特許第6100943号(P6100943)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6100943
(24)【登録日】2017年3月3日
(45)【発行日】2017年3月22日
(54)【発明の名称】モータ及び電動ポンプ
(51)【国際特許分類】
   H02K 21/16 20060101AFI20170313BHJP
   H02K 1/22 20060101ALI20170313BHJP
   H02K 1/27 20060101ALI20170313BHJP
【FI】
   H02K21/16 M
   H02K1/22 A
   H02K1/27 501A
   H02K1/27 501M
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-48194(P2016-48194)
(22)【出願日】2016年3月11日
(62)【分割の表示】特願2012-45693(P2012-45693)の分割
【原出願日】2012年3月1日
(65)【公開番号】特開2016-106520(P2016-106520A)
(43)【公開日】2016年6月16日
【審査請求日】2016年3月11日
(31)【優先権主張番号】特願2011-75526(P2011-75526)
(32)【優先日】2011年3月30日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000101352
【氏名又は名称】アスモ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】竹本 佳朗
(72)【発明者】
【氏名】内田 智裕
(72)【発明者】
【氏名】横山 誠也
(72)【発明者】
【氏名】加藤 茂昌
【審査官】 池田 貴俊
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−252530(JP,A)
【文献】 特開2005−012997(JP,A)
【文献】 特開2010−094001(JP,A)
【文献】 特開2004−364389(JP,A)
【文献】 特開2005−278268(JP,A)
【文献】 特開2000−125488(JP,A)
【文献】 特開平06−022588(JP,A)
【文献】 特開2004−201407(JP,A)
【文献】 国際公開第1992/007412(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0021105(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 21/16
H02K 1/22
H02K 1/27
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
径方向内側に延びるティースが周方向に3×n(但しnは自然数)個設けられ、該ティースに3相の巻線が順次巻装された3×nスロットのステータと、
前記ステータの内側に配置されるロータコアの周方向に一方の磁極を構成するマグネットがn個配置されるとともに、前記ロータコアに設けられた突極が各マグネット間に空隙を以て配置され、前記突極を他方の磁極として機能するように構成された2×n磁極のロータとを備え、各相間の誘起電圧の波形に基づいて前記ロータの回転位置が検出されて前記巻線に供給される駆動電流が制御されるモータであって、
前記各マグネットは、3相の内のある1つの同じ相のティースに対向するとき、前記各突極は、残りの2相のティースの周方向中間に対向するように構成されており、
前記マグネット及び前記空隙は、前記ロータコアの外縁よりも内側に配置され、
前記一方の磁極の両端電気角は、前記他方の磁極の両端電気角よりも小さくなるように設定され、
前記マグネットの周方向幅は、前記ティースの先端の周方向幅以下であり、
前記一方の磁極の両端電気角をA、前記他方の磁極の両端電気角をBとして、
1.0≦A/(6.10×10−3×B−8.69×10−1×B+1.14×10)≦1.08
を満たすように設定されたことを特徴とするモータ。
【請求項2】
請求項に記載のモータにおいて、
