成
上記実施例1と同様の合成経路に従い、共重合体(N−1−4)を得た。
すなわち、DMAPAA−Q 75%水溶液1.20gと、MPEGM 9.10gと、重合開始剤として2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]二塩酸塩0.400gと、連鎖移動剤として2−アミノエタンチオール塩酸塩0.0100gと、イオン交換水93.4gとを混合しフラスコに入れた。これに窒素を吹き込み、60℃まで昇温して3時間重合させ、その後室温に冷却した。得られた水溶液を透析することで、共重合体(N−1−4)を得た(収率:77%)。
得られた共重合体(N−1−4)について水−エタノール混合溶媒を溶出液とした分子量測定を行ったところ、数平均分子量は40000であり、分子量分布は3.3であった。
また、共重合体(N−1−4)の構造およびDMAPAA−Q/MPEGM比を
1H−NMRにより確認した。共重合体(N−1−4)において、DMAPAA−Qに由来する繰り返し単位の含有量は5.1質量%であり、MPEGMに由来する繰り返し単位の含有量は94.9質量%であった。
なお、共重合体(N−1−4)と水を混合し、濃度を1質量%に調整したところ、共重合体(N−1−4)は水に溶解していた。
【0129】
実施例5 共重合体(N−1−5)の合成
以下の合成経路に従い、共重合体(N−1−5)を得た。
【0130】
【化13】
【0131】
2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(東京化成工業社製、以下、MPCと称する。)0.300gと、MPEGM 4.70gと、重合開始剤として2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]二塩酸塩0.200gと、連鎖移動剤として2−アミノエタンチオール塩酸塩0.0250gと、イオン交換水99.3gとを混合しフラスコに入れた。これに窒素を吹き込み、60℃まで昇温して6時間重合させ、その後室温に冷却した。得られた水溶液を透析することで、共重合体(N−1−5)を得た(収率:64%)。
得られた共重合体(N−1−5)について水−エタノール混合溶媒を溶出液とした分子量測定を行ったところ、数平均分子量は25000であり、分子量分布は4.3であった。
また、共重合体(N−1−5)の構造およびMPC/MPEGM比を
1H−NMRにより確認した。共重合体(N−1−5)において、MPCに由来する繰り返し単位の含有量は9.6質量%であり、MPEGMに由来する繰り返し単位の含有量は90.4質量%であった。
なお、共重合体(N−1−5)と水を混合し、濃度を1質量%に調整したところ、共重合体(N−1−5)は水に溶解していた。
【0132】
実施例6 共重合体(N−1−6)の合成
以下の合成経路に従い、共重合体(N−1−6)を得た。
【0133】
【化14】
【0134】
アクリロイルモルホリン(興人フィルム&ケミカルズ社製、以下、ACMOと称する。)1.00gと、DMAPAA−Q 75%水溶液0.200gと、MPEGM1.35gと、重合開始剤として2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]二塩酸塩0.100gと、連鎖移動剤として2−アミノエタンチオール塩酸塩0.0130gと、イオン交換水49.6gとを混合しフラスコに入れた。これに窒素を吹き込み、60℃まで昇温して6時間重合させ、その後室温に冷却した。得られた水溶液を透析することで、共重合体(N−1−6)を得た(収率:79%)。
得られた共重合体(N−1−6)について水−エタノール混合溶媒を溶出液とした分子量測定を行ったところ、数平均分子量は52000であり、分子量分布は2.6であった。
また、共重合体(N−1−6)の構造を
1H−NMRにより確認し、ACMO/DMAPAA−Q/MPEGM比を
13C−NMRにより確認した。共重合体(N−1−6)において、ACMOに由来する繰り返し単位の含有量は37.9質量%であり、DMAPAA−Qに由来する繰り返し単位の含有量は4.6質量%であり、MPEGMに由来する繰り返し単位の含有量は57.5質量%であった。
なお、共重合体(N−1−6)と水を混合し、濃度を1質量%に調整したところ、共重合体(N−1−6)は水に溶解していた。
【0135】
試験例1 抗体吸着量測定
共重合体(N−1−1)の0.1質量%水溶液(実施例7)、免疫学的測定用ブロッキング試薬N101(日油社製)を超純水で5倍希釈したもの(比較例1)、免疫学的測定用ブロッキング試薬N102(日油社製)を超純水で5倍希釈したもの(比較例2)を、それぞれ96穴のガラス製マイクロプレート(日本板硝子社製)に満たし、室温で5分間インキュベートした後、超純水で4回洗浄した。