12スロット、8磁極で、前記一方の磁極の機械角が27°、前記他方の磁極の機械角が33°に設定されたことを特徴とするモータ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のモータと、
前記モータを収容するケースと、
前記ケース内で前記ロータと一体回転可能に設けられたインペラ部材と
を備えたことを特徴とする電動ポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンシクエントポール型構造のロータを採用したモータ及び電動ポンプに関するものである。
【背景技術】
【0002】
モータとしては、例えば特許文献1に開示されたように、12スロットのステータと、ロータコアの周方向に一方の磁極のマグネット(ネオジム磁石)が4個埋め込み配置されるとともに、ロータコアに設けられた突極が各マグネット間に空隙を以て配置され、該突極を他方の磁極として機能させる8磁極のロータとを備えたものがある。このような所謂コンシクエントポール型構造のロータを採用したモータやそのモータを用いた電動ポンプ等の駆動装置では、高出力化や小型軽量化や低コスト化を図ることが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−263763号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、径方向内側に延びるティースが周方向に3×n(但しnは自然数)個設けられ、該ティースに3相の巻線が順次巻装された3×nスロットのステータと、前記ステータの内側に配置されるロータコアの周方向に一方の磁極を構成するマグネットがn個配置されるとともに、前記ロータコアに設けられた突極が各マグネット間に空隙を以て配置され、前記突極を他方の磁極として機能するように構成された2×n磁極のロータとを備え、各相間の誘起電圧の波形に基づいて前記ロータの回転位置が検出されて前記巻線に供給される駆動電流が制御されるモータであって、前記各マグネットは、3相の内のある1つの同じ相のティースに対向するとき、前記各突極は、残りの2相のティースの周方向中間に対向するように構成されたモータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、径方向内側に延びるティースが周方向に3×n(但しnは自然数)個設けられ、該ティースに3相の巻線が順次巻装された3×nスロットのステータと、前記ステータの内側に配置されるロータコアの周方向に一方の磁極を構成するマグネットがn個配置されるとともに、前記ロータコアに設けられた突極が各マグネット間に空隙を以て配置され、前記突極を他方の磁極として機能するように構成された2×n磁極のロータとを備え、各相間の誘起電圧の波形に基づいて前記ロータの回転位置が検出されて前記巻線に供給される駆動電流が制御されるモータであって、前記各マグネットは、3相の内のある1つの同じ相のティースに対向するとき、前記各突極は、残りの2相のティースの周方向中間に対向するように構成されており、前記マグネット及び前記空隙は、前記ロータコアの外縁よりも内側に配置され、前記一方の磁極の両端電気角は、前記他方の磁極の両端電気角よりも小さくなるように設定され、前記マグネットの周方向幅は、前記ティースの先端の周方向幅以下であり、前記一方の磁極の両端電気角をA、前記他方の磁極の両端電気角をBとして、1.0≦A/(6.10×10−3×B−8.69×10−1×B+1.14×10)≦1.08を満たすように設定されたことを要旨とする。
【0007】
同構成によれば、一方の磁極(マグネットの磁極)の両端電気角は、他方の磁極(突極の磁極)の両端電気角よりも小さいため、マグネット及び空隙がロータコアの外縁よりも内側に配置されても、マグネットのティースに働く吸引力は狭い範囲に集中し、マグネットとティースが向かい合った状態で停止し易くなる。よって、始動時に同じ位置から回転を開始する確率が増えるので、短時間で安定した誘起電圧を取得し易くでき、誘起電圧を用いた制御を開始するまでの時間を平均的に短くすることが可能となる。
【0009】
同構成によれば、前記一方の磁極(マグネットの磁極)の両端電気角をA、前記他方の磁極(突極の磁極)の両端電気角をBとして、1.0≦A/(6.10×10−3×B−8.69×10−1×B+1.14×10)≦1.08を満たすように設定されるため、実験結果より、誘起電圧の波形の乱れが小さくなる。具体的には、実験結果より、通常の(突極を有さず全てのマグネットが全ての磁極を構成する)モータの誘起電圧の波形に対して同等以上に乱れていない波形とすることができる。よって、例えば、良好にセンサレスの駆動方法を採用することが可能となる。
【0010】
請求項に記載の発明では、請求項に記載のモータにおいて、12スロット、8磁極で、前記一方の磁極の機械角が27°、前記他方の磁極の機械角が33°に設定されたことを要旨とする。
【0011】
同構成によれば、12スロット、8磁極のモータにおいて、具体的に請求項1に記載の発明の効果を得ることができる。
請求項に記載の発明では、請求項1又は2に記載のモータと、前記モータを収容するケースと、前記ケース内で前記ロータと一体回転可能に設けられたインペラ部材とを備えたことを要旨とする。
【0012】
同構成によれば、電動ポンプにおいて、センサレスの駆動方法を採用することが可能となるとともに、例えば電動ポンプの小型軽量化を図ることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、径方向内側に延びるティースが周方向に3×n(但しnは自然数)個設けられ、該ティースに3相の巻線が順次巻装された3×nスロットのステータと、前記ステータの内側に配置されるロータコアの周方向に一方の磁極を構成するマグネットがn個配置されるとともに、前記ロータコアに設けられた突極が各マグネット間に空隙を以て配置され、前記突極を他方の磁極として機能するように構成された2×n磁極のロータとを備え、各相間の誘起電圧の波形に基づいて前記ロータの回転位置が検出されて前記巻線に供給される駆動電流が制御されるモータであって、前記各マグネットは、3相の内のある1つの同じ相のティースに対向するとき、前記各突極は、残りの2相のティースの周方向中間に対向するように構成されたモータを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】(a)本実施の形態におけるモータの平面図。(b)同じくロータの部分拡大平面図。
図2】本実施の形態におけるモータの制御装置の回路図。
図3】乱れていない波形となった一方の磁極の両端電気角と他方の磁極の両端電気角の関係を示す説明図。
図4】本実施の形態のモータを説明するための電気角−誘起電圧波形図。
図5】本実施の形態のモータを説明するための電気角−誘起電圧波形図。
図6】従来技術のモータを説明するための電気角−誘起電圧波形図。
図7】従来技術のモータを説明するための電気角−誘起電圧波形図。
図8】従来技術のモータを説明するための電気角−誘起電圧波形図。
図9】電動ポンプに具体化した模式断面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を具体化した実施の形態を図1図5に従って説明する。
図1(a)に示すように、インナロータ型のブラシレスモータ(以下、単にモータという)Mのステータ10は、径方向内側に延びるティース11aが周方向に12個設けられたステータコア11と、前記ティース11aに順次巻装された3相(U相,V相,W相)の巻線12とからなる12スロットのものが用いられている。
【0016】
又、モータMにおいて前記ステータ10の内側に配置されるロータ20は、図1(a),(b)に示すように、回転軸21の外周面に外嵌された円環状のロータコア22を有する。そして、ロータコア22の外周側には周方向に(90°間隔に)4つのマグネット収容孔22aが形成され、該マグネット収容孔22aにはN極のマグネット23がそれぞれ(全部で4個)配置されている。
【0017】
又、各マグネット23間には、ロータコア22の外周部に設けられた突極22bがそれぞれマグネット23との各境界部に軸方向から見て一定面積の空隙K(マグネット収容孔22aの一部)を以て配置されている。尚、本実施の形態の空隙Kは、マグネット23の周方向の両側に対称(マグネット23の中心を通る径方向の線に対して線対称)な形状に形成されることで一定の面積とされるとともに、ロータコア22の軸方向の全体に渡って(一定面積が維持されたまま)形成されている。尚、上記構成により前記マグネット23及び空隙Kは、ロータコア22の外縁(外周)よりも内側に配置されている。
【0018】