次いで、西洋ワサビパーオキシダーゼ標識マウスIgG抗体(AP124P:ミリポア社製)水溶液を上記マイクロプレートに満たし、室温で1時間インキュベートした後、PBSバッファーで4回洗浄し、TMB(3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジン)/過酸化水素水/硫酸で発色させて450nmの吸光度を測定し、この吸光度から検量線法により抗体吸着量を算出した。
また、コントロールとして、共重合体水溶液でプレートを処理しない以外は上記と同様にして抗体吸着量を算出した。
なお、N101およびN102は、MPCとn−ブチルメタクリレート(n−BMA)との共重合体水溶液である。
試験例1の結果を表1に示す。
【0136】
【表1】
【0137】
上記表1に示すように、共重合体(N−1−1)は、ガラスに対して優れた非特異吸着防止効果を有する。
【0138】
試験例2 耐剥離性試験(1)
(1)共重合体(N−1−1)の0.1質量%水溶液をガラス製セル(関谷理化社製)に満たし、室温で15秒インキュベートした後、超純水で2回洗浄した。
(2)次いで、下記表2に示す界面活性剤の1質量%水溶液(実施例8〜17)をそれぞれ上記ガラス製セルに満たし、37℃で1時間インキュベートした後、超純水で4回洗浄した。
(3)その後、2mg/mLのヒトIgGポリクローナル抗体水溶液を上記ガラス製セルに満たし、37℃で15分インキュベートした後、超純水で4回洗浄し、Micro BCA Protein Assay Reagent キット(#23235:Thermo Fisher Scientific社製)を用いて、セル表面の抗体吸着量を、アルブミン換算値として定量した。
また、コントロールとして、上記(1)の共重合体水溶液処理と上記(2)の界面活性剤水溶液処理を行わず、上記(3)の吸着処理のみを行って、セル表面の抗体吸着量を測定した。
さらに、実施例18として、上記(2)の界面活性剤水溶液処理を行わず、上記(1)の共重合体水溶液処理と上記(3)の吸着処理のみを行って、セル表面の抗体吸着量を測定した。
試験例2の結果を表2に示す。
【0139】
【表2】
【0140】
上記表2に示すように、共重合体(N−1−1)でガラスを処理すれば、その後各種界面活性剤で処理した場合でも、ガラスに対する非特異吸着は起こりにくい。
この結果から、共重合体(N−1−1)は、優れた耐剥離性を有することがわかる。
【0141】
試験例3 ウシ血清アルブミン(以下、BSAと称する)吸着量測定
共重合体(N−1−2)〜共重合体(N−1−5)の0.1質量%水溶液(実施例19〜22)を、それぞれガラス製セル(関谷理化社製)に満たし、室温で15秒インキュベートした後、超純水で2回洗浄した。
その後、2mg/mLのBSA(Sigma−Aldrich社製)水溶液を上記ガラス製セルに満たし、37℃で18時間インキュベートした後、超純水で4回洗浄し、Micro BCA Protein Assay Reagent キット(#23235:Thermo Fisher Scientific社製)を用いて、セル表面に吸着したBSA量を定量した。
次いで、コントロールとして、共重合体(N−1−2)〜共重合体(N−1−5)の水溶液でセルを処理しない以外は上記と同様にセルのBSA吸着量を測定し、この値で上記各共重合体水溶液を用いた場合のBSA量を除し、算出された数値から非特異吸着防止効果を評価した。
試験例3の結果を表3に示す。
【0142】
【表3】
【0143】
上記表3に示すように、共重合体(N−1−2)〜共重合体(N−1−5)は、ガラスに対して優れた非特異吸着防止効果を有する。
【0144】
試験例4 耐剥離性試験(2)
(1)共重合体(N−1−6)を、濃度が0.1質量%となるように0.01M NaCl水溶液に溶解させ(実施例23)、これをガラス製セル(関谷理化社製)に満たし、室温で15秒インキュベートした後、超純水で2回洗浄した。
(2)次いで、0.1M NaCl水溶液を上記ガラス製セルに満たし、37℃で1時間インキュベートした後、超純水で4回洗浄した。
(3)その後、2mg/mLのヒトIgGポリクローナル抗体水溶液を上記ガラス製セルに満たし、37℃で15分インキュベートした後、超純水で4回洗浄し、Micro BCA Protein Assay Reagent キット(#23235:Thermo Fisher Scientific社製)を用いて、セル表面の抗体吸着量を、アルブミン換算値として定量した。
また、コントロールとして、上記(1)の共重合体溶液処理と上記(2)のNaCl水溶液処理を行わず、上記(3)の吸着処理のみを行って、セル表面の抗体吸着量を測定した。
さらに、実施例24として、上記(2)のNaCl水溶液処理を行わず、上記(1)の共重合体溶液処理と上記(3)の吸着処理のみを行って、セル表面の抗体吸着量を測定した。
試験例4の結果を表4に示す。
【0145】
【表4】
【0146】
上記表4に示すように、共重合体(N−1−6)でガラスを処理すれば、その後塩で処理した場合でも、カラスに対する非特異吸着は起こりにくい。
この結果から、共重合体(N−1−6)は、優れた耐剥離性を有することがわかる。