つまり、各マグネット23及び突極22bの周方向中心は等角度(45°)間隔に交互に配置され、ロータ20は、一方の磁極であるN極を構成するマグネット23に対して突極22bを他方の磁極であるS極として機能させる8磁極の所謂コンシクエントポール型にて構成されている。
【0019】
ここで、本実施の形態のロータ20は、図1(b)に示すように、一方の磁極(マグネット23の磁極)の両端電気角(A)が、他方の磁極(突極22bの磁極)の両端電気角(B)よりも小さくなるように設定されている。
【0020】
又、ロータ20は、一方の磁極(マグネット23の磁極)の両端電気角をA、他方の磁極(突極22bの磁極)の両端電気角をBとして、
A=(6.10×10−3×B−8.69×10−1×B+1.14×10)±8%を満たすように設定され、
具体的にはAが108°(機械角で27°)で、Bが132°(機械角で33°)に設定されている。
【0021】
言い換えると、Aは、
(6.10×10−3×B−8.69×10−1×B+1.14×10)×0.92≦A≦(6.10×10−3×B−8.69×10−1×B+1.14×10)×1.08を満たすように設定されている。
【0022】
更に、言い換えると、本実施の形態のロータ20は、
0.92≦A/(6.10×10−3×B−8.69×10−1×B+1.14×10)≦1.08を満たすように設定されている。
【0023】
これは、実験結果より得たデータに基づいた式であって、波形が図4及び図5に示すようになったときの角度(プロット)を図3のように繋いだ曲線Xから得た近似式に、通常の(突極を有さず全てのマグネットが全ての磁極を構成する)モータの誘起電圧の波形に対して同等以上に乱れていない波形となる幅(±8%)を追加した式である。
【0024】
即ち、A=6.10×10−3×B−8.69×10−1×B+1.14×10を満たせば(図3の曲線X上にあれば)、波形が図4及び図5に示すようになる。そして、その±8%(図3の2点鎖線で囲まれた範囲)では、通常の(突極を有さず全てのマグネットが全ての磁極を構成する)モータの誘起電圧の波形に対して同等以上に乱れていない波形となる(例えば正弦波に対する歪み率が1.3%となる)。尚、図4は、A=6.10×10−3×B−8.69×10−1×B+1.14×10に設定された(図3の曲線X上にある)モータの各相(U相、V相、W相)の誘起電圧の波形であって、正弦波に対する歪み率が0.9%となっている。又、図5は、A=6.10×10−3×B−8.69×10−1×B+1.14×10に設定された(図3の曲線X上にある)モータ(Y結線及びΔ結線)の各端子間(U−V間、V−W間、W−U間)の誘起電圧の波形である。
【0025】
そして、モータMは、図2に示すように、その巻線12の各端子12u,12v,12wが制御装置51に接続され、その誘起電圧の波形に基づいて(それを制御信号として)ステータ10の巻線12に供給する駆動電流が制御されるセンサレスの駆動方法が採用されている。詳しくは、本実施の形態の制御装置51は、図2に示すように、各相の巻線12のそれぞれの端子12u,12v,12wに接続された回転位置検出回路52を備える。回転位置検出回路52は、各相の巻線12に誘起される誘起電圧を検出し、それら各相間の誘起電圧の波形に基づいてロータ20の回転位置と対応した回転位置パルス信号を生成し、該回転位置パルス信号をマイコン53に出力する。マイコン53は、入力された回転位置パルス信号に基づいて転流信号を生成し、ドライバ回路54を介してインバータ回路55に出力する。インバータ回路55は、入力された転流信号によって各スイッチング素子55a〜55fがスイッチング制御され、各相の巻線12に順次駆動電流を流す転流動作を行うことになる。
【0026】
次に、上記のように構成されたモータMの作用について説明する。
ロータ20が回転を開始すると、その回転に応じて誘起電圧が生じる。すると、制御装置51にて、各端子間(U−V間、V−W間、W−U間)の誘起電圧の波形(図5参照)に基づいて(それを制御信号として)具体的には0[V]を境にして回転位置パルス信号が生成され、該回転位置パルス信号に基づいて転流信号が生成され、巻線12に供給する駆動電流が切り換えられる。このとき生じる誘起電圧の波形は乱れていないため、良好にロータ20が回転制御されることになる。
【0027】
次に、上記実施の形態の特徴的な効果を以下に記載する。
(1)ティース11aの数(12個)はマグネット23の数(4個)の3倍であるため、各マグネット23は常に3相の内のある1つの同じ相(U相又はV相又はW相)のティース11aに対向することになる。そして、一方の磁極(マグネット23の磁極)の両端電気角は、他方の磁極(突極22bの磁極)の両端電気角よりも小さいため、マグネット23及び空隙Kがロータコア22の外縁よりも内側に配置されても、マグネット23のティース11aに働く吸引力は狭い範囲に集中し、マグネット23とティース11aが向かい合った状態で停止し易くなる。よって、始動時に同じ位置から回転を開始する確率が増えるので、短時間で安定した誘起電圧を取得し易くでき、誘起電圧を用いた制御を開始するまでの時間を平均的に短くすることが可能となる。
【0028】
(2)一方の磁極(マグネット23の磁極)の両端電気角をA、他方の磁極(突極22bの磁極)の両端電気角をBとして、A=(6.10×10−3×B−8.69×10−1×B+1.14×10)±8%を満たすように設定されるため、実験結果より、誘起電圧の波形の乱れが小さくなる。具体的には、実験結果より、通常の(突極22bを有さず全てのマグネットが全ての磁極を構成する)モータの誘起電圧の波形に対して同等以上に乱れていない波形とすることができる。よって、コンシクエントポール型構造のロータ20を採用したモータMにおいて、良好に(前記通常のモータと同等のトルク特性としながら)センサレスの駆動方法を採用することが可能となる。
【0029】
上記実施の形態は、以下のように変更してもよい。
・上記実施の形態では特に言及していないが、上記実施の形態のモータMを用いた何らかの駆動装置に具体化してもよく、例えば、図9に示すように、上記実施の形態のモータMを用いた電動ポンプ61に具体化してもよい。詳しくは、この電動ポンプ61は、略有底筒状のモータハウジング62と、モータハウジング62の開口端に固定され吸入口63a及び排出口63bを有したポンプハウジング63と、モータハウジング62の底部外側に固定されるエンドハウジング64とからなるケース65を備える。又、電動ポンプ61は、前記モータハウジング62の筒部62aに保持された前記ステータ10と、モータハウジング62の底部内側に固定されたシャフト66と、そのシャフト66に回転可能に支持された前記ロータ20と、そのロータ20と一体回転可能に設けられたインペラ部材67とを備える。又、この電動ポンプ61は、前記モータハウジング62の底部外側と前記エンドハウジング64とに囲まれた収容部内に保持されて上記実施の形態の制御装置51を構成する制御回路基板68を備える。このように構成された電動ポンプ61では、良好にセンサレスの駆動方法を採用することが可能となるとともに、例えば電動ポンプ61の小型軽量化を図ることができる。
【0030】
・上記実施の形態では、ティース11aが12個の12スロットのステータ10で、マグネット23が4個で8磁極のロータ20であるとしたが、ティースが3×n(但しnは自然数)個の3×nスロットのステータで、且つマグネットがn個で2×n磁極のロータであれば、他のモータに変更して実施してもよい。
【0031】
例えば、ティースが18個の18スロットのステータと、マグネットが6個で12磁極のロータとを備えたモータに変更してもよい。尚、勿論、この場合もA=(6.10×10−3×B−8.69×10−1×B+1.14×10)±8%を満たすことが好ましい。
【0032】
・上記実施の形態では、A=(6.10×10−3×B−8.69×10−1×B+1.14×10)±8%を満たすように設定するとしたが、±8%未満を満たすように設定してもよく、例えばA=(6.10×10−3×B−8.69×10−1×B+1.14×10)±4%を満たすよう設定してもよい。
【0033】
このようにすると、誘起電圧の波形をより乱れていない波形とすることができる。よって、更に良好にセンサレスの駆動方法を採用することが可能となり、例えば高効率化を図ることが可能となる。
【0034】
又、A=(6.10×10−3×B−8.69×10−1×B+1.14×10)±8%を満たさず、一方の磁極(マグネット23の磁極)の両端電気角(A)が、他方の磁極(突極22bの磁極)の両端電気角(B)よりも小さくなるように設定してもよい。この場合でも、上記実施の形態の効果(1)と同様の効果を得ることができる。
【0035】
・ところで、モータとしては、別途回転センサを設けずに誘起電圧の波形に基づいて(それを制御信号として)ステータに供給する駆動電流を制御するセンサレスの駆動方法を採用したものがある。しかしながら、上記のようなマグネットがロータコアに埋め込み配置されたコンシクエントポール型構造のロータを採用したモータでは、回転し始めてからしばらく回転しないと安定した誘起電圧を取得できず、誘起電圧を用いた制御を開始するまでに時間を要するという問題がある。
【0036】
又、上記のようなモータでは、その誘起電圧の波形が、通常の(突極を有さず8個のマグネットが8磁極を構成する)モータの誘起電圧の波形に対して乱れてしまうという問題があり、ひいてはセンサレスの駆動方法を採用することが困難となってしまっていた。
【0037】
具体的には、前記通常のモータの各相の誘起電圧の波形は、正弦波に対する歪み率が1.3%と小さく、良好にセンサレスの駆動方法を採用することが可能となる。これに対して、前記一方の磁極(マグネットの磁極)と前記他方の磁極(突極の磁極)の両端電気角が等しい(例えば、機械角が27°の)コンシクエントポール型構造のロータを採用したモータの各相(U相、V相、W相)の誘起電圧の波形は、図6に示すように、正弦波に対する歪み率が21.1%となってしまう。又、同様のコンシクエントポール型構造のロータを採用したモータ(Y結線)の各端子間(U−V間、V−W間、W−U間)の誘起電圧の波形は、図7に示すように乱れ、同様のコンシクエントポール型構造のロータを採用したモータ(Δ結線)の各端子間(U−V間、V−W間、W−U間)の誘起電圧の波形は、図8に示すように乱れてしまう。尚、このことは、突極の磁極がマグネットの磁極のような強制的な磁極の流れを発生させていないことに基づいていると考えられる。
【0038】
そして、上記のように乱れた波形(図6図8参照)では、例えばピークがずれている(本来90°のところ約110°となっている)ことや、ピークに対して左右非対称となっていることから、制御信号として用いることが困難となり、センサレスの駆動方法を採用することが困難となる。そこで、良好にセンサレスの駆動方法を採用することが可能となるモータ及び電動ポンプを提供することを目的とする。
【0039】
上記目的を達成するための技術思想において、径方向内側に延びるティースが周方向に3×n(但しnは自然数)個設けられ、該ティースに3相の巻線が順次巻装された3×nスロットのステータと、前記ステータの内側に配置されるロータコアの周方向に一方の磁極を構成するマグネットがn個配置されるとともに、前記ロータコアに設けられた突極が各マグネット間に空隙を以て配置され、前記突極を他方の磁極として機能するように構成された2×n磁極のロータとを備え、各相間の誘起電圧の波形に基づいて前記ロータの回転位置が検出されて前記巻線に供給される駆動電流が制御されるモータであって、前記各マグネットは、3相の内のある1つの同じ相のティースに対向するように構成されており、前記マグネット及び前記空隙は、前記ロータコアの外縁よりも内側に配置され、前記一方の磁極の両端電気角は、前記他方の磁極の両端電気角よりも小さくなるように設定されたことを要旨とする。
【0040】
同構成によれば、ティースの数はマグネットの数の3倍であるため、各マグネットは常に3相の内のある1つの同じ相のティースに対向することになる。そして、一方の磁極(マグネットの磁極)の両端電気角は、他方の磁極(突極の磁極)の両端電気角よりも小さいため、マグネット及び空隙がロータコアの外縁よりも内側に配置されても、マグネットのティースに働く吸引力は狭い範囲に集中し、マグネットとティースが向かい合った状態で停止し易くなる。よって、始動時に同じ位置から回転を開始する確率が増えるので、短時間で安定した誘起電圧を取得し易くでき、誘起電圧を用いた制御を開始するまでの時間を平均的に短くすることが可能となる。
【符号の説明】
【0041】
10…ステータ、11a…ティース、12…巻線、20…ロータ、22…ロータコア、22b…他方の磁極を構成する突極、23…一方の磁極を構成するマグネット、65…ケース、67…インペラ部材、A…一方の磁極の両端電気角、B…他方の磁極の両端電気角、K…空隙。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